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中村朋子*樋口真理子**

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茨城大学教育学部教育研究所紀要第23号(1991)167−176 167

病弱養護学校における主体的健康管理について

中村朋子*樋口真理子**

量.はじめに

 心身ともに健康な国民の育成を目指して行う教育としての学校保健は,対象が養護学校に在籍してい る病弱児であれ,一般の学校にいる子どもであれ,なんら変わるところはない。

 病弱養護学校において,児童・生徒はハンデキャップをもっているため,それぞれの状態に応じた健 康管理が必要であり,医療的管理のもとに,学校教育が成り立っているといえる。

 武田は「入院中は医療に専念すべきであって,教育は必要ないのではないか,という反論があると聞 く。病気を治すことに重点をおくべきことは無論である。ただ,2〜3週間でも通学できないことはか なりの勉強の遅れを生じる。入院期問が1〜2カ月と長くなれば,教科によってはついていけないこと もありえよう。そして彼らは,病気以外に勉強でもハンディを負うことになり,進学したくとも事実上 困難であったり,自暴自棄になることすらある。」と述べている1)。織茂は「病弱教育のねらいは,健康 回復であるが,そのためにはそれに必要な習慣・態度を培うとともに,長い療養生活からくる情緒の不 安を除き,心の安定をはかり,学力の維持向上を図ることによって,安心感と自信を強め,自分のから だを認識して,自ら管理できるように努めさせることが必要である。」と述べている2)。医療と教育とを 併せて行うことが必要であり,病弱養護学校の普及が望まれるところである。

 病弱養護学校のなかで,養護教諭は医療看護面の専門家として,一般教諭と協力して,児重・生徒の 健康管理にあたらなければならない。

病弱児教育は,病院に入院している子どもを対象にしていることが多いため,病気については,主治 医を中心として,医療スタッフとの良いコミュニケーションを抜きにしては好ましい教育は考えられず,

医療と教育の密接な連携がきわめて重要であると思われる。

 両者の連携は定期的に行われるものと,日常的に毎日行われるものがあり,年間の行事計画,病状の 説明会,問題行動の検討や,毎日,病院での様子が学校へ,学校での一日の様子が病院へと連絡が行わ れていると思われる。また,疾病の罹患状況は普通の小,中学校が20%程度であるが,病弱養護学校の 場合は100%であるばかりでなく,一人でいくつもの疾病を併せもっているものもいる。その種類や程 度も様々であり,日常の健康管理もそれぞれの子どもの状態に応じた対応が必要であろう。毎日の健康 観察や健康相談なども普通学校とは異なっているのではないだろうか。また,病気の急変や救急事例の 発生に備えて施設,設備を整えていると思われる。

 今回の調査では,学校と医療関係との連携についての実態や,養護教諭の役割を明らかにするととも に,主体的健康管理の中でも,特に健康観察,健康相談,救急処置,それぞれの疾病に対する日常の健 康管理について,主に養護教諭がどのようなことをしているか,実態を調査し,望ましいありかたを検 討した。

*茨城大学教育学部 **静岡県吉田西小学校

(2)

168 茨城大学教育学部教育研究所紀要第23号(1991)

2.調査対象と方法

1)調査対象:全国病弱養護学校100校の養護教諭。養護教諭がいない場合は主に児童・生徒の健康管 理を行っている教師を対象とした。71校より回答があり,回収率は71%だった。そのうち,養護教諭か

らの回答は56校(78。9%),保健主事,一般教師等18人(21.1%)であった。

2)調査方法1質問紙郵送調査法

3)調査内容:児童・生徒の疾病の種類,学校と医療機関の連携について(定期的なもの,日常的なも のについて,その内容や方法。参加者等の実態),日常の健康管理,保健指導(健康観察,健康相談,

疾病の急変に備えての準備,施設,等),救急事例について等。

4)調査旧聞:昭和63年9月〜10月

3.結果と考察

D 病弱養護学校の概況

 病弱養護学校の対象となる疾病は学校教育法施行令第22条の2で,①慢性の胸部疾患,心臓疾患,腎 臓疾患等の状態が6カ月以上の医療機関または生活規制を必要とする程度のもの。②身体虚弱の状態が

6カ月以上の生活規制を必要とする程度のものとなっている。

 調査対象の病弱養護学校の概況として,学校規模,設置状況,二重・生徒の疾病状態についてまとめ

た。

 (1)学校種と規模について

 小学部と申学部をもつ学校は71門中46校で64.8%だった。規模は20〜39人が16校(34。8%),

60〜89人が13校(28.3%),40〜59が9校だった。小,申,高等部をもつ学校は23校で32.4%

を占める。その規模は130人以上が6校,60〜89人,90〜109人が各々5校だった。300人以上の 学校もあった。その他,小学部のみが1校,幼稚部,小学部,中学部を持つものが1校あった。

 (2)病弱養護学校の設置状況について

 その設置状況を医療機関とのかかわりで分類すると次のような型が考えられる3)。ア。特殊学級とし て病院のなかに学校が設置されている型(院内学校も含む)。イ.学校と病院が同じ敷地の中に建てられ ているが,建物が分かれていて,病院からの通路や通学路を通って登下校する型(病院と学校が隣接さ れている場合も含む)。ウ.医療側の治療の手を離れ,家庭に戻すまでの間,寄宿舎や,寮生活をさせ,

一般校へ復帰するまでの様子を見ながら教育を実施する型。エ.自宅から通学する児童・生徒を受け入 れる型。オ.訪問学校。カ.その他。ア型は入院加療中で移動しにくい児童・生徒にとって好都合であ る。イ型は治療の場と学習の場が分かれているので生活の切り替えがある。ウ型は学校管理下での寮や 寄宿生活のため生活指導の徹定がはかられる等各々特色がある。全国的にはイ型が多いといわれている。

 今回の調査結果でもイ型の回答は36校,50.8%だった。ついでイ型と工型をあわせている学校が9 校,イ型と二型をあわせている学校,ウ型の学校がともに4校ずつであわた。

 (3)疾病の種類について

 病弱養護学校には様々な疾病をもつ児童・生徒が在籍している。今回の調査では心臓弁膜症というよ うに診断名を回答してくれた場合と心疾患というふうに回答してくれた場合と様々だった。疾病の種類

(3)

中村・樋口:病弱養護学校における主体的健康管理について 169

と人数について表1にまとめた。調査人数は在籍児童・生徒の合計4.722人だった。

 気管枝喘息(24.5%),筋ジス

       表1 疾病の種類と人数について トロフィー(13.6%),脳性まひ,

ネフローゼ症候群。登校拒否等が 多かった。全国病弱虚弱教育研究 連盟の病類調査(1981)によると 人数の多い順に,運動器,呼吸器,

泌尿器,虚弱,肥満,精神障害と

なっている4)。

 また,在籍児童・生徒の疾病の 種類は多様化,重度化の傾向にあ るといわれている。今回の調査で は,1校平均13種類の疾病をもっ ていた。20種類以上が6校,30種 類以上が3校あった。最高は37種 類だった。気管枝喘息,登校拒否 のみ受け入れる学校が各1校ずつ あった。

2)学校と医療機関との連携につ いて

 病弱児教育が病気をもつ子ども を対象としているので,医療と教 育を併せて行われている。児童・

生徒の健康管理を行うためには,

医療機関との連携を円滑にするこ とがきわめて重要であるとされて いる5)。ここでは,学校と医療機 関との連携について,定期的なも のと,日常的なものに分けて6),会 議や話し合いの内容,連絡内容・

方法,開催される回数,参加者,

等の実態をまとめた。

 (!)日常の連携について

 日々症状が変化する児童・生徒に適切に対応するために,学校と医療機関との間で,毎日連絡を取り 合い,病状や学校での様子を把握しておくことは欠かせないものである。

 この日常の連携について調査した結果。「毎日連絡を取り合っている」と回答があったのは67校94.4 彩だった。図1は学校から病院への連絡と病院から学校への連絡とに分けて,いつ,誰がどの様な方法 で,どの様なことを連絡しているかまとめたものである。

 ① 学校から病院への連絡について

疾    患    名 人霞(n躍4722)

呼吸器疾患 1エ75 (24.9)

気管支喘息

x結核 x形成不全

サの也(肺気 など)

1156

@14

@2

運動器疾患

@3

796 (16.9)

筋ジストロフィー 癆N性関節リュウマチ yルテス病

Eエルドニツヒホフマン病

サの他(骨形成不全,側わん,骨折など)

643 T2 R3

@7U1

精神神経障害 677 (14.3)

脳性まひ トんかん ク神遅滞 ク神分裂病

サの他(神経芽細胞腫。結節性硬化症など)

348 P98 P2

@4P0

泌尿器疾患 511(10.8)

ネフローゼ症候群 攝ォ腎炎

t不全

サの他(慢性腎孟炎,紫斑性腎炎など)

263 P85 S0 Q3

重度心身障害 135(2.9)

心疾患 76 (1.6)

ファロー四徴症 S臓弁膜症

サの他(心室中隔欠損,総動脈幹症など)

27 P7 R2

血液疾患(白血病など) 56(1.9)

代謝性疾患 47 (1.0)

若年性糖尿病

サの他(フェニールケトン尿症など)

44 R

登校拒否 227(4、8)

肥 満 87(1.8)

膠原病 30(0,6)

皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など) 20(0.4)

発育不全,虚弱 18(0.4)

内分泌系疾患(甲状腺機能障害など) 15・(0.3)

消化器系疾患(クローン氏病など) 14(0.3)

その他 105(2.2)

(4)

170 茨城大学教育学部教育研究所紀要第23号(エ991)

 「放課後行う」が55.4%で.養 護教諭が行っている学校が多かっ

た。連絡方法は「連絡日誌を使用 学校から病院へ

図1 日常の連携の実態

病院から学校へ

する」が63.0%だった。連絡内容①いっ は「児童・生徒の学校での健康状 態」 「学校生活の様子や問題点に ついて」,病気の急変時やてんか んや喘息の発作時の様子や対応に ついての連絡等があげられた。放 課後,養護教諭が学校での健康状 態を,連絡日誌に記入して届けた り,直接医療機関に出向き,必要 事項を伝える方法をとっているの が多いようである。

 ② 病院から学校への連絡につ いて

 病院からの連絡は朝学校が始ま る前に看護婦が連絡日誌に病院で の健康状態や病棟内での生活の様④内容 子∴欠席,早退の連絡等を記入し て届けたり,養護教諭が毎朝,病 院に出向き連絡を受けてくること が多い。

◎連絡の事例 小,中学部45名。

学校は病院と隣…接している。

 学校から病院への連絡は,放課 後,養護教諭が病棟連絡表に子ど

もたちの学校での健康状態や,傷       leo%

三時の救急処置等を記入する。病

57腿2101  胴麗3  り5 3 ︐ 1 5β   4410    66   1よ   一

脇3

7

71       7a3 3 331 9.9 911 7      16

4

40 55

7

舗6舗6

ついが誰

72

法方平内

50

 朝 午前中 昼休み 放課後 適宣 その他

養護教諭 三下担当者

保{建主事  看護嬬

学級担任  その他

95.4 4.6

3.1

4.6

3. 1・

18.5

41.5

 17

 37

56. 9

6.2 10,8

 連絡日誌  直接口頭で  電話連絡 申し送りに出席  その他    4.8

25.8 24.2

 健康状態  検査のこと  学校生活  欠席・早退   諸連絡  発作時の対応・

 病棟内の生活

.越動学習の程度 救急処置の様子  受診予定   その他

17.7

66.エ

se.o 49.2

40.0 4.6

i8.5 32.3

10.8 30.8

50 100 %

棟の申し送りがはじまるまでに病院に届ける。病棟から学校への連絡は,朝,養護教諭は看護婦が学校 連絡表に記入したものを受け取る。それを職員朝礼で報告する。また,昼食敢,生徒指導部の教師が病 棟に行き,病棟婦長に口頭で聞く。主な内容は子どもの健康状態,検査の予定,運動制限の変更,病棟 内での生活態度や問題について等である。

2)定期的な連携について

 学校と医療機関との間で「定期的に何等かの会議や話合いが行われているjと回答があったのは93%

でほとんどの学校が医療機関と定期的な連携をもっていた。

 定期的なものについて,各々の会議内容をもとに,連絡中心,病状把握中心,問題行動の検討を中心,

個人指導中心,学校保健委員会,就学g進路に関するものも,事例研究会等に分類出来た。主なものに ついて述べる。

(5)

中村・樋口=病弱養護学校における主体的健康管理について 171

表2 学校と医療機関の連携における参加者(複数回答)

連携の種類 連絡中心 病状把握 問題行動

点者 (n=66) (n二37) (n瓢21)

院     長 18(27.3) 0 1(4.8)

副  院  長 12(18.2) 2(5.4) 0 小児科医長

ョ形外科医長

36(54.5)

R(4.5)

14(37.8)

O

2(9.5)

P(4.8)

主  治  医 33(50.0) 21(56.8) 7(33.3)

婦     長 58(87.9) 27(73.0) 15(71.4)

担当看護婦 16(24.2) 20(54.1) 16(76.2)

病棟主任看護婦

剴カ指導員

11(16.7)

Q3(34.8)

6(16.2)

P5(40.5)

4(19.0)

S(19.0)

保     母 19(28.8) 15(40.5) 7(33.3)

その他 ※1 15(22.7) 2(5.4) 0 校     長 45(68.2) 15(40.5) 3(14.3)

教     頭 49(74.2) 18(48.7) 10(47.6)

教 務 主 任 44(66.7) 12(32.4) 5(23.8)

養護教 諭

w 年 主 任

38(57.6)

Q7(40.9)

23(62.2)

P2(32.4)

エ0(47.6)

V(33.3)

学 級担 任

lP担当教諭

23(34.8)

P0(45.2)

23(62.2)

W(21.6)

9(42.8)

S(19。0)

その他 楽2 34(51.5) 22(59.5) 10(47.6)

X1看護部長,総:婦長,理学療法士,薬剤師。事務長など X2保健主事,生徒指導部長,学部主事,事務長など 1回」が56%,ついで「学期1回」「週1回」だった。

 (1)連絡中心の会議

 78.8%の学校が会議をもって いた。名称は多くが「学校病棟連 絡会」「医教連絡会」だった。開 催される回数は「月1回」が51.5

%,「学期1回」以上が18%だっ た。参加者については表2にまと めた。病院側は婦長,小児科医,

主治医が多かった。学校側は教頭,

校長,教務主任,養護教諭等だっ た。会議の内容は行事計画の詳細,

施設設備の計画,入退院の予定,

事務連絡,転入生について,外泊 予定,保健指導計画,学校運営に ついて,人事異動,教育課程の説 明などである。

 ② 病状の把握中心の会議  43.9%の学校が行っていた。

「病状を聞く会」「学校病棟カン ファレンス」「合同カンファレンス」

「指導連絡会」「病棟打合せ会」

等だった。開催される回数は「月

 参加者は表2にまとめた。病院側は婦長,主治医,担当看護婦,児童指導員,保母等だった。学校側 は養護教諭,学級担任が多かった。具体的な内容としては,一人一人の疾病の説明治療方針,今後の見 通し,学校生活の様子,学習状況等についての情報交換,協議.相互研修,などである。直接,児童・生 徒を担当する学級担任や養護教諭は,より正しく病状について把握しておく必要がある。

 (3)問題行動の検討を中心にした会議

 30.3%の学校で行われていた。 r生活指導連絡会」「生活懇談会」「生活委員会」等の名称だった。検:

討内容は,病棟内での問題行動,学校での行動変容,生活指導上の基面的問題,日常生活の取り組み,

等である。参加者は表2に示した。

4) 日常の健康管理

 日常の健康管理のうち,健康観察,健康相談,救急処置についてまとめた。

 .(1}健康観察について

 児童・生徒の健康状態を的確に把握しその状態に応じて,生活指導を行うことは健康管理上.大切な ことである。特に疾病をもっていたり,発作や症状の急変の恐れのある場合は常時観察を繰り返す必要 がある。

 普通学校では始業前に行われている場合が多い。病弱養護学校で健康観察を行っていると回答があっ たのは65校(91.5%)でほとんどの学校で行われていた。実施機会は「始業前」は全部の学校で,「授

(6)

172 茨城大学教育学部教育研究所紀要第23号(1991)

表3 始業前の健康観察の実態

( )内は%

健康観察の実態 学校数

学   級 56(86.2)

養   護 4(6.2)

実施者 児  童  ・ 3(4.6)

n鵠65 教 科 担 当 教 2(3。8)

全     職 1(1.5)

そ      の 6(9.2)

57(87.7)

場  所

5(7.7)

n離65 そ      の 5(7.7)

教師が観察し,本人の訴えを聞く 51(81.0)

実施方法 本人が用紙に記録し。教師が確認する 10(15.9)

n鐸63 その他 4(6.3)

表4 健康観察結果の利用(複数回答)

()内は%

結果の利用法 学校数 (n謀55)

再観察をする際のめやす 30 (54.5)

異常が認められたときは病棟連絡 16 (29.1)

病棟への連絡時(連絡会も含む)に利用 14 (25.5)

健康状態の把握 9 (16.4)

生徒利解に役立てる 6 (16.9)

学校生活を送る際の配慮 6 (10.9)

職員との連携・啓蒙に役立てる 5 ( 9.1)

各種統計をとり,保健活動に役立てる 4 ( 7.3)

その他 12 (21.8)

業中」は67.7%,「休み時間」は 58,5%だった。その他,登校中,

下校前,機能訓練時,等があった。

 表3は始業前の健康観察につい てまとめたものである。学級担任 が教室で行っている場合が多かっ た。休み時間では校庭や便所の巡 視等があった。発作等,いっ,ど こで起こるか予測できないので,

休み時間等でも観察は必要と思わ れる。表ユに述べたように様々な 疾病をもっている児童・生徒が在 籍しているので,何を観察するか は疾病によって変わってくる。観 察項目は主治医と相談して決める のが望ましい7)。喘息,腎疾患な ど個人別に観察記録簿が作られて いるのもあった。

 回収できた観察簿で共通に観察 しているものをまとめると次のよ うだった。①身体の様子では気分

・体調,疲労,便通,体温.睡眠 時間,頭痛や腹痛の有無等,②生 活の様子では起床,就寝時刻,朝 食,夕食の摂取,歯磨き,洗面(

小学校),③その他 学習状態,

遊びの様子,検査や治療の予定,

悩みや心配ごと等

 (2)健康観察結果の利用につい・

 健康観察結果は保健室に届けら れるが77.6 %,担任がもっている10.3%,問題があれば養護教諭に届く8.6%だった。養護教諭が健康 観察結果をどの様に利用しているか表4に示した。再観察する際の目安にする,異常が認められれば 病棟に練絡する等があげられた。

 ③ 健康相談について

 普通学校では養護教諭は児童・生徒や一般教師から様々な相談を受けている。病弱養護学校では自分 のもっている病気のことだけでなく病院のことや学習の事など様々な相談を受けていると思われる。

 今回の調査では,養護教諭配置校では養護教諭が随時行う80.4%,学校医が定期的に行う17.9%。養 護教諭が定期的に行う5.4%,その他14.3%,特に健康相談の機会を設けていないと回答があったのは

(7)

中村・樋日:病弱養護学校における主体的健康管理について 173

14.3%だった。養護教諭未配置校では特に健康相談を行っていないが71.4%で学校医,担任等が行って る28.6%だった。

 表5は児童・生徒からの相談内容をまとめたものである。病気のこと,病院のこと.学校のこと等だ った。病気のことでは,「医者に何ともないと言われたのに症状が続いているが……」,「病気は治るの だろうか」,病院のことでは友人のこと,病院スタッフのこと等,人間関係に関するものが多い。学校 の事に関するものでは,学級担任とのトラ

ブル,いじめ,クラスがつまらない,勉強 のおくれ等だった。養護教諭は必要に応じ て学級担任や医療機関と連携をとり,ある いは調整役となり問題解決をはかることが 大事である。

 (4)救急処置,救急事例について  教職員は喘愚の発作,糖尿病の低血糖に

よる意識障害s心臓発作,てんかん発作な ど児童・生徒がもっている疾病の急変に対 応できる救急処置方法を習得しておく必要 がある。どの程度まで学校で手当を行えば よいのかの処置基準を医療機関側と協議し て決めておくのが望ましい。

 特に学校と医療機関が隣接していない場 合は,いざという時に準備がないために,

手遅れになってしまったということを防ぐ ためにも,救急体制の確立が必要である。

 児童・生徒の疾病の種類や程度によって なにを準備しておくかは異なってくる。医 療機関と相談して整えたい。今回の調査で は準備してあるものとして酸素吸入器

(70.6%),吸引器(26.5%),喘息用吸入 器(14.7%),ストレッチャー(20.6%),車 椅子(14.7%),血糖検査一式,血糖低下時 のための補食,尿検査のための検査紙等が あげられた。

表5 児童・生徒からの健康相談の内容(複数回答)

相  談 内  容 人  数 病状について 16(55.2)

心理的不安について 7(24.1)

医学的知識について 6(20.7)

(1) 病気のこと 身体的変化について 3(10。3)

n臨29 検査のこと 2(6.9)

治療のこと 1(3.4)

発作の不安のこと 1(3.4)

その他 5(17.2)

病棟内の友人との関係 18(69.2)

病棟生活について 12(46.2)

(2) 病院のこと

病院スタッフとの関係 10(38.5)

H瓢26 病院側の対応について 1(3β)

その他 1(3.8)

対人関係について 13(46.4)

勉強の遅れ 9(32.1)

(3) 学校のこと

学校生活の不適応 9(32.1)

n醤28 学校生活について 2(7.エ)

その他 3(10.7)

進路のこと 12(5α0)

性的な悩み 8(33.3)

家庭環境のこと 8(33.3)

(4) そ の 他

退院のめやす 4(16.7)

h謡24 身体のこと 3(12,5)

生活の制限について 3(12.5)

その他 15(62.5)

 疾病のため運動制限のある児童・生徒が多く,けが等の救急事例は普通学校より少ないといわれてい る。今回は疾病に伴う救急事例について調査した。疾病名,急変した時の様子,判断と行った処置。そ の後の経過,事例に対する意見・感想を記入してもらった。気管支喘息18例,若年性糖尿病8例,心疾 患7例,てんかん6例,ネフローゼ2例,紫斑病,高血圧症,脳腫瘍,筋ジストロフィーなどがあげら

れた。

 養護教諭の回答から,主な事例を資料としてまとめた。

(8)

エ74 茨城大学教育学部教育研究所紀要第23号(1991)

ま  と  め

−∩乙004︹U

6

7

病弱養護学校は小,中学部あわせ持つものが65%で,学校が医療機関と隣接しているが50%だった。

疾病異常の種類は喘息等呼吸器疾患,筋ジストロフィ等運動器疾患,ネフm一ゼ症候群,慢性腎炎 等,泌尿器系疾患等だった。

学校と医療機関との日常の連携は毎日連絡をとるが94%で養護教諭が行っているのが多かった。

定期的な連携は939・が行っており.その内容は連絡,病状の把握,問題行動の把握等だった。

毎日の健康観察は始業前,授業中,休み時間等に行われていた。観察結果は再度健康観察を行う際 の目安にする.異常があれば病院へ連絡する等だった。

健康相談は養護教諭配置校では養護教諭が行う86%,学校医が行う18%だった。養護教諭がいない 学校では学校医や担任が行う28.6%だった。相談の内容は病状や.それらの不安について,病院内 の生活,友人やスタッフとの関係,学校での対人関係,不適応,勉強の遅れ,進路について等があ げられた。

救急事例として気管支喘息,若年性糖尿病,心疾患,てんかん。ネフローゼ症候群等の事例を紹介

した。

参 考 文 献

1)武田修明:病院内学級の普及を望むe長期入院による勉強の遅れを考えて 朝日新聞 1988.2.15 2)織茂 領:病弱養護学校の実態とその扱い方 健康教室Vo1.35. No.8 pe 411984.

3)前掲書 2) p。41 4) /f 2) P.43

5)永峰博:心身障害の原因と養護 病弱編 健康教室Vo1。35, No.9 p.14〜161984.

6)文部省:病弱教育における学校保健,病弱教育の手引き一病理・保健編一.p.22 1985.

7)永峰 博:病弱児の教育と健康 学校保健研究 Vo 1.29, No。9 p. 352 1987,

(9)

中村・樋口:病弱養護学校における主体的健康管理について 175

資料  救 急 事 例

事例1 気管支喘息 小学部6年 男

(登校前) AM 4:00小発作のため,吸入を行なったが.排疾後も喘鳴が持続している状態にて登校

急変の様子 (登校後) 朝会中は喘鳴が聞かれるのみで,自制可能にてそのまま論点に入ったが,間もなく呼吸 苦が感じられるようになり.肩あがりも見られた。

保健室に来室してきたため,ベッドに座位の楽な体位をとらせ水分補給を促すが,それが不得意な 行なった処置 子どものため, 100㏄だけ飲水した。腹式呼吸も声かけをして行なったが,呼吸状態は改善せず,

口唇がやや紫色をおびてきたので,おぶって帰棟する。

その後の経過 病棟にて。テとなる。 再度水分補給,腹式呼吸,吸入等を行なったが,大発作のためすぐにも点滴が始まり安 この児重の場合, 発作が起きると大発作であることが多いこと.水分補給が不得意であることなど

意見・感想 事前に情報としてこちらが把握していたので,帰棟させるタイミングは遅れなかったものと思われ,

る◎

事例2  若年性糖尿病 小学部4年忌女

急変の様子 土曜日,日課終了後,学級担任と話をしていて黙り込み,だんだん返事をしなくなり,養護教諭に A絡が来る。

行なった処置 養護教諭が見に行った時点で椅子の上で眠り始め,問いかけにうなずく程度であった。低血糖によ 驛Vョックが疑われたので,直ちに病棟へ運ぶ。

経 過 病棟にてブドウ糖1単位を服用。血糖検査や点滴等を受けて回復する。

意見・感想

このケースは蕩児も低血糖について畠覚がなく,気分不良をなかなか訴えない。学級担任も病院で フインシュリン注入と低血糖のつながのをよく理解できていなかった(理論で飲みこめていても実

ロの尊重の状態を低血糖症状としてとらえられなかった)ため.養護教諭への連絡が少し遅れたケースである。このあと,④学級担任を交えて主治医と話し合う。②児童にも.どういう症状が出た時

ノ先生に話したら良いのかを指導する。③養護教諭から学級担任へ糖尿病について詳しい資料を提 氓キる。④疑わしい症状が出て,学級担任のみで判断しかねるときは養護教諭に連絡する,などを ト確認し合い,本児も血糖コントロールができ,退院できた。

事例3  先天性筋ジストmフィー症 高等部3年 女

急変の様子

行なった処置

経 過

意見・感想

症状が進み,排擁等が充分にできない状態である。2時丁目の授業途申に疾が詰まり。含を白黒さ せて呼吸をしにくそうにしていたので,授業担当者が保健室へ連れてきた。

休養室の台の上に横臥させ。体幹部を毛布などで高くし,背部を軽く殴打し,排痕を促した。充分 でないので体位を変え.吸引器による排疾を行なった。

疾の喀出がすめば普通の状態で授業を受けた。

病状の進行により,末期に近くなると全ての機能が悪くなり,排擁も充分にできなくなる。以前は すぐ病棟に帰して処置をしてもらったが,校医の指示もあり学校で吸引器を購入してもらった。そ れからは保健室にて処置ができ,その後も続けて授業が受けられるようになり,良かったと思って いる。また,校外学習の場合も携帯できるので安心して参加することができる。

事例4  脳腫瘍後遺症,水頭症、脳・腹腔シャント 中学部1年 女

急変の様子 行なった処置

その後の経過

意見・感想

2時間目,教科担任からf目の様子がおかしいです。それに。ポーッとしています。字を書かせる と手が震えます。」と保健室に報告があった。

見ると両目が落陽現象であり,歩行のふらつきも認めた。脳圧二進症状と判断し。すぐに車椅子に のせ,脳外科を受診した。

外来ではすぐに脳室穿刺20me。精密検査のために入院した。腹部鰯のシ砲ン塾の先端が取れてしま ったとの事で再建術を行なった。

教科担任の的確な観察,判断が良かった。長く放置すれば意識瞳害も進み。鰻球も元に戻りにくい との事。全職騒に個々の観察の観点を説明しておく必要があると感じた。

(10)

176 茨城大学教育学部教育研究所紀要第23号(1991)

事例5 仁王まひ中学部2年女

急変の様子 少し風邪ぎみとの連絡を受けていた。発熱はなく登校したが,学習中に機嫌,顔色共に不良。婆量,

@汁も増えた。

行なった処置 担任と養護教諭が体位を変換させ,疾を取り除くために背中をたたいたりなどの処置を行なったが ノ和せず,直ちに病棟連絡をし,ストレッチャーで搬送した。

経 過 病棟で吸引処置をされ,午後は要安静となる。コーヒー様の野物もみられ,2〜3B欠席が続いた。

意見・感想

言語を持たない生徒であるので,病棟,担任,養護教諭の三者の連絡が密にならざるを得ない。養

?教諭としては病棟の申し送りで詳しく聞き,子供の体調に応じた学習が展開できる様に早屋に担 Cに連絡をしておく事が必要である。健康観察は随時行ない,病状変化に気付く目と。それへの対 闘頃から養っておかねばならないと思う。吸引器の使用については。医療行為という事であり ナきないので,今後の救急時の対応が問題となると思う。本校では一般教員向けに,救急法旧習会

i年1回)を開催している。

事例6  てんかん 高等部3年 男

急変の様子 バスケットの試合中,突然倒れ,てんかん発作を起こしたとのことで,電話連絡を受け,体育館へ

?かった。

行なった処置

駆け付けたときはすでに発作はおさまっており,うっすらと目を開いていた。周囲の生徒を遠ざけ ュ作時の状況を授業担当者から聞き,3〜4か月ぶりの大発作であったこと,失禁していたことな

ヌから入院している病院へ帰した。

経 過 病院の医師に見てもらい.翌日から元気に登校した。

意見・感想

病院翻から.薬の量が変わったこと,疲労が重なると発作が生じやすくなることなどの連絡を受け S任らに連絡した。また,本人にも発作前に前駆症状があったということを聞き,自分の好きな運 ョでも.そのような場合には休むように指導し,その旨を担任に連絡した。薬の変更等,もっと早

ュ連絡を受けていたら,また.授業担当者が運動前に充分観察を行なっていたら……と思った。

事例7  先天性心疾患 中学部3年 女

急変の様子

学校時終了後,校内巡視をしていると,教室で机に臥せたままでいるので気になって観察すると,

ケ内苦悶であり,呼吸促進の状態で顔面紅潮ぎみであった。しだいに顔色も悪くなの.口唇の色も O雲で,脈拍も頻脈で不整脈であり,血圧も80/42m憩Hgと下がっていた。

行なった処置

頻脈発作であると判断し.直ちに主治医に連絡したところ,主治医と看護婦が学校まで来てくれて f察してくださった。注射や酸素吸入等の救急処置をしてもらい.酸素吸入を続けながら病棟へつ 黷ト帰ってもらった。

その後の経過 酸素吸入等の治療により,顔色や口唇の色も良くなり,脈拍も元に戻り,状態が落ち着いてきた。

サの後も安静にして休養し,翌々日登校できるようになった。

意見・感想 ちょうど校内巡視で校内をまわっていた時に急変に気付くことができたので,早期に対癒すること ェできたと思う。学級丁丁も教科担任もいない休み時間には巡回して観察することが必要であると ト認識した。

事例8  心内膜欠損症 小学部4年 男

急変の様子 防災訓練で1(扮ほど外に立っていた。顔色が悪くなり,呼吸が乱れてきたので日陰に座らせ,養護 ウ諭に連絡した。

行なった処置 養護教諭が見た時点で,すでに目角チアノーゼが軽度に見られたので.すぐ保健室で休ませる。か ネり気温も高かったので空気を入れ裂㌧,衣服をゆるめたりする。冷だいタオルで頭を冷やした。

その後の経過 呼吸苦,チアノーゼが30分休んでもとれず,頭痛や気分不快など酸素不足の症状が見えたので,併 ンの病院に依頼し,1時間ほど酸素テントに入る。その後回復し下校する。

意見・感想

普段から,高温,低温への順応性がなく。要注意だった。今回は訓練だったが,本当の災害時にも Nこり得ることだと思う。帽子の着用等当然のことながら,教師の細かい配慮の必要牲を感じた。

ワた今回男児は,前日かな,りハードな日程での外出をし,疲労と睡眠不足も重なっていたというこ ニなので,日頃から本児への生活指導も大切だと思った。

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