河床近傍の渦 と乱れ
松 岡 保 正
On the Caracteristics of Vortices generating on a River Bed.
Yasumasa MATSUOKA
Thevo r t i c e sge n e r a t i n go nar i ve rbe dwe r eo bs e r v e dwi t h3e l e c t r o ・ ma g ne t i c f
lo wme t e r s .Us i n go b t ai n e ddi g it a lda t a ,t hed i s t r i but i o n so fv e l o c i t yc o mpo n e n t s , Re yno l d ss t r e s s ,a n de ne r g ys p e c t r u m we r ec a l c ul a t e d .Di s t r i bu t i o n so fdi a me t e ra nd ve l o c i t ya r er e p r e s e n t e di nt hi spa p e r .
A c o nc e p ut ua lmo d e lo fr i v e rt u r b u l e n c ei sp r o po s e do nt h eba s eo ft her e s ul t s . Ge n e r a t i n gme c ha n i s m o fho r s e ‑ s ho ev o r t i c e s ,s we e p s ,e j e c t i o n s ,a ndboi l e sa r ee x・
pl a i ne dba s e do nt h emo d e l .
1. ま え が さ
河川乱流場 に於いては,乱れのエネルギーは先ず レイノルズ応力 とい う形で平均流か ら取 り込 まれる. レイノルズ応力は,平均流のシアーが大 きい河床近傍で最大 となる.乱れのエ ネルギーの大部分はこの領域で生成 され,それは渦の放出 とい う形でなされ る. この渦が鉛 直流速分布や移動床 の問題 に本質的役割を果 しているにもかかわ らず, これ まで実河川では
ほとんど評価 されていない.
室内実験における流れの 3 次元構造 に関する研究 は ,1 9 7 0 年代 に幾っかのモデルが相次い で提唱 された. 1 9 8 0 年代 に入 ると,計測処理技術 も含めた可視化技術の発展 に伴い流れの組 織的構造 は,かな り明 らかになってきた. これ らのモデルの多 くは,粘性底屈の存在が意味
を持つ,固定床上の微流速流れでの可視化実験が基礎 になってい る.
河床近傍 は,個々の粗度要素か ら剥離 した小 さな渦が干渉 しあい混ざ り合 った状態 にある.
また,河床 を構成す る石は粘性底層の厚さをはるかに上回る大 きさである.従 って,室 内実 験で得 られたモデルをそのまま実河川 に適用す るわけには行かないが,参考 にすべ き多 くを 含 んでいる.
本文では,現在 までに提唱されているモデルの主なものを紹介す るとともに,二成分電磁 流速計による河床近傍の速度変動記録か ら求めた渦について,若干の考察を加 える.
2. 乱流構造の物理モデル
乱流研究の発達史 は,計測技術や解析手法等の発達 と大 きな関わ りを持 っている.熱線流 速計の登場す る 1 9 6 0 年までは,壁面近傍の層流底層の存在が明示 してあ った.その後 の乱流
'土木工学科 助教授
原稿受付 平成 2 年 6 月 3 0 日
研究 のほとんどは微小 ケス〜ルの乱れに集中 し, 石原 ・余越
1)や木下
2)の よ うな,河川工 学上 の 問題 に対処す る事を意図 とした大 スケールの乱 れに関す る研究 は少 ない.
流れは,もともと 3 次元的な構造をしてお り, 近年 の宇民 ・上野
3)に代表 され るよ うな,可視 化手法を併用 した研究方法 は乱れの空間構造究 明 に大 きく貢献 しているが,以下 にこれまで提 唱されているモデルの主なものを紹介す る.
図 1 は The o do r s e n
4)の提 唱 した hor s e s ho e モデルである. Se c o nda r y ho r s e s ho e の発生機 棉,渦管の足 と固定壁 とのつなが り方等不明な 点 も多いが,壁面近傍のシアーを渦管 とい う形 で放 出解消す る基本的考 え方は今 も有効 である.
図 2 ,図 3 は先出の石原 ・余越が提唱 した馬 蹄型渦モデルである.余越 は,川面に発生す る ボイルに着日し,馬蹄型渦の生成か ら水面に到 達 してボイルを発生 させ るまでを説明 した.基 本的には渦管をカルマン渦管 として捉えている が,渦管 としての詳細 な測定 はしていない.
図 4 ,図 5 は Kl i ne 5 )の提唱す るモデルであ る.彼 らは可視 化 実 験 に よ り,
bu r s t s ,s we e p s の特 性 を明 らか にした.流れの中にこうした特徴 的な構造の存在す ることを定量的 に示 した意義は大 き く,乱流研究 が,それまでの平均値 と変動 の時 系列 としての扱い方か ら大 き く前 進す ることになる.
図 6 ‑ は Wi l l 血a r s h
6)らの‑アピ ソモデルである. このモデルは, 層流から乱流に遷移す る問題 の理 論的 ・実験的研究が基 になってお
図 1 Th e n d o r s e n による馬蹄形渦モデル
図2 余越による∩形渦とボイル
図 3 余越による∩形洞と e j e c t i o n り ,c o ndi t i o nal s a mpl i n g 法を用いて‑アピソ渦を確認 している.
図 7 は La uf e r 7 )の渦塊 モデルである.大 スケールの 3 次元渦塊 が小 スケールの渦塊 を引 き上 げながら流下す ると考 えている.実河川においては,水深 と流速がある程度以上大 きな 値 を とる場合の,かな り大 きなボイルがそれ自身の中でも次々に新 しいボイルを発生 させな が ら流下す るケースに相当す るものと考 えられる.
図 8 は宇民 ・上野が提唱 したものである.壁面近傍 に存在す る渦糸群 (1次渦)が引 き上
図 4 Kl i ne らに よる bur s t モデル
図 5 Kl i ne らによる流れ の イメージ
図 6 Wi l l ma r t h らに よる‑アバ ン渦 図 7 La uf e r に よる渦塊 モデル
図 8 宇民らによる渦糸モデル
げられ集中 して束状 の太い渦管 (2 次渦) を形成す ると考 えている.
彼 らはまた,水素気泡では捉 えに くい断面内の渦度分布 の 3 次元構造 を, ビーズを流 した 流れの断層撮影 によ り明 らかにして,モデルの妥当性 を確認 してい る.
3. 現地観測及び解析結果
著者の砂裸河床上 の乱れの解析結果
8)か ら,主た る渦管 は河床上 2 0 c m〜3 0 c m で生成 され てい るものと考 えた.渦管の分析用の観測 は,長野市内を流れ る千 曲川,犀川 の 2 地点 にお いて ,2 成分電磁流速計 を用いて行 った.電磁流速計か らのアナ ログ出力 は,磁気テープに 収録 し ,0. 1 秒間隔で AD 変換 したデータを解析 に用いた.
観測諸元を表 1 に示す.参考 までに ,B 地点 は,あ る程度の規模 の流量変動が水深 に反映 す る度合が A 地点 よ りも強い.
表 1 観 測 諸 元
H Z u( Z)
u′2 Ⅴ′2‑u′ Ⅴ′
( c m) ( c m) ・( c m/ S ) ( c m
2/
S2)( c m
2/ s
Z)( c m
2/
S2)A1 5 5 2 0 8 8. 0 2 0 1. 9 2 4. 4 2 8. 9 A2 5 3 2 0 ー8 7. 6 1 3 0 . 4 1 8. 2 2 0. 8 B1 ̲ 7 5 2 0 6 4. 0 l l. 9 2 8. 0 2 7. 7 ,B2 7 5 3 5 6 7. 9 8 0. 9 2 7. 6 1 7. 6
図 9 ‑図1 1は AD 変換後 の B lの流 れ方向流速変動 u′ ,鉛直方向流速変動 Ⅴ ' , レイ ノル ズ応力 tu′ Ⅴ′の 7 0 秒間の時系列記録である.図 1 2 は B lと同時刻 の B 2 の レイノルズ応力
‑u′ Ⅴ′ ,図 1 3 は同 じく鉛直方向流速変動 Ⅴ′のものであ る.渦管,湧昇流,流れ込み等を説明 す るため,対応す る時刻 に番号 をつけてある.
図 1 4 は A l の,渦管直径 D と渦管外線速度 V
sの度数分布,図 1 5 は A l の渦管直径 D と渦 管の鉛直方向移動速度
・V
sの度数分布であ る.図 1 6 以下 も同様 に,それぞれ A 2‑B2 に対 応 してい る.
4. 考 察
本研究 における観測地点 の河床 は ,1 0 c m〜2 0 c m 程度の石や裸 を主体 に構成 されてお りお
0 3
(U a S \ 白 U ) 、n l 0 3 ( U a S \ tZZ U ) ,A I
(〜⁚S\
EtZ m ) ̲lln ‑aS\ztErU ) .A、n I
図9 流れ方向流速変動 (B l)
I3 4 .
図1 0 鉛直 方向流速変動 (B 1)
二 二 二 二̲‡
図1 1 レイノルズ応力 (B l)
図 1 2 レイノルズ応力 (B2)
図1 3 鉛直方向流速変動 (B2)
() 38 Nn N)
〜 50t一t一
図 1 4 渦管外縁速度頻度分布 ( A l)
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0lJ)t一t‑(己芸nN)之図1 6 渦管外縁速度頻度分布 ( A2)
図1 8 渦管外縁速度頻度分布 (B 1)
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