2019年度 修士論文
大都市圏における認知距離と居住履歴との関連性
-東京首都圏を対象として-
首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 建築学域
18852536 中西 健 指導教員 吉川 徹
1
目 次
第1章 序 章 ... 3
1-1 研究の背景と目的 ... 3
1-2 認知距離の定義 ... 4
1-3 既往研究と本研究の位置付け ... 5
1-4 研究フロー ... 6
1-5 プレアンケート調査について ... 7
第2章 調査 ... 14
2-1 調査方法 ... 14
2-2 調査対象範囲 ... 17
2-3 調査結果の概要 ... 17
2-3-1 個人特性要因についての集計結果(単位:人)... 18
2-3-2 個人経験要因についての集計結果(単位:人)... 21
第3章 基礎分析 ... 25
3-1 基本的な属性間の比較 ... 25
3-2 サンプルの分類 ... 28
第4章 重回帰分析 ... 31
4-1 分析方法 ... 31
4-2 全サンプルに対する重回帰分析 ... 36
4-2-1 目的変数「平均距離比率」 ... 36
4-2-2 目的変数「平均時間比率」 ... 36
4-3 分類されたサンプルに対する重回帰分析 ... 38
4-3-1 分析方法 ... 38
4-3-2 ②の分析結果について ... 39
4-3-3 ⑧の分析結果について ... 40
4-3-4 ⑨の分析結果について ... 41
4-3-5 ⑩の分析結果について ... 43
4-3-6 ⑪の分析結果について ... 45
4-4 考察のまとめ ... 46
2
第5章 総括 ... 47
5-1 まとめ ... 47
5-2 今後の課題 ... 47
参考文献 ... 48
付録 ... 49
3
第 1 章 序 章
本研究では、実際の距離に対する、人々のイメージする距離のズレについて、
居住履歴との関連性に着目して分析する。
1-1 研究の背景と目的
都市空間における位置や距離、方向などに関するイメージは、私たちの都市 空間内での生活と密接に関係している。なかでも距離の認知は、私たちが都市 空間内において施設間などを移動する際の判断に影響している。しかし、移動 する際の距離感覚と実際の距離は一致しないこともある。そこで、地理的な関 係に関する情報をどの程度認知しているかを測る指標として、認知距離という 概念が提起されている。認知距離と実際の距離の歪みがどのような要因により 生じているのかを把握すれば、都市計画に資する知見が得られるだろう。
そこで、本研究では、東京首都圏(東京都市圏PT調査の対象地域)における 各ランドマーク間の認知距離を対象として、その基本的性質や影響を与える 様々な要因を分析する。
4
1-2 認知距離の定義
人間は身近な地点間の距離を考える際、身体尺を基準にして視覚的に求める と考えられている。しかし、地点間の距離が増大するに従って、観念的に二地 点間の距離を求めることになる。このような対象がただちには現前しない地理 的空間上の距離のことを認知距離と定義する。1)
認知距離を評価する要因を、本研究では大きく 3 つに分類する。第一は、被 験者個人の年齢・性別などのような「個人特性要因」である。第二は、被験者 が過去に住んでいた地域の特性や交通手段などの、被験者個人の経験による「個 人経験要因」である。第三に、被験者自身には関係なく、各都市の可住地面積 1km2当たりの人口密度・転入超過数のように都市そのものが持っている「社会 環境要因」がある。本研究では、被験者の居住履歴である「個人経験要因」が、
現在の被験者の距離感に影響を与えているという仮説のもと、3つの要因が認知 距離に与える影響の解析を行う。
本研究が対象とする認知距離は、[『東京駅』と『計9個の内の、各々のラン ドマーク』の間の予想される直線距離あるいは時間距離]である。
5
1-3 既往研究と本研究の位置付け
【認知距離に関する研究】
都市間という比較的広い範囲での認知距離に関する研究は少ないが、本研 究に関連する認知距離の既往研究としては、下記が挙げられる。
「首都圏における都市間相互の認知距離に関する研究」
古池ら1)は、関東全域という広範囲を対象とした。この研究は、宇都宮を 中心として、東京から新潟までといった広い範囲で被験者の認知距離におけ る基本的性質や、影響を与える要因としての都市間流動量などを論じている。
「広島市における大学生の距離・方向認知」2)
「名古屋市における認知距離」3)
市区町村領域内などの狭い範囲での認知距離と、実際の距離の違いを精 査した研究として、田中ら2)、岡本3)が、それぞれ広島市、名古屋市におけ る認知距離について論じている。
「交流距離の概念について」
より広い範囲を対象に行った研究として、武井4)の同一県内の認知距離に 関した研究がある。
しかし、上記既往研究の中間である、日常行動によって起こり得る最大の移 動の範囲、すなわち日帰り圏での研究は見られない。また、認知距離に影響を 与える要因には様々なものが考えられるが、以前利用していた主要交通機関、
昔住んでいた場所の属性、さらに現在のそれらなどの居住履歴が、人々の現在 の認知距離に無意識的に与えると考えられる影響の分析は見られない。
そこで本研究では、日帰り圏で、居住履歴を含めた認知距離に影響を与える と考えられる様々な要因を多角的に分析し、その中から影響を与える要因を抽 出することを目的とする。
6
1-4 研究フロー
本研究はアンケート調査で得たデータについて分析を行う。その際に、アン ケートの参考にするため、プレアンケート調査を実施し集計したデータから分 析を行った。プレアンケート調査の概要については、次節で記述する。
プレアンケートで行った分析を基に、アンケートの内容や対象ランドマーク の再考を行った。以上により作成した調査の概要及び結果を、次章で記述する。
第 3 章では、基礎的な分析の結果について述べる。概要を把握するために、
現地調査の結果を集計したデータを用いて基本的な属性間の比較を行う。
第4章では、統計分析の結果について述べる。
第 5 章では、分析の結果に対する考察の結果についてまとめ、今後の発展の 方向を論じる。
7
1-5 プレアンケート調査について
【アンケート内容】
8
【対象ランドマーク】
【調査結果】
Q1
1 東京都 昭島市 2 東京都 昭島市 3 東京都 西東京市 4 東京都 昭島市 5 東京都 昭島市 6 東京都 杉並区 7 群馬県 前橋市 8 福井県 福井市 9 埼玉県 鴻巣市 10 神奈川県 綾瀬市 11 富山県 射水市 12 福岡県 小郡市 13 東京都 墨田区
一番長く住んだ場所 Q2 Q1での主要交通機関 1 車
2 鉄道 3 自転車 4 自転車 5 鉄道 6 自転車 7 車 8 車 9 自転車 10 自転車 11 自転車 12 車 13 自転車
Q3 Q1での居住歴 1 25年
2 25年 3 15年 4 18年 5 15年
6 21年~21年6カ月 7 20年
8 12年~12年6カ月 9 18年9カ月 10 21年~21年5カ月 11 19年~19年6カ月 12 14年
13 20年~20年3カ月 Q4
1 大阪府 摂津市 2 兵庫県 川西市 3 東京都 西東京市 4 北海道 札幌市 5 山形県 山形市 6 東京都 杉並区 7 群馬県 前橋市 8 福井県 福井市 9 埼玉県 鴻巣市 10 神奈川県 綾瀬市 11 新潟県 新潟市 12 福岡県 福岡市 13 東京都 墨田区
出身地 Q5
1 大阪府 茨木市
2 兵庫県 川西市
3 埼玉県 川越市
4 東京都 武蔵村山市
5 東京都 あきる野市
6 東京都 新宿区
7 群馬県 前橋市
8 福井県 福井市
9 埼玉県 加須市
10 神奈川県 厚木市 11 石川県 津幡町 12 福岡県 福岡市 13 東京都 墨田区
出身高校の所在地 Q6 高校での主要交通機関
1 鉄道 2 徒歩 3 鉄道 4 鉄道 5 自転車 6 鉄道 7 自転車 8 車 9 鉄道 10 鉄道 11 鉄道 12 鉄道 13 自転車
9 Q7
1 東京都 昭島市
2 東京都 昭島市
3 東京都 町田市
4 東京都 昭島市
5 東京都 新宿区
6 東京都 杉並区
7 東京都 世田谷区
8 東京都 八王子市
9 東京都 八王子市
10 神奈川県 綾瀬市
11 東京都 八王子市
12 東京都 八王子市
13 東京都 墨田区
現在所 Q8 Q7での居住歴
1 21年 2 26年 3 2年3カ月 4 18年 5 10カ月
6 21年~21年6カ月 7 6カ月
8 4年~4年5カ月 9 5年5カ月 10 21年~21年5カ月 11 3年~3年5カ月 12 5年6カ月 13 20年~20年3カ月
Q9 Q7での主要交通機関
1 車 2 鉄道 3 鉄道 4 自転車 5 鉄道 6 徒歩 7 鉄道 8 鉄道 9 自転車 10 鉄道 11 徒歩 12 鉄道 13 鉄道
Q10 免許
1 はい 2 はい 3 はい 4 はい 5 はい 6 はい 7 はい 8 はい 9 はい 10 はい 11 はい 12 はい 13 はい
Q11 Q10の取得年
1 1984
2 1986
3 2016
4 2016
5 2015
6 2016
7 2016
8 2015
9 2014
10 2017
11 2014
12 2015
13 2016
Q12 東京駅 新宿駅 上野駅 横浜駅 大宮駅 羽田空港 成田空港 ディズニーランド スカイツリー
1 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている詳しく知っている 詳しく知っている 2 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 詳しく知っている詳しく知っている 名前のみ知っている 3 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 詳しく知っている詳しく知っている 名前のみ知っている 4 名前のみ知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 詳しく知っている詳しく知っている 名前のみ知っている 5 名前のみ知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている詳しく知っている 詳しく知っている 6 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 詳しく知っている詳しく知っている 詳しく知っている 7 名前のみ知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている詳しく知っている 詳しく知っている 8 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている詳しく知っている 詳しく知っている 9 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている詳しく知っている 詳しく知っている 10 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている詳しく知っている 詳しく知っている 11 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 詳しく知っている詳しく知っている 詳しく知っている 12 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 詳しく知っている名前のみ知っている 名前のみ知っている 13 詳しく知っている 詳しく知っている 詳しく知っている 名前のみ知っている 名前のみ知っている 詳しく知っている 詳しく知っている詳しく知っている 詳しく知っている
Q13 東京駅 新宿駅 上野駅 横浜駅 大宮駅 羽田空港 成田空港 ディズニーランド スカイツリー
1 3回以上 3回以上 3回以上 3回以上 1.2回程度 3回以上 1.2回程度 3回以上 通過のみある
2 3回以上 3回以上 3回以上 3回以上 全くない 3回以上 3回以上 3回以上 全くない
3 1.2回程度 3回以上 1.2回程度 1.2回程度 1.2回程度 1.2回程度 1.2回程度 1.2回程度 全くない 4 1.2回程度 3回以上 通過のみある 3回以上 全くない 3回以上 3回以上 3回以上 通過のみある 5 1.2回程度 3回以上 通過のみある 1.2回程度 1.2回程度 1.2回程度 1.2回程度 3回以上 1.2回程度 6 3回以上 3回以上 3回以上 1.2回程度 通過のみある 3回以上 3回以上 3回以上 1.2回程度 7 3回以上 3回以上 3回以上 1.2回程度 3回以上 1.2回程度 1.2回程度 3回以上 3回以上
8 3回以上 3回以上 3回以上 1.2回程度 全くない 全くない 全くない 3回以上 3回以上
9 3回以上 3回以上 3回以上 1.2回程度 3回以上 1.2回程度 3回以上 3回以上 3回以上 10 1.2回程度 3回以上 1.2回程度 3回以上 1.2回程度 1.2回程度 全くない 3回以上 3回以上 11 3回以上 3回以上 1.2回程度 通過のみある 通過のみある 1.2回程度 1.2回程度 3回以上 3回以上 12 3回以上 3回以上 3回以上 3回以上 通過のみある 3回以上 3回以上 3回以上 1.2回程度 13 3回以上 3回以上 3回以上 1.2回程度 通過のみある 3回以上 3回以上 3回以上 3回以上
10
Q14 新宿駅 上野駅 横浜駅 大宮駅 羽田空港 成田空港ディズニーランド スカイツリー
1 7 10 20 15 20 30 20 7
2 20 10 70 50 50 35 25 15
3 10 15 40 40 55 60 45 15
4 10 7 35 30 18 63 30 13
5 7.5 5 19 25 8 50 15 3
6 7.5 3.5 31.5 37 15 70 12 4.5
7 20 8 100 80 45 30 50 10
8 8 5 30 30 20 60 15 7
9 10 3 25 25 10 50 10 10
10 10 8 15 25 25 30 20 15
11 12 2 35 20 8 10 10 3
12 30 45 30 50 70 100 90 45
13 10 5 50 60 25 110 20 10
Q15 新宿駅 上野駅 横浜駅 大宮駅 羽田空港 成田空港ディズニーランド スカイツリー
1 10 10 20 13 20 30 20 20
2 15 5 30 20 20 15 10 5
3 15 20 30 40 90 120 60 30
4 15 10 20 30 20 90 40 30
5 10 5 15 20 10 60 20 5
6 15 5 30 35 30 55 25 35
7 30 15 100 45 40 20 30 15
8 20 10 30 30 10 40 20 20
9 12 8 30 30 30 55 15 20
10 25 15 30 40 45 60 40 25
11 15 3 30 30 20 30 30 20
12 20 10 30 40 30 100 15 10
13 20 8 15 20 30 60 20 20
Q16 年齢
1 50代 2 50代 3 20代 4 20代 5 20代 6 20代 7 20代 8 20代 9 20代 10 20代 11 20代 12 20代 13 20代
Q17 性別
1 男性 2 女性 3 男性 4 男性 5 男性 6 男性 7 女性 8 男性 9 男性 10 男性 11 男性 12 男性 13 男性
11
【結果のグラフ化】
今までで一番長く住んだ 場所の主要交通機関
高校生時代の 主要交通機関
現在の 主要交通機関
年齢 性別
12
【誤認識距離】
認知距離から実際の距離を引いたものを、誤認識距離とした。
下記の図に示したものを見ると、大宮駅,成田空港(東京駅から北側) : 認 知距離が逆転している。この結果を踏まえ、アンケートでは南側に位置する「鎌 倉駅」を導入することにする。
-15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0
東京住み 地方住み 誤認識直線距離(出身高校場所別)
(km)
-10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0
東京住み 地方住み 誤認識時間距離(出身高校場所別)
(分)
13
【重回帰分析】
「分析に用いる変数」
「分析結果」
AICにより選択された変数を用いた重回帰分析の結果を示す。
上記の結果より、この方法による認知距離への研究を進めることができると 判断したため、次章からはさらに大規模で、尚且つ多くの変数を用いて分析を 行う。
目的変数 記号 定義
平均距離比率 Q13を実直線距離で除した値。(%表記)
平均時間比率 Q14を実時間距離で除した値。(%表記)
説明変数 記号 定義
Q1,Q4,Q5,Q7.場所 各市区町村~東京駅までの、距離の対数。
Q2,Q6,Q9.交通[1,2,3,4,5,6,7] 「徒歩」は1、「自転車」は2、「自動二輪車」は3、「車」は4、
「バス」は5、「鉄道」は6、「その他」は7、のダミー変数。
Q3,Q8.居住歴 例えば 10年6ヶ月なら、「10.5」と表記。
Q10.免許取得年 「2019年」-「免許取得線」= A 。 でAの値を採用。
Q11.認知度[1,2,3] 「詳しく知っている」は1、「名前のみ知っている」は2、
「全く知らない」は3、のダミー変数。
Q12.訪問回数[1,2,3,4] 「3回以上」は1、「1,2回程度」は2、「通過のみある」は3、
「全くない」は4、のダミー変数。
Q15.年齢[1,2,3,4,5] 「20代」は1、「30代」は2、「40代」は3、「50代」は4、
「60歳以上」は5、のダミー変数。
Q16.性別[1,2] 「男性」は1、「女性」は2、のダミー変数。
可住地面積 1km2当たりの人口密度
14
第 2 章 調査
2-1 調査方法
多角的な分析を行うにあたって、様々な属性を含むサンプルが必要であること から、調査方法としてWEBにて回答可能なアンケート調査(図 2-1-1)を用 いた。調査日は11/8(金)~11/10(日)の日程で実施した。調査内容として、
年齢・性別・職業・年収などの個人特性要因、主要交通手段・運転頻度・普段 行くスーパーまでの距離などの個人経験要因、認知距離について質問した。こ こで認知距離は、東京駅を起点として、(図 2-1-2)に示す終点となる計9つの ランドマークまでの、直線距離と時間距離を回答してもらったものとした。
ランドマークの選出は下記の基準によった。
・第一は知名度があることである。
・第二は東京駅から放射状に位置し同じ方向に重ならないことである。
・第三は調査対象範囲内であり、尚且つ東京駅から乗り換えなしまたは 1 回で 行けることである。
認知距離は、回答者自身により直接数字で回答する方法を用いた。起点から 終点までの予想される直線距離(以下、認知直線距離)と、起点から終点まで の予想される時間距離(以下、認知時間距離)の両者を認知距離として用いた。
なお認知時間距離は、新幹線以外の交通手段を用いた最短時間とした。計 474 サンプルのデータが収集された。
15
【アンケート内容について】
(図 2-1-1)
16
【調査対象範囲:東京都市圏PT調査の対象範囲】
(図 2-1-2)
17
2-2 調査対象範囲
本研究では、調査対象範囲として東京首都圏、具体的には東京都市圏PT調査 の対象範囲を選定した。その理由として、第一に、多くのサンプル数を収集で きることが挙げられる。特に対象範囲内では、居住地の変更が他地域よりも活 発に行われていると期待される。第二に、都心から田園地帯まで様々な属性の 地域を含んでいることが挙げられる。これにより、交通手段などのサンプルの 極端な偏りを防ぐことができ、関係が観察しやすくなると期待される。
2-3 調査結果の概要
WEB アンケート調査で回収した計 474 サンプルを設問の選択肢ごとに集計 したものを以下に示す。なお(表 2-3-2-2)の「所在地・居住歴・認知直線距 離・認知時間距離」に関する設問は定量的な回答であるため集計結果は省略し てある。
18
2-3-1 個人特性要因についての集計結果(単位:人)
(表 2-3-2-1)
【結果のグラフ化】
20代(18,19歳含む) 86 農業・林業・漁業・鉱業 1 100万未満 32
30代 101 建設業 15 100万~200万未満 28
40代 110 製造業 57 200万~300万未満 37
50代 107 情報通信業 9 300万~400万未満 59
60歳以上 70 出版・印刷業 13 400万~500万未満 73
不動産業 10 500万~600万未満 59
男 218 サービス業 60 600万~700万未満 42
女 256 運送・輸送業 12 700万~800万未満 34
電気・ガス・水道業 5 800万~900万未満 29 既婚 283 商社・卸売り・小売業 19 900万~1,000万未満 26 未婚 191 メディア・マスコミ・広告業 37 1,000万~1,200万未満 21 教育業 20 1,200万~1,500万未満 18 会社員(正社員) 175 医療・福祉 5 1,500万~1,800万未満 4 会社員(契約・派遣社員) 25 金融・証券・保険業 1 1,800万~2,000万未満 1
経営者・役員 1 調査業・シンクタンク 3 2,000万以上 11
公務員(教職員を除く) 12 非営利団体 7
自営業 25 その他 57 持ち家(一戸建て) 227
医師・医療関係者 10 勤めていない 143 持ち家(マンション) 86
自由業 11 賃貸(一戸建て) 6
専業主婦 82 賃貸(マンション) 68
学生 23 賃貸(アパート) 70
無職 63 社宅 4
パート・アルバイト 38 寮・下宿 5
その他 9 その他 8
あり 241
なし 233
B.1:年齢層
B.2:性別
B.3:結婚
B.5:業種
B.8:子供有無 B.6:世帯年収
B.4:職業
B.7:居住形態
19
20
21
2-3-2 個人経験要因についての集計結果(単位:人)
(表 2-3-2-2)
(表 2-3-2-3)
徒歩 63 徒歩 64
自転車 77 自転車 199
自動二輪車 15 バス 54 使う 99
車 180 鉄道 157 使わない 375
バス 38
鉄道 101
運転しない 158 それ以上 9
年数回程度 119 使う 252 5km以内 23
月1~2程度 40 使わない 222 3km以内 43
週1~2程度 36 1km以内 24
毎日程度 121 車使わない 375
それ以上 22
5km以内 38
はい 238 3km以内 132
いいえ 236 1km以内 60 それ以上 9
車使わない 222 15分以内 17
10分以内 29
5分以内 35
それ以上 28 3分以内 9
15分以内 29 車使わない 375
徒歩 72 10分以内 78
自転車 100 5分以内 79
自動二輪車 18 3分以内 38
車 154 車使わない 222
バス 36
鉄道 94
までの、車での所要時間 Q.4:現在所で 普段行くスーパー
の居住歴
S.6:今までで一番長く
S.7:16歳の時の所在地 S.8:16歳の時の主要交通
Q.1:現在所の居住歴 Q.2:現在所で 普段行く
Q.3:現在所で 普段行く S.1:現在の所在地
S.2:現在の主要交通
S.3:車の運転頻度
S.4:今までで一番長く住んだ
S.5:今までで一番長く 住んだ場所 の所在地
スーパーまで車使うか
スーパーは何km先にあるか
普段行っていたスーパーまでの、
車での所要時間
住んだ場所 の主要交通 場所と 現在所は同じか
Q.5:今までで一番長く住んだ場所
Q.6:今までで一番長く住んだ場所で
Q.7:今までで一番長く住んだ場所で
Q.8:今までで一番長く住んだ場所で 普段行くスーパーまで車使うか
普段行っていたスーパーは 何km先にあるか
Q.9:東京駅から計9個のランドマーク までの、各々の直線距離 Q.10:東京駅から計9個のランドマーク
までの、各々の時間距離
どこら辺にあるか 知っている
どこか知らないが
名前は知っている 知らない 3回以上 ある
1,2回程度 ある
通過した ことがある
全く ない
東京駅 454 20 0 413 50 11 0
新宿駅 446 26 2 395 47 22 8
ディズニー
ランド 459 14 1 364 90 9 10
羽田空港 428 44 2 333 108 12 19
成田空港 439 32 3 273 144 19 35
大宮駅 391 80 3 206 118 79 68
鎌倉駅 417 55 2 227 174 20 51
高尾山 361 107 6 104 164 42 158
柏駅 367 96 11 169 100 84 110
千葉駅 391 76 7 156 116 89 106
S.9:各ランドマークの認知度 S.10:各ランドマークの訪問回数
22
23
24
25
第 3 章 基礎分析
3-1 基本的な属性間の比較
前章の結果を踏まえ、本節では概要を把握するために、現地調査の結果を集 計したデータを用いて基本的な属性間の比較を行う。その際に、各サンプルの 認知距離が実際の直線距離(時間距離)とどの程度の違いがあるかを把握する ために、以下の計算を行った。
「認知直線(時間)距離 / 実距離(実時間) = 認知距離(時間)比率」
さらに各サンプルにおける全ランドマークまでの「認知距離(時間)比率」の 平均値を「平均距離(時間)比率」と定義し、今後の分析で用いる。なお、実 時間距離は、GoogleMapより調査実施日の「7 時・13 時・19時」の 3 つの時 間帯の最短時間(但し、新幹線の利用は除く)における平均により算出した。
(図 3-1-1)は全474サンプルにおいて、平均距離比率と平均時間比率を比 較するためにグラフ化したものである。この図から、平均時間比率は平均距離 比率に比べてより正確であることが伺える。
(図 3-1-2)は、ランドマークごとに認知距離比率と認知時間比率の平均値
を比較したものである。このグラフから、東京駅から各ランドマークまでの認 知距離が、どれだけ上回っているか、または下回っているかを、1を基準として 判断できる。この図から、(図 3-1-1)から判明した距離に対して時間の方が差 は小さい、つまり、正確に認知している傾向に加え、認知距離比率の方が、ラ ンドマーク間の違いが認知時間比率より大きいことが分かる。上記の結果を地 図上に示したものが(図 3-1-3)、(図 3-1-4)である。(図 3-1-3)の認知距 離比率では、成田空港や高尾山といった「田園地帯」に比べ、新宿駅やディズ ニーランドといった「都心付近」の方が認知距離比率は大きく、分散の値も大 きいことが分かる。次に(図 3-1-4)の認知時間比率に着目してみると、前述 ほどの明快な差はないが、(表 3-1-1)と照らし合わせて見てみると、認知距離 比率と類似の傾向を持っていることが伺える。
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(図 3-1-1)
]
(図 3-1-2)
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(図 3-1-3)
(図 3-1-4)
(表 3-1-1)
新宿駅 ディズニー 羽田空港 成田空港 大宮駅 鎌倉駅 高尾山 柏駅 千葉駅 認知距離 3.44 3.22 2.18 1.06 1.58 1.30 1.20 1.60 1.47 分散 15.79 9.92 5.15 0.50 1.59 0.95 0.79 1.84 1.35 新宿駅 ディズニーランド羽田空港 成田空港 大宮駅 鎌倉駅 高尾山 柏駅 千葉駅 認知距離 1.89 1.71 1.91 1.10 1.44 1.30 0.83 1.41 1.28 分散 2.67 1.47 1.58 0.28 0.76 0.48 0.18 0.69 0.57
平均時間比率 平均距離比率
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3-2 サンプルの分類
本研究では、「ランドマークの認知度」、「居住地」、「移動スケール」という 3 つの観点からサンプルの分類を行った。
「ランドマークの認知度」の観点は、古池ら 1)の既往研究においても認知距 離に大きな影響を与えているため、本研究でもこれを用いた。認知度によって、
サンプルを2パターンに分類した。1つ目の「認知度あり」のパターンは、「Q.9:
ランドマーク認知度」では「1:場所がどこら辺にあるか知っている」であり、
「Q.10:ランドマークの訪問回数」では「1,2,3:通過・訪問したことがある」と 回答したものである。2 つ目の「認知度なし」のパターンは、全 474 サンプル から1つ目のパターンを除いたものである。
「居住地」の観点は、前節の結果より、都心付近と田園地帯では、認知距離 に大きな違いが見られたため、これを用いた。居住地によってサンプルは 2 パ ターンに分類される。1つ目の「都心付近」のパターンは、「S.1,5,7:所在地はど こか(どこだったか)」では「政令指定都市または特別区に住んだことが有る」
である。2つ目の「田園地帯」のパターンは、「S.1,5,7:所在地はどこか」では「政 令指定都市または特別区に住んだことが無い」と回答したものである。
「移動スケール」の観点は、居住履歴の中でも重要な要因であると予想され、
認知距離に大きな影響を与えているという本研究の仮説から、これを用いた。
移動スケールによってサンプルは2パターンに分類される。1つ目の「スケール 小」のパターンは、「Q.2,6:普段行く(行っていた)スーパーまで車使うか」で は「2:車使わない」であり、尚且つ「Q.3,4,7,8:普段車で行く(行っていた)ス ーパーは何km先か・何分掛かるか」では「3:車使わない」であるように、両方 の条件を満たす場合である。2 つ目の「スケール大」のパターンは、「Q.2,6:普 段行く(行っていた)スーパーまで車使うか」では「1:車使う」であり、尚且つ
「Q.3,4,7,8:普段車で行く(行っていた)スーパーは何km先か・何分掛かるか」
では「1,2:車使って何km(分)」であるように、両方の条件を満たす場合である。
以上の2パターンに該当しないサンプルは、この観点の分析では除く。
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(図 3-2-1)は、上記の分類における概念図を纏めたものである。サンプル
は計15パターンに分類された。図中の長方形がサンプルであり、この色の濃淡 でサンプルの増減が把握できる。前節での図やグラフの結果に用いたサンプル は①である。これをひし形の、認知度(②,③)、居住地(④,⑤)、移動スケール
(⑥,⑦)の3 つの観点から分類したものが、中程度の濃淡である長方形のサン プルである。そこで、認知度による分類が、他の 2 つの観点にも影響を与えて いる可能性があったため、認知度(②,③)に関してはその中で、「居住地」、「移 動スケール」について分類を行った。(⑧~⑮)
15 パターンについて図やグラフを用いて比較を行った中から、例として、⑩ と⑪を比較したものを(図 3-2-2)に示す。この図は、ランドマークの認知度 があるサンプルにおいて、移動スケールを小と大の 2 パターンに分類して、2 つの認知時間比率の地図を重ね合わせたものである。分散を表す「○」と認知 距離を表す「→」が、重なっていることが分かる。「●」と「太い→」が「スケ ール小」を表している。この図から、成田空港・高尾山を除くすべてのランド マークにおいて、「スケール大」の認知距離の方が小さいことが伺える。この結 果より、普段からスーパーまで車を用いるという移動スケール感覚が大きい人 は、そうではない人に比べて認知距離が小さいことが示唆された。
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(図 3-2-1)
(図 3-2-2)
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第 4 章 重回帰分析
4-1 分析方法
第3章で得られた傾向などを定量的に分析するため、重回帰分析を適用する。
全 474 サンプルにおいて、本研究の目的に直接関係する質問である、直線距離 と時間距離に関する認知距離のそれぞれに対して、社会環境要因とアンケート で問うた個人特性要因、個人経験要因がどの程度の説明力を持つのかを、重回 帰分析によって把握する。
変数については、(表 2-3-2-2)の「Q.9〜Q.10」を用いて導いた、平均距離 比率と平均時間比率を目的変数に、(表 2-3-2-1)の「B.1〜B.8」、(表 2-3-2-2)
の「S.1~S.8、Q.1〜Q8」、(表 2-3-2-3)の「S.9~S.10」を説明変数として用 いた。
数量データの他、カテゴリー変数も用いて解析した。この際に、設問に対す る回答の選択肢をダミー変数である説明変数とするため、抽出されるそれぞれ の説明変数は、「選択肢-1」の数となる。その際に、設問項目の関係性をより明 確化するために、内容が近い選択肢同士の統合を行った。そのコードの結果と 定義を(表 4-1-1)から(表 4-1-4) に示す。
重回帰分析においては、共変量間に強い相関があると解析が不可能であった り、たとえ結果が求められたとしても偏回帰係数の信頼性は低くなったりする。
そこで、相関行列と分散拡大係数(以下、VIF と呼ぶ)を算出して、共変量間 に多重共線性の恐れが大きいかどうかを事前に確認した。その結果、全要素が
VIF<10 であったため、共変量間の多重共線性の恐れは少ないと判断した。(表
4-1-A)(表 4-1-B)(表 4-1-C)さらに、目的変数の予測に関しての説明変数
の有効性を明らかにするために、赤池情報量規準(以下、AIC と呼ぶ)による 変数増減法を適用して有効性が高い説明変数の組を探索する。