著者 二本松 泰子
雑誌名 グローバルマネジメント
巻 1
ページ 41‑61
発行年 2019‑07
URL http://doi.org/10.32288/00001266
―鷹和歌の記載を中心に―
グローバルマネジメント学部
おける中世期~近世期の鷹狩りは、もっぱら武士たちに
『慈鎮和尚鷹百首』の本文を紹介しつつ、群書類 る新たな一事例を示すこともできた。
はじめに
わが国における放鷹の歴史は古く、古墳時代にはすでに鷹狩りが普及していたとされる。その長きにわたる伝統において、鷹狩りを実施する主催者や目的は時代ごとに変遷する。たとえば、平安時代においては、野行幸がたびたび催されたほか、正月の大臣家大饗で御鷹飼渡が実施されるなど、天皇や貴族たちが儀礼的な要素行っていた。一方、鎌倉・室町時代以降になると、鷹狩りに従事するのはもっぱら武士となる。彼らの鷹狩りはそれまでの儀礼的なものとは異なり、技芸の一種として発展した。その結果、中世以降における武家流の鷹狩りには、それに伴う文化事象が多彩に発生する。中近世本稿では、このような中近世期に隆盛した武家流の放鷹文化にまつ
てたびたび言及してきた(注1)。その成果を踏まえて、本稿で中近世期の鷹狩りの主流を担った武家の鷹匠の存在に特に注目
㈠ 岡村氏の鷹書―鷹和歌その①―
先述のように、本稿において取り上げる鷹書は、諏訪藩の鷹匠を世治世の頃から幕末に至るまでである(注2)。稿者は、二〇一八年
家に伝わる鷹匠文書(「鷹日記」十冊及び鷹書二冊)を閲覧・調査
稿において報告した(注3)。さらに、それらの鷹匠文書に含まれ る二冊の鷹書のうち、より文芸的な言説を多く記載する方のテキストを取り上げ、その叙述内容についても検討し、報告した(注4)。本稿においても引き続き同じテキストについても考察を進める。まずは、別稿に挙げた報告と重複するが、当該テキストの書誌を左記に掲出する。
『諏方流鷹書』
(外題)…改装( もともとの冊子の外側に別紙の表紙有り
) 。縦
28・2㌢×横
19・
書」(ウチツケ書き 8㌢。外側の表紙中央に「諏方流鷹 ツケ書き ) 、内表紙中央に「諏方流故竹鷹秘書」(ウチ ) 、一丁表冒頭に「諏方流故竹書」(巻首題
タリトモスカサル人者尚又/一見無用也/岡村氏久敷」。 タリ裏表紙見返しに「右此書鷹之秘書/不可有他見者也但/親子 ニ子兄弟タリトモカタク貸事/無用可致候也岡村氏」、内側の 宮流流常/鷹生」。袋綴。全三十二丁。外側の裏表紙見返しに「親宇都根津 流方流流流ノキ紙見返しに「鷹流/鷹左右/鷹成/鷹匠/鷹翁/鷹諏方下諏□□行平 ) 。外側の表 また、当該書における半葉ごとの行数及び文体の体裁は以下のⅰ~ⅴの項目に分けられる。さらには、そのような書誌的な表記の相違に対応して内容も異なっていることから、下記の項目において、《 》内に該当する叙述内容の概略を示す。
ⅰ 一丁表~八丁表=半葉十行、漢字平仮名交じり文。《鷹説話》ⅱ 八丁裏~十丁表二行目=半葉九行~十一行、漢字平仮名交じり
《鷹の尾の名について、鷹の指の名・毛の名・符の名につい
十丁表三行目~十四丁裏=図解、漢字平仮名交じり文。《鳥柴と
十五丁表~十八丁裏=半葉八行~十行、漢字カタカナ交じり文。
十九丁表~三十丁裏=半葉十行~十三行、漢字平仮名交じり文。
( 『後京極殿鷹三百首』
『慈鎮和尚鷹百首』より引用
) 》
記述が確認できることを先述の報告において指摘した(注
5)。
( 十八丁裏九行目) ~三十丁裏に見える歌の部分について取り上げる。当該部分は、【前半】=十八丁裏
、後半は『慈鎮和尚鷹百首』引用された本文となっているのである。なお、「後京極殿」は九実の次男である摂政藤原良経、「慈鎮和尚」は、同じく九条兼実
る。『後京極殿鷹三百首』については、遠藤和夫( 注6) や山本注7) などによる先行研究があり、当該の鷹和歌集には多数の伝 本が現存していることが報告されている。ここでは、多数ある伝本の中から相対的に早くから知られた群書類従所収本の本文を取り上げ、岡村氏の鷹書に見える当該本文と比較してその特徴を確認する。以下に両書における当該本文の対照表を挙げる。歌順
岡村知能氏所蔵『諏方流鷹書』 歌順 群書類従第十九輯所収『後京極殿鷹三百首』鷹四季のうた 攝政家二百首/ 後京極殿鷹三百首
春 五十種春部五十首 1 立春のあしたの山を諏れは雪間も遠くかへる白鷹/ (
は雪まも遠く出る白鷹 1)立春のあしたの山をなかむれ 2 春草を分入羽風青けれは鷹ともしらすたゝぬ村鳥/ (
ともしらすたゝぬ村鳥 2)春草にわけ入羽色靑けれは鷹 3 なかめやる花の梢にゐる鷹は木の本ふしの鳥や知らん/ (
ん はこのもとふしの鳥やしるら 3)なかめやる花の梢にゐるたか 4 梅かえの羽風もしるく匂ひきて霞 カスミを渡る墅邊の白鷹/ (
て霞をわたる野へのはしたか 4)梅枝のはかせもしるく匂ひき 5 しのふなりもしすり草を分まとひ雲雀狩立墅邊の鶉/ (
か ひ雲雀かりたつのへのはいた 5)信夫なるもちすり草をわけ迷 6 はなれえぬともすり草をはひ鷹の人やりならす分テ入レ/ (
れ の人やりならすわけてこそい 6)離れえぬもちすり草をはい鷹 7
雉子鳴涙のつゝ (ママ)らゝ解そめて(
7)雉子なく涙のつらゝ解そめて
山路も遠く出るハ ハし シ鷹/山路をとをく出るはし鷹 8
岡のへにひとりはなれてとふ鷹のたけき心の春にそ/ありけり/ (
のたけき心の春にそ有ける 8)岡のへにひとり放れて飛たか 9
けふ睦 ム月なかはになれは荒鷹の山飛越て古巣にそ/いる/ (
鷹の山飛こえて古すにそいる 9)けふむ月なかはになれはあら 10 菫咲墅にハ雉子の又鳴て鷹の餌聲を恨こ こそ そすれ/ (
て鷹のゑこえを恨こそすれ 10)すみれさく野には雉子の朝鳴 11 とても身のかるましきを鳴雉子の鷹入山に草隠して/ (
し く雉子の鷹飛山の草のかけふ 11)とてもまたのかれましきとな 12 胴氣ある鷹の心の知たくハ鏡に息をかすませて見よ/ (
は鏡に息を霞ませてみよ 12)とうけある鷹の心をしりたく 13 霞む墅に深く入さの鳥あらは鷹より早く犬をやるへし/ (
らは鷹より早く犬をやるへし 13)かすむ野にふかく入さの鳥あ 14
鼻氣ある鷹とおもはし下落の葉の草の匂ひきかせよ/
15
けふことに山とひ越て箸鷹のかすむ末墅に日数をも/ふる/ (
かの霞む末野に日數をそふる 14)けふことに山飛こえてはした 16
羽競 クラヘの鷹の心のたけきをハいかなる鳥の恨はつらん/ (
はいかなる鳥の恨はつらん 15)羽くらへの鷹の心のたけきを 17 下萌の田 タつ ツらの草を摘持て虫さす鷹の羽をや洗ハむ/ (
ん ちてむしさす鷹の羽をや洗は 16)下もえの田つらの草をつみも 18 霞して野山を分てはし鷹のいかなる梢尋ゆくらん/ (
いかなる梢たつね行らん 17)霞しく野山をわけてはし鷹の 19
とをにみつあまるをほめよ箸(
18)十に三つあまるをほめよ箸鷹 鷹の尾の上霞む夕暮の山/の尾上にかすむ夕くれの山
20
さきつゝくやまふき色にはし鷹のなるもふかわる習とをし/れ (
れ なるもふかはるならひとをし 19)咲つゝく山吹色にはしたかの 21 つゝし咲岩本すけのかり暮しつかるゝ鷹の帰るさの山/ (
しつかるゝ鳥のかへるさの山 20)つゝし咲岩もと小菅かりくら 22 箸鷹の霞のうちに声たてゝいかなる鳥のゆかけ/みる覽/ (
なる鳥のゆかけみるらん 21)箸鷹の霞の中に聲たてゝいか 23
手はなちの鷹の心を春かけてまけかち覚えよくや/つかはん/ (
ん まけかちおほえよくやつかは 22)たはなしの鷹の心を春かけて 24 さ衣の上も静にかすむ日はすゑこそ出れ墅邊の箸鷹/ (
はすへこそ出れ野へのはし鷹 23)小衣の上毛しつかにかすむ日 25 箸鷹のなら尾なら柴霞む日も身を置かねて雉子鳴也/ (
日はみを置かねて雉子鳴也 24)箸鷹のならをならし羽かすむ 26 山水の霞むなかれとる落ていかなる空に鷹の飛らむ/ (
いかなる空に鷹のとふらん 25)山水のかすむ流にかけおちて 27 鷹の飛夕山からす巣を出てわらふ心もうきをやハ/しる/ (
わらふ心やうきをしるらん 26)鷹の飛ゆふ山からす巣を出て 28 茜 アカネさす春の日影の靜けきに雲より上を鷹のとふる/ (
きに雲より上を鷹の飛聲 27)あかねさす春の日かけの靜け 29
とふ鷹の羽風もよハくかすみきて墅への一木の立もはな/れす/ (
て野への一木を立もはなれす 28)とふ鷹のはかせによはく霞き 30
身のしゝのつまるとみえは箸鷹にやき白灰の湯をそゝ/くへし/ (
( へし 鷹のやきしら灰のゆをそゝく 29)身のしゝのつまるとみえは箸
30)箸鷹のよゐの毛なみの霞こそ
ないしよ有へきならひ也けり霞して山路に鳥のふすならは先鷹犬の手縄放せよ/ (
/ に又くりかへし墅にも出ぬる 引とむる鷹のせき緒の永き日( 先鷹犬の手綱ゆるせよ 31)霞しく山路に烏のふすならは に猶くりかへし野にそ出ぬる 32)引とむる鷹のせきをの永き日
ゆ (ママ)なし毛のかひなからんや箸鷹の霞める墅へを飛そ/兼たる/ (
/ のはる墅にあさく人の出たる 箸鷹の身よりも見えすふか雪( る 鷹の霞のゝへをとひそかねた 33)ゆるし毛のかいなきからに箸 雪ふるにも野にそ人の出たる 34)箸たかのみよりもみえす春の 降雪に春の鵐 (朱)シトゝを狩暮しおとろ柏に鷹やぬからむ/ (
の雲より高き梢にや飛/ 長閑なる日を比そとてはし鷹( らしおとろか下に鷹や入らん 35)ふる雪に春のしとゝをかりく
( の雲より高き梢にやとふ 36)長閑なる日をならふとて箸鷹
( 梢にひとりゐたるはしたか 37)春雨にぬるゝ翅をほしかねて
( 鳥なやます箸鷹の聲 38)下もえの草のは山に分入て小
( あまた小鳥の忍ひ音になく 39)鷹かける苗代垣のかけよりも 袖にすへるはし鷹/ 霞して夕の空のとまり山明行( のにたかいとふらん 40)哀にも小鳥村鳥聲々に春の末
村雨の跡に一むら霞落てかす( ムラサメ 袖にすゆるはしたか 41)霞しく夕の雲のとまり山明行
42)村雨に跡の一村露置てかすむ む上尾やおもきはし/鷹/尾上やおもき箸鷹
39 入相の鐘母 (朱)ものとかに聞ゆれはかへさに成ぬ野邊の鷹飼/ (
へさにそなる野邊の鷹飼 43)入相の鐘も長閑に聞ゆれはか 40
つみとかもあらしとそ思ふ箸鷹をかすめる墅へに居出す/こゑ/ (
は 箸鷹をかすめる野へに居る心 44)つみにしもあらしとそおもふ 41
はとひなき鷹のたもとを立はなれ雲雀や空に舞あかる/らん/ (
ひはりや空に舞あかるらん 45)羽とひなき鷹の袂を立のかれ 42
早 サハ蕨 ラヒの手をあくるまにそれ行か山忘せぬあら鷹そかし/ (
し れ行は山わすれせぬ新鷹そか 46)さわらひの手をあくるまにそ 43 とりわたす桃の盃めくるまにそれ引鷹に置ゑ見せなん/ (
にそれ行鷹はをきゑみせなむ 47)とりわたすもゝの盃めくるま 44 下水にうつろふ影も霞けり高き梢のはし鷹のこゑ/ (
き梢のはしたかのこゑ 48)下水にうつろふ影も霞けり高 45 浪の上に誰かはし鷹を居ぬれは須广の浦けに通ふ鈴舟/ (
らんすまの浦はに聞ゆ鈴舟 49)浪の上に誰はしたかをすへぬ 46 たつ春の名残も見ゑて箸鷹の飛るよハく林にそいる/ (
夏五十首夏部五十首 飛かけよはく林にそいる 50)たつ春の名殘をみせて箸鷹の 1 行雲に鷹の巣山やかくるらんしらぬ小鳥の麓にそ鳴/ (
らぬ小鳥の麓にそなく 1)行雲に鷹の巣山や出ぬらんし 2 茂 シケる葉の木陰に鷹やかくるらむ嶺に烏のあまた鳴聲/ (
ん峯に烏のあまた鳴聲 2)茂る葉の木陰に鷹やかくるら 3 鳥屋鷹のおとしかねたる毛のあらハまとをにゑかふ習とを (
らはまとをに餌かふ習とをし 3)とや鷹の落しかねたる羽のあ
/しれ/れ 4
とや鷹のたけき心もしられけり毛なから飼るうちゑもそ/する/ (
る けなからかへるうちゑもそあ 4)とや鷹の猛き心もしられけり 5 片毛より鷹の心はしられけりもろけをさまる鳥やの内哉/ (
て りもろ毛おさまるとやの内に 5)かた毛より鷹の心はしられけ 6 鷹のため土餌は毒と思ひしれ毛をまた残す鳥やの内にも/ (
れ毛をまた殘すとやの内にて 6)鷹のために土餌は毒と思ひし 7 箸鷹のたけき心を鳥やの内に飼馴てこそ思ひ知るれ/ (
れ にかひなれてこそ思ひしらる 7)はし鷹のたけき心もとやの内 8 大鷹の心をとやに習ハしてよき餌を求め常にかふへし/ (
よきゑを求めつねにかふへし 8)靑鷹の心をとやにならはして 9
とふ影のよハ〳 く〵見えれは鳥屋鷹の落し兼たる尾の毛/をハしれ/ (
れ は落しかねたる尾の毛とはし 9)飛影のよはくみえなんとや鷹 10
つちゑをハ度 ド々 ドにかさねて鳥屋鷹に飼とも鳥の一たひとしれ/ (
れ にかふとも鳥のひとたひとし 10)土餌をは度をかさねてかふ鷹 11 滋 (朱)シケリりぬる山飛越 コエて箸鷹の夏墅に深く声そきこゆる/ (
の夏野にふかく聲そ聞ゆる 11)しけりたる山飛越てはしたか 12 ねり雲雀また立かねてはひ鷹の草の上行鈴のをとかな/ (
上行鈴の音かな 12)ねり雲雀又立かねて鷂の草の 13 梅の雨に立さはきぬるはしたかは梢のいつく求め行らん/ (
かはいつくの梢もとめ行らん 13)梅の雨に立さはきぬるはした 14 橘の身よりの毛色かはるこそ名の有鷹のしるし也けり/ (
名のある鷹のしるし成けれ 14)橘の身よりの毛色かはるこそ
15
蚊やり火をさしてハふかくいとふへし鷹のとや有磯のとなりに/ (
は へし鷹のとやある賤かとなり 15)蚊遣火をさらても深くいとふ 16
夕顔の花の毛なみをまつ見せて てはやかハりふの架のあら/鷹/ (
毛やかはりなんほこの新鷹 16)夕顔の花の毛なみを先みせて 17
ふかハりの鷹と思はゝ鳥屋の内にかりなる餌をいかふへから/すよ/ (
すや 内に假なるゑをはかふへから 17)ふかはりの鷹と思はゝとやの 18
むまれしハひとつなれ共鷹の子のすもりに残す心しらすや/ (
をすもりに殘す心しらはや 18)生れしは一つなれとも鷹のな 19
甲斐なるを巣守にをけハ鷹の子の羽の上にこそ心しるらめ/ (
め の子を羽のうへに社心しるら 19)かひなきを巣もりにをくは鷹 20
長雨の鷹の巣山にいとひかねかさして守るやかしは松のは/ (
( は てかさしとやゐるかしは松の 20)長雨を鷹のす山にいとひかね
( て昔にかへる羽をやみるらん 21)村鳥のたかのす山にしたしく
( の花うちちらす羽風成けり 22)山出の鷹はことりをなてしこ は慥に鷹の巣山なるらん 23)さはかしく鵜の住梢見えたる 21 ぬれやらて憚 (蝉カ)の時雨の闇き日も鷹ハ梢をわたるなりけり/ (
り るゝ日に鷹は林をわたる成け 24)ぬれやらぬ蝉のしくれのく 22
とや出す鷹の日よりを撰なら(
25)鷹出す鳥屋の日よりをえらひ
は風なきまにそひらきそむへし/ なは風なきとほそ開きそむへし調はぬ毛色を見せは鳥や鷹にぬくちもみちの鳥をかふへし/ (
ぬくちもみちの鳥をかふへし 26)調はぬ毛色を見せは鳥屋鷹に 尾毛ともに調かたきと 鳥や鷹に能ゑを求めつねにかふへし/ (
に大物をたゝ心あるへし/ もろ毛せし此鳥や鷹の手放ち( ハしれ/ よりよハかるへしと尾の毛を とや鷹のさのみへるハし兼て し 鷹によきゑを求め常にかふへ 27)尾毛ともにとゝのひかたき箸 なむ/ ましたゝおのつからつかひ入 鳥や鷹にさのみ犬をはこのむ( ヲ しに大ものをたゝ心有へし 28)もろ毛する此とや鷹の手はな
/ 事くらくかこみし習とをしれ 鷹の人とやけをいたくいとふ( ん まし唯をのつからつかひ入な 29)とやの内にさのみは犬を好む はくらくかこへる習とをしれ 30)鳥屋鷹の人氣をいたく嫌ひな
餌をかふと人に馴ぬるやう うにたゝ此とや鷹の垣うすくせよ/ (
にたゝ此とや鷹の垣薄くせよ 31)ゑをかはゝ人になれぬるやう
かきうすみ風をハいとひ鳥や鷹に寒きハ毛をも落し兼つゝ/ (
さむきは毛をも落しかねつゝ 32)垣薄く風をはいとへとや鷹の
餌を飼てかひなるゝとも鳥や鷹に心ゆかさぬやう ウに有へし/ (
鷹に心ゆるさぬやうに有へし 33)餌をかひて飼なるゝともとや
鳥や鷹の始ハ態もつよからす(
34)鳥屋鷹の始はわさも強からす よ/よ よハからぬやうに習ハせて見よはらぬやうにならはしてみ
33
とや鷹にみよりたなさきかさ切の羽をハとの毛といふへかり/けり/ (
けり の羽をはとの毛といふへかり 36)とや鷹にみよりたなさき風切 34 野をかける鷹の心のたけかれは夏山ふかく鳥の鳴こゑ/ (
は夏山ふかく鳥のなく聲 35)野をかける鷹の心のたけゝれ 35 下涼みかるへき梢鷹のゐて草深き墅に鳥のみるらん/ (
草ふかきのゝ鳥やみるらん 37)下すゝみたかき梢にゐる鷹を 36 山もとの岩もる水の清けれは空行鷹の掛そうつ/れる/ (
行鷹のかけそうつれる 38)山本の岩もる水の淸けれは空 37
夜すゑよりよくならハして鳥や鷹の心あるこそ上手なりけれ/ (
鷹の心しるこそ上手也けれ 39)夜据よりよくならはしてとや 38
うき草の毛ともしらすとや鷹のおち羽をとりてうハ色を/見よ/ (
よ 鷹の落羽をとりてうは色をみ 40)うき草の毛ともしらすは鳥屋 39 うき草の其毛なみをハいひかへて榊の毛とハ神の贄たか/ (
かへて榊のもとは神のあら鷹 50)うき草のその毛なみをはいひ 40
たなさきの手さきの毛より二ツめをなそふといふハ鳥やの箸鷹/ (
し鷹 めをなさしといふはとやのは 41)たなさきの手先の毛より二つ 41
夏山の茂るならしは落しかねは鳩の生餌をすこせ/とや鷹/ (
ははとの生餌をすこせとや鷹 42)夏山の茂るならしは落しかね 42
土餌にハうち毛かひな ナく成なれは鳥のまるゑをすこせとや鷹/ (
鷹 なれは鳥の丸ゑをすこせとや 43)土餌にはしゝもかひなくなる
43
生なから大物入てとやの内に鷹のせいをハつくささらなん/ (
し て鷹のせいをはつくさゝらま 44)生なから大物とやの内へいれ 44
樒つむ法の古寺鷹の居て鳩をこふもや心あるらん/※頭注…( 朱) シキミ (
跡をこふもや心有覽 45)しきみつむ法の古寺鷹のゐて 45
御法毛の鷹の羽かひにあるなれはとやをも寺といふへかりける/ (
ける れはとよらの寺といふへかり 46)御法毛の鷹の羽かひにあるな 46
鳥やにかふ鷹の羽くきのかひなくハ扇の風にまかせてを見よ/ (
よ なくは扇の風にまかせてもみ 47)鳥屋にかふ鷹の羽くきのかひ 47 紅の末つむ花の毛並みさへおとしかねたる夏のとや鷹/ (
( へ落しかねたる夏のとや鷹 48)くれなゐの末摘花のけなみさ 秋五十種/秋部五十首 すへて歸るそ夕暮の山 49)卯花のけなみもしるき箸鷹の
1 一葉より後は梢にゐる鷹の心のまゝにわたる秋やま/ (
のまゝにわたる秋やま 1)一葉より後は梢にゐる鷹の心 2
霧くらき高ねのをちをなかむれハ鷹かけるらんさはく/むら鳥/ (
は鷹かけるらんさはく村鳥 2)霧くらき遠の高根をなかむれ 3
狩くらす鷹より後になく鶉月にねくらをたかへてもみよ/ (
つら月にねくらを尋てもみよ 3)狩くらす鷹よりのちになくう 4 ほの〳〵と露より出るかた鶉鷹にのかれぬ涙なりけり/ (
鷹にのかれぬ泪なるらん 4)ほろ〳〵と露より出るかた鶉 5 唐衣に鷹狩してかへるには露置わたるそてのうへかな/ (
露をきわたす袖の上哉 5)から衣こたか狩して歸るには
6 色かへぬ八千代の秋のしほ鷹の白玉椿習てそぬる/ (
のしら玉椿ならひてそぬる 6)色かへぬ八千代の秋のしほ鷹 7 秋の霜ふるやましろの鷹すへて虫鳴墅邊に分そ入ぬる/ (
へて虫なく野へに分て入哉 7)秋の霜ふるやましろのたかす 8 鈴虫の衣手さむしもろ鶉鷹の羽風をいとひてそ鳴/ (
鷹のはかせをいとひてやなく 8)百結ひ衣手さむみもろうつら 9
はら〳〵と木柴 (葉カ)かつちる山里に夕は鷹のわたるをそ/見る/ (
に夕へは鷹のわたるをやしる 9)はら〳〵と木葉かつちる山里 10
鷹飼の草深き墅に狩暮し猶鈴むしの声を社きけ/ (
猶すゝむしの聲をそふらん 10)鷹飼の草深き野にかりくらし 11 夕されハ野に伏鶉聲たてゝ鷹飼いそく墅人のをち方/ (
たか飼いそく里の遠近 11)夕されは野邊に鶉の聲たえて 12
紫の毛なみも見えぬ朝霧に誰箸鷹を居て出らん/ (
はしたかをすへて出らん 12)紫の毛なみもみえぬ朝霧に誰 13
露そゝく草の花墅に分入て鶉尋る暮のはし鷹/
14 うら枯の車の輪たち草絶て一君か御幸のあとの箸鷹/ (
君か御幸のあとのはし鷹 13)から枯の車のわたり草たえて 15
柳散夕山風のふく時は鷹の心そおもひしらせん/ (
心そおもひしらるゝ 14)柳ちる夕山風の吹ときは鷹の 16 露のほる夕の山のはし鷹ハ袖こ ニそかしはふむ木ともなれ/ (
てこそかしはふむ木ともなれ 15)露のほる夕の山のはし鷹はそ 17 すゝき毛に鷹き ユキかへり帰るらむ上邊見えぬ夕やまのかけ/ (
らん上色みえぬゆふの山陰 16)すゝき毛の鷹いくかへり歸る 18 箸鷹のしつえにしハしかくろひて露にしたしき鶉をそ待ツ (
ひて露にしたしき鶉をそ待 17)箸鷹のしつえにしはしかくろ
/霧 (朱)キリくらき鵙 (朱)モスの草くき墅 それとなく遠き山路を渡る箸鷹/ (
の嶺に羽ならしのかけ/ 来る秋を我物かほに箸鷹の夕( 鷹 なくとをき山路をわたるはし 18)霧くらきもすの草くきそれと よりも麓の野へに渡る箸鷹/ すさましくこもつちこえの嶺( の峯に羽ならしのかけ 19)くる秋を我物かほに箸鷹の夕 や秋の林をくゝるはし鷹/ はし鷹のはふさもはやく色付( そ麓のゝへに渡るはしたか 20)冷しきこもつちこえの峯より
/たつ/ ハわかしめゆひし木いよりそ 露さむきあしたの山の木居鷹( や秋のはやしをくると思へは 21)はしたかのはふさも早く色付 我しめゆひし杜よりそたつ 22)露寒きあしたの山のこゐ鷹は かり金の涙の露やたまるらむ鷹の上毛の打しあるころ/ (
は海こしにたゝ鷹そとふ也/ すさましき山よりをちを詠れ( の上毛のうちしめりぬる 23)飛雁の涙の露やそゝくらん鷹 をハなれついつち行覽/ 狩暮すさほ鹿ならす箸鷹の山( 海つらにたゝ鷹そ飛なる 24)冷しき山より遠をなかむれは
/ る水の露より身をそゝくへし 内所ある鷹と思はゝこつほな( ん 鷹の山をはなれていつち行ら 25)狩くらすさをしかならすはし のかことやかけて頼まん/ ひと夜水一夜の契はし鷹の露( し ほなる水の露にて身を濺くへ 26)ないしよある鷹と思はゝうつ
むはとやの鷹の哀世の中/ 菊の咲山路やよ所にかよふら( の露のかことやかけて頼まん 27)一夜水一よのちきりはしたか 紅葉せし山路を出るはし鷹は( ハ んはとやの鷹の哀世中 28)菊の露山路やよそにかよふら
29)紅葉せし山路を出るはしたか 誰か紅をかけてきつらむ/はから紅をかけてきぬらん
31 蛬鳴夕暮のさひしきに墅山はなれて鷹そとり (ママ)なる/ (
る さに野山はなれて鷹そとふな 30)きり〳〵すなく夕暮のさひし 32 一よつゝ鷹ゐる薗の呉竹を切つくしたる秋の明ほの/ (
を切つくしたる秋の明ほの 31)一夜つゝ鷹ゐるそのゝくれ竹 33
うちつけは犬をまかせにつかふへし秋を朝とのからき墅原に/ (
へし秋の朝氣のくらき野原に 32)うちつけは犬にまかせて遣ふ 34
口こはき馬と思はゝ鷹飼に秋の末野にひかへてもみよ/ (
秋のゝ末をひかせてもみよ 33)口こはき駒とおもはゝ鷹飼に 35 箸鷹の上毛にをける夜の露ハ夢にうつらのなく渡 (涙カ)かな/ (
露は夢にうつらのなく心かな 35)はしたかの上毛にをける夜の 36 色かふる秋の林に鷹の居て人の心をたふらかしけり/ (
人の心をたふらかしつゝ 34)色かはるあきの林にゐる鷹は 37 穐あまたわたりもて行鳥の中にまきれぬ鷹ハ神の告 つけかも/ (
に紛れぬ鷹は神の告かも 36)秋あまたわたりもて行鳥の中 38 箸鷹の秋の水田を渡るこそ鳴村鳥の恨なりけり/ (
しきあしかもの恨なるらめ 37)箸鷹の秋のみつ田を渡るこそ 39 秋かけてとや待鷹の有といへはをきゑの鳩のさそ歎らん/ (
へは置ゑの鳩のさそ歎らん 38)秋かけてとやまつ鷹の有とい 40
秋かけて霜と落葉のほろ〳〵とまかふ折こそ鷹渡る也/
41 誰か植し山のすそ墅ゝさゝれ萩荻吹風に鷹渡るなり/ (
そよ吹風に鷹わたる也 39)誰うへし山の末野のさゝれ萩 42 露なから折つたへたる鳥柴こそ忘 ワスレぬ家の鷹飼の道/ (
はこそ忘れぬ家の鷹飼の道 40)露なからおりつたえたるとし
43 柴 (紫カ)の袖をもゆるせ鷹飼の露の古道せひさと思へは/ (
故郷こひきと思へは 41)紫の袖をもゆるせ鷹飼の露の 44
嵐にハ毛をもふかせし鷹かひの秋の墅遠く出るなり/とも/ (
飼の秋の末野を出るなりとも 42)あらしには毛をもふかせし鷹 45
箸鷹の上毛の露を打拂ひ羽くきのよハき習をそ見る/ (
莖のよはきならひをやする 43)箸鷹の上毛の露を打はらひ羽 46 羽茎たゝよハく成せは箸鷹に虫しろ草の露やそゝかむ/ (
ん 鷹にむししら草の露やそゝか 44)羽くきたゝよはくなりせは箸 47
露霜の林を出るはし鷹は錦を着たる姿にそ似る/ (
着たる姿なりけり 45)露霜の林を出る箸たかは錦を 48 鷹飼のうきを袂に顕して夕ハ露を置そかねたる/ (
夕は露を置そふる哉 46)鷹飼のうきを袂にあらはして 49 徒の咎にやならん箸鷹の狩場の秋の鳥のこゝろは/ (
したかの狩場の秋の鳥の心は 47)いたつらのとかにかならんは 50
紅の山を出てハ箸鷹の秋の心にまかせてそとふ/ (
冬五十種/冬部五十首 まゝにかけりゆくそら 48)紅の山を出ては箸たかの心の 1 神無月ならのは山を飛越てはけしき雲に渡る箸鷹/ (
けしき雲にわたる箸鷹 1)神な月ならのは山を飛越ては 2 浪の雪の散ぬる海に舩出してもろこしよりも渡箸鷹/ (
もろこしよりもわたるはし鷹 2)波の雪に散ぬる海に舟出して 3 みと (そカ)れせし舟の底なるから枕絶せす夢にむすふはし鷹/ (
絶す夢にもむこふはしたか 3)みそれせし船のそこなる梶枕 4 影寒き月に夕のとまり山鷹の上毛にあらしこそふけ/ (
の上毛にあらし吹なり 4)影さむき月に夕のとまり山鷹
5 初雪にみえぬ鳥柴を折ることも君か御幸に馴る鷹飼/ (
も君か御幸になるゝ鷹飼 5)初雪にみえぬとしはを折こと 6
百敷や大宮人の冬野にもすゑ出したる鷹の鈴音/ (
出したる鷹の鈴音 6)もゝ敷や大宮人も冬野には居 7 内はなる鷹の心の床しくは氷のかゝみむかへてもみよ/ (
氷のかゝみむかひてもみよ 7)うちはなる鷹の心の床くしは 8 かし鳥のそふそくするも小鷹なりたゝ大物に好さらめや/ (
大物にこのまさらまし 8)かし鳥の装束するは小鷹也只 9 すゑてたにしられぬ鷹の水鶏とひいか成方に鳥の立覽/ (
とひいかなる方に鳥の有らん 9)居てたにしらぬ小鷹のくゐな 10 箸鷹の雲にかけるを見へる ルか カら ラにぬす立鳥の心かしこき/ (
き からにぬすたつ鳥の心かしこ 15)はしたかの雲にかけるを見る 11 芹河や名のみハ雪にあらハれて鷹飼の来る道そふりたる/ (
て鷹飼のくる道そふりたる 10)芹川や名のみは雪にあらはれ 12
鷹のとるこふしの内のぬくめ鳥こほるつまねの情 ナサケをそ/しる/ (
鳥氷る爪根の情けをそしる 11)鷹のとるこふしの内のぬくめ 13
ほろ〳〵と木葉散くる山にこそ梢はなれて箸鷹のこゑ/ (
こそ梢はなれぬはしたかの聲 12)ほろ〳〵と木葉ちりくる山に 14 水寒き流の鴛をかりたてゝ空行鷹の心たけさよ/ (
空行鷹の心たけさよ 14)水寒き流のをしをかりたちて 15 菊衣かさぬる袖にはし鷹をすふる袂ハ霜そまかへる/ (
るおりこそ霜まよふなれ 13)菊衣かさぬる袖に箸たかの居 16 庭火焼神の御前の贄鷹を居なつけんとさする也 ナリけり/ (
居なつけんもさすか也けり 16)庭火たく神の御前にはし鷹を 17
甲 (星カ)うたふ夜半にすへうる赤鷹(
17)星うたふ夜半に居たるあら鷹
もちハやの袂放しかたし/をちはやの袂みなれえかたししそくさすつゐなの夜半に成ぬれはすふる鷹にて位をそ/しる/ (
ぬれは居る鷹にて位をそしる 18)しそくさすついなの夜半に成
いつゝある位なく かてハふか カハりの鷹をハすへぬ冬の御かり場/ (
たかを居ぬは冬の御狩に 19)五ある位ならてはふかはりの 松竹やこやすり衣重きて寒き墅面せに出る鷹飼/ (
猶早くみえ渡りけり/ 霜枯の遠山すりの箸鷹はかけ( き野もせに出る鷹かひ 20)松竹をこやすり衣重ねきて寒
/ りかへれはことし帰るはし鷹 降つもる山路の雪にいくかへ( なをはやくみえわたる哉 21)霜枯の遠山すりの箸鷹はかけ 歸れはことし渡るはしたか 23)降つもる山路の雪に幾かへり
箸鷹のをきゑなくすハ冬の宿かまへをしつゝ待てやハみん/ (
かまへをしつゝ待てやはみん 22)箸鷹のをきゑならすは冬の宿 箸鷹の心につれて冬枯の墅を分つこそ悲しかり/けれ/ (
思ふ/ 墅に鷹かきすゑて出しとそ/ おほかたの心なりせはさむき( 分る社かなしかりけれ 24)箸鷹の心につれて冬枯の野を か引居て出しとそ思ふ 25)大方の心なりせは冬のゝにた 雪霜にはとやの鷹のつれなきハ山に求る巣もやある/ (
/ はとやの鷹もいかゝさかへむ と これ程に寒き夜比の數をへて( は山にもとむる藥もやある 26)雪霜にはとやの鷹のつれなき はとやの鷹のいかゝさかへん 28)是程に寒きよかりの數をへて
雪積るひらかの鷹の猛きこそ(
27)雪つもる平かの鷹のたけきこ /れ 親のかたきも取へかり/けれそ親のかたきもとるへかりけ
29
冬野なるひらかの鷹の鳩に似ておやのかたきの鷲を/こそ/取レ/ (
ておやのかたきの鷲を社とれ 30)冬野なるひらかの鷹の鳩にゝ 30
とをにみつ餘る尾並の鷹すゑて出るハ位たかき人哉/ (
へて出るは位高き人かな 29)十にみつあまるをなみの鷹す 31 ふちしらふ鷹引すゑて春日墅ゝ雪にもちるや近鈴の音/ (
のゝ雪にもかるや近き鈴音 31)ふちしらふ 32 大君の車の前をとをるにハ雪にも手そへいそけたゝ (ママ)かひ/ (
きにもてそへいそけ鷹飼 32)大君の車のまへを通るにはゆ 33 陰寒き雪の林にむら馬 (ママ)鷹飛影にをとろきやする/ (
とふ暮はねくらさためす 33)陰さむき雪の林のむら烏たか 34 鷹のすむ森の梢の冬枯て鳥も隠れん方そすく/なき/ (
かくれんかたそすくなき 34)鷹の住もりの梢の冬枯て鳥の 35
あしよわき雉子は雪に走るらむ犬はなさせて急け鷹/かひ/ (
ん犬はなさせていそく鷹かひ 35)足よはき雉子や雪にはしるら 36
雪をかむ犬の心に鷹かひのつれてや山にまよひきぬらん/ (
てや山にまとひきぬらん 36)雪をかむ犬の心に鷹飼のつれ 37 降つもる雪にせき緒の跡みえて山を心の墅心の鷹/ (
て山をや越ん野心のたか 37)降雪につもるせきをの跡みえ 38 雪霰ふるともけふの鷹かひよあをらハきぬと思ひ知へし/ (
し にあをはゝきぬと思ひしるへ 39)雪あられふるともけふの鷹飼 39 置そふる霜の白菅笠にぬふ鷹墅にハきぬ物と知へし/ (
鷹野にはきぬ物としるへし 40)降そふる雪のしら菅笠にぬひ 40
箸鷹を寒き夜毎に引すゑてね(
38)箸鷹の寒き夜毎に引居てねふ
ふらハむちの影やみせ/なん/ らはふちのかけやみせなん 41 水氷る田つら成とも駒の足よハたは鷹を合すへからす/ (
及はすは鷹あはすへからす 41)水氷る田面なり共馬のあしの 42
雪のちる鷹の置餌のからまくらもろこしよりも渡るとそ/しる/ (
しる まりもろこしよりも渡すとそ 42)雪のちる鷹のをきゑのからと 43 冬枯の霜の林にはやふさの入は錦をさらすにそ似る/ (
るは錦をさらすにそ似る 43)冬枯の霜の林にはやふさのゐ 44 冬野にも佐保の荒鷹心あれむまれ付ゟ山をわすれす/ (
( れつくより山はわすれし 44)冬野にも猶あら鷹に心あれ生
( を移すや鷹の靑しろ 45)常盤なる梢に降るうす雪の色 たなさきのはや白ふなるらん 46)雪の日は身に引そふる箸鷹の 45 御狩せし交野ゝ原のはし鷹ハ雪に成まてたてる鈴音/ (
雪の降まて立るすゝ音 47)御狩する交野の原のはし鷹は 46 騎すきなる馬をはいとへ鷹飼の冬の水田の心しらすハ/ (
よ冬の水田の心しらすは 48)氣色なる馬をはいとへ鷹かひ 47 水田にて取をくれなは箸鷹に丸觜 ハシをかへ冬の夕暮/ (
のまろはしをかへ冬の夕くれ 49)水田にてとりをくれなは箸鷹 48 風寒き日は深墅にハ入かたし鷹の心を思ひしらすハ/ (
たし鷹の心を思ひしらすは 50)風さむき日には古野にも出か 49
頭には小山をさゝく箸鷹の霜雪にさへまけぬなりけり/
50
ほうしやうの毛なみをとをす鷹たぬき春待風にあはし/と そ思ふ/終/戀部五十首【五十首の鷹和歌掲出】雜部五十首【五十首の鷹和歌掲出】※
※ 示した。 岡村知能氏所蔵『諏方流鷹書』の鷹和歌の本文については、/で改行を 付きの算数字で示した。 し、群書類従第十九輯所収『後京極殿鷹三百首』に見えるそれは() 岡村知能氏所蔵『諏方流鷹書』に見える鷹和歌の歌順は算数字のみで示 右掲の対照表によると、両書においてそれぞれ対応する鷹和歌の表現にかなり異同が見られる他、いくつかの鷹和歌については歌順がずれているなどの相違点が指摘できる。また、両書とも「春」「夏」「秋」「冬」から構成されている。しかしながら、それぞれの部立てにおいて、一方のテキストに掲載されているが、もう一方には見られないという鷹和歌がいくつか確認できる。具体的には以下の通り。①
「春」
・
岡村氏の鷹書に見える
14の鷹和歌が群書類従本には見えない。
・
群書類従本に見える(
30)(
37)(
38)(
39)(
40)の鷹和歌が岡村
氏の鷹書には見えない。②
「夏」
・
岡村氏の鷹書に見える
25の鷹和歌が群書類従本には見えない。
・
群書類従本に見える(
21)(
22)(
23)(
鷹書に見えない。 49)の鷹和歌が岡村氏の
13
40の鷹和歌が群書類従本には見えない。
49
50の鷹和歌が群書類従本には見えない。
群書類従本(
45)(
い。 46)に見える鷹和歌が岡村氏の鷹書に見えな 岡村知能氏所蔵『諏方流鷹書』 群書類従第十九輯所収『後京極殿鷹三百首』
46首
50首 47首
50首 50首
48首 50首
50首
歌以外にも「戀部」
50首、
「雜部」
が掲載されているのに対して、岡村氏の鷹書は右記の約「二百 50首の合計約「三百首」の鷹
攝政家二百首」と記して「二百首」であることを示している が、これまで知られている藤原良経の鷹和歌集はいずれも「三百首」のものしか確認できない( 注8
た体裁で引用されていることが予想されよう。 本文の典拠となった伝本は現段階で不明であるが、かなりアレンジし ものであろうか。いずれにせよ、岡村氏の鷹書における右掲の鷹和歌 ) 。岡村氏の鷹書は、
㈡ 岡村氏の鷹書―鷹和歌その②―
次に、【後半】の二十七丁表五行目~三十丁裏十二ている鷹和歌部分について取り上げる。当該本文は『首』からの引用であることが冒頭で記されている。『慈鎮和尚鷹百首』もまた、いくつかの伝本が現存していることが確認が、ここでもやはり早くから知られていた群書類従所収の本文を取り上げて岡村氏の鷹書に見える該当本文と比較する。それを通して、岡村氏の鷹書に見える本文の特徴を確認する。以下に両書における当該本文の対照表を挙げる。
歌順 岡村知能氏所蔵『諏方流鷹書』 歌順 群書類従第十九輯所収『慈鎭和尚鷹百首』鷹百首 慈鎮和尚/鷹百首 1
霞あとも鷹のしら尾のあけほのに空とふ鷹そ目に近くなる/ (
空とふ鳥の目路近くなる 1)かすめとも鷹はしら尾の曙に 2
うき人ハない鳥かりの恋の山に鷹すへあけて何とかハせん (
に鷹すへあけて何にかはせん 2)うき人はおひとり狩の戀の山
/ 3 はし鷹の遠山端に空かけて袖より拂ふ春のあけほの/ (
より拂ふ春のあは雪 3)箸鷹の遠山の毛に雲かけて袖 4 春の墅ゝすくほの薄かるゝとて雉のほつらに馴る鷹人/ (
や雉子のほろゝに馴るたか人 4)春の野にすく路の薄かるとり 5 狩暮し架ゆふ鷹のあしを山に残れる雪もしらぬりの鈴/ (
に殘れる雪もしらねりの鈴 5)狩暮しほこゆふ鷹のあしを山 6
此ころハ秋の色にはあらねとも空に尾花をちらすはし/タカ/ (
空にけはなをちらすはしたか 6)此比は春のけしきにあらね共 7
とりかふも覚束なきハはし鷹のめ鳥つきする春のゆふ暮/ (
のめとりつきたる春の夕暮 7)とりかひも覺束なさは箸たか 8
来山の峯とひ越るはし鷹のますかきの羽やたゝに見ゆらん/ (
ん ますかきのはやたつにみゆら 8)この山の峯飛こゆるはし鷹の 9
鷹人よ雪の小篠の一ふしのかりの此世は住うきとしれ/※
頭注…慈鎭和尚天台宗青蓮
院ノ宮先住也/蒙恋ハ松を時雨の染色そまくすか原に/風そゝくなり此歌請僧讀ぬはつなり/ (
9)
鷹人に雪のをさゝの一ふしにかりの此世は住うきとしれ
10
〇世中ハ経尻うたれぬはし鷹のはつえにすかる心地こそすれ/ (
れ かのは枝にすかる心地こそす 10)世間はゑしりうたれぬはした 11
いつそやハ野心ありしはし鷹のき羽に ウつまてなるゝ見ゆ哉/ (
軒はうつまてなるゝまと哉 11)このころは野心ありし箸鷹に 12
一よりに手かへる鷹のもちあ(
13)一よりは手歸る鷹のもちあか 哉/ かり家つとまてもめつらしきり家つとまてもめつらしき哉
13 鷹すへて交墅ゝ行幸春くれは只花をのみ狩暮しけり/ (
( はたゝ花をのみ狩くらしつゝ 14)鷹すへて吉野の御幸はるくれ に心をつくる犬のやりはな 15)箸鷹の鳥はこゝにとをしへ草 14
はふ鳥にわなそゝあらむ物からと鷹すへあくる犬かひの草/ (
らと鷹すへあくる犬のとひ草 16)はふ鳥にはなつまゝなる物か 15
山風の遠きかた墅ゝゆるき草鷹のおほえハ今そしらるゝ/ (
鷹のおほえは今そしらるゝ 17)山風は遠きかたのゝゆるき草 16 天川渚の苫屋これならむ交野ゝ里の屋形尾の鷹/ (
んかたのゝ里のまたら尾の鷹 18)天川なきさのとまやこれなら 17 はし鷹の身より心を尽すこそた タさ サきの世のむくひ也けり/ (
り そたなさきの世のむくひ成け 19)はし鷹のみより心をつくすこ 18 狩こ コむる鳥ハにかさし秋草の上に鷹とふ鷹のみさしゐ/
19 箸鷹の木居とる枝やかゝるらん槙の葉隠散桜かな/ (
ん槇の葉かくれ散櫻かな 20)箸鷹の木居とる枝やかゝるら 20
いつまてかゆるりくるりと鷹たぬき逢ぬおもひに身をつくさまし/ (
し たつね逢ぬ思ひに身を盡さま 21)いつまてかゆるりくるりと鷹 21 恋せしと思ふ心そ恨めしき忍ふの鷹のいとけなき身を/ (
忍ふの鷹のいとけなき身を 22)戀せよと思ふ心そうらめしき 22
△餌袋に兎のかしら鳥のくひさかなにせしハむかしなりけり/ (
23)
餌袋にうさきのかしら鳥の首さかなにせしは昔なり鳧
※ 頭注…今不審ありしゆへ心 を壽せれば/何もよめるとあり夫ゟ鷹の哥ヲ/よみ御不審はれ候也/鷹人は姿にしるし打懸に狩杖帽子はゝきまへかけ/ (
さす袖より露そこほるゝ/ 穂に出る薄かもとの小鷹狩か( にとり杖ほうしはゝきまへ掛 24)鷹人はすかたにしるし打かけ ひぬことし始てつかふ箸鷹/ うれしやな只一よりにとりか( ト かさす袖より露そこほるゝ 35)ほに出る薄かもとの小鷹かり はつかふ時こそ山帰すれ/ はし鷹の心のうちをおもふに( かひつことし始て使ふわか鷹 36)嬉しやなたゝひとよりにとり るみさ山本の諏方の贄鷹/ 狩行くと人はとかめす信濃な( ぬ/ 餌さしてようなき身をも拾え △餌袋にかれかはきたる古置 つかふ時こそ山わすれすれ 89)箸鷹の心のうちをおもふには
交墅ゝ禁墅狩声そする/ 百鋪の日次の贄をたてむとや( (敷カ) るみさ山鳥のすはのにへたか 37)狩行に人はとかめそしなのな 餌かハむに何こしそ/ 本ノマゝ 野沢なる鴫府の鷹の夕鳥狩口( んとや交のゝ禁野狩聲そする 38)もゝ敷の日なみのにへをたて 初とや出しの鷹のかり衣/ 贄狩の日並の八日木にけりと( りくち餌かはんと水な濁しそ 39)野澤なるしきふの鷹の夕をか 夜床の心地こそすれ/ 鷹すへて独居明す泊り山恋の( 衣 にけりと初とや出しの鷹の狩 40)にへかりの日なみのけふはき
〳〵に手にすへて行/ △御狩人野され若鷹山帰思ひ( こゐの夜床の心地こそすれ 41)鷹すへて獨居あかすとまり山 おもひ〳〵に手にすへにけり 43)みかり人野され若鷹山かへり
34 狩人の鳥架に鷹を繋く夜ハ泥障の枕鞍のそひ鞭/ (
はあふりの枕くらのそひふし 42)狩人のとほこに鷹をつなく夜 35
あすよりハ手にやたまらむあら鷹の山忘 ハスレする架のふる ルまひ/ (
ひ 鷹の山忘れするほこのふるま 44)あすよりは手にやたまらん新 36
しら浪の立田の山にあらねともしハしぬすたつ鷹の追鳥/※
頭注…(朱)此哥の下の句
両説故不定※
頭注…ほや祭鳥や出ての鷹
を居たしてかまはやふさ御鷹なる/らん※
(朱)この鷂や御たかなる
らん/ (
56)
白雲のたつともしはしひ鳥
(
し 居てみよりの袖はうち雪もな 55)手にこほれはやれはたかを引 37 兎野に鳥ハのかれし峯越の尾かさす しトモかゝる鷹のもちり羽/ (
羽 のおかたにかゝる鷹のもしり 57)とさまより鳥はのかれし峯越 38
箸鷹のもとをる りイ山のつちの音とやかまへする人やあるらむ/ (
とやかまへする人やあるらん 58)箸鷹のもとをり山の鈴の音に 39
はなれえぬ世ハかゝりけむ餌袋に置餌の鷹の山忘して/ (
のおきゑにたかの山忘して 59)放れえぬ世はかゝりけり餌袋 40
鷹は木居犬ハ荒とふ鳥なれば草にも伏さす立としもなし/
41
懸落す鶉の床の草ふかみ今社みつれ鷹の出木居/ (
今こそみゆれ鷹のゑこひよ 60)かけとをす鶉の床の草ふかみ
42
あふ事ハ安達のゝへのかたうつらこゐする鷹の暮な頼ミそ/ (
そ らこひする鷹のくるゝたのみ 61)逢事は有乳の野へのかたうつ 43 箸鷹の老曽の森にあらねとも耳かたけなる人のふるまひ/ (
もみゝかたけなる人のふる舞 62)箸鷹のおひその杖にあらねと 44 小鷹狩鶉の床に宿るらむ暮行墅への草ふかくとも/ (
のへは露ふかくとも 63)小鷹狩鶉の床に宿からん暮行 45
ひねりする鷹の藤ふに春暮て鳥屋かまへする夏ハ来にけり/ (
とやかまへする夏は來にけり 45)ひねりさす鷹の藤ふち春暮て 46
箸鷹のみとりの草をあされとや物あひしるき犬の墅廻り/ (
はり とやものあひしけき犬の野か 90)はし鷹のみとりの草をあされ 47
はし鷹のこれも只こひのつもりかと思ふ時こそもみ雀すれ/ (
るかと思ふ時こそもみ雀すれ 47)はしたかの聲に餌こひのつも 48
尾上より引こす鳥のつかれをハ鳥喚にこそ又はしらるれ/ (
れ をとさけひにこそ又はしらる 48)おのへより引こす鷹の疲れは 49 冬枯の真柴ならしは打たゝき鷹すへならす小墅ゝ狩人/ (
鷹の枝ならす小鷹狩人 49)冬枯の槇のなら柴うちたゝき 50 鳥柴おち鈴つけの尾ハ長けれとふけるそふしき鶉符の鷹/ (
れとにけるそ憎き鶉ふの鷹 50)としはより鈴付のおはなかけ 51 狩立る霞の上の夕雲雀鷹も雲入るこゝ地こそすれ/ (
も雲ゐの心地こそすれ 51)狩立る霞のうへの夕ひはり鷹 52
鷹人の外山にかたる雲の雪道ふみ分て鳥立をそ見る(朱)こそ/ (
ふみ分てとたちをそする 52)鷹人は外山にかゝる雲雪の道
53 はし鷹のす 鈴ゝふる雪や雲るらむ槙の梢に風の音つれ/ (
きの梢の風の音すれ 53)箸鷹の鈴ふる雪や是ならんま 54 すへ鷹のたゝさきの羽に春さらて笠の端白き雪の曙/ (
かされて笠のはしろき雪の曙 54)すへたかのたなさきの羽には 55
うちつけにやかて犬こそかみにかめ山口しろく鳥や立らん/ (
ん にけれ山口しるく鳥やあるら 12)ひとよりにきけは犬こそかみ 56 押並て雪の古葉のみえにけり墅されの鷹の鳥の落かた/ (
にけり野されの鷹の鳥の落草 25)をしなへて雪はふる羽にみえ 57
はし鷹のそうとハかりは見えねとも雪の降野ゝあけほのゝ空/ (
とも雪のふり袖明ほのゝ空 26)箸鷹のそことはかりはしらね 58
風吹はさむき狩 カリ場のそはミ鷹拂すとても袖のしら雪/ (
はらはすとても袖の白雪 27)風吹はさむき狩場のそはみ鷹 59 山おろし雪や霙 ミソレの夕暮に鷹ハ手ふるひわれハ身ふるひ/ (
鷹はたふるひ我は身ふるひ 28)山風やゆきやみそれの夕暮は 60 鷹場なる野にハふさしと夏鶉命のはてはなつ草の陰/ (
鶉命つゝれは夏草のかけ 29)たか場なる野にはふさしと夏 61
たか人の杦 松にたちよるむらしくれしハしすこすも久しかりけり/ (
し過すも久しかりけり 30)鷹人の松に立よる一時雨しは 62
たか カますよ遠山鳥のしたり尾のなか〳〵しさにけふの親鳥/※頭注…鷹 (
31)
たのますよ遠山鳥のしたり尾のなか〳〵しさよけふの足緒鷹
63
〇鈴ならす犬の頭にもとをれて駒をならふる小鷹狩哉/鈴ならす犬の頭にもとをれて (
33)
鈴ならす犬のかしらにもとをれて駒をならふる小鷹かり哉
/△片藪にむすほゝるともへをさゝむ心もしらぬつみのわか鷹/ (
さゝん心もしらぬつみの若鷹 34)かた藪にむすほゝるともへを 小鷹場にしとゝにあかりとらハれて滋み小鳥の声のみそ/する/はし鷹を手放すけふの御鷹場のかさむね鳥を家つとに/せん/ (
はかたむね鳥を家つとにせん 32)箸鷹を手ならすけふの御狩場 犬飼の鷹場に出るかりはかまたすけハ人の古慮なりけり/いくらとも見えぬなす墅ゝ小鷹かり罪もむくひも後の世の為/ (
/ あかけの鷹のあるゝ墅もなし 都人手をもそらさぬ心地して( 爲 鷹狩つみもこのりも後の世の 64)いくらとも見えぬなすのゝ小 てあかけの鷹のあく時もなし 67)狩人の手をもそらさぬ心地し 朝鳥狩あさ出よしと鷹場な なるしのゝは草を打懸にする/ (
より心も解ぬ片枕すれ/ たかかひの箸に火ともす今夜( て なるしのゝは草を打かけにし 68)朝とかりあかてはふしと鷹場 雀子につたへても笑な笑そ/ あなにくややかて餌になる村( 夜こそ心もとけぬかた枕すれ 69)たかかひのはしに火ともす今 りのきハの草の鷹のみより羽 忘めや遠山もとのかたかへ( (朱)ハスレ そ 烏子につたへても鷹ナわらひ 71)あな憎ややかて餌になるむら
り軒端の草の鷹のもとりは 70)忘れめや遠山もとのかたかへ /
74 それ鷹の雪の梢のむら烏朝わらひしてもちにかゝれる/ (
あたわらひして枝にはなるれ 72)それたかの雪の梢の村からす 75
赤毛 ふかと思ひしかとも雪の日は符かハりしけるましらふの鷹/ (
は符替してけるましらふの鷹 73)あかもかと思ひしか共雪のひ 76
雉子こそ命継尾に成にけり鷹場帰の夕暮の空/ (
れたかはかへりの春の夕暮 74)雉子こそ命つき尾になりにけ 77 とらせしそ悔しかりける小鷹場の樀 (朱)ウツキトモ
■
ハシトモの紅葉鵙 (朱)モスの草くき/ (き 鷹狩はしの紅葉のもすの草く 75)とらせてはくやしかりけり小 78 かけ鳥をおひその森の夕時雨月にかゝるへきつミの若鷹/ (
身にかゝるへきつみの若たか 91)かし鳥をおひその森の夕時雨 79 床もなき刈田の鴫そ哀なる今夕くれの鷹の餌そかし/ (
る此夕くれの鷹のまろはし 76)床もなきかり田のしきそ哀な 80 立鳥の尾花をちく テす箸鷹の草とる時もあからめいなき/ (
き 鷹の草とる時そあたらみはな 77)たつ鳥の毛はなをちらすはし 81 月残る狩場の雪 ユキのしろ ラ鷺をのか (ママ)けにても身をや隠さん/ (
のか影にや身をかくすらん 78)月殘るかりはの雪のしら兎を 82 松の木にかゝる藤ふの鷹みれはつかふ人まて万代や経む/ (
れはつかふ人まで萬代やへむ 79)松のもとにかゝる藤ふの鷹み 83 をきはなすは はし し鷹の巣のいけ鶉網にもかゝるうき命かな/ (
網にもかゝるうき命かな 80)もき放つ鷂つめのいけうつら 84 山鳥の尾上の松を来て見れハ鈴はへたてぬ鷹のならしは/ (
鈴はへたてぬ鷹のならしは 81)山鳥の尾上の松をきてみれは 85
陸 (朱)奥 ミチノクの信 (朱)夫 シノフの鷹のめつらし(
82)みちのくのしのふの鷹のかり
く都の山に年をへむとハ/そめに都の山も年をへんとや 86 鶉なく床の山風烈しさに手放もせてかへる鷹人/ (
に手はなちもせて歸る鷹人 83)うつらなく鳥籠の嵐はけしさ 87 あら鷹も手馴る程に末をもつ駒に鞍をけ手放して見む/ (
( 馬にくらをけつかひてをみん 84)新鷹も手馴るほとに居をかす の鈴おさめする夏そ來にける 85)とや藪はふませたれとも箸鷹 88
心よくことしハなりぬ鳥や出のあかけの鷹の木居の手もろさ/
89
身にそへて手馴ル時そ箸鷹の恋ハして見す何にたとへん/
90 春の墅につかひ尽して箸鷹の鈴納する夏ハきにけり/ (
き の身にやすけなる事そすくな 86)春の野もつかひ盡してはし鷹 91
されハにや墅されの鷹の山か わへ すり れ年〳〵へても帰る思へは/ (
らんとしちみつくる鷹の藥飼 88)され羽にや野されの山を忘る
(
( をうかれ烏やいかにしるらん 92)籠ぬけする太山の鷹の捨かひ
( けり はゝみとりをほこにうつす也 93)荒鷹を七日なゝ夜にとりか
( に見ぬ落草のとたちをそしる 94)はし鷹の尾上引こすひたり羽
( たなれの駒をたてそかねぬる 95)はし鷹の四毛ふくまて辻風に
96)高根より麓の原に飛さかりつ ( まこゝろみの羽くらへのたか
( つなくや鷹のほこ羽なるらん 97)山越るつかれのとりの落草を
( の舟にのせたる屋かたおの鷹 98)淀よりも交野にかよふかり人
( 羽や ちり取にもとらすおもしろの 99)はし鷹のこもつちこえの一も
( り やへ羽のきしもたまらさりけ 100)箸鷹の升かきの羽をとふ時は
( ん たなさきのはやしらふなるら 101)雪ふれは身に引そふる箸鷹の あたちか原をねるはたか子そ 102)陸奥の忍ふの鷹を手にすへて 92 いつる れ又逢事あらむはし鷹の餌忘 ハスレ飼のけふの秋とは/
93 暮る共帰らん物を小たかゝり一夜ふしみの袖の敷ねハ/ (
狩一夜ふしみに袖はしくとも 65)暮るともかへらしものを小鷹 94 夏草の茂みか原も過にきと鈴さしそむる秋の箸鷹/ (
鈴さしそむる秋のはしたか 87)夏草のしけみか原も過にきと 95
狩くらし帰る交墅ゝ花う ウつほかさしや鷹の手にもたまらす/ (
〔マヽ〕 うつほやさしやたかの 66)狩くらしかへるかたのゝはな 96
はし鷹のしからみそむる落草を心得かほのいぬのふる/まひ/ (
心得かほに犬のわけ草 46)箸鷹のとかしらしむる落草を
終/はし鷹の身よりたゝ先定らす大宮人は右に居けり/はし鷹の身より手先を知りたくは二つの家をたゝしてそ/聞/※
頭注…野守/はし鷹の墅守
の鏡ゑてしかな/思ひ思はすよそなから見ん/右慈鎭和尚鷹百首以山永恭藏本書写校合畢村知能氏所蔵『諏方流鷹書』の鷹和歌の本文については、/で改行
村知能氏所蔵『諏方流鷹書』に見える鷹和歌の歌順は算数字のみでし、群書類従第十九輯所収『慈鎭和尚鷹百首』に見えるそれは )付きの算数字で示した。
村氏の鷹書に見える
18
27
40
65
67
88
89
92の鷹和歌が群書類従本
書類従本に見える(
15)(
55)(
85)(
92)(
93)(
94)(
95)(
96)
97)(
98)(
99)(
100)(
101)(
102)の鷹和歌が岡村氏の鷹書には見え
ない。 そのほか、岡村氏の鷹書は、「はし鷹の身よりたゝは右に居けり/」と「はし鷹の身より手先を知りたたゝしてそ/聞/」という二首の鷹和歌が追加の体裁で掲出されているが、群書類従本には該当する鷹和歌は確認できない。さらに岡村氏の鷹書には頭注の記事がいくつか確認できる。それらは記載されている位置から判断して、
6
22
36
入したが、そのうち 62及び追加の和歌の二 62を除いて、注記の内容は必ずしも該当項目の和
歌の注釈に限定されるものではない。また、やや文意のとりにくい記述や関連性が不明な鷹和歌などが掲出されていて、当該テキスト特有の記事内容となっている。以上の特徴を踏まえると、岡村氏の鷹書における後半部分の鷹百首の本文もまた、相応に独自な引用方法で記載されていることが窺えよう。
おわりに
以上において、諏訪藩に仕えた鷹匠の岡村氏伝来『後京極殿鷹三百首』『慈鎮和尚鷹百首』から引用された鷹和歌群について検討してきた。そもそも、鷹匠に伝来した鷹書に当該の鷹和歌集が含まれている事例は珍しく、管見において他に確認できない。本稿では、そのような鷹和歌の本文を取り上げて全文を紹介しつつ、群書類従本との比較を通じてその特徴を考察した。その結果、岡村氏の鷹書に見える鷹和歌群は、独自の体裁で引用されていることが確認できた。このことから、鷹匠が鷹和歌(鷹百首類)を伝来する際、やや恣
密な位相があったのに対し(注
10)、鷹和歌については無作為に伝
鷹百首類)のテキストが伝播する実態を考える手掛かりとして
二月 1) 二本松泰子『中世鷹書の文化伝承』(三弥井書店、二〇一一年 ) 、同『鷹書と鷹術流派の系譜』
( 三弥井書店、二〇一二年二月) など。
2) 『
御家中知行附並御藏帳 元禄九年』(『復刻諏訪史料叢書 第五巻』所収、諏訪教育会編、ほたる書房、一九八四年十一月
) 、
『分限明細記 元禄年中』(同
―諏訪藩の鷹匠伝来の新出資料を手掛かりに―」 )() 月』(同など。詳しくは、二本松泰子「鷹匠と鷹書制作上 ) 、『御家中御人數帳寶暦三年五
( 「信濃」近刊掲 載予定) 参照。
3) () 前掲注2の二本松論文。
4) () 前掲注2二本松論文及び二本松泰子「鷹匠と鷹書制作 ( 下) ―諏訪藩の鷹匠伝来の新出資料を手掛かりに―」
近刊掲載予定 ( 「信濃」 ) 。
(
( 5) () 前掲注4の二本松論文。
6) 遠藤和夫「和洋女子大学附属図書館本『鷹三百首註』小考」 ( 「和洋國文研究」第三十号、一九九五年三月
) 、同「
『京極摂政鷹三百首』につきて」
( 「和洋國文研究」第三十一号、一九九六年三 月) 、同「校訂『鷹三百首
( 摂政太政大臣
) 』( 上 ) 」( 「和洋女子大
学紀要・文学編」第三十六号、一九九六年三月
( 三百首摂政太政大臣 ) 、同「校訂『鷹 ) 』( 下 ) 」( 「
野州國文學」第五十八号、一九九六年十月
) 。
(
号、一九九七年三月 7) 山本一「鷹百首類伝本概観の試み」(「調査研究報告」第十八
) 、同「鷹歌をめぐる二、
三の考察」
( 『日本文
学史論―島津忠夫先生古稀記念論集』所収、島津忠夫先生古稀記念論集刊行会編、世界思想社、一九九七年九月
) 。
(
資料」第五十六号、二〇〇六年十二月 原松平文庫蔵「鷹和歌集」「鷹百首」の検討を中心に」(「研究と 8) ()() 前掲注6及び7の他、山本一「鷹歌文献序説―肥前嶋
) 、同「
「やまひめに」類鷹百首の伝本について」(「金沢大学人間社会学域学校教育学類紀要」第二号、二〇一〇年二月
) 、同「天正十九年写「やまひめに」
類鷹百首の解題と翻刻」(「研究と資料」第七十号、二〇一三年十二月
( 良経」和泉書院、二〇一六年二月 () 上冊』第二部第一章「公家に関わる鷹書」第四節「藤原九条 ) 、三保忠夫『鷹書の研究―宮内庁書陵部蔵本を中心に―
) 。
(
三節「慈鎭」。 9) () 前掲注8の三保著書第二部第一章「公家に関わる鷹書」第
前掲注( 1) 二本松著書『鷹書と鷹術流派の系譜』第二編「鷹術流派の系譜」・第三編「鷹術流派の展開」など。
~二〇二一年度科学研究費補助金(基盤C)「中世から近世にかけての放鷹文化における鷹書の体系化
1 9 K 0
0 3 2 5 )
」による研究成果の一部である。
《Abstract》
FalconryinthemedievalperiodtotheearlymodernperiodinJapanwasentirelycarried outbysamuraiwarriors.Hence,falconryatthattimecanberegardedassamuraiculture.In
thispaper,wefocusontakasho,orbooksonfalconry,inordertounderstandthetrueimage
offalconryasapartofthissamuraiculture.Inotherwords,weconsiderthe takasho(new
material)handeddowntoMr.Okamurawhoservedforgenerationsasafalconerofthe Suwaclanintheearlymodernperiod,andintroducethe“GokyogokuDonoTakasan Hyakushu” and “Jichin Kasho Taka Hyakushu” books cited in it, and study the characteristicsthroughacomparisonwithtextinthesaidbookincludedin“Gunsho Ruiju(CollectionofJapaneseclassicssortedbytype)”.Asaresult,theTakawakaseenin
theMr.Okamura’stakasho wascharacterizedbystrongarbitraryelementsanditwas
estimatedthatthisbookisobsoleteandnotasvaluableinthehandingdownofthe Takawakacollectionforfalconry.Further,thisstudypresentsanewcasestudyofthespread