1 6 9
生産誘発効果の国内残存率の研究
A S t u d y D f o e s t i c o m l a d u i s e R P f o n i o c t o d u r Inducement
宇 多 賢 治 郎
l
目次
1
. はじめに
2
.
前提3.
計算方法4.
分析結果5
.
おわりにA p p e n d i x
.
非競争輸入型産業連関表を使った生産誘発分析要旨
フルセット型と呼ばれ、ほとんどの産業を高いレベルで自給できた
1990
年以前の日本の産業構造は近年、輸入、特に最終財、加工度の高い中間財の 輸入の増加により、大きく変化した。この変化が日本国内の生産誘発効果に 与える影響は、輸入をマイナスの列ベクトルとして扱う競争輸入型の産業連 関表と、それを使った従来の分析手法では捉えることができない。そこで本 稿では長期的な研究の先駆けとして、生産誘発効果の「国内残存率」を定義 し、それが日本の産業構造の変化を示すのに効果的な方法であることを分析 結果と共に示した。国内残存率は、非競争輸入型の産業連関表を用い、サー モグラフィーの表現を使って行列を視覚化する手法である。この手法により、産業の弱体化という横糸と、最終財の国産率の減少という縦糸の相互作用に より、生産誘発効果が日本国内に残りにくくなったことを明示することがで きた。
キーワード
日本 フルセット型 輸入 産業連関 非競争輸入型
I
立正大学大学院経済学研究科非常勤講師1 . はじめに
本稿では、日本の輸入の増加、特に最終財や加工度の高い中間財の輸入の増 加により、生産誘発効果が外国に流出しやすくなった産業構造の変化を、産業 連関表を使って明示する方法と分析例を説明する¥
1 9 9
0
年頃までの日本の産業構造は、「フルセット型」と呼ばれるものであっ た。関) 3 9 9 1 (
によると、「フルセット型」とは「すべての産業分野を一定レベ ルで一国内に抱え込んでいる」と定義されている3
。ただし日本の場合は、昔か ら資源が乏しく食糧自給率が低いため、それらを輸入せざるを得ないという克 服が困難な弱点を抱えていた。そして輸入のための外貨を、第二次産業の輸出 によって獲得していたという貿易構造がある。これらのことから、輸入により 第一次産業で流出するまでは、発生した生産誘発効果が国内に留まっていたと 説明できる。しかし、近年の東アジア諸国の経済発展などにより、日本で全ての産業分野 を抱えていなくても、安価な外国からの輸入品が購入できるようになり、フル セット型の産業構造は成立しなくなっている。この変化は、国内の生産誘発に 次のような影響を与えた。第一に、最終需要者が国産品を購入しなくなった結 果、生産誘発が国内で生じにくくなった。第二に、加工度の高い中間財を輸入 するようになった結果、資源や農産物まで生産工程をさかのぼらずに、早い段 階で生産誘発効果が国外に流出するようになった。
輸入構造の変化が生産誘発効果に与える影響は、財政政策を論じる上でも重
2
本稿は、環太平洋産業連関分析学会2009
年大会で宇多が報告した内容0 9 ( 2 0
年0 1
月1 3
日 報告)を修正、加筆したものである。大会の討論者として、詳細で貴重なコメントをくださ った立命館大学の稲葉和夫教授、また学会以外の場でアドバイスをいただいた一橋大学の久 保庭真彰教授、立正大学の藤岡明房教授、横浜国立大学のシュレスタ・ナゲンドラ客員研究 員に、ここに記し感謝いたします。また、立正大学の石田孝造教授とi e d A p p l a r c h R e s e
の横 橋正利主任研究員にご協力いただけなければ、本稿をはじめとする現在行っている一連の研 究はありえませんでした。ここに記し感謝いたします。3
関) 9 3 1 9 ( 6 3 p .
。日本が「フルセット型産業構造」を形成した歴史的経緯として、日本が近 代工業化を意識した1 0 0
年ほど前は、植民地として取り込まれており自立的に近代工業化を 促進する条件を備えなかった東アジア諸国と、ヨーロッパ諸国間のような比較優位の分業構 造を形成することができず、全ての産業分野をとりあえず保有する産業展開が不可避であっ た、と説明している。1 7 1
要である。例えば、国債を発行して公共政策を行う、「定額給付金」により消費 を促すなどの政策によって国内で生じる生産誘発効果は、効果を国外に逃さな いフルセット型の産業構造よりも少なくなっているはずである
4
。そこで、輸入 の詳細な構造が把握できるよう、日本の基本分類の非競争輸入型の産業連関表 を使い、国内で生じる生産誘発を数量的に把握する分析を行う。分析手法には、本稿で定義する「国内残存率」を用いる。国内残存率とは、
「ある最終財の需要によって生じ、ある生産部門が受ける生産誘発効果の内、
国内に残る率」のことである。
なお本稿は、分析手法と今後の研究の方向性を示すため、主要な研究結果の 説明を行うことを目的とする。そのため、主に基本表を独自に統合した
3 1
部門 表を用いる。また研究では 1990年~2005年までの期間を対象としているが、今 回の分析例では、日本の5 9 9 1
年、2 0 0 0
年、2 0 0 5
年の三時点のIO 表を用いる。2 .
前提2 - 1
.
日本の貿易額の変化初めに、日本の貿易構造を把握するため、国民経済計算と産業連関表(以下、
IO
表)の貿易額の変化を説明する。まず、国民経済計算の0 9 9 1
年から0 7 2 0
年の 日本の貿易額の変化を示す。図1
は、貿易額を折れ線グラフにしたものである。図
1
からは、0 2 0 0
年以前は、短期的には値が増減していても、長期的には変 化していないのに対し、0 0 0 2
年以降は、輸出額、輸入額が共に増加傾向にある ことが分かる 5。また、純輸出額の「国内需要」との比を求めると、 1992年~1994 年は 4%程度で推移しているが、 1995年以降は0.7~2.5% の間を推移している匁4
定額給付金は、「景気後退下での住民の不安に対処するため、住民への生活支援を行うこと を目的とし、あわせて、住民に広く給付することにより、地域の経済対策に資するもの」(総 務省)として、9 0 0 2
年5
月8 2
日より給付された。5
図1
では、本稿で用いた名目の産業連関表に合わせて、名目額のデータを用いている。同じ グラフを実質額のデータで作成したところ、額は基本的に輸出の方が多いが、1 0 0 2
年以前に は輸出と輸入の値がほぽ同額の年0 9 9 1 (
年、5 9 9 1
年)もあり、また6 9 9 1
年のように輸入の 方が多い年もあった。また、 1995~2005 年の間に輸出は約 1.8 倍、輸入は約 1.5 倍に増加し ているように、その差は拡大している。6 GDP
(国内総生産)比を使うのが一般的な方法であるが、本稿の内容に合わせ、IO
表の「国 内最終需要」にあたる「国内需要」を用いた。図 1. 貿易額の変化(名目、暦年、単位
0 1
億円)1 0 0 , 0 0 0 9 0 , 0 0 0 8 0 , 0 0 0 7 0 , 0 0 0 6 0 , 0 0 0 5 0 , 0 0 0 4 0 , 0 0 0 3 0 , 0 0 0 2 0 , 0 0 0 1 0 , 0 0 0
゜
`.......................
.
.
u o o z
9 0 0 Z
s o o z
文
OON
E O O Z
N O O N
t o o z
O O O N
6 6 6 !
0 0
6 6 !
L 6 6 t
9 6 6 !
S 6 6 t
v 6 6 t
E 6 6 !
N 6 6 t
t 6 6 t
0 6 6 !
経済社会総合研究所国民経済計算部
) 0 9 2 0 (
のデータより筆者作成(
h t t p : / / w w w . e s r i . c a o . g o . j p / j p / s n a / h l 9 - k a k u / 2 l a n n u a l - r e p o r t - j 2 . h t m l )
次に、
9 9 5 1
、2000 、2005
年のIO 表(基本表)の貿易額と国内最終需要の変化 を見てみる。表 1 はIO 表から取り出した各値と、それらの値から輸出と輸入の 国内最終需要比を求めたものである。表
1
IO 表(基本表、名目)の貿易額の変化(単位:0 1
億円)基本表の額 国内最終需要比
輸出 輸 入 純輸出 国内最終需要 輸出 輸入 純輸出
1
9 9
5
年1 9 . 0 8 6 , 4 6 3 . 7 2 3 , 4 4 . 5 0 8 , 3 . 5 0 1 6 2 , 0 5 9.3% 8.7% 0.6%
2000
年. 7 6 4 8 , 5 7 2 . 6 1 1 4 , 5 . 5 5 2 3 , 3 . 4 6 1 5 6 , 1 5 ll.1% 10.5% 0.6%
2005
年. 7 8 7 6 , 7 3 . 1 3 8 , 4 2 7 5 . 5 8 2 , 1 5 . 8 8 , 5 4 5 0 14.6% 14.4% 0.3%
表
1
を見ると、国内最終需要の値は大して変化していないのに対し、輸出、輸入は共に増加していることが分かる。その結果、輸出、輸入どちらの値も
1 9 9 5
年から2005
年のO I
年間で国内最終需要の約9 %
から約15%
に増加し、純輸出は1 7 3 国内最終需要の 1% 未満で推移している。
これら図表から 1 9 5 9 年以降、貿易額は増加しているものの、純輸出額は国内 需要 O I ( 表の国内最終需要)に比べ、国民経済計算で 2% 以下、 I O 表で 1% 以 下の小さな値で推移していることが分かる。
2 - 2
.
生産誘発効果の流れの変化次に、本稿が研究目的としている、生産誘発効果の流れについて例を使って 説明する。本稿では、消費者(最終需要部門)が車を購入することから、車を 製造するために部品を、部品を加工するために材料を、材料を精製するために 資源を、という流れで生産誘発が発生するという例を用いる。
その例で、「昔」つまり 1 9 9 0 年以前の「フルセット型」の産業構造と、「近年」
のように最終財、加工度の高い中間財の輸入が増えた産業構造における生産誘 発効果の流れを示したものが、図 2である。
図 2 生産誘発効果の流れの違い
最終財! 中間財
昔闘[→車→部品→材料→資源
- - - - -
-
旦 車 : 部 品、
材 料 資 源、~
近 -
-『:見_+_應邑全租料→資源
年
外 国 4 、 、 、~~ 、 L- - --
車 : 部 品 材 料 資 源•
一―----まず、図 2上部の「昔」のように、「フルセット型」の産業構造が成立して いた頃の日本は、地理的な理由などから資源など第一次産業の生産が乏しく、
輸入に依存せざるを得なかったのを除き、すべての産業分野を一定レベルで一
国内に抱え込んでいたため、生産誘発効果の多くは、資源の輸入によって流出
するまで、国内に長い間留まっていた。
これに対し、近年の輸入構造を示したものが、図
2
下部である。図2
下部の「近年」の太い点線内は近年、輸入が増加したと考えられる個所を示している。
つまり、最終財や加工度の高い中間財のように、以前は輸入が少なかった部分 の輸入が増加したことを示している。
このような場合、生産誘発額は次のように変化するはずである。まず、図
1
で示したように、輸入額が図 2 下部のように増加する一方、輸出額も増加して いる。そのため、純輸出額はそれほど変化しておらず、競争輸入型のIO 表と一 般的な生産誘発額の計算結果も大きく変化しないと考えられる。しかし、最終財、加工度の高い中間財の輸入が増加していれば、資源などの 輸入よりも早い段階で生産誘発効果が外国に流出するため、その流出量も大き くなると考えられる。これに対し、競争輸入型のIO 表では、輸入額は列ベクト ルで計上され、それを使って求めた一般的な生産誘発額では、負の値を取る輸 入によって抑え込まれる生産誘発効果として計算される。これにより、生産誘 発のどの行程で流出するかは計算されず、生産工程の中頃で抜けるかのように 計算される。つまり、「昔」のようにフルセット型の時期の輸入による効果の流 出は過大に、「近年」のように最終財や加工度の高い中間財の輸入の増加による 効果の流出は過小に求められることになるはずである。
2 - 3
.
二種類のO I
表を使った生産誘発分析これらの考えに基づき、輸出と輸入の生産誘発額の計算を行うことにする。
そのため、本稿では競争輸入型産業連関表(以下、「競争輸入型」)、非競争輸入 型産業連関表(以下、「非競争輸入型」)の両方を用いて、二種類の生産誘発額 を求めてみる¥
第一の方法は、「競争輸入型」を使った一般的なものである。つまり、輸入 をマイナスの最終需要として扱い、輸入の生産誘発を負の効果として計算する。
第二の方法は、「競争輸入型」と「非競争輸入型」の両方を用いるものであ る。計算方法は、まず「非競争輸入型」から最終需要で輸入される額を取り出
7
非競争輸入型IO
表を使った生産誘発効果の計算方法は、Appendix
を参照。175
す。これを直接の生産誘発効果とする。次に、「競争輸入型」を使って輸入がな ければ生じる間接の生産誘発額を求め、「非競争輸入型」から求められる間接の 生産誘発額との差を取る。これを生産工程で輸入によって流出する、間接の生 産誘発効果とする。この直接と間接の効果の和を、輸入によって国外に流出し た生産誘発効果として扱う。
その計算結果をまとめたものが、表 2 である。
表 2 輸出入の生産誘発額の国内最終需要比 競争輸入型
IO
表 非競争輸入型IO
表 輸出 輸入 純輸出 輸出 輸入 純輸出1
9 9
5
年11.9% - 1 0 . 1 % 1.8% 12.0% - 1 1 . 5 % 0.5%
2000
年14.7% - 1 2 . 7 % 2.0% 14.8% - 1 4 . 5 % 0.3%
2005
年19.9% 8 . 2 % - 1 1.7% 19.9% -21.5% - 1 . 6 %
注:国内最終需要による生産誘発額を
100%
とし、輸出入の比率を求めた。表 2 の二つの輸出の値には、大きな違いは見られない。一方、二つの輸入の 値は
1995
年には同程度であったのに、2005
年には「非競争輸入型」の輸入の効 果の方が3% 以上大きくなっている。その結果、「競争輸入型」の純輸出の値に 大きな変化はないのに対し、「非競争輸入型」の純輸出の値は減少し、2005
年に はマイナスに転じている。これらの結果から、1995
年から2005
年にかけて、「競 争輸入型」では把握できない変化が、日本の貿易に生じたことが分かる。2 - 4
.
輸入構造の変化次に、この時期に生じた輸入の変化をまとめてみる。前述したように、
1990
年以降、フルセット型の産業構造が崩れ、日本はかつて、資源や農産物のような、加工度の低い中間財が輸入の中心であったのに対し、近年は最終財や加工 度の高い中間財なども輸入するようになっている。
次に、二つのIO 表の性質の違いを確認する。「競争輸入型」は中間需要と最 終需要の国産財と輸入財を区別せず、マイナスの値を取る輸入部門を設け、収 支を合わせている。これに対し、「非競争輸入型」は各中間投入、各最終需要の
国産財と輸入財を区別し、詳細に記したものである。
これらのことから、
1990
年以降の輸入の質の変化は、「競争輸入型」では捉 えることができないものになったことから、表 2 のような結果の違いをもたら したものと考えられる。この変化を実際のデータで確認するため、「非競争輸入 型」を使い、中間需要、在庫を除いた国内最終需要、それぞれの財別の国産率 を求めた。その内、輸出入の少ない第三次産業を除いてまとめたものが、表 3 である。表
3
非競争輸入型IO
表の国産率の変化(第三次産業を除く)中間需要 国内最終需要(在庫を除く)
1 9 9
5
年2000
年2005
年 差- 0 5 9 5 1 9 9 5
年2000
年2005
年 差0 5 9 5 -
農
84.9% 84.7% 82.6% 3 % - 2 . 91.6% 91.5% 90.7% - 1 . 0 %
資源
22.1% 13.6% 5.9% - 1 6 . 2 %
飲食関連
80.4% 81.6% 77.5% - 2 . 8 % 92.7% 91.8% 90.4% -2.2%
綿孫佳
88.6% 88.6% 85.2% 4 % - 3 . 72.4% 53.5% 25.2% -47.2%
紙、木製品
93.0% 92.6% 91.2% - 1 . 9 % 91.7% 83.1% 67.3% - 2 4 . 4 %
化学
92.3% 90.2% 86.3% - 6 . 1 % 90.8% 88.7% 87.7% -3.0%
皮 革
83.7% 82.8% 84.7% 1.0% 55.2% 43.0% 25.9% - 2 9 . 3 %
窯業
97.1% 95.7% 92.9% - 4 . 2 % 87.2% 84.3% 75.4% 8 % - 1 1 .
金属
93.0% 91.9% 90.1% - 2 . 9 %
電気機器
91.8% 87.1% 82.8% - 9 . 0 % 91.3% 84.4% 76.8% - 1 4 . 5 %
乗 物
98.3% 96.9% 94.6% - 3 . 7 % 90.0% 89.3% 89.4% - 0 . 5 %
その他
89.9% 85.6% 78.6% 3 % - 1 1 . 71.7% 69.5% 61.9% -9.8%
産業全体
93.7% 92.4% 89.6% - 4 . 1 % 96.7% 96.0% 95.3% -1.4%
注
1 :
「差90 5 5 -
」は、5 1 9 9
年と2005
年の値の差分である。注 2 : 灰色は、最終財ではないなどのため、計算結果が意味を成さないことから、値を取 り除いたことを示す。
注
3 :
部門は、基本分類の非競争輸入IO 表の第一次、第二次の産業を、1 2
部門にまとめた ものである。第三次産業は、輸入の比率が少ないため、省略してある。1 7 7
表3
の1995 年の値を見ると、「資源」を除く中間需要の国産率は 8 割以上、「皮 革」を除く国内最終需要は 7 割以上と、当時は値が高かったことが分かる。こ れに対し、「差95 5 - 0
」の値を見ると、1 9 9 5
年から2005
年のIO
年間に、中間需要、最終需要の国産率が共に減少している。特に、最終需要の国産率の減少が大き く、「繊維」は50% 近く、「紙、木製品」と「皮革」は20% 以上減少している。
また、国産率が減少している部門の中には、「電気機器」のように高度な技術が 必要で、日本が他国に対して比較優位であると考えられる産業も含まれている。
これらの変化をまとめると、
1 9 9 5
年から2005
年の日本に、最終需要や加工度 の高い財の輸入が増加したことになる。このことから、生産誘発効果が早い段 階から国外に流出する度合いが強くなったと考えられる。しかし既に説明した ように、国民経済計算や競争輸入型のIO 表では、このような変化を捉えること はできないため、「非競争輸入型」を使った分析が必要になる。2 - 5
.
先行研究次に、非競争輸入型のIO 表を使った分析を行うにあたり、本稿が用いる分折 手法の先行研究を確認しておく。
本稿が用いる分析手法の一つが、「三角化
) n o i t a l u g n a i r T (
」である。三角化は、IO
表を使って産業構造の結びつきとその法則性を見つけるため、生産部門を再 配置して産業連関のパターンを見つける方法である[三角化の先行研究には、L e o n t i e f ( 1 9 6 3
)
で使われ、物理的性質でグループ化したSimpsonand u i s u k T 5 ) 6 1 9 (
、 日本のIO 表を使って結びつきの系統を分類した尾崎、石田0 ) 9 7 1 (
がある叉また、これらの研究では、
IO
表を二次元のグラフで表現する手法が用いられ ている。グラフの表現方法に工夫を凝らした先行研究には、値の大きさを四角 で表したLe f t i o n e ) 6 3 1 9 (
、三次元グラフで表した富川7 ) 9 9 ( 1
、黒色の濃淡で表8
三角化の先行研究をまとめたものに、富川) 7 9 9 1 ( 2 1 8 - . 1 p
がある。またプログラムを使っ た、部門の再配列を行う研究が福井) 7 8 9 1 (
などでされている。, L i t n o e e
f ) 3 6 9 1 ( 8 1 6 6 6 - . 1 p
では、三角化の研究の成果として、生産誘発の流れには序列性と 循環性があり、また部門間にプロック独立性と依存性があると説明している。また鳥居) 4 9 9 1 (
は、先行研究を踏まえ、産業構造とは「 1. 組み合わせ」、「. 2
構成」、「3 .
連関構造」の 三つであると定義している。した横倉
(1999)
がある叫これらの分析に共通するのは、「競争輸入型」を使い、貿易の影響を分析に 組み込んでいないことである。その理由として、
f e i t n o e L ) 3 6 9 1 (
の言う「完成 された体系」、つまり「完成した一国の経済は自給率が高い水準で安定し、他国 に頼らない自立した体系になる」という、いわゆる「レオンチェフの命題」を 前提にしていたことがあげられる。つまり、輸入が生産誘発に与える影響は小さく、産業構造を見るうえで無視できるのものと扱っていたと考えられる。
確かに、これらの先行研究の分析対象である、当時の米国、欧州、日本では、
地理的な条件などから限界があったものの、「完成された体系」がある程度成立 していたと言える。しかし、これまでに示してきたとおり、近年の日本では「競 争輸入型」では捉えられない輸入構造の変化が生じ、以前よりも「完成された 体系」から遠ざかっているといえる状態になっている。そのため、近年の日本 の構造変化を見ることができるよう、分析手法の改良が必要になる。
3
.
計算方法3 - 1
.
「国内残存率」の定義そこで本稿では、「国内残存率」を定義し、分析に用いる。「国内残存率」と は、ある最終財の需要によって生じる、ある生産部門の生産誘発の内、国内に 残る率を示す行列のことである。この行列は、最終需要プラス生産部門の
+ l n
行、最終財n
列のn + l
行Xn
列部門であり、最終需要部門が購入したj
部門の財 が、i
部門の生産部門に与える生産誘発効果の内、国内に残る比率を表したも のである。なお、本稿では二種類の残存率を計算する。第一に、中間財の輸入による「生 産工程」の生産誘発効果の流出を見るための計算を行う。つまり、この計算で は最終需要部門の輸入を扱わず、国産財の最終需要が一単位ある、という前提 で値を計算する。第二に、最終需要での輸入を含めた「全行程」の生産誘発効 果の流出を見るための計算を行う。
これらの値の意味の違いを、図
2
と同じ例を用いて説明してみる。図2
が示1
0
それぞれ、i s u k u o n & T i m p s S ) 5 6 9 1 ( 5 3 4 . p
、尾崎、石田) 0 7 9 1 ( 8 2 . p
、f e i t n o e L ) 3 6 9 1 ( 0 7 . 1 p
-171
、富川) 7 9 9 1 ( p.27-31
、横倉) 9 9 9 1 ( 7 6 2 . p
。1 7 9
す状況で、資源を除く国産財の購入率は一律80%
であるとする。その状況で生じる「生産工程」、「全行程」の「国内残存率」の比率を示したのが、図 3 、図 4である。
図 3 輸入による「生産工程」の 国内残存率の変化
図4 輸入による「全行程」(最終財 消費を含む)の国内残存率の変化
図
3
、図4
にある比率は、車(最終財)がそれぞれの生産部門に与える生産 誘発効果の国内残存率になる。これらの値のように、生産工程をさかのぼるほ ど、国内に残る生産誘発効果は、等比数列的に小さくなる。これを最終財別、生産部門別の行列として求める計算を行う。
「国内残存率」は、式
1
、式2
の行列を「競争輸入型」、「非競争輸入型」で それぞれ求め、行列のj i
部門ごとに、「非競争輸入型」の値を「競争輸入型」の値で割って求める。
・「生産工程」
D : = ( : : : : 二 『 J = ( ,~::J-(~ ~J
(1)・「全行程」
D f . , = . d , ( d , f , d 八 . , d ( , , f . _ d ( J 0 (2)
f
, d
凸. , d
凸J 0 , f
aは中間投入係数、
l f
ま最終需要、d
は間接の波及効果(レオンチェフ逆行列と 単位行列の差)を表す。一般的な生産誘発額の行列は、横に生産を誘発した最終需要部門、縦に生産 誘発を受ける生産部門が並ぶ縦長の行列になる。これに対し式 2 の行列は、横 に生産誘発を与える最終財n部門、縦に生産誘発を受ける生産部門n部門が並ぶ、
nXn の正方行列になる。また本稿では、式 2 の
f
に、在庫を除いた国内最終需 要を用いる。3 - 2
.
「生産工程」と「全行程」の国内残存率次に、最終需要が輸入する効果を扱わない、「生産工程」の国内残存率の計 算方法を示す。「生産工程」、つまり「一単位当たりの最終需要がもたらす波及 効果」の国内残存率は、最終需要部門が購入した
j
列の財が、i
行の生産部門 に与える間接の波及効果の内、国内に残る比率を示しており、式1
の結果を用 い、式 3 を使って求める。dNC
I
I
dNC1
' ' '
2
di~di~
dNC
1 2
"
d
互 dNC22
de 22
(3)
上付き添え字の
C
は競争輸入型の値、NC
は非競争輸入型の国産の値を用いて いることを表す。式 3 より、生産工程の国内残存率とは、輸入をしない場合(「競争輸入型」
で計算)に発生する一単位あたりの最終需要から発生する波及効果を
100%
と置 いた時の、輸入をする場合(「非競争輸入型」で計算)に発生する波及効果の比 率を意味することになる。次に、最終需要が
1
単位あっても、輸入財の購入によって生産誘発が国内に 向かわなくなる効果を含めて計算する、「全行程」の国内残存率の計算方法を示 す。まず、最終需要で輸入がされるため、j 財の最終需要が
1
単位あるとしても、国内産業にもたらす直接の効果は
1
ではなく、次の式4
から求まる値になる。(
『 『 J
(4)次に、式 4 で求めた最終需要の輸入の効果を組み込む計算を行う。
計算は、「非競争輸入型」で求めた間接の波及効果に最終需要、つまり直接 の段階で抜ける輸入の効果をかけて行う。そのため、一単位の
j
財の最終需要1 8 1
N C
が、
i
財の国内の生産部門にもたらす生産誘発効果は、式 5 のようになる。dNC f
i
j j X ;
c
(5)これを、「競争輸入型」を使って求めた
j i
部門の間接の波及効果 d{ で割る と、式 6 の「全行程」の国内残存率が求まる"。[d;cx 『 + J 硲 = 『 Jee
I )
(6) 式
6
は、式2
の計算を「競争輸入型」、「非競争輸入型」でそれぞれ行い、各 り部門で、「非競争輸入型」の値を「競争輸入型」の値で割って比率を求めるのと、同じ計算をしていることを表している。
この式
4
と式6
の計算結果を縦に並べたものが、表4
の「全行程」の国内残 存率の行列になる児表 4 「全行程」の国内残存率の行列 最終需要 最終需要
第 財 第 財
直接 最終需要
I 1
N C N 2 ! C J
;
c c 2 f
生産、第一部門
d
岱C N ; J 2 N 1 d C ! N 2 C
間接
d I I
e I J c ー d 2
で1 c ; J
生産、第二部門
d 2 N
1 C J N ; C N 2 2 d ! C N 2 C d;
介ー d 2
で2 c z 1
注
1 :
表の灰色の部分は、最終需要で生じた直接の生産誘発効果を表す。なお、計算にあたり生産部門の並び替えも行っている。並べ替えは三角化の 方法を参考にしているが、生産誘発分析であることから、最終需要(衣、食、
"「競争輸入型」を使って式
5
の計算を行うと、f
の分数の計算結果が1
になるため、式3
と 同じ結果が求まる。1
2
「生産工程」の国内残存率を、表 4 の「全行程」の国内残存率と比較する場合は、式 3 の上 に、全ての値が1
の行ベクトルを乗せ、n + l
行、n
列にする。住、他生活用品)を頂点とし、生産(化学、金属、加工機械、他工業、資源)、
社会基盤など(移動、インフラ等、情報、他サービス)のグループに分け、グ ループ内は生産工程の早い順に、下から並べていく方法を採っている凡
3 - 3
.
表現方法次に、表 4 の行列をグラフ化する方法を説明する。輸入が生産誘発効果に与 える影響を見るためには、先行研究が用いた方法を、より値の違いを把握しや すく、たとえ部門数が多くても値が把握できるように改良する必要がある。つ まり、マクロとミクロの相対する二つの視点からの分析が、より容易になる方 法が必要である。
そこで本稿では、横倉
9 ) 9 9 ( 1
の濃淡を使った表現方法と、理工系の研究で 用いられているサーモグラフィーの表現を組み合わせたものを利用する4 1
。サ ーモグラフィーは、温度や圧力などのエネルギーや効果) t c e f f e (
を相対的に表 現する手段であり、これを産業にもたらされる生産誘発効果d u c e m e n t ( i n ) t c e f f e
の国内残存率に用いれば、輸入の増加によって、国内のどの最終財から発生し た生産誘発効果が、どの生産工程で国外に流出したのかを示すことができる巴4
.
分析結果4 - 1
.
ヒストグラムを使った国内残存率の分析まず、中間投入係数行列から、中間投入
j i
部門の各国産財投入率を求め、分析を行う。図 5 は、中間投入行列から求めた国産財投入率のヒストグラムで ある。用いたのは、時点間の違いを調整し、基本分類のIO 表を386 部門に統合
したものである。また、この分布の性質をまとめたものが表 5 である。
図 5 と表 5 から、中間投入行列の内、 0 ではない値の約 60% が 100% 、つま
1
3
年によって異なる部門の調整や、部門の並び替えは、総務省、他共同編集) 9 9 1 9 (
、同4 ) 0 0 ( 2
、 同) 0 9 2 0 (
を参考に行った、暫定的なものである。1
4
横倉) 9 9 9 ( 1
には、濃淡を使ったグラフを作成するためのプログラムが掲載されている。i
s IO
表をグラフ化する多くの先行研究の表現方法には、印刷の質の影響を受けやすいという 性質があった。つまり、インクや紙の質などによって色合いが変わり、意図せぬ印象を与え てしまうだけでなく、判読が困難になることさえある。それに対し、サーモグラフィーは印 刷の影響を受けにくいという利点がある。1 8 3
り国産財のみ使っていること、約
3 0%
が輸入率10%
未満であることが分かる。つまり、中間投入における輸入は少ないように見える。次に、時点間で比較す ると、「輸入なし」の比率、「国産財投入率」の「合計額」、「算術平均」は全て 減少しているが、それほど大きな変化ではないように見える“。 これ らの こと から 、国産財の投入は確かに減少 している が、生産誘発効果に与える影響は少 ないように考えられる 。
7 0 0 %
6 0 0 %
5 0 . 0
%
4 0 . 0
%
3 0 . 0
%
2 0 0 %
1 0 . 0
%
0 . 0
%
図5 中間投入の国産財投入率のヒストグラム (6 部門)83
回
1 9 9 5
~ 02000
■
2 0 0 5
苔
- _ r , . . .
..-r:r ~I I I I I I
しI I
苔 苔 賛 蓋
§
嘉 忍 萎 塁表 5 中間投入の国産財投入率の分布
合計額 算術 輸入
平均 なし
1 9 9
5 年 7 % 9 3 9 6 2 % 5 9 9 % 2
0 0
0 年 4 % . 2 9 9 % . 5 9 5 9 7 % 2
0 0
5 年 8 9 . 6 % 9 4 0 % 7 5 % 5 注 :「合計値 j は、全中間投入の合計額から求めた投入率 である。 また、「輸入なし」は、図
5の基の度数分布表 で、国産財投入率 1 0 %を取る値が占める割合である 。 0
I
羞
`
り
;
← “
膏← '
' t, ,
_ ) 廷
ベ癖
16 表 5の「合計額」が「算術平均」よりも小さいことから、規模が大きい生産部門の輸入が多
いことが推測できる。
図 6
「生産工程」の国内残存率のヒストグラム6 3 8 ( 部門)
4 . 0 % 3 . 5 % 3 . 0 % 2 . 5 % 2 . 0 % 1 . 5 % 1 . 0 %
0 . 5 % ,
!0 . 0
% . .
;
茎
o 苓 in*o i - . i - . n * i * o N N n * i > ' < o * > ' < n 苓 i 吝 寸 苓 o i 寸 苓 n ' " o ' " n 凌 i 浚 o' °*'°in* o"* i n " * o 0 0 苓 00in* o0 \ * in0 \~ o 0
てーl
図 7
「全行程」の国内残存率のヒストグラム6 3 8 ( 部門)
4 . 0 % 3 . 5 % 3 . 0 % 2 . 5 % 2 . 0 % 1 . 5 % 1 . 0 %
0 . 5 % 0 % . - r I , , .
・ヽヽ.... 一 - . , . _ . : . . _ ···· _ : : '" '~ .
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ぷ’ . . 一 , . . ・ - - 、
苓 U
"
l 苓 O a
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←苓 O N lN " 凌 U
宝M O l " U 苓 M 吝 O ~ ~ U " 》 凌 l U l " " U 凌 O
U)l 吝 "
U)U . . . . 凌 O . . . . l. . "
さU 凌 O c o lc " 凌 U o 凌 a , O * l " a , U * 0
て―0
’ -1
1 8 5 しかし、いわゆるレオンチェフ逆行列が示す、「一単位当たりの最終需要が もたらす波及効果」は中間投入係数、つまり 1 以下の値からなる行列の等比級 数行列であり、図 3、図 4で示したような相乗効果が生じれば値が小さくなる
ものである。そこで次に、最終財の輸入を扱わない、「生産工程」の国内残存率 を示す。
図 6 は、式 3 の「生産工程」の国内残存率の行列の値から、ヒストグラムを 作成したものである見
か 、 1995 年は が 90% 、多 の が国内に ~9 % に して
おり、「生産工程」の生産誘発効果が国内に残りやすい構造をしていたことが分 かる。これに対し、 2 0 5 年はヒストグラムが左に崩れて平坦になり、最頻値も 0 1
9 9
5 年の 9 0 % から 2 0 5 年に 8 0 0 % まで下がってしまっている。
次に、最終需要段階の輸入の効果を含めた、図 7の「全行程」の国内残存率 のヒストグラムを見てみる。
図 7 を図 6 と比較すると、高い値を取る頻度が少なくなっていることが分か
る。また、 0~1% の 0% を ま い が「 程」 も多 、 2005年には最頻値になっている。これらのことは、 1 0 年間で生産誘発効果が国内に 残りにくい産業構造になったことを示している。
4 - 2
. 3 1
部門表の分析例次に、この国内残存率の変化を、生産誘発効果を生じさせる最終財別、受け る産業部門別に示す。
なお、これ以降に示す図 8 、図 9 、図 1 0 は、印刷の都合上、まとめて本稿の 最後に置かれていることをご了承願いたい 1 8
0まずマクロの視点から、産業全体の国内残存率を見てみる。本稿では、分析 手法の説明に重点をおくため、基本分類のI O表を1 3部門に統合したものを用い
"図 5は IO% 区間の棒グラフ、図 6、図 7は 1%区間の線グラフでヒストグラムを作成して いる。これは有効なデータ数の違い、分布の偏りの違い、それぞれのグラフを使った分析の 内容の違いがあることによる。
1
8
図8 - 1 0
は、本来カラーで作成したものである。しかし『経済学季報』には白黒版を掲載 した。図8 - 1 0
のカラー版および本稿のものよりも高精度な印刷が可能な白黒版を掲載したP D F
ファイルは、筆者の研究紹介ページo m . c m e . e b / w / p : t t ( h 保 a / ) e n u d
から入手可能である。る
19
。また分析には、9 5 1 9
年と2005
年の二時点のデータを用いる。図 8 は、最終需要の輸入を扱わない、「生産工程」の国内残存率をグラフ化 したものである。
図
8
の9 5 1 9
年のグラフは、「食(行)」と「資源(行)」の国内残存率が他に 比べて少ない以外、値が高いことを示している。これが2005
年になると、産業 全般の国内残存率が低くなり、特に「衣(列)」、「化学(列)」、「金属(列)」、「情報(列)」の国内残存率の減少が目立っている。
図 9 は、最終需要の輸入を含めた、「全行程」の国内残存率をグラフ化した ものである。
図 9 の「金属(列)」が灰色(白黒版では斜線)なのは、最終需要の値がゼ ロ、または副産物や屑があるため、在庫分を除いても最終需要の値がマイナス になるなどから、想定していた計算ができないことによる。
図
8
と図9
の左側にある、二つの5 9 9 1
年のグラフを比較すると、最終需要 部門が国産を購入する比率が低い「衣(列)」では、国内の産業に与える生産誘 発効果が低くなっていることが確認できる。しかし「衣(列)」以外の部門は、国内自給率が弱い「食(列)」を含め、それほど値が落ちていないことが分かる
20
。また、「化学(列)」は最終需要の値が高いわりには、与える生産誘発が小 さいことが分かる。また図
8
と図9
の右側にある、2005
年のグラフを比較すると、「衣(列)」、「他 工業(列)」の最終需要の国産購入率が低くなり、それが「全行程」の国内残存 率を下げたことが分かる。次に、
5 9 9 1
年と2005
年の比較を行うが、図8
と図9
を比較しても、値が変 化したことは分かっても、変化の程度を読み取るのは難しい。そこで9 5 1 9
年と1
9
基本表を2 - 3
で示した分類に基いて並べなおしたものを、1
グループ1
部門に統合した3 1
部門表を用いる。なお、国内残存率の低下は第一次、第二次産業の生産(縦)で生じており、第三次産業の国内残存率は高いままであることが多い。そのため、製造業を一部門にまとめ た通常の
3 1
部門分類で国内残存率を求めた場合、このような変化は捉えられない。20
本稿が用いる分類では、「食(列)」の中に飲食サービスも含まれる。そのため、この結果は 最終需要部門が国産食料を購入している度合いが強いことを意味しない。また「食(列)」の 値は、食に関する最終需要が他の生産部門に与える影響であり、自給率が低いという問題は、「食(行)」の値が示している。
1 8 7
20 0
5 年の差分を取って、変化(白黒版では負の変化のみ)を示すように色付け したグラフが、図 10 である。
まず、図 IO 左の「生産工程」のグラフを見ると、 1995 年から 2005 年の IO 年の間に、産業全般で「生産工程」の国内残存率が大きく減少したことがわか
る。特に、「化学(列)」、「金属(列)」の値の減少が大きいことが分かる。
次に、図 IO 右の「全行程」のグラフを見ると、「衣(列)」、「他工業(列)」
の最終軍要の国産財購入率が大きく減少した他、多くの最終需要も減少してい ることが分かる。また、「全行程」と「生産工程」のグラフを比較すると、最終 需要部門の国産財購入率が減少したことが、生産誘発効果の「国内残存率」の 減少を大きくしていることが分かる。
その中でも、「住(列)」と「他サービス(列)」の最終需要部門の国産財の 購入は増加している。しかし、これによって生じる「全行程」の国内残存率の 値はプラスに転じず、あるいは減少の度合いが小さくならず、むしろ大きくな っているところもある。その理由は、「生産工程」のグラフが示しており、最終 需要部門が国産財を購入するようになったとしても、その部品に国産の中間財
を使わなくなったことによるものである。
これらのことから、最終需要、中間投入それぞれの国産財の需要率の低下に より、生産誘発効果が国内に残りにくくなったことが確認できる。
5
.
おわりに本稿では、輸入が国内の生産誘発に与える影響を分析する方法を、大まかな 産業分類のIO 表を用いた分析結果と共に紹介した。本稿で用いた分析手法は、
輸入が生産誘発効果に与える影響を見ることを目的に、三角化と生産誘発分析 を組み合わせ、拡張したものである。また、本稿で定義し、用いた国内残存率 は、各最終財の需要によって生じ、各生産部門が受ける生産誘発効果が、どれ だけ国内に残るかを比率で示したものである。また、研究に使った各値をグラ フ化する上で、サーモグラフィーの表現を用いた。
これらの手法を使ったことにより、日本では競争輸入型
I O
表を使った分析で は示すことのできない、 1599 年から2005 年に生じた輸入構造の変化を明示する ことができた。その構造変化が貿易による生産誘発効果の純額を2005 年にマイナスに転じさせたこと、それが最終需要や加工度の高い中間財などの輸入の増 加によるものであるなどの結果は、競争輸入型のIO 表を使った、従来の分析で は示すことができないものである。
最後に、本稿の内容は産業構造の変化を、非競争輸入型の産業連関表を用い て分析するための、手法に関する理論分析が中心である。本格的な実証分析は 今後の課題である。実証分析を行う場合は、少なくとも
1 9 9 0
年のIO 表を加え、1 9 9
0
、19 5 9
、2000
、2005 年の四時点以上で行うことが望ましい。また、本稿で 用いた生産部門の分類や並び替えも暫定的なものである。これらを輸入だけで はなく、産業構造を捉えたより包括的な研究に合うよう調整し、より多部門の 基本表を使った研究を行う必要がある。なお、本稿は輸入に限定した内容であり、日本の貿易の構造を見るためには、
輸出や国内の産業構造の分析も併せて行う必要がある。さらに近年増加してい ると考えられる、日本から中間財を輸出し、その中間財を使って作られた最終 財を輸入する、工場を外国に移し現地生産を行うなど、一国のIO 表では、ある いはIO 表では捉えられない変化も生じている。これらの変化を踏まえた、分析 の拡張が必要となろう。
Appendix. 非競争輸入型産業連関表を使った生産誘発分析
一般的な生産誘発額の計算は、競争輸入型産業連関表(以下、「競争輸入型」)
を使って行う。しかし、「競争輸入型」からは、細かな輸入の構造を把握するこ とができない。つまり、それぞれの生産部門の中間需要や最終需要でどれだけ 輸入したのかは、表されていない。
しかし、本稿で示したように、近年の日本は最終需要の輸入が増加し、より 加工度の高い中間財を輸入するなど、「競争輸入型」では捉えることができない 変化が生じている。そこで、この変化を捉えられるように、非競争輸入型産業 連関表(以下、「非競争輸入型」)を使った生産誘発分析を用いる刈
まず、「競争輸入型」を使った一般的な生産誘発額の計算方法を、「非競争輸 入型」を使った計算と比較しやすくするため、直接と間接の効果を分けた形で
2
1
非競争輸入型IO
表(国際IO
表)を使った生産誘発分析の方法と分析事例については、宇多(
2 0 0 9
)
を参照。1 8 9
示す。
・「競争輸入型」の輸出
・「競争輸入型」の輸入
(:;]=(:)+(:~:n:J l ) ( A
(:;:J=(=::J+(:~. : J : = n l ) ( A
g
は生産誘発額、dは間接の波及効果(レオンチェフ逆行列と単位行列の差)、f
l
ま国内最終需要、e
は輸出、m
は輸入を表す。またC
は競争輸入型I O
表の値を、NC
は非競争輸入型I O
表の国産の値を用いていることを表す。式Al 、式心の右辺第一項の列ベクトルが直接の生産誘発効果、第二項の計算 式によって求まる列ベクトルが間接の生産誘発効果になる。こうして求めた式 Al と式心の和が、「競争輸入型」を使った一般的な生産誘発の純輸出額になる。
次に、「非競争輸入型」を使った生産誘発分析の方法を説明する。まず式
A 3
のように輸出の生産誘発効果は、間接の波及効果の行列D
に「非競争輸入型」の国産の値を用いる以外、「競争輸入型」の式Al と変わらない。
・「非競争輸入型」の輸出
(;;:)=(:)+(~~: ~~:)(::) A 3 ) (
これに対し、輸入による生産誘発効果の国外への流出額は、式
A 4
を使って求 める。・「非競争輸入型」の輸出
~ ~ - ) : : (
; ,
: ] ) : :
+ [(~~ : ~~:I;,:::;:)-(: : : , ;
信n J : J : :
~( ; , : : □ : ( [ } : , ;
:忍:~:)-(:~:i)](;,:: : ) : ( A 4 )
式
A 4 では、まず国内最終需要部門の輸入額を直接の生産誘発効果の流出額と する。次に、生産工程で輸入をしない場合(「競争輸入型」で計算)に生じる間 接の生産誘発額と、輸入する場合(「非競争輸入型」で計算)に生じる間接の生 産誘発額の差分を取り、これを生産工程で、輸入によって流出する間接の生産 誘発効果とする。この直接と間接の効果の和を、輸入によって国外に流出した 生産誘発効果として扱う。これら式心と式
A4の和を、「非競争輸入型」を使っ た生産誘発の純輸出額とする。
参考文献