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我 が国 にお け るデ ス ク ロ ー ジ ャー制 度 の 展 開 と その背 景

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我 が国 にお け るデ ス ク ロ ー ジ ャー制 度 の 展 開 と その背 景

田 中 良 三

目 次

は じめ に

1.財 務 諸 表 の 体 系

2.損 益 計 算 書 の 理 論 とそ の構 造 3.連 結 財 務 諸 表

4.セ グ メ ン ト情 報

5.キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー 計 算 書 結 び に か え て

追 補:大 学 の 思 い 出 と期 待

は じ め に

会 計 学 の社 会 的役 割 の 一 つ は,企 業 の 経 営 成 績 と財 政 状 態 を適 正 に表 示 す る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 とそ の 制 度 を担 保 す る監 査 制 度 の 確 立 で あ る。 筆 者 は,

こ の 課 題 を研 究 テ ー マ と して 微 力 な が らそ の 発 展 に 貢 献 して きた つ も りで あ る。 こ こで は,デ ス ク ロ ー ジ ャ ー制 度 の 展 開 とそ の 背 景 とい うテ ー マ で,こ れ まで の 研 究 成 果 を 整 理 して お き た い。

さ て我 が 国 は,戦 後,第 二 次 世 界 大 戦 で 荒 廃 した 経 済 を再 建 す る に あ た っ て, 企 業 の 合 理 化,産 業 金 融 の 適 正 化,証 券 投 資 の民 主 化 の た め に ア メ リカ 型 の 証 券 資 本 主 義 体 制 を 指 導 原 理 とて き した 。1948年4月 に証 券 取 引 法 が 成 立 し,1950 年 の 改 正 法 第193条 ノ2に お い て 「 財 務 計 算 に 関 す る 書 類 に は,そ の 者 と特 別 の 利 害 関 係 の な い 公 認 会 計 士 の 監 査 証 明 を受 け な け れ ば な らな い 」 とい う規 定 を新 設 し,公 認 会 計 士 に よ る証 券 取 引 法 監 査 が 発 足 し た の で あ る。 こ れ に と も

〔3〕

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な い企 業 会 計 の 規 範 で あ り,か つ 監 査 人 の 判 断 規 範 で もあ る 「 企 業 会 計 原 則 」,

「 財 務 諸 表 準 則 」 ,「 監 査 基 準 」 が 作 成 され て い っ た の で あ る 。 つ ま り,経 済 安 定 本 部 に設 け られ た 企 業 会 計 制 度 対 策 調 査 会(1952年 企 業 会 計,2001年 企 業 会 計 基 準 委 員 会)は,我 が 国 の 過 去 の 経 験 と諸 外 国 の 先 例 を参 考 に して,1949年

7月 「 企 業 会 計 原 則 」(中 間 報 告)を 公 表 した 。 こ の 企 業 会 計 原 則 は,企 業 の 経 営 成 績 と財 政 状 態 を表 示 す る新 しい 財 務 諸 表 の体 系 と して,① 損 益 計 算 書,

② 剰 余 金 計 算 書,③ 剰 余 金 処 分 計 算 書,④ 貸 借 対 照 表,⑤ 財 務 諸 表 付 属 明 細 表 を あ げ て い る。 そ の 後,1974年8月 の 企 業 会 計 原則 で は,財 務 諸 表 と して,① 損 益 計 算 書,② 貸 借 対 照 表,③ 財 務 諸 表 付 属 明 細 表,④ 利 益 処 分 計 算 書 をあ げ て い る 。 しか し,現 在 で は,こ の 他 に 中 間 財 務 諸 表,連 結 財 務 諸 表,セ グ メ ン

ト情 報,お よ び キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー計 算 書 が あ る。

本 稿 に お い て は,財 務 諸 表 の 体 系 が ど う よ う な理 由 で 変 更 され た の か,ま た 従 来 の財 務 諸 表 体 系 で は把 握 で き な い よ り広 範 な企 業 内 容 開示 の 問 題 を デ ス ク ロー ジ ャ ー 制 度 の展 開 とそ の背 景 と い う視 点 か ら検 討 す る こ とに した い の で あ る 。

1.財 務 諸 表 の体 系

我 が 国 の会 計 実 務 の慣 行 に お い て は,従 来,① 財 産 目録,② 貸 借 対 照 表,③ 損 益 計 算 書 の3つ を指 して 財 務 諸 表 と よ ん で い た が,1949年 の企 業 会 計 原 則 で

は,① 損 益 計 算 書,② 剰 余 金 計 算 書,③ 剰 余 金 処 分 計 算 書,④ 貸 借 対 照 表,⑤ 財 務 諸 表 付 属 明細 表 の5つ を あ げ て い る。 他 方,商 法 で は,開 業 時 と毎 決 算 期

に① 財 産 目録 と② 貸 借 対 照 表 の2つ を作 成 す る こ と を要 求 し(商 法33条),ま た株 式 会 社 は 定 期 決 算 の 報 告 書 と して,① 財 産 目録(1974年 の 改 正 商 法 で 除外),

② 貸 借 対 照 表,③ 営 業 報 告 書,④ 損 益 計 算 書,⑤ 準 備 金 及 び利 益 また は利 息 の 配 当 に関 す る議 案 を取 締 役 か ら監 査 役 に提 出 し(商 法281条),さ ら に定 時 株 主 総 会 に提 出 して そ の 承 認 を受 け な け れ ば な らな い(商 法283条)と して い た1)。

企 業 会 計 原 則 の 財 務 諸 表 体 系 に お い て,注 目す べ きこ とは① 財 産 目録 が な い こ

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我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 と そ の 背 景 5

と,② 損 益 計 算 書 中 心 の 財 務 諸 表 体 系 に な っ て い る こ と,③ 剰 余 金 計 算 書 とい う新 しい 計 算 書 を導 入 した こ と で あ る 。 証 券 取 引所 に 株 式 を 上場 して い る株 式 会 社 は,商 法 の 規 定 と証 券 取 引 法 の 規 定(193条)に よ る財 務 諸 表 規 則 に した が っ て 財 務 諸 表 を作 成 しな け れ ば な らな い 。 財 務 諸 表 規 則 に よ る財 務 諸 表 の 体 系 は,企 業 会 計 原 則 の 体 系 を基 準 と し これ に商 法 の 規 定 で 調 整 して,① 貸 借 対 照 表,② 損 益 計 算 書,③ 剰 余 金 計 算 書,④ 剰 余 金 処 分 計 算 書(損 失 金 処 分 計 算 書),⑤ 財 務 諸 表 付 属 明細 表 の5つ と した の で あ る。

商 法 に お い て は,財 産 目録 中 心 の財 務 諸 表 体 系 に な っ て い る の で,財 産 目録 が そ の 中心 に な っ て い る。 つ ま り,商 法 体 系 は,根 本 思 想 と して 財 産 目録 が 決 算 報 告 書 の 作 成 に 先 行 し,財 産 目録 に も とつ い て決 算 が 行 わ れ,そ して貸 借 対 照 表 と損 益 計 算 書 が 作 成 さ れ る仕 組 み に な っ て い る 。 財 産 評 価 に 関 す る 商 法 規 定 は,財 産 目録 作 成 に関 す る 規 定 と して 考 え られ て い る。 こ の 考 え方 は,商 法 が 大 陸式 の 体 系 を取 り入 れ た こ と に よる もの で あ り,そ の 根 底 に は債 権 者 保 護 の 必 要 性 か ら財 産 の 真 実 な 表 示 を重 視 す る こ と に あ る 。 しか し なが ら,財 産 目 録 に よる 財 産 の真 実 な表 示 は,事 実 上 不 可 能 で あ り,理 論 的 な 欠 陥 を もっ て い る とい わ な け れ ば な ら な い。 今 日 の大 企 業 にお い て,決 算 期 に す べ て の財 産 の 実 地 棚 卸 を実 施 し,こ れ を正 し く評 価 す る こ とは,事 実 上,不 可 能 で あ る 。 会 社 の報 告 書 につ い て み て も 「 財 産 目録 は,貸 借 対 照 表 の 資 産,負 債 の部 と同 じ で あ る か ら こ れ を省 略 す 」 の 形 に お い て,財 産 目録 は 事 実 上 無 視 さ れ て い るの が 実 情 で あ る。 英 米 の 慣 行 に お い て は,財 産 目録 は 財 務 諸 表 の体 系 に は存 在 し ない の で あ る2)。

こ の よ う な実 務 慣 行 や 損 益 計 算 思 考 の 会 計 理 論 を 考 慮 して,経 済 安 定 本 部 企 業 会 計 基 準 審 議 会 は,1951年9月 に 「商 法 と企 業 会 計 原 則 との調 整 に 関 す る意 見 書 」(中 問 報 告)に お い て,「 財 産 目録 の廃 止 」を提 言 し た の で あ る。つ ま り, 商 法33条 の 規 定 に よれ ば,商 人 は 開業 の 時 及 び毎 年1回 一 定 の 時期 に,会 社 は 成 立 の時 及 び 毎 決 算 期 に,財 産 目録 及 び 貸 借 対 照 表 を 作 成 す る こ と に な っ て い

1)片 野 一 郎 『新 稿 簿 記 精 説 』(同 文 舘,1968年10月),426‑8頁 。 2)山 下 勝 治 『企 業 会 計 原 則 の 理 論 』(森 山 書 店,1958年2月),34‑6頁 。

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た。 しか し,開 業 貸 借 対 照 表 と決 算 貸 借 対 照 表 とは,企 業 会 計 上 い ち じる し く 性 格 を異 に して い る 。 前 者 は,開 業 財 産 目録 か ら作 成 され るが,決 算 貸 借 対 照 表 は 開業 貸 借 対 照 表 の ご と く,財 産 目録 か ら作 成 す る こ とが で きな い 。 決 算 貸 借 対 照 表 は,継 続 企 業 の 見 地 か ら会 計 帳 簿 に も とつ い て 企 業 の財 政 状 態 と経 営 成 績 を 明 らか にす る た め に,損 益 計 算 書 と関 連 して作 成 され る の で あ る。 した が っ て,開 業 の と きに お け る計 算 書 類 と決 算 の と きに お け る計 算 書 類 と は,会 計 上 の性 質 を異 に して い る の で あ る。

1962年 の 改 正 商 法 に お い て も,財 産 目録 は,従 来 と同 じ よ う に 決 算 書 類 に属 して お り,た だ 取 締 役 が 総 会 に提 出 して 承 認 を 求 め る書 類 の なか か ら除 外 さ れ た に す ぎ な い の で(283条1項),こ の 点 に お い て,会 計 理 論 の 立 場 か らは不 十 分 な も の で あ っ た3)。 そ こで,企 業 会 計 審 議 会 は,1969年12月 に 「商 法 と企 業 会 計 原 則 との 調 整 に つ い て」 に お い て,「 株 式 会 社 監 査 制 度 改 正 要 綱 案 」 に よ る監 査 制 度 の 円滑 な実 施 を確 保 す る た め に は,商 法 と証 券 取 引 法 との 会 計 基 準 を一 致 させ る こ と に よ り,両 監 査 の 実 質 的 な 一 元 化 を 図 る こ と を要 望 した の で あ る 。 こ の よ う な 要 望 を受 け て,1974年 の 改 正 商 法 に お い て は,「 商 業 帳 簿 ノ 作 成 二 関 ス ル 規 定 ノ 解 釈 二付 テ ハ 公 正 ナ ル会 計 慣 行 ヲ斜 酌 ス ベ シ」(32条2項)

とい う規 定 を新 設 し,両 者 の 会 計 基 準 を一 致 させ よ う と した の で あ る 。 そ の 結 果,財 産 目録 は,決 算 の た め に作 成 す べ き計 算 書 類 か ら除外 さ れ(281条1項), ま た貸 借 対 照 表 は 会 計 帳 簿 に も とづ き作 成 さ れ る こ と に な っ た の で あ る 。 財 産 目録 が 廃 止 さ れ た こ と に と も ない,重 要 項 目 につ い て は,脚 注 と財 務 諸 表 付 属 明 細 表 で補 足 す る 方 法 を とっ た の で あ る 。

つ ぎに注 意 す べ き点 は,財 務 諸 表 の体 系 にお い て,損 益 計 算 書 を最 初 に 記 載 しそ の後 に貸 借 対 照 表 を配 列 して い る が,こ れ は財 務 諸 表 に お け る損 益 計 算 書 の 重 要 性 を示 す もの で あ る。 株 主 や 債 権 者 な ど の利 害 関 係 者 は,企 業 の収 益 状 態 が どの よ う に な っ て い る か に 重 要 な 関 心 を持 っ て い る。 した が っ て,企 業 会 計 の 目的 は,根 本 的 に は企 業 の獲 得 利 益 を確 定 す る こ とで あ り,財 産 計 算 は そ

3)田 中 誠 二 『全 訂 会 社 法 詳 解 』(下 巻)(頸 草 書 房,1976年8月),759‑60頁 。

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我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 とそ の 背 景

7 の従 属 的 意 義 を もつ に す ぎ な い の で あ る。 少 な くと も,現 在 の 会 計 制 度 にお い て は,財 産 の 正 確 な計 算 的 確 定 は 不 可 能 で あ り,期 間利 益 を確 定 す る こ とに 中 心 目標 が 置 か れ て い る の で あ る。

第3は 財 務 諸 表 の体 系 に新 し く導 入 さ れ た剰 余 金 計 算 書 で あ り,こ の 計 算 書 は ア メ リ カ の 会 計 実 務 の な か に育 っ た も の と考 え られ,ま た この 考 え 方 は,確 か に 企 業 会 計 の 近 代 化 を促 進 す る もの と して歓 迎 す べ き思 想 で もあ る 。 剰 余 金

(surplus)概 念 は,そ の 源 泉 か ら区 分 して 損 益 取 引 か ら生 ず る 剰 余 金 と資 本 取 引 か ら生 じる剰 余 が あ る 。 前 者 は,原 則 と して 利 益 と して 処 分 す る こ とが で きる の に対 して,後 者 は始 め か ら資 本 そ の もの の 領 域 に属 す る も の で あ るか ら 利 益 の概 念 か ら区 別 し,そ し て そ の 処 分 は原 則 と して 禁 止 した こ とで あ る。 こ の よ う に,企 業 会 計 原 則 で は 新 し く剰 余 金 概 念 を 導 入 し,損 益 取 引 と資 本 取 引 を 区分 す る と と も に,利 益 剰 余 金 と資 本 剰 余 金 を 区 分 す る 原 則 を確 立 した の で あ る 。 そ して 前 者 に は 「 利 益 剰 余 金 計 算 書 」,後 者 に は 「資 本 剰 余 金 計 算 書 」 を用 意 し,両 者 を 総 合 した の が 「 剰 余 金 計 算 書 」 で あ る。 そ の 結 果,従 来 の損 益 計 算 書 は二 分 され,当 該 期 聞 の営 業 損 益 計 算 を行 う もの と し て の 「 損 益 計 算 書 」 と剰 余 金 計 算 を行 う もの と して の 「 利 益 剰 余 金 計 算 書 」 が 作 成 さ れ る こ と に な っ た と考 え られ る4)。

さ て 商 法 は,従 来,計 算 書 類 の 様 式 に つ い て は何 も規 定 して い なか つ た 。1938 年 の商 法 中 改 正 法 律 施 行 法49条 で 「 株 式 会 社 ノ財 産 目録,貸 借 対 照 表 及 ヒ損 益 計 算 書 ノ 記 載 方 法 其 ノ他 ノ様 式 ハ 命 令 ヲ以 テ 之 ヲ定 ム 」 と規 定 し たが,そ の 後 長 くこ の 法 的 措 置 は と られ て い な か っ た 。 と こ ろ が,1963年4月 の計 算 書 類 規 則 で は,株 式 会 社 の 貸 借 対 照 表 と損 益 計 算 書 の記 載 内 容 を規 定 し た の で あ る。

そ こ で,商 法 の 計 算 書 類 規 則 と企 業 会 計 原 則 との 問 に考 え方 の相 違 が 表 面 化 し, 両 者 の調 整 が 大 きな 問 題 に な っ て きた の で あ る。

4)山 下 勝 治 『 前 掲 著 』,36‑9頁 。

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2.損 益 計算 書 の 理 論 と その構 造

2‑1損 益 計 算 書 の 理 論

損 益 計 算 書 は,企 業 の 経 営 成 績 を表 示 す る一 つ の 財務 諸 表 で あ り,経 営 者 の み な らず 利 害 関係 者 に とっ て も重 要 な会 計 情 報 で あ る 。 損 益 計 算 書 の 構 造 につ い て は,当 期 業 績 主 義(CurrentOperatingPerformanceConcept)と 包 括 主 義(All‑inclusiveConcept)の 二 つ の 考 え方 が あ る。 損 益 計 算 書 は,一 会 計 期 問 に属 す る収 益 と これ に対 応 す る費 用 を 差 引 い て純 損 益 を計 算 す る。 つ ま り, 収 益 費用 の 対 応 に お い て は,収 益 に対 して 直 接 に そ の 原 因 とな る 費 用 を対 応 さ せ る の で あ るか ら,こ の 考 え 方 を徹 底 す れ ば,損 益 計 算 書 は 当期 の 経 営 活 動 の 成 果 の み を正 し く反 映 しな け れ ば な らな い こ と に な る 。 そ こ で,当 期 の損 益 に 直 接 関係 の ない 臨 時 損 益 項 目や 前 期 損 益 修 正 項 目は,当 期 の損 益 計 算 書 か ら除 くと い う主 張 が 生 ま れ る。 こ の よ う な考 え 方 に よ っ て作 成 さ れ る 損 益 計 算 書 が 当 期 業 績 主 義 損 益 計 算 書 で あ る 。 した が っ て,当 期 業 績 主 義 に お け る損 益 計 算 書 は,当 期 の 正 常 な 経 営 活 動 に 関 す る報 告 と正 常 な純 損 益 を決 定 す る こ と をそ の 本 質 とす る。 そ して 正 常 な経 営 活 動 以 外 の 原 因 に よ る損 益,つ ま り当期 の 損 益 に直 接 関 係 の な い 臨 時 損 益 項 目や 前 期 損 益 修 正 項 目 は,す べ て これ を損 益 計 算 書 か ら除外 し て利 益 剰 余 金 計 算 書 に記 載 す る こ とに な る。 こ れ に対 して,当 期 に発 生 した す べ て の 収 益 とす べ て の費 用 を対 応 させ て 純 損 益 を 計 算 す る の が 包 括 主 義 損 益 計 算 書 で あ る。

当期 業 績 主 義 は,い つ ご ろ か ら主 張 さ れ そ の 理 論 的根 拠 は ど こ にあ る の で あ ろ うか 。 佐 藤 孝 一 教 授 に よ れ ば,当 期 業 績 主 義 につ い て は,ア メ リ カ会 計 士 協 会(AmericanInstituteofAccountants:AIA)が1941年12月 に 発 表 し た 「 会 計研 究 公 報 」 第8号 で あ り,そ れ が 特 に 明確 に な っ た の は1948年10月 に発 表 し た 公 報 第35号 「 損 益 お よ び利 益 剰 余 金 の 表示 」 で 重 要 な 異 常 項 目 を除 外 した 当 期 正 常 損 益 を収 容 す る 損 益 計 算 書 を作 成 し,正 常 な収 益 力 の 明示 に役 立 つ こ と を 明 ら か に し た の で あ る。 当 期 業 績 主 義 は,ア メ リ カ 公 認 会 計 士 協 会

(AmericanInstituteofCertifiedPublicAccountanst:AICPA)のAPB

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我 が 国 に お け る デ ス ク ロー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 とそ の 背 景 9

(AccountingPrinciplesBoard)が1966年12月 に 意 見 書 第9号 「Reporting theResultsofOpinions」 を公 表 す る まで 主 張 して い た もの で あ り,SHM「 会 計 原 則 」 も当 期 業 績 主 義 を基 調 に して い る 。 我 が 国 で は,1949年 の 企 業 会 計 原 則 と財 務 諸 表 規 則 で あ り,学 者 で は 黒 沢 清 教 授 が 代 表 的 な 主 張 者 で あ る5)。 当 期 業 績 主 義 は,こ の よ う に多 くの 支 持 を受 け て い たが,そ の 理 論 的 根 拠 は ど こ に あ る の で あ ろ う か。 佐 藤 教 授 は,そ の理 論 的 根 拠 と して,つ ぎの6つ を あ げ て い る。 つ ま り,① 損 益 計 算 書 は 企 業 の正 常 な 収 益 力 を明 確 に表 示 す べ きで あ る 。② 会 計 報 告 書 の重 点 は一 般 の投 資 大 衆 に お か な け れ ば な らな い 。 ③ 異 常 項 目は 長 期 観 察 の も とに お い て も必 ず し も平 均 化 しな い 。④ 恣 意 的 な 要 素 が 介 入 した り,操 作 の 行 わ れ る 余 地 は 決 し て多 くは ない 。 ⑤ 損 益 計 算 書 の 作 成 に そ れ ほ ど手 数 を要 し な い。 ⑥ 同 一 基 盤 に立 っ て の 比 較 分 析 が 容 易 に行 わ れ る こ とで あ る 。 こ の よ う な理 論 的 根 拠 の な か で 最 も重 要 な もの は,正 常 な 収 益 力 の 表 示 で あ る。 現 在 お よ び将 来 の 投 資 者 は,当 該 企 業 の 収 益 力,配 当 可 能 性 や 将 来 の 発 展 性 につ い て の 情 報 に 大 きな 関 心 を持 っ て い る。 収 益 力 を測 定 す る場 合,正 常 な 経 営 活 動 か ら生 じる 期 間 的収 益 と期 間 的 費 用 を対 応 して正 常 な純 損 益 を計 算 す る。 当期 の 損 益 に 直 接 関 係 の な い 臨 時 損 益 項 目や前 期 損 益 修 正 項 目は,当 該 年 度 に 限 っ て 発 生 し,今 後 も繰 り返 して発 生 す る可 能 性 も乏 しい の で,将 来 の 収 益 を構成 す る要 素 とは 考 え られ な い。 した が っ て,こ れ らの 期 間外 損 益 項 目は,損 益 計 算 書 か ら除 外 して別 個 の 利 益 剰 余 金 計 算 書 に記 載 す るの が 合 理 的 で あ る 。

包 括 主 義 の 起 源 は,SHM「 会 計 原 則 」 に よ れ ば1914年 で あ り,ま た1930年 代 に お け る剰 余 金 の 修 正 に関 す る不 当 な会 計 処 理 が 頻 発 し た こ とか ら,1933年

3月 のAccountingReviewに 「 損 益 計 算 書 の 純 利 益 は,配 当 か ら生 じ る もの を 除 き一 期 間 中 の す べ て の 変 化 を 利 益 剰 余 金 に表 示 す べ き で あ る 」 と い う論 説 が 発 表 さ れ て い る。 ま た ア メ リ カ 証 券 取 引 委 員 会(AmericanStockEx‑

changeCommissionn:SEC)や ア メ リ カ 会 計 学 会(AmericanAccounting

5)黒 沢 清 『 近 代 会 計 学 』(春 秋 社,1960年3月),193‑203頁 。

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Association:AAA)は,従 来 か ら包 括 主 義 を支 持 して お り,SECは1950年2 月 の 改 正 準 則 で 当期 業 績 主 義 へ の 歩 み 寄 りを見 せ て い るが,そ の 基 調 は 依 然 と し て 包 括 主 義 で あ る 。AICPAのAPBは,1966年12月 に 意 見 書 第9号

「ReportingtheResultofOperations」 を 公 表 し ,包 括 主 義 に ほ とん ど近 い 見 解 を 明 らか に して い る 。 そ こ で,意 見 書 第9号 の 要 点 を列 挙 す る と,つ ぎの よ うに な る。 つ ま り,① 一 般 に認 め られ た会 計 原 則 を継 続 的 に準 拠 し,経 営 成 績 を 表 示 す る事 業 は,こ の 処 理 方 法 に よ っ て 財 務 諸 表(損 益 計 算 書 お よ び留 保 利 益 計 算 書 ま た は 結 合 計 算 書)を 作 成 す る。 ② 当 該 期 間 に 認 識 さ れ た す べ て の 損 益 項 目 は,純 損 益 計 算 に 含 め る と と も に期 間 外 損 益 項 目で あ る異 常 項 目 と前 期 損 益 修 正 項 目を 区 別 し,そ して異 常 項 目 は そ の 性 質 を 明 示 して 区 分 表 示 しな け れ ば な ら な い。 ③ 異 常 項 目 と考 え られ る事 象 お よ び取 引 の 性 格 を 究 明 し,そ し て こ れ らの う ち で 当 期 の異 常 項 目 とす る合 理 的 か つ 実 行 可 能 な基 準 を 明 らか に す る。 この 異 常 項 目決 定 基 準 は,異 常 性 と主 要 性 の 観 点 か ら相 当 厳 格 に規 制 し て い る の で,こ れ ま で異 常 項 目や 臨 時 損 益 と して 損 益 計 算 書 か ら除 外 して い た も のが 正 常 項 目や 経 常 項 目 と して損 益 計 算 書 に 記 載 さ れ る こ と に な る。 ④ 前 期 損 益 修 正 項 目 と考 え られ る 各 種 形 態 の 修 正 に つ い て 究 明 し,そ して これ らの う ちで 当期 の 修 正 項 目 とす る合 理 的 か つ 実 行 可 能 な 基 準 を 明 らか に す る。 こ の 前 期 損 益 修 正 基 準 は,き わ め て 厳 格 に規 制 さ れ て い るの で,経 営 者 以 外 の 人 々 に 依 存 す る 未 確 定 事 項 が 少 な くな り,ま た こ れ ま で 前 期 損 益 修 正 項 目の 典 型 的 な 事 例 とみ られ て い た 固 定 資 産 の 見 積 残 余 耐 用 年 数 の 変 更 な ど も 除外 され る こ と に な る。 ⑤ 財 務 諸 表(損 益 計 算 書 お よび 留 保 利 益 計 算 書 また は結 合 計 算 書)の 用 語,様 式 な らび に 異 常 項 目 と前 期 損 益 修 正 項 目が 存 在 す る と きの 表 示 方 法 を 示 した。 ⑥ 二 期 間 以 上 に わ た る比 較 財 務 諸 表 上 に お け る異 常 項 目 と前 期 損 益 修 正 項 目の処 理 方 法 を明 らか に し,さ ら にす で に 公 表 さ れ た損 益 計 算 書 の 修 正 に あ た っ て の 必 要 な 明 示 事 項 を示 し,異 常 項 目 と前 期 損 益 修 正 項 目に よ っ て影 響

を受 け る展 望 目的 ・統 計 形 式 の 要 約 財 務 諸 表 の作 成 を推 奨 した の で あ る。

他 方,佐 藤 教 授 は,包 括 主 義 の 理 論 的 根 拠 と し て,つ ぎの6つ を あ げ て い る 。

つ ま り,① 企 業 の 収 益 力 は 数 期 間 の 平 均 値 を み な け れ ば 正 確 に は測 定 で きな い 。

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我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 とそ の 背 景

ヱヱ

② 正 常 項 目 と異 常 項 目 と を明 確 に 区 分 す る こ と は必 ず し も容 易 で は ない 。 ③ 異 常 項 目 も長 期 的 にみ れ ば 平 均 す る し,損 益 計 算 書 は完 全 な 歴 史 的 記 録 で な け れ ば な ら ない 。 ④ 一 般 の 投 資 家 は単 に 損 益 計 算 書 上 の 純 損 益 に よ っ て 判 断 す る 可 能 性 が 多 い 。 ⑤ 損 益 計 算 書 の 作 成 お よ び理 解 に便 利 で あ る 。 ⑥ 当期 業 績 主 義 に よ る と収 益 力 を 過 大 に表 示 す よ う な 印 象 を与 え る こ とで あ る。 そ の な か で,① の企 業 収 益 力 に つ い て,株 主 の最 も大 きな 関心 事 の 一 つ は,将 来 の 収 益 力 の 測 定 で あ る 。 収 益 力 は,当 期 業 績 主 義 の よ う に単 に過 去 の 一 会 計 期 問 を観 察 した だ け で は 不 十 分 で あ り,数 期 間 の収 益 状 態 を観 察 す れ ば 一 会 計 期 間 につ い て の 異 常 損 益 項 目や 前 期 損 益 修 正 項 目 も平 均 化 さ れ る こ と に な る6)。 した が っ て, 一 会 計 期 間 の損 益 は ,そ の 項 目 の 内 容 に よ っ て 損 益 計 算 書 と利 益 剰 余 金 計 算 書

に 区分 され る必 要 も な くな り,ま た 異 常 損 益 項 目や 前 期 損 益 修 正 項 目 を見 過 ご す こ と もな くな る の で あ る 。

2‑2損 益 計 算 書 の 構 造

当期 業 績 主 義 と包 括 主 義 の 意 義 や そ の 理 論 的根 拠 は,上 記 に述 べ た と お りで あ るが,我 々 は こ の 問 題 を どの よ うに 理 解 し,そ し て我 が 国 の 場 合 どの よ うに 解 釈 した ら よ い の で あ ろ うか 。 こ の 点 を検 討 す る に あ た っ て は,図 表1の 区 分 式 包 括 主 義 損 益 計 算 書 が 有 効 な 資 料 と な る7)。 さ て,当 期 業 績 主 義 は,当 期 に お け る経 常 的 な経 営 成 績 を 明 らか に す る た め に,当 期 に発 生 した損 益 の う ち 経 常 的 な損 益 項 目 の み で 当期 純 利 益 を 計 算 す る。 した が っ て,臨 時 的 ・偶 発 的損 益 項 目お よ び前 期 損 益 修 正 項 目 は,損 益 計 算 書 と は別 に作 成 さ れ る 利 益 剰 余 金 計 算 書 に 記 載 さ れ て 当 期 未 処 分 利 益 が 計 算 さ れ る 。 こ の よ う に 当期 業 績 主 義 で は,損 益 計 算 に 関 す る財 務 諸 表 は 二 つ に分 割 され る。 そ れ に対 して,包 括 主 義 は,当 期 に 発 生 した す べ て の 損 益,つ ま り臨時 的 ・偶 発 的 損 益 項 目お よ び前 期 損 益 修 正 項 目 を も含 め て 当期 純 利 益(税 引 前 当期 純 利 益)を 計 算 す る の で あ る 。

6)佐 藤 孝 一 稿 「当 期 業 績 主 義 と 包 括 主 義 」山 下 勝 治 責 任 編 集 『近 代 会 計 学 大 系ll』(損 益 計 算 論)(中 央 経 済 社,1969年6月),243‑67頁 。

7)横 山和 夫 『法 規 会 計 』(税 務 経 理 協 会,1993年4月),213‑25頁 。

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図表1企 業 会計 に お ける損益 計算 書 の変遷

(単 位:万 円) 1949年 制 定 当 時 1963年 一 部 修 正 1982年 一 部 修 正 損 益 計 算 書

〔 営 業 損 益 計 算 〕 1売L高10,000

H売 上 原 価7,000 売 上 総 利 益3,000 販 売 費 及 び一 般

皿2 管 理 費 ,200

営 業 利 益800

〔 純 損 益 計 算 〕 IV営 業 外 利 益200

当 期 総 利 益1,000 V営 業 外 費 用500

当 期 純 利 益500

損 益 計 算 書

〔 営 業 損 益 計 算 〕 1売 上 高10.000 H売 上 原 価7,000

売 上 総 利 益3,000 販 売 費 及 び一 般 皿

管 理 費2・200 営 業 利 益800

〔 純 損 益 計 算 〕 W営 業 外 収 益200

当 期 総 利 益1,000 V営 業 外 費 用500

当 期 純 利 益500

損 益 計 算 書

〔 営 業 損 益 計 算 〕 1売h高10.000

H売 上 原 価7,000 売 上 総 利 益3,000 販 売 費 及 び 一 般 皿 管

理 費2・200 営 業 利 益800

〔 経 常 損 益 計 算 〕 IV営 業 外 収 益200 V営 業 外 費 用500 経 常 利 益500

〔 純 損 益 計 算 〕 VI特 別 利 益150 田 特 別 損 失200

税 引前 当 期 純 利 益450 法 人税 及 び 住 民 税225 当 期 純 利 益225 前 期 繰 越 利 益100 中 間 配 当積 立 金55 取 崩 額

中 間 配 当 額50 利 益 準 備 金 積 立 額5

当期 未 処 分 利 益325

剰 余 金 計 算 書

利益 剰余金計算書

・ 鶉禦秦処分利益 …

・ 螺 益剰余金 …

繰越利益剰余 金100

・ 灘 益剰余 金 ・5・

繰越利益剰余 金2001V 減少高

繰越利益剰 余金50 期末残高 V当 期 純 利 益500

当期未処分 利益550 剰余金

資本剰余金計算書 1資 本 準 備 金120 11再 評 価 積 立 金30 皿 その他の資本剰 余金150

次期繰越資 本剰300 余金

前期繰越資 本剰280 余金

当期資本剰 余金20 増加高

当期資本剰 余金300 減少高

利益剰 余金計算書 前 期未処分利益1600 剰 余金

前 期利益剰余金500H処 分額 繰越利益剰余金100 繰 越利益剰余金 皿175増 加高

繰 越利益剰余金2151V 減少高

繰越利益剰余金60 期末残高 V当 期 純 利 益500

当期未処分利益560 剰余金

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我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 とそ の 背 景 13

区 分 式 包 括 主 義 損 益 計 算 書 にお い て は,図 表1で 明 らか な よ う に,当 期 業 績 主 義 の 当期 純 利 益 は 経 常 利 益 で 示 さ れ て お り,ま た 未 処 分 利 益 勘 定 の 当 期 未 処 分 利 益 は 両 者 の 金 額 が 同 じに な る。 した が っ て,包 括 主 義 損 益 計 算 書 は,当 期 の 経 営 成 績 を表 示 す る だ け で な く処 分 可 能 期 問損 益 を も表 示 す る の で,包 括 主 義 の ほ うが優iれて い る と結 論 づ け る こ とが で きる で あ ろ う。

先 に述 べ た よ う に,1949年 の 企 業 会 計 原 則 で は,損 益 計 算 書 は 当期 業 績 主 義 を基 礎 に お い て い た も の と考 え られ る 。 しか し,横 山教 授 は,こ の企 業 会 計 原 則 が 必 ず し も 当期 業 績 主 義 に 固 執 した もの で な い と し て,つ ぎの よ う に述 べ て い る。 す な わ ち,剰 余 金 は,資 本 取 引 に よ る資 本 剰 余 金 と損 益 取 引 に よ る利 益 剰 余 金 か ら構 成 さ れ て い る 。 これ らの 剰 余 金 の変 動 は,剰 余 金 計 算 書 の な か で 資 本 剰 余 金 と利 益 剰 余 金 を 区 別 して記 載 し,独 立 した 利 益 剰 余 金 計 算 書 が 存 在 した わ け で わ な い 。 そ の場 合,損 益 計 算 書 に利 益 剰 余 金 の 明 細 を記 載 す る剰 余 金 区 分 を 設 け,ま た 貸 借 対 照 表 に資 本 剰 余 金 の 明細 を記 載 す る こ と も認 め られ て い た(損 益 計 算 書 原 則7)。 した が っ て,損 益 計 算 書 は 「 損 益 計 算 書 お よ び 利 益 剰 余 金 結 合 計 算 書 」と し て一 元 化 す る こ と も可 能 で あ っ た と主 張 して い る。

1954年 の修 正 で は,剰 余 金 計 算 書 の 区 分 項 目の 名 称 を改 め て 利 益 剰 余 金 計 算 と 資 本 剰 余 金 計 算 に した の で あ る。 そ して1963年 の修 正 で は,剰 余 金 計 算 書 か ら 資 本 剰 余 金 計 算 が 削 除 さ れ る こ と に な り,そ れ に と も な い剰 余 金 計 算 書 の 名 称

も利 益 剰 余 金 計 算 書 と な る 。 他 方,財 務 諸 表 規 則 で は,実 質 的 に利 益 剰 余 金 計 算 書 で あ る もの につ い て も,そ の 名 称 を 修 正 しな い で 剰 余 金 計 算 書 と して い た の で,両 者 の 間 で名 称 上 の混 乱 が み られ た の で あ る。

商 法 は,1963年 に 商 法 規 則 を制 定 して 損 益 計 算 書 を一 元 化 し,会 計 理 論 上 の

包 括 主 義 損 益 計 算 書 よ り もそ の 範 囲 を広 く して,株 主 総 会 で 処 分 さ れ るべ き当

期 未 処 分 利 益 を算 定 す る よ うな 損 益 計 算 書 の 構 造 に した の で あ る。 実 務 にお い

て は,商 法 規 則 に した が っ て 損 益 計 算 書 を作 成 す る よ う に な っ た こ とか ら,会

計 学 者 の 問 で も 当期 業 績 思 考 が 後 退 して い くの で あ る。1974年 の 企 業 会 計 原 則

の 一 部 修 正 で は,商 法 規 則 と の調 整 とい う こ とで そ の 思 考 を全 面 的 に取 り入 れ,

利 益 剰 余 金 計 算 書 を廃 止 す る こ と に な る 。 企 業 会 計 原 則 の修 正 に と もな い,財

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務 諸 表 規 則 も同 じ よ う な修 正 を した の で,会 計 上 の 損 益 計 算 書 の 構 造 は 一 元 化 さ れ,当 期 業 績 主 義 損 益 計 算 書 は実 務 界 か ら姿 を消 す こ とに な り,当 期 業 績 主 義 と包 括 主 義 の議 論 に も終 止 符 が 打 た れ た の で あ る。

しか し,商 法287条 ノ2の 引 当 金 の 規 定 は,利 益 留 保 性 引 当 金 の 設 定 を 許 容

す る こ とに な る の で,1974年 の 注 解14で は 「 負 債 性 引 当 金 以 外 の 引 当金 を計 上

す る こ とが 法 令 に よ って 認 め られ て い る と き は,当 該 引 当金 の 繰 入 額 又 は 取 崩

額 を税 引 前 当 期 純 利 益 の 前 に特 別 の 科 目を 設 け て記 載 し,税 引 前 当期 利 益 を表

示 す る」 と した の で あ る。 こ の 点 につ い て,1982年 の 改 正 商 法 で は,会 計 理 論

の 考 え方 を 受 け入 れ て 一 部 修 正 した こ とに と もな い,企 業 会 計 原 則 の注 解18で

は 「 商 法287条 ノ2の 引 当 金 は 費 用 また は損 失 の 見 積 額 に 限 られ る 」 と し,旧

注 解14を 削 除 した の で あ る。 こ の 修 正 につ い て,企 業 会 計 審 議 会 は,1982年4

月 に 「 負 債 性 引 当 金 等 に係 る企 業 会 計 原 則 注 解 の 修 正 に関 す る解 釈 指 針 」 で,

つ ぎの よ うに 述 べ て い る。 つ ま り,修 正 前 の 企 業 会 計 原 則 注 解14は 「 負 債 性 引

当金 以 外 の 引 当 金 を計 上 す る こ とが 法 令 に よ って 認 め られ る場 合 に は,当 該 引

当金 残 高 を負 債 の 部 に 記 載 す る」 旨 を定 め て い たが,こ の 規 定 は,企 業 会 計 原

則 が負 債 性 引 当 金 以 外 の 引 当金 の 計 上 を容 認 す る趣 旨 に よ る もの で は な く,商

法287条 ノ2の 規 定 の 解 釈 上,負 債 性 引 当 金 に該 当 し な い い わ ゆ る利 益 留 保 性

引 当金 の 計 上 が 適 法 な もの と して 認 め られ る の で あ れ ば,企 業 会 計 原 則 上,証

券 取 引 法 監 査 と商 法 監 査 の 一 元 化 の 観 点 か ら,こ の種 の 引 当金 の 計 上 を認 め ざ

る を得 ない と判 断 した こ と に よ る もの で あ る 。 しか しな が ら,今 回 の 商 法 の 改

正 に よ り,い わ ゆ る利 益 留 保 性 引 当 金 の 計 上 は す べ て排 除 さ れ た の で,も は や

こ の よ う な注 解 を存 置 す る必 要 性 は 認 め られ な くな っ た 。 これ が 同 注 解 を 削 除

す る こ と と した理 由 で あ る 。 こ の よ う に,商 法 上 の 利 益 留 保 性 引 当 金 が な くな

っ た こ と に と もな い,損 益 計 算 書 の な か の 特 定 引 当 金 項 目が 削 除 され,現 在 の

損 益 計 算 書 の 構 造 が で き た の で あ る。 つ ま り,損 益 計 算 書 原 則 二 で は,「 損 益

計 算 書 に は,営 業 損 益 計 算,経 常 損 益 計 算 及 び 純 損 益 計 算 の 区分 を 設 け な け れ

ば な ら な い 。 」 と し,さ らに こ れ を補 足 す る形 でDに お い て 「 純 損 益 計 算 の 結

果 を 受 け て,前 期 繰 越 利 益 等 を記 載 し,当 期 未 処 分 利 益 を計 算 す る 。 」 と した

(13)

我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の展 開 とそ の 背 景 15

の で あ る。 した が っ て,図 表1が 示 す よ う に,現 在 の 損 益 計 算 書 の 構 造 は,経 常 利 益 で 当期 業 績 主 義 の 利 益,税 引 前 当期 純 利 益 で包 括 主 義 の 利 益,そ して 当 期 未 処 分 利 益 で 商 法 の 配 当可 能 利 益 を表 示 す る とい う我 が 国特 有 の 計 算 構 造 が で きあ が っ た の で あ る 。 筆 者 は,我 が 国 の 包 括 的 な損 益 計 算 書 の 計 算 構 造 が 世 界 的 にみ て も きわ め て優 れ た もの で あ る と考 え て い る 。

さて 金 融 商 品 は,2000年4月1日 か ら時 価 評 価 が 実 施 さ れ た こ とに と も な い,

「 資 産負 債 ア プ ロー チ 」 に よ る会 計 処 理 で認 識 され る 時価 評 価 損 益 を含 め た 包 括 一利 益 概 念 が 新 た に 登 場 して き た 。 ア メ リカ で は,FASBは1997年6月 に FAS第130号 「ReportingComprehensiveIncome」 を 公 表 し,1997年12月15 日か ら包 括 利 益 計 算 書 の 作 成 を義 務 づ け た 。 イ ギ リ ス で は,ASBは1992年10 月FRS第3号 「ReportingofFinancialPerformance」 を 公 表 し,1993年6月 22日 以 降 に 終 了 す る 会 計 年 度 か ら総 認 識 利 得 損 失 計 算 書(StatementofTotal RecognisedGainsandLosses)の 作 成 を 義 務 づ け た 。 ま た 包 括 利 益 概 念 に も とつ く財 務 業 績 報 告 は,IASCや 国 際 的 ワ ー キ ン グ グ ル ー プ で あ るG4+1で も議 論 され た の で あ る。

包 括 利 益 概 念 を 導 入 す る場 合,包 括 利 益 の 報 告 様 式 に つ い て は,つ ぎ の3つ が 考 え られ る。

① 単 一 の業 績 計 算 書 にす べ て の 包 括 利 益 項 目を 表示 す る 「 拡 張 損 益 計 算 書 」 方 式

② 損 益 計 算 書 と は 別 に包 括 利 益 計 算 書 を作 成 す る 「 第2の 損 益 計 算 書 」 方 式

③ 持 分 計 算 書 の な か で 包 括 利 益 計 算 を 表 示 す る 「 持 分 変 動 計 算 書 」 方 式 こ の よ う な枠 組 み を も と に して,各 国 の包 括 利 益 報 告 様 式 を類 型 化 して み れ ば,図 表2の よ う に な る8)。 下 記 の よ う に,包 括 利 益 の 報 告 様 式 に つ い て は, 業 績 概 念 の 相 違 か ら現 在 の と こ ろ ま だ 国 際 的 に は 統 一 さ れ て い な い 。 我 が 国 に お い て も,包 括 利 益 導 入 が 問 題 に な っ て くる が,そ の場 合 に は業 績 概 念 そ の も

8)荻 原 正 佳 稿 「包 括 利 益 概 念 の 日本 へ の 導 入 に 関 す る論 点 」 『企 業 会 計 』(53巻7号) (中 央 経 済 社,2001年7月),25‑9頁 。

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図表2包 括 利益 の報 告様 式

拡張損益計算書 第2の 損益 計算 書 持分変動計算書

米 国 ○ ○ ○

英 国

×

×

IAS ×

○ ○

G4+1

× ×

○:採 用 ×:不 採 用

の を検 討 し我 が 国 の実 情 に あ っ た 様 式 を選 択 す べ きで あ ろ う。

3.連 結 財 務 諸 表

3‑1連 結 財 務 諸 表 の制 度 化 と そ の 背 景

我 が 国 企 業 の 資 金 調 達 そ の 他 経 営 活 動 の 多 角 化,国 際 化 の 進 展 に と も な い, 証 券 取 引 法 に 基 づ くデ ス ク ロ ー ジ ャー 制 度 を め ぐ る環 境 は 著 し く変 化 して い る。 こ の よ う な環 境 の 変 化 に 対 応 す る た め に,企 業 会 計 審 議 会 は,投 資 家 に対 して 企 業 実 態 を適 正 に 反 映 し た 的 確 な情 報 を 提 供 す る 必 要 が あ る との 観 点 か ら,現 行 デ ス ク ロ ー ジ ャ ー制 度 の 一 層 の 改 善 ・充 実 を図 る た め,1986年7月24 日の 総 会 に お い て,つ ぎの事 項 につ い て 第1部 会 及 び 同小 委 員 会 を設 け て 審 議 検 討 を行 う こ と を 決 定 した。

(1)連 結 財 務 諸 表 の 取 扱 い (2)資 金 繰 り情 報 の 改 善 (3)セ グ メ ン ト情 報 の 充 実 (4)四 半 期 報 告 書 の 導 入

この 決 定 に も とづ き,企 業 会 計 審 議 会 第1部 会 小 委 員 会 は,こ れ らの事 項 に

つ い て 鋭 意 審 議 を重 ね て,1986年10月 「 証 券 取 引 法 に 基 づ くデ ス ク ロ ー ジ ャー

制 度 に お け る財 務 情 報 の 充 実 に つ い て」(中 間報 告)を 公 表 し,具 体 的 な 制 度

化 また は制 度 の 見 直 しへ と進 ん で い っ た で あ る。 そ れ で は,ま ず 連 結 財 務 諸 表

(15)

我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の展 開 と そ の 背 景

ヱ7

か ら取 り上 げ る こ と に しよ う。

連 結 財 務 諸 表(ConsolidatedFinancialStatements)は,支 配 従 属 関 係 に あ る 二 以 上 の 会 社 か らな る企 業 集 団 を単 一 組 織 体 と み な して,親 会社 が 当該 企 業 集 団 の 財 政 状 態 お よ び経 営 成 績 を 総 合 的 に報 告 す る た め に作 成 され る もの で あ る(連 結 原 則 第 一)。 しか し,連 結 財 務 諸 表 は,企 業 会 計 原 則 に お け る 財 務 諸 表 の 体 系 に含 まれ な い が,証 券 取 引 法 に 基 づ く企 業 内 容 開示 制 度 の 一 環 と して, 1977年4月1日 以 降 に 開 始 す る事 業 年 度 か ら導 入 さ れ た の で あ る 。 こ の連 結 財 務 諸 表 導 入 の 必 要 性 に つ い て は,経 済 発 展 に と も な い 企 業 の 集 団化 現 象 が 著 し くな り,当 該 企 業 集 団 を構 成 す る個 々 の 法 的 実 体(LegalEntity)の 財 務 諸 表 だ け で は 投 資 情 報 と して は不 十 分 とな り,支 配 従 属 関係 に あ る企 業 集 団 を一 つ の会 計 単 位 と した 経 済 的 実 体(EconomicEntity)の 財 政 状 態 お よ び経 営 成 績 を 明 らか にす る こ とが 重 要 に な っ て きた か らで あ る。

つ ぎ に ア メ リ カ,イ ギ リス,そ して 我 が 国 に お け る 連 結 財 務 諸 表 の 制 度 化 過 程 に つ い て,簡 単 にみ て い き た い。 ア メ リカ に お い て は,ア メ リ カ会 計 士 協 会 (AmericanInstituteofAccountants:AIA)が1916年 に 設 立 さ れ た と きか ら 連 結 財 務 諸 表 の 制 度 化 を提 唱 し,証 券 諸 法 に お け る連 結 財 務 諸 表 原則 の 確 立 に 大 き な役 割 を果 た して きた 。 例 え ば,AIAで は1934年 の 会 計5原 則 「Audit ofCorporationAccountants」,AICPAで は1959年 の 会 計 研 究 公 報 第51号

「ConsolidatedFinancialStatements」 で あ る。 他 方 ,1933年 の証 券法 で は, SECに 登 録 届 出 をす る 企 業 は,原 則 と して 個 別 財 務 諸 表 と連 結 財 務 諸 表 を提 出 す る こ と に な っ て い た。 しか し,親 会 社 の個 別 財 務 諸 表 の 添 付 が ほ と ん ど無 意 味 で あ る と きに は,親 会 社 の個 別 財 務 諸 表 を省 略 す る こ とが で きた の で あ る。

イギ リス に お い て は,ロ ン ドン証 券 取 引 所 が1939年 に持 株 会 社 の 新 規 登 録 に あ た っ て は 連 結 財 務 諸 表 を提 出 す る こ と を要 求 し,1948年 の 会 社 法 で は グ ル ー

プ ・ア カ ウ ン トと して 明 文 化 され た の で あ る9)。

我 が 国 にお け る 連 結 財 務 諸 表 の 制 度 化 は,1955年 代 後 半 に 子 会 社 取 引 を通 じ

9)兼 子 春 三 『連 結 財 務 諸 表 制 度 論 』(有 斐 閣,1969年12月),10‑3頁 。

(16)

た粉 飾 決 算 に よ る倒 産 が 大 き な社 会 問 題 に な っ た こ とで あ る。 つ ま り,我 が 国 経 済 は,1955年 代 に入 っ て か ら高 度 経 済 成 長 政 策 を と り1959年 に は 岩 戸 景 気 と な り,多 くの企 業 が 設 備 投 資 を大 き く拡 大 して い つ た。 しか し,1962年 の秋 頃 か らオ リ ンピ ッ ク に と もな う大 型 投 資 も衰 え を み せ は じめ,経 済 は 不 況 の 谷 間 へ と落 ち込 ん で い っ た の で あ る。 例 え ば,1962年 に は6社,1963年 に は4社 倒 産 し,そ して1964年 に は 山 陽 特 殊 製 鋼 の72億 円 とい う 巨 額 の 粉 飾 決 算 に よ る 倒 産 が 発 覚 し た の で あ るlo)。 当 時,山 陽 特 殊 製 鋼 事 件 を は じめ と し て,多 くの 企 業 倒 産 が 頻 発 し,そ の 原 因 の多 く は親 子 関係 にあ る企 業 集 団 の な か で の不 正 経 理 に よ る もの で あ る こ とが 明 らか と な っ た 。 つ ま り,親 子 会 社 相 互 間 で の 架 空 の売 買,架 空 の債 権 債 務 を記 録 す る こ と に よっ て 利 益 を仮 装 して 違 法 配 当 を 行 い,つ い に は企 業 を破 綻 させ る こ とが 多 か っ た の で あ る 。 そ こ で,大 蔵 大 臣 は,こ の よ う な粉 飾 決 算 を 防 止 す る に は監 査 体 制 を どの よ う に 強化 す べ きか に つ い て,1965年3月 に企 業 会 計 審 議 会 に対 して 諮 問 を した の で あ る 。 こ れ を 受 け て企 業 会 計 審 議 会 は,連 結 財 務 諸 表 制 度 の 問 題 をた だ単 に支 配 従 属 関 係 に あ る企 業 の 監 査 に寄 与 す る(粉 飾 決 算:筆 者 加 筆)と い う観 点 か らだ け で な く, 財 務 諸 表 制 度 の充 実 改 善 とい う広 い視 野 か ら審 議 を重 ね,1967年5月 「 連 結 財 務 諸 表 に 関 す る意 見 書 」 を 公 表 し,連 結 財 務 諸 作 成 に 関す る基 準 を 示 し た。 そ の 後,1970年12月 に証 券 取 引 審 議 会 は,「企 業 内 容 開示 制 度 の 整 備 改 善 に つ い て 」

とい う要 望 書 を大 蔵 大 臣 に提 出 し,そ の な か で 連 結 財 務 諸 表 の 早 期 採 用 を勧 告 した の で あ る。 また 衆 議 院 大 蔵 委 員 会 で は,1971年2月12日 に証 取 審 の 意 見 に も とつ い く証 券 取 引 法 改 正 案 の 審 議 に 関 連 して,連 結 財 務 諸 表 の制 度 化 を要 望 す る付 帯 決 議 を した の で あ る 。 そ の付 帯 決 議 の 内 容 は,最 近 にお け る 資 本 取 引 自 由化,証 券 市 場 の 国 際 化 の す う勢 に 対 応 し,政 府 は,本 法 の 運 用 に あ た っ て 投 資 者 保 護 につ き一 層 留 意 す る と と も に,左 記 事 項 につ い て 更 に検 討 を行 うべ き こ と を要 望 した の で あ る 。 つ ま り,投 資 者 に 対 す る企 業 内 容 開示 の 趣 旨 を 一 層 徹 底 す るた め,有 価 証 券 届 出 書,同 報 告 書 等 の 開 示 書 類 に関 し,連 結 財 務 諸

10)日 本 公 認 会 計 士 協 会 東 京 会 編 『粉 飾 決 算 』(第 一 法 規,1976年5月),13頁 。

(17)

我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 と そ の 背 景 19

表 制 度 の 採 用,監 査 基 準 の 整 備 を 図 る こ とで あ る。 大 蔵 大 臣 は,こ の よ う な証 取 審 の 意 見 や 衆 議 院 大 蔵 委 員 会 の要 請 を考 慮 して,証 取 法 にお い て 連 結 財 務 諸 表 を 制 度 化 す る 意 思 決 定 を 行 い,1971年6月 に 再 度,企 業 会 計 審 議 会 に 対 して 連 結 財 務 諸 表 の制 度 化 に つ い て の 諮 問 を行 っ た の で あ る。

他 方,諸 外 国 に お い て は,イ ギ リス は1947年 の 会 社 法,ド イ ツ は1965年 の 株 式 法 で 連 結 財 務 諸 表 を制 度 化 して い る 。 ま た 国 際 会 計 基 準 委 員 会 は,こ れ ま で も 国 際 間 の 会 計 基 準 統 一 化 の 一 環 と して 連 結 会 計 を と りあ げ,1971年6月 国際 会 計 基 準 第3号 「 連 結 財 務 諸 表 」 を 公 表 し た の で あ る11)。 こ の よ う な状 況 の も と で,企 業 会 計 審 議 会 は,1975年6月 「 連 結 財 務 諸 表 の制 度 化 に 関 す る意 見 書 」お よび 「 連 結 財 務 諸 表 原 則 」を 公 表 し,さ らに 日本 公 認 会 計士 協 会 は,1976 年3月 「 連 結 財 務 諸 表 作 成 要 項 」 を発 表 し て,連 結 財 務 諸 表 原 則 を具 体 的 に適 用 す る うえ で の 諸 手 続 を示 した の で あ る。 連 結 財 務 諸 表 は,こ の よ うな 過 程 を も と に,我 が 国 で も1977年4月1日 以 降 に 開始 す る 事 業 年 度 か ら導 入 され る こ と に な っ た の で あ る 。

連 結 財 務 諸 表 の 制 度 化 に と もな い,連 結 財 務 諸 表 が 主 要 な 財 務 諸 表 か そ れ と も補 足 的 な 財 務 情 報 か とい う こ とが 問 題 に な っ て きた 。 イ ギ リス,ド イ ツ にお い て は,企 業 集 団 の親 会 社 は,親 会 社 の個 別 財 務 諸 表 の ほか に 親 会 社 連 結 財 務 諸 表 を作 成 しな けれ ば な ら な い と して い る の で,そ れ は 添 付 書 類 で は な い 。 ア メ リ カ に お い て は,原 則 と して 連 結 財 務 諸 表 だ け を提 出 す れ ば よい こ とに な っ て い る。 しか し,我 が 国 にお い て は,1975年6月 の連 結 財 務 諸 表 原 則 で は,当 初,個 別 財 務 諸 表 を補 足 し て企 業 集 団 に 関 す る財 務 情 報 を提 供 す る観 点 か ら, 有 価 証 券 報 告 書 及 び有 価 証 券 届 出書 の 添 付 書 類 と した 。しか し,1986年10月 「 証 券 取 引 法 に基 づ くデ ス ク ロー ジ ャ ー 制 度 に お け る財 務 情 報 の 充 実 に つ い て」(中

間報 告)に お い て は,現 行 の 連 結 財 務 諸 表 は不 十 分 で あ る と して,つ ぎ の よ う に述 べ て い る 。 つ ま り,そ の 内容 につ い て は,企 業 集 団 に係 る説 明 等 連 結 財 務 諸 表 に付 随 した 情 報 の 開 示 は何 ら行 わ れ て お らず,有 価 証 券 報 告 書 等 に お け る

11)黒 沢 清 稿 「連 結 財 務 諸 表 の 制 度 化 に 関 す る意 見 書 の 公 表 に 当 た っ て 」『企 業 会 計 』

(27巻10号)(中 央 経 済 社,1975年8月),1‑4頁 。

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商 学 討 究 第54巻 第2・3号

位 置 づ け に つ い て も,個 別 財 務 諸 表 の 補 足 情 報 で あ る とい う観 点 か ら添 付 書 類 と され て い る な ど,必 ず し も十 分 な 開 示 が 行 わ れ て い る と は言 い 難 い との指 摘 が あ る と して い る。 そ こで,1997年6月 「 連 結 財 務 諸 表 制 度 の見 直 しに 関 す る 意 見 書 」 に お い て は,我 が 国企 業 の 多 角 化 ・国 際 化 が急 速 に進 展 し,ま た我 が 国証 券 市 場 へ の 海 外 投 資 家 の増 加 な ど,企 業 の 経 営 環 境 の 変 化 に伴 い,企 業 の 側 に お い て は 連 結 経 営 を重 視 す る 傾 向 が 強 ま る と と もに,投 資 者 の 側 か らは, 企 業 集 団 の抱 え る リス ク と リ タ ー ン を的 確 に判 断 す る た め,連 結 情 報 に対 す る ニ ー ズ が 一 段 と高 ま っ て きて い る 。 この よ うな 状 況 を 考 慮 し て,従 来 の 個 別 財 務 諸 表 を 中心 と した デ ス ク ロ ー ジ ャー か ら連 結 情 報 重 視 の デ ス ク ロ ー ジ ャー へ の 転 換 を図 る た め に,有 価 証 券 報 告 書 及 び有 価 証 券 届 出 書 にお け る 記 載 順 序 を 従 来 の 個 別 ・連 結 の 順 序 か ら連 結 ・個 別 の順 序 へ 変 更 した の で あ る 。 そ して 本 格 的 な 適 用 は,企 業 側 の 受 け入 れ 準 備 や 関 係 各 方 面 の 準 備 作 業 の 必 要 か ら,1999 年4月1日 以 降 に 開 始 す る 事 業 年 度 か ら実 施 され る こ とに な っ た の で あ る。

我 が 国 で 連 結 財 務 諸 表 が 制 度 化 され た こ とに と も な い,税 法 で は 連 結 納 税 制 度,商 法 で は連 結 財 務 諸 表作 成 義 務 規 定 と連 結 財 務 諸 表 に も とつ く配 当 の 問 題 が 生 じて くる。 ア メ リカ お い て は 連 結 納 税 制 度 は 認 め られ て お り,イ ギ リス に お い て は 会 社 法 で 連 結 財 務 諸 表 の作 成 と グ ル ー プ ・ア カ ウ ン トの 開示,そ して ドイ ツ に お い て は株 式 法 で 連 結 決 算 書 類 の 作 成 を義 務 づ け られ て い る 。 こ れ ら の 点 に つ い て,我 が 国 で は,ど の よ う に考 え た ら よ い の で あ ろ う か 。

そ れ で は,連 結 納 税 制 度 を取 り上 げ る こ とに した い。 連 結 納 税 制 度 は,連 結

範 囲 に含 まれ て い る す べ て の 企 業 を 一 つ の 納 税 義 務 者 とす る も の で あ る。 ア メ

リ カ で は,1917年 に 第 一 次 世 界 大 戦 の 戦 費 調 達 を 目的 と して 導 入 し,そ の後,

イギ リス,フ ラ ンス,ド イ ツ を は じめ,多 くの 国 が 導 入 して い る。 我 が 国 に お

い て は,連 結 納 税 制 度 は,内 部 利 益 の 相 殺 や 利 益 と損 失 の 相 殺 な どか ら課 税 所

得 が 減 少 し,法 人税 収 入 が 減 少 す る こ とか ら,税 務 当局 は 連 結 納 税 制 度 の 導 入

に対 して き わ め て 消 極 的 で あ っ た 。 しか し,2002年5月 「 法 人 税 等 の 一 部 を改

正 す る 法 律 案 」 が 成 立 し,2002年4月1日 遡 っ て 適 用 さ れ る こ と に な った の で

あ る。この よ うに,連 結 納 税 制 度 が早 急 に導 入 され た の は ど う して で あ ろ う か 。

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我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 と そ の 背 景 2ヱ

伊 藤 教 授 は,そ の 理 由 と し てつ ぎの2つ を あ げ て い る 。 ① 我 が 国 にお け る グ ル ー プ連 結 経 営 へ の対 応 で あ る 。1999年 か ら連 結 決 算 中 心 主 義 へ 移 行 し,我 が 国企 業 は,親 会 社 の決 算 を優 先 した 経 営 か ら グ ル ー プ全 体 の 企 業 価 値 を最 大 化 す る 経 営 モ デ ル へ の移 行 を余 儀 な くさ れ た 。そ う した 経 営 モ デ ル の変 化 へ の対 応 が, と りわ け 経 済 界 か ら求 め られ て い た こ とで あ る。② 税 制 の 国 際 的調 和 化 で あ る 。 他 の先 進 国 が す で に 連 結 納 税 を導 入 して い る の に我 が 国 が導 入 して い な い と, 我 が 国企 業 は 税 務 戦 略 上 の オ プ シ ョ ンが 制 限 さ れ て 国 際 的競 争 力 の 面 で不 利 な 立 場 に立 た され る こ と に な る か ら で あ る 。 しか し,こ こ で注 意 す べ き点 は,連 結 納 税 制 度 を導 入 した こ とに と も な う法 人 税 収 入 減 を補 う た め に,2%の 付 加 税 を特 例 と して 設 け た こ とで あ る。 つ ま り,連 結 親 会 社 の連 結 事 業 年 度 が2002 年4月1日 か ら2004年3月31日 まで に 開 始 す る と き に は,通 常 の 税 率 に2%の 税 率 を上 乗 せ す る特 例 が あ る の で,企 業 集 団 に よっ て は増 税 に な る と こ ろ も あ る 。 国 税 庁 に よれ ば,2002年9月31日 まで に連 結 納 税 の 承 認 申 請 を した の は, 全 国 で164グ ルー プ に と ど ま っ て い る。 そ し て経 済 界 か ら は付 加 税 が 連 結 納 税 制 度 の 利 用 を妨 げ て い る とい う批 判 が で て い る の で あ る12)。

3‑2連 結 財 務 諸 表 の 利 点 と欠 点

連 結 財 務 諸 表 は,個 別 財 務 諸 表 を基 礎 と し連 結 財 務 諸 表 原 則 に した が っ て 作 成 され る こ と に な っ て い る。 連 結 財 務 諸 表 は,連 結 貸 借 対 照 表,連 結 損 益 計 算 書,連 結 剰 余 金 計 算 書 で 構 成 され て い る 。 つ ま り,連 結 貸 借 対 照 表 は企 業 集 団 の 財 政 状 態,連 結 損 益 計 算 書 は 企 業 集 団 の 経 営 成 績 を表 示 す る こ と に な る。 連 結 財 務 諸 表 は,投 資 者 に対 して 当 該 企 業 集 団 につ い て の 有 用 な 情 報 を提 供 す る と一 般 的 に は い わ れ て い る が,本 当 に そ うで あ ろ うか 。 我 が 国 の 場 合,連 結 財 務 諸 表 は,1950年 代 の 子 会 社 や 関 係 会 社 を 利 用 した利 益 操 作 や粉 飾 決 算 の 防 止 の た め に導 入 され た もの で あ る 。 現 在,連 結 財 務 諸 の 有 用 性 は,内 部 的 に は 親 会 社 中 心 の 経 営 か ら連 結 グ ル ー プ 全 体 の 経 営 を指 向 す る よ う に な っ た と考 え ら

12)伊 藤 邦 雄 『ゼ ミナ ー ル 現 代 会 計 入 門 』(第4版)(日 本 経 済 新 聞,2003年1月),534‑6

頁 。

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れ て い る。 しか し,他 方 に お い て は,業 績 の悪 い 子 会 社 お よび 関 連 会 社 は株 式 を売 却 した り また は整 理 した り して,親 会 社 業 績 に悪 影 響 を 与 え な い よ う に し て い る の が 現 実 で あ る。 連 結 財 務 諸 の 有 用 性 に つ い て の 実 証 分 析13)も あ るが, 分 析 結 果 か らみ れ ば,個 別 財 務 諸 表 と比 較 して有 用 性 が きわ め て 高 い とい え な い よ うに 思 わ れ る 。 した が っ て,筆 者 の 見 解 と して は,連 結 財 務 諸 表 は 利 益 操 作 や 粉 飾 決 算 の 防止 の た め に は 有 用 で あ り,ま た 国 際 協 調 も必 要 な こ とで あ る

と思 っ て い る。

つ ぎに 連 結 財 務 諸 表 の 欠 点 につ い て 考 えて み た い 。 連 結 財 務 諸 表 は,複 数 企 業 の個 別 財 務 諸 表 を総 合 した もの で あ る か ら,そ こ に は判 断 を誤 らせ る よ う な 欠 点 もあ る 。 例 え ば,① 連 結 貸 借 対 照 表 は,親 会 社 の 立 場 か らみ た 企 業 集 団 の 財 政 状 態 を 示 す もの で あ る か ら,連 結 資 産 は 担 保 価 値 が あ り支 払 能 力 が あ る と 考 え られ る 。 しか し,親 会 社 は,子 会 社 の 資 産 に対 す る所 有 権 が ない の で,連 結 資 産 は 支 払 能 力 分 析 にお い て は 限 界 が あ る よ うに 思 わ れ る。 ② 連 結 損 益 計 算 書 は,親 会 社 の 立 場 か らみ た企 業 集 団 の経 営 成 績 を示 す も の で あ るか ら,当 期 純 利 益 は 配 当 金 の源 泉 と考 え られ る。しか し,配 当可 能 利 益 の計 算 につ い て は, 商 法 規 定 で は 個 別 財 務 諸 表 を前 提 に して い る 。この 点 につ い て,伊 藤 教 授 は,「商 法 規 定 に よ り,個 別 財 務 諸 表 上 の 子 会 社 に対 す る投 資 の評 価 は 原 価 法 で 行 わ れ, 持 分 法 を採 用 す る こ とは で きな い 。 個 別 財 務 諸 表 で子 会社 に対 す る 投 資 を 原価 法 で 評 価 し,同 時 に連 結 財 務 諸 表 で 配 当可 能 利 益 を計 算 す る こ とは 理 論 的整 合 性 に欠 け る た め に,受 け 入 れ られ ない で あ ろ う」 と主 張 して い る14)。

この 点 に つ い て,番 場 教 授 は,つ ぎの よ うな興 味 あ る見 解 を示 して い る15)。

つ ま り,連 結 財 務 諸 表 は,個 別 財 務 諸 表 を基 礎 と し連 結 財 務 諸 表 原 則 に した が

13)例 え ば,桜 井 久 勝 稿 「投 資 意 志 決 定 有 用 性 の 連 単 比 較 」『企 業 会 計 』(51巻12号)(中 央 経 済 社,1999年11月),24‑30頁 。野 村 謹 券 金 融 研 究 所 稿 「連 結 財 務 諸 表 の 分 析 ・ 利 用 の 基 礎 知 識 」 『企 業 会 計 』(49巻11号)(中 央 経 済 社,1997年10月 臨 時 増 刊), 34‑59頁 。

14)伊 藤 邦 雄 『前 掲 書 』,525頁 。

15)番 場 嘉 一 郎 ・稲 垣 冨 雄 『連 結 財 務 諸 表 の 解 説 』(中 央 経 済 社,1976年5月),13‑4 頁 。

(21)

我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 と そ の 背 景 23

っ て作 成 され る。 会 計 実 体 の 観 点 か らみ れ ば,個 別 財 務 諸 表 は 法 的 実 体 の概 念 を前 提 とす る報 告 書 で あ る の に 対 して,連 結 財 務 諸 表 は,経 済 的 実 体 の社 会 的 承 認 に も とつ く報 告 書 で あ る と考 え る こ とが で きる。こ こ で 注 意 す べ き こ とは, 経 済 的 実 体 の 存 在 を承 認 した と して も,法 律 上 の 権 利 義 務 の主 体 は 法 的実 体 で あ り,経 済 的 実 体 は権 利 義 務 の 主体 に な る こ とが で きな い こ とで あ る。例 え ば, 経 済 的 実 体 の構 成 要 素 で あ る子 会 社 の 負 債 は,連 結 財 務 諸 表 に 表示 され て い る か ら親 会 社 が 責 任 を負 わ な け れ ば な ら な い で あ ろ うか 。 現 在 の法 律 で は,法 的 実 体 で あ る子 会社 が そ の負 債 の履 行 義 務 者 に な るの で,親 会 社 お よび 他 の子 会 社 に は そ の 負 債 の 履 行 義 務 が な い こ と に な る 。 しか し,形 式 的 に は と もか く, 本 来,法 律 的 な枠 組 み が 絶 対 的 な 条 件 と な る か,経 済 的 な 実 質 関係 が優 先 す る か は,社 会 の 認 識 の しか た にか か っ て い る。 い ま まで は,法 的 枠 組 み が 絶 対 視 され て い た 領 域 の あ る問 題 につ い て も,経 済 的事 実 関 係 が社 会 的 に 反 復 して く る と,社 会 の み か た が 次 第 に変 化 して,遂 に は 形 式 的 な法 律 関 係 よ りも実 質 的 な 経 済 関係 を優 先 す る こ と もあ り うる 。 現 在 の 法 律 で は,配 当 金 は 法 的 実 体 ご と に,各 実 体 と株 主 との 間 に お い て の み 支 払 義 務 や 請 求 権 が あ るが,将 来 は経 済 的 実 体 と し て,各 構 成 会 社 の 全 株 主 に 一 律 に 配 当 金 を支 払 う こ と も可 能 性 と して は あ る で あ ろ う。 こ の よ う に,法 律 上 の権 利 義 務 の 主 体 と実 体 の 関 係 は, 常 に経 済 社 会 の 発 展 に お け る 環 境 の も とで 判 断 され るべ き もの で あ っ て,永 久

に 固 定 的 な 関 係 で考 え るべ きで は な い よ う に思 わ れ る。と もか く,現 行 法 で は, 企 業 の 債 権 債 務 お よび 配 当 は個 別 財 務 諸 表 を前 提 に し な け れ ば な ら な い の で, 連 結 財 務 諸 表 を前 提 と した 収 益 性 お よ び 流 動 性 の分 析 にお い て は 一 定 の 限 界 が

あ る こ とに注 意 しな け れ ば な らな い 。 しか し,将 来,商 法 が 経 済 的 事 実 関係 を

重 視 し経 済 的 実 体 を 認 め る よ うに な れ ば,連 結 財 務 諸 表 の 有 用 性 は 現 在 よ りも

大 き くな る で あ ろ う。

(22)

商 学 討 究 第54巻 第2・3号

4.セ グ メ ン ト情 報

連 結 財 務 諸 表 は,親 会 社 の 立 場 か ら連 結 子 会社 の 個 別 財 務 諸 表 を合 算 して作 成 す る こ とに な っ て い る 。 そ の た め に,親 会 社 を 中心 と した 企 業 集 団 にお け る 将 来 の 収 益 性 を予 測 す る に は,連 結 財 務 諸 表 だ け で は不 十 分 で あ り,ど う して も企 業 集 団 を構成 す る 各 セ グ メ ン トの 情 報 が 必 要 に な っ て くる の で あ る。 セ グ メ ン ト情 報 とは,売 上 高,売 上 総 損 益,営 業 利 益,経 常 利 益 そ の他 の 財 務 情 報 を事 業 の 種 類 別,親 会 社 及 び 子 会 社 の所 在 地 別 等 の 区分 単 位(セ グ メ ン ト)に 分 別 した もの で あ る。 こ の セ グ メ ン ト情 報 は,連 結 集 団 に 関 す る財 務 情 報 と し

て親 会社 が 開示 す る も の で あ る。 セ グ メ ン ト情 報 の 開 示 は,1988年5月 に企 業 会 計 審 議 会 の 「セ グ メ ン ト情 報 の 開示 に 関 す る意 見 書 」 と 「 セ グ メ ン ト情 報 の 開示 基 準 」 を公 表 し,1989年4月1日 以 降 に 開始 す る事 業 年 度 か ら実 施 され る こ とに な った の で あ る。 そ れ で は,セ グ メ ン ト情 報 開 示 は,ど の よ うな 経 過 で 実 施 さ れ る よ う に な っ た か に つ い て,ア メ リ カ,イ ギ リ ス,そ して 我 が 国 につ い て概 観 して み た い16)。

ア メ リ カ にお い て は,巨 大 企 業 の 出現 は 企 業 合 併 に よ る と ころ が 大 きい の で あ る。 合 併 形 態 を み る と,1950年 に は垂 直 的 ま た は水 平 的 統 合 が60%以 上 で あ るの に対 して1968年 に は10%以 下 に な り,相 互 に全 く無 関 係 な 企 業 合 併 が 著 し く増 加 し,コ ング ロマ リ ッ ト企 業(ConglomerateCompany)と よば れ る 巨 大 企 業 が 出現 した の で あ る。 コ ング ロマ リ ッ ト企 業 は,一 般 に多 角 経 営 企 業 と訳 され て れ る 。 この コ ン グ ロ マ リ ッ ト企 業 は,異 種 企 業 を合 併 ま た は 買 収 に よ り 規 模 を拡 大 して 大 きな 経 済 力 と市 場 支 配 力 を 持 つ よ うに な っ て い っ た 。 ク レ イ トン法 で は,企 業 の垂 直 的 ま た は 水 平 的 統 合 や 買 収 は規 制 で きる が,し か し異 種 企 業 の合 併 や 買 収 は規 制 す る こ とが で きな い 。 そ こ で,連 邦 商 業 委 員 会 は, 1965年 頃 か ら公 正 な市 場 競 争 を乱 す お そ れ の あ る コ ング ロマ リ ッ ト企 業 を規 制

し よ う と動 き始 め た の で あ る 。1964年4月 にRJLong上 院 議 員 は,ク レ イ トン

16)拙 稿 「セ グ メ ン ト別 報 告 書 の 生 成 過 程 とそ の 背 景 」 『商 学 討 究 』(27巻1号)(小

樽 商 科 大 学,1976年7月),32‑47頁 。

(23)

我 が 国 に お け る デ ス ク ロ ー ジ ャ ー 制 度 の 展 開 と そ の 背 景 25

法 の修 正 議 案 「 関 係 会 社 と取 引 して い る企 業 は,売 上 高 や 売 上 原 価(項 目別 に), 営 業 利 益 お よ び純 利 益 を報 告 し な け れ ば な ら な い 。 」 を提 出 し た。 この 議 案 の 公 聴 会 は,上 院 の 司 法 委 員 会 の 反 トラ ス ト ・独 占 に 関 す る小 委 員 会 「 産 業 集 中

に影 響 を 及 ぼ す 吸 収 合 併 お よび そ の諸 要 因 」 で行 わ れ た の で あ る。

公 聴 会 の なか で特 に注 目す べ き証 人 と して は,P.RDixon(Chairmanofthe FederalTradeCommission)とJ.Dirlam(ProfessorofRhodeIslandUni‑

versity)で あ る。Dixonは,か か る 開 示 は 垂 直 的 統 合 企 業 だ け で な く,コ ン グ ロマ リ ッ ト企 業 に も要 求 す べ きで あ る 。 そ して か か る企 業 の 詳 細 な財 務 情 報 は,市 場 に新 規 参 入 者 を導 入 し競 争 を促 進 して 独 占力 を弱 め た り,ま た独 占行 為 の取 締 機 関 に 問 題 領 域 を 洞 察 させ る とい う 目 的 に も役 立 つ と述 べ て い る。

Dirlamは,証 券 取 引 法 を 改 正 し て 事 業 部 別(divisions)や 製 品 種 類 別 (productlines)の 売 上 高 お よび 営 業 利 益 の 開 示 が 行 政 当 局 や 投 資 者 に と っ て 必 要 で あ る と して,つ ぎの よ うに 述 べ て い る。 つ ま り,① 我 々 が か か る情 報 を 持 っ て い れ ば,企 業 の競 争 戦 略 を適 切 に評 価 で きる よ う に な る 。② 我 々 が 主 要 企 業 の 製 品種 類 別 利 益 の み で な く売 上 高 に つ い て の情 報 も持 た な い で,そ の 領 域 の 仕 事 を して い る 。 しか し,我 々が か か る情 報 を持 っ て い れ ば,法 案 の提 出 や 政 策 変 更 に つ い て の合 理 的 な判 断 をす る こ とが で き る。 ③ 平 均 的 な投 資 者 は, か か る情 報 に も とづ きい て 産 業 で は な く企 業 そ れ 自体 の 行 動 を 評価 し,適 正 な 意 思 決 定 を す る こ とが で き る。 以 上 の よ うな 公 聴 会 の 証 言 か ら も明 らか な よ う に,コ ン グ ロ マ リ ッ ト企 業 につ い て の セ グ メ ン ト情 報 は,行 政 当 局 か らの不 公 正 競 争 の 取 締 りと資 本 提 供 者 か らの 合 理 的 な 意 思 決 定 に必 要 な情 報 で あ る 。

APBは,か か る公 聴 会 の 議 論 や 学 者 の 意 見 を も と に して,1967年9月 に 「コ

ング ロマ リ ッ ト企 業 の補 足 的 財 務 情 報 の 開示 」に つ い て の特 別 報 告 書 を 公 表 し,

そ の なか で コ ン グ ロ マ リ ッ ト企 業 は 自社 の 実 態 を慎 重 か つ 客 観 的 に 検 討 し,産

業 別(industrysegments)に 補 足 的 財 務 情 報 を 自発 的 に 開示 す る よ う勧 告 し,

ま た さ ら に 調 査 研 究 を した う え で 最 終 的 な 公 式 意 見 を発 表 す る と し て い た 。

SECは,APBの 特 別 報 告 書,NAAやFEIの 調 査 報 告 書 お よ び イ ギ リス の 会

社 法 等 を検 討 し,証 券 諸 法 に も とつ くコ ング ロマ リ ッ ト企 業 の 開示 要 件 の拡 大

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