Schematzing Testにおける反応傾向 の分析
鈴 木 由 紀 生
序
Schematizing test(以下SMTと略す)とは,連続的に呈示される刺激の或 る属性(例えば線分の長さ)を被検者に評定させ,その反応の個人差を分析す るものである。
このようなテスト課題に対する反応の分析は,従来二つの観点から行なわれ てきている。第一は,知覚判断の一般法則つまり人間に共通する事実の解明を 目指す観点からの分析であり,知覚心理学の主要なテーマとして様々な研究が なされており,本邦にも柿崎(1974)の詳細な論考がある。この比較的単純に みえる知覚判断も行動(B)であり,レヴィンの言うように,刺激環境(E)
と被検者(P)の相互規定的要因の関数であり,Eからだけ,またはPからだ けBを分析することはできない。しかしながら,被験者の要因をとりあげる と,個人差の問題が大きくなり,一般法則追求型の研究では,どうしても刺激 要因との関係からの分析が中心になってしまう。
これに対して第一の観点からの研究が副次的にしか問題にできない反応の個 人差をとりあげ,被検者のパーソナリティの諸側面(感情,動機,欲求,価値,
性格,知能など)との関連を解明しようとするのが第二の観点である。この観 点からの研究には,古くからの知能の研究があり,1940年代から1950年にかけ 流行したニュールック心理学の研究がある。
しかしながら,第二の観点からの研究もまた,パーソナリティ要因を強調し 過ぎるとB=f(PE.)の事実からずれてしまい,一般的な理解とはならない偏
りを生じたり,解釈し過ぎや,循環論に陥る危険がある。
したがって,このような知覚判断の研究においても,一般的法則と反応の個 人差の説明原理とのギャップをいかにして埋めるかが大きな問題である。もち
うん,一般的法則と個人差の問題は心理学の根本問題であり,解決は容易では
36
ない。筆者は,これまで知覚における個人差を,もっぱら第二の観点から研究 してきているが,多くの壁につきあたっている。本研究では,これまでの研究 結果をもとに,今回あらためて行なったSMTにおける反応傾向の分析を通し て,上記の問題に対する一つの解明を試みることを目的としている。
1.問 題
これまでの研究にもとついて,SMTの問題点を整理し,本研究が検討する 問題を明らかにしておこう。
1) テストの構成
SMTは, Hollingworth(1913)の用いた手続きをもとに, Menninger clinic の研究グループが開発したもので,手続きの詳細は,Gardner等(1959)に よって紹介されている。彼等の手続きの要約は次の通りである。被検者の課題 は,15フィート前方のスクリーンに次々と投影される正方形の一辺の大きさが 何インチであるかを評定することである。刺激の正方形は,一辺が1.2.1.6,
2.0,2.4,2.8,3.2,3.8,4.6,5.5,6.6,7.9,9・5,11・4,13.7インチの合 計14個で,呈示順序は第1系列では,1.2から2.8インチ迄の5個が選ばれ,
初めは小さい順に,2回目,3回目はランダム順に呈示された。第2系列で は,最も小さい1.2インチの正方形が除かれ,次に大きい3.2インチの正方形 を加えた5個が,第一系列と同様,初めは,小さい順に,あとの2回はランダ ム順に呈示された。以下同様の手続きを繰り返し,最終の第10系列では,最も 大きい組の6・6から13・7インチの5個が呈示される。系列間の休止はなく,刺 激のとりかえも被検者に気づかれないように行われる。ただし,被験者に評定 の手がかりを与えるために,初めに1インチの正方形と18インチの正方形が示
されて,それぞれの大きさを確認させ,次に出て来る刺激の大きさは,この間 にあるという教示がなされる。
そしてこのSMTに対する反応の個人差として注目されるのが次の二つの反 応傾向である。一つは,次第に大きくなって行く刺激の変化に対応せず,小さ な評定を繰り返し,1極端な場合,最も大きな13.7インチの大きさに対しても
4インチと評定するようなleveling反応であり,もう一っは,刺激の大きさに 良く対応した評定をするsharpening反応である。
筆者は,彼等の手続きにならって,刺激の大きさ及び評定の単位をセンチに 変えた比較的忠実なSMTを,小学生32名,中学生98名,大学生48名に実施し
鈴木:Schematizing testにおける反応傾向の分析 37 たが,彼等のいうよう・な1eveling反応を示す者は見出せず,刺激の変化に比較 的対応した反応を示す者が多かった(鈴木1962)。この結果については・被檎 者の違いによるということも考えられるが,被検者の問題の検討は後にしてジ
まずSMTに含まれる問題点から検討していくことにする。
① 刺激について
SMTの刺激にっいては次の三点が問題になる, a.刺激の形態, b.刺激の差 異の程度及び,c.例示刺激の呈示である。
a.刺激の形態。、SMTでは正方形の一辺の評定が用いられているが,この場 合,水平一垂直錯視の存在を考慮に入れると,被検者が正方形の縦横のいずれ の辺を見て反応するかによって評定値が変動する可能性がある。この要因によ
る影響を除くとすれば,縦または横の辺のいずれか一方を注視して反応するよ うにという教示が必要になろう。それならばむしろ,直線を刺激とした方が良 いと考えられるが,問題は直線を用いた場合にもlevelingやsharpeningとい われる反応を示す被検者が見出されるかどうかということである。
b.刺激の差異の程度。 SMTの系列刺激の正方形間の大きさの違いは・予 備的研究の被検者の弁別閾よりも平均して20%大きいものになっているとされ ているが,この差異が大き過ぎて,筆者の研究では典型的な1eveling反応を示 す人がみられなかったのではないかということである。弁別閾より20%大の差 としているが,それは14個のすべての系列刺激について測定されたのかどうか 不明であるし,1インチから13インチ迄の範囲でウェーバーの法則が成立する かどうかの解明も必要であろう。いずれにしても差が大き過ぎて所期の反応が みられなかったのであるとすれば,差異をもっと小さくすれば,どのような個 人差が示されるかが問題になる。
c・例示刺激の呈示。 被検者の評定の手がかりを提供する目的で,初めに系 列刺激の最小のものよりも小さい正方形と最大のものよりも大きい正方形が呈 示され,系列刺激はその間にあることが教示されるが,この例示刺激が係留効 果を持つことは確かである。筆者の研究では,系列の中程の刺激の評定は誤差 が大きいが,両端は比較的正確になっている。このこともleveling反応を少な くしていると考えられる。SMTの目的が,刺激の大きさの変化に対応した評 定ができるかどうかを検査することであるならば,この例示刺激は呈示しない 方が良いのではないかと考えられる。
② 評定にっいて
38
SMTでは,インチまたはセンチによる評定を行わせているが,これらの単 位のイメージ及び分節度の個人差が評定結果に大きく影響するのではないかと いうことが考えられる。そこで,それらの影響を除去するためには,カテゴ
リー判断を用いてはどうかということになるが,それでは,個人差が少なくな り,テストの目的に抵触することが懸念される。しかし,センチによる判断と カテゴリー判断の関係は検討する必要がある。
③検査場面について。刺激を15フィート前方のスクリーンに呈示して,複 数の被検者を同時に検査している。この方法は同時に多量の資料を得られると いう長所はあっても,刺激間の差を或る程度以上に大きくしなければならない とか,例示刺激を示す必要があるといった問題を生ずる。したがって,SMT の場合は,刺激と被検者の問の距離を短くできる個人検査の方が適当であると 考えられる。
以上の問題点について筆者はこれまでに改訂SMTを用いて,いくつかの点 を明らかにした。
改訂したSMTは次の通りである。系列刺激としては正方形のかわりに長さ が,30πから5伽ステップで変化する7・5伽までの10本の直線を用いた。刺激 の呈示は,第一系列では,.3・Ooπから5・Ooπ迄の最も短い方の5本を組にして
2回ランダムに呈示し,第二系列では,3・0伽を除いて5・50雌加えた5本を組 にして2回ランダムに呈示した,以下同様にして最後の6系列では5.50πから 7,56π迄の最も長い方の5本の組が2回ランダムに呈示された。直線はB4版 の白色ケント紙の中央に1ππ巾で描かれたもので黒色である。例示刺激の呈示 は行なわず,呈示された線分が何伽であるかを判断して回答欄に記入すること を求めた。その際,刺激の長さは5衡単位で変化しているので,答は何伽とか 何点56πというふうになることを合わせて教示した。被検者から刺激迄の距離 は1.5耀で,個人検査の形で行なった。
上記のSMTを大学生に実施したところ,典型的な1eveling反応やsharpening 反応を示す人が比較的多数みられた(鈴木1978)。したがって,SMTの構成 にっいては,刺激は直線を用いても,また刺激の大きさ及び刺激の間の差異は それほど大きくなくても,刺激の大きさの変化に対応した評定ができるかどう かを検査するというSMTの目的は達せられることがわかった。また評定の仕 方にっいて伽判断とカテゴリー判断の対応を検討したところ.対応が確かめら れた(鈴木1978)。
鈴木:Schematizing testにおける反応傾向の分析 39 2)被検者の問題
Menninger clinicの研究グループが用いたSMTでは,一般人の中から典型 的な1evel三ng反応やsharpening反応を示す人を見出すことが,筆者の研究し たところでは困難であった。そこでこのような反応を示す人は,精神病者や精 神病質者などの特定の人に限定されるのではないかと推論されたが,先にみた ように,テストの基本は変えずに,いくつかの点を改めたSMTを用いたとこ ろ,そのような反応を示す人が一般的な人の中にも相当数いることが判明し た。したがってSMTに対する反応傾向を一般の人にも共通するものとして検 討することが可能になった。
ただし,次に問題にする,このような反応傾向の一貫性,一般性の程度にな ると,一般人の場合は,特定の人達よりも変動が大きく,反応傾向の持つ意味 も異なるということがあるかもしれない。そうした場合は被検者の質を改めて 問題にしなければならないが,さしあたっては一般の人を被検者としてSMT の反応傾向の分析を進めることが妥当であろう。
3)SMTにおける反応傾向の個人差の一貫性と一般性について 検査であるからには,妥当性と並んで信頼性つまり反応の一貫性についての 検証がなされていなければならないが,残念ながら,SMTはこの点の検討が 行なわれていない。課題の性質上,再テストを行ないにくいという事情はある が,どうしても検討しておかなければならない点である。
これに対して,SMTにおける個人差が他のテスト課題における個人差とど のように対応するか,っまりSMTにおける反応傾向の一般性の問題について は検討されている。Menninger clinicの研究グループは, SMTの他にKines一 thetic time error test, E・nbedded登gure testなど合計15のテストを実施して その成績を因子分析している。その結果4つの因子が抽出され,その一っとし てleveling−sharpening因子がでてきている(Gardner等1959)。筆者は,彼等 のように多数のテストとの関係は検討していないが,情報伝達量測定テストと の関係では,1eveling反応をする人は, sharpening反応をする入に比べて,散 侠情報量が多く,情報伝達量が小さいこと,刺激や変化を求める傾向を測定す
るSensation Seeking Scale(SSSテスト)との関係では両者の問に違いがみら れないことを見出している(Suzuki l979)。
SMTの反応傾向の一般性を検討することは,それらの反応傾向の意味やメ カニズムを検討するための一つの方策であり,Menninger clinicの研究グルー
タ0
プのように多数のテストを実施してその結果を因子分析するという仕方は最近 盛んに行なわれている方法である。しかし,Thurstoe(1947)が指摘している
ように,因子分析は探索のための方策であり,因子が抽出されたということは,
出発点であって終点ではない。その意味でMenninger clinicの研究グループ が,leveling−sharpening因子を抽出したということは, SMTにおけるこれら の反応傾向の一一般性を示すものであり,検討に値する反応傾向であることを明
らかにしたという意義がある。問題は,その意味,メカニズムを解明すること であり,それらについてどのように考えるかが検討パラダイムを決めることに
なる。
4)SMTにおける反応傾向の個人差の意味について
特に問題になる個人差は,これまでみてきたように,1eveling反応とsharpe一 ning反応である。これらの反応傾向について, Menn三nger clinicの研究グルー プの人達は,彼等独自のパーソナリティ理論の中に位置づけて,環境へ適応す る際に使用される認知的統制原理(cognitive control principle)の一つである と考えている。彼等の考えによると,適応しなければならないことが変化に対 処することである場合,sharpening反応をするSharpenerは,変化によくつい て行くという対応をすることによって内的にも満足を得ることができ,1eveling 反応をするLevelerは,変化に対して自分がつくりあげた基準に(もはやそれ が実際の変化の基準からずれてしまっても)固執することによって内的に満足 する人である。このように,彼等は,これらの反応傾向とその個人の内的満足
との関係を強調し,適応のためのその個人固有の方略であると考えている。こ のような考え方は認知型(cognitive style)の考え方でもあり,彼等は,認知的 統制原理の組み合せを認知型とよんでいる。(なお,彼等の認知的統制原理,
認知型,パーソナリティ理論についてはKlein(1951)が詳細に述べているし,
鈴木(1976)も考察を行なっている。
しかしながら,これらの反応傾向を,彼等のように,その個人に固有の一貫 した適応方略とみることができるかどうか,少くともこれまで筆者が被検者と してきた一般的な人達についての観察からは疑問である。このように固定的に 考えることは,これらめ反応傾向の一貫性が検証されていないことや,一般的 に言っても,B=f(P.E.)において, PをEから独立したもの,または超越し たものとみることになり,一般的には妥当しないのではないかということであ る。、この点を解明するためには,これらの反応傾向の一貫性と一般性を更に検
鈴木:Schematiz董ng testにおける反応傾向の分析 41 討する必要がある。
5)本研究で検討する問題
以上の考察に基づいて,本研究では,SMTにおける反応傾向の個人差の一 貫性と一般性を検討することを主題にして次の2つの点を検討する。
①SMTにおいてleveling反応をする人は,課題に直面して,その人独自の 固定した判定基準をつくり・それに固執した反応をする傾向を示すかどうか。
②SMTにおいてleveling反応をする人は,刺激の変化に気づくことが少な いのかどうか。
以上の2点について,SMTと共通の側面を持つ知覚判断テストの関連から 考察する。また参考迄にSMTと共通する側面を持つ思考課題との関連も検討
する。
3.方 法
本研究はSMTにおける反応傾向の個人差の一貫性と一般性を検討したので あるが,方法としては,同一被検者に次の3つの検査を実施してその成績と内 省から考察を進めるという手続きを用いた。
1)検査の手続き
①Schematizing test(SMT)
Menninger clinicの研究グループが用いたものをもとにして1978年に筆者が 改訂したSMTを用いた。具体的手続きについては,すでに記しているので省
略する。
②重量漸増テスト(Progressive weight test, PWT)
これは,被検者が課題に直面してその人独自の判断基準をつくりあげ,それ に固執した判断を繰り返すかどうかを調べるために行なったもので,手続きは 次の通りである。外見の等しい重量箱を机上に一列に並べておき,被検者に端 から順番に一つずつ挙重させ,現在挙順した重量箱が直前のものに比べて重い かどうかを「重い」,「軽い」,「等(疑)」の3件法で判断させた。重量箱の 、
dさは端から順に,210,230,260,290,330,365,410,410,410,4109で あり,第7番目からは等しい重さである。
③ ルーチンスの水くみ問題(水くみ問題)
これは思考課題で,SMTの知覚判断課題とは性格を異にするが,同一の解 法を繰り返すと,その解法に固執する傾向が生ずるという点の個人差を調べる
42
テストでありゅSMTにおける 表1.水くみ問題 反応傾向との共通性が予測され
問題番号 用いる容器 くむべき
るので行なった。用いた問題は
A
B C 水の量 くみ方 表1の通りで,問題を1番から 例1
2ユ29 1273 3 20A−3B
順に飛ばさないで解答していく 2 14 163 25 10099 ことを強調した。 3 18 43 10 5
2)被検者
45
920 42
T9
64
21R1
被検者は,茨城大学人文学部 6 23 49 3 20 心理学専攻生41名で,そのうち 7 15 39 3 18 20名は,水くみ問題について解
89
28P8 76 S8
34
25Q2 いた経験があった。個人差を検 10 14 36 8 6 討するのであれば,被検者の数
は多い程良いと考えるが,心理学専攻生に限ったのは,被検者の日常生活にっ いて,筆者がある程度知っていることが,結果を考察する際に必要であると考 えたからである。
3)検討する仮説
本研究が検討する問思点はすでに述べたが,以上の手続きとの関連で,仮説 の形にすると次のようになる。
仮説I SMTにおいてleveling反応をするLeveler(L)やsharpening反応 をするSharpener(S)は,一般の被検者の中にも存在するであろう。
仮説皿 PWTにおいて, Lは,テストの前半の刺激重量の漸増構造に影響さ れた基準を立て・それに基づいて反応するから,重量が等しい8番目以後も
「重い」判断をし続けるであろう。一方,Sは,刺激の変化に敏感に対応する から,7番目迄は「重い」判断を,8番目以後は「等しい」判断を続けるであ
ろう。
仮説皿 水くみ問題では,Lは前半の解法に影響され, Sよりも同一の解法を 多く使用するであろう。
4.結 果
1)整理の手順と手続き
SMTの反応傾向の分析が主題なので,まず第一にSMTにおける被検者の 反応を分類整理する。次にPWTの反応傾向との関係を分析する。水くみ問題
鈴木:Schematizing testにおける反応傾向の分析 43 との関係の分析は,テストの内容を知っていた被検者もいたので,参考程度に とどめざるをえなかった。各テストの整理手続きは次の通りである。
①SMTについて
i 各系列ごとの平均評定値:被検者の評定値を各系列ごとに算出する。
ii評定値の変化率:第一系列の平均評定値を1として各系列の比率を算出す
る。
iii系列の平均評定値が刺激と同じように上昇する者(A)と変化する者(C)
に分類する。
iv Aのうち,第6系列の変化率が刺激の変化率に近い者をSharpener(S),
Cのうち第6系列の変化率が非常に小さい者をLeveler(L)と分類する。
② PWTについて
iPWTの判断の変化を「重い」=1,「等しい」=0,「軽い」=−1点と して,刺激の進行にともなう累積得点を算出する。
ii PWTの判断について次の項目のスコアを算出する。
a:7番目迄の「重い」判断の数 b:8番目以後の「等しい」判断の数 c:7番目迄の「軽い」判断の数 d:8番目以後の「重い」判断の数 e:8番目以後の「軽い」判断のi数 f:7番目迄の「等しい」判断の数 a+b:刺激の変化に対応した判断の総数 a+d:重い判断の総数
b+f:等しい判断の総数 c+e:軽い判断の総数
③ 水くみ問題について
水くみ問題にっいては,次の項目のスコアを整理した。
。所要時間:全問の解答終了迄の時間
・問7迄の解法:解法がすべて同じであるか異るか。
。問8の解法:特殊な解法を用いているかどうか。
。同一解法の使用回数:同一の解法を何回用いたか。
2)結 果
①SMTについて
44
評定値の系列ごとの平均値と変化 表2SMTの評定値 単位:oπ 率は表2及び表3に示した通りであ
驕B刺激の変化に対応して評定値が
系列
甯
1
皿 皿 IVV
VIT 3.9 4.5 4.8 5.1 5.3 5.6 上昇を続ける者(A群)は21名,評 S 3.7 4.3
48
5.3 5.5 5.9定値が下降する変化を示す者(C群) A A−S 3.8 4.3 4.6 4.9 52 5.5 は20名である。第6系列の変化率が A 3.8 4.3 4.7 5.0 5.3 5.6
1.250以下の者(LeveleろL群)が8 L 3.8 4.0 4.0 4.2 4.3
44
C C−L 4.2 5.3 5.7 5.7 6.0 6.5 名,刺激の変化率1.625に近いA群C 4.0 4.8 5.0 5.1 5.4 5.6 の者(SharpeneちS群)が7名(変 T−(S+L) 4.0
48
5.1 5.3 5.6 6.0 化率は1.500〜1.750)である。し 刺 激 4.0 4.550
5.5 6.0 6.5 たがって,仮説①:SMTにおいて ※被検者 T:全被検者(41),A:評定値上1eveling反応をするLevelerやshar一 昇者(2U S:Sharpener(窺C:評定値 変化者(20),L:Leveler(8) O内は人数pening反応をするSharpenerは,
一般の被検者にも存在するという 表3.SMTの評定値の変化率 ことは,今回の研究でも確認され 系列
甯
1
皿 皿 IVV VI
た。 T
1.00 L16 1.24 1.24 1.37 1.45図1と図2は全被検者とS群, S 1.00 L15 L30 1.30 1.47 1.59 L群の評定値と変化率を図示した
A
A−S 1.00 1.11 1.19U9
136 L43ものである。S群とL群の反応傾
A
1.00 1.13 1.25 1.25 1.34 1.41向の違いは明白である。 L 1.00 1.05 1.05 1.05 1.14 1.16
C C−L 1.00 1.19 上25 1.25 1.34 工.41 C 1.00 1.26 1.36 1.36 1.43 1.55
T−(S+L) 1.00 1.19 1.27 1.27 1.40 L49
刺激 1.00 1.13 1.25 1.38 1.50 1.63
鈴木:Schematizing testにおける反応傾向の分析 45
S
U.0
刺 激ノ→
評・・@ 父T
定 値
1如 又L
さ
(㎝)
3.0
O I 】1 皿 1V V VI 系 列
図1. SMTの評定値
1.60 S 刺 激
1・50 \
評 1.40
定
値1.30 へ
の ・ T
変 1.20化
率
L1°@ 欠L
LOO
0.90
1,皿 w v・w
系 列
図2. SMTの評定値の変化率
46
②PWTについて
PWTにおける刺激の変化と判断の対応は,表4の通りである。
表4.PWTの判断の変化(重い=1,等しい=q軽い=−1の累積点)
刺激被検
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
T 0.6 1.5 2.2 2.9 3.7 4.4 41 51 5.3 5.7 5.8
S 0.4 1.4 1.9 2.7 3.3 4.0 4.9
49
51 α0 6.3 AA−S
0.7 1.6 2.2 3.0 3.946
5.6 5.6 5.6 5.7 5.7A 0.6 L5 2.1 2.9 3.7 4.4
43 53
5.4 5.7 5.8 L 0.6 1.4 2.0 2.6 3.4 4.0 3.5 4.543
5.0 5.0 C C−S 0.7 1.5 2.4 3.2 4.048
4.3 5.3 5.8 6.0 6.2 C 0.7 1.5 2.3 3.0 3.8 4.6 4.0 5.052
5.6 5.7T−(S+L) α7 1.5 2.3 3.1 4.0 4.7 4.5 5.5 5.7 5.8 5.9
刺 激 1.0 2.0 3.0
45
5.0 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0被検者とS群, L群の結果を図示したのが図3である。全体の傾向としては,
重量の差が無くなった8番目の刺激以後も「重い」判断がやや優勢である。
S群とL群の間の差は,被検者の数が少なく,統計的な検定はできないが,次 のような傾向が認められる。8番目以後の「重い」判断は,
T S
〜 刺 激
65
\
x
得 4
へLr
点 3
@ 2
1
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
刺 激
図3. PWTの累積得点(S群とL群)
鈴木:Schematizing testにおける反応傾向の分析 47 方が多く,全般にL群の方が刺激の変化に対応した反応を示している。さらに 注目されるのは刺激の重さが初めて等しくなる8番目の刺激に対しては,S群 では7名中5名が「重い」,残り2名が「軽い」の判断をしているが,L群の 方では,「重い」の判断をした者は1名だけで,「等しい」が5名,残り2名 は「軽い」と判断している。この結果は,仮説∬とは全く逆の傾向である。ま たPWTの判断を項目ごとに得点化した表5の結果からは,次のことが認めら
表5.PWTにおける「重い」,「等(疑)」,「軽い」判断のスコア スコア項目
甯沁メ a b C d e
f
a+b a+d b+f C十eT
4.6 1.8 0.222
1.0 1.1 6.4 6.9 3.0 L1S 4.3 1.3 α3 2.9 0.9 1.4 5.6 7.1 2.7 1.1
A A−S 4.9 1.6 0.2 2.2 1.1 0.9 6.5 7.1 2.6 1.4
A
4.7 1.5 0.2 2.4 1.0 1.1 62 7.1 2.6 1.3 L 4.3 1.8 0.3 2.1 1.1 L5 6.0 6.4 3.3 ・1.4 C C−L 4.8 2.3 0.1 1.8 0.7 0.8 7.1 6.9 3.3 0.8 C 4.6 2.1 0.2 2.0 0.9 1」 6.7 6.7 3.3 1.0T−(L+S)
48
1.9 0.2ao
0.9 0.9 6.8 7.0 2.9 1.1刺 激 6 51
1 11
※スコア項目 a:7番目迄の「重い」判断の数,b:8番目以後の「等しい」判断の数 c:7番目迄の「軽い」判断の数,d:8番目以後の「重い」判断の数 e:8番目以後の「軽い」判断の数,f:7番目迄の「等しい」判断の数 れる。刺激の差と一致した判 表6.水くみ問題のスコア
断の数をみるa十b項目では, スコア項目 被検者群 S(n=6) L(n−6)
五群の方がS群よりも多く, 最 長
16 30
25所要時間 最 短
3 5
先にみた傾向と一致する。ま
中 央 値 8 25 6/30
た判断の度数では,「重い」の
問7迄の解法 すべて同じ 3名 5名 判断はS群が多く,「等しい」 異るものもある 3名 1名 や「軽い」の判断はL群が多 A − C 4名 4名
い。両群の判断傾向の違いが B−17C 1名
問8の解法 2B−5A−4C 1名
うかがえる。
2B−4A−5C 1名
③ 水くみ問題にっいて 5A−B−13C 1名 麟水くみ問題については,す 9 回 1名 4名
ζでに述べた理由で,全被検者 同一解法
フ使用回数 7 回 2名 1名
夢 懸
フ結果を検討することはでき 5 回 3名 1名
48
\ マ 9
、
又 ぐ コ
、 1
、 、、 1
×
曾
9@
1 ,
ユロ三
4 ① 唖
、 1、
超
壕1、 、
・・繭讐譲
膠 、
@喉 、 卜崔慧
、く、
cq
求@ . 和3 富33
磁〒聾 寸
) ) ) ) , 1
@ 1 9
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鈴木:Schematizing testにおける反応傾向の分析 49 なかつたが,S群とL群には,それぞれ6名の未経験者がいたので,その結果 を示すと表6の通りで,問7迄の解法と同一解法の使用回数のスコアは,仮説 皿を支持する傾向を示している。
④PWTと水くみ問題におけるSとLの反応の交錯
SとLに分類された被検者が,PWTや水くみ問題において,全く同じよう な反応傾向を示すケースがある。図4と表7はそれらの結果を示している。
図4−1から被検者DNとSNは典型的なsharpening反応を, SAとIMは典
型的なleveling反応を示していることがわかる。ところが, PWTでは, DNとSA, SNとIMが類似の反応傾向を示している(図4)。被検者の類似性は 水くみ問題の所要時間にも認められるが,同一解法の使用回数にっいては,
DNとIM, SNとSAが類似性を示している(表7)。
表7. SMTのSとLの水くみ問題のスコア
(S群,L群各2名の結果)
被検者 S 群 L 群
スコア項目 DN
SN
SAIM
所 要 時 間
12ノ
16 30 ,7
25すべて同じ
O
○問8迄の解法
異るものもある ○ O
A − C ○ ○ ○
問8の解法
2B−4A−5C ○
同一解法の使用回数 7回 5回 5回 9回
なお, PWTで8番目以後の刺激に対しても「重い」判断を続けるという形 の類似性を示したDNとSAは,重さの弁別閾が共に低い。相対弁別閾は,
DN=12.3/400(9)、 SA=15.1/400である。一方, IMの場合は,40.5/400(9)
である。SNについての資料はない。
5.考 察
以上の結果は,統計的な有意1生を確認されたわけではないが,本研究の目的 であるSMTにおける個人差の一貫性と一般性についていくつかの示唆を含ん でいるので,考察する。
1)SMTにおける反応の個人差について
今回の研究でもSMTの再テストは行っていず,個人差の一貫性については
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確認していない。しかしながら,第一系列の刺激の評定値がほとんど等しいに もかかわらず,系列が進むにっれて,S群の評定値は刺激の増大に対応して大 きくなり,一方L群のそれはほとんど大きくならないという傾向は,かなり明 白な違いとして認められる。またすでに言及したように,SMTと情報伝達量 の測定テストの関係を調べた研究(鈴木1979)では,L群は, S群よりも情報 伝達量が少ないという結果が出ているので,これらの反応傾向はある程度一貫
した明白な個人差であるとみなしてよいと考えられる。
一方,SMTに対する反応傾向を全体的にみると,評定値は系列の進行とと もに刺激よりも次第に小さくなる傾向があり,この傾向はS群においても認め られる。この傾向は,感覚尺度に示される刺激量と感覚量の一般的な関係に対 応している。この点からみると,S群とL群の間の違いは,単に感覚尺度の違 い,言いかえれば線分の長さの弁別感度の差に帰すことができるようにみえ る。問題は系列刺激の各直線が単独に出された場合のそれぞれの線分に対す る弁別閾とSMTの反応傾向との対応である。もしも,弁別閾の低い者は,
sharpening反応をし,高い者はIeveling反応をするという関係があるならば,
これらの差異は視力のような感覚能力の差ということになり,心理的側面より はむしろ生理的側面の問題になる。弁別閾が低いにもかかわらずsharpening反 応をする人やその逆の人がいてはじめてその個人の心的側面を問題にする意味 が出てくるわけであるが,この点にっいての確認は行われていない。
2)PWTの結果について
PWTについては,仮説∬の予測とは全く逆の結果が示された。すなわち,
刺激の変化によく対応した判断を示した被検者はL群の方に多く,前半の刺激 構造に影響されて同じ重さの刺激を「重い」と判断する者はS群の方に多かっ
た。
この理由としては,次のことが考えられる。一っは,Lの立てた基準または 図式が刺激の実際の変化に良く対応していたということ,もう一つは,LとS の判断の一一般的傾向または好みの違いである。
①PWTに対する反応の基準または図式の形成
SMTは, schematizing testという名称が示すように,テスト課題に対処する 際に被検者が何らかの図式をつくりあげるということを考慮している。仮説皿 も,LはSMTの初期の比較的小さい刺激の連続に影響されて,「刺激の差は 小さい」という基準(図式)をっくりあげてしまい,それに基づいて反応する
鈴木:Schematizing testにおける反応傾向の分析 51 傾向があるというKlein等の推論に基づいている。認知課題に対応する際に,
われわれが,何らかの図式に基づいて反応するということはNeisser(1976)も 強調するところである。問題は,PWTにおいても被検者達がSMTの場合と 同様な図式を形成したかどうかである。被検者の内省報告をみると,「重いと 感じられる刺激が続くので,これで良いのかなと思った」とか,「後半になっ て刺激の違いが感じられないのは,自分の感覚が鈍化したのではないか」とい うように自分の判断に不安を示す者が多く,系列刺激の重さの変化について一 定の構造を予想したと報告をした者は一名もなかった。したがって,PWTに
おける個入差を被検者の立てた図式の違いから説明することはできない。な お,自分の判断についての不安が示すように,PWTに対処する場合にも図式 はあるが,それは判断を方向づけるようなものにはなっていないということで
あろう。
② 判断の一般的傾向または好みにおけるLとSの違い。
判断の回数にっいては,「重い」の判断はS群の方が多く,「等しい」判断は L群の方が多い。この結果は,被検者の感覚水準での違いとも考えられるが・
知覚判断の一般的傾向または好みの違いとも考えられる。PWTにおいては・
8番目以後の刺激は客観的には等しいわけであるから,感じられる微妙な差異 を「重い」,「等しい」,「軽い」のいずれと判断するかには,その個人の一般 的傾向または好みが投影される。したがって上記の結果は,両群の判断傾向の 違いが投影されたものと解釈するのが妥当であろう。この解釈は,Sは差に敏 感であり,「どんな微妙な差も見逃すな」という知覚体制を持ち,Lは「わず かな差は無視せよ」という知覚体制を持っているかの如くであるというKlein
(1951)の記述とも一致する。
3)水くみ問題について
水くみ問題に関する仮説皿は,資料は少ないが,支持される傾向を示してい る。この結果は,水くみ問題においては,SMTの場合と同じような図式が・被 検者の中に形成される可能性があることを示している。被検者の内省報告は・
「第2問に時間がかかったが,第1問と同じく,B−A−・2Cで解けたので・
以下は,まずこの方法を用いて解いてみた。そのため,これでは解けない問8 で苦労した」というものが多く,問題の配列に影響された図式(構え)が形 成されたことが認められる。したがって,SMTにおける1eveling反応の傾向 は,課題に対処している間に,反応を方向づけるような図式または構えを形成
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させるような認知課題においては一般性を持っているといえよう。
4)SとLの反応が類似するケース
SとLに分類された被検者が,PWTと水くみ問題において,全く同じよう な反応傾向を示すケーズが存在することは,SMTにおける反応傾向の個人差 の一般性に反する結果と考えられる。一方,PWTにおいて8番目以後も「重 い」判断を多くするという形の類似性を示したSとLが,共に重さについての 相対弁別閾が低いという共通性を持っているという事実は,これらのケースの 新しい説明原理を提供するようにみえる。しかしながら,同じように重さの相 対弁別閾が低くても8番目以後は「等しい」判断を多くするという被検者も多 いので,この結果は,先にみたように,判断傾向の共通性とみた方が良いであ ろうし,逆にSMTにおける違いの方こそ本研究では検討していない直線の長 さの弁別感度の差によるのかもしれない。
以上のように,このようなケースの存在は,SMTにおける反応傾向の個人 差が,被検者の形成する図式,判断の一般的傾向及び刺激の弁別感度の三っの 要因の相対的な関係によって生じていることを示していると考えられる。
結 語
本研究は,知覚における個人差の研究を,SMTにおける反応の個人差の検 討という形で行なったものである。個人差の研究では,対象とする個人差の個 人内の二貫性,他の領域との共通性を意味する一般性の確認と,B;f(PJE.)
に示される,相互規定的なPとEの要因の個人差への関わり方の解明が重要で
ある。
SMTにおいては, levelingとsharpeningという特徴的な個入差が認められ ているが,これらの反応傾向について,今回の結果から次のことが示唆された。
①SMTにおいて1eveling反応をするLやsharpening反応をする、Sは,
異常とされる人だけではなく,一般の人の中にも見出される。
・②SMTに対す右反応は,感覚尺度との対応がみられるので,1とS〃)違 いについては,彼等の弁別感度との対応を調べる必要がある。
③PWTにおいては}L群の方がS群よりも刺激の変化に対応した判断を したげこの結果は,課題に対して形成する図式や構えの違いというよりは,判 断の一般的傾向の違いと考えられる。
④ 水くみ問題においては,SMTにおける反応と同じように図式や構えを
鈴木:Schematizing testにおける反応傾向の分析 53 っくる傾向が認められ,L群には同一の解法に固執する者が多かった。1eveling 反応の一般性を示唆している。
⑤ SとLがPWTや水くみ問題で類似の反応傾向を示すケースが認められ た。このことは,SMTにおける反応の個人差が,被検者の形成する図式,判 断の一般的傾向,弁別感度の相対的関係によって生じることを意味する。
以上の結果から,SMTにおける反応の個人差の一貫性,他の領域にまたが る一般性,相互規定的なPとEの要因の反応へのかかわり方が,多少とも明ら かになったと思われる。
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