9 74 金沢大 学十全医学 会雑 誌 第9 7巻 第5 号 974−9 8 8く1 9 紬コ
肉月重細 胞に対する温熱 . 化 学療法併用 効 果 の基 礎 的研 究
金沢大学 医学 部整 形外科 学講 座 く主任二野村 進 数 粉
骨 竹 康 雄
く昭和6 3年1 0月1 7 日受 付う
温 熱 療 法は, 単 独にあるい は他の治療 法と併用 し て癌の治療に応用 さ れつ つあ る. しかし, 四 肢 の骨 軟 部 肉腰に対し て は実 験 的にも臨 床 的にも報 告が少な く, 未だに 一 般 的な治 療 法と な って いない . 本 研 究で は, 肉 腫細 胞の温 熱 感 受 性な ら びに温 熱と制癌 剤と の併用に対す る感 受 性を調べ − 四肢の骨 軟 部 肉腫への温熱 療 法およ び温 熱 化 学 療 法の導入の可 能性を検 討す ること を目 的と し た■ 材 料と しては肉 腫株 細 胞3株 くO S T株, H T .1 0 8 0軌 SL1 8 0掛 と臨 床 新 鮮 材 料3 臓 体を 用いた■ 効 果 判定には臨床 効 果 との相 関 性が高い制 癌 剤 感受 性 試 験と し て注目さ れ ている hu m a n tu m o r clo n oge nic a s s ay くH T C Al を更に当教 室で改 良し た C ultiv ated H T C A を 用いた. 細 胞 浮 遊 液を恒 温 槽にて加 温し同 時に制 癌斉陀 接 触さ せ る と, 株 細 胞で は温 度 く3 70C へ4 50Cうの 上昇, 加温時 間 く3 0分へ2 4 0 別 の延 長と と もに細 胞生 存 率は低 下し た. 3 株の Ar rhe niu s プロ ッ ト を比 較す る と O S T 株リ H T−1 0 8 0株に比べ S−1 8 0株の温 熱 感 受 性は低値を 示 し た. 制 癌 剤と温 熱と を併用 し た場 合, ア ド リ アマイシ ン くadria m ycin, A D Ml 一 シ スプ ラ チン くcis−platin u m ,C D D Pl, サ イ クロ フ ォ ス フ ァマイ ドくcyclopho spha mide,C P Al で は相 乗
効果を認め, ビンク リスチン くvin c ristin e,V C R,では相 加 効 果を認め た. ま た その効 果 発 現の温 度は株
細胞お よ び制 癌剤によ り多 少 異なった. 臨 床 新 鮮 材料で感 受 性 判 定 可 能で あっ た 2 7検 体に お いて コ ロ
ニ ー 形成 抑 制 率を み る と, 4 20C加 温と制 癌 剤と を併 用し た場 合, 各制 癌 剤と も制 癌 剤 単 独の場 合と比べ
有 意にコ ロ ニ ー 形成 抑 制 率が高まっ た くp く0.0 5うー 43DC加 温と制 癌 剤との併用 の場合で は併用効 果は4 2
8C加 温の場合と比べ更にコ ロ ニ ー形 成 抑 制 率が高まった くp く0.0 5ト 以上 よ り, 温 熱 療 法, 特に制 癌 剤 と併用し た温熱 化 学 療 法は肉 腫細 胞に おいて も有 意な殺 細 胞 効 果が認め ら れ 了加温方 法の問題が解 決さ れ れば臨 床 応用にも充 分な期 待が もてる ものと考え ら れ た.
K ey w o rds bo n e a nd s oft tis s u e s a r c o m a, hu m a n tu m o r clo n oge nic a s s ay,hy pe rthe r mia,the r m o s e n sitivit y,the r m o che m o s e n sitiv−
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近 年, 温 熱 療 法を単 独にあ るいは他の治 療 法と併用 し て悪性 腫 瘍の治療に用いること が注目さ れ, 実 験 的
.臨 床 的に多く の報告が な さ れつ つあ る. し か し 四肢 の骨 軟 部悪性 腫 瘍 く肉 掛 に対し て は,
一 見, 温 熱療
法が行い易いと 思 わ れ るにもかか わ らずほ と ん ど 用い ら れ ていない . その大き な 理由は特に四肢の長 管 骨で は, 骨 皮 質の電 気抵 抗が高いた めに深 部にま で有 効な 加 温が得ら れ ない こと や, 骨 髄 腫 内は血 液 環 流が豊 富 で熱が奪わ れ有 効な温 度を維 持でき ない こと, ま た 四
肢の骨 軟 部 肉 腫は 症例 数が少ないた め 温熱療 法そのも のの有 効 性を 示 す ま と まった 基礎デー タ ー が ない こ と な どによ る と思わ れ る. 一方, 骨 軟 部 肉 腫の 予後は最 近の強 力な化 学 療 法の導入によ り し だい に改善さ れつ
っあ る が, 制 癌 効果を期 待す る あ ま り薬 剤の投 与息 投 与 期 間を増すことにな り, その副 作用のため投 与中 止 を余 儀な く さ れ ること も多い . し た がっ て, 制 癌剤 の抗 腫 瘍 効 果を減 弱させること な く その投 与崖 を肖順 す ることの可 能な他の治 療 法との併用療 法の研 究が 望
A b br e viatio n s こ A D M , adria m ycinニ C D D P , Cis−platin u 町 C x T , c o n c e ntr atio n−tim e pr odu ct i C P A , CyCloph o sph a mideニ E D T A , ethyle n edia min etetr a a c etic a cid i F C S, fetal
c alf s e r u 町 H I, he at−in a ctiv atedニ H T C A , hu m a n tu m o r clo n oge nic a s s ay 三 M F H ,
肉腫細 胞に対す る温 熱一 化 学 療 法併用効 果
ま れ ている.
当 教室の T omi ta らl ,は. 骨 軟 部 肉腫に対す る制癌 剤感受性 試験と し て, H a mbu rge r ら2 Iによ る Hu m a n
Tu m o r C lo n oge nic As s ay くH T C AJ を改 良し た
c ultiv ated H T C A を開発 し, これ が臨 床との相 関 性 の高い方 法で あ ること を実証 し た.
そこで著 者は, こ の C ultiv ated H T C A を 用い, 肉 腫培 義株 細 胞お よ び肉腫臨床 材 料に対す る温 熱 感受性 を温 熱と制 癌 剤と を併用 し た場 合の感受性と 比べ, 温 熱化 学療 法が骨 軟部 肉腫に対す る新しい治 療 手段の 一
つと な り う るか ど うか につ いて検 討し た. 材 料およ び 方 法 王. 材 料
実験に使用 し た材 料は, 株 細 胞と して 当 教 室で樹 立, 継 代培 養さ れ ていると 卜骨 肉腫 由 来の培 養 細 胞 くO S T 株3り と,
ヒト線 維 肉 腫 由 来の培 養 細 胞 田T − 10 8 0 株ヤ1 くFlo w Labo r ato rie s, N o rth Ryde,
Au str aliaJ な ら びに ,
マ ウス肉腫由 来の培 養細 胞 くS− 1 8 0 株5り げlo w Labr ato rie sl であ る. ま た臨 床 新 鮮 材料と し て は 過去2 年間に当 教 室にて 生検な ら びに手 術にて得ら れ た骨 軟 部 肉腫 3 8検 体を 用し1た. その内訳 は, 骨 肉腰1 1例, 軟 骨 肉腰 6 例, 悪性 線 推 性 組 織 球 腫 5例, 脂 肪 肉腫 5 例,
ユ ー イング肉腫3 例, 平 滑 筋 肉 腫 2 例, 悪性 神 経 鞠脛 2 例, 悪性 骨 巨細 胞腫, 横 紋 筋 肉腫, 類上皮 肉 腫, 滑 膜 肉腫各1 例であ る.
H . 株 細 胞の培養 条 件及 び単 離 細 胞 浮 遊 液の調 製法 株細 胞は, プラ スチック製フラス コ くC o ming, 東 京,
辞2 5,10 0 ま た は群25,1101 内で1 5%he at−in a cti.
V ated くH Il fetalc alf s e r u m CF C Sl およ び1 %ペニ
シリン. ストレプトマイシ ン くpe nicillinlstr ep to my− Cin s olutio n,P S 1 10,0 00 u nits くG i bc o, Ne w Y o rk,
U S A l を含む Ro s w ell Pa rk M e mo rial In stitute
Med ia−1640 くR P M r−ユ64 0j 培 養 液を 伺いて 単層 培 養 維 持を続け た. これ を温 熱処 理 ならびに制 癌 剤と接触さ せる際には, 0.025% ト リ プシ ンと O .0 2%ethyle n e−
diami n etetr a a c etic a cid ほ D T Al によ り単離 細 胞 浮遊液の状 態にして用いたく図1 ト
m . 臨 床新 鮮 材 料からの単 離細 胞 浮 遊 液の調 製法 腫瘍 材 料を P S を含む培 養 液 仁M cCoy,s 5A くG ib−
C OI w a shj 内で , でき る だ け速やか に無 菌 的にハ サミ で細切 し た. その後, 酵 素カ クテル しHa nk,s bala n−
9 75
C ed s alt s olut io n くG ibc oj + コ ラゲ ナ ー ゼ t y pe I くS igm a, St. Lo uis, U S A l O .2 m gノml, D N a s e くS igm al O .2m gJ
lml, プロナ ー ゼ く科研 製 薬, 東 京1 0.5m gノmlj にて 3 70C , 3 0分 間処理 し た後, ステン レ ス製メッシュ く鮒 メッシ ュI にて材 料を ろ過し て単 離 細 胞 浮 遊 液を作 成し た.
肉腫 細 胞は H T C A においてコ ロ ニ ー 形 成 率が低い という欠点を補う た めに, 肉腫細 胞を 一 旦単 層 培 養 系
に 移 行して c ell populatio n を増 加さ せ た う え で H T C A を行った くc ultiv ated H T C Al . ま ず単 離腫 瘍 細 胞を 一 旦 プラ スチック製フラスコ 内に5 Xl O3旬 5
Xl O4個 播 種し, R P M I.16 4 0 培 養 液 く1 5% H I−F C S + 1 %P Sl を 用い て,3 70Cで単 層 培 養し た. 1 へ 2 回 の 継 代 培 養によ り腫 瘍 細 胞がシー ト状になった時 点で, 0,0 2 5%ト リ プシ ンと 0.0 2%E D T A によ り再び単 離 細 胞 浮遊 液を作 成し た く図1J .
1 V. 腫瘍 細 胞に対する温熱 処理 法
Il . 工I工に て得ら れ た浮遊 細 胞を 3 X lO6 個ノml の細 胞 浮 遊 液と し, これの0.5ml に0.15ml の制 癌 剤ま た
は対照液と して の生 理的 食 塩 水と McCoy
,
s 5 A
W a Sh O.8 5 ml を加え キャ ッ プ付 試 験 管 くCo r ning,
せ2 5 3川 中で恒温槽 B T−2 3 型 くヤマ ト科 乳 東 京, 温 度 調 節 精 度士0.02 へ0.0 80CJ 浸浴に て加温を行っ た.
加 温の温 度 範 囲は, 株 細 胞で は3 7 ん430C のl OC毎に く温 熱 単独で は3 7へ450Cン, 臨 床材 料では 4 20Cおよ び 430Cの2 点と し た . ま た加 温の時 間は. 株 細 胞で は 3 0,6 0, 12 0 ,1 8 0,240 分間と し, 臨 床 材料で は6 0分 間 と し た■ なお恒 温 槽に入 れ た後 試 験 管 内の浮 遊 液が 4 3
0Cに達す るには約5 分間を要し た.
V ト腫瘍 細胞 と制 癌 剤との接触 及 び 温熱との併用方 法
使用 し た制 癌 剤は, 骨 軟部 肉腫の化 学療 法に頻用 さ れてい るアド リアマイ シ ン くadria mycin,A D M J . シ ス プ ラ チ ン くcis−platin u m ,C D D P l, サ イク ロ フォ ス フ ァ マイ ドくcyclopho spha mide,C P Al , ビ ン クリス チン くvin c ristin e, V C R l であ る. Ma sked c o m .
po u nd で あ る C P A は 活 性 型 4.hydr ope r o xy
CyClopho spha mide く40 H−C P Al を 用いた. 制癌 剤 濃 度は, 通 常 臨 床 的に投 与さ れ た時の最 高血 中 濃度およ び C x T くc o n c e ntr atio n−tim e pr odu ct, 血 中 濃 度と時 間の横1 の約1 0%と し た. す な わ ち A D M O.04 JLgノml, C D D P O.2 0JL glml, C P A 3 .0 0 m align a ntfibrous histio cy to m a三 40 H −C P A ,4−hydr ope r oxy cyclopho spha midei P E, plating efficie n cy 三 P S, pe nicillin−Strep tO m yCin s olutio nニ R P M IN1 640
, R o s w ell Pa rk M e m o rial In stitute M edia−1 64 0 三V C R
, Vin c ristin e.
97 6
E stab Iished C eII Lin e s O S T
く1 つ H T −1 0 80 S −1 80
嘩 妄 ヨ
く5つ
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Clinic al M ate rials
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く2 つ
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F 卜e Sh tu r11 0 r
CモI I pr epa r at io n
N bcha nic al E n zym at ie
l
C ul t iv ate tu m o r c el ls in R P M 1 1 6 40 m ed ia
wi t h 1 5 % F C S
一 項
忘ヨ
Ha r v e st a s sing le C el l s u spe n sio n
くTry psin+E D T Aつ
T
l
Dr ug in c ubat 良 he at ing
C 10 n Oge nic A s s ay
F ig.1. Methods of the r m o che m o s e n sitivit y te st fo r bo n e a nd s oft tis s u e
1. Established c ell lin e s w e r e kep tin R P M I−16 4 0 m ediu m with 1 5%fetal
C alf s e ru m くF C Sl.
2. Fr e sh tu m o r spe cim e n s w e r e obtain ed fr o m b iopsy o r s u rge ry.
3. A single c ell s u spe n sio n w a s pr epa r ed by m e cha nic al a nd e n zym atic
d is r up tio n ofthe tu mo r.
4. T he tu m o r c ells w e r e c ultu r ed in R P M I−1 6 4 0 m ed iu m with 1 5%fetalc alf
s e r um くF C Sl u ntil a c e11 she etfo r m ed in the bot tle.
5. T he c ells w e r e ha r v e sted a s a r efin ed single c ell s u spe n sio n by try psin
6. T he tu mo r c ells w erein c ubated in te st tube s with o r witho ut dr ugs a nd he ated byim m e r sio n l n pr e Cisio n the r m o static ally c o ntr olled w ate rbath.
7. T he the r m o che mo s e n sitivit y of the tu m o r c ells w a s e v alu ated by hu m a n tu mo r clo n oge nic a s s ay.