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症例報告

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函館五稜郭病院医誌第18巻(2010)

7

症例報告    腹腔鏡下手術にて診断・治療した 子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜炎の1例

権藤 なおみD,川渡  治 ),秋山 有史1),早川 善郎 ),

目黒 英二1),小林  慎D,高金 明典1),黒田 敬史2)

入野田 崇D

A Case of Generalized Peritonitis due to Spontaneously Perforated of

   Pyometra Diagnosed and Treated by Laparoscopic Surgery

Naomi GONDO, Osamu FUNATO, Yuji AKIYAMA, Yoshiro HAYAKAWA

Takashi IRINODA, Eiji MEGURO, Makoto KOBAYASHI, Akinori TAKAGANE

Takafumi KURODA

Key Words:子宮留膿腫穿孔 汎発性腹膜炎

       は じ め に

 子宮留膿腫は子宮頚管の狭窄や閉塞に細菌感染 が併発し,子宮腔内に膿や壊死組織が貯留する病 態である.稀に本疾患により子宮穿孔をおこし,

汎発性腹膜炎を生じることがあり,高齢女性の急 性腹症の鑑別診断として考慮する必要があると考 えられている.今回我々は,腹腔鏡下手術にて診 断・治療した子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜炎 の1例を経験したので報告する.

       症     例 症例:60歳代女性.

主 訴:左下腹部痛.

既往歴:関節リウマチ

現病歴:不正性器出血を主訴に平成21年7月中旬 に当院婦人科紹介受診し,子宮頚癌(lb1)・子

宮留膿腫と診断された.子宮頚癌に対する化学療 法目的で入院中に,左下腹部痛が出現し,子宮頚 癌による痺痛もしくは子宮留膿腫による癒痛と考

えNSAIDs内服で痺痛コントロールを行ってい た.入院2週間後,排便後に突然の左下腹部痛が

増悪出現し精査目的で外科紹介となった.

初診時現症:身長147c皿,体重50kg,体温38℃,

血圧84/57皿mHg,脈拍数80・整.意識レベルは

JCS20.腹部所見は左下腹部に圧痛・反跳痛お よび筋性防御を認めた.

初診時検査所見:白血球16800/m㎡,CRP2.2mg/

deと上昇を認めた.他は正常範囲であった(表1).

表1 初診時検査所見

血液一般 WBC 16.8 RBC 360 Hb 10.8 g/dl Ht 32.7 %

PLT 47 xlO3

血液ガス PH 7.419

pCO2 39.2

pO2 71.9

HCO3 26.1

LaG 14

   血液検査

    生化学

xlOi/Mm3 丁P  6.4  g/d[Na xltw/mm3 Alb 2.6 g/d[K     T−bil O.2 g/dl Cl

    AST 25 IU/1 Ca     ALT 15 IUII CRP

    ALP 187 IU/1

    LDH 186 IUII     r−G 13 IUII     ChE 211 IUII

mmHg CK 23 IU/1

mmHg AMY 119 IUII

mmol/L BUN 15.5 mg/d)

mg/dl Cre O.5 mg/d1

142 mEq/l 4.1 mEq/l 106 mEq/l 8.4 mg/d1 2.25 mg/dl

函館五稜郭病院外科D

函館五稜郭病院産婦人科2)

胸腹部単純X線所見:異常所見は認めなかった

(図1図2).

腹部造影CT検査:ダグラス窩から左側腹部にか

けて腹水貯留を認めた.子宮留膿腫のため子宮は

拡張していた(図3a図3b).

 以上より子宮留膿腫穿孔あるいは子宮頚癌の消 化管浸潤による消化管穿孔を疑い,同日腹腔鏡下

で緊急手術を施行した.

手術所見:全身麻酔下に12mmポート1本,5mmポー

ト3本を腹腔内に挿入した.腹腔内を観察したと

(2)

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函館五稜郭病院医誌第18巻(2010)

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図1 胸部正面X線写真(臥位)

    Free Air認めず

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図2 腹部正面X線写真(臥位)

   異常ガス像は認めず

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ノ』

∠極

  図3a,b 腹部造影CT

ダグラス窩から左側腹部にかけて腹水貯留.

子宮留膿腫のため子宮は拡張

ころ,子宮底部に約8mmの穿孔部位を認め,同部

位より膿汁が流出していた(図4).子宮腔内及

び腹腔内の膿汁を約1200m6吸引し,生理食塩水6

eで洗浄し,ダグラス窩・右横隔膜下・左横隔膜

下に閉鎖式ドレーンを留置し手術を終了した.術

後の経過は良好で合併症なく経過し,子宮頚癌に

対して術後!5病日より放射線療法を開始した.

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函館五稜郭病院医誌第18巻(2010)

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図4 術中写真

子宮より膿汁流出

      考     察

 子宮瘤膿腫は子宮頚部の閉塞・狭窄により子宮 腔内分泌物貯留に感染した疾患である.頻度は全

婦人科患者において0.01〜0.5%である ).60歳以

上では13.6%,80年代では19.1%,特に90歳代で

は33.3%で認め,高齢化するほど高率になるが、

穿孔に至り,汎発性腹膜炎となる例は稀である.

症状としては下腹部痛,性器出血,帯下などある が,高齢者に多いため無症候のことも多い2).閉 塞の原因としては,萎縮性頚管炎や産褥における 感染,悪性腫瘍や放射線治療や手術既往があげら れる.高齢者に発生頻度が多いのは,感染防御機 能の低下,エストロゲン分泌低下による子宮内膜 の萎縮,頚管の狭窄や閉塞による分泌物排泄障害 のほかに,日常動作不良と失禁も重要な発症要因

と考えられている3).

 本邦において子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜 炎は,医学中央雑誌1982年〜2009年までに「子宮 留膿腫」と「汎発性腹膜炎」をキーワードに検索 する限りにおいて、67例報告されている.発症年 齢の平均は80歳であり,本邦においても高齢者で の発症頻度が高い.穿孔を起こした子宮留膿腫の 原因としては癌性のものが15%を占め,癌性の内

訳は子宮頚癌が最も多く,次いで直腸癌,S状結

腸癌の子宮浸潤である.穿孔部位は子宮底部が約

73%である.

 術前の腹部単純X線検査で約半数の頻度で Free Airを認め,多くの症例で術前消化管穿孔

と診断されており,術前正診率は22%にとどまっ ている.また,本疾患の報告科は外科が多く,応

診率の低さは外科医の本疾患に対する認識度の低 さが要因の一つでもあるとも考えられている.子 宮留膿腫の診断には腹部CT検査が有効であり,

子宮の腫大・子宮腔内に貯留した液状物とガス像 が特徴的である4).高齢女性の遊離ガス像を伴う 腹膜炎の際は子宮に留意することで診断は可能で あると考えられている4).本症例では,子宮腔内 に液状物の貯留と腹水を認めるも,腹腔内遊離ガ ス像は認めず,子宮留膿腫穿孔を疑ったが,確定 診断には至らなかった.そこで,腹膜炎の原因検 索目的に腹腔鏡下観察を施行し,子宮留膿腫穿孔

の診断・治療に至った.

 子宮留膿腫穿孔の予後は死亡率15%と報告され ており5),比較的予後は悪い.高齢者とくに日常 動作不良の高齢女性では,救命のために早期に適 切な診断・治療が必要である.今後,高齢化に伴 い増加することが予想される疾患であり,急性腹

膜炎の術前CT検査においては子宮にも十分注意

を払い、本疾患も念頭におく必要がある.

      結     語

 今回我々は,腹腔鏡下で診断・治療した子宮留 膿腫穿孔による汎発性腹膜炎を経験したため,若 干の文献的考察を加えて報告した.

      文     献

1)赤澤 賢治,高森 久純,他:老年婦人子宮

 留膿症一外来統計にみるその特徴一.日産婦

 会誌 43:1539−1545,1991

2)山下 博士,坂本 昌士,他:子宮留膿腫穿  孔による汎発性腹膜炎の1例.臨床外科 49:

 1495−1499, 1994

3)松田 静治:高齢婦人の性器炎症.産婦  Mook 30:74, 1985

4) Nakao A, Mimura H et al:Generalized  peritonitis due to spontaneously perforated  pyometra presenting as pneumoperitoneum:

 report of case. Surg Today 30:454−457,

 2000

5)西村 真樹,伊藤  博,他:汎発性腹膜炎

 を呈した子宮留膿腫穿孔の!例.臨床外科  69:2990−2994, 2008

参照

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