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雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

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幼稚園教諭の学級づくり活動のプロセスに関する事 例研究−1学期間にわたる学級づくり活動に関する 教師行動の分析から−

著者 中井 隆司, 小林 愛美

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 15

ページ 11‑19

発行年 2006‑03‑31

その他のタイトル The changing process of the teacher behavior for organizing classroom of kindergarten teachers for one school term

URL http://hdl.handle.net/10105/6

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1.緒   言

「学級がうまく機能しない状況(高田 2000)」で ある「学級崩壊」という言葉が世に出て久しい。この

「学級がうまく機能しない状況」とは、「授業不成立を 中心として、学級の機能が不全になっている小学校特 有の状態(新保 2000)」であり、子どもの発達段階 において大切な社会的集団である学級集団をうまく機 能させることができないという、最も深刻にして危機 的な問題である。

「学級崩壊」を要因別にみてみると、小学校高学年 に起こる「学級の荒れ」を指す高学年の「学級崩壊」

と、特に小学校1年生に起こる「学級の未形成現象」

を指す「小1プロブレム」の2つがある(新保 2000).

前者は、中学生で迎えていた思春期が早くなり、小 学校高学年から始まることと関連している。不安を感 じ揺れ動きながら、大人から自立しようと葛藤する時 期である思春期が早まり、勉強などへのストレスも高 まり「みんなからはずれたくない」といった同調圧力 などが加わり、子どもたちの様子自体が変貌していっ ている。そのことを理解できず、かつての小学校高学 年のイメージをもって子どもとかかわろうとする教師 と子どもの間のズレが「学級」を「崩壊」させるとい ったものである(新保 2000)。

一方、後者は学級という集団そのものが形成されず、

子どもの発達に重要な意味合いをもつ学級という場が 失われるという問題のことである。子どもたちが幼児 期を十分生ききれてこなかった、幼児期を引きずって

−1学期間にわたる学級づくり活動に関する教師行動の分析から−

中井隆司

(奈良教育大学体育科教育学研究室)

小林愛美

(大阪市立野里幼稚園)

The changing process of the teacher behavior for organizing classroom of  kindergarten teachers for one school term

Takashi NAKAI

(Department of Physical Education, Nara University of Education)

Aimi KOBAYASHI

(NOZATO Kindergarten, Osaka)

要旨:幼稚園教諭の学級づくり活動のプロセスを事例的に明らかにするために、教師特性の異なる3名の幼稚園教 諭を対象に、1学期間にわたる保育場面での教師行動を「場面」「目的」「提示方法」の3つの視点から観察・分析 した。

得られた主な結果は以下の通りである。

①各教諭の学級づくり活動に関する教師行動の共通点は、年度始めは「決まり」に関する行動の割合が高いが、

学期末になるにつれて「活動準備」や「友達関係」に関する行動が増加していったこと、学期を通じて「社会的態 度」と「教師と子ども間の信頼関係」に関する行動が重視されていたこと、提示方法は学期を通じて「教師からの 提示型」が最も多かったこと、である。

②各教諭の学級づくり活動に関する教師行動には共通点がある半面、各教諭独自の特徴が認められた。これらの 違いは、担当クラスの子どもの年齢、学級づくりに対する考え方などの教師特性が各教諭の教師行動に影響を及ぼ している可能性が考えられる。

キーワード:学級づくり classroom organization、幼稚園教諭 kindergarten teacher、教師行動 teacher behavior

(3)

いるという、現在の社会状況が要因として考えられる

(新保 2000)。これは昨今の親の人間関係の希薄さと も関わってくるのだが、人間関係を学ぶ体験や様々な 生活体験の不足が自己の欲求を抑え、他者と共存して 生きていくといった仲間意識を育てることを阻害して いるのである。その意味で、同じ「学級をうまく機能 できない状況」であっても、こちらは集団を形づくる ことのできない「学級未形成」状態であるといえる。

教師への不満などがあるわけでもなく、仲間からはず れる怖さという同調圧力があるわけでもない。子ども 同士、教師と子どもの人間関係が未構築なまま、一人 ひとりがバラバラに行動しているというのが、この

「小1プロブレム」の状況なのである(高田 2000)。 この危機的な問題を改善しようとさまざまなことが 論ぜられている。「学級」が「崩壊」する要因そのも のを探る研究もあるが、やはり教師の在り方に言及し たものが多い。「学級がうまく機能しない状況」を打 破するために必要な教師の力量とは何か。それは「学 級」を「うまく機能」させていく能力、すなわち学級 づくりの能力であると考えられる(飯田 2000)。

小学校の子どもにとって学級とは、学習をしていく 場所、生活をしていく場所、そして遊ぶ場所である。

学校生活の日常的な教育活動は学級単位で行われ、そ の中で子どもたちは「社会的スキル(人とかかわる力)」 を身につけていく(高田 2000)。松浦(1993)は、

このような学級の教育的意義を、①教科の学習の場と しての機能と役割、②集団における人間関係を学ばせ るための教育の場としての機能と役割、③人格形成の 場としての機能と役割、の3つでとらえたうえで、こ の学級づくりに必要な教師の力量を「変化する過程や 状況を的確にとらえる力量」としている。集団の中で 個を発揮するという「集団」としての性質と「個人」

としての性質をあわせもつ学級の2側面をしっかりと とらえ、相互に関連をもたせながら常に変化する子ど もの姿(個の姿)、学級の姿(集団の姿)をとらえ、

生かしていく能力が教師には必要であると述べてい る。

このことに関して、Leinhardt,  et  al.(1987)や香 川・吉崎ら(1989)は、ルーチンの導入に焦点を当て、

担任教師が学級を機能させていく過程で年度始めとい う時期の重要性を述べている。例えば、Leinhardt,  et al.は小学校熟練教師6名(1年生担当1名、2・3年 生担当1名、4年生担当3名、4・5年生担当1名)

が、年度始めに自分たちの学級をうまく機能させるた めの授業構造をいかに確立するか、それを年度中頃ま でいかに維持するかという視点で研究を行っている。

ここで注目すべきは、授業構造を確立するために必要 なルーチン(ここでは、「授業環境の認知的複雑さを 軽減するために働く、社会的でスクリプト化された行 動パターン」と定義されている)のほとんどを、学年

最初の1週間終了までに導入し確立させていたという ことである。6名の教師が行ったのは、学級での学習 活動を混乱なく行っていくために必要なルーチンの導 入であり、それらのほとんどを年度始めに行ったこと に大きく意味があると考えられる。また、香川・吉崎 らは小学校1年生担当の3名の教師(中堅教師1名、

若手教師2名)を対象に、Leinhardt,  et  al.  と同じ視 点で授業ルーチンの導入と維持について研究した結 果、ここでも年度始めである4月の重要性を結果とし てあげている。この2つの研究では、学級の果たす機 能と役割の1つである「学習活動の場」に焦点を当て て述べているが、どちらの研究も「学級をうまく機能 させるため」に年度始めで教師が何をしているのかを 検討した研究であり、「学習活動の場」としての機能 だけに限定されるものではないと考えられる。

また、久保(1961)は、教師が行う学級づくりの実 践の要点を3段階に分けている。学級づくりが行われ るにも一定の手順というものが存在しており、学級づ くりを行う上で子どもに指導する内容にも段階があ る。特に年度始めに行われるであろう実践、すなわち 第1段階に成されるべき内容として、①子どもの内面 を知ること(子ども理解)、②子どもと教師の間に信 頼関係をつくること、③外部からの抑圧から解放する こと、④生活規則をつくること、が挙げられている。

先にも述べたように学級づくりとは、「学級」を「う まく機能」させていくために教師が行うことであり、

そのために必要不可欠とされるのが教師と子ども間の 信頼関係である。子どもを理解し、それを受けて子ど もとの間に信頼関係をつくる、学級づくりの第1段階 として最も重要なものはそれではないだろうか。

一方で、小学校1年生に起こる「学級の未形成現象」

を指す「小1プロブレム」との関係で、就学前教育で ある幼稚園や保育園の集団形成過程,すなわち,学級 づくりが重要視されている。幼稚園という場所は、こ れまで家庭の中だけで生活してきた子ども達にとって の初めての集団生活の場という意義をもっており、多 くの子どもにとって、人生で初めて意図的・組織的な 教育を受ける場なのである(結城 1998)。幼稚園教 諭は、その集団生活の場を整えるためにどのようなこ とをしているのであろうか。幼稚園においても学級は 存在し、それを担任する教師が存在する。小学校教諭 と同じように、幼稚園教諭も学級づくりを行っている はずである。

しかし、年度始めの幼稚園に関する研究はあるが、

子どもの変化に焦点を当てたものが多い。望月・吉村

(1995)は、入園当初の幼稚園生活への適応状態と、

それに関係していると予想される幼稚園入園前後の幼 児の様子を①母親への質問紙調査、②担任教師への質 問紙調査から検討した結果、適応の変化に仲間関係や 教師(保育者)との関係が深く関わっていることをあ

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げている。また山本(1993)は、3名の園児を対象に 様子の変化を4月(最初の1週間)及び5月(隔週)

に観察・記録し、2学期にはVTRを用いて園児の行 動を記録した結果、スキンシップに重きをおいた教師 のかかわりが、園児の幼稚園生活の適応性に関与して いるのではないかということを導き出している。さら には、実際に保育を行った教師自身が、保育記録を用 いて年度始めの保育を振り返るという手法の研究もあ る。村田・佐藤(1993)は、保育者の1学期間の保育 実践記録から、1人の園児(3歳児)の人間関係に焦 点を当てて保育者自身が考察し、それをもとに保育者 と大学教員が対象児の育ちの過程である変容の姿を探 ることで、保育者の役割について検討を加えている。

また、中村・磯部(1993)は、保育実践をもとに3歳 児の入園初期の保育についてのいくつかの事例をあ げ、それについて検討を加えるという手法をとってい る。

このように、学級づくりに関する研究や年度始めに おける幼稚園の保育実践に関する研究はあるものの、

学級づくりに関する研究の対象は主に小学校以上であ り、また、幼稚園の保育実践にからんだ研究も質問紙 を利用したものや保育者自身が振り返るという手法を とった研究が多く、幼稚園教諭の行う実際の学級づく り活動がどのようなものであるのかということを研究 対象にしたものは数少ない。

そこで本研究では、幼稚園教諭の年度始めである1 学期間における学級づくり活動のプロセス(過程)を を教師行動の視点から事例的に明らかにするために、

教師特性の異なる3名の幼稚園教諭の教師行動の推移 について検討を加えた。このことによって、幼稚園教 諭の様々な学級づくり活動のプロセスを解明すること ができ、そのプロセスの解明は新任教諭に対して学級 づくりを考えるうえで貴重な資料になると考えた。

2.研究方法

2.1.対象教師の特徴

教職経験年数、担当クラスの子どもの年齢、園への 在籍年数、学級づくりに対する考え方などの教師特性 の異なる現職の幼稚園教諭3名を対象とした。対象教 師は、教師と子どもの信頼関係づくりが主である学級 づくり活動を明らかにする意図から事前に子どもと密 接な関係を保持していない教師を選出した。なお、

A・B教諭は担当クラスの子どもが入園したばかりの 年少児であるため、子どもとの面識はなく、C教諭の 担当クラスは年長であるが、昨年も年長クラスを担当 していたため、子どもとの関係は構築されていない。

各教諭の学級づくりに対する考え方は、1学期入園 式(始業式)の2日前に実施した「1学期で大切にし たいもの・子どもに育ってほしいもの」をキーワード としたイメージマップ・テスト(水越ほか 1980、三 宅ほか 1988)をインタビュー(1学期の最初)の内 容を参考にしながらKJ法(川喜田 2000)で分類し た結果から解釈したものである。この分類は、本研究 実施者を含む幼稚園教員養成課程の学生2名と、大学 教員1名、大学院生1名の計4名で行い、4名全員の

図1 A教諭の学級づくりに対する考え方の分布 図3 C教諭の学級づくりに対する考え方の分布 図2 B教諭の学級づくりに対する考え方の分布

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意見が一致するまで話し合い決定した。分類の手順は、

①幼稚園教育要領に設定されている5領域(人間関係、

環境、表現、健康、言葉)と、生きる力の基礎とされ ている「心情・意欲・態度」を項目として仮定的に設 定し、それをもとに解釈・分類を行った。②それ以外 のカードについては4名で新たに解釈・分類を行い、

項目を命名した。

1学期の最初のインタビューでは、事前に記入され たイメージマップ・テストをもとに、具体的にどのよ うなことを思い浮かべながら、どのような順番で書き 込んだのか説明を求めた。さらに、①学級づくりの手 順についての教師個人の考え、②学級づくりの手順に ついての園の方針、③学級づくりを行う際の提示方法、

④幼稚園教育と家庭教育の違い、の4つについてイン タビューを行った。

以上の資料をもとに解釈した各教諭の教師特性は以 下の通りである。

A教諭:奈良市立S幼稚園、女性、46歳、教職経験 27年目(同幼稚園:6年目)、担当クラス4歳児(年 少:男児11人、女児17人、計28人)。A教諭の「学級 づくりに対する考え方(図1)」の特徴は、自分と子 どもの信頼関係づくりに重きはおいていないが当然す べきことと感じていること、子どもたちが幼稚園に慣 れるために年度始めから幼稚園生活に必要な生活習慣 を身につけさせること、そのあとに人間関係が広がる ように友達関係などをつくってあげたいと考えている こと、またそれらを身につけさせる方法としては指示 することを避けたいとは感じているが、そうもいかず

「知らせる」という方法をとろうと考えていること、

である。

B教諭:奈良市立S幼稚園、女性、44歳、教職経験 25年目(同幼稚園:1年目)、担当クラス4歳児(年 少:男児11人、女児18人、計29人)。B教諭の「学級 づくりに対する考え方(図2)」の特徴は、大きく自 分と子どもとの信頼関係づくりを重視していること、

その信頼関係もしっかりと個々人を教師自身が知って いく上でつくり上げられていくものであると考えてい ること、さらに、その信頼関係を基盤として幼稚園生 活のリズムを身につけさせ、子どもたちに自分らしさ を出していけるようにしていき、最終的には1学期で 幼稚園って楽しいところだなというおもいを子どもに 育てたいということ、である。

C教諭:大和郡山市立S幼稚園、女性、29歳、教職 経験6年目(同幼稚園:6年目)、担当クラス5歳児

(年長:男児12人、女児16人、計28人)。C教諭の「学 級づくりに対する考え方(図3)」の特徴は、人間関 係を重視する傾向にあり、自分との信頼関係づくりも 重視してはいるが、それよりも子ども同士の関係、す なわち友達関係やクラスの仲間関係の方を大切におも っていること、それらの人間関係を軸としながら1学 期の間に年長らしい態度や習慣を身につけていってほ しいと考えていること、また提示方法としては子ども 1人1人とスキンシップや言葉で身につけさせてた り、共感していきたいと考えていること、である。

2.2.各教諭の学級づくり活動に関する教師行動の 抽出

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らかにするために、平成12年4月初旬〜7月下旬(1 学期間)にわたり、教諭1名に対して1台のビデオカ メラとワイヤレスマイクを用い、2週間に1回の割合 で、保育内容が同一の曜日に各教諭の保育場面(登園 から降園時まで)を収録した。本来であれば、教師の 学級づくり活動の変化を知るためには日々の保育実践 を把握する事が必要であるが、対象園や対象教師との 関係の中で2週間に1回の割合で撮影することとし た。ただし、その間にどのような保育内容を行ってい たのかを把握するために、毎回の収録後に①2週間で の変化(主に子どもの変化)、②2週間の間に学級づ くりに関して教師が行ったこと、の2つについて対象 教諭から情報を得た。

2.3.分析の手順

対象となった各教諭の学級づくり活動の特徴を導き 出すために、本研究では収録した保育実践のVTRか ら学級づくりに関する教師行動を抽出した。なお、本 研究では、主に学級づくりに関する教師行動を分析対 象とするため、遊びを発展させるためのものや、釘の 打ち方・絵の描き方・歌の美しい歌い方といった保育 内容の領域に関することは分析対象から除いた。抽出 した教師行動は、Leinhardt,  et  al.(1987)の分類カ テゴリーをもとに次元を加味し、本研究実施者が作成 した分析基準カテゴリー(表1)で、学級づくりに関 する教師行動の分析を行った。なお、分析はトレーニ ングを受けた本研究実施者を含む幼稚園教員養成課程

の学生2名で実施した。分析者2名の一致率は全ての カテゴリーで80%を超えており、全カテゴリーの平均 一致率も93.4%であった。

3.結果と考察

3.1.各教諭の学級づくり活動に関する教師行動 3.1.1.A教諭の学級づくり活動に関する教師行

動の特徴

表2は抽出されたA教諭の1学期間の学級づくり活 動に関する教師行動の推移を各カテゴリー別に示した ものである。抽出された行動は合計8834個であった。

まず最初に「場面」次元から、A教諭の学級づくり に関する教師行動は年度始めでは「好きな遊び」と

「基本的な生活」場面で多く出現していたが、学期末 になるにつれて「みんなでする活動」場面でも出現し、

最終的には、3つの場面に均等に出現していることが わかる。

次に「目的」次元では、A教諭が学期を通じて「支 援」行動を重視していることがわかる。その割合は6 月末以降5割を超えている。内訳をみてみると、年度 始めには大部分が「決まり」に関する行動であったが、

5月末以降減少し、逆に「活動準備」に関する行動が 増加していることがわかる。「役割・自覚」に関する 行動は学期を通して低い割合であった。「マネージメ ント」に関しては、その割合は徐々に減少しているが

「社会的態度」に関する行動が学期を通じて多く、

表2 A教諭の学級づくり活動に関する教師行動の推移⴫䋲 䌁ᢎ⻀䈱ቇ⚖䈨䈒䉍ᵴേ䈮㑐䈜䉎ᢎᏧⴕേ䈱ផ⒖

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(7)

「基本的生活習慣」や「安全」については大きな変化 はみられない。「交流」に関する行動は学期を通じて 約3割程度で推移しているが、「教師と子どもの間の 信頼関係」に関する行動が1学期間を通じて高い割合 を占めていることがわかる。また「友達関係」に関し ても徐々に増加しており、自分との信頼関係をつくり ながらも子ども同士のつながりをもたせようとする意 図が読み取れるが、「集団の人間関係」に関しては1 学期間を通じて低い割合であった。

最後に「提示方法」次元では、学期を通じて学級づ くりに関する教師行動は「教師から」が圧倒的に多か ったことがわかる。「子どもから」も約3割の割合を 占めていたが、子どもに何かを身につけさせようとう いうおもいを伝達する手段としてはやはり教師自らが 行うことが多いようだ。内訳でも「提示型」が学期を 通じて最も多かった。すなわち「〜しなさい」や「〜

しましょう」といったいわゆる呼びかけ型の言葉掛け が多かった。「誘導型」の割合は4月には「受容型」

よりも少なかったが、6月末から7月にかけて逆転し ている。つまり、子どもを認める行動(受容型)から 子ども自身に考えさせる行動(誘導型)への移行が読 み取れる。

以上のことから、A教諭の学級づくりに関する教師 行動の特徴は、①年度始めは「好きな遊び」や「基本 的な生活」場面で「決まり」に関することを「教師か ら提示」したり「受容」することで身につけさせよう としていたこと、②学期末になるにつれて場面を問わ ず「活動準備」に関する行動や、「友達関係」に関す

る行動を「教師から提示」することが増加してきたこ と、③学期を通じて重視していたのは「社会的態度」

や「教師と子ども間の信頼関係」に関する行動であり、

それを「教師から提示」したりすることで身につけさ せようとしていたこと、である。

3.1.2.B教諭の学級づくり活動に関する教師行 動の特徴

表3は抽出されたB教諭の1学期間の学級づくり活 動に関する教師行動の推移を各カテゴリー別に示した ものである。抽出された行動は合計10743個であった。

まず最初に「場面」次元から、B教諭の学級づくり に関する教師行動は年度始めには「好きな遊び」と

「基本的な生活」場面で多く出現していたが、学期末 になるにつれて「みんなでする活動」場面でも出現し、

最終的には、3つの場面に均等に出現していることが わかる。

次に「目的」次元では、B教諭が学期を通じて「支 援」と「交流」に関する行動を重視していることがわ かる。内訳をみてみると、年度始めこそ「決まり」に 関することが多いが、それ以降は「活動準備」に関す る行動が多くなっている。また、「役割・自覚」に関 する行動が7月になるにつれて多くなっているのもB 教諭の特徴である。「交流」に関する行動では「教師 と子ども間の信頼関係」を重視していることが読み取 れる。特に年度始めには約8割を占めており、まず自 分との信頼関係づくりを行っていたことがわかる。ま た年度始めにはあまり行われていなかった「友達関係」

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(8)

に関する行動は7月になるにつれて増加し、「集団の 人間関係」に関しては学期を通じて低い割合だった。

一方「マネージメント」に関する行動は学期末になる につれて減少しているが、「社会的態度」と「安全」

に関わる行動が高い割合を示している。特に、「安全」

は7月になるにつれて割合が高くなっており、6月か ら水遊びが実施されたことが影響しているのではない かと考えられる。また「基本的生活習慣」は4月から 減少し、7月ではほとんどみられなくなっていた。

最後に「提示方法」次元では、学期を通じてB教諭 もA教諭と同様に学級づくりに関する教師行動は「教 師から」が圧倒的に多かったことがわかる。「子ども から」もほぼ3割の割合を占めているが、子どもに何 かを身につけさせようとういうおもいを伝達する手段 としては、やはり教師自らが行うことが多いようだ。

内訳でも「提示型」が学期を通じて最も多かったこと がわかる。つまり、「〜しなさい」や「〜しましょう」

といったいわゆる呼びかけ型の言葉掛けが多いことに なる。そのほか、B教諭は比較的「誘導型」より「受 容型」を多く行っていたことがわかる。

以上のことから、B教諭の学級づくりに関する教師 行動の特徴は、①年度始めは「好きな遊び」や「基本 的な生活」場面で「決まり」と「教師と子ども間の信 頼関係」に関することを「教師から提示」したり「受 容」することで身につけさせようとしていたこと、② 学期末になると場面を問わず「活動準備」や「友達関 係」に関することを「教師から提示」することが増加 してきたこと、③学期を通じて重視していたのは「社

会的態度」や「教師と子ども間の信頼関係」に関する 行動であり、それを「教師から提示」することで身に つけさせようとしていたこと、である。

3.1.3.C教諭の学級づくり活動に関する教師行 動の特徴

表4は抽出されたC教諭の1学期間の学級づくり活 動に関する教師行動の推移を各カテゴリー別に示した ものである。抽出された行動は合計6988個であった。

まず最初に「場面」次元から、「好きな遊び」場面 での学級づくりに関する教師行動が2回にわたり0個 という結果になっている。これは、C教諭の保育1日 目が始業式であり「好きな遊び」の時間がなかったた めと、園外保育のために「好きな遊び」の時間を「み んなでする活動」の時間にまわしてしまったためであ る。そのため、C教諭が1学期間、学級づくりを行う 際にどの場面を重視しているかということをこの表か ら明確に述べることは困難である。しかし、特別な事 情がある場合(先述した2日)を除くと、C教諭は

「基本的な生活」や「みんなでする活動」場面よりも

「好きな遊び」場面に多くの学級づくりに関する行動 を行っている傾向にあることが読み取れる。

次に「目的」次元では、「交流」に関する行動が年 度始めは多いが、学期末になるにつれて減少し、逆に

「支援」に関する行動が徐々に増加している。内訳を みてみると年度始めこそ「決まり」に関する行動が多 いが、5月以降「活動準備」に関する行動が多くなっ ていくことが読み取れる。「決まり」に関しては7月 表4 C教諭の学級づくり活動に関する教師行動の推移⴫䋴 䌃ᢎ⻀䈱ቇ⚖䈨䈒䉍ᵴേ䈮㑐䈜䉎ᢎᏧⴕേ䈱ផ⒖

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(9)

に新しい遊具を導入したことにより、再び多くなって いる。そのほか、「役割・自覚」に関しては年度始め には多いが,徐々に減少している。C教諭が新しく年 長になった子どもに対して「年長らしさ」を身につけ させる行動が多かったことが、4月から5月にかけて この行動が多くあらわれた要因であろう。「教師と子 ども間の信頼関係」に関する行動は学期を通じて重視 しているが、学期末になるにつれて減少し、逆に「友 達関係」に関する行動が徐々に増加していった。「集 団の人間関係」に関しても年度始めには多かったが学 期末になるにつれて減少している。進級児である子ど もたちに前のクラスの友達より、今のクラスの友達と のつながりを大切にしてほしいというC教諭の学級づ くりに対する考え方があらわれているためであろう。

「マネージメント」に関する行動は時期的な大きな変 化はみられず、学期を通じて約2割以上を占めていた。

内訳では圧倒的に「社会的態度」に関する行動が多く、

学期を通じて7割を越える日が多く、逆に「基本的生 活習慣」は学期を通じて低い割合を示す日が多かった。

また「安全」については時期的な変化はみられなかっ た。

最後に「提示方法」では、学期を通じて学級づくり に関する教師行動は「教師から」が圧倒的に多かった。

しかし、学期末になるにつれて「子どもから」の割合 が少しずつ増加していった。また、C教諭もA・B両 教諭同様に「提示型」が学期を通じて最も多みられた。

以上のことから、C教諭の学級づくりに関する教師 行動の特徴は、①年度始めは「決まり」や「教師と子 ども間の信頼関係」に関する行動を重視しており、そ れを「教師から提示」することで身につけさせようと していること、②学期末になるにつれて「活動準備」

や「友達関係」「集団の人間関係」に関する行動を

「教師から提示」することで身につけさせようとして いること、③学期を通じて重視していたのは「社会的 態度」や「教師と子ども間の信頼関係」に関する行動 であり、それを「教師から提示」することで身につけ させようとしていたこと、である。

3.2.幼稚園教諭の学級づくり活動のプロセス 1学期間にわたる各教諭の学級づくり活動に関する 教師行動を観察・分析することで、各教諭の特徴とと もに以下の4点について各教諭共通の学級づくりに関 する教師行動を導き出すことができた。①年度始めは

「決まり」に関する行動の割合が高いこと、②学期末 になるにつれて「活動準備」や「友達関係」に関する 行動が増加していったこと、③学期を通じて「社会的 態度」と「教師と子ども間の信頼関係」に関する行動 を重視していたこと、④提示方法は学期を通じて「教 師からの提示型」が最も多かったこと。この結果をも って幼稚園教諭の学級づくり活動の特徴であるとは言

い切れないが、少なくとも対象とした3名の教諭に共 通する結果である。これらの共通点は、Leinhardt, et  al.(1987)や香川・吉崎ら(1989)が年度始めに多く の授業ルーチンを含めた学級づくり活動を導入してい るという結果や久保(1961)の学級づくりの第1段階 で実践される内容が幼稚園段階や幼稚園教諭について も確認できたことになる。

また一方で、各教諭特有の学級づくりに関する教師 行動も認められている。これには先行研究などから、

教職経験年数、担当クラスの子どもの年齢、園への在 籍年数、学級づくりに対する考え方などの教師特性の 影響が考えられる。学級づくりに対する考え方のよう な教師の指導信念については、これまでにも保育中の 教師の行動や意志決定過程に強く関係していることが 実証されており(中井・川下 2003、中井・松良 2005)、 また、年少・年長といった子どもの発達段階による保 育内容やその目的の違いについては容易に理解するこ とができる。しかし、本研究では事例数などの関係か ら、明確な因果関係を認めることができなかった。そ の意味からも、事例数を増やして、さらなる検討が今 後必要であると考える。

4.まとめ

本研究では、幼稚園教諭の学級づくり活動のプロセ スを教師行動の視点から事例的に明らかにするため に、教師特性の異なる3名の幼稚園教諭を対象に、1 学期間にわたる保育実践を2週間に1回の割合でVT Rで収録し、対象教諭の学級づくり活動に関する教師 行動を「場面」「目的」「提示方法」の3つの視点から 観察・分析した。

各教諭の学級づくり活動に関する教師行動を分析し た結果、次のような知見を得ることができた。

①各教諭に共通していた学級づくりに関する教師行 動は、年度始めは「決まり」に関する行動の割合が高 いこと、学期末になるにつれて「活動準備」や「友達 関係」に関する行動が増加していったこと、学期を通 じて「社会的態度」と「教師と子ども間の信頼関係」

に関する行動を重視していたこと、提示方法は学期を 通じて「教師からの提示型」が最も多かったこと、で ある。

②各教諭の学級づくり活動に関する教師行動には共 通点がある半面、各教諭独自の特徴が認められた。こ れらの違いは、担当クラスの子どもの年齢、学級づく りに対する考え方などの教師特性が各教諭の教師行動 に影響を及ぼしている可能性が考えられる。

以上、幼稚園教諭の1学期間にわたる学級づくり活 動のプロセスについて、教師行動の視点から検討をく わえることによって、各教諭の学級づくりに関する教 師行動の特徴や各教諭共通の教師行動を事例的に導き

(10)

出すことができた。しかし、各教諭の担当する子ども の年齢や学級づくりに対する考え方が保育実践に影響 を与えたと明言するには、事例数が少なく詳細に検討 することは困難であり、保育実践に及ぼす因果関係に ついての検討が今後の課題として残った。今後事例を 積み重ねていくことで研究方法の改善などを図りつ つ、より一般化できるのではないかと考えられる。さ らに、本研究では学級づくりが頻繁に行われる時期と して年度始め(1学期)に着目したが、「まだまだ完 成というものはない」「2学期につなげていく」とい ったインタビューの発言内容から考えても、学級づく りは1年間を通じて、もしくは入園から修了まで通し て行われるものである。長期的な視野をもって学級づ くりのプロセスを検討していくことが今後の重要な課 題である。

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参照

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