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調査資料-296
科学技術に関する国民意識調査
- 新技術の社会受容性 -
2020 年 8 月
文部科学省 科学技術・学術政策研究所 第1調査研究グループ
細坪護挙 角田英之
加納圭 岡村麻子 星野利彦
2
【調査研究体制】
細坪護挙 科学技術・学術政策研究所 第1調査研究グループ 上席研究官
角田英之 科学技術・学術政策研究所 客員研究官 理化学研究所 脳神経科学研究推進室長 加納圭 科学技術・学術政策研究所 客員研究官
滋賀大学教育学部教授
岡村麻子 科学技術・学術政策研究所 客員研究官
政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター専門職 星野利彦 科学技術・学術政策研究所 第1調査研究グループ 総括上席研究官
【Contributors】
HOSOTSUBO Moritaka Senior Research Fellow,
1st Policy-Oriented Research Group,
National Institute of Science and Technology Policy (NISTEP), MEXT.
TSUNODA Hideyuki Affiliated Fellow,
National Institute of Science and Technology Policy (NISTEP), MEXT.
Director, Brain Science Promotion Office, RIKEN
KANO Kei Affiliated Fellow, NISTEP, MEXT
Professor, Department of Education, Shiga University OKAMURA Asako Affiliated Fellow, NISTEP, MEXT
Professional Staff, SciREX Center,
National Graduate Institute For Policy Studies.
HOSHINO Toshihiko Director of Research, 1st Policy-Oriented Research Group,
National Institute of Science and Technology Policy (NISTEP), MEXT
本報告書の引用を行う際には、以下を参考に出典を明記願います。
Please specify reference as the following example when citing this NISTEP RESEARCH MATERIAL.
細坪護挙,角田英之,加納圭,岡村麻子,星野利彦,「科学技術に関する国民意識調査-新技術の 社会受容性-」,NISTEP RESEARCH MATERIAL,No.296,文部科学省科学技術・学術政策研究所.
DOI: https://doi.org/10.15108/rm296
HOSOTSUBO Moritaka, TSUNODA Hideyuki, KANO Kei, OKAMURA Asako, HOSHINO Toshihiko,
“Public Attitudes to Science and Technology: Social Acceptance of New Technologies”, NISTEP RESEARCH MATERIAL, No.296, National Institute of Science and Technology Policy, Japan.
DOI: https://doi.org/10.15108/rm296
1
科学技術に関する国民意識調査-新技術の社会受容性-
文部科学省 科学技術・学術政策研究所 第1調査研究グループ 細坪護挙、角田英之、加納圭、岡村麻子、星野利彦
要旨
日本国内の革新的技術・イノベーションに対する社会受容性を調査するために、意識調査(イン ターネット調査)により18 の技術に関する受容性について調査を行った。技術の受容の度合いは その技術によって異なり、また、性別、年齢、専攻の違い、子供の有無に加え、科学技術政策に関 する意識などとの関係があることが明らかになった。
今後も、社会に導入されようとする革新的技術・イノベーションの社会受容性の決定要因を明ら かにするための調査研究を継続する。
EUとは調査方法や時期に違いがあり、あくまでも参考比較に留めるものであるが、日本はEUと比 べて、人工知能(AI)に対して、どちらかというと肯定的である一方、ロボットやAIは、社会にとって良 いものであるとまでは思っておらず、かと言って、ロボットやAIは、慎重な管理が必要な技術であるとま では考えていないように思われる。
Public Attitudes to Science and Technology: Social Acceptance of New Technologies
1st Policy-Oriented Research Group, National Institute of Science and Technology Policy (NISTEP), MEXT
ABSTRACT
In order to investigate the social acceptability of innovative technologies and innovations in Japan, we conducted a survey on the acceptability of 18 technologies through an attitude survey (Internet survey). It became clear that the degree of acceptance of technology varies depending on the technology, and that it is related to gender, age, major difference, presence of children, and awareness of science and technology policy.
In the future, we will continue research and studies to clarify the de terminants of social
acceptance of innovative technologies and innovations that are about to be introduced into society.
Although there is a difference in the survey method and time from the EU, it is only for reference comparison, but Japan is relatively positive for artificial intelligence (AI) compared to EU, while robots and AI are not thought that they are good for society, but robots and AI are not thought that they are technology that requires careful management.
2
1 目次
概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ⅰ~ⅷ
1. 調査目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2. 調査設計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3. 科学技術に関する代表的な国民意識変量の性別の平均値の時間的変化 ・・・・・・・・・・・・・・ 2 4. 科学技術に関する関心や期待、不安などの国民意識と回答者属性に関するクロス分析 ・・・27 5. 日欧の参考比較分析.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 6. 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75 7. 謝辞(Aknowledgements)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・ 76 8. 参 考文献 (References)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・76 附 録 1 インターネット調 査 質 問 票 (その1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79 附 録 2 インターネット調 査 質 問 票 (その2)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・107
2
3
概 要
4
i
1.目的
本調査では、前回調査(2019年3月)から2019年8月に至る科学技術に関する国民意識の変 化を把握する。それと同時に、新たに、私達の生活により大きな影響をもたらすであろう新技術を 対象に、その社会受容性などについて国民の意識調査を行った。
2.調査方法
本調査研究では、2019年8月にインターネット調査を行い、約 200項目の問いに対して3,000 人(男女同数、15-69歳を10代から60代までの各年代同数となるよう設定)の回答を取得した。
なお、前回調査(2019年 3月)も同様の手法で実施した。
インターネット調査は、世論調査に比べて回答者の代表性の乏しさや偏りを指摘されることもあ るが、調査の実施が容易であるため、本調査のような繰り返し調査による変化の観察や試行的な 調査に適している。本調査の結果は、インターネット調査の特性を踏まえた分析・解釈が期待され、
さらに本調査の情報を元に今後の大規模な世論調査の設計・実施を検討する上で重要な基礎情 報となることが期待される。
3.主な結果
(1)科学技術関心度、科学者信頼度、科学技術肯定性の長期的な変化
科学技術関心度、科学者信頼度、科学技術肯定性に関する性別平均の長期的な変化をそれ ぞれ概要図表1、概要図表2、概要図表3に示す。図表の矢印は1%有意性水準による統計的仮 説検定の結果であり、白抜きは同じ年の男女間の差に有意性がないことを示す。
科学技術関心度、科学者信頼度はいずれも前回調査(2019年3月)の観測値から上昇傾向に ある。長期的には、科学技術関心度は、男性の方が女性より常に高い一方、科学者信頼度は、
女性の方が男性より微増していることが分かる。
(2)新技術に対する受容性
科学技術に対する国民意識のうち、特に新技術に対する受容性について統計的仮説検定によ り調べた。
性差を見ると(概要図表4)、ロボット支援、ドローン配達、ロボット介護、携帯電話(5G)、ナノテ クノロジーを除く全ての新技術について、男性の方が女性より受容性が高い。また年代別に見ると
(概要図表 5)、遺伝子組換食品、ゲノム編集食品、クローン農作物、小型モジュール炉、仮想通 貨について、10-20代がそれ以外の世代より社会受容性が高くなっている。専攻分野別に見ると
(概要図表 6)、ロボット手術についてのみ、自然科学・工学系の受容性が高い。子どもの有無に 関しては(概要図表 7)、遺伝子組換食品、ゲノム編集食品、クローン農作物、小型モジュール炉、
仮想通貨について、子どもがいない層の受容性がいる層に比べて高くなっている。新技術の社会 受容性に関して「たとえすぐに利益をもたらさないとしても、最先端の学問を前進させる科学研究 は必要であり、政府によって支援されなければならない」の賛同別クロス分析との関係を見ると(概
要図表8)、遺伝子組換食品、ゲノム編集食品、クローン農作物、小型モジュール炉、仮想通貨以
外の全ての新技術について、社会受容性に対して「そう思う」が多くなっている。
ii
概要図表1 科学技術に関するニュースや話題に関心がありますか の性別の平均値の時間変化(出典:Fig.3-1再掲)
概要図表 2 あなたは、科学者の話は信頼できると思いますか の性別の平均値の時間変化(出典:Fig.3-2再掲)
78%
85%85% 85%
80% 77% 77%76% 78%
74%74%
74%
74%
67%70% 71% 69% 71%
64%
74%75% 76%
61%
51%
59%57% 57%55%54%54%
49%
44%
52% 53%
48% 51%
71%
80%
70%
64% 68%67% 67%
64%
64% 61%
56%
61% 62%
59%
61%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
09年11月(N=734)09年12月(N=726)10年01月(N=740)10年02月(N=741) 10年03月(N=741)10年04月(N=768)10年05月(N=777)10年06月(N=786) 10年07月(N=772)10年08月(N=764)10年09月(N=768)10年10月上旬…10年10月下旬… 10年11月(N=785)10年12月(N=795)11年01月(N=797)11年02月(N=777)11年03月(N=805) 11年4月(N=756)11年5月(N=744)11年6月(N=770)11年7月(N=761) 11年8月(N=768)11年9月(N=772)11年10月(N=790)11年11月(N=775)11年12月(N=768) 12年1月(N=783)12年2月(N=769)12年3月(N=771) 12年6月(N=1600) 12年11月(N=855) 13年1月(N=840) 13年3月(N=840) 14年2月(N=3000) 14年10月(N=2400) 15年3月(N=3024) 15年6月(N=961) 15年10月(N=960) 16年1月(N=960) 16年3月(N=3000) 16年5月(N=3000) 16年11月(N=3000) 17年5月(N=3000) 17年9月(N=1765) 18年10月(N=3000) 19年3月(N=3000) 19年8月(N=3000)
男性 女性 総計
77%78%
86%84%
45%
52%
74% 72% 84% 87%
77%
72%
78%78%
73%74%
71%
79% 76% 75% 75%
73%76%
86%83%
36%
51%
70% 69%
88% 87%
81%80% 82%79%77%80%
72%
78% 80%
75% 78%
75%
86%
41%
51%
72% 70%
86%87%
76%80% 77%
72%
79% 78% 76%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
10年05月(N=777) 10年06月(N=786)10年07月(N=772) 10年08月(N=764) 10年09月(N=768) 10年10月上旬…10年10月下旬… 10年11月(N=785) 10年12月(N=795) 11年01月(N=797)11年02月(N=777) 11年03月(N=805) 11年4月(N=756) 11年5月(N=744)11年6月(N=770) 11年7月(N=761) 11年8月(N=768) 11年9月(N=772)11年10月(N=790) 11年11月(N=775) 11年12月(N=768) 12年1月(N=783)12年2月(N=769) 12年3月(N=771) 12年6月(N=1600) 12年11月(N=855) 13年1月(N=840) 13年3月(N=840) 14年2月(N=3000) 14年10月(N=2400) 15年3月(N=3024) 15年6月(N=961) 15年10月(N=960) 16年1月(N=960) 16年3月(N=3000) 16年5月(N=3000) 16年11月(N=3000) 17年5月(N=3000) 17年9月(N=1765) 18年10月(N=3000) 19年3月(N=3000) 19年8月(N=3000)
男性 女性 総計
iii
概要図表 3 科学技術の進歩につれて生活はより便利で快適なものになる、の性別の平均値の 時間変化(出典:Fig.3-9再掲)
概要図表4 新技術の社会受容性に関して性別クロス分析の結果(枠線部分が均一ではないとさ れたもの。枠の色は当該観測値のうち最大のもの。出典:Fig.4-71再掲)
77%
86%
76% 77% 76% 74%72%
80% 76% 81% 83%
75% 72%
75%
84%
75% 73% 74% 74%71%
79%
74% 78% 82%
73% 70%
76%
85%
76% 75% 75% 74%
72%
79% 75% 79% 83%
74% 71%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
14年2月(N=3000) 14年10月(N=2400) 15年3月(N=3024) 15年6月(N=961) 15年10月(N=960) 16年1月(N=960) 16年3月(N=3000) 16年5月(N=3000) 16年11月(N=3000) 17年5月(N=3000) 17年9月(N=1765) 18年10月(N=3000) 19年3月(N=3000) 19年8月(N=3000)
男性 女性 総計
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
男性 女性 総計
iv
概要図表5 新技術の社会受容性に関して年代別クロス分析の結果(出典:Fig.4-72再掲)
概要図表6 新技術の社会受容性に関して専攻分野別クロス分析の結果(出典:Fig.4-73再掲)
10%0%
20%30%
40%50%
60%70%
80%90%
ロボット支援 ドローン配達 ロボット介護 携帯電話 水素エネルギー ナノテクノロジー ゲノム医療(家族) ICタグ ゲノム医療(自分) 自動運転車 量子技術 ロボット手術 農薬 遺伝子組換食品 ゲノム編集食品 クローン農作物 小型モジュール炉 仮想通貨
10_20代 30_40代 50_60代 総計
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
ロボット支援 ドローン配達 ロボット介護 携帯電話 水素エネルギー ナノテクノロジー ゲノム医療(家族) ICタグ ゲノム医療(自分) 自動運転車 量子技術 ロボット手術 農薬 遺伝子組換食品 ゲノム編集食品 クローン農作物 小型モジュール炉 仮想通貨
自然科学・工学系 人文・社会科学系 その他・該当しない 総計
v
概要図表7 新技術の社会受容性に関して子どもの有無別クロス分析の結果
(出典:Fig.4-74再掲)
概要図表8新技術の社会受容性に関して「たとえすぐに利益をもたらさないとしても、最先端の学 問を前進させる科学研究は必要であり、政府によって支援されなければならない」の賛同別クロス
分析の結果(出典:Fig.4-75再掲)
(3)日欧のAIに関する国民意識の参考比較
次にEUが行った世論調査[11]との比較を行う。このEUの世論調査では2017年に日常生活に おけるデジタル化や自動化のインパクトに対する態度を観察している。また、この調査では1カ国に つき、500から1000名のサンプルを抽出している。
世論調査とインターネット調査では直接の比較は難しいことは先行研究[12]からも分かっており、
加えて調査時期も異なるため、本稿でも参考としての比較に留める。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
いる いない 総計
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
ロボット支援 ドローン配達 ロボット介護 携帯電話 水素エネルギー ナノテクノロジー ゲノム医療(家族) ICタグ ゲノム医療(自分) 自動運転車 量子技術 ロボット手術 農薬 遺伝子組換食品 ゲノム編集食品 クローン農作物 小型モジュール炉 仮想通貨
そう思わない どちらとも言えない そう思う
総計
vi
今回の調査のうち、5問についてEUが実施した世論調査と整合を図っている。それらのうち 3 問との比較分析を下記に述べる。
日本は人工知能(AI)に対して、どちらかというと肯定的である(概要図表9)一方、ロボットやAI は、社会にとって良いものであるとまでは思っておらず(概要図表 10)、かと言って、ロボットやAIは、
慎重な管理が必要な技術である(概要図表 11)とまでは考えていないように思われる。
概要図表9一般的に言って、あなたはロボットや人工知能(AI)に関して肯定的ですか。それとも否 定的ですかの問いで肯定的と回答した人の割合。(Generally speaking do you have a very positive fairly positive fairly negative or very negative view of robots and artificial intelligence?
Total Positive、出典:Fig.5-2再掲)
vii
概要図表10 ロボットや人工知能(AI)は、人々が自宅で仕事をしたり日常業務を遂 行したりする のに役立つため、社会にとって良いものであるの問いではいと回答した人の割合。(Robots and artificial intelligence are a good thing for society because they help people do their jobs or carry
out daily tasks at home. Total Agree、出典:Fig.5-4再掲)
viii
概要図表11 ロボットや人工知能(AI)は、安全性が十分に示されていないため、慎重な管理が必 要な技術であるの問いではいと回答した人の割合(Robots and artificial intelligence are
technologies that require careful management. Total Agree、出典:Fig.5-5再掲)
(4)結論
日本国内の革新的技術・イノベーションに対する社会受容性を調査するために、意識調査(イン ターネット調査)により 18 の技術に関する受容性について調査を行った。技術の受容の度合いは その技術によって異なり、また、性別、年齢、専攻の違い、子供の有無に加え、科学技術政策に 関する意識などとの関係があることが明らかになった。
今後も、社会に導入されようとする革新的技術・イノベーションの社会受容性の決定要因を明ら かにするための調査研究を継続する。
1
本 編
2
1
1. 調査目的
第 5 期科学技術基本計画[5]には以下の記述がある。
「ⅰ)科学技術イノベーションと社会との関係深化
イノベーションの創出に当たっては、多様な価値観を持つユーザーの視点が欠かせなくなっており、
また、科学技術イノベーションが社会の期待に応えていくためには、社会からの理解、信頼、支持 を獲得することが大前提である。」
以上を踏まえると、国の科学技術政策における、科学技術に関する国民の理解や関心、信頼、
期待や不安などの情報の客観的な把握には、普遍的な必要性と価値が存在することが分かる。
これまで、科学技術に関する国民意識について様々な角度から調べてきた。本調査では、前回 調査(2019年3月)から2019年8月に至る科学技術に関する国民意識の変化を把握する。それ と同時に、私達の生活により大きな影響をもたらすであろう新技術を対象に、その社会受容性など について調査を行った。本調査では特に新技術に関する国民意識の把握に焦点を合わせている
[4]。
2.調査設計
従来の調査では以下の項目を質問項目としてきた。
・メディア等の視聴時間
・施設等への訪問経験
・科学技術への関心
・科学技術の発展への期待
・科学技術の発展に伴う不安
・科学技術を情報発信すべきメディア
・科学技術を情報発信するメディアの信頼度
今回の調査(2019 年8月実施)では、以下の項目を質問項目として追加した。
・新技術への関心
・新技術の発展への期待
・新技術の発展に伴う不安
・新技術は社会に良いか・慎重な管理が必要か
・新技術の専門用語に対する認知度
・新技術を情報発信すべきメディア
・新技術を情報発信するメディアの信頼度
・新技術を受け入れられるかどうか
具体的な調査設計は以下のとおり:
1) 回収数は 計 N = 3 000 2) 回答者対象年齢は 15-69 歳
3) サンプリングの層化として、男女同数、10代から60 代まで各年代で同数と設定 4) 調査実査時期は 2019年8月 23日(金)から9月 2日(月)まで
2 本稿では、これらを元に
1) 科学技術関心度や科学者信頼度といった、長期的に観察してきた科学技術に関する代表的 な国民意識指標の変化 と共に
2)新技術の社会受容性に対する国民意識
ここでは、新たに、人工知能(AI)、自動運転技術、ゲノム編集技術、量子技術等の今後の発 展が見込まれる新技術に対する社会受容性に関する国民の意識について明らかにする。私達 の生活により大きな影響をもたらすであろう新技術を対象に、その社会受容性などについて調 査を行った。なお、18の新技術の選定にあたっては、これまでの意識調査[1],[2]及びGupta[3]を参 考とし、新たに小型モジュール原子炉、量子技術などに関する項目を加えた。
を分析する。
2015年6月以降、時系列的に隣接する2時点間の独立性のカイ二乗検定(有意性水準1%)
により、変化が有意と判明した場合は、図中に矢印を記入している。塗りつぶした丸は男女間に有 意差があることを、白抜きは男女間に有意差がないことを示す。一部質問項目では仮説検定を 2015 年6月以降と限定した理由は、
・4年以上前の変化把握は、政策的意義に乏しい
・すべての時点の検定結果を図中に書き込むと、図中が矢印だらけになり、見づらくなる
ためである。わかりやすさのため、2015年6月以前にも矢印を入れている場合もあるが、ごく一部 である。
簡単化のために、本稿では仮説検定は時系列的に隣接する2時点間で行い、過去のデータの変 動は変化しないものとする。
本稿では、上記1)について、主に今回の2019年8月調査時と直前の2019年3月調査時との 変化傾向を述べる。以上の視点を踏まえ、2019年8月に新技術に対する国民意識を調べるインタ ーネット調査(専門的にはインターネット・リサーチ : Internet research1とよぶ。以下、「インターネッ ト調査」という)を実施した。インターネット調査は、母集団代表性の乏しさ、回答の二重のバイアス
2などの課 題 を抱 えており、世 論 調 査 とは質 的 に異 なることは、数 々の先 行 研 究 で明 らかである
[6]-[10]。現実的に、日本における科学技術と社会に関する世論調査は、定期的に実施される体制
とはなっていない。このように世論 調査の実施は容 易ではないため、事 前調 査により作業 仮説 を 設定し、世論 調査実 施に向けて一定のエビデンスを用意する目的でインターネット調査を実施す ることには、十分な意義があると考えられる。
3. 科学技術に関する代表的な国民意識変量の性別の平均値の時間的変化
(1) 統計的仮説検定の準備
インターネット調査の結果、得られたデータは、日本国民を代表する情報とは言い切れない。ま
1本格調査の事前に行う試行的調査「瀬踏み程度」に使用できるとされる一方、二重のバイアスを 伴う。同じ質問に対する両者の観測値でも差が生まれることがある。
2回答者集団形成時に生じるバイアス(インターネット会社への協力者であり、無作為抽出ではな い)及び実際の回答者のバイアス(インターネット調査協力者は、通常は自分の関心に応じて回答 するアンケートを選んでいるため、本調査案件に比較的関心が高い層が回答している可能性があ る。)が存在する。
3
た、バイアスの除去も困難であることから、厳密には、インターネット調査から得られたデータに対 して統計的 仮説検定の意 義は限定的であると考えられる。一方、独立性カイ二乗検定は一定 程 度効果的と考えられる。
統計的仮説検定を行う前 に、有意性水準を決める。標本数(サンプルサイズの大きさやサンプ ル数などともよぶ。本稿では「標本数」という)が大きくなれば、有意と判定されやすいため、標本数 などに応じて事前に決める必要がある。科学技術政策という分野の特性 及び得られるデータの質 も考慮すると、有意性水準は1%と設定するのが妥当と考えられる。
また、本回答選択肢は質的尺度であり、順序尺度が大半を占める。例えば、「~である」「どちら かというと~である」「どちらでもない」「どちらかというと~でない」「~でない」「わからない」、などと なっている。設問によっては「どちらでもない」や「わからない」を設けていないものもある。例えば、
本稿における「関心」の回答では、「どちらでもない」や「わからない」を設けていない。この場合は、
回答が容易な設問であるように設計されている。一般的に、科学技術に関する意識に関する質問 は抽象的になりがちで、回答者の回答負担は比較的高いと考えられる。加えて、インターネット調 査では、短時間で回答するケースが多いため、「どちらでもない」や「わからない」がある場合、それ らを選択する傾向が高くなると考えられる。
また、ある変数のポジティブなカテゴリーが多ければ多いほど、その他のある変数のポジティブ なカテゴリーが増す関係について、他に表現がないため、便宜上、本稿では「変数間に正の相関 がある」と述べる。逆の場合は「負の相関がある」と述べる。相関の本来の趣旨とは異なる可能性 があるため注意されたい。
本稿の定量解析においては、
「~である」 「どちらかというと~である」を1とし、
「どちらでもない」を0.5とし、
「どちらかというと~でない」 「~でない」 「わからない」を0と 置換したモデルで分析する。
(2) 科学技術に関する代表的な国民意識変量の性別の平均値の時間的変化
科学技術関心度、科学者信頼度ほか代表的な指標について示す。科学技術関心度の男女別 の変化についてFig.3-1に、科学者信頼度についてFig.3-2に示す。図中の緑色とパーセントは全 体平均を示し、青色は男性平均、赤色は女性平均を示す。
科学技術関心度については男女ともに、科学者信頼度については女性が微増している。また、
「科学技術の発展にはマイナス面よりプラス面が多い」と回答した人の割合は(Fig.3-3)では変動 がないことが分かる。
また、統計的には
・「科学技術の利便性を享受するためにはある程度のリスクを受容しなければならない」(Fig.3-4、
前回調査 17年5月)については変化なし
・「科学技術の研究開発の方向性は内容をよく知っている専門家が決めるのがよい」(Fig.3-5、前 回調査17 年5月)については女性、全体の回答について減少
・「社会に影響力の大きい科学技術の研究開発を国として推進するかどうかの判断には市民も参
4
加するべきだ」(Fig.3-6)については全体の回答について減少
・「少しでもリスクのある科学技術は使用すべきではない」(Fig.3-7)については男女ともに減少、
・「科学技術の利用には予想もできない危険が潜んでいる」(Fig.3-8)については変化なし
となっており、前回から引 き続き、総じて科学 技術 に対して懐 疑的 な姿勢 が減少していることがう かがわれる。
Fig.3-1 科学技術に関するニュースや話題に関心がありますか
の性別の平均値の時間変化
Fig.3-2 あなたは、科学者の話は信頼できると思いますか
の性別の平均値の時間変化
78%
85%85% 85%
80% 77% 77%76% 78%
74%74%74%
74%
67%70% 71% 69% 71%
64%
74%75% 76%
61%
51%
59%57% 57%55%54%54%
49%
44%
52% 53%
48% 51%
71%
80%
70%
64% 68%67% 67%
64%
64%64% 61%
56%
61% 62%
59%
61%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
09年11月(N=734) 09年12月(N=726)10年01月(N=740) 10年02月(N=741)10年03月(N=741) 10年04月(N=768)10年05月(N=777) 10年06月(N=786)10年07月(N=772) 10年08月(N=764)10年09月(N=768) 10年10月上旬…10年10月下旬… 10年11月(N=785)10年12月(N=795) 11年01月(N=797)11年02月(N=777)11年03月(N=805) 11年4月(N=756)11年5月(N=744) 11年6月(N=770)11年7月(N=761) 11年8月(N=768)11年9月(N=772) 11年10月(N=790)11年11月(N=775) 11年12月(N=768)12年1月(N=783) 12年2月(N=769)12年3月(N=771) 12年6月(N=1600) 12年11月(N=855) 13年1月(N=840) 13年3月(N=840) 14年2月(N=3000) 14年10月(N=2400) 15年3月(N=3024) 15年6月(N=961) 15年10月(N=960) 16年1月(N=960) 16年3月(N=3000) 16年5月(N=3000) 16年11月(N=3000) 17年5月(N=3000) 17年9月(N=1765) 18年10月(N=3000) 19年3月(N=3000) 19年8月(N=3000)
男性 女性 総計
77%78%
86%84%
45%
52%
74% 72% 84% 87%
77%
72%
78%78%
73%74%
71%
79% 76% 75% 75%
73%76%
86%83%
36%
51%
70% 69%
88% 87%
81%80% 82%79%77%80%
72%
78% 80%
75% 78%
77% 83%
41%
51%
72% 70%
86%87%
80% 77%
72%
79% 78% 76%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
10年05月(N=777) 10年06月(N=786) 10年07月(N=772) 10年08月(N=764)10年09月(N=768) 10年10月上旬… 10年10月下旬… 10年11月(N=785) 10年12月(N=795)11年01月(N=797) 11年02月(N=777) 11年03月(N=805) 11年4月(N=756) 11年5月(N=744)11年6月(N=770) 11年7月(N=761) 11年8月(N=768) 11年9月(N=772)11年10月(N=790) 11年11月(N=775) 11年12月(N=768) 12年1月(N=783) 12年2月(N=769)12年3月(N=771) 12年6月(N=1600) 12年11月(N=855) 13年1月(N=840) 13年3月(N=840) 14年2月(N=3000) 14年10月(N=2400) 15年3月(N=3024) 15年6月(N=961) 15年10月(N=960) 16年1月(N=960) 16年3月(N=3000) 16年5月(N=3000) 16年11月(N=3000) 17年5月(N=3000) 17年9月(N=1765) 18年10月(N=3000) 19年3月(N=3000) 19年8月(N=3000)
男性 女性 総計