*茨 城 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科( 〒310-8512 水 戸 市 文 京2-1-1; Graduate School of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).
**茨 城 大 学 教 育 学 部 教 育 学 研 究 室( 〒310-8512 水 戸 市 文 京2-1-1; Laboratory of Education, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).
理科授業における科学的探究可能な「問い」の生成プロセスの検討
― 変数の抽出と因果関係の同定に着目して ―
河原井俊丞
*・宮本直樹
**(2019 年 8 月 30 日受理)
A Study of the Process of Generating Scientifically Explorable “Questions”
in Science Class: Focusing on Variable Extraction and Identification of Causal Relationships
Shunsuke KAWARAI* and Naoki MIYAMOTO**
(Accepted August 30, 2019)
はじめに
科学的探究のプロセスでは, 「問い」の生成は科学的探究の初段階に位置付けられている(例えば,
宮本
2017)。中央教育審議会(
2016)においては「問い」の生成にあたり, 「気付き」→「疑問」→「問い」
1)のプロセスが示されている。これまでに,学習者の「問い」の生成に対する教師の教授方略に対す る先行研究(例えば,柳原
2014;小暮・小倉
2018)
2)があり,ここでも「気付き」 「疑問」をもとに,
学習者に「問い」を生成させている。つまり,科学的探究のプロセスにおいて,学習者が突如とし て「問い」を生成するのではなく, 「気付き」や「疑問」の生起といった思考プロセスを経て「問い」
を生成している。
しかし,上述した先行研究において,学習者が「気付き」や「疑問」を生起するプロセスについ ては検討されておらず,また,どのようなプロセスで「気付き」 「疑問」を生起させることが「問い」
の生成をより促進させるのかについて検討がなされていない。
したがって,学習者のプロセスを明らかにすることにより,プロセスに基づいた教授方略の検討 に対しての一助となる。
河原井・宮本(
2018)では,学習者が「問い」を生成するまでの思考プロセス(以後,「問い」
の生成プロセス,と表記する)の暫定的提示を行うために,文献調査を行った。その結果,「前探
究段階」→「実体験による直観」→「感性的把握」→「『気付き』の生起」→「既有知識への適用」
→「認知的不協和」→「『疑問』の生起」→「『変数の抽出』 扌『因果関係の同定』」→「『科学的探 究可能な『問い』の生成」といった各ファクターとプロセスを暫定的に提示した。吉田・川﨑(
2019) では,「疑問」→「問い」の変換過程での思考の順序性を明らかにするために,大学生を対象とし て面接調査を行っている。その結果,「問題状況の確認」→「既有知識の想起」→「要因の検討」
→「仮説の形成」→「問いの設定」のような順序性があることを示している。しかし,河原井・宮 本(
2018)における「問い」の生成プロセスの実証的研究はまだ行われていない。また,吉田・
川﨑(
2019)では,大学生を対象とした理科授業の文脈でない面接調査において,提示された「疑 問」から「問い」への変換を行わせている。つまり,理科授業において学習者が事象から,どのよ うなプロセスを経て「疑問」が生起されたかについても調査の余地がある。
そこで,本研究では,中学生を対象とした理科授業において,河原井・宮本(
2018)が暫定的 に提示した科学的探究可能な「問い」の生成プロセスの実証的検証を行い,そのプロセスを明らか にする。
目的及び方法
本研究は,理科授業において,科学的探究可能な「問い」の生成プロセスの実証的検証を行い,
学習者がどのようなプロセスを経ているのかを明らかにすることが目的である。
研究の方法として,まず,学習者に提示した事象より「問い」の生成を行わせる授業を実践し,
その後「問い」の生成プロセスに関するアンケート調査を実施する。次に,生成された「問い」の 内,科学的探究可能な「問い」(定義については後述する)であるものの特定を行う。そして,科 学的探究可能な「問い」の生成プロセスを明らかにする。
調査概要
平成
30年
9月,茨城県内の公立中学校第
1学年
1クラス分(計
39名)を対象に,単元「物質 のすがた」
2章「物質の状態変化」(有馬ら
2016)において授業を実施した。授業は
1時間分(
50分間)のみである。授業中,学習者は提示された事象を観察して思ったこと,考えたことをワーク シートに記入,それをもとに個人で「問い」の生成を行わせた。提示した事象は,密封したビニル 袋に入れたアセトン,牛脂,水の
3種類の物質をお湯に浸したものである。なお,「問い」につい ての説明としては,観察した現象に対する科学的に探究可能な「問い」をつくること,科学的に探 究可能な「問い」とは,それをもとに実験・観察を行なって調べていくことができるものであると した
3)。以上の内容を授業開始後に研究実施者による口頭の説明を行い,また,ワークシートのリー ド文としても記載した。その後,個人で「問い」の生成プロセスについてのアンケート調査に回答 を求めた。
ワークシート,アンケート調査の作成
本研究では,学習者における科学的探究可能な「問い」の生成プロセスを調査することが目的で
あるため,河原井・宮本(
2018)での「問い」の生成プロセスの部分にある用語はワークシート 中には用いないようにした。ワークシートには,提示された事象を観察して思ったこと,考えたこ とを自由記述する欄と生成した「問い」を記入する欄のみとした。
アンケート調査では,学習者がワークシートに生成した「問い」に対しての生成プロセスを回答 させることが目的である。河原井・宮本(
2018)での「問い」の生成プロセスの各ファクターを 調査対象である学習者にわかりやすい表記にした(表
1)。さらに,表
1に示したように河原井・
宮本(
2018)が文献調査から明らかにできていないファクターが存在する可能性もあるため,「
J.その他」を追加した。ここでは,表
1に示した
A~
Jのうち, 「問い」を生成するまでに思ったこと,
考えたことに最も当てはまる記号を選択し,それらを矢印でつなぐことで生成プロセスの回答を行 わせた。複数の「問い」が生成できた場合であっても,回答するプロセスは
1つのみとした。なお,
注意事項として,解答欄の左から右に記入すること,一直線だけではなく,分岐したり,行き来し たりする箇所があっても良いこと,必ず最後には「問い」に辿り着くこと,記号は複数回選択可で あることとした。なお,作成したワークシート及びアンケート調査は資料
1,
2に示す。
次に,前の設問で回答した「問い」を生成するまで思ったこと,考えたことに最も当てはまる記 号について具体的に回答を求める問いを設問した。注意事項として,それぞれの「問い」を生成す るまでの順序において,選んでいない記号については回答しないこと,文章で困難な場合は箇条書 きやキーワードのみの回答でも良いこととした。
表
1 「問い」の生成プロセスにおけるファクターファクター 記号 アンケート調査における表記及び回答例 前探究段階
A知っていることの再確認
例)沸騰して気体になって体積増える 実体験による直観
B現象をよく観察する
例)物質の変化を重点的に 感性的把握
C「おやっ」 「あれっ」のような感情
例)あー,なんか膨らんでいる
「気付き」の生起
D気付いたこと
例)アセトンが入った袋が膨らんだ 既有知識への適用
E気付いたことと知っていることを比べる
例)膨らむんだよ,やっぱり 認知的不協和
Fモヤモヤ
例)なぜ,どうしてが解けない
「疑問」の生起
G疑問に思ったこと
例)なぜ,袋が膨らんだのか
変数の抽出 因果関係の同定
H
変化させる量
例)どのくらいの量で変化するのか
I変化する量
例)牛脂が溶けて,量が増えた
その他
Jその他
[例は,アンケート調査において,生徒が記述したものである。また原文ままである]
分析方法
まず,学習者が生成した「問い」から科学的探究可能な「問い」であるものを特定するため,科 学的探究可能な「問い」の特定の基準として, 「問い」の定義付けを行う。先行研究において「問い」
は「実験において変数操作を助け,現実的な調査に従うもの」 (
Alfke 1974),「原因と結果の関係性 が表現され,特定の変数,測定可能な変数,操作可能な変数が計画された実験を必要とするもの」
(
Cuccio-Schrripa&
Steiner 2000),「観察・実験を通して実証可能な問い」(坂本ら
2016),「操作可 能な特定の変数に着目して,観察・実験などの科学的な手法を通じて答えることができる疑問」 (廣・
内ノ倉
2017)とされている。先行研究においては「観察・実験を通して」「観察・実験などの科学
的な手法を通じて」といった要素が「問い」の定義に含まれている。しかし,中村(
2018)は生 成した「問い」を科学的な手法を通じて検証可能であるかについて評価することを「検証可能性の 評価」とし,検証可能性が学習者の「問い」を生成するまでの過程において入り込むこと,学習者 が検証可能性の判断することの困難さを指摘している。つまり,「問い」の生成段階において,生 成した「問い」のみから,「問い」が「観察・実験を通して」「観察・実験などの科学的な手法を通 じて」といった要素を含んでいるかということを特定の基準とすることには困難が生じる。そこで,
本研究では, 「問い」の定義として, 「物質の状態変化」における温度,状態,体積,時間といった「変 数の抽出」 「因果関係の同定」を行っているものとする。そして,上記の定義を科学的探究可能な「問 い」の特定の基準として用いる。
次に,科学的探究可能な「問い」であると特定した「問い」の生成プロセスにおけるファクター の検討を行う。各「問い」の生成プロセスにおける各ファクターの回答総数をカウントする。なお,
1
つの「問い」の生成プロセス内において同じファクターが複数個見られる場合は,プロセス内で
1回見られたとみなし,
1個とカウントを行う。さらに,アンケート調査における各ファクターの 内容が未記入の割合を算出する。これらによって,以降の分析で使用するファクターの検討を行う。
そして,科学的探究可能な「問い」であると特定した「問い」を生成した学習者における「問い」
の生成プロセスの整理を行う。 「問い」の生成プロセスと内容はアンケート調査より回答を得ている。
また,今回は
1つのプロセスのみの回答であったため,学習者によっては各「問い」において異な るプロセスを辿っているが,アンケートには表出されていない可能性も考慮できる。よって,アン ケート調査の回答結果にワークシート,プロトコルのデータを併せて,各「問い」の生成プロセス の整理を行う。
最後に,各「問い」の生成プロセスにおけるファクターから「問い」の生成に至るまでのファク
ター間の推移回数をカウントする。これらの結果より,科学的探究可能な「問い」の生成プロセス
を明らかにする。なお,記号間の推移から思考過程を明らかにする研究として,中村・松浦(
2018)
では仮説設定に思考過程を,吉田・川﨑(
2019)は「疑問」から「問い」の変換における思考過
程に用いている。このことから,本研究においてもファクター間の推移回数から,「問い」の生成
プロセスを明らかにすることには妥当性があると考える。
結果と考察
まず,学習者が生成した「問い」から科学的探究可能な「問い」であるものを特定した
4)。科学 的探究可能な「問い」であると判断したものは「なぜ冷めるとしぼむのか」のように温度と体積に 関する「変数の抽出」「因果関係の同定」がなされているもの,または「アセトンが入った袋はな ぜふくらむのか」のように体積に関する「変数の抽出」がなされているが「因果関係の同定」はで きていないものである。その結果,学習者が生成した「問い」 (計
86個)の内,科学的探究可能な「問 い」は
38個(
44.2%)であった。
次に,科学的探究可能な「問い」であると特定した「問い」の生成プロセスにおけるファクター の検討を行った。「問い」の生成プロセスにおける各ファクターの回答総数をカウントし,さらに,
アンケート調査における各ファクターの内容が未記入となっている割合を併せて表
2に示す。
表
2より,「
J.その他」の回答数が
0個であったため,追加するべきファクターはないと判断し た。また,科学的探究可能な「問い」であると特定したものには,生成した「問い」に「変数の抽 出」「因果関係の同定」が含まれている。つまり,表
1から
Hと
I,もしくは
Hまたは
Iがプロセスに 表出すると仮定をした。しかし,表
2の各ファクターの回答数では「
H.変化させる量」 (
15.8%), 「
I.変化する量」 (
18.4%)であることから,学習者は
H,
I以外のファクターにおいて「変数の抽出」 「因 果関係の同定」を内包していることが推測される。さらに,アンケート調査においてファクターの 内容が未記入であった割合をみると,
H(
50.0%),
I(
42.9%)であり,その他のファクターでの 未回答の割合と比較すると多いことがわかる。これらのことから,
H,
Iは科学的探究可能な「問い」
において重要なファクターであるにも関わらず,
H,
Iのファクターとしては表出されにくく,また,
表出できた場合であってもどのようなことを具体的に思っていたか,考えていたかと問われると,
不明確な場合が多いということを示唆することができる。そこで,学習者は
H,
I以外のファクター において「問い」に含まれる「変数の抽出」「因果関係の同定」をどの程度内包しているのかにつ いて分析を行った結果を表
3に示す。なお,アンケート調査の回答からは看取ることができなかっ た部分には斜線を引いた。さらに,「変数の抽出」「因果関係の同定」を内包するファクター数を整 理したものが表
4である。
よって,表
3,
4より,
H,
I以外のファクターにおいて, 「変数の抽出」では「
C.『おやっ』 『あれっ』
のような感情」 (
31.6%),「
D.気付いたこと」 (
42.1%),「
G.疑問に思ったこと」 (
44.7%)のファク
表
2 「問い」の生成プロセスのファクターの回答数及び未記入の割合A B C D E F G H I J
回答数
11 36 31 34 7 15 38 6 7 0割合(各回答数/38 個) [%]
28.9 94.7 81.6 89.5 18.4 39.5 100 15.8 18.4 0.0未記入
3 1 1 1 1 1 2 3 3 0割合(未記入数/各回答数) [%]
27.3 2.8 3.2 2.9 14.3 6.7 5.3 50 42.9 0.0ターに相対的に多く内包されていた。「因果関係の同定」では全体的にアンケート調査の回答から 看取ることができず,該当数も少ない。その中でも,相対的にみて多く「因果関係の同定」が内包 されているファクターは「変数の抽出」と同様に「
C.『おやっ』 『あれっ』のような感情」 (
5.3%), 「
D.気付いたこと」 (
5.3%),「
G.疑問に思ったこと」 (
10.5%)であった。つまり,学習者において
H,
Iは主に
C,
D,
Gに内包されているファクターであることがわかる。
また,全体的にアンケート調査の回答のみからでは「問い」に含まれる「変数の抽出」「因果関 係の同定」(ファクターでは
H,
Iに該当)の看取りが困難である。このことからも,アンケート調 査の回答結果にワークシート,プロトコルのデータを併せて,各「問い」の生成プロセスの分析を 行っていく必要性がある。さらに, 「問い」に含まれる「変数の抽出」 「因果関係の同定」がアンケー ト調査,ワークシート,プロトコルに表出しない可能性も考慮することができるため,その場合は
「
X.変数の抽出+因果関係の同定」というファクターを追加し,分析を行っていく。
H,
Iが単独で ファクターとしてプロセスに含まれている場合には,
Xに分類を行う。
そして,科学的探究可能な「問い」であると特定した「問い」を生成した学習者における「問い」
の生成プロセスの整理を行った。整理の方法としては,表
5に示すようにアンケート調査の回答結 果にワークシート,プロトコルのデータを併せて行った。表
5の場合は,アンケート調査だけで
表
3 「問い」に含まれる「変数の抽出」「因果関係の同定」を内包するファクター
問いNo 変数 因果 問いNo 変数 因果 問いNo 変数 因果
1 C,D,E,G 14 D,G 27 C,D,G G
2 15 28 C,D,G
3 16 29 C
4 C 17 30
5 D D 18 B,G 31 C,G,H
6 19 C,G C,G 32 D
7 20 C,D,G D 33 C,D
8 G,D 21 G G 34 D
9 D,F 22 C,G,I C,G,I 35
10 23 36 B,D,G
11 D,G,I 24 C,G 37 D,G
12 I 25 D,H H 38
13 B,G 26 C,D,G
表
4 「問い」に含まれる「変数の抽出」「因果関係の同定」を内包するファクター数
A B C D E F G H I
変数の抽出
0 3 12 16 1 1 17 2 3割合(各内包数/38 個) [%]
0.0 7.9 31.6 42.1 2.6 2.6 44.7 5.3 7.9因果関係の同定
0 0 2 2 0 0 4 1 1割合(各内包数/38 個) [%]
0.0 0.0 5.3 5.3 0.0 0.0 10.5 2.6 2.6は,「問い」の生成プロセスが「
B→
D→
H→問い」であったが,そこへワークシート,プロトコル を時系列に応じて追加することで,プロトコルにみられる「
C5:あっ,牛脂とけてるじゃん,もう」
のように「
C.『おやっ』 『あれっ』のような感情」を看取ることができた。これらによって,「問い」
の生成プロセスは「
B→
C→
D→
X→問い」とみなす。
最後に,上記の方法により整理を行った「問い」の生成プロセスにおけるファクターから「問い」
の生成に至るまでのファクター間の推移回数をカウントした。表
5におけるプロセスを例にする と「
B→
C→
D→
X→問い」となっており
B→
C,
C→
D,
D→
X,
X→「問い」,においてそれぞれ
1回ずつの推移があったとしてカウントした。「問い」の生成に至るまでのファクターの推移回数を カウントした結果を表
6に示す。表
6においては,例えば「
A→
B」という推移があったとしたら,
列の
Aから行の
Bに推移したと捉える。この場合は,表
6では
1回の推移となる。さらに,「問い」
の生成プロセスにおける総推移回数(
206回)をファクター間の推移のパターン(計
72パターン)
で割ることで,平均の推移回数を算出した。その結果,平均推移
2.9回となったため,「問い」の 生成プロセスにおけるファクター間の推移のパターンのうち,
3回よりも多い推移を,「問い」の 生成プロセスにみられる推移とみなし,図
1に科学的探究可能な「問い」の生成プロセスを示した。
表
5 「問い」の生成プロセスの整理の方法アンケート調査 回答 ワークシート 記述内容 発話プロトコル ファクター
B:何がどのように変わったか B
C5:あっ,牛脂とけてる
じゃん,もう
CD:牛脂がとけている
牛脂はとけた
C20:(班員からの「牛脂
は入れるととける?」に 対して)とける
D
H:どのくらいの量で変化するのか X
問い:牛脂はどのくらいの
温度でとけはじめるのか 問い
[発話プロトコルの列において,Cは生徒を示し,数字はプロトコルでの生徒の発話順の番号を示している]
表
6 科学的探究可能な「問い」におけるファクターの推移A B C D E F G X
問い
A 1 0 2 5 0 1 0 0
B 1 28 8 1 3 0 0 0
C 3 3 22 0 4 9 0 2
D 4 1 5 0 7 13 6 10
E 0 0 0 4 1 0 0 1
F 0 1 6 0 0 10 0 4
G 0 1 2 5 0 4 2 19
X 0 0 0 0 0 0 1 6
なお,推移回数が
10回以上の推移を太い矢印を用いて表している。
図
1より,学習者は科学的探究可能な「問い」を生成するにあたり,様々なファクターを経てい ることがわかった。
Bと
C,
Cと
D,
Dと
G,
Fと
G間においては,お互いのファクターに行き来する 推移がみられるが,
B→
C,
C→
D,
D→
G,
F→
Gのように一方が他方に比べて多く推移していた。
また,表
6に示したように,推移回数が
0回,つまり全く推移がみられないファクターもあった。
このように学習者にとっては推移しやすいファクターがあることがわかった。
また,「
A.知っていることの再確認」 「
E.気付いたことと知っていることを比べる」 「
F.モヤモヤ」
「
X.変数の抽出+因果関係の同定」のファクターが科学的探究可能な「問い」の生成にどのように 関わっているかを明確にすることができなかった。その原因として,
A,
Eに関しては,学習者は「問 い」を生成する際に事象から直接捉えることができるが,教師からの手立てがないと,自己内の既 有知識を想起し,事象から捉えたことと比較することを行うことが困難であるのではないかと推測 される。
Fは
Gへの推移が多いことは明らかとなったが,
F→「問い」の推移もある。さらに,
Fは
B,
C,
D,
Gからの少ない推移もみられる。このことから
Fは学習者それぞれにおいて「問い」を生成 するには表出されるが,全体としてみると「問い」を生成するプロセスには含まれづらいファクター であることが推測される。
Xは
C,
D,
Gに「変数の抽出」「因果関係の同定」が内包されているこ とから,
Xのみとして表出されることが少なかったと推測される。
科学的探究可能な「問い」の生成プロセスとして,多くみられる推移としては「
B→
C→
D→
G→ 問い」であった。さらに,
C,
D,
Gには表
3,
4に示したように「変数の抽出」「因果関係の同定」
が内包されていることが多いことから,科学的探究可能な「問い」を生成するにあたっては,「変 数の抽出」「因果関係の同定」を内包する
C,
D,
Gを学習者は思考しやすい傾向にあることが示唆 することができる。
D B
E
C A
X G
F
図
1 科学的探究可能な「問い」の生成プロセスおわりに
本研究では,理科授業で,先行研究において暫定的に提示した科学的探究可能な「問い」の生成 プロセスの実証的研究を行い,学習者がどのようなプロセスを経ているのかを明らかにすることを 目的にした。その結果,科学的探究可能な「問い」を生成するにあたって学習者は, 「変数の抽出」 「因 果関係の同定」を「
C.『おやっ』 『あれっ』のような感情」 「
D.気付いたこと」 「
G.疑問に思ったこと」
といったファクターに内包していることがわかった。さらには,科学的探究可能な「問い」の生成 プロセスとして「
B.現象をよく観察する」→「
C.『おやっ』『あれっ』のような感情」→「
D.気付 いたこと」→「
G.疑問に思ったこと」→「問い」が多くみられる推移であることが明らかとなった。
つまり,中央教育審議会(
2016)や先行研究が示すように,「気付き」や「疑問」から「問い」
を生成させる教師の指導方略は,学習者にとっても科学的探究可能な「問い」を生成しやすいプロ セスであることがわかる。さらに,科学的探究可能な「問い」を生成にあたって「気付き」や「疑 問」に「変数の抽出」「因果関係の同定」が内包されていることが重要である。また,「気付き」や
「疑問」を生起させる前段階として「おやっ」「あれっ」といった感性的なファクターを学習者に認 知させることも,その後の「気付き」や「疑問」の生起,科学的探究可能な「問い」の生成へと繋 がることがわかった。
今後の課題としては,科学的探究可能な「問い」のファクターとしての「
A.知っていることの 再確認」 「
E.気付いたことと知っていることを比べる」 「
F.モヤモヤ」がプロセスにどのように関わっ ているのかという点を今回の調査結果から読み取ることが困難であった。これらのファクターの関 係性をも把握することが可能な調査方法や分析方法の再検討を行っていく。
附 記
本稿は,日本理科教育学会第
57回関東支部大会及び,
2018年度第
4回日本科学教育学会研究会 南関東支部における発表内容に加筆・修正を施したものである。
謝 辞
授業実践にご協力いただいた,茨城県内公立中学校の校長先生及び,理科担当の先生方,第
1学 年の生徒の皆様に感謝いたします。
註
1)
中央教育審議会(2016)では「課題」として述べられているが, 「問題」 「課題」 「問い」について,中山(2018)
はこれらについて明確な違いはなく,同じと見なすほうがよいとしている。このため,本研究においては, 「問 題」 「課題」 「問い」について教師ではなく,学習者が設定,生成するものであると捉え,「問い」とみなす。
2)
柳原(2014)では,学習者が「気付き」 「疑問」から追求可能な表現形式である「学習問題」を設定すること,
小暮・小倉(2018)では学習者が「見つけたこと(直観的思考)」「分かったこと(生活経験・既習事項との
関連)」「疑問に思ったこと(ズレ・矛盾)」から理科的な問題解決手法によって,疑問が追求可能な形式に表 現されている「問題」を設定することとされている。「学習問題」 「問題」という表記であるが,1)と同様に,
ここでは「問い」として捉える。
3)
ここでの科学的探究可能な「問い」の説明では定義については学習者に伝えていない。定義について説明を 行なうことで,学習者が科学的探究可能な「問い」の分類基準を把握することを懸念したためである。
4)
「変数の抽出」がなく, 「因果関係の同定」のみで「問い」を特定することは行なっていない。「因果関係の同定」
は変数が
2つ以上抽出されており,それらの因果関係が同定されているものを指す。
引用文献
Alfke, D. 1974. Asking operational questions. Science and Children, 11(7), 18-19.
有馬朗人ほか
62名. 2016. 『新版 理科の世界
1』(大日本図書).
中央教育審議会. 2016. 『幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善及び必要 な方策等について(答申)』.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf
(2018 年 9 月 14 日閲覧)
Cuccio-Schirripa, S. & Steiner, H. E. 2000. Enhancement and analysis of science question level for middle school students. Journal of Research in Science Teaching, 37, 210-224.
廣直哉・内ノ倉真吾. 2017. 「中学生による科学的に探究可能な問いの判断と生成の実際 – 大学生との比較に基 づいて - 」 『日本科学教育学会研究会研究報告』32,2,49-52.
河原井俊丞・宮本直樹. 2018. 「理科授業における科学的探究可能な『問い』の生成モデル構築 – 児童・生徒の 認知的プロセス及び教師の手立てを手がかりにして - 」 『茨城大学教育実践研究』37,55-60.
小暮建宏・小倉康. 2018. 「単元の導入で自由な試行活動を行うことが問題発見・設定する力の育成に及ぼす効果」
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宮本直樹. 2017. 「科学的探究におけるデータ解釈とその指導法」大髙泉編『理科教育基礎論研究』(協同出版),
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中村大輝・松浦拓也. 2018. 「仮説設定における思考過程とその合理性に関する基礎的研究」『理科教育学研究』
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641.坂本美紀・山口悦司・村山功・中新沙紀子・山本智一・村津啓太・神山真一・稲垣成哲. 2016. 「科学的な問い の生成を支援する理科授業 – 原理・原則に基づく問いの理解に着目して -」『教育心理学研究』64, 105-
117.柳原伸一. 2014. 「問題発見力を育成する理科指導の工夫 - 新たな気付きや疑問を整理し学習問題を設定する活 動を通して - 」 『広島県平成
26年度教員長期研修報告書』
http://www.hiroshima-c.ed.jp/center/wp-content/uploads/kenkyu/choken/h26_kouki/kou08.pdf(2018
年
9月
14
日閲覧)
吉田美穂・川﨑弘作. 2019. 「科学的探究における疑問から問いへの変換する際の思考の順序性の解明に関する 研究」 『理科教育学研究』60,1,185-194.
【資料
1】ワークシート
だ
だ
【資料
2】アンケート調査
① た こ した A さ
た A たこ そ しそ し
さ す
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す
たこ
たこ こ
たこ させ す そ
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1 2
3 A
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