数学
IB
演習(
第3
回)
の略解目次
1.
問1
の解答1
2.
問2
の解答2
3.
問2
の結果を見直すと3 4.
三角関数と指数関数のTaylor
展開について4
5.
問3
の解答6
6.
問3
を見直すと7
7. Taylor
多項式の特徴付け8
8. Taylor
展開を求めるには9
9.
合成関数のTaylor
展開について14
10.
問4
の解答16
11.
問4
の解答に対する注意17 12.
近似多項式としてのTaylor
展開18 13. x = a
のまわりでのTaylor
展開21 14.
関数の大まかな様子を調べるには24 15.
平均値の定理を用いた証明について∗27
1.
問1
の解答それぞれ微分を計算してみると
, (1) 2x + e
x(x
2+ e
x) log(x
2+ e
x) (2) (1 + x)
x·
log(1 + x) + x 1 + x
ff
(3) 3 sin
2(tan x) cos(tan x) cos
2x (4) x
tan−1x·
log x
1 + x
2+ tan
−1x x
ff
となることが分かります
.
(2)
や(4)
などは,
一見,
ギョッとするかもしれませ んが,
例えば,
f (x) = (1 + x)
x(1)
として
,
まず, (1)
式の両辺のlog
を取って, log f(x) = x log(1 + x)
としてから微分すれば
, f
0(x)
f(x) = log(1 + x) + x 1 + x
というように普通に計算することができます
.
また, g(x) = tan
−1x
として, g
0(x)
を,
例えば,
次 のようにして求めることができます.
いま,
逆関数の 定義により,
tan g(x) = x (2)
となることが分かりますから
, (2)
式の両辺をx
で微 分することで,
g
0(x) cos
2g(x) = 1
となることが分かります
.
よって, g
0(x)
は,
g
0(x) = cos
2g(x) (3)
と表わせることが分かります
.
一方, (2)
式の両辺を2
乗してみると,
x
2= tan
2g(x)
= sin
2g(x) cos
2g(x)
= 1 − cos
2g(x) cos
2g(x)
= 1
cos
2g(x) − 1
となることが分かりますから,
cos
2g(x) = 1
1 + x
2(4)
0 y
1 2 3 n−1 n x
. . .
y= logx Pn
k=1logk
図1 Pn
k=1logkの大きさを,Rn
1 logx dxの大きさ と比べてみる.
0 y
x
1 2 3 n n+ 1
. . .
y= logx Pn
k=1logk
図2 Pn
k=1logkの大きさを,Rn+1
1 logx dxの大き さと比べてみる.
となることが分かります
.
よって, (3)
式, (4)
式から, g
0(x) = 1
1 + x
2 となることが分かります.
2.
問2
の解答(1)
第1
回の問2
のときと同様に,
Pnk=1
log k
とlog x
のグラフを比べてみると,
Z n
1
log x dx ≤
Xnk=1
log k ≤
Z n+11
log x dx
となることが分かります(
図1,
図2
を参照).
そこ で,
両辺の積分を,
Z n
1
log x dx = [x log x − x]
n1= n log n − n + 1
などと計算してみると,
∗1)n log n − n ≤ log n! − 1
≤ (n + 1) log(n + 1) − (n + 1)
となることが分かります.
ここで,
*1)logxの原始関数がxlogx−xとなることが思い浮かば ない場合には, logx= 1·logx=dxd {x} ·logxと考えて, 部分積分をすることで求めることができます.
n log n − n = log
“n e
”n
log n! − 1 = log n!
e
となることなどに注意すれば,
“
n e
”n
≤ n!
e ≤
„
n + 1 e
«n+1
となることが分かります
. (2) (1)
より,
e
“
n e
”n
≤ n!
となることが分かりますから
, 1
n! ≤ 1 e
“
e n
”n
となることが分かります
.
したがって, 5
nn! ≤ 1 e
„
5e n
«n
となることが分かりますから
,
例えば, 5e
n ≤ 1 2
であるとすると
,
すなわち, n
がn ≥ 10e
であると すると,
5n!n の大きさが,
0 ≤ 5
nn! ≤ 1
e
„
5e n
«n
≤ 1 e
„
1 2
«n
(5)
というように見積もれることが分かります.
∗2)いま, n → ∞
のとき,
1 e
„
1 2
«n
→ 0
となることが分かりますから
, (5)
式と合わせて,
n→∞
lim 5
nn! = 0
となることが分かります.
他には
, (1)
とは関係なく,
例えば, n ≥ 6
のとき, 0 ≤ 5
nn! = 5 1 · 5
2 · · · · · 5 5 · 5
6 · 5 7 · · · · · 5
n
≤ 5 1 · 5
2 · · · · · 5 5 · 5
6 · 5 6 · · · · · 5
6
= 5
44! ·
„
5 6
«n−5
*2) この例のように,どのくらいの大きさの自然数n∈Nを 考えればよいのかが,誰にでも分かりやすい場合には,単に,
「十分大きな自然数n∈Nに対して」と言ったりします. し かし,最初のうちは,皆さんも,例えば「n≥10eとなる自 然数n∈Nに対して」というように,nの範囲をハッキリ と指定して考える癖をつけた方がより良く理解できるのでは ないかと思います.
などと評価してから
, n → ∞
とすることでも,
n
lim
→∞5
nn! = 0
となることが分かります. 3.
問2
の結果を見直すとこの問題は
,
皆さんに, n!
というのは大体どのよう な大きさの数なのかということと,
数列の発散するス ピードということを理解してもらおうと思って出題し ました.
いま
, a
n= n, b
n= n
2 という二つの数列を考えて みます.
これでは味気ないと思われる方もいるかもし れませんので,
例えば, A
種族とB
種族という二つの 種族が,
同時期に同じ無人島に移り住んだとして,
そ れからn
年たった後でのそれぞれの種族の人の数が, a
n= n, b
n= n
2 であったという状況を考えてみるこ とにします.
∗3)このとき,
どちらの数列もn → ∞
の ときに+ ∞
に発散するわけですが,
このことは,
いず れ時が経てば,
両種族ともいくらでも人数が増えると いうことを意味していますから,
大変結構なことに見 えます.
ところが
,
例えば100
年経った時点を考えてみると, A
種族の人達の数は,
まだ100
人にしかなっていない のに対して, B
種族の人達の数は,
すでに一万人にふ くれ上がっています.
この傾向は,
年が経つにつれて ますます激しくなり, B
種族の人達の数は, A
種族の 人達の数を圧倒して,
いずれ, B
種族の人達にとって, A
種族の人達というのは取るに足らない存在になって しまうであろうことが予想されます.
このように,
い くらでも人数が増えていくといっても, B
種族の人達 には明るい未来が待っているのに対して, A
種族の人 達にとっては辛い未来が待っていそうなことが分かり ます.
そこで
,
一体,
この差がどこから生まれたのかという ことを良く良く考えてみると,
その原因が二つの数列 の「大きくなってゆくスピード」の違いにあることが 分かります.
このように,
極限を考えるときには,
極限 の値がどうなるかということと同時に,
その極限の値 に近付いてゆく収束のスピードということが,
しばし ば問題になります.
そこで, + ∞
に発散する代表的な 数列について,
発散するスピード比べをしてもらい,
そ うしたスピード感覚を養ってもらおうというのが,
今*3) これは,a1= 1, b1= 1であることなど,極めて非現実的 な話ではありますが.
回の問
2
と第1
回の問3
の(1)
の出題意図です.
そこで,
いま, + ∞
に発散する数列の代表的な例と して,
次のような三種類の数列を考えてみることにし ます.
まず, k = 1, 2, 3, · · ·
として,
a
n= n
kという数列を考えてみます
.
∗4)このような数列を多項 式order (
多項式オーダー)
で発散する数列と呼んだ りします.
次に, 1 < a ∈
Rとして,
b
n= a
nという数列を考えてみます
.
このとき, a
n= e
nlogaと も表わすことができるので,
こうした数列を指数or- der (
指数オーダー)
で発散する数列と呼んだりしま す.
最後に,
問2
で問題にしたような,
c
n= n!
という数列を考えてみます
.
このとき,
これら三種類 の+∞
に発散する数列達の発散するスピードを比べ てみるとどうなるのかということを考えてみます.
まず
,
第1
回の問3
の(1)
の証明を見直してみると,
そのときと同様に考えることで,
n
lim
→∞n
ka
n= 0
となることが分かります
.
∗5) このことは, a > 1
やk = 1; 2; 3;
´ ´ ´ がどんな数であったとしても, n
が 十分大きくなれば,
10n
k»a
n にも,
∗6)1343567n
k»a
n にも,
∗7)さらには,
10000000000000000n
k»a
n*4) より一般に, 0< α∈Rとして,an=nαという数列を 考えてもらっても構いません.
*5) 皆さん,確かめてみて下さい.
*6) すわなち, nk an ≤ 1
10 ということです.
*7) すわなち, nk an ≤ 1
1343567 ということです.
にもなってしまうということを意味していますから
,
指 数order
の数列の方が多項式order
の数列よりずっ と早く大きくなってしまうということを表わしている と解釈できます.
次に
,
今回の問2
の証明を見直すと,
全く同様に考 えることで,
n
lim
→∞a
nn! = 0
となることが分かります
.
∗8) したがって, a > 1
が どんな数であったとしても, c
n= n!
は指数order
の数列より,
さらに早く大きくなることが分かります.
いま,
問2
の(1)
の不等式を眺めると, n!
とは,
おお よそ,
n!
;“
n e
”n
位の大きさであることが分かりますが
,
`ne
´n
とは「公 比」がどんどん大きくなる「等比数列」のようなも の∗9)であると考えると
, n!
の方がa
n より成長が 早いということが,
皆さんにも納得できるかもしれま せん.
このようなスピード感覚があると,
極限がどの ような値になりそうかという見当をつけるときにも役 立ちますから,
皆さんも早いうちにこうしたスピード 感覚を身につけたら良いのではないかと思います.
さて
, +
1に発散する数列のもうひとつ代表的な例 として,
d
n= log n
という数列があります
.
興味のある方は, 0 < α ∈
R として,
例えば, f (x) =
logxαx という関数の増減表を調 べてみることで,
n→∞
lim log n
n
α= 0
となることを
,
すなわち, 0 < ¸
が何であれ, log n
はn
¸ よりも大きくなるスピードが遅いということを 確かめてみて下さい.
以上の考察をまとめると
, 0 < ¸
2R; 1 < a
2R に対して, n
が十分大きくなると,
log n << n
¸<< a
n<< n!
というような発散のスピードの違いが現われることが
*8) 皆さん,確かめてみて下さい.
*9) もちろん,こういうものは等比数列とは呼ばないわけです
が,感じは分かるのではないでしょうか.
分かりました
.
∗10)第1
回の問2
では, S
n= 1 + 1
2 + 1
3 + · · · + 1 n
という数列を取り上げ
,
この数列は成長がかなり遅いと いうことを確かめてみました.
実際, n = 10
43 位に ならないと, S
nは100
を越えることさえもできない のでした.
そのときの議論では, S
n の大きさが,
おお よそ,
S
n;log n
位であると見積もることができましたが
,
この例を考 えると,
皆さんにも, log order (
ログ・オーダー)
の 数列とは随分成長が遅いものであるということが納得 できるかもしれません.
4.
三角関数と指数関数のTaylor
展開について さて,
問2
で行なった考察を用いると,
三角関数や指 数関数を「多項式の姿」に「化かす」という問題にき ちんと答えることができます.
そこで,
この点につい て少し触れておくことにします.
第
2
回では,
理解の難しい一般の滑らかな関数f(x)
を(
比較的)
理解が容易な「多項式の姿」に「化かす」という
Taylor
展開の問題を取り上げ,
まずは, f(x)
が,
f(x) = f(0) + f
0(0)x + f
00(0)
2! x
2+ · · · (6)
というような姿に「化ける」のではないかと「当たり」を付けました
.
ただし,
例えば, f(x) =
1−x1 という例 が示したように,
一般には, (6)
式が成り立つとは限り ませんから,
どのような実数x
2Rに対して, (6)
式 の等式が成り立つのかということはきちんと考えてみ なければいけない問題であるということを注意しまし た.
また,
このような問題を考えるためや,
状況をより 良く理解するためには,
いきなり「次数が無限大の多 項式の姿」に「化かす」ことを考えるのではなく,
「お つりの項」付きで「次数が有限の多項式の姿」に「化 かす」ことを考えることが大切であるということに触 れ,
「微積分学の基本定理」に注目して部分積分を繰り 返すことによって,
f(x) =f(0) + f
0(0)x + f
00(0) 2! x
2+ · · · + f
(n)(0)
n! x
n+ R
n(x) (7)
*10) ここで,不等号「<」を二つ重ねて「<<」と表わすこと で,ずっと大きいという気持ちを表現してみました.
というように
,
実際に,
一般の滑らかな関数f (x)
を剰 余項R
n(x)
付きで「次数が有限の多項式の姿」に「化 かす」ことができることを確かめました.
さらに,
「積 分に関する平均値の定理」を用いると,
剰余項R
n(x)
は, 0
とx
の間にある適当な実数„
2Rを用いて,
R
n(x) = f
(n+1)(„)
(n + 1)! x
n+1(8)
というように簡明な形に表わせることが分かるので した
.
そこで
,
ここでは, (8)
式の表示をもとにして, f(x)
が三角関数や指数関数のとき, n → ∞
という極限で 剰余項R
n(x)
がどうなるのかという問題を考えてみ ることにします.
まず
, f(x) = sin x,
または, f(x) = cos x
の場合を 考えてみます.
このとき, f
(n+1)(x)
は± sin x, ± cos x
のうちのいずれかの関数になりますから,
| f
(n+1)(θ) | ≤ 1 (9)
となることが分かります
.
したがって, (8)
式と(9)
式 から,
|R
n(x)| = | f
(n+1)(θ) |
(n + 1)! · |x|
n+1≤ | x |
n+1(n + 1)! (10)
となることが分かります. 3
節でも注意したように,
問2
の(2)
と同様に考えると,
勝手な実数x ∈
Rに対 して,
n
lim
→∞| x |
n+1(n + 1)! = 0 (11)
となることが分かりますから
,
∗11)(10)
式と(11)
式 から,
n→∞
lim | R
n(x) | = 0
となることが分かります
.
したがって,
n
lim
→∞R
n(x) = 0
となることが分かります.
∗12)次に
, f(x) = e
x の場合を考えてみます.
このとき, f
(n+1)(x) = e
x となりますから, f
(n+1)(θ) = e
θ と*11) 皆さん,確かめてみて下さい.
*12) ここで,|Rn(x)|=|Rn(x)−0|と考えて,
n→∞lim |Rn(x)|= 0
という式を「Rn(x)と0との間の距離が0に近づく」と 解釈しました.
なることが分かります
.
ここで, θ
は0
とx
の間の実 数であることに注意すると,
|f
(n+1)(θ)| = e
θ≤
8<:
e
x, x ≥ 0
のとき1, x ≤ 0
のとき となることが分かりますから,
|R
n(x)| ≤
8<:
e
x·
|(n+1)!x|n+1, x ≥ 0
のとき|x|n+1
(n+1)!
, x ≤ 0
のとき(12)
となることが分かります.
よって,
前と同様に, (11)
式 と(12)
式から,
n
lim
→∞R
n(x) = 0
となることが分かります.
以上から
, f(x)
が三角関数や指数関数の場合には,
勝手な実数x ∈
Rに対して,
n
lim
→∞R
n(x) = 0
となることが分かりました
.
したがって, (7)
式の両辺 でn → ∞
としてみることで,
この場合,
勝手な実数x ∈
Rに対して, (6)
式の等号が成り立つことが分かります
.
すなわち,
勝手な実数x ∈
Rに対して, e
x= 1 + x + x
22! + x
33! + · · · (13)
cos x = 1 − x
22! + x
44! − x
66! + · · · (14) sin x = x − x
33! + x
55! − x
77! + · · · (15)
となることが分かります.
関数のグラフを考えてみる と,
指数関数e
xと三角関数cos x, sin x
とは随分違っ た関数のように見えますが, (13)
式, (14)
式, (15)
式 を見比べると,
これらの関数の「多項式としての姿」は 随分似ていることが分かります.
さて
,
関数f (x)
が(6)
式のように「多項式の姿」に「化ける」ことができると
, (6)
式の右辺には「足し算」や「掛け算」しか登場しませんから
,
「足し算」や「掛 け算」ができるような「数」であれば,
何でも変数x
のところに代入して考えてみることができるという利 点が現われます.
例えば,
複素数はこのような「数」の 代表的な例ですが,
ある人が今日は気分が良いからと 言って「e
を√
− 1
回掛けてみよう」と思ったとしま す.
このとき, e
√−1という表示をいつまでもじっと眺 めていても,
一体, e
√−1 とは何者なのか,
なかなか見 えてはきません.
ところが, (13)
式のように「多項式の姿」に「化かして」考えると
, e
√−1= 1 + √
− 1 + ( √
− 1 )
22! + ( √
− 1 )
33! + · · ·
というように,
何やら値が決まりそうに思われます.
そこで
,
この値が何になりそうかということをより ハッキリさせるために, θ
という変数を用意して, e
√−1θ という値を考えてみます.
すると,
e
√−1θ
= 1 + √
−1 θ + ( √
−1 θ)
22! + ( √
−1 θ)
33! + · · ·
=
„
1 − θ
22! + θ
44! − · · ·
«
+ √
−1 ·
„
θ − θ
33! + θ
55! − + · · ·
«
(16)
となることが分かりますが, (16)
式と(14)
式, (15)
式を見比べてみると,
e
√−1θ= cos θ + √
− 1 · sin θ (17)
となることが分かります
.
こうして,
「e
を√
−1
回掛けてみた」結果が何になるのかということが分かりま した
.
一見したところ全く関係がなさそうに見える三角関 数と指数関数を結びつける
(17)
式をEuler
の公式と呼びます
. (13)
式という「多項式としての姿」を用いて
,
勝手な複素数z ∈
Cに対して, e
z= 1 + z + z
22! + z
33! + · · · (18)
という式によって
,
指数関数を複素平面C上の関数に 拡張して考えてみると,
∗13)実軸上ではe
xという指数 関数に見えていたものが,
虚軸上ではcos x
やsin x
という三角関数に見えてくるということをEuler
の公 式は主張しているわけです.
こうして,
実数関数とし て見ていたときには随分違って見えた三角関数と指数 関数が,
実は本質的にひとつの関数であることが分か りました.
興味がある方は
,
e
z+w= 1 + (z + w) + (z + w)
22! + · · ·
とe
z· e
w=
„
1 + z + z
22! + · · ·
« „
1 + w + w
22! + · · ·
«
*13) 第5回で触れる予定の「級数の収束判定法」を複素数列の
場合に拡張して考えることで,勝手な複素数z∈Cに対し て(18)式の右辺の「無限和」の値がきちんと定まることを 示すことができます.
という二つの式を
z, w
のベキの形に展開して,
X∞k,l=0
a
k,lz
kw
lという形に表わしたときに
,
それぞれの式でz
kw
lの 係数a
k,lがどうなるのかということを比較してみるこ とで,
勝手な複素数z, w ∈
Cに対して,
e
z+w= e
z· e
wという「指数関数の加法定理」が成り立っていること を確かめてみて下さい
.
∗14)また,
特に, z, w
が純虚数 であるとして,
e
√−1 (θ+ϕ)= e
√−1θ· e
√−1ϕ(19)
という式を考えたとき, Euler
の公式を用いて, (19)
式 の両辺を三角関数の言葉で表わして,
実数部分と虚数 部分をそれぞれ比較したときに,
どのような主張が得 られるのかということも考えてみて下さい.
5.
問3
の解答x = 0
のまわりで, sin x
は, sin x = x − 1
3! x
3+ 1
5! x
5− · · ·
= x
„
1 − 1
3! x
2+ 1
5! x
4− · · ·
«
と展開することができるので
, x sin x
は, x sin x = x
2„
1 − 1
3! x
2+ 1
5! x
4− · · ·
«
(20)
というように展開できることが分かります.
一方, y = 0
のまわりで, e
yは,
e
y= 1 + y + 1 2! y
2+ 1
3! y
3+ · · ·
と展開できるので, y = x sin x
とすれば,
e
xsinx= 1 + x sin x + 1
2! (x sin x)
2+ 1
3! (x sin x)
3+ · · · (21)
となることが分かります.
ここで, (20)
式のx sin x
の展開式には, x
について二次式以上の項しか現われ ないことに注意して, x
6 以下の項のみに注目すると, (20)
式, (21)
式から,
*14) もう少し厳密な証明に興味がある方は微積分学の「しっか りとした教科書」を参照して下さい.
e
xsinx= 1 + x sin x + 1
2! (x sin x)
2+ 1
3! (x sin x)
3+ · · ·
= 1 + x
2„
1 − 1
3! x
2+ 1 5! x
4− · · ·
«
+ 1 2! x
4„
1 − 1
3! x
2+ · · ·
«2
+ 1
3! x
6(1 − · · · )
3+ · · ·
= 1 + x
2− 1 3! x
4+ 1
5! x
6+ · · · + 1
2! x
4„
1 − 2
3! x
2+ · · ·
«
+ 1
3! x
6+ · · ·
= 1 + x
2+
„
− 1 3! + 1
2!
«
x
4+
„
1 5! − 1
3! + 1 3!
«
x
6+ · · ·
= 1 + x
2+ 1 3 x
4+ 1
5! x
6+ · · ·
となることが分かります.
6.
問3
を見直すとさて
,
第2
回の問2
のところで見たように, Taylor
展開の係数たちは,
f
(k)(0) k!
という式で与えられますから
,
皆さんの中にも, f (x) = e
xsinxに対して直接f
(k)(0)
を求めようとして「大変 なこと」になった方がいるのではないかと思います.
∗15) こうした正攻法では計算も大変ですし,
計算間違いの 可能性もずっと大きくなってしまいます.
そこで,
もう 少し見通し良く計算するために,
上で挙げた解答では, x sin x
やe
y のTaylor
展開からf (x) = e
xsinx のTaylor
展開を求めるという方針を取りました.
こ のように,
個々の関数のTaylor
展開を用いて,
それら の合成関数のTaylor
展開を計算することができると いうことを,
皆さんに理解して欲しいと思って,
問3
を 出題してみました.
しかし
,
上の解答を眺めただけでは,
どうしてこう した方法でTaylor
展開が正しく求まるのかというこ とが少し気に掛かる方がいるかもしれません.
例えば,
問3
の結果から,
*15) このような苦労をすることは決して悪いことではなく,後
でしみじみと理解できるようになるためにはとても大切なこ とです.
e
xsinx= 1 + x
2+ 1 3 x
4+ 1
5! x
6+ · · · (22)
と表わされることが分かりますが, (22)
式の右辺に現 われる1 + x
2+ 1 3 x
4+ 1
5! x
6という多項式が
, f(x) = e
xsinx として,
本当に, f(0) + f
0(0)x + f
00(0)
2! x
2+
´ ´ ´+ f
(6)(0) 6! x
6 という多項式と一致しているのだろうかということが 気に掛かる方もいるのではないかと思います.
また,
上 の解答では,
e
y= 1 + y + 1 2! y
2+ 1
3! y
3+ · · ·
などのように
,
再び「· · ·
」が登場していて,
これらの「
· · ·
」の部分に「怪しさ」や「本当にこれでいいの」というような一抹の不安を感じた方もいるのではない かと思います
.
そのように感じられた方は,
数学的に 非常に良い感覚の持ち主ですから,
せっかくの疑問を 自分で誤魔化してしまわずに,
「確かにこれで良い」と いうことの理屈付けを自分自身で納得できるまで考え てみるという癖を付けて下さい.
第
1
回のところでは,
こうした作業を「疑り深い人 を説得する」という言葉で表現したのですが,
こうし たことは物事をより良く理解する上でとても大切なこ とです.
すなわち,
「何となく分かった気になる」とい うところで留まるか,
「本当にしっくり分かる」という ところまで達するかということで,
理解できたと思う 満足感も違いますし,
それによって,
「何となく知って いること」を自分の血肉となる「生きた知識」として 吸収することができるようになります.
無知の知とい う言葉があるように,
どこまで分かれば本当に理解し たことになるのかというのはとても難しい問題ですが,
私の個人的な体験から言うと,
「なるほど」と分かった ときの喜びが大きければ大きいほど理解の深さも深い と言えるのではないかと思います.
皆さんも,
分かっ たときの喜びの大きさを尺度として,
単に,
教えられた 事実を覚えるのではなく,
自分であれこれ考えたり,
い ろいろ試行錯誤してみることで,
「なるほど」という感 動をいっぱい経験されてゆくと良いのではないかと思 います.
そこで
,
問3
に戻って,
上で述べた疑問点に注意し ながら「疑り深い人を説得する作業」を試みてみるこ とにします.
すると,
「疑り深い人」にとっては,
まず,
「
· · ·
」の部分が気になるのではないかと思われます.
第2
回の問2
のところでもそうでしたが,
この「· · ·
」 の部分が気になるのは,
きちんとした意味付けがハッ キリしないからでした.
そこで,
第2
回の問4
では,
そ うした気持ち悪さを解消するために,
いきなり「次数 が無限大の多項式の姿」に「化かす」ことを考えるの ではなく,
剰余項を導入することで,
「´ ´ ´」が出てこ ない形で「次数が有限の多項式の姿」に「化かす」こ とを考えるという工夫をしました.
そのときの結論は,
勝手な滑らかな関数f (x)
と勝手な自然数n
2Nに 対して,
f (x) = f(0) + f
0(0)x + f
00(0)
2! x
2+
´ ´ ´+ f
(n)(0)
n! x
n+ R
n(x) (23) R
n(x) = 1
n!
Zx
0
(x
`t)
nf
(n+1)(t)dt (24)
という式が成り立つということでした.
そこで,
問3
の解答に対する「説得作業」に当たっても,
「´ ´ ´」の 部分を上の「剰余項付きの展開式」に置き換えて議論 することで,
「· · ·
」に対する問題点は解消できるので はないかと期待されます.
7. Taylor
多項式の特徴付けさて
,
「疑り深い人」にとって気に掛かるのではない かと思われるもうひとつの点は,
どうして問3
で挙げ たような方法でTaylor
展開が正しく求まるのかとい う点でした.
そこで,
この疑問点に対する「説得作業」を行なうための準備として
,
ここでは, Taylor
展開に 現われる多項式がどのような特徴を持つのかということを
, (23)
式という「剰余項付きの展開式」をもとにして考察してみることにします
.
いま
, (23)
式の右辺に現われたn
次の多項式を, P
n(x) = f(0) + f
0(0)x + · · · + f
(n)(0)
n! x
n(25)
と表わすことにします.
この多項式P
n(x)
のことを関 数f(x)
のTaylor
多項式(
テイラー多項式)
と呼び ます.
∗16)また,
第2
回の問4
のところで見たように,
「積分に関する平均値の定理」を用いると
,
勝手な実数x ∈
Rに対して, (24)
式で与えられる剰余項も, 0
とx
の間にある適当な実数θ ∈
Rを用いて,
R
n(x) = f
(n+1)(θ)
(n + 1)! x
n+1(26)
*16) 多項式のことを,英語でpolynomialと言います.
と表わすことができるのでした
.
そこで, (25)
式, (26)
式を用いて, (23)
式を,
f(x) − P
n(x) = f
(n+1)(θ)
(n + 1)! x
n+1(27)
という形に書き直してみます.
このように表わしてみ ると,
多項式P
n(x)
は, f(x)
`P
n(x)
ができるだ け大きなx
のベキで括れるようなものとして選ばれ ているのではないかと推測できます.
そこで
,
このことをもう少しハッキリとした形で表現 することを考えてみます.
いま, f (x)−P
n(x)
は, x
n+1 で括れていますから, k = 0, 1, 2, · · · , n
に対して,
x
lim
→0f(x) − P
n(x)
x
k= 0 (28)
となることが期待されます
.
実際, (27)
式から, f(x) − P
n(x)
x
k= f
(n+1)(θ)
(n + 1)! x
(n−k)+1(29)
と表わせることが分かりますが, θ ∈
Rは0
とx
の間 にある実数ですから, x → 0
のとき, θ → 0
となるこ とと, k = 0, 1, 2, · · · , n
ですから,
(n − k) + 1 ≥ 1
というように
, x
のベキは1
乗以上になっていること に注意して, (29)
式の両辺でx → 0
としてみると,
x→0
lim
f(x) − P
n(x)
x
k= lim
x→0
f
(n+1)(θ)
(n + 1)! x
(n−k)+1= f
(n+1)(0) (n + 1)! · 0
= 0
となることが分かります
.
よって, k = 0, 1, 2, · · · , n
に対して
, (28)
式の主張が成り立つことが分かります.
次に
,
このような性質を持つn
次の多項式がTay- lor
多項式P
n(x)
の他にも存在し得るのかどうかと いうことを考えてみます.
そこで,
いま, Q
n(x)
をn
次の多項式として, Q
n(x)
も, k = 0, 1, 2, · · · , n
に対 して,
x
lim
→0f (x) − Q
n(x)
x
k= 0 (30)
という式を満たしていると仮定してみます
.
∗17) この とき, Q
n(x) − P
n(x)
という多項式を考えてみると,
Q
n(x) − P
n(x)
x
k= f(x) − P
n(x)
x
k− f(x) − Q
n(x) x
k*17) 以下,証明したいことは,Qn(x) =Pn(x)となるという ことです.