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学校経営改善を進める学校評価票の活用

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(1)

学校経営改善を進める学校評価票の活用

著者 八尾坂 修, 高田 和裕

雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要

7

ページ 11‑22

発行年 1998‑03‑31

その他のタイトル Practice of School Evaluation Card for School Restructuring

URL http://hdl.handle.net/10105/4315

(2)

八尾坂  修

(奈良教育大学教育経営学研究室) 高 田 和 裕

(京都府大江町立大江中学校教頭)

Practice of School Evaluation Card for School Restructuring

Osamu YAOSAKA

(Department of Educational Administration, Nara University of Education) Kazuhiro TAKATA

(Vice‑Principal of Junior High School in Kyoto Prefecture)

要旨:各領域に分かれた複数の観点項目を、健康・不健康の二元的な尺度から1‑5までの5 段階の数字で回答してプロフィールを作成する形式の学校評価票(以後、プロフイ‑ル作成用学 校評価票とする)について、各観点項目を"内面性"̀̀行動性"の2つのベクトルを持っ類型に分 頓した上で、各領域ごとに対(Pair)を組ませることにより、福岡県教育所連盟の開発による

「マトリックスによる整理表」を応用した分析方法「マトリックス分析法」を作成した。

この分析法を用い、 A中学校の教頭が回答した「学校経営の指針(プロフィール作成用学校評 価票)」を分析した結果、分析表上の課題がある領域に合計1 7ペアがポイントされたため、そ

のポイント分布から学校経営状況を読み取り、校長のリーダーシップの側面から改善策構築の方 向性を提示するという作業を通して、 「プロフィール作成用学校評価票」の発展的な活用の可能 性と、 「マトリックス分析法」の有効性について考察した。

キーワード: 意力,人間性重視 1.はじめに

学校が子供の成長を願い、国民の信託に答え得る学校経営を実現し続けるためには、社会の変 化と要求に対応し、学校教育目標の達成を目指した機能的・協働的・創造的な教育活動を推進す

るための恒常的な学校経営改善が求められる。

学校経営改善を効果的に推進するためには、 PDSサイクルにおいて「評価」をいかに客観的 かつ科学的に実施するかが鍵であり「学校評価票」による課題の発見が期待されているが、発表 されている多くの学校評価票(学校経営診断票・学校経営の指針・学校経営診断カードなど名称 は多数)は、健康・不健康の二元的な観点による1‑5段階を数字(またはA〜Cの3段階をア ルファベット)で回答してプロフィールを作成する形式を採用しているため、健康度や傾向及び 課題の概略は判断できるものの、直ちに改善策を導き出すことは以下の理由により困難である。

(力具現化した課題には「内面性の要素」 (校長の経営意力,教職員の使命感,責任感,遵法精 神)と「行動性の要素」 (校長の実践的リーダーシップ,教職員の実践指導力)の両面が含 まれており、起因する課題要素が「内面性の課題」なのか「行動性の課題」なのかを把握し

(3)

にくい。

(参回答者の性格が「楽天的」なのか「悲観的」なのか、または、過去にどんな校務分掌を経験 しているのか、あるいは、 「何を真実と考えているか」 「学校とは人間とはどうあるべきだと 考えているか」など、回答者の性格や経歴及びその学校の「組織文化の異なり」によって、

同程度の課題であっても回答糸吾果(1‑5)にかなりのバラツキが出るものと考えられる。

③その課題の多くが「校長のリ‑ダーシップに起因している」のか「校務分掌を実務として担 当している教職員に起因している」のかを直ちに分析することが容易ではない。

これらの混乱を回避する分析方法としては、福岡県教育所連盟が開発した「マトリックスによ る整理表1)」や牧呂見氏の「ダイヤグラムによるパターン分析2)」があるが、共に学校経営診断 票(診断カード)の設問設定段階から分析を考慮して作成されたものであり、既に完成・使用さ れている多くの「プロフィール作成用学校評価票」の分析には使用できない。

しかし、プロフィール作成用に設問された観点項目を何らかの視点から異なったベクトルを持 つ類型に分類することができれば、 「マトリックスによる整理表」を応用・一般化することが可 能となり、既存の「プロフィール作成用学校評価票」がプロフィールの作成という目的以外に新 たな分析結果を生み出し、具現化した課題の性質と課題が起因している学校経営状況の傾向を示

し、学校経営改善策構築の方向性をより明確に提示するものに変わるのではないだろうか。

この仮説に基づき、 「学校経営の指針3)」と名付けられた「プロフィール作成用学校評価票」

の「マトリックス分析法」を作成し、 A中学校4)の教頭5)による回答(図1)の分析から具現化 した課題を検討することで、その有効性を考察する。

学校経営の指針[中学校用]

M r 蝣' f ‑‑

* ft ・.'.・: 守

番 号 1 2 3 4 5

1 教 育 目標 設 定 具現 化

1 学 習指 導 要 領や本 府 及 び 当該市 町村 (組 合 ) 教育 委 員会 の L」‑7度 」

「指 導 の重 点 J に応 え る教育 目標 にな って い る0

2 教 育 目標 の 設定 (改 言丁) に 当た って は、生 徒 及び 地域 の実 態 Li を考 慮 して 策定 して い る0

3 教 育 目標 の具 現 化 に向 け、 教育 課程 の編 成 、 指導 計画 の作 成 L L 二[ ⊥」

等 に工夫 を して い る0

4 教 育 目標 の具 現化 に向 け、 各校 務分 掌 の経 営 計画 を作 成 して L 7度 ⊥」

5 い る0諸 教育 計 画 の作成 段 階で 評 価計 画を もち、 教 育 目標 の 達成 状 (魁 ⊥ ⊥ 」

;*」< 蝣'.'.'.輪 して い ふい 2 経 営 方針

6 教 育 目標 の具 現化 に向 け 自校課 題を 明確 に し、学校 改 善 を図 るよ う学校 経 営方 針 を 明示 して い るO

7 学校 縫営 方 針 の も と、年度 の重 点 目標 につ いて は、 教職 員 に JB B B B B i

(中間部分省略)

巨妻帯当二]

C)プロフィ ールのJt1度

1 2 3 4 5

ほ と ん ど て1 き て い な い イこ′. 分 な と こ 7 , か 多 い お IJlむ ね で き て い る カ、な り て1 き て い る 「 分 に で き て い る

. は と ′し ど し な い ‑ 時 々→ る . す る こ と か 多 い . は と ^ J と 、寸 る . い イ) t> す る

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図1 A中学校の教頭か回答した学校経営の指針

(4)

2. 「学校経営の指針」における領域一観点の分類 2. 1.問題性〝と"病理性〝についての仮説

学校経営は、内面的な"意力(Motivational Power)と行動的な"実践力(Practical Pow‑

er) "との効果的な相互作用によって成立するものであり、改善すべき課題の中の「問題性」に ついては、そのバランスの不均衡によるものと考え、 「病理性」については、そのどちらもが不 十分であるか、もしくは、著しい内面性の欠如によるものと前提した上で、以後の考察を行うこ

ととする。

2. 2.観点項目の分類と相互の関係について

各観点項目は全て「〜している」という具現化している行動的な"実践力"を問う形式になっ ているが、実際は内面的な"意力"を問うものが多数含まれており、各領域の中で内面的な"意力''

を問う観点項目と行動的な"実践力"を問う観点項目とが対になっていると考えられる。

また、学校経営の掌理者は校長であり、全ての領域・観点について校長に責任がある事項では あるが、校務分掌により各教諭に実務を分担させていることから、 "校長の経営意力と実践的リー ダーシップに関する観点項目"と直接影響している主任及び担任等教員の"意力(使命感,責任 感,遵法精神)と行動力(日々の実践的指導力)に関する観点項目"に分類する。

2. 3.各観点項目の「内面性」と「行動性」の分類上の見極めについて

「pDSマネージメントサイクル」における[P]と[S]に該当する観点項目は「内面性」

[D]に該当する観点項目は「行動性」に分類した。尚、 [P‑D]と[D‑S]の過程にあるも のについては、その比重からベクトルの大きさにより判定した。

2.4.分類表

以上により9 3観点項目を"校長に関する観点項目"と"教職員に関する観点項目''に分類し (内面性一行動性)の対(Pair)にして整理したものが分類表(表1)である。

表1 観点項目の分類表

(5)

3.マトリックス分析法(回答結果の分析表)について 3. 1.分析表の設定領域について

回答結果による学校の発展的な面と抱える課題の発見については、それぞれ対になった観点ペ アを、縦軸を"内面性"横軸を"行動性"としたマトリックス表上に対番号[例(41. 48)]を付し た点(又は×印)として記入し、 「図2」に示した境界線により"発展性''"問題性1""問題性 II""病理性""問題性予備"の5領域に分類するものとする.

マトリックス分析表

5

I一l.発 展性 領 域 ‖ 4 ?i

I 日題 性

領 域

3 問 題 性 予 備 令衷域

2 rLl日題 性 lI 領 域

1 病 理 性 領 域

1 2 3 4 5

図2 学校経営の指針分析表

① 発展性領域:

内面性,行動性どちらも十分であり、望ま しい学校経営ができている。

② 問題性I領域:

内面性としては常に使命感があり意欲的で あるが、実践が"ことなかれ主義"や"人の 模倣や追従"に止まっているか、気づかずに

"反対行動"をしている。

③ 問題性Ⅲ領域:

行動性としての実践は活動的・勢力的であ るが、内面的な意力に乏しく本質を見極めて いない。

④ 病理性領域:

内面性として常に消極的であったり、無責 任であったり、反感的であり、行動性として の実践も消極的であったり、無気力である。

また、意欲的に実践しているように見えて も理論的に正しい理解ができていないので意 図的,反意図的に拘わらず反対行動をしている可能性が高く、緊急に改善の処方が必要である。

⑤ 問題性予備領域(発展性可能領域) :

現状では内面性,行動性どちらにも課題は無いが、より効果的な学校を目指そうとする積極 的な"意力"又は"実践力"がみられず、人事異動による教職員の配置転換や些細な問題事象の 発生により問題性領域に移行する危険性がある。また逆に、発展性領域へ移行する可能性もあ る。

3. 2.分析表に現れた全般的課題と局所的課題

分析表に現れた"問題性""病理性"は、 (A) 「単にその領域・観点のみの課題である場合」と、

(B) 「学校経営全般にわたる課題がその領域・観点に結晶化して具現化した場合」が考えられ、

本稿では(A)を局所的課題, (B)を全般的課題と称することにする。

また、全般的課題か局所的課題かの見極めは分析表にマ‑キングした点の集まり(バラツキ) から判断することとし、多くの点が①, ⑤に集まっているが、 (参, ③, ④にも点が存在する場合

は局所的課題、多くの点が②, ③, ④に集まり①, ⑤に少ないか、もしくは、多くの点が②, ⑤

(6)

または③, (参に集まっているが、 ④に点が存在する場合は全般的課題と判定するo

ただし、設問のNo. 1領域(教育目標設定・具現化)またはNo. 2領域(経営方針・年度 重点)のいずれかの観点項目ペアが課題領域にポイントされた場合は、学校経営の根幹に課題が あることの深刻性から局所的なポイント配置であっても、全般的課題とする。

4.資料及びデータの整理 4.1.資料

A中学校4)の教頭5)が、平成8年度の自校の学校経営について回答したものを使用した。

4.2.データの整理

設問を観点ペアに分類し、回答を整理して記入したものが整理表(表2,表3)である。

また、整理表に基づいてマトリックスに記入したものが分析表(表4,表5)である。

表2 整理表A (校長に関する観点項目)  表3 整理表B (教職員に関する観点項目)

1 3 観 点 番 号 ,^

(内面, 行動) (内面 捕 ) 1 教 育 E l 標 設 定 .

具 現 化

( ー 4 ) .] ( 2 . 4 ) 7 3

< 3 , 4 ) 5 , 4 )

J 1

3 3

2 経 営 芳 雪子‑∵i 一l

年 度 重 点

( 6 , 7 ) 5 5 ( 9 , 8 ) 1

4 細 酢

校 務 分 掌

( 1 4 ▼ 1 5 ) 4 3 ( ーA , 1 7 ) 4 , 4

6 情 報 . 文 吾 ラ6 , 2 7 ) 4 . ラ

( 2 6 , 2 8 4 , 4 7 . 施 設 . 設 備 ( 3 1 , 3 0 ) 5 , 3 H Ll十 A 蝣 H +1時 汁 含 ( 3 Z , 3 3 ) 3 .4 ( 3 2 , 3 5 3 , 3 0 教 育 課 程 (事誠 と鶏 の大事) ( 4 1 . 4 8 ) .1 / 了 首 .1.甘 夏 l一 U 〜 .l ( 5 9 . 5 8 ) 1 . 2 l 3 特 宮廟 .h nY ( 6 5 , 6 4 ) 2 ′ 4 4 生 徒 指 、 ( 6 6 . 7 0 ) 1 . '・

( 6 8 , 7 0 ) 5 5

14 進 搭 fW ( 7 5 , ) 5

14 両 面 肝 M. 行 百, 8 0 ) 5 4

14 儲 し康 安 全 教 育 ( 8 一, 8 4 ) 4 3

14 障 害 児 教 ( 8 6 . ) 5

4 国 際 理 解 教 育 ( 9 一. ) 5

4 環 境 数 日 ( 9 2 . 3

7 4 情 報 教 育 9 3 , 3

古号 サ u >う 甫

t lt f 市郎

( 内乱 欄 )

K 観 点 番 号

( 欄 , )

( 内乱 行 動)

3 .′ 学 年 . 学 荒牧 ( 1 0 ーZ ) 2 , 4 了 T ††X 'l ←6 1 . b ." 4 4

( 1 3 , l l ) 3 , 4 ( 6 1 , 6 3 ) 4 5

4 .

校 務 分 掌

( 1 8 , 1 6 5 1 ; I ー4 生 徒指 導 ( 6 9 , 6 7 ) 4 5

( ー9 , 1 6 ) 2 . 5

ー4 進 路指 導

( 7 一, 7 ! ) 5 3

5 一 研 究 所 確 ▼T .一

十W n . L l f →

( 2 0 , Z l ) 3 首. ( 7 1 , 7 3 ) r . .1

( 2 2 . 2 3 ) ク , 3 ( 7 1 . 7 4 ) 5, 4

( Z 4 , をV3 ) ( 7 右i . 7 7 ) 5, 5

6 7

3 J S 蝣 * *

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ー4 同 和 教 育 ( 7 号, 7 8 )

( "7 6 , " "7 9" ) "

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8 7 ▼〒l 欄 4 , 3

1 .1 健 康安 全 教 育

( 8 1 , 8 2 ) 4 3

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( 3 7 , 3 8 ) 3 , 5 ( 8 1 , 8 3 ) 4 5

( 3 7 , 3 9 ) 手 t ▼′T)

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( 8 1 , 8 5 .1 5

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( 8 7 , 8 8 ) 4

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教 育 課 程( 砧 と 実如 棚 )

( 教 務 主 任 ) ( 学 級 担 任 ) ( 故 事斗 担 任 )

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( 4 2 , 4 6 ) 3 . 1 ( 8 7 , 9 0 4 4

( 4 Z . 4 7 ) 3 2 ( 5 一. 4 4 ) 3 . 3 ( 5 一, 4 5 ) 3 , 4 ( 5 1 . 1 9 ) 3 3 ( 5 一, 5 0 ) S I S 各 要 事「

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1

1 2 3 4 5

(7)

4. 3.分析表に現れた課題性のある観点項目

表6 マトリックス分析表で具現化した課題の整理表

校 長 に関 す る観 点 項 目 教 職 員 に 関 す る観 点 項 目

問 題 性 I

. 研 修 会 等 の 必要 で 有 益 な 情 報 の 職 . 言 語 環 境 の 整 備 (4 2 ,4 6 ) 員 へ の 伝 達 . 理 解 ( 2 6 ,2 7 ) . 体 験 的 な教 科 学 習 の 促 進 (4 2 ,4 7 )

. 学 校 体 制 と して の 個 に 応 じ た教 科 . 教 科 指 導 方 法 の 工 夫 . 改 善 (5 2 ,5 4 ) (5 3 ,5 4 ) 指 導 の 徹 底 ( 4 1 ,4 8 ) . 道 徳 の 時 間 の 定 着 ( 5 6 ,5 7 ) (5 5 ,5 4 )

問 題 性 Ⅲ

. 地 域 や生 徒 の実 態 に即 した 教 育 目 . 教 育 目標 の 具 現 化 を 目指 した学 年 . 学 級 目標 の 設

標 の 設 定 (2 ,4 ) (1 0 ,1 2 )

. 特 別 活 動 の 内 容 偏 重 と 自主 性 を 高 . 計 画 的 な分 掌 活 動 の評 価 . 改 善 ( 19 ,16 ) め る観 点 か らの 評 価 (6 5 ,6 4 ) . 研 修 活 動 の評 価 と改 善 . 充 実 (2 4 ,2 3 )

. 教 育 目標 の 達 成 評 価 と校 務 分 掌 の . 道 徳 の時 間 の定 例 化 と指 導 内容 の 改善 . 充実

経 営 計 画 (5 ,4 )

. 教 育 計 画 の 評 価 計 画 と重 点 目 標 の 実 現 に向 けた 教 育 課 程 の 編 成 ( 9 ,8 )

. 道 徳 教 育 の 公 開 と充 実 (5 9 ,5 8 )

(6 0 ,5 7 )

※ (2,4) (5,4) (9,8)の課題領域ポイントから全般的課題であると判定する。

5.課題の整理表(表6)から読み取れる「課題性かある学校経営状況」の3つの傾向

第一の傾向は、校長が学校教育目標を象徴的なものとして捉えている(2, 4)ため、その具現化 に向けた学校経営方針の方向性が弱く(5, 4)、道徳や教科学習の充実に向けた校内研修体制や研 究主任の"意力"も弱い(26, 27)(24, 23)ので、課題認識や緊急的方向性が統一されないまま、

教職員個々の判断で分掌活動を進めている危険性が窺える(10, 12)(19, 16)(65, 64)。また、諸 教育計画の評価(学校評価)が年度末の総括会議のみに止まっている(9, 8)(19, 16)可能性が高 く、次年度の構想に生かされない弊害が「新しい学力観に立つ教科指導」 (41, 48)(42, 46)(42, 47)(52, 54)(53, 54)(55, 54)や「道徳の指導」 (59, 58)(56, 57)(60, 57)に現れている。

このことは、校長が管理者(Manager)としての側面よりも、リ‑ダー(Leader)としての 側面を前面に出している可能性が高く、そのバランスの不均衡によるものと考えられる。

っまり、内面性課題を示す問題性Ⅱ領域に「特別活動の内容偏重」がポイントされていること からも窺えるように、校長が、学力の向上を目指す「教科学習」の充実よりも、シンボリックな 目標を掲げた「学校行事」の充実に重点を置き、 「生徒個々に深い人間的価値や信念を象徴的な 事象を通して伝えることで、学校を心の場所ともいえる特別な場所に変えようとする"象徴的 (symbolic)リーダーシップ6)"」に傾注している結果、 「目標を明権にし、戦略をっくり、責任 を配分し、権限を委任し、多様な人々や活動を調整し、学校を安全で秩序があり、そして授業に 焦点をあてた仕事のできる場所に変えようとする"技術的(Technical)リーダーシップ7)"」との バランスが悪くなり、校内での個々の人間関係は良好に保たれていると予想される反面、教職員 や生徒個々の異体的な目標と技術的な処理方法が不明瞭になっていると考えられる。

第二の傾向は、学校が生徒指導などの大きな緊急的課題に直面しており、対外的に公示される 学校教育目標は赤裸々な文言を掲げることをはばかって一般的なものとしているが、実際は緊急

(8)

課題解決に方向を定めて協働をしている結果、生徒指導や同和教育は校内研修も含めて発展的な 経営が実現しているものの、教科学習や道徳の指導にその弊害が現れているとも読み取れる。

第三の傾向は、 「国際理解教育」と「ェイズ教育」の研究指定を受けていることから、これら 領域の校内研修・研究会における比重が大きくなっており、特別活動の時間に生徒が学ぶ内容も 偏重があることが予想され、教科学習や道徳の指導にその弊害が現れているとも読み取れる。

もっとも、回答者の教頭は前任校で教務主任を4年間経験しており、その時期が学習指導要領 の改定期と重なるため、 「新しい学力観」や「道徳の指導」についての研修を充分に積み、教育 課程の改善に向けて精力的に活動していたと考えられることから、転任した学校の教職員へのそ れらの定着度に満足していない可能性が高く、これらの観点についての評価が厳しくなったとも 想像できるが、同時に教頭としての校務整理(調整機能)の不充分さも示している。

どのような状況があろうとも、学校教育の基幹である各教科や道徳の指導の充実が重視されて いない事は、いかに指定研究が充実しても、あるいは緊急的課題が一時的に解決されても生徒一 人一人の学力としての定着は期待できないことから、早急な教育課程経営改善が求められる。

6. A中学校経営改善に求められる校長のリーダーシップ

5章における「課題の整理表」の考察から、 A中学校の校長が該当すると推察した「象徴的リー ダーシップ」発揮型の校長像として、ディ‑ル(DeaLT.E.)とビターソン(Peterson.K.D.) は「毎日の行動の中で、講話をしてやり、教師や生徒に表現ゆたかに語りかけ、価値を明らかに

した事例をもってそれを示したり、またヒーローやヒロインを創ったり、メモをこまめにとった り、会議なども楽しく行うことに配慮する 8,J等の特徴をあげている。

中留武昭氏は「学校改善の過程でも改善自体を学内外の環境(諸条件でもある)と結びつけ, かつ改善過程のうち特に評価(学校評価)を改善と結びつけることによって課題解決を志向した 新しい戦略計画(Strategic Planning)を策定するリーダー行動を、戦略的(Strategic)リーダー

シップと命名9)」した上で、 「総じて学校改善にはこの種の革新的なリーダー行動が要請される わけであるが,このリーグ‑シップスタイルにはリーダーとしての強い課題解決性と共に管理の 技術性(テクニカルリーグ‑シップ)とが特色としてあげられる10)」としているO

つまり、学校経営改善は「目標を明確にし、戦略をっくり、責任を配分し、権限を委任し、多 様な人々や活動を調整し、構成員の全てが自らの仕事を知っていて技術的に処理している」とい う管理的な「技術的リーダーシップ」を全面に出すことでなし得ることであり、経営改善が進行 する中で個人や集団のやる気(意力)と適正能力(実践力)の発達段階(問題性Ⅲ領域: D 1), (病理性領域:D2), (問題性I領域:D3), (発展性領域:D4)に応じて、それぞれ、指示 型(Sl),コーチ型(S2).援助型(S3),委任型(S4)の4種類のリーダーシップを段 階的に発揮する形式の「状況対応的(Situational)リーダーシップ11)」が求められるO  しか し、早急な学校経営改善を図ろうとするあまり、校長が姿勢を豹変させ、教職員の心理的な抵抗 や生徒の動揺を生み出すことの無いように進めなければならない。

ディールとビターソンは「技術的・象徴的の二元論的思考で管理と指導という活動を分割して 捉えたり、または、これを本質的に対立する関係とみなしてどちらかを選択することは、それぞ れにジレンマが起こる」として、二元論的思考を脱し、二面性を融合した双方向性(bifocal) の特徴を生かす第三の選択肢を持っ必要性を解いている12)。

(9)

中留武昭氏は、この第三の選択肢に当たるものとして「管理と指導というきわめて微妙なニュ アンスの統一を特性としている"教育的(Instructional)リーダーシップサ13)。」をあげ、さらに、

「その場合、"文化的(Cultural)リーダーシップサ14)を触媒として関与することがリ‑ダーシッ プの効果をあげる上でも重要である15)。」としている。

また、校長のリ‑ダーシップ・イメージを対処的活動・人間性重視・目標達成・自己象徴の4 つの次元から考察した平成6年の調査研究から、「より重視されるべき次元は、人間性重視の次 元であるという点である。このことは、PM理論あるいはHi‑Hi型の命題であるタスク指向と 人間指向の両次元の加算的効果ではなく、むしろ両次元の交互作用効栄‑の示唆を与えてくれる といえる。すなわち、まず、重要なのは人間性重視の次元であり、この次元の高低によって、特 に目標達成次元、自己象徴次元、対処的行動次元といった校長のリーダーシップ行動、及び学校 革新風土に対して教職員が感じる意味合いも異なっているのではないかと考えられる。このこと は、観点を変えると、人間性重視の効果が、学校の革新風土や教職員の苦情の度合いをモデレー トすると推察できるのである16)

。」との結論が得られたことからも、A中学校が学校経営改善

を進める上で、これらの視点を警鐘として常に念頭に置く必要がある。なぜなら、学校経営を改 善するということは、一部の学校組織文化や個々の教職員の行動形態をも改革するという事であ り、「校内における協働チーム」としての同僚教師の「コミットメント(Commitment)及びェ ンパワーメント(Empowerment)」無くしては統括的な学校経営改善が実現しえないからで ある。

7.A中学校が学校経営改善を進めるための方向性

A中学校には教育課程経営上の課題があることが判明したが、その課題が全般的課題であり、

局所に対処療法的な改善策を構じても教育活動の様々な場面で矛盾が露呈する危険性がある。

しかも、教職員に関する項目は"病理性''が少なく、"問題性Ⅲ"領域の課題に、校長に関する 項目の教育目標・経営方針の課題との関連がみられ、それらを改善する過程で自然消滅すると考 えられることから、"問題性I''領域の実践力アップに重点を置いた改善策に絞られる。

しかし、全般的課題であることと、「教育課程経営が効果的に機能するには、その上位概念と してある学校経営の過程(P‑D‑Sで学校改善の核)自体が目標達成を志向して作動している ことが必要である18)

。」との指摘が視られるように、校長の経営ビジョンを具体化した経営方針 の見直しが必要であり、以下の3つの視点から全般的な学校経営改善を方向づける。

①校長の象徴的な経営ビジョンに現実的な観点を加え、それを戦略化した学校経営方針を明文 化し、技術的リーグ‑シップを段階的に発揮することにより全職員の協働の方向を明示するO (塾校内研修を充実させ、教科指導・道徳の指導に重点を置いた研修計画を作成する。

③評価計画を充実させ、年度内に次年度の経営ビジョンと教育指導計画を作成する。

7.1.校長か戦時的リーダーシップを発揮するための「補佐機関」を確立する

校長が、達成すべき明確などジョンを持ち、そのビジョンが価値として関係者に共有化され、

かつ具体化されていくための戦略構想を練る過程において、また技術的リーダーシップを段階的 に発揮する過程において、思案を深めるために自らの考えを吐諾して意見を求めたり、情報や資 料の収集及び作成など、事務的作業の実務を代行する補佐機関が必要になる。

(10)

該当する組織の名称を本稿では「三者会議」とし、以下のように定義する。

(彰校長,教頭,教務主任による会議とする。

②学校経営組織の中核として校長の学校経営全般を補佐し、教育内容の編成や教育活動の支援 条件を整備するとともに、教職員の機能的・協働的・創造的な教育活動を管理し統括する。

この組織はその性格から管理的な側面が強く、校長と教頭による会議が一般化していると考え られ、教務主任が加わることに対する心理的抵抗があるが、教務主任について「教育課程経営を 中心にした指導性を発揮し、しかもその役割・機能を効果的に遂行するためには、その基盤とし て人間性重視の行動理念に重きを置くリーダーシップが望まれる。つまり、公平な立場で教職員 の意向を反映させること,教職員の関心事への支援的働きかけ・配慮,学校改善に向けての献身 的態度,模範といったリーダーシップに裏付けられたミドル・アップダウン・マネジメントが期 待されてくる19)。」との指摘が視られるように、人間性重視のリーダーシップを発揮する観点か らも、 A中学校の課題が教育課程経営であることからも参加意義が大きいといえる。また、定例 化することで、教頭の校務整理や教務主任の教務運営の点検、及び指示・指導が容易になる。

定例時間については、朝の始業前(一日の流れと教職員への指示事項を調整・確認)と終業後 (学校経営状況の分析と考察)が望ましい。また、必要と議案に応じて研究主任や道徳主任を加 えるなど、構成員を拡大する柔軟性も必要である(主任の勤務時間には配慮を要する)0

7. 2.校内研修に「研修報告会」を設定する

中学校の教職員は、校務分掌により1教科部会と1領域部会に配属を命じられ「県下中学校教 育研究会」にまで系列化された「市町村別中学校教育研究会」と、都道府県や教育局別に組織さ れた各教科・領域研究会に全員が参加しており、個々の教職員は平均して月1回の例会や年数回 の授業研究会に参加している。

また、校務分掌や教職経験年数別に教育センターや教育委員会が実施する研修や、附属学校・

研究指定校・委嘱校が実施する研究発表会にも必要に応じて出張命令により参加している。

中学校は生徒指導などの緊急性がある会議が多く、また会議がない時には暗くなるまでの部活 動指導があるという条件から校内研修会は月1回程度の開催に止まり、その内容も指定研究の推 進に関するものに絞られた集中討議を余儀なくされているのが現実であるが、 A中学校の課題が 教育課程経営改善であることを考慮すると、教科指導や道徳の指導に焦点を当てた校内研修会を 月数回別途開催し、その内容を(26, 27)に対応した「研修報告会」とすることが必要である。

このことは、各教職員が学んだことを個人的財産で終わらせず、資料の配布とともに学校内に 反映させるという目的の他に、報告者が自己の発表内容をまとめるために資料を読み返し、発表 する内容を精選し、研修内容を再考して深める機会になると考えるからである。

この実践は、報告者となった教職員の内面性と行動性を共に高めることになると考えられる。

7. 3.次年度の学校経営方針と教育指導計画を本年度中に作成する

分析表の病理性領域,問題性Ⅲ領域に「評価」に関する観点ペアが5つポイントされており、

学校評価が年度末(3学期)に集中して実施されている可能性が高いので、校長が自らの経営ビ ジョンを具現化させた学校経営方針を作成する時期が春期休業中となり、教職員の協働による学 校教育指導計画書の作成作業が4月〜5月の慌ただしい時期に実施されている可能性がある。

この形式は、 4月の人事異動による新しい校務分掌担当者(担当チーム)が、前任者が作成し

(11)

表7 教育指導計画書作成日程2D)

教 育 計 画 書 の作 成 内容

10 月上 旬 中旬

◎ 教 育 課 程 編 成 の基 本 方 針 を提 示 す る0 . 教 育 課 程 編 成 の具 体 方 針 の策 定 . 教 育 課 程 編 成 手 順 の具 体 的提 示 1 1 月 上 旬

下 旬

◎ 教 育 指 導 計 画 書 作 成 計 画 を提 示 す る0 . 教 育 指 導 計 画 書 の 目次 決 定 . 学 校 経 営 診 断 、 諸 評 価 の実 施 . 各 種 評 価 等 の考 察 と検 討 . 諸 計 画 書 の 吉 城 検 討 . 決 定

1 2 月 上 旬

中 旬

◎ 教 育 目標 . 重 点 目標 等 、 校 長 の学 校 経 営 方 針 を提 示 す る0

. 教 育 課 程 編 成 の基 本 方 針 の確 認 . 年 間 指 導 計 画 お よ び全 体 計 画 等 本 年 度 の

教 育 計 画 書 全 体 の 反 省 検 討 下 旬 . 次 年 度 の計 画 案 内 容 検 討

.学 校 行 事 計 画 の 提 示 1 月 中 旬 ◎ 各 計 画 素 案 の 検 討 を す る0

. 学 校 暦 原 案 提 示

2 月 上旬 ◎ 諸 計 画 最 終 案 の 検 討 を す る0

. 関 係 期 間 等 の 研 修 期 日を 参 考 に 調 整

3 月 上 旬 ◎ 教 育 指 導 計 画 書 の 最 終 検 討 を す る0 . 教 育 指 導 計 画 書 の 修 正 . 加 筆 4 月 上 旬

下 旬

◎ 教 育 指 導 計 画 書 を 完 成 す る。

. 教 育 指 導 計 画 書 印 刷 . 製 本 . 学 年 . 学 級 計 画 案 の 作 成 . 教 育 指 導 計 画 書 に 関 す る研 修 会

たものを使わずに自分が作成した指導計 画を使えるという利点があるが、年度初 めの希薄な人間関係の中で、希望と不安 をいっぱいに抱えた生徒達を前にして、

一年間の学校生活を決定づけるともいえ る基礎的な指導を実施しっっ、教育委員 会への提出期限に迫られた教頭や教務主 任にせかされながら作成する事になる。

まして、新任教員や転任教員にとって は、赴任したばかりの不充分な学校の実 態把握の中で、当座の授業を展開しつつ 作成することになり、余程のベテランで なければ新しいものを創造することが困 難であるので、教科や道徳の年間指導計 画については前年度のものを流用するこ とになり、 PDSマネージメント・サイ クルの(S)が次サイクルの(P)に生 かされていない実態が窺える。

11月上旬に学校評価を実施し、結果分 析に基づいた次年度の学校経営方針を、

校長が2学期末に明文化すれば、 2学期

〜 3学期に教職員各自が新しい指導計画 を作成することが可能となる。

3学期に成果が具現化するように取り 組むのが学校教育であり、各種研究会や 学校行事が密集している年度途中のこの 時期に学校評価を実施することの困難性 はあるが、総括ではなく、必要な観点の尺度選択評価であれば要する時間も少なく実施が可能で あり、学校評価票の利用が最も有効であるo

福岡県教育研究所連盟の作例が、表n 20)である。

8.おわリに‑まとめと今後の課題一

使用した資料が、その分析から全般的課題と判定されたため、改善策構築の方向が"内面性''

"行動性"及び"問題性""病理性''の特徴を生かしたマトリックス分析法本来の効果を示すものに はならなかったが、課題の傾向と校長が発揮しているリーダーシップ及び学校が共有している組 織文化を読み取る上ではかなり有効であるとの確証を得た。

また、発見された課題の克服を目指して学校経営改善を進めるためには、校長がそれぞれの場 面に応じたリーダーシップを発揮する必要性があることも明らかになったが、校長も一人の入間 であり、自他が認知する性格を持っている。どのリーダーシップスタイルを選択するにしても、

(12)

"意力"と"人間性重視"を基本にすえた補佐チーム編成の可否が大きく作用すると思われる0 本研究を進める中で、教育委員会の方々や小・中学校の諸校長・教頭と学校経営改善に関して話 をする機会があったが、ある中学校の校長から「学校経営改善とは結局、教職員の資質改善であ る.いかに校長が経営ビジョンを描こうとも、リーダーシップを発揮する段階において教職員の 教育観の相違から強い抵抗が生まれる。校長のへゲモニ‑を越える勢力が教職員の中に存在する と判断した場合、教育委員会が外的支援としての措置を如何に採るかが重要である。」との指摘 を受け、また、ある小学校の教頭から「本校は地域教材の採用や地域行事への積極的な参加を通 して誰もが明るくのびのびと育ち、地域の方々とも温かい心の交流があり、生徒指導上の問題も 発生しない。これは、学校・家庭・地域の相互信頼による人間的な価値を重視して追求している 結果であり、より効果的な学校を目指して、管理的・技術的に児童の偏差値の向上を目指したり、

教師の指導技術を管理するなどの、 "心の教育"や"特色ある学校づくり"が阻外されるような型 に陥らないように留意して学校経営改善を進めたい」との指摘を受けたことを付記する。 尚、

「1 はじめに」で課題とした「②回答者の性格や、その学校が持っ組織文化の異なりによる評 点のバラツキ」に本稿は答えていない。この課題に対しては、学校評価と併せて「性格分析」や

「組織文化論」及び「回答者の分掌経験」などの観点項目を盛り込んだ学校評価とは別の評価票 を作成・実施し、回答から複数のパターンに分類した回答者を、 5領域を分けるラインを変えて 設定した複数のマトリックス分析表と対応させることで解決可能となる。

また、全般的課題に対しては、学校が抱えている校内外の環境を考慮した学校経営改善策を構 築する必要がありマニュアルの設定は困難であるが、局所的課題に対しては、一般的な改善策の 適応が可能と思われることから、学校経営改善策のマニュアル化が可能であろう。

さらに回答の段階で、 5段階の数字を次々とインプットすることにより「分析表」と「一般的 な改善策」がディスプレイに現れるコンピューターソフトを作成しておけば、整理表‑の記入や 分析表へのマーキングといった煩わしい手作業が省かれ、学校経営改善の視点と方向性が早期に 明確になるとともに、局所的な一般的改善策も同時に表示されることから有効であろうと思われ る。このソフト作成作業は単純な表記のみであるので、大きな労力を要しないと推察される。

さらに、回答者のキー操作によって「内面性‑行動性」観点ペアが自由に設定できるソフトを 作成すれば、 「学校経営の指針」以外の「プロフィール作成用学校評価票」にも対応できる。

「マトリックス分析法」のさらなる発展として、これらを今後の研究課題としたい。

(※ 本稿は高田が執筆し、八尾坂が一部助言したものである。) 引用文献・注:

1 )福岡県教育研究所連盟『学校を活性化する経営診断と経営改善』第一法規1997,p.29.

内面性・行動性それぞれの設問に対して5段階に分けた回答用の短文を用意した経営診断票 を用い、回答者が選択した数字ペアを縦軸に内面性、横軸に行動性をとり、境界線で発展性・

問題性・病理性の3領域に分けたマトリックス上にマーキングする方式の整理表である。尚、

問題性・病理性の定義については、次のように本稿の仮説とは異なる。 「問題性とは、目標 の達成や到達の状況を阻害しているものすべてを指す。阻害しているものすべてとは、内容 や方法であったり、人の気持ちや考えや行動であったり、すべての状況(要素)を含んでい る。病理性とは、問題性に含まれる状況(要素)のもとで、特に、人的要素や運営的要素に 視点をおき、根本的な改善をしなければ解決できない状況としてとらえる。」

(13)

2)牧 呂見『学校経営診断マニュアル』教育開発研究所1994,pp.100‑104.

学校構成要因を、 I.目的的要因、 Ⅱ.組織運営的要因、 Ⅲ.人間的要因、 Ⅳ.組織風土的 要因とし、 I ・Ⅲを縦軸、 Ⅱ・Ⅳを横軸としたダイヤグラムに、診断カードの設問に対して

5段階で選択された数字の平均値を配してダイヤを完成する方式を用い、全校的なパターン をA〜Jの1 0段階のモデルと照合して改善の方向性を見つける分析法である。

3)学校教育活動全体を客観的に評価してプロフイ‑ルを作成する形式の学校評価票であるO 4)各学年2学級+障害児学級1学級の計7学級、生徒数1 9 1名、職員数1 7名の小規模校で

あり、平成8年度は市町村教育委員会による「国際理解教育(l午問)」と、文部省による

「ェイズ教育(地域指定1年目/3年間)」の研究指定を受けていた。

5)他市の中学校で学級担任7年、生徒指導加配2年、生徒指導主事3年、学年主任2年、教務 主任4年を経て平成7年度にA中学校へ新任教頭として着任した。 生徒指導加配とは、教 育困難校と判定した学校に生徒指導専門の教員を複数配置する制度であり、 1名を生徒指導 主事、他を生徒指導加配と称する。尚、当該教頭は1年間、学級担任を兼務している。

6) Deal.T.EノPeterson,K.D.著,中留武昭監訳『校長のリーダーシップ』玉川大学出版部,

1997,p.55.

7)同書,p.54.

8)同書 p.56.

9)中留武昭「教育課程経営に焦点をあてた校長のリ‑ダ‑シップスタイルの考察一学校改善を 規定する学校文化との関連性をベースにして‑」 『九州大学研究紀要(教育学部門)』, 42,199

6, p.81.

10)同書 p.84.

ll) Blanchard,K./Zigami,P./Zigami,D!著,小林薫訳『1分間リーダーシップ』ダイヤモン ド社1985, p.78.

12) Deal,T.E./Peterson,K.D. 『校長のリーダーシップ』 ,前掲載,pp.114‑116.

13)中留武昭「教育課程経営に焦点をあてた〜」,前掲載 p.84.

14)象徴的リーダーシップ,変革的(Transformational)リーダーシップと同義。

15)中留武昭「教育課程経営に焦点をあてた〜」,前掲載 p.87.

16)八尾坂修「校長のリーダーシップ・イメ‑ジに対する校長自身および教員の意識一同一校事 例分析をふまえて‑」 『奈良教育大学紀要(人文・社会科学)』, 43(1),1996, p.104.

17)測上克義『学校が変わる心理学』ナカニシャ出版1995,pp.59‑85.

Empowerment :組織の成員が、彼ら自身の意思で、組織創造のプロセスの中にいると感じ

ること(Block.P.,The Empowered Manager., San Francisco : Jossey Bass, 1987.)

Commitment :特定の組織‑の個人の同一化と関与の強さ

(Mowday.RノSteers.RノPorter,L. The measurement of organizational commitment.,

Journal of Vocational Behavior, 14, 1979.)

18)中留武昭「教育課程経営に焦点をあてた〜」,前掲載 p.90.

19)八尾坂修「教務主任の職務」 『校長・教頭の法律常識』教育開発研究所1997,p.84.

20)福岡県教育研究所連盟『学校を活性化する経営診断と経営改善』 ,前掲載1997, p.58.

参照

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