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ペルシア・アラビア湾の人と文化の動向

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Academic year: 2021

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はじめに(ペルシア・アラビア湾の人と文化の動向 : 湾岸地域における文化接触と融合に関する総合的 研究)

研究代表者 石田 進

URL http://id.nii.ac.jp/1509/00000890/

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ペルシア・アラビア湾の人と文化の動向

―湾岸地域における文化接触と融合に関する総合的研究―

石田 進 編

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はじめに

 古来多様な人と文化の接触と融合の舞台となってきたペルシア・アラビア 湾は、20世紀初頭以降石油資源が各地に相ついで発見されるに及んで、再び 人ぴとと諸文化の接触と融合の土甘禍として登場した。石油収入を投入して湾 岸各国が競って展開した近代化プロジェクトによってもたらされた高賃金の 就業機会に、全世界の非産油国から技術者や労働者が引き寄せられたからで ある。今回のr湾岸地域における文化融合と文化摩擦に関する総合的研究」

はこの人と文化の巨大な流れとそれがつくりだす渦の解明に向けての第一歩 ともいうべき取り組みであった。

 ペルシア・アラビア湾に面して海岸線を有する国は8ヵ国ある。これら諸 国には共通の性格と独自の特徴とがある。最大の共通項は、これら8ヵ国は いずれも、大なり小なり産油国(石油輸出国)であるということである。小 はバハレーンの日量約4万バーレルから大はサウジアラビアの日量およそ 500万バーレルまでの産油国である(1988年現在)。これらの石油の多くは輸 出され、産油国に多大の石油収入をもたらした。この石油収入こそが世界各 国から多数の人びとを吸引する原動力である。

 もう一つの共通項はイスラームである。8ヵ国はいずれもイスラームが代 表的な宗教であり、文化も社会も歴史もイスラームと共にある。

 一方、この8ヵ国を分つ独自性もまた極めて重要である。8ヵ国はペルシ アのイランとアラブのその他7ヵ国に分かたれる・湾岸はペルシア語とアラビ ア語のバイリンガルの世界であり、そこにインド、パキスタン、バングラデ シュからヒンディ、ウルドゥーやベンガリ語などが人とともに流入し、また 韓国のハングルやフィリピンのタガログ語も入って来た。

 また、イスラームという共通項でくくられる8ヵ国も、子細に見れば、イ ランではシーア派が、サウジアラビアその他ではワッハーブが、またオマー ンではイバード派が主導権をにぎり、イスラームで全てが説明可能な世界で

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はない。

 政治的にも一様ではない。イランではイスラーム革命によってイスラーム 的政治・経済体制の確立が志向され、そのイランと8年に及ぶ戦争をたたかっ たイラクはバース党主導の社会主義的体制を維持し、その他の6ヵ国は王 制・首長・スルタン制に拠っている。

 これらの湾岸8ヵ国の、石油収入の増大を背景とする大プロジェクトの推 進とそれに伴う外国人出稼ぎ労働者の流入に対する対応や政策、外国人出稼

ぎ労働者によるインパクトなどはそれぞれ異なる。

 かつ、今回のような調査研究を受け入れる湾岸各国の雰囲気や情況にも大 きな差がある。現地調査を実施した1987年にはイランとイラクは交戦中で、

湾岸は軍事的に不安定であったため、交戦両当事国は対象からはずさざるを えなかった。湾岸における文化的接触・融合および摩擦を考察する際、イラ ンを対象に含めえないことは極めて心残りである。イラン・イラク戦争が停 戦になったからには、イランも視野に入れた調査研究の継続深化がぜひとも 必要なところである。

 人びとの往来について信頼性のある豊富な統計資料の入手が可能なのは湾 岸8ヵ国の中ではクウェートだけである。その他の国では人口動態に関する 統計は限られているためインタビューや観察が重要な意味を持つ。クウェー

トにおける人口急増の統計的分析とバハレーンでの観察内容やアラブ首長国 連邦におけるインタビューによるパーソナル・ヒストリー聴取の間には、同

じ石油収入の急増を背景にした変化であるため、強い相互補完性がうかがえ る。インタビューによるパーソナル・ヒストリーには統計数値では見えて来 ない人びとの生々しい生活実態が語られ、逆に統計数値は個々のパーソナル・

ヒストリーなどに座標軸上の位置づけとでもいうべきものを与えうる可能性 が期待される。

 インタビュー調査をすすめるためにはインタビュアーと対象者との間に信 頼関係が確立されていることが不可欠の前提であり、そのような相互信頼が

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かもし出されるには長い期間を要するのが通例である。今回の調査研究でそ のような相互信頼のいくつかの核を各地に用意したことになる。これらの核 を本格的な相互信頼関係に育てあげるためにも、今後の綿密なフォローアッ プが必要なところである。

 「文化の融合」というとき、域外からの異質文化の流入、それとの接触や 融合を想定しがちである。たしかに、石油収入の急増を背景として湾岸を舞 台に進行中の「文化の融合」の大きな局面は異質文化の接触と融合である。

しかし、湾岸で目下進行し、将来いっそう強まると予想されるのは域外から の異質文化の流入に伴う接触、融合に限らない。域内の、隣り同志の類似文 化や近い人種間の接触、融合ないし摩擦、および地元文化に起る伝統と革新 との間の内的葛藤も同時に問題にされなければならない。コーズ・ウェイでサ ウジアラビアと結ばれたバハレーンでは、近縁関係にあるはずの文化と人び との間でどのような接触や融合ないし摩擦が生じるのかが観察され、アラブ 首長国連邦のドバイでは物質面での変化は歓迎しつつも精神面の文化を保持

しようとする志向の強い地元アラブ人のいくつかの事例がインタビューされ ているのはそれである。

 今回の現地調査にかかわる報告は本報告書に収録されたもののほかに研究 分担者の何人かによってそれぞれの紀要などに掲載される予定である。目下、

具体的には次のようなものが予定されている。

 鷹木恵子「UAEの出稼ぎ外国人労働者にみる文化融合と文化摩擦一ド バイでのインタビュー調査から一」、桜美林大学国際学部『国際学レビュー』

創刊号、1989年4月。片倉もとこ「湾岸地域における文化融合と文化摩擦に 関する研究一UAEにおける「近代化」と「イスラーム化」  」、 『国 立民族学博物館研究報告』1989年。本調査研究は今後さらに多方面からの分 析を加えて継続し、深めていくことの必要性が痛感される。

参照

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