西ドイツ受益者負担金法制における「利益」概念 : 道路改修負担金をめぐる判例を素材として
著者 三木 義一
雑誌名 靜岡大学法経研究
巻 30
号 1
ページ 33‑63
発行年 1981‑06‑30
出版者 静岡大学法経学会
URL http://doi.org/10.14945/00008643
西 ド イ
ツ 受 益 者 負 担 金 法 制 に お け る 益 一﹁利
﹂ 概 念
︱道路改修負担金をめぐる判例を素材として︱
木
目 次
・ はじ め に
︐ 一 西 ド イ ツ にお ける 受 益者 負 担 法金 制 の概 要
.
・ 二 地方租税公課法上の道路改修負担金における利益・概念一 ¨
︱︱瑾地所有嗜の負担義協をめぐって﹁ヨ・一﹁一般的利益﹂か﹁特別な利益か﹂
︱︱歩行者専用道路への改修に際しての負担義務をめぐって︱︱
むすびにかえて
西ドイツ受益者負担金法制における﹁利益﹂概念
法経研究三〇巻一号︵一九八一年︶
三 四
は じ め に 昭和
〇四 年代 に入 てっ らか
︑ 我 国が はで 財 政危 機克 服 の 一手 一と段 し て
﹁受 益 者 負担
﹂ 論 が強 調 され るよ う にな り
︑ し もか そ の概 念 非が 常 広に 範 囲 に用 いら れ つつ あ る ︒ これ ら の
﹁受 益 者 負担
﹂ 論 の特 徴 は︑ 本 来 の受 益 負者 担 であ る開 発 利益 の吸 収 合が 理的 な 租税 制度 を 提前 にす れ ば不 要 な も ので あ る こと を 曖昧 にし ま︑ た︑ 受益 者 負 担 であ る以 上
﹁利 益
﹂ 具が 体 的 発に 生 す る場 合 に限 てっ 徴収 しう るも の であ る にも か わか ずら
︑ 利﹁ 益
﹂を 具体 的 に検 討 す る こと なく
﹁費 用﹂ を かけ れば それ けだ で
﹁利 益
﹂ があ ると の安 易 な前 提 立に てっ るい こと にあ るよ う に思 わ れ る︒
. と ころ で︑ 受益 者 負 担を めぐ る問 題 に つい ては
︑ この 間財 政学 の ベレ ルで は くい つか の研 究成 果 が生 出さ れ て いる が︑ 我 が国 では 受益 者 担負 金を めぐ てっ 訴 訟上 争 われ てい る事 例 まが だ それ ほど 多 くな いた め 法︑ 的 な レ ベ ルで の検 討 はほ と んど な され て いな い状 態 にあ るよ う に思 われ る︒ し かし
︑ 受益 者 負 担金 徴収 の根 拠 なと る 利﹁ 益
﹂ の概 念 や︑ 負 担 割合 の 配分 基 準な ど はす ぐ れ 法て 的 な 題問 でも あ る ︒ そ こで
︑ 本稿 では 受益 者 担負 を金 めぐ る法 的 問題 のう ち︑ ま ず
﹁利 益
﹂ 概 念 の問 題を とり あげ
︑ 受 益者 負 担金 徴収 の根 拠 とな る
﹁利 益
﹂と 具は 体 的 に何 を 意 味 し て るい かの を
︑ 西
ド イ ツで 近 時 間 題と な てっ るい 各 州 の 地 方 租 税 課公 法 o︵バ 日B
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= K GA と 以下 略す
︶ 上 の 道 路 改修 負 担 金
︵r ヽふ o● 口争 口げ Φい ヽ∬一
← を めぐ る判 例 素を 材 とし て検 討す る こと にし た い︒ この よう に
﹁利益
﹂概 念を 法的 ベレ ルか ら検 す討 るこ とは 我︑ が国 受の 者益 負担 金法 制の うち 負︑ 担金 負の 担義 務者 を 単に 事業 によ てっ 特別 利の 益を け受 る者 と定 めて いる 場合 や法 律が 定一 の範 囲を 定め その 範囲 内で 事業 によ てっ 別特 利の 益を 受 け る者 と し て るい 駐便 には 負 担 義務 の有 無 判の 断 基準 と な るし
︑ ま た︑ 法律 具が 体 的 負に 担 義務 者 指を 定 し てい る 場 合 には そ 立の 法 理 由 の合 理性 を 再検 討す る素 材 もに な る と思 われ る︒ さら に︑ 受 益者 負担 金 収徴 対の 象と な てっ いる 事
業 が 途 中 で中 止 さ れ た 場 合 に も
︑
﹁利 益
﹂ 概 念 が 負 担 義 務 の有 無 を 判 断 す る た め 重の 要 な 基 準 に な る よ う 思に わ れ る
︒
︵1︶ 和田 八東
﹁受益 者負 担
﹂
︵﹃ 現代 財政 学体 系 2 o現 代日 本 の財 政﹄ 有斐 閣︑ 所収
︶ よに れば
︑
﹁受 益者 担負
﹂ は① いわ るゆ
﹁開 発利 益﹂ の吸 収 とい う意 味︑
②公 共料 金と いう 意味
③︑
﹁公共 サー ビ ス﹂ の費 用負 担 の 分配 原則 とし て︑
﹁応 益原 則﹂ な いし 利益 原則 とい う意 味︑ の三 つの 味意 用で いら れ︑ しか も実 際 には 混乱 され てい るこ と︑ また
︑ 本来 の
﹁受益 者負 担﹂ は① さを もす ので ある こと 指が 摘 され てい る
︵一 五三 頁以 下︶ ︒ な お︑ 最近 の受 益者 担負 論 問の 題点 に いつ ては 芦︑ 田 一旦 o鈴 木 茂
﹁受益 者負 論担
﹂ 企川 藤 陸夫
・池 上惇 編
﹃財政 学概 論﹄ 有斐 閣︑ 所収
︶ 二七 一頁 以下 佐︑ 藤祐 次
﹁受益 者負 担 と社 的会 公平
﹂
︵国民 税制 調査 会編
﹃福祉 型税 財 政﹄ 学陽 書房 所︑ 収︶ 一五 九頁 以下 な︑ どが 参考 にな る︒
︵2︶ 後者 の点 は和 国八 東教 授 が つと 強に 調さ れ てい る点 であ る︒ 和 国八 東
・前 掲論 文 一五 七頁 同︑
﹁都市 計画 業事 と
﹃受 益者 負 担﹄
﹂都 市問 題六 一巻 四号 二六 頁等 参照 な︒ お︑ 渡辺 精 一・ 大 川 武
﹃自 治財 政論
﹄ 命体 律文 化社
︶ 一〇 九頁 も同 様 の指 摘を てし いる
︒ これ 対に てし 稚︑ 井 光明
﹁自 治体 財政 の法 的考 察﹂
︵原 田尚 彦
・兼 子 仁
﹃自 治体 行政 の法 制と 度﹄ 学陽 書房
︑ 所収
︶ 下は 水道 事業 費 の費 用負 担 のあ り方 に つい て︑
﹁費 用は
﹃著 しく 利益 を受 ける
﹄ こと など 要を 件 とす るこ なと く︑ 土地 所有 者 また は利 用者 等 に配 分 さ れる べき であ る﹂
︵三三
〇頁
︶ と述 べて おり 下︑ 水道 業事 係に る 負担 金を 受益 者負 担金 とし てで はな く︑ 単な る費 用負 担金 とし てと ら よえ うと てし いる よう 思に れわ る︒ こ の場 合 には
︑ 個 の々 事業 計画 の決 定に 際 てし の住 民 の参 加
・同 意 今が ま で以 上 に手 続 的に 保障 さ れる 必要 があ る 思と われ る︒ かし し︑
﹁著 くし 利益 を受 るけ
﹂ こと を必 要 上し な い負 担金 は何 を根 拠 住に 民 から 徴収 うし る ので あ ろう か︒ こと ろで 現︑ 行 の受 益者 負担 金法 制 は︑ 受益 者 の負 担割 合を 事業 費 の 一部 とし て いる
︒ そ のた め︵ 工事 の長 期化 イと ンフ レに 伴う 事 業費 の暴 騰︑ その 結果 とし ての 負担 金 の暴 騰 が深 刻な 問題 を生 出し てい る︒ この 問題 は︑ イ フン レ下 にお ける 名 月賃 金の 上昇 とそ れ に 伴う 実質 的税 負担 率 の増 大 によ る租 税法 律主 義 の形 骸化 共と 通 の問 題を 含ん いで るよ うに 思わ れる
︒
′
︵3︶ 例え ば 和︑ 田八 東
・前 掲諸 論文 木︑ 村 収
﹁受益 負者 担 制金 度 と租 税制 度﹂ 都市 問題 研究 一九 巻 七号 内 貴滋
﹁受益 者 負担 に つい て﹂ 地方 財務 一九 七五 年九
・一
・一 二一 月号
︑ 日中 啓 一
﹃受益 者負 担論
﹄
︵東洋 経済 新報 社︶︑ 同
﹁ド イ ツに おけ る負 担概 念 の研 究﹂ 本日 大学 経済 集志 四九 巻 四号 九九 頁以 下︑ など があ る︒ 西ドイツ受益者負担金法制における﹁利益﹂概念
三 五
法経研究三〇巻一号八一九八一年︶ 一二六 八4﹀.もっとも︑一昭和四七年に鎌倉市民が横浜地裁に提訴した﹁下水道事業受益者負担金賦課処分取消請求事件﹂によって受益者 負担金をめぐる議論が活発どなりつつある︒この訴訟の内容及び問題点については︑鎌形寛之﹁鎌倉市下水道訴訟法﹂律時報四七巻六号七頁以下︑北野弘久﹁社会福祉事業と財政法﹂︵小川政亮編﹃扶助と福祉の法学﹄一粒社︑所収︶三六六頁以下︑碓井光明・前掲論文三二七頁以下︑等を参照されたい︒
︐→←″例外的にヽ我が国の受益者負担金法制を紹介o検討しているものとして︑黒川 弘﹁受益者負担制度︱開発利益の社会還元 田と熾﹂自治研究四五巻七と一一号︑四六巻一号︑柳瀬良幹﹃公用負担法﹄︵有斐閣︶六三頁以下︑和田英夫﹁負担金﹂︵﹃行政法講座J第六巻﹄有斐閣︑所収︶二八三頁以下︑北野弘久o前掲論文三六二頁以下︑碓井光明o前掲論文三二八頁以下が参考になる︒
I六︶ 戦前の判例の申にはこの﹁利益﹂に言及したものがいくつかみられる︒例えば︑﹁経済的利益ニシテ金銭二見積り得ルモノ′ミ﹂︵昭一六・九・二七行裁二部判決︶︑﹁利益ハ此ノ決定通知ヲ為ス際二具体的二量定シ得ヘキモノタルコトヲ要スル﹂︵同前
︶ ︑
﹁負担金プ課セラルヘキ受益ドハ負担金テ課セラルヘキ現在二於テ金銭額二算定シ得ヘキ利益ノ義ニシテ将来発生スヘキ利益ハ之ヲ包 合セサルモノノ義卜解スルプ相当トス﹂︵昭一七・一二・三二行裁三部判決︶などがそうである︵黒川・前掲論文︑自治研究四五巻八号・一一口頁参照
︶ ︒ 一 ︑
■なお︑学説ではすでに和田八東・前掲論文︵注1︶の﹁経済学的にいえば土地価格︵地価︶の上昇である﹂︵一五五頁︶との指摘があ
・ る ︒ また︑内貴 滋o前掲論文は公共事業によって生じる利益として︑①公の施設の利用による直接的利益︑②公の施設ができるこ 2による間接的利益︑0地価の上昇︑④﹁進度の利益﹂をあげ︑このうち③と本来個人が行う分野を公共事業の一環として国が関与す る場合や産業振興という二般的利益を増大させるために特定企業の活動を促進させた場合などが.受益者負担金の根拠となる﹁特別の利益卜であるとしている︵地方財政一九七五年九月号︑ 一六頁︶︒
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︐ ︶ 受ける利益の程度が異なる場合︑当然負担割合も異なってこよう︒その意味で配分基準の合理性も重要な問題である︒ま たゞ本稿では直接言及しないが︑受益者負担金も租税同様︑租税法律主義・租税条例主義の憲法上の要請に服するものであり︑中負担割合︑個たの賦課基準等は負担義務者が自分で明確に負担額を予知できるほど明確でなければならないと思われる︒この点からすると︑
現行法制には問題が多い︒例えば︑静岡県国営土地改良事業負担金徴収条例では一受益農民の負担割合について﹁県が︵受益農民及び市町村から︶徴収する負担金の総額は︑法︵=土地改良法︶九〇条第一項の規定より県が負担する負担金の額につき土地改良法施行令第ゴ条各項に定める額o区分に応じ︑それぞれの額の一〇〇分の五〇に相当する金額の範囲内で知事が定める額とする﹂︵三条︶︵傍