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中学生の学校ストレスと授業理解感・被尊重感

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中学生の学校ストレスと授業理解感・被尊重感

著者 松田 由美, 玉瀬 耕治

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 11

ページ 35‑42

発行年 2002‑03‑31

その他のタイトル School Stress, Feeling of Academic Achievement and Feeling of Being Respected in Junior High School Students

URL http://hdl.handle.net/10105/4078

(2)

中学生の学校ストレスと授業理解感・被尊重感

松 m it】笑 (奈良県吉野郡大淀中学校)

‑u 湘 排In (奈良教育大学心理学教室)

School Stress, Feelmg of Academic Achievement and

Feeling of Being Respected in Junior High Schoo一 Students

Yumi MATSUDA

(Ohyodo Junior High School, Nara) Ko i TAMASE

(Department of Psychology, Nara University of Education)

要旨:本研究の目的は、中学生の学校におけるストレッサーとストレス反応との関係を調べ、認知の個人差としての ソーシャルサポート、学校・家庭での被尊重感、授業理解感との関係を検討することであったO 中学2年生208名 (男子100名、女子108名)を対象に、既存の尺度から抽出した中学生用ストレッサー尺度14項目、ソーシャルサポー ト尺度5項目、中学生用ストレス反応尺度20項目、および授業理解感尺度1項目、被尊重感尺度3項目(学校で先生 から、学校で友人から、家庭で家の人から)を用いて自己評定を行わせた。その結果、授業理解感が低い者はど学莱 ストレッサーをより強く感じており、ストレス反応(特に無気力反応)が高いことが示された。また、家族からの被 尊重感が低い者ほど、より高いストレス反応を表出していることが示された。従来の結果と同様に、学業ストレッサー、

ストレス反応は男子よりも女子の方が高い傾向が認められた。

キーワード:学校ストレスSchool Stress、授業理解感Feeling of Academic Achievement、被尊重感Feeling of Being

Respected

1.問題と日的

2001年に発表された学校基本調査によれば、不登校 を理由に、年間30日以上欠席した児童生徒は約13万4 千名(小学生2万6千名、全児童の0.36% ;中学生10 万8千名、全生徒の2.63%)であった。これは、平均 して中学校では38人に1人、つまり1クラスに1人は 不登校生徒がいることになる。不登校を示す児童生徒 の増加傾向は過去20年以上続いている。

一般に、不登校や無気力などの非社会的な行動、校 内暴力や非行などの反社会的な行動のように、心理的 な要因に起因し、健全な学校生活を妨げるような行動 を総称する言葉として学校不適応という言葉が用いら れている(岡安、 1994)。これをさらに広義に理解す れば、学校不適応という言葉は、学校生活におけるさ まざまな心理的ストレスに起因する心身症や、日常の 学校生活における慢性的な不快感や苦痛を感じている

状態をも包含するものとなる。坂野(1994)に従えば、

行動論的には、行動の頻度や強度が一定の範囲から逸 脱している場合や社会的ルールから逸脱している場合 に学校不適応に陥っていると判断される。

いまだ行動レパートリ‑が少なく、さまざまな行動 的制約の多い小中学生にとっては、学校が外界と接す る唯一の場となり、学業を中心とした学校生活におい ては学業成績に脅かされる場となる。すなわち、学校 は多くの小中学生とって、慢性的なストレッサーにさ らされる場であるといえる。言い換えれば、子どもは 学校でさまざまなストレスを感じ、不適応感に陥って いる可能性があると考えられる。

このような観点から、わが国の未成年者を対象にし た学校におけるストレス研究の必要性が指摘されてい る(安藤、 1985)。藤井(1997)は、 「学校ストレス」

に焦点をあてて、 「いじめ」や「不登校」の問題を捉

えることは、今後の学校教育のあり方を考える上で非

(3)

常に重要であると述べている。彼は子ども達の学校ス トレスを低減させるためには、家庭、学校、地域が何 をすべきかを解明することが、 「いじめ」や「不登校」

を生み出さない環境作りにつながると考え、学校現場 に密接に関連した学校ストレス研究の発展に期待して いる。

ストレスは、心理学的にはストレッサーとストレス 反応によって成り立っものと理解されている。 「学校 ストレス」の定義について、嶋田(1998)は、ストレッ サーを「児童生徒が経験している刺激のうち、児童生 徒がネガティブであると評価したもの」、ストレス反 応を「ストレッサーによって個人に生起した心身のネ ガティブな反応」とし、ストレスを「個人が経験して いる個々のストレス反応の総体としての状態」として いる。本研究でも基本的にこの考え方に従っている。

従来のわが国における学校ストレス研究の大部分は、

Lazarus&Folkman (1984)によって提唱された心 理的ストレス理論に基づいて行われている。彼らによ れば、個人の心理的ストレス過程は、ストレッサー‑

認知的評価‑コービング‑ストレス反応の4つの過程 から構成されている。すなわち、人が日常生活におい て経験するストレスの程度は、 (彰出来事の脅威度や影 響性がどのようにとらえられているか、 ②直面する問 題をどの程度コントロールできると認知しているか、

③どのような具体的反応を行ったか、の個人差に強く 影響される。その結果として、さまざまな種類のスト

レス反応が表出されると考えられている。

嶋田(1998)は、 Lazarusらの理論に従って学校ス トレス研究を行い、子どもにストレスが生じるプロセ スとして、学校ストレッサーの経験‑認知的評価‑コ‑

ピングー‑ストレス反応の表出、という4つの段階があ ることを実証している

Lazarus & Folkman (1984)の考え方に影響を受 けて、発達段階に応じた学校ストレス尺度がいくっか 開発されている。ここでは、その中から本研究と関連 がある中学生を対象とした学校ストレス尺度について 概観することにする。

まず、学校ストレッサーを測定する尺度(表1)に ついて、岡安・嶋田・丹羽・森・矢富(1992)は出来 事の経験頻度とその主観的な嫌悪性をそれぞれ4段階 で評定させる「中学生用学校ストレッサー尺度」を作 成した。経験頻度と主観的な嫌悪性の両者を考慮に入 れて因子分析を行い、 「教師との関係」、 「友人関係」、

「部活動」、 「学業」の4因子(合計39項目)を抽出し た。その後に開発された学校ストレッサー尺度(三浦・

福田・坂野、 1995;嶋田、 1998;三浦、 2000)では、

項目数は違うが、因子は共通している。また、岡安他 (1992)は、学校ストレッサーとストレス反応との因 果関係についても調べており、 「友人関係」は「抑う つ・不安感情」と、 「学業」は「無気力」と強い関連

性を持っことを報告している。

馬岡・甘利・中山(2000)は、学校ストレッサー尺 度の園子的検討を行い、 「教師を源泉とするストレス」、

「自分を源泉とするストレス」、 「生徒を源泉とするス トレス」の3因子(合計27項目)を抽出した。この尺 度は、従来のストレッサー研究(長根、 1991;岡安ら、

1992)で得られたストレッサーがストレスの生起する 場面や状況で分類されているのに対して、教師と生徒

自身と仲間の生徒という学校生活を構成する主な人的 要素で分類されている点にその特徴があるO

神藤(1998)は、学業ストレッサー尺度の因子的検 討を行い、 「成績」、 「宿題」、 「親」、 「教師」、および

「恥」という5因子(合計25項目)を抽出した。また、

学業ストレッサ‑とコービング、ストレス反応との関 連性についても検討したoその結果、学業ストレッサー の経験によって、さまざまなストレス反応が表出され

ることが示された。

表1 中学生を対象とする学校ストレッサーを自己評 定する質問票の項目数、評定形式、因子数、お

よびα係数

開発者と発表年 項目数と   因子数

it 'll耳'蝣蝣A

岡安他(1992) 三浦他(1995) 嶋田(1998) 三浦(2000) 馬岡他(2000) 神藤(1998)

39項目 4件法

o'AM t it;:A 二IiftI]

4件法 25項目 4件法

コTA'J l‑J

4件法

25‑il'J R

4件法

4因子  .79‑.92 4因子  .79‑.89 4因子  .78‑.85 4因子  .82‑.89 3因子  .77‑.86

5Lq 1      8f)

次に、学校ストレッサーによって引き起こされる心 身のストレス反応を測定する尺度(表2)について述 べる。岡安・嶋田・坂野(1992)は、生徒はE]常のさ まざまな場面において、観察可能なストレス反応を示 していると考えた。学校ストレッサーが無気力や不登 校などの問題にどのような影響を及ぼしているのかを 検討するために、学校ストレッサーと同時にストレス 反応を調べ、両者の因果関係を明らかしようとした。

因子分析を行い、ストレス反応として「不機嫌・怒り 感情」、 「身体的反応」、 「抑うつ・不安感情」、 「無力的 認知・恩考」の4因子(合計46項目)を抽出した。こ れらは、その後に開発されたストレス反応尺度(坂野・

嶋田・岡安、 1993;三浦・福田・坂野、 1995;嶋田, 1998;三浦・坂野・上里、 1998;神藤、 1998;三浦、

2000)と項目数は違うが、因子としては共通している。

すなわち、中学生が表出するストレス反応は大きく分

けて上記4つの代表的な因子に分類できるとみなされ

(4)

中学生の学校ストレスと授業理解感・被尊重感 ている。

一方、馬岡ら(2000)は、ストレス反応尺度の因子 的検討を行い、 「無力感」、 「学校への不適応感」、 「攻 撃反応」、 「抑うつ反応」、 「友だちへの不信感」の5因 千(合計27項目)を抽出している。この尺度では、従 来の中学生を対象としたストレス研究におけるストレ ス反応の分類(例えば、岡安ら、 1992 ;神藤、 1998) に加えて、 「学校への不信感」や「友だちへの不信感」

という、より直接、学校不適応につながると考えられ る要因を付加したところにその特徴がある。

表2 中学生を対象とするストレス反応を自己評定す る質問票の項目数、評定形式、因子数、および

cx係数

開発者と発表年 'I'llはlt上

評定形式 因子数   α係数 岡安他(1992)4#ffi

坂野他(1993)244│呈 三浦他(1995)244豊 嶋田(1998)244語呂 三浦他(1998)24‑│呂 神藤(1998)253││

三浦(2000)2mB 馬岡他97 (2000)' 4琵呂

4因子  .84‑.90 4因子  .82‑.91 4因子  .84‑.91 4因子  .81‑.88 4因子  . 1‑.91 4因子  .81‑.92 4因子  .84‑.87 N    .SI .8il

本研究では、中学生における学校でのストレッサー とストレス反応との関係に、生徒の認知的な個人差の 要因がどのように影響するのかを調べることに焦点を あてている。生徒の個人差については、知覚されたソー シャルサボ‑ト、家庭や学校で大切にされていると自 己認知している度合い(披尊重感)、および5教科に 関する授業理解感を取り上げた。学校生活の大部分を 占めるのは教科の授業であり、その授業を理解するこ とが学校でのストレスを軽減することにつながるので はないかと考え、授業理解感を取り上げた。また、授 業理解の前段階として「心の安定」が必要であり(管 野,1994)、自分が価値ある存在として周囲の人たちか ら大切にされていると実感しているかどうかが学校で のストレスを軽減することにつながるのではないかと 考え、被尊重感を取り上げた。

2.方 法 2. 1.調査対象

中学2年生の生徒208名(男子100名、女子108名) を対象として、調査者によるクラスごとの一斉方式で

質問紙調査を実施した。実施の時期は2000年9月であっ m

2. 2.調査内容

2. 2. 1.中学生用ストレッサー尺度

三浦(2000)の中学生用ストレッサー尺度より「友 人関係」 6項目と「学業」 8項目の2下位尺度、計14 項目を用い、 4件法で評定を求めた。

教示は、 「最近、次のような出来事が、あなたにど れくらいありましたか?また、それはあなたにとって、

どのくらい嫌なことでしたか?」とした。先行研究に 従って、経験頻度と嫌悪度の積をストレッサー評定得 点とした。したがって、友人関係ストレッサー評定得 点は0点〜54点に分布し、学業ストレッサー評定得点 は0点〜72点に分布する。

2. 2. 2.中学生用ソーシャルサポート尺度 三浦・嶋田・坂野(1995)の中学生用ソーシャルサ ポート尺度より、 1因子5項目を用い、 4つのサポー ト源(父親・母親・教師・友人)について、各項目ご とにそれぞれ4件法で評定を求めた。

教示は、 「あなたにとって、あなたの周りの人たち が、どのくらいあなたの助けになっていると感じます か?」とした。ソーシャルサポート得点は、サポート 源ごとに0点〜15点に分布する。

2. 2. 3.被尊重感

学校で先生から・学校で友人から・家庭で家の人か ら、大切にされていると恩うかについて、 4件法で評 定を求めた。

被尊重感得点は、各0点〜3点に分布し、得点が高 いほど大切されていると感じていることを示す。

2. 2. 4.授業理解感

5教科(国語・社会・数学・理科・英語)のうち、

何教科の授業を理解できていると思うかについて、 5 件法で評定を求めた。

0‑どの授業もほとんどわからない。

1 ‑一部の授業を除いてほとんど理解できていない。

2‑半分くらいの授業は理解できている。

3‑一部の授業を除いて、よく理解できている。

4‑どの授業もよく理解できている。

評定内容は以上の通りであり、授業理解感得点は0 点〜4点に分布する。

2. 2. 5.中学生用ストレス反応尺度

三浦(2000)の中学生用ストレス反応尺度より、抑 うつ不安、不機嫌怒り、身体反応、無気力の4因子各 5項目、計20項目を用い、 4件法で評定を求めた。教 示は、 「次に書いてある気持ちや身体の調子は、この 頃のあなたにどのくらい当てはまりますか?」とした。

各因子の評定得点は0点〜15点に、ストレス反応得点

は、 0点〜60点に分布する。

(5)

3.結果と考察 3. 1.評定平均値

表3は各尺度の平均値および標準偏差を示したもの である。 1%水準で男女間に有意差があったのは、学 業ストレッサー・ストレス反応(抑うっ不安) ・スト レス反応合計の3つであった。いずれも女子の方が高 い値を示しており、これは先行研究における一般的な 傾向と一致している。

ストレス反応の各下位因子の平均値を比較すると、

男女とも「無気力」の得点(女子:6.82点、男子:

5.79点)が一番高く、次いで「不機嫌怒り」の得点 (女子:5.78点、男子:4.69点)が高かった。

性差が認められたのは、 「抑うつ不安」の得点(女 千:5.32点、男子:2.76点)だけであり、 1%水準で 女子の得点が男子より有意に高かった(図1)0

これらの結果は、先行研究における一般的傾向と一 致しているが、どの反応の得点も15点中の半分以下で あり、本研究の中学2年生はストレス反応が低い傾向 にあるのが特徴である。

表3 ストレッサー、ソーシャルサポート、被尊重感、

授業理解感およびストレス反応に関する評定の 平均値と標準偏差

全体   男子      女子 友人ストレッサー

学業ストレッサー 父親サポート 母親サポート 先生サポート 友人サポート 被尊重感

(.・)蝣L t. 1

被尊重感 (友人) 帖尊市'sK

(家の人) 授業理解感 ストレス反応

(抑うつ不安) ストレス反応

(不機嫌怒り) ストレス反応

(身体反応) ストレス反応

(無気力) ストレス反応 合 計

Si (7.30) 24.04 (15.91)

7.S (4.44)

10,30 (3.83) 7.55 (3.90) 10.78 (3.48)

1.54 (0.81)

2.10 (0.75)

2.5‑1 (0.70)

2.44 (1.13)

4.09 (3.95)

5.26 (4.61) 4.01 (3.54)

6.33 (3.63)

19.69

(12.21) (10.80) \ (12.77)

5.436.26 (7,72)(6.90) (;2霊<2 (1鵠 8.157.56 (4.05)(4.77) 9.5111.04 (3.87)(3.67) 7.227.85 (3.90)(3.88) 9.7211.77 (3.66)(3.00) 1.561.53 (0.83)(0.79) 2.062.13 (0.80)(0.70) 2.522.56 (0.70)(0.70) 2.63,26 (1.10)(1.14) .言いI'il・

4.695.78 (4.49)(4.68) 3.384.58 (3.15)(3.79) 5.796.82 (3.54)(3.66)

16.62、<′禦・至3U、

カッコ内の値は標準偏差、不等号は有意差を示す。

ス ト レ ス 反 応 得 点 の 平 均

t o   w          

* サ

mgiE細昌 baymP且  UEM開   L.i‑jy.il

図1 ストレス反応の男女別平均値 3. 2.重回帰分析

3. 2. 1.ストレス反応合計を日的変数とする重回 帰Sffi

各説明変数の下位尺度とストレス反応の関係を検討 するため、ストレス反応を目的変数とする重回帰分析 を行った。表4はその結果を示したものである。この 表で明らかなように、 11説明変数で垂回帰分析した結 果、自由度修正済み決定係数は、 .42であった。次に、

ここでストレス反応との関連性の強さが示された5説 明変数を残して再度重回帰分析を行った。その結果、

自由度修正済み決定係数は、.42であった。すなわち、

11説明変数と5説明変数との問で自由度修正済み決定 表4 ストレス反応を目的変数とする重回帰分析

11説明変数    5説明変数 説明変数    β   t値   β   t値

友人ストレッサー .27  4.15**ホ .29  4.76"*

学業ストレッサ  .26  3.81"キ .28  4.45'=

父親サポート 母親サボ‑ト 先生サポート 友人サボ‑卜 被尊重感(先生) 被尊重感(友人) 被尊重感(家の人)

‑.03  ‑0.50 .07  1.08

‑.26  ‑3.65‥  ‑.27  ‑5.C 日*

.04  0.52

‑.01 ‑0.10

‑.12  ‑l.f

‑.17  ‑2.62"  ‑.19  ‑3.22"

授業理解感     ‑.05 ‑0.74

性差        .15  2.58*  .18  3.22*ホ 重相関係数     ,67

決定係数      .45 自由度修正

済み決定係数   .42

F値      14.49‥      30.74***

βは標準偏回帰係数   *p<.05,・*p<.01, …p<.001

(6)

中学生の学校ストレスと授業理解感・被尊重感

係数に差がないことが明らかとなった。従って、スト レス反応は、友人ストレッサー、学業ストレッサ‑、

先生サポート、被尊重感(家の人)および性差で説明 できるものとみなされる。

以上の分析から、困った時に先生からの援助を期待 できないと知覚すること、友人関係や学業場面で不快 な出来事を経験し、その嫌悪性が高いこと、家の人か ら大切にされていないと認知することが、より高いス トレス反応を表出するものと推測される。性差につい ては、男子よりも女子でストレス反応の得点が高い傾 向が認められる。

3. 2. 2.ストレス反応(抑うつ不安)を目的変数 とする重回帰分析

個々に説明変数の下位尺度とストレス反応の下位尺 度との関係を検討するために、ストレス反応(抑うつ 不安)を目的変数とする重回帰分析を行った。表5は その結果を示したものである。

表5 ストレス反応(抑うつ不安)を目的変数とする 重回帰分析

11説明変数    5説明変数 説明変数    β   t値   β   t値

友人ストレッサ   .33  4.92*" .36  5.6 ‥*

学業ストレッサー .18  2.45'  .16  .41キ 父親サポート

母親サポート 先生サボ‑卜 友人サポート 被尊重感(先生) 被尊重感(友人) 被尊重感(家の人) 授業理解感 性差

‑.01 ‑1.10 .05  0.68

‑.18  ‑2.41'  ‑.13  ‑2.2 .05  0.65

1.02

‑.15  ‑2.11*

‑.17  ‑2.47*   ‑.17  ‑2.8 .03  0.50

.27  4.27'"  .28  4.77"*

垂相関係数    .63 決定係数      ,40

自由度修正済み

決定係数      .36

F値      11.64‥      24.64‥Ⅰ

βは標準偏回帰係数   ・p<.05,・*p<.01, …p<.001

11説明変数で重回帰分析した結果、自由度修正済み 決定係数は、 .36となり、友人ストレッサー、学業ス トレッサー、先生サポート、披尊重感(友人)、被尊重 感(家の人)および性差の6説明変数とストレス反応 (抑うつ不安)との関連の強さが示された。次に、そ の6説明変数を残して垂回帰分析した結果、自由度修 正済み決定係数は、 .37となり、被尊重感(友人)だ けが有意にならなかった。そこで、それ以外の5説明 変数を残して再度重回帰分析した結果、自由度修正済 み決定係数は、 .36となった。このことは、 11説明変 数と5説明変数との間で自由度修正済み決定係数に差 がないことを示している。従って、ストレス反応(抑 うつ不安)は、友人ストレッサー、学業ストレッサー、

先生サポート、被尊重感(家の人)および性差で説明 できるといえる。

以上の分析から、友人関係場面で不快な出来事を経 験した場合に、それがストレス反応を生じやすいこと、

男子よりも女子の方がより高いストレス反応(抑うつ 不安)を表出しやすいことが推測される。また、家の 人から大切にされていないと認知すること、学業場面 で不快な出来事を経験すること、困った時に先生から の援助を期待できないと知覚することも、高いストレ ス反応(抑うつ不安)を表出させやすいことも推測さ れる。

3. 2. 3.ストレス反応(不機嫌怒り)を日的変数 とする重回帰分析

次に、ストレス反応(不機嫌怒り)を目的変数とす る重回帰分析を行った(表6)0 11説明変数で分析し た結果、自由度修正済み決定係数は、 .29となり、友 人ストレッサー、学業ストレッサーおよび先生サポー トの3説明変数とストレス反応(不機嫌怒り)との関 連の強さが示された。そこでさらに、 3説明変数を残 して分析した結果、自由度修正済み決定係数は、 .27 となった。このことは、 11説明変数と3説明変数との 間で自由度修正済み決定係数にほとんど差がないこと を示している。従って、ストレス反応(不機嫌怒り) は、友人ストレッサー、学業ストレッサーおよび先生 サポートで説明できるといえる。

以上の分析から、友人関係場面で不快な出来事を経 験すること、困った時に先生からの援助を期待できな いと知覚することが、より高いストレス反応(不機嫌 怒り)を表出させるものと推測される。また、学業場 面で不快な出来事を経験することも、高いストレス反 表6 ストレス反応(不機嫌怒り)を日的変数とする

重回帰分析

11説明変数    3説明変数 説明変数    β   t値   β   t値 友人ストレッサー

学業ストレッサ‑

父親サポート 母親サポート 先生サボ‑卜 友人サポート 披尊重感(先生) 披尊重感(友人) 被尊重感(家の人)

.29  4.09"*  .31  4.57"*

.20  2.71"  .19  2.83"

‑.01 ‑0,09

‑.00  ‑0.01

‑.24  ‑3.01**   ‑.31 ‑5.29‥'

.04  0.47

‑.15  ‑1.85

‑.02  ‑0.27

‑.14  ‑l.t

授業理解感    .09  .32 性差        .07 1.09 重相関係数    .57 決定係数      .33

自由度修正済み

決定係数      ,29

F値      8.78"*      26.36*"

βは標準偏回帰係数   ‑p<.05, ‥p<.01,・*<p<.001

(7)

応(不機嫌怒り)を生じさせやすいことも示唆される。

3. 2.  ストレス反応(身体反応)を目的変数と する重回帰分析

次に、ストレス反応(身体反応)を目的変数とする 重回帰分析を行った(表7)。 11説明変数で分析した 結果、自由度修正済み決定係数は、 .16となり、母親 サポート、先生サポートおよび被尊重感(家の人)の 3説明変数とストレス反応(身体反応)との関連性が 示された。そこで、その3説明変数で再度分析した結 果、自由度修正済み決定係数は、 .08となった。 11変 数を用いた場合でも決定係数の値はかなり小さいが、

表7 ストレス反応(身体反応)を目的変数とする重 回帰分析

11説明変数    3説明変数 説明変数    β   t値   β   t値 友人ストレッサ   .15

学業ストレッサ  .15  1.87 父親サボ‑ト

母親サポート 先生サポート 友人サポート 被尊重感(先生) 被尊重感(友人) 被尊重感(家の人)

.03   0.34

.16   2.04*  .17  2.25*

‑.26  ‑3.04**  ‑.20  ‑2.92'"

.05   0.57 .08   0.98

‑.11  4.32

‑.23  ‑2.90"  ‑.25  ‑3.38'"

授業理解感     ‑.04  ‑0. 53 性差        .10  1.45 重相関係数    .46

決定係数      ,21 自由度修正済み

決定係数      .16

F値      4i ‥      7.13*"

βは標準偏回帰係数   ・p<.05, ‥p<.01,・**p<.001 3変数ではさらに小さな値となっている。従って、こ こで用いた説明変数は、ストレス反応(身体反応)と の関連性は少ないといえよう。

3. 2. 5.ストレス反応(無気力)を目的変数とす る重回帰分析

次に、ストレス反応(無気力)を目的変数とする垂 回帰分析を行った(表8)。 11説明変数で垂回帰分析 した結果、自由度修正済み決定係数は、 .29となり、

学業ストレッサーと授業理解感の2説明変数とストレ ス反応(無気力)との関連性の強さが示された。そこ でさらに、その2変数を残して分析した結果、自由度 修正済み決定係数は、 .26となった。 11説明変数と2 説明変数の間で自由度修正済み決定係数にほとんど差

がないことがから、ストレス反応(無気力)は、学業 ストレッサーと授業理解感で説明できるとみなされる。

以上の分析から、学業場面で不快な出来事を経験す ること、理解できている授業の教科数が少ないと認知 していることが、より高いストレス反応(無気力)を 表出させるものと推測される。

表8 ストレス反応(無気力)を目的変数とする重回 帰分析

11説明変数    2説明変数 説明変数    β   t値   β   t値 友人ストレッサ   .02  0.26

学業ストレッサー .28  .75'" .27  4.C ‥' 父親サポート

母親サポート 先生サポート 友人サポート 被尊重感(先生) 被尊重感(友人) 被尊重感(家人)

‑.12  ‑1.64 .02  0.30

‑.13  ‑1.65

‑.02  ‑0.22

‑   ‑0.03

‑.12  ‑1.65 .01  0.18

授業理解感     ‑.26 ‑3.80***  ‑.34 ‑5.11'**

性差        .03  0.4 垂相関係数    .57 決定係数     .33 自由度修正済み

決定係数      .29

F値      1.65***     37.20'"

βは標準偏回帰係数   *p<.05,・*p<.01, *"p<.001 3. 3.授業理解感とストレス反応

授業理解感とストレス反応(無気力)および学業ス トレッサ‑との関連性について検討した。ここでは、

授業理解感の得点によって群分けした3群(低群; N‑

36:0点と1点、中群;N‑74: 2点、高群 N‑< : 3点と4点)のストレス反応(無気力)と学業ストレッ サ‑得点を比較した。表9は1要因の分散分析を行っ た結果を示したものである。ちなみに、授業理解感の 得点内容は、以下の通りである。

0点:どの授業もほとんどわからない。

1点:一部の授業を除いてほとんどわからない。

2点:半分くらいの授業は理解できている。

3点:一部の授業を除いてよく理解できている。

4点:どの授業もよく理解できている。

表9 授業理解感各群のストレス反応(無気力)およ び学業ストレッサー得点

低群   中群  高群   F値 ストレス反応   9.00   6.85   4.95  20.97'"

(無気力    (3.14) (3.17) (3.49) 低>中>高 学業ストレッサー 35.14   26.70  17.95  20.12***

(16.30) (15.31) (13.38)低>中>高

カッコ内は標準偏差         …pく001 表9で明らかなように、ストレス反応(無気力)お よび学業ストレッサー得点において群の主効果が認め られた。そこでさらに多重比較を行った結果、低群は 中群と高群に比べ、また中群は高群に比べて、ストレ ス反応(無気力)と学業ストレッサーの得点がともに 有意に高いことが示された。

これらの結果から、学校で5教科の授業を「理解で

きていない」と認知している生徒は、 「理解できてい

(8)

中学生の学校ストレスと授業理解感・被尊重感 る」と認知してい生徒に比べて、学業場面で不快な出

来事を経験しやすく、ストレス反応(無気力)を表出 しやすい傾向にあるといえる。

3. 4.被尊重感とストレス反応

家庭での被尊重感とストレス反応との関連性につい て検討を行った。ここでは、家庭での被尊重感の度合 いによって3群(高群;N‑17:とても大切にされて いる、中群;N‑58:少し大切にされている、低群;

N‑133:大切にされていない)に分け、ストレス反 応の各下位尺度の得点を比較した。表10は尺度ごとに

1要因の分散分析を行った結果を示したものである。

この表で明らかなように、無気力を除く各下位尺度に おいて群の主効果が認められた。そこでさらに、多重 比較を行った結果、抑うつ不安と身体反応では、被尊 重感(家の人)低群が申群と高群に比べて、不機嫌怒 りでは、低群と中群が高群に比べ有意に得点が高かっ m

表10 被尊重感(家の人)各群のストレス反応得点 低群   中群   高群   F値 I抑うつ不安

Ⅱ不機嫌怒り

Ⅲ身体反応

TV細蝣蝣<(. >)

6.82   4.57   3.53 (4.30) (4.14) (3.67)

7.53   .71   4.33 (4.56) (4.54) (4.42)

6.12   .19   3.65 (4.34) (3.18) (3.51)

7.65   6.84   5.93 (3.04) (3.44) (3.73)

6.14"

闇S3R?

1.13'"

低,中>高 :l Sti' 低>中,高

2.54n.s.

カッコ内は標準偏差  *p<.05,・・p<.01, "*p<.001 これらの結果から、 「家の人に大切にされていない」

と認知している生徒は、 「家の人からとても大切にさ れている」と認知している生徒に比べて、無気力以外 のストレス反応を表出しやすい傾向にあるといえる。

3. 5.ストレッサーの経験率

友人関係場面と学業場面におけるストレッサーの経 験率を調べた。経験頻度の評定0 : 「ぜんぜんなかっ た」と評定1 : 「あまりなかった」を経験なしとし、

評定2 : 「ときどきあった」と評定3: 「よくあった」

を経験ありとして、経験率を調べた。

その結果、友人ストレッサーの経験率よりも学業ス トレッサーの経験率の方が高いことが示された。特に

「先生や両親から期待されるような成績をとれなかっ た」り、 「試験や通知表の成績が悪かった」経験をし た生徒が70%以上もいることが明らかにされた。この 結果は、学業ストレッサ‑の平均値(24.04)が友人 ストレッサーの平均値(5.86)の約4倍の高さにある こととも‑一致している。従って、本研究における中学 2年生は、友人関係場面よりも学業場面で不快な出来

事をより多く経験しているといえる。

3. 6.ソーシャルサポートの知覚率

4つのサポート源(父親、母親、先生、友人)にお けるソーシャルサポートの知覚率を調べた。評定0 (ぜったいちがう)と評定1 (たぶんちがう)を「サ ボ‑ト知覚なし」とし、評定2 (たぶんそうだ)と評 定3 (きっとそうだ)を「サボ‑卜知覚あり」として、

知覚率を調べた。

その結果、どの項目においても母親と友人に対する サポート知覚率が60%以上あるのに対して、父親と先 生に対するサポート知覚が低いことが明らかになった。

これは平均値で示された傾向と一致している。従って、

本研究における中学2年生は、母親と友人に対するサ ポート期待が高いといえる。

4.結 論

本研究では、まず従来の学校ストレス研究において すでに取り上げられている問題を明らかにし、残され た課題が何であるかを検討した。 Lazarus&Folkman (1984)のストレス理論を学校場面に適用した実証的 研究は数多く行われている。それに関連して学校スト

レスに関する自己評定尺度もかなり開発されており、

その信頼性や妥当性についても検討されている。しか し、教育実践の現場からみれば、実際にその成果を利 用しうるような形での研究は必ずしも十分に蓄積され ているとはいえない。学校において生徒が強くストレ スを感じている要因は何であるのか。その要因は何に 起因しているのか、どのような対策が必要であるのか などについて、より明確な答が求められているといえ

る。

本研究の結果から、抑うつ不安、不機嫌怒り、身体 反応、無気力などのストレス反応を生じる要因(スト レッサー)が、主として友人と学業であり、それらの ストレス反応を減じる要因が先生からのサポート感で あり、家族からの被尊重感であることが明らかにされ ている。ストレス反応の中でも無気力については授業 理解感が重要な要因であることも示されている。

学校生活は学業を中心として展開されており、学業 でのつまずき、すなわち授業理解感の欠如は生徒をや る気の喪失や無気力状態へと追い込む要因であること に注目する必要があろう。生徒たちに授業が分からな いと感じさせることは、彼らにとって学校を魅力のな

いものにしてしまうおそれがある。

逆に考えれば、授業が分かると感じさせること、教

師が生徒の授業理解を援助しようとしていることを生

徒に明確に伝えること、家族から尊重されていると感

じさせることが生徒たちのストレス反応を減じること

になるのであり、その方策を考えることが重要である。

(9)

常識的ではあるが、丁寧にどの子にも分かる授業をし ようとすることが重要であるといえる。

本研究は授業理解感や被尊重感の測定に関しては、

探索的段階にあり、尺度構成の面でも十分なものとは いえない。この点についは、今後さらに尺度を充実さ せて再度検討を加えることにしている。

引用文献

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宮川充司・大野木裕明(編)生徒指導と学校カウ ンセリング ナカニシャ出版 )‑QQ

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参照

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