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櫛田眞澄*・豊田康代**    (1993年10月18日受理)

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(1)

教育学部大学生のイメージにみる教師像

櫛田眞澄*・豊田康代**

   (1993年10月18日受理)

Formed Images for School Teachers of University Students         of the Faculty of Education

Masumi KUSHIDA and Yasuyo TOyODA

   (Received October l 8,1993)

は じ め に

 日常的に教育実践に励む教師にとっては,子どもとの人間関係の如何は教科指導においても,生 活指導においても重要な要素である。また,子どもの側からみれば運命的に出会った教師との関係 は,性格形成までにも影響が及ぶ。授業参観において「授業はうまい」しかし,人間として生徒た ちに好かれていないと見える教師は意外に多い。この点に関し岸田元美(1988)は「教師の教育的 信念や教授上の知識や技術は,実践的指導力の上部構造に相当するものであり,これを基底で支え る下部構造として子どもから教師への信頼感や心情というものがあり,この両者が一体化した教育 的な人間関係の中で,教育実践の成果が完全に実を結ぶ」と述べている。この上部構造に比較し,下 部構造の人間関係は,イメージであり,感情構造であって主観的なため,客観化することが難しく,

そのため学問的に体系化することには困難が伴うと考えられ,教師間にあっても問題意識化されて いない傾向がある。更に,学校の管理化が進行し物質や制度が支配的となった今日,学校の人間性 への関心を取り戻すこと,即ち学校の人間化への努力が切に求められている。千石保ほか(1992)は,

「国際的に見ても日本の中学生の教師への信頼感は希薄である。好き,尊敬しているとするものがき わめて少なく,教師をマイナスに評価するものが多い」と指摘している。

 しかし,教師と子どもの人間関係は,教育活動の最も基礎的な土台であるため教科教育担当者と して教師養成の立場に立つ者には,この問題を避けることができない。

 以上のような問題意識から,実態調査によって現状把握することを計画し,まずは教育学部の学 生から,近い過去における学校生活経験の中の自分との関係における教師のイメージを調査した。

 次に,各学校段階で現実に在学している生徒に対して調査を試みたのだが,小学校以外は実施で きなかった。この事実は上記の指摘のように,現在の国公立中学校や高等学校における生徒と教師

*茨城大学教育学部家政教育講座(〒310 茨城県水戸市文京2−1−1).

(2)

との人間関係に関する現場状況と,学校としての苦悩の状態を示していると思われる。

 他方,教師と子どもの人間関係は自然発生的に生じるものではない。耐えざる努力が日常的に要 求されると考えられる。従って本研究では,小学校段階の子どもたちの教師への思いを分析した後,

教師側の人間関係の確保のための努力に注目して考察し,教科教育学としての資料とすることを目 的とした。中学校,高等学校段階については,今後の課題としたい。

 本研究では,大学生の過去における自分との関係における教師のイメージを調査し,次にその裏 づけとして現在小学校の児童から,感情面としての「好きな先生」「嫌いな先生」について調査した。

また子どもとの人間関係を形成するのに日常的にどのような努力をしているかについて,小学校の 現場教師を対象に調査した。

1)調査対象

 ①岡山大学教育学部在学の大学生213名(男性101,女性121),②岡山大学付属小学校5,6年 生229名(男子115,女子114),③岡山県および香川県の小学校の教師93名(男性32,女性61)

2)調査方法

 ①と②は自由記述法 ③は個人面接法 3)調査期間

 1992年8月から1993年2月まで 4)資料分析の方法

 ①大学生に対しては「小学校,中学校,高等学校における自分との関わりからの教師のイメージ を自由に記述する」という自由記述方法をとったが,記述の中には「教師は〜であるべき」という ものがあり,それらは除外した。期待通りに正しく記述された文章をプラスのイメージとマイナス のイメージとに2分し,更にそれらをKJ法を利用して分類した。その結果, A;人間関係に関する 因子,B;勉強や学習に関する因子, C;性格に関する因子, D;感情に関する因子,の合計8つの カテゴリーに分類することができた。それぞれのカテゴリーの各項目の出現頻度の高い順に並べ百 分率で表した。

 ②小学生に関しては,D;感情に関する因子の中の「好き」「嫌い」に注目し,「好きな先生」と「嫌 いな先生」について自由記述法で記された文章を,上記と同様な方法で分析した。その結果,大学 生では現れなかった因子として,「容貌・容姿」に関するものが出現した。それらをE;容姿に関す

る因子とした。各カテゴリー内の項目の順序は上記の場合と同様に出現頻度の高い順に並べ各カテ ゴリー内の合計数に対する百分率で示した。

 ③人間関係では,教師は子どもに愛情を持って接し,子どもは教師に対して,親しみを持ち信頼 するという信頼関係の形成は重要な構成要素である。教師は子どもとの信頼関係の形成に関してど のような努力しているかを面接法により調査し,各項目ごとに全回答数に対する百分率で表した。

(3)

衷1 大学生のイメージにみる教師像  小学校教師との関係

小学校教師プラスのイメージ 小学校教師マイナスのイメージ

因子 項    目 頻度 項      目 頻度

1.身近なところにいてくれる 19 26.4 1.差別される 8 42.2

2.どんなことでも聞いてくれる 13 18.1 2.従わなければならない 7 36.8

A 3.親と子のような関係 13 18.1 3,罰則中心 2 10.5

4.一賭に遊ぶ 12 16.6 4.ふれあいがない 2 10.5 5.友達のような関係 6 8.3 5.

関係

6.その他 9 12.5 6.その他 0 0

5

72 100 19 100

1.何でもできて何でも知っている 11 37.9 1.学習のさせ方が下手 2

2.学習のさせかたが上手 8 27.6 2.理想の押しつけ 2

B 3.解らないことを教えてくれる 6 20.7 a 勉強の強制 2

4, 4.

5. 5.

学習 6.その他 4 13.8 6.その他 0

29 100 6

1。正しい 11 21.6 1.怖い 7 26.9

2.親しみやすい 9 17.6 2.おこりっぽい 6 23.7

C 3.やさしい 9 17.6 3.すぐ手を出す 5 19.2

4.熱血型 4 7.8 4.神経質 4 15.1

5.楽しい 4 7.8 5厳しい 4 15.1

6、その他 14 27.6 a その他 0 0

51 100 26 100

1.絶対的(神様のよう) 19 28.8 1.間違いは許せない 3

2.信頼 8 12.1 2.近づきにくい 2

D 3.尊敬 7 10.6 3.恐ろしい 2

4.偉い 7 10.6 4.嫌悪感 2

5.憧れ 6 9.1 5.不信感 2

6,好き 5 7.6 6.弱点を握られている 2

7,その他 14 21.2 7.その他 0

66 100 13

プラスイメージ総数 218 77.3 マイナスイメージ総数 64 22.7

(4)

結果 と 考察

1.大学生のイメージ調査

 (1)小学校教師に関するイメージ(表1参照)

 教師と子どもの人間関係の善し悪しが教師の教授技能を十分発揮できるかどうかの前提条件であ る。大学生は過去において,小学校の教師との間でどのような関係を経験し,教師のイメージを形 成したであろうか。ここでは小学校全体としての教師像を自由記述の中から抽出してみた。従って,

低学年と高学年の成長発達による受け止め方の違いは問題としていない。     1

①プラスのイメージ

 人間関係では,身近なところにいてくれて,どんなことでも聞いてくれる,一緒に遊ぶような関 係である。親と子のような関係は低学年のイメージであろう。学習面では,何でも出来て,何でも 知っていて,学習のさせ方が上手である。性格としては,正しく親しみやすく,やさしいイメージ であった。絶対的な存在で神様のようと神聖化し,偉い人として尊敬し,信頼の感情を抱いていた。

②マイナスのイメージ

 教師に対する期待や欲求が満たされていなかった場合に形成されたイメージである。人間関係で は,差別されたり,権威的であったりして,ふれあいがなかった。教師の性格面では,おこりっぼ

く,怖い存在で,暴力に訴えたりする。また,教師の間違いは許せないという感情もあった。

③中立的なイメージ

 プラスにもマイナスにも属さない中立的立場がある。これらの中に捨てることのできない要素が 含まれている。高学年になると「ただの人間とみるようになった(8/14)」,「距離を置いてみていた

(2/14)」,「先生方を比較していた(2/14)⊥「こうすれば気に入られると知っていた(2/14)」などが 出現し,成長に従って子どもの気持ちや教師の見方が変化していることを示している。

●全体としては,プラスのイメ・一一一ジが77.3%,マイナスのイメージが22。7%であり,大学生の多くは,

小学校時代を幸せに過ごしたと判断できる。一方において,教師への期待や願望が満たされなかっ たという場合が,全体の1/4存在する点に注目する必要がある。

 ② 中学校教師に関するイメージ(表2参照)

 子どもはあらゆる面で発達し,変化していく。教師に対するイメージや感情や態度などの教師観 も発達に応じて変化している。大学生たちは,過去の中学時代にどのような教師像を形成したであ ろうか。中学時代においては,教師側の要因ばかりではなく,生徒個人の要因によっても教師のイ メージは,振幅が大きい。しかし自由記述の中に表現されている事柄の分析によって,一般的イメー ジの傾向を把握することは可能である。

①プラスのイメージ

 人間関係としては,悩みを聞いてくれる相談相手として,友達感覚で話の出来る関係であり,兄 や姉のような理解者とみている。学習面では熱心に勉強を教えてくれる人であり,個性的で親しみ やすく,楽しい性格をイメージしている。また教師に対する自分の感情としては,好きで信頼して いたことが理解できる。

②マイナスのイメージ

 人間関係では対話がないことや差別されているという記述の中に,過去における自分の期待に反

(5)

表2 大学生のイメージにみる教師像  中学校教師との関係

中学校教師プラスのイメージ 中学校教師マイナスのイメージ

因子 項    目 頻度 項      目 頻度

A 人間関係

1.友達感覚で話ができる Q.兄や姉のような理解者 R.悩みを聞いてくれる相談相手 S.背後から支えてくれる T.生徒の自尊心を満たす U.その他

18

X9432

41.8 Q0.9 P6.3 X.3

V0

S.7

1.対話がない Q.差別される R.人間的関わりがない S.独断的

T.抑圧的 U.その他

775332

25.9 Q5.9 P8.5 P1.1 P1ユ V.5

43 100 23 100

1.熱心に勉強を教える Q.人生の大切なことを教える R.教え方がおもしろい S.授業が解りやすい T.生徒を思って注意をする U.その他

11

S3320

478

P7.4 P3.0 P3.0 W.8

@0

1.勉強だけを教える人 Q.受検中心

R.4.5.6.その他

730

23 100 10

1.個性的 Q.親しみやすい R.楽しい S.明るい T.気取らない U.その他

975333

30.0 Q3.3 P6.7 P0.O 撃n.O 撃n.0

1.口うるさい Q. ヒステリック R.威圧的 S,弱い

T.はっきりものが言えない U.その他

9554312

23.7 P3.2 P3.2 P0.5 V.8 R1.6

30 100 38 100

D 感   情

1.好き Q.信頼 R.尊敬 S.素晴らしい T.忠実 U.その他

874420

32.0 Q8.0 P6.0 P6.0 W.0

@0

1.反抗的 Q.嫌い R.尊敬できない S.無視したい T.正しいと思えない U.その他

17

U5338

40.5 P4.3 P1.9 V.1 V.l 撃X.1

12 100 42 100

プラスイメージ総数 108 48.9 マイナスイメージ総数 113 51.1

(6)

した教師の存在があったことを表わしている。学習ではそれほど強いイメージはなく,教師の性格 として,口うるさいことやヒステリックなこと,また威圧的なことを嫌っている。自分の感情では 教師に対して反抗的であり,嫌いで尊敬できない気持ちを持つていた。

③中立的なイメージ

「好き嫌いが激しかった(10/24)」,「教師を距離を置いてみていた(5/24)⊥「意見の違いがあった(3

/24)」,「教師の影響は大きかった(2/24)」,「教師も人間(2/24)⊥「教師は大変だ(1/24)」などがあ り,小学校時代の神聖視していた教師像は,人間的教師像に変化している。

●中学時代は物事に対する価値観や人間に対する価値観が出来上がりつつある。自分たちの悩みの 相談相手や良き先輩としての役割を期待しているが,自分の期待する教師像と現実の教師像とのギ ャップに失望することが多い。自由記述の中に出現したプラスのイメージは総数に対して48.9%,マ イナスのイメージは51.1%とマイナス傾向となり,思春期の中学生は教師に対しては他の学校段階 と比べて最も厳しい見方をしていることが理解できる。

 (3)高等学校教師に関するイメージ(表3参照)

 教師を人間として見ることが可能になってきた高等学校の生徒時代はどのような教師像を抱いて いたであろうか。最も近い過去における教師との人間関係について文章記述で表されたものの中か

ら探ることにした。

①プラスのイメージ

 人間関係では心を打ち明けることのできる相談相手であり,権威的ではなく対等に話し合える友 人的な存在をイメージしている。学問的知識や能力,更には教え方がうまいことに関しては評価が が高い。性格としては,人間味のある個性的な,親近感のある人柄をイメージし,尊敬の念と頼り たい気持ちを持っていた。

②マイナスのイメージ

 人間関係についても厳しい見方をするようになり,相談できない,交流のない間柄に批判的であ る。また学習に関しては偏差値中心の受験体制が明確に反映されている。教師の性格は冷たく,親 しみの持てない人柄であったようだ。教師に対しての自分の感情は,何も求めないというあきらめ の感を呈している生徒がいる。

③中立的なイメージ

 「人間として教師をみていた(5/10)⊥「好き嫌いがはっきりしていた(2/10)」,「自分を考える材料

(2/10)」,「教師間の争いが生徒に悪影響を与えた(1/10)」などがあげられ,教師を更に客観化して いることが理解できる。

●全体としてはプラスのイメージが61.2%,マイナスのイメージが38.8%の出現率となって,中学 校の教師に対するよりは,人間として好意的にみることができる。しかしマイナスのイメージにつ いては,非常に批判的であり,あきらめの気持ちが強く表されている。

(7)

表3 大学生のイメージにみる教師像  高等学校教師との関係

高等学校教師プラスのイメージ 高等学校教師マイナスのイメージ

因子 項    目 頻度 項      目 頻度

A 人間関係

1.心を打ち明けられる相談相手 Q.対等に話し合える友人 R.親身になってもらえる S.権威的ではない T.大人の扱い U.その他

24 P4

X645

38.7 Q2.6 P4.5 X.7 U.4

浮Q

1.交流がない Q.相談できない R.生徒を理解していない S.近寄りがたい

T.世話になった覚えがない U,その他

13

T3221

50.0 P9.2 P1.5 V.7 V.7 R.9

62 100 26 100

1.学問的知識と能力がある Q.教え方がうまい R.人生に役立つ話をする S.厳しく教える T.人生経験が豊か U.その他

18 P3

W628

32.8 Q3.6 P4.6 P0.9 R.6 P4.6

1.授業だけをする人 Q.受験中心 R.教え方が下手

S。偏差値ですべてを判断する T.6.その他

22 P5

V43

43.1 Q9.4 P3.7 V.8

U.0

55 100 51 100

C 性   格

1.個性的(人間味)

Q.親近感がある R.おもしろい S.気楽な T.自由を許す U.その他

23 Q2

X843

333

R1.8 P3.O 撃戟D7 T.8 S.4

1.冷たい Q 親しめない

′?黷オい S.体裁屋 T.未熟な ソ その他

11

W7327

29.0 Q1.0 P8.4 V.9

R3

P8.4

67 100 38 100

D 感   情

1,尊敬 Q.頼りたい R.好き S.信頼 T.魅力的 U.その他

22

X8654

40.7 P6.7 P4.8 P1.1 X.3

V4

1.何も感じない Q.嫌い R,あきらめ S.尊敬できない T.不信感 U.その他

11

U5545

30.6 P6.6 P3.9 P3.9 P1.1 P3.9

54 100 36 100

プラスイメージ総数 238 61.2 マイナスイメージ総数 151 38.8

(8)

2.小学生のイメージとしての「好きな先生」「嫌いな先生」(表4参照)

 大学生の過去の経験から形成された教師のイメージに対して,現実的に日々教師と向かい合って いる小学生たちの生きた教師像を求めることとし,小学校5,6年の生徒を対象に自由記述方式で書 いてもらった。この資料をKJ法を利用し分析した結果,大学生では出現しなかった「容姿」に関す る因子が出現したため,それを加えて表4のようにまとめた。

①好きな先生のイメージ

 怒ってもいいがガミガミいわない教師が好かれている。同時に一緒に遊んだり,運動をしてくれ る教師が良いと考えている。学習面では宿題が少ないこと,授業が面白いこと,勉強以外にいろい ろなことを話してくれるのを好んでいる。性格ではやさしく,おもしろい教師に入気がある。容姿 については顔がよく,若く,格好のいい教師が好きである。

②嫌いな先生のイメージ

 寛容さがなくすぐに怒ったり,差別をしたり,いやみを言ったりされることを現実の生活の中で に経験している小学生たちは,鮮明な印象を表現していた。また宿題が多い,授業を伸ばすなども 嫌われる要素である。性格としては暗く,不潔な性格を嫌っている。容姿についても彼らの厳しい

目が伺える。

●現実の学校におけるこどもたちの教師への期待と現実のギャップが明確に表現されている。小学 校の高学年の子どもたちを対象としているため,発達段階としては中学生の感覚に近くなり,大学 生のイメージの中の教師像とはかなりの隔たりも感じられる。全回答数に対して,好きなイメージ の総数は45.7%となり,嫌いなイメージ54,3%で嫌いな方が高くなっていることにも注目しなけれ ばならない。教師側が気がつかずに成している行為に対して,子どもたちは心に傷を受けたままに 放置されている場合も考えられる。嫌いなイメージとして表現されている各項目の中には教師側が 気がつかない要素もあるが,他方努力次第で解決可能な要素もかなりある。従って,このような調 査は反省事項を捕らえるために,良き資料とみなすことができる。

 一方子どもの期待や願望には身勝手なことも多く,不当な要求もあることは事実である。しかし 教師側は子どもの期待や願望を無視するわけにはゆかない。それは学習面や生活面をはじめとし子

どもの学校生活全体に対する適応,不適応にかかわる重要な要素と考えられるからである。

3.小学校教師が子どもとの信頼関係を形成するための努力

 教師と子どもの人間関係の中で最も重要な要素は信頼関係である。信頼関係を形成するために小 学校の教師は日々どのような努力をしているであろうか。北尾・速水(1990)による信頼感の形成 に対する教師側の努力の項目を参考に,意識と実践について質問項目を作成し,小学校教師93名に 対し個人面接によって調査を実施した。調査対象の年齢構成は,20代25名,30代49名,40代19

名,合計93名である。その結果を図1および図2として表した。

●まず,教師と子どもの信頼関係を作るために常に努力が必要かどうかの意識を尋ね,更に実践の 上でその努力を成しているかどうかを問うてみた。その結果が図1である。これに先立つ設問で「信 頼関係は自然に発生するものか」の問いに対しては,ほとんどの教師が自然発生的なものではない

と答えていた。従って意識上,努力の必要性を強く認識している教師は約70%いることになる。し かし,実践上の努力は,「多く実践できている」割合は25%となる。ただし,教師の約3/4は何と

(9)

表4 小学生のイメージとしての好きな先生・嫌いな先生

好きな先生のイ メ ージ 嫌 い な 先 生 の イ メ ー ジ

因子 項    目 頻度 項      目 頻度

A  人間関係

1.怒ってもガミガミいわない Q.一緒に遊んでくれる R.運動を一緒にしてくれる S.子供の気持ちを解ってくれる T.相談にのってくれる U.差別(ひいき)をしない V.その他

74 S8 R0 Q9 Q0 P7 T9

26.7 P7.3 P0.8 P0.5 V.2 P0.5 Q1.3

1.すぐ怒る

Q.差別(ひいき)をする R.いやみをグチグチしつこい S.いじわるや八つ当たりをする T.暴力を振るう

U.子供を理解できない V その他

126 V3 V3 R1 Q6 Q0 P97

23.l 撃R.4

P3.4 T.7 S.7 R.6 R6.2

277 100 546 100

1.宿題が少ない Q.授業が楽しい

R.いろいろなことを話してくれる S.解りやすく授業を進める T.字がきれい

U.その他

69 R3 R3 Q5 Q4 R6

31.4 P5.0 P5.0 P1.4 P0.9 P6.4

1.宿題が多い Q.授業を伸ばす

R.字が汚い(読みにくい)

S.退屈な授業をする T.授業を勝手に一人で進める U.その他

54 R5 Q7 P0

X9

37.5 Q4.3 P8.7 U.9 U.3 U.3

55 100 144 100

1.やさしい Q.おもしろい R.楽しい S.冗談がうまい T 明るい U.清潔 V.その他

149 W4 S8 R9 R6 Q8 U5

33.2 P8.7 P0.7 W.9 W.7 U.2 P4.5

1.暗い Q.不潔な性格 R.真面目すぎる S.怖い T. しつっこい U.元気がない V.その他

78 S5 S2 S1 R9 P6 P01

26.7 P5.4 P4.4 P4.0 P3.4 T.5 R4.7

449 100 292 100

D

E容   姿 1.顔がいい

Q.若い R.格好いい S.その他

17 P6 P1 S1

20.2 P8.8 P2.9 S8.1

1.臭い(化粧,口)

Q.格好悪い R.若くない S.その他

21 P0 P0 Q2

33.3 P5.9 P5.9 R4.9

85 100 63 100

好きなイメージの総数 866 45.7 嫌いなイメージの総数 1045 54.3

(10)

教師と子どもの信頼関係を作るために     常に努力が必要か

信頼関係を作るために努力をしているか

笏・ふつう 團・やや多く

■強く思う

  多くしている 図1 教師の信頼関係形成に対する意識と実践上の努力

50

40

30

20

10

0

①スキンシップ ②まなざし ④雑談 ⑦学級通信 ⑧その他

圃20代 口30代 彫40代以上

図2 信頼関係を形成するための教師の働きかけ(年代別)

(11)

か工夫しながらでも実践をしていることが理解できる。

 次の設問では,信頼関係を増すための教師の具体的な働きかけについて尋ねている。複数回答で 得られたものを集計し,その結果を図2に示した。まず年齢別に集計し,各項目に対する割合を%で 表したものである。「授業中の言葉かけ」は,年齢が増すほど頻繁になされ,「昼休みや放課後の運 動場での接触」は20代の若い教師がよく実行している。また「ペンでの語りかけ」は年齢の別なく 多くの教師によって実行されている。

 「その他」としては,「個々の進歩のための毎日の教材研究」,「朝・夕の挨拶によるかかわり⊥「一 日の反省でよいこと,頑張ったことをほめる」,「よい点を見つけてほめる」,「朝の会,帰りの会な どの話合い」などであった。

ま と め

 本研究では,教師のイメージ調査をするに当たって,現在一般的に用いられている5段階または10 段階のスケールによる調査,例えば加藤隆勝(1991)の教師イメージに関する調査で代表されるよ

うな方法では汲み取ることのできない,調査対象者の細かな感情のニュアンスを抽出したいという 意図から,敢えて自由記述法とした。自由記述で表現された資料をKJ法によって分析を試みたが,

グルーピングの段階で細部をまとめる必要が生じ,最初の意図を貫徹することはできなかった。し かし教師側の作成したスケール上における回答ではないため,子どもの気持ちを直接汲み取るには 有利であったと考える。

 教育学部に所属する学生がイメージした教師像よりも,現実の教師を目前にしている小学生の教 師像の方が非常に厳しく,発達段階を考慮したとしても,現場状況を想定することができる。現在 教育学部で教師を志望している大学生は,全体としては小学校時代から教師たちによって比較的よ い待遇を受けていたことも考えられる。子どもの教師イメージは,彼らが過去において実際に接触 してきた教師との関係に基づいて形成されたり,両親やその他の大人から教え込まれたものもあり,

現実の教師の印象によって作られたりする。また教師像は個々の子どもの願望や期待や感情による 主観的なものも関係して出来上がる。子どもの心の中に形成された教師像を正確に把握することに は種々の困難が伴うが,「好きな先生」について自由に記述させることにより,彼らの願望を知る事 は可能であると考える。イメージの自由記述法は,回答者の意識化されている事柄が多方面にわた るため,出現する項目は分散されるが,本調査における表1,表2,表3,表4から読み取れること は,全ての子どもたちは教師との良きかかわり,コミュニケーションまたは対話を学校生活全体の 中に求めているという事実であった。

 岡田敬司(1993)は,生徒と教師の横の関係において,認知葛藤的かかわりと受容・呼応的関わ りとしての対話の中にこそ,教育的本質があることを提示している。教育的対話による知識価値,

規範は,個々の人間が自分自身の感情と思想と対決させたときにこそ,生きた知識や規範となりう ると述べていることには,示唆が大きい。

 今日の教育現場における生徒とのかかわりを考慮するとき,教師の日常的な努力の方向は生徒と

(12)

教師の個々の努力ばかりではなく,教師側にゆとりと,意欲を持って取り組める条件整備も併せて 必要と思われる。

 以上のことから教員養成大学の教科教育法の授業においては,教科の授業を如何にうまく創るか のみに注意を払わせるのではなく,教科の内容や教材を通して,如何にして子どもとの対話の場を 設定するかにも注目させる必要があると考える。

引 用 文 献

加藤隆勝.1991.『思春期の人間関係』 pp.67−104, 大日本図書.

岸田元美.1989.r教師と子どもの人間関係』 pp.Ll75−224,教育開発研究所.

北尾倫彦・速水敏彦.1990.rわかる授業の心理学』pp.176−193,有斐閣.

岡田敬司.1993.『かかわりの教育』pp.219−227, ミネルヴア書房.

千石保・鐘ヶ江晴彦・佐藤郡衛.1992.r日本の中学生』pp,125−135,日本放送出版協会.

参照

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