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博士論文審査結果の要旨 博士論文審査委員会

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Academic year: 2021

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博士論文審査結果の要旨

博士論文審査委員会

山 本 紳 一 郎 審 査 委 員 米 田 隆 志

審 査 委 員 柴 田 政 廣

審 査 委 員 福 井 浩 二

審 査 委 員 中 澤 公 孝

氏 名 喜多村

論文題目 下肢ステッピング動作が上肢運動の神経制御機構に及ぼす影響

〔論文審査の要旨〕

本 学 位 論 文 は , 脊 髄 損 傷 者 や 脳 卒 中 片 麻 痺 者 等 の 運 動 機 能 障 が い 者 に 対 す る リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン で 実 施 さ れ て い る 下 肢 ス テ ッ ピ ン グ 運 動 が 上 肢 運 動 神 経 機 構 へ 及 ぼ す 神 経 生 理 学 的 な 影 響 を 解 明 す る 研 究 で あ る . ま た , そ の 実 験 系 構 築 の た め , 新 た な 経 頭 蓋 磁 気 刺 激

(T MS)

装 置 の 定 位 シ ス テ ム の 開 発 研 究 で も あ る .

開 発 し た

T MS

装 置 定 位 シ ス テ ム に よ り , 歩 行 様 運 動 で あ る 下 肢 ス テ ッ ピ ン グ を 行 っ た 時 に ば ら つ き の 少 な い 運 動 誘 発 電 位 (

ME P

) を 導 出 で き て お り , 歩 行 様 下 肢 ス テ ッ ピ ン グ 時 の 皮 質 脊 髄 路 お よ び 脊 髄 運 動 ニ ュ ー ロ ン プ ー ル の 興 奮 性 を 評 価 し , 上 肢 と 下 肢 の 神 経 機 構 の 相 互 作 用 に つ い て 考 察 し た . こ れ ら の 結 果 か ら , 歩 行 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン に お け る 下 肢 運 動 中 枢 と 上 肢 運 動 中 枢 と の 相 互 作 用 の 重 要 性 に つ い て 提 案 し て い る .

2 月 5 日 1 6 時 か ら 約

1

時 間 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン , そ の 後 約

1

時 間 の 質 疑 応 答 を 実 施 し た . 審 査 の 結 果 , 新 た な 実 験 系 を 構 築 し , こ れ ま で 困 難 な 課 題 に 挑 戦 し て お り , 内 容 と し て は 博 士 号 に 値 す る こ と は 認 め ら れ た . し か し な が ら , 全 審 査 委 員 か ら , 博 士 論 文 の 構 成 や 記 載 内 容 に 多 く の 論 理 的 に 矛 盾 す る 内 容 が あ る た め , 多 く の 箇 所 で 修 正 す べ き 点 が 指 摘 さ れ た . し た が っ て ,

2/ 5

の 最 終 審 査 で は 合 格 と 認 め ら れ ず , 再 審 査 が 必 要 と い う 結 論 と な っ た . そ こ で ,

3 /9

( 月 )

11

か ら 豊 洲 キ ャ ン パ ス に お い て 再 度 審 査 会 を 実 施 し た . 予 備 審 査 , 最 終 審 査 ( 1 回 目 ) に 指 摘 さ れ た 点 が 改 善 さ れ て お り , 審 査 員 全 員 一 致 で 合 格 と 認 め ら れ た .

業 績 と し て は , 国 際 学 会 プ ロ シ ー デ ィ ン グ ス は 2 件 以 上 あ り , 査 読 付 論 文 ( 国 内 誌 ) に 採 録 決 定 さ れ て お り , 審 査 基 準 を ク リ ア し て い る こ と が 確 認 さ れ た . 本 論 文 内 容 の 一 部 を 国 際 誌 へ 投 稿 し た 結 果 が

rej ec t

で あ っ た が , 今 後 , 論 文 を

revise

し , 国 際 誌 に 採 録 さ れ る よ う に 努 力 を 続 け る こ と を 条 件 に 合 格 が 認 め ら れ た .

(2)

論 文

要 旨

2015

03

月 12

※報告番号 第

173号

喜多村

主論文題名

下肢ステッピング動作が上肢運動の神経制御機構に及ぼす影響

Effects of the leg stepping on the neural control of the arm motion

近年の電気生理学研究において,歩行のような周期的・律動的な下肢運動中のヒト上肢の神経制 御 機 構 が , 安 静 立 位 時 と は 異 な る 事 が 示 さ れ た (

Zehr et al., 2007; Nakajima et al., 2011).この事は,ヒトにおいても歩行中,四足動物のような四肢間協調の神経制御が存在するこ

とを示唆している.しかしながら,ヒトが下肢運動を行う場合,運動の随意指令と運動の結果生じ る体性感覚情報が運動を司る中枢神経系に入力されるが,下肢運動の随意指令と感覚情報が上肢運 動制御における随意指令伝達経路と脊髄反射にそれぞれどのように影響を及ぼすのか調べられた研 究はこれまで存在しない .本研究ではロボット型自動歩行補助装置

Lokomat

を用いて,被検者が

Lokomat

が作り出す下肢ステッピングのキネマティクスに合わせて随意的に下肢を動かす随意ステ

ッピング課題と

Lokomat

の動きに任せて下肢を動かされる受動ステッピング課題を設定した.受動 ステッピング課題において,被検者の随意指令が伴わないため,中枢神経系に対しては下肢ステッ ピングに関連した体性感覚情報が入力される(

Brooke et al., 1997).一方で, Lokomat

によっ て下肢キネマティクスが統制されているため,随意ステッピング課題中,受動ステッピング課題中 と同一の体性感覚情報に加えて,下肢ステッピングの随意指令が中枢神経系に対して入力される.

本研究では,2 つのステッピング課題中に橈側手根屈筋から誘発される運動誘発電位と

H

反射を比 較することで,下肢ステッピング運動の随意指令と体性感覚情報がそれぞれ上肢への随意指令伝達 経路と脊髄反射機構にどのような影響をおよぼすのか明らかとすることを目的とする.

本研究ではヒトの下肢のステッピング運動が上肢の神経制御に及ぼす影響について明らかとす るために,研究課題

2

では電気生理学手法として一次運動野における上肢支配領域に対して

TMS

行い橈側手根屈筋(FCR)から運動誘発電位

( Motor evoked potential:MEP)を記録することで

脳からの随意指令の伝達経路の一つである皮質脊髄路の興奮性が随意ステッピングと受動ステッピ ングの二つの下肢ステッピング課題中にどのように変調するのかの検討を行った.また研究課題

3

では,上肢の脊髄運動ニューロンの興奮性をおける二つの下肢ステッピング課題の影響を検討する ために

FCR

において

Hoffmann(H)反射 を FCR

において誘発した.またこれらの電気生理学計測 に先立ち,3 次元動作解析システムを応用して

TMS

を精度よく正確に遂行することのできる磁気刺 激コイルの定位ナビゲーションシステムの構築を行った(研究課題

1).

※印欄記入不要

(3)

論 文

要 旨

2015

03

12

※ 報告番号 第

173号 喜多村

その結果,研究課題

1

において構築したシステムによって,歩行中の被検者頭部に対して精度よ く磁気刺激用コイルの低位が行えることを確認した.研究課題

2

では,研究課題

1

で構築したシス テムを用いて,随意ステッピング中に誘発された

FCR MEP

の振幅がステッピングの位相に依存して 変化するのに対し,受動ステッピング中に誘発された

MEP

はステッピング位相に依存した振幅変化 を示さない事を確認した.研究課題

3

では随意,受動,両ステッピング課題のすべてのステッピン グ位相において立位時と比較して統計的有意な

FCR H

反射振幅の減弱を示し,加えて随意ステッピ ング課題において,ステッピング位相に依存した

H

反射振幅の変化を確認した一方,受動ステッピ ング中の

H

反射の位相依存変化は認められなかった.

随意ステッピング課題中は下肢ステッピングの随意指令とそれに伴う体性感覚情報が被験者の中 枢神経系に対して作用している一方で,受動ステッピング課題において,随意指令の影響はほとん どないと考えられる.その為,随意ステッピング課題において

FCR

から記録された

MEP

および

H

射の振幅がステッピング位相に依存して変化したのに対し,受動ステッピング課題では位相依存性 を示さなかったことは,皮質脊髄路及び

H

反射経路の位相依存的な興奮性変化に下肢ステッピング の随意指令が関与している事を示唆している.また,受動ステッピング課題中の

FCR H

反射は立位 時と比較して統計的有意に減弱するのに対して,MEP 振幅は立位時と比較して変化しなかったこと は,ステッピングに関連した体性感覚情報が

H

反射経路に選択的に作用し,おそらくシナプス前抑 制の機序によって興奮性を抑制していることを示唆していると考えられる.

本研究によって下肢ステッピングの随意指令と体性感覚情報が上肢を支配する皮質脊髄路と

H

射経路の興奮性変化に対して異なる役割を持つことを示すことができた.このことは歩行中の上肢 と下肢の神経制御機構の機能的なつながりを示唆しており,ヒトの歩行が脊髄全般にわたって存在 する神経機構によって執り行われていることを暗に示している.本研究によって得られた結論はヒ トの二足歩行において,歩行の随意指令と体性感覚情報が上肢運動の神経制御機構に対してそれぞ れ異なる影響を及ぼしている事を強く示唆するものである.

参考文献

1. Brooke JD, McIlroy WE, Miklic M, Staines WR, Misiaszek JE, Peritore G, and Angerilli P.

“Modulation of H reflexes in human tibialis anterior muscle with passive movement.” Brain Res 766: 236-239, 1997.

2.

Nakajima T, Kitamura T, Kamibayashi K, Komiyama T, Zehr EP, Hundza SR, and Nakazawa K.

“Robotic-assisted stepping modulates monosynaptic reflexes in forearm muscles in the human.” J Neurophysiol 106: 1679-1687, 2011.

3.

Zehr EP, Klimstra M, Johnson EA, and Carroll TJ. “Rhythmic leg cycling modulates forearm muscle H-reflex amplitude and corticospinal tract excitability.” Neurosci Lett 419: 10-14, 2007.

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