『
釈
摩
訶
衍
論
』の
五
重
問
答
に
つい
て
中
村
本
然
一は
じ
め
に
『釈摩訶衍論 亅の五 重 問答につ いて (中村) 弘法
大 師 空海
( 七 七 四 − 八 三 五 ) は 、 『 釈 摩訶
衍 論 』所
説 の 五 重 問 答 を 思 想 的 根拠
と し て、 顕 密 の 教 判 論 を 展 開 し 、( ↓ 四
家
大
乗 と 真言
密 教 と の 関係
を論
じ る 。 『 辯 顕 密 二 教 論 』 で は 『 釈 摩 訶 衍 論 』 の不
二 訶衍
法 に 注 目 し 、 こ の法
の内
実 を 開 演 す る教
と し て 密 教 を紹
介 す る 。 『 秘 蔵 宝 鑰 』 で は 「 五 重 問 答 」 に よ っ て 、法
相
・ 三 論 ・ 天 台 ・ 華 厳 の 四家
大乗
を峻
別 す る 。 特定
の 配慮
を 示 す の は 第 四 重 の 問答
( 三 自 一 心 法 ) に お い て で あ る 。 そ れ は 空 海 が 『 秘 密曼
荼
羅
十住
心
論 』 に お い て第
九 極無
自
性 住 心 を華
厳
教学
と み な し 、 「 三自
門 の 法 」 ( 生 滅 門 ) と 規 定 す る こ と と無
関係
で は な い 。 と も あ れ 『 秘蔵
宝 鑰 』 の 「 三自
一 心 法 」 ( 生 滅 門 ) に は そ れ を 意 識 し た対
応 が 想定
さ れ る 。( 2 ) と こ ろ で 応
永
の 大 成 者 の 一 人 で あ る 長覚
( 一 三 四 〇i
一 四 一 六 ) が 「 五 重 問答
は浅
深次
第
な り 」 と釈
す る よう
に 、 真 言教
学
史 上 で は 「 五 重 問答
」 は 階 梯 的 内 容 を含
ん だ教
説
と解
さ れ 、 『 釈 摩 訶 衍 論 』 の 「 立 義 分 」 に 開 設 さ れ る 三( 3 ) 十 三
法
門 に 配 当 す る 議論
が 重 ね ら れ て い る 。 概 ね 染 浄始
覚
( 初 重 ) ・ 清 浄本
覚
( 第 二 重 ) ・ 無 尽 一 法 界 〈 三自
摩訶
衍 〉 ( 第 三 重 ) ・ 三 自 一 心摩
訶
衍 ( 第 四 重 ) ・ 不 二 摩 訶 衍 法 ( 第 五 重 ) と さ れ 、今
日 に 至 っ て い る 。 そ の背
景
に は 『 秘 蔵 一 229 一智山学 報第五
f
六輯 宝 鑰 』 が 心 品 転 昇 の 次 第 を説
き 、 四 家 大 乗 と の 比較
考
証 を 展 開 す る と いう
論 の 性 格 が存
在 す る 。 ま た第
四 重 問 答 を コ ニ 自 門 法 」 「 三自
一 心 法 」 と し 、前
重 の 生滅
所
入 の法
と 規 定 し て お き た い 空 海 の 事 情 が 勘 案 さ れ る 。 こ の 度 の 報告
で は『 釈
摩
訶 衍論
』 の 「 五 重 問答
」 、空 海 の 「 五 重 問 答 」 、
中
国 の 注 釈 者 の 「 五 重 問答
」 、真 言
宗
末
徒
の 「 五 重 問 答 」 と いう
四種
の 視 点 か ら 検 討 す る こ と に し た い 。 二『
釈
摩
訶
衍
論
」 の五
重
問
答
『 釈摩
訶
衍 論 』巻
第 五 に は、 あ ら ゆ る 衆 生 は 無 始 以 来本
覚
を備
え て い る か否
か に つ い て の議
論 が あ る 。 衆 生 の本
覚 を論
じ る 有覚
門 と 本 具 の 本覚
を 認 め な い無
覚 門 の 二 門 を 通 し て 、衆
生 と 本覚
の 関 係 が 論 じ ら れ る 。 有 覚 門 に 設定
さ れ る 質 疑 が 「 五 重 問 答 」 で あ る 。 衆 生本
有
の 本覚
を 容 認 す る の で あ れ ば 、 衆 生 の す べ て は 一 時 に 発 心 修 行 し 成 仏 す べ き で あ る 。 と こ ろ が 衆 生 の 成 仏 ( 正 覚 ) の 時 期 は 多 様 で あ り 前 後 の 不 同 が み ら れ る 。 そ も そ も 衆 生 の 成 仏 に 差 別 が 生 じ る の は 、 本 覚 仏 性 の 強 劣 に 起 因 す る の か 、或
い は 無 明 煩悩
の厚
薄 に よ る の か 、 二種
に 分 か れ た議
論 が な さ れ て い る 。 『 釈 摩 訶 衍 論 』 の 作 者 は 、 成 仏 の 種 々 相 の 要 因 を 無 明 に 求 め る 。 こ れ を 補 う 教 説 が 一 般 に 「 五 重 問 容 」 と さ れ る 問 答 で あ る 。 有覚
門 か ら 始 め る こ と に し よ う 。 一 切 衆 生 従 一 無 始 一 来 。皆
有 一 一 本覚
無 二 捨 離 時 。何
故衆
生 先有
二 成 仏 。後
有
二 成 仏 一 。 今有
成 仏 一 。 亦 有 二 勤行
一 。 亦有
二 不行
一 。亦
有
聡明
。 亦 有 二 闇 鈍 一 。 無 量 差 別 。 同 有 二 一 覚 一皆
悉 一 時 発 心修
行 到 二 無 上 道 一 。 本覚
仏性
強 劣 別( 4 ) 故 。 如 レ
是
差 別 。無
明 煩 悩 厚薄
別
故 。如
レ 是 差 別 。 す べ て の 衆 生 は 本来
の 姿 と し て 本 覚 を備
え て お り 捨 離 す る こ と は な い 。 そ れ で は 何 故 に衆
生 の 成 仏 の 時 期 に 先 に 一 230 一『釈摩 訶衍 論』の五重 問答につ いて (中村) 成
仏
す
る衆
生 が あり
、 後 か ら成
仏
す
る 者 が み ら れ る の で あ ろう
か 。修
行
に 勤 し む衆
生 や 修行
に 目 を 向 け な い も の 、 聡明
な衆
生 ・ 愚 鈍 な 衆 生 等 の無
量 の 差 別 は 一体
何 に よ る の で あ ろ う か 。 も し 平等
に 本 覚 を 具 有す
る な ら ば 、 す べ て の衆
生 は共
に 発 心 ・ 修 行 し 無 上 道 に 到 る はず
で あ る 。 そ の原
因 は 本覚
の 仏 性 の優
劣 に よ る も の な の か、 或 い は 無 明 煩悩
の厚
薄
に 基 づ く の で あ ろう
か 。若
言
レ如
レ 初 者 。 此事
則 不 レ 爾 、 所 以 者 何 。 本 覚 仏 性 円 二過
恒 沙 之 諸 功 徳 一無
二 増 減 一 故 。若
言 レ 如 レ 後 者 。 此 事亦
不 レ( 5 )
爾
。所
以 者 何 。 一 地 断義
不 二成
立 一 故 。如
レ 是 種種
無 量 差別
。 皆 依 二 無 明 一 而 得 二 住 持 一 。 於 二 至 理 中・ 無 レ 関而
巳 。 も し本
覚
の 優 劣 が 要 因 と いう
の で あ れ ば 、 本覚
の 仏性
が 無 量 無 辺 の 功 徳 を 円 満 具 備 し 増減
す
る こ と は な い と い う 理 念 に 逆 ら い 、 ま た無
明 の厚
薄 に よ る と いう
な ら ば 一 地 断 の 意 が 成 立 し な く な る 。 こ の よう
な 遣 り 取 り が繰
り
返 さ れ た 後 に 、 衆 生 本 有本
覚 の 立場
か ら ( 有 覚 門 ) 、 無 量 の 差 別 は 無 明 に よ る も の で あ り 、 畢 竟 な る 理 に お い て は 無 用 の 議 論 で あ る こ と が 述 べ ら れ る 。 引 き 続 い て 設定
さ れ る の が 、 五 重 問 答 で あ る 。若
如
レ 是 者 一 切 行者
。 断 二 一 切 悪 一修
二 切 善 一 。 超 二 於 十 地 一 到 二 無 上 地 一 。 円 二満
三身
一 具 二 足 四徳
一 。如
レ 是 行 者 為 レ 明無
明 。 如 レ 是 行 者 無 明 分 位 非 二 明 分 位 一 。若
爾
清
浄 本覚
従
一 無 始 一 来 。 不 レ観
二 修 行・ 非 レ得
二 他 力 】 。性
徳
円 満 本 智 具 足 。 亦 出 二 四句
一亦
離
二 五 辺 } 。 自 然 之 言 不 レ能
二 自 然 一 。清
浄
之 心 不 レ 能 二清
浄 一 。 絶 絶 離 離 。 如 レ 是本
処為
明 無 明 。 如 レ 是 本 処無
明 辺 域 非 一 明 分 位 一 。若
爾
一 法 界心
。 非 二 百 非 一背
二 千是
一 。 非 二 中非
中 一 背 レ 天 。非
レ 天 演 水 之談
足断
而 已 止 。 審 慮 之 量 手 亡 而 已住
。如
レ是
一 心 為 明無
明 。 如 レ 是 一 心無
明
辺 域非
= 明 分 位 一 。 三 自 一 心 。 摩 訶 衍 法 一不
レ能
レ 一仮
二 能 入 一 心 一 。 不 レ 能 レ 心 仮 二 能 入 心 一 。実
非 二 我 名 一 而 目 二 於 我 一 。 亦 非 二 自 唱 一而
契
二於
自 一 。如
レ我
立 レ名
而
非 二実
我
一 。 如 レ 自得
レ 唱 而非
一実
自 一 。 玄 玄 又 玄 。遠
遠 又 遠 。 如 レ 是 勝処
為 レ 明 無 明 。 如 レ 是 勝処
無 明 辺域
非
二 明 分位
一 。 一231
一智山学 報第五十六輯 ( 6 ) 不 二 摩 訶 衍 法 。 唯 是 不 二 摩 訶 衍 法 。 如 レ 是 不 二 摩 訶 衍 法 為 レ 明 無 明 五 重 問 答 で は 有
間
無 答 の 不 二 摩 訶 衍 法 を 除 く 他 の 四 重問
答
は 明 で は な く 無 明 と 解 釈 す る 。 し か し な が ら 、 五 重 問 答 の 一 々 を 検 証 す る と 、 問 答 で 論 じ ら れ る境
地 は いず
れ も覚
の 境 涯 に あ る と も 考 え ら れ 、 明 と 無 明 と いう
判 断 を 迫 ( 7 > ら れ る な ら ば 、 いず
れ も 明 の領
域 に あ る と い え よ う 。 そ れ で も 尚 『 釈 摩 訶 衍 論 』 の 撰 述 者 は 四 重 問答
を無
明
と す る 。 ( 8 ) そ の 理 由 の 一 例 を宥
快 ( 一 三 四 五 − 一 四 一 六 ) の 『 釈 摩 訶 衍論
鈔
』 に 求 め て み よう
。 まず
初 重 に つ い て は 『釈
摩
訶
衍論
記 』 ( 普 観 ) の 説 を 紹 介 し 「 生 滅 門 の 行 因 得 果 の 施 設 に し て 真 如 究竟
の 実 義 に 非 ざ る 」 こ と か ら 無 明 と す る 。 第 二 重 の清
浄 本 覚 は 染 浄本
覚
に、 覚 は 不 覚 に 相 待 す る 境 地 で あ る と す る 『 釈 摩 訶 衍論
通 玄 疏 』 ( 通 法 ) の説
や 清 浄 本 覚 ( 満 覚 ) は 随 分 覚 と 相 対峙
す る と いう
普
観
の 意 に よ っ て 無 明 と み る 。 第 三 の 一 法 界 心 に つ い て は 、 同 じく
普 観 の 意 見 に よ っ て 、 不 二摩
訶 衍 法 と 比 較 し て 円 明 で は な い と す る 。 第 四 重 は 能 入 に相
対 し て説
示 さ れ る 法 に し て 無 明 の 域 に あ る と す る 説 ( 普 観 ) を 採 用す
る 。 こ れ ら 一 切 の 相 対 的 な境
地 か ら 脱 し た 法 と し て 不 二摩
訶 衍 法 が あ る 。 衆 生 本 具 の本
覚 を 明 か す 有覚
門 に 対 し て 建 立 さ れ る の が 無覚
門 で あ る 。 已説
一有
覚 門 。 次 説 二無
覚 門 . 何 故 一 切 衆 生 無 レ有
一 本 覚 一 耶 。 無 一 本 覚・故
。 何 故 無 二 本 覚 一 耶 。 無 一 衆 生 一 故 。 何 ( 9 ) 故無
二 衆 生 一耶
。 無一 一 所存
本 覚 故 。 一 切衆
生 に 本覚
は 無 い と い う 。 衆 生 が 無 い か ら で あ る 。 い う な れ ば 、 す べ て が 真 如 そ の も の で あ れ ば 、 そ こ に 衆 牛 と 仏 の 差 は な く、 殊 更 に 衆 生 の 本覚
の 有 無 を 議 論 す る 必 要 は な い 。 一 体 、 『 釈 摩 訶 衍 論 』 所 説 の 五 重 問 答 に は 、 空 海 が 『 秘 蔵 宝 鑰 』 で 披 瀝 し 、 長 覚 が浅
深 の次
第 と 指 摘 す る よう
に 、 施 設 さ れ る法
に 浅 深 等 の 意 が 内 在 す る の で あ ろう
か 。 中 国 宋代
の 注 釈 に お い て も 、 例 え ば 第 三 重 は様
々 に 論 じ ら れ て い る 。 即 ち 普 観 は 一説
と し て 前 重真
如 門 所 入 の 一 体 一 心 摩訶
衍 と み る 。 通法
は 後 重 真 如 門 所 入 の 一 法 界 心 と し て お り、 浅 深 の 次 第 に 従う
な ら ば 、 第 三 重 と 第 四重
は 前 後 す る こ と に な る 。 こ の よ う な 周 辺 の 事 情 が 示す
よう
に 五重
一232
一『釈 摩訶衍 論』の五重問答につ い て (中村) 問 答 に 階 梯
的
色 彩 を 覗う
こ と は難
し い 。 と こ ろ で 「 釈 摩 訶 衍論
』 の 立義
分 に は 十 六 の 所 入 法 と 十 六 の 能 入 門 の 三 十 二法
門 と 不 二摩
訶 衍 法 が 開 示 さ れ る 。 十 六 の所
入法
と は 根 本摩
訶
衍 を 八種
に 開 き 、 一 心 法 界 と 三 大 義 と を 二 種 に 開 い た 法 で あ る 。 所 入 法 に 対す
る 門 が 十( 10 ) 六 の 能 入 門 と さ れ る 。 こ の 能 入 ・
所
入 の 十 六 法 門 に 関 し て 『 釈 摩 訶 衍 論 』 は 「能
所 の 十 六 の 法 相 。 遍 満 遍満
平
等 平( 11 )
等
な り 。 一 味 一 相 に し て皆
差 別 無 し 」 、 「 能 入 所 入 の 十 六 法 門 。 円満
円 満 に し て平
等 平 等 なり
。 法 界 に 周 遍 し て 差 別 ( 12 )有
る こ と 無 し 」 と 釈 し て い る 。 衆 生 の機
根
に よ る法
・ 門 の 差別
性 を 認 め な が ら も 「 平等
に し て 一 なり
」 と締
め 括 る 。 こ の 教 説 に 従う
な ら ば 、 三 十 二 の法
門 に優
劣 や 浅深
を み る べ き で は な い 。 「 立義
分 」 で は 、前
重 の 十 六法
門 に 続 い て建
立 さ れ る 後 重 の 十 六 法 門 は 一 心 法 界↑
一 法 界 心 〉 と 三 大義
に よ っ て( 13 ) 開
設
さ れ る 。 一法
界
心 か ら 開示
さ れ る の が 一 体 摩訶
衍 二 二 自 摩訶
衍
の法
と 心 真 如 門 ・ 心 生 滅 門 で あ る 。 「 立 義 分 」 に続
い て 説示
さ れ る の が 「解
釈
分 」 で あ る 。 こ の解
釈 分 で 論 じ ら れ る の は 一 体摩
訶 衍 ・ 三自
摩 訶 衍 ・真
如 門 ・ 生 滅 門 の 二 法 二 門 に し て 、 残 り の 二 十 九 の 法 門 に 触 れ よう
と し な い 。 解 釈 門中
唯釈
二 四 法 一 。 所余
法 門 略 不 二 別釈
一 。 云何
為 レ 四 。 一 者 一 体摩
訶
衍
。 二 者 三 自 摩 訶 衍 。 三 者 真 如 門 。 四 者 生 滅 門 。 何故
余
法略
不 二解
釈
一 。 一 心 遍 満 等 九論
中 已 解釈
故
。 所 レ 謂 一 心 遍 満 論 中 唯 釈 二 四 法 一 。 所余
法 門略
不
二 別 釈 一 。 云 何為
四 。 一者
一体
一 心 摩 訶 衍 。 二 者 三 自 一 心摩
訶
衍 。( 14 ) 三
者
一 体 一 心 門 。 四 者 三自
一 心 門 。 五 重 問答
で第
三 重 ( 一 法 界 心 ) の後
に 登場
す
る第
四 重 は 従 来 コ ニ自
一 心 摩 訶衍
法 」 と 解 さ れ て き て い る が 、 『釈
摩
訶
衍 論 』 は 三自
一 心 摩 訶 衍 法 を ど の よう
に み て い る の で あ ろう
か 。 『釈
摩訶
衍論
』 の作
者 は 、 「 三 自 一 心摩
訶
衍 」 は 『 一 心 遍満
論 』 に 開 か れ る 法 に し て 、 『 大 乗 起信
論 』 が 示 す 二 法 二 門 の 法 と考
え て い な い 。 つ ま り 『釈
摩
訶
衍
論 』自
身
は 三 自 一 心 摩訶
衍
に 積 極 的 に触
れ る 立場
に な い 。 233智山学報 第五 十六輯
何
故 に 三 十 三 の 法 門 の 一 一 を詳
述 し な い の か と いう
疑 問 に つ い て は、 四種
の 理 由 を挙
げ
る に 過 ぎ な い 。 為 レ 欲 = 顕 二 示法
体
不 レ 分義
門 得 別 一 故 。 復 次為
レ 欲 レ令
下 使 二学
者 一 増 中 長 思 惟力
上故
。復
次 為 レ 欲 丁 令 丙使
開 二 示 教 理 甚 深 極 玄 「 。 出 乙 生尊
重 讃歎
心 甲 故 。復 次 為 レ 欲 下 顕 中 示 法 門
広
大
如 二 虚 空界
一 。義
理無
窮 如 二 澄 神 海 一 。 言 説 不 レ ( 15 ) 能真
談 一 。 思惟
不 上 レ知
二其
量 一 故 〈 丸 数 字 は 筆 者 〉摩 訶 衍 の 法 の 体 は 同 一 に し て 平
等
で あ る が、 法 に 到 る た め の 法 門 に は様
々 な 別 相 が あ る こ と を 顕 示 す る た め 、摩
訶 衍 の法
を 学 ぶ 者 の 思惟
力 を 増 長 せ し め る た め 、 ま たそ の 教 理 が 甚 深 に し て 極
玄
な る こ と を示
し て 尊 重讃
歎 の 心 を 生 じ さ せ る た め 、或
い は摩 訶
衍
の 法 門 は 虚 空 界 の よう
に 広 大 で あ り 、 深 淵 な る そ の 義 理 を窮
め る こ と が 非常
に 困 難 で 、 言語
道 断 ・ 心 行 処 滅 せ る境
涯 で あ る こ と を 顕 示す
る た め で あ る と す る 。 『釈
摩
訶
衍 論 』 に よ る と 、 馬 鳴 菩薩
は 九 十 種 の 華 文 論 と十
種
の摂
義
論
を 撰 述 し て い る 。摂
義 論 は 仏 教 の 思 想 を 論 じ た も の で 、 『 一 心 遍 満 論 』 「 融 俗 帰 真 論 』 『法
界中
蔵
論 』 『 秘 密 微妙
論
』 『衆
命
合 一 論 』 『 真 如 三 昧 論 』 『 心 性 清 浄論
』 『 不動
本 原 論 』 『 甚 深 玄 理 論 』 『 大 乗 起信
論 』 の 十 論 であ
る 。 こ れ ら は 立 義 分 所 説 の 三 十 三 法 門 の 典 拠 と さ れ る ( 16 )論
で も あ る 。 こ の 十 論 を紹
介 し た 後 に 『 釈 摩 訶 衍 論 』 は 「如
レ 是 十 論 其 数 雖 レ 別 而 建 立 相 同 一 種 焉 」 と 注釈
す る 。摂
義
論
十 論 の 建 立 の 相 は 同 一 で あ る と いう
の で あ る 。 も う 一度
「 五 重 問 答 」 に 戻 る こ と に す る 。 本 覚 と無
明 の交
渉
を 説 く 有 覚 門 に あ っ て は 、無
量 の 差 別 相 は 無 明 に よ る の で あ り 、 無 明 の 数 に 応 じ た ( 本 )覚
を 提 供 す る こ と が 可 能 と 考 え ら れ る 。 続 い て 説 示 さ れ る の が 無覚
門 であ
る 。有
覚
門 ・ 無 覚 門 に も 属 さず
、 本覚
や 無 明 に 左 右 さ れ な い 法 と し て 、 不 二 摩 訶 衍 法 が 施 設 さ れ て い る 。第
四 重 問 答 の 「 三 自 一 心 摩 訶衍
法 」 に 関 し て 気 掛 か り な こ と が あ る 。 『 大 正 大 蔵 経 』 所 収 の 『 釈 摩 訶 衍 論 』 に は ゜ ( 17 ) 「 三自
一 心 。 摩 訶 衍 法 」 と あり
、 『 大 日 本 校 訂 大 蔵 経 』所
収
の 『 釈 摩 訶 衍 論 』 に も 「 三自
一 心 摩 訶 衍 法 」 と し て 、 「 三自
一 心 摩 訶 衍 法 」 を 「 三 自 一 心 」 と 「摩
訶 衍 法 」 とす
る こ と で あ る 。 「 三 自 一 心 」 は 「 三 自 の 一 心 」 或 い は 「 三 一234
『釈摩訶衍論』の 五重問答につ い て (中村) 自 と 一 心 」 等 の
解
釈 が 成 立 し 、 生滅
門 の 心 や真
如
門 の 法 と 捉 え る こ と も で き よう
。或
い は 「 摩 訶衍
法 」 と の組
み合
わ せ で 『 釈 摩 訶衍
論 』 が 『大
乗 起信
論
』 に 説示
さ れ る と い う 二法
の 三 自摩
訶
衍法
や 一 心 〈 体 〉摩
訶 衍法
と み る こ と も で き る よう
に 思 わ れ 、従
来
三 自 一 心 摩 訶 衍法
と さ れ て き て い る こ と に 関 し て 再検
証
す る 必 要 が あ ろう
。 た だ し 、第
四 重 問 答 が 「 三 自 一 心摩
訶 衍 法 」 で あ る 要 因 に つ い て は 、 以 下 の よう
な こ と も 考え
ら れ る 。 本覚
と無
明 を 論 じ る有
覚 門 を 生 滅 門 、本
覚 を否
定 す る無
覚
門 を 真如
門 と置
き 換 え る こ と が 許 さ れ る な ら ば 、 生 滅 門 所 入 の法
た る 三自
一 心 摩訶
衍 法 が 四 重問
答 の末
尾 に 設定
さ れ る 意義
は 生 じ て く る 。 「 五 重 問 答 」 の 構 想 は 「 立 義 分 」 解 釈 に おけ
る 三 十 三法
門建
立時
の 説 相 を彷
彿
さ せ る 。 根 本 摩 訶衍
は 因 縁 ( 機 根 ) に 応 じ た 八種
の本
法 に開
か れ 、 さ ら に 三 十 二 の法
門 と し て 開 設 さ れ る 。 不 二 摩 訶 衍法
は 三 十 二 法 門 が 論 じ ら れ た後
に 、 唐 突 な 形 で 一 切 の機
根 や教
説 を絶
離 し た法
と し て 説 か れ る 。 「 立義
分 」 が 不 二 摩 訶 衍 法 を 標榜
す る こ と にあ
る こ と は 論 を俟
た な い 。不
二摩
訶
衍 法 に 視 点 を置
く
な ら ば 「 五 重問
答 」 の 主張
も こ の法
に 見 出 す こ と も 可 能 で あ る 。( 18 ) 「 五 重 問 答 」 で
不
二 摩 訶 衍 法 が論
じ ら れ る背
景 に 「維
摩
詰 経 』 の 「 入 不 二法
門 」 の 説 相 が 覗 え よ う 。 『維
摩詰
経
』 「 入 不 二法
門 」 で は 不 二 の法
門 に 入 る た め の議
論
が 三 十 二 人 の 菩薩
に よ っ て 重 ね ら れ る が 、 維摩
居 士 に よ る 「黙
然 」 に 極 ま る 。 不 二摩
訶 衍 法 は あ ら ゆ る 相 対 的 な 概 念 を 否 定 す る 。不
二 摩 訶 衍 法 の 思 想 的 典 拠 を 『 大 本 維 摩詰
契
( 19V
経
』 と 吐 露す
る の は 「釈
摩 訶衍
論
』自
身 で も あ っ た 。三
空
海
の 「五
重
問
答
」空 海 が 早 い
時
期 に 顕教
と 密 教 の 教 判 を論
じ た著
作
と し て 『 辯 顕 密 二 教 論 』 が あ る 。 空 海 は 顕 教 と密
教 を 峻 別す
る た め に 『 金 剛頂
瑜 伽 金剛
薩
堙 五秘
密修
行 念 誦 儀軌
』 『 金剛
峰
楼
閣 一 切瑜
伽瑜
祇
経 』等
の 六 経 典 と 『 金 剛頂
瑜 伽中
発
一235
一智山学報 第五 十六輯 ( 20 ) 阿 耨
多
羅 三 藐 三 菩提
心 論 』 『 大 智度
論 』 『 釈 摩 訶 衍 論 』 の 三論
書 を 用 い る 。 六 経 三 論 中 、 最 初 に 依 用 さ れ る の が 『釈
摩訶
衍 論 』 で あ り 、 「 五 重 問 答 」 と 称 さ れ る 箇 所 で あ る 。 「 五 重 問答
」 は 空 海 が 『 辯 顕 密 二 教論
』 に お い て提
案
し た 呼称
と 思 わ れ る 。 空海
は 「 五 重 問 答 」 に 深 い 意味
を 見 出 し 、 研 鑽 の 必 要 性 を 論 じ る と 同 時 に 、 そ の 一 一 に つ い て詳
述す
る こ と の 困 難 さ も 告 白 す る 。 『 辯 顕 密 二 教 論 』 に お い て 空 海 は 「不
二 摩 訶 衍 法 」 に つ い て 一 定 の 配 慮 を 施 す が、 他 の 四 重 問答
に つ い て 顧 み る様
子 は 見 ら れ な い 。 喩 し て 曰 く 、 已 上 五 重 の 問答
甚 だ 深 意 有 り 、 細 心 研覈
し て 則 ち 能 く 極 に 詣 る べ し 、 一 一 の深
義 紙 に 染 む る こ と ( 21 ) 能 はず
、 審 か ん じ て 之 れ を 思 へ 空 海 の 視 点 が 「 不 二 摩 訶 衍法
」 に あ る こ と は 、 続 い て 示 さ れ る 。 喩 し て 曰 く 、所
謂
不 二 摩訶
衍 及 び 円 円 海 徳 の 諸 仏 と は 、 即 ち 是 れ 自 性法
身 なり
、 是 れ を 秘密
蔵 と名
づ け 、 亦 金 ( 22 ) 剛 頂 大 教 王 と名
つ く、 等覚
十 地等
も 見 聞 す る こ と 能 はず
、 故 に 秘 密 の 号 を 得 、 具 に は 金 剛頂
経 に 説 く が 如 し 「釈
摩
訶 衍 論 』 の 不 二 摩 訶 衍 法 や 円 円 海 徳 の 諸 仏 を 密 教 の 自 性 法身
と 融 会 せ し め て い る 。 不 二 摩 訶 衍法
は 、 金 剛 頂 大 教 王 と 称 せ ら れ 、 十 地 や等
覚
の 境 地 で も 把捉
で き な い こ と か ら 秘 密 ( 蔵 ) と 名付
け ら れ る 。詳
細 に は 『 金 剛 頂 経 』 に 説 か れ る と言
い 放 っ て い る 。 或 い は、 喩 し て 曰 く 、十
地 経 論 及 び 五 教 の 性 海 不 可 説 の 文 と 、彼
の 龍 猛菩
薩 の 不 二 摩訶
衍 の 円 円 性海
不 可 説 の 言 と は 懸 ( 23 ) る か に 会 へ り 、所
謂 因 分 可説
と は 顕 教 の 分斉
な り、 果性
不 可 説 と い っ ぱ 即 ち是
れ 密 蔵 の 本分
也 と 説 き 、 『 十 地経
論
』 『 華 厳 五教
章
』 に いう
性 海 不 可 説 や 、 『 釈 摩 訶衍
論
』 所 説 の 不 二摩
訶 衍法
不 可 説 は 顕教
の 範 躊 で あ り 、 果 性 不 可説
の 境 涯 を表
詮 す る の は 密 教 の 本 分 で あ る と 断 っ て み せ る 。 空 海 の晩
年
の 論 であ
る 『 秘蔵
宝 鑰 』 に お い て は どう
で あ ろ う か ? 『 辯 顕密
二 教論
』 と は 相 違 し 、 五種
の 問 答 を そ れ ぞ れ法
相
・ 一 一. 論 ・ 天 台 ・ 華 厳 に 配 当 し て 、 教 判論
を 開 演 す る 。 不 二 摩 訶 衍 法 に 関 し て 論 及 す る こ と は な い が 、 一236
一『釈 摩訶衍論 』の五重問答につ いて (中村) 『 辯 顕
密
二 教論
』 で 不 二摩
訶
衍 法 を密
教 と し た姿
勢
に変
化 は な い 。 従 っ て 、 四 家大
乗
が密
教 に 遠 く 及 ば な い こ と を論
証
す
れ ば 意 を 尽く
す
こ と に な る 。 注 目 す べ き は華
厳 教学
へ の 空 海 の 対 処 で あ る 。 『 秘 蔵宝
鑰
』 に は ノ ノ ノ ハ ノ カ 問 如 レ 是 一 心 本 法 至極
住
心 、 ノ カ ク ノ ハ モ ハ ナ ル コ ト ル ノ ヲ モ ス ハ ナ ル コ ト ル ノ ヲ ニ レ ト モ ノ ニ ク ニ龍
猛 菩 薩説
、 三自
一 心 法 、 一不
レ 能 レ 一仮 二 能 入 一 一 、 心 不 レ
能
レ 心仮
二能
入 心 一 、 実 非 二 我名
皿而
目 二 於 我 } 、 ト モ ノ ヘ ニ ヘ リ ニ ク ノ レ ト モ ヲ ス ノ ニ ク ノ ト モ ヘ ヲ ス ノ ニ ト ン テ ナ リ ト シ テ ナ リ ノ ノ 亦 非 二 自 唱 一 而契
一 一 於自
一 、如
レ 我 立 レ 名 而 非 二 実 我 一 、 如 レ自
得
レ 唱 而 非 二 実 自 一 、 玄 玄又 玄 、 遠 遠
又 遠 、 如 レ 是 ハ ン ト ヤ カ ノ ハ ノ ニ シ テ ス ノ ニ ( 鈎 )
勝
処 為 レ 明 無 明 、 如 レ是
勝
処 無 明 辺 域非 二 明 分 位 一 、 と
あ
り
、 後 重 生 滅 門所
入 の 三自
一 心 の 法 を華
厳
の境
涯 と し 、密
教 の 下 位 に 配置
す
る 。 『秘
蔵 宝 鑰 』 の 「 三自
一 心 の 法 」 に は 、 『 秘 密 漫 荼 羅 十住
心 論 』 第 九住
心 の 華厳
教 学 へ の 空 海 の 意 向 が 反 映 し て い る 。 空 海 は 「 釈摩
訶
衍
論
』 所 説 の 四種
大 鏡 に つ い て 、如
実 空 鏡 は 真 如 門 の法
く 一 体 摩 訶 衍 或 い は 一 体 一 心 摩 訶 衍 V と し 、 因 熏 習 鏡 を 三 自門
の 法 即( 25 ) ち 生
滅
門
の 法 〈 三 自 摩 訶 衍 或 い は 三 自 一 心 摩 訶 衍 〉 に 配 当 す る 。 こ れ は 当時
の 華 厳宗
の教
理 を 念 頭 に お い た 配慮
と み ら れ る 。 『秘
蔵 宝 鑰 』 に は 、 ま た心
外
の 礦 垢於 此 に 悉 く 盡 き 、 曼 荼 の 荘
厳
是 の時
、 漸く
開 く 、 … 中 略 … 十 地 も 窺 騫 す る こ と 能 は ず、 三 自 も 歯( 26 )
接
す
る こ と を得
ず
、秘
中 の 秘 、覚
中 の 覚 な り と 述 べ 、本
有 の 浄菩
提 心 を 覆 い隠
し て い た 無明
の 垢 は 消 滅 し 、 本 源 の清
浄 な る心
が 開 示 さ れ る 。 こ の よう
な 境 地 は 十 地 で あ っ て も 極 め る こ と が で き な い し 、 三自
の 境位
に お い て も 掌握
す
る こ と は で き な い と 論 じ る 。華
厳
( 宗 ) 或 い は 華厳
教
学 を含
め 顕 教 を 三 自 ( 門 法 ) とす
る 空海
の 立場
が 看 取 さ れ る 。 前 述 し た 『 秘 密漫
荼
羅 十住
心 論 』 の 検 討 に 移 る こ と に し よう
。 仏華
所
説 の 三種
世 間 円融
之 仏 は則
四 種 の鏡
の 中 に は 第 二 に 当 る 也 。 四 鏡 と 言 っ ぱ 。 一 に は如
実
空 鏡 。 二 に は 因 熏 習鏡
。 三 に は法
出 離鏡
。 四 に は 縁 熏 習 鏡 な り 。第
一 の鏡
と は 。 … 中 略 … 此 は真
如 門 の 法 を表
す 。 一237
一智 山 学報第五 十 六 輯 二 に 因 熏
習
鏡
と は 。 性浄
本 覚 は 三 世 間 の 中 に皆
悉 く 離 れ ず 。 彼 の 三 を熏
習 し て 一覚
と為
し て 一 大 法身
之 果 を 荘厳
す 。 是 の故
に 名 づ け て 因 熏 習 鏡 と為
す
。 三種
世 間 と は 。 一 に は 衆 生 世 間 。 二 に は 器 世 間 。 三 に は智
正 覚 世 間 な り 。 衆 生 世 間 と は 衆 生 は 謂 く 異 生性
界
な り 。 器 世 間 と は 謂 く 所 依 止 の 土 な り 。 智 正覚
世 間 と は 謂く
仏 菩薩
等
是 れ な り … 中 略 … 此 は 三 自 門 の 法 を表
す
。 次 の 二 種 の 鏡 は染
浄 本覚
と 及 び 応 化身
と を表
す
。 此 の 住 心 に 於 い て( 27 ) は 無 用 な る が 故 に 出 さ
ず
。 『 大方
広 仏華
厳 経 』 に い う 衆 生 世 間 ・ 智 正覚
世
間 ・ 器 世 間 を 円 融 す る 盧舎
那 仏 は 『 釈 摩 訶 衍 論 』 で 解釈
さ れ る 四 種 の 鏡 ( 如 実 空 鏡 . 因 熏 習 鏡 ・ 法 出 離 鏡 ・ 縁 熏 習 鏡 ) 中 の 因 熏 習 鏡 で あ る と いう
。 如 実 空鏡
は真
如
門 の 法 で あ る 。 『華
厳経
』 の 教 主 に相
応 す る 因熏
習 鏡 は 三自
門 の 法 即 ち 生 滅 門 の 法 で あ る 。 因 み に法
出 離 鏡 と 縁熏
習 鏡 は 染 浄 本 覚 に し て 応化
身 の 境涯
と み る 。 さ て 『 釈 摩訶
衍
論 』 の 「廻
向 遍 布 門 」 に は 不 二摩
訶 衍 法 と 前後
両 重 の 所 入 の 八 法 並 び に 両 重 の 能 入 の 八 門 の 三 十 鵬 三法
門 を 扱 う 。換
言 す る な ら ば 真 如 ・ 生 滅 の 二 門 の 法 門 と 不 二法
が 論 じ ら れ て い る 。 こ の 中 で 不 二摩
詞 衍 法 と 華厳
冖 の
教
主 盧 舎 那仏
に 触 れ て い る 。 諸 仏 甚 深広
大
義 者 。 即 是 通 總 摂 前 説所
説 門 。所
レ 謂 通 摂 二 三 十 三種
本
数
法
一故
。 此義
云何
。 言 二 諸 仏 一 者 。 則 是 不 二 摩 訶 衍法
。所
以 者 何 。 此 不 二 法 形 二 於彼
仏 一其
徳 勝 故 。 大 本 花厳
契
経
中
作 二如
レ 是 説 一 。 其 円 円 海 得 諸 仏 勝 。故
其 一 切 仏 不 レ 能 三 成 二 就 円 円 海 一 劣 故 。若
爾 何故
分 流花
厳契
経 中 作 二 如 レ 是説
一 。盧
舎
那 仏 三 種 世 間為
二其
身
心 一 。 三( 28 )
種
世 間 摂 レ 法 無 レ 余 。 彼 仏 身 心 亦 復 無 レ 有 レ 所 レ不
レ 摂 焉 。 盧 舎 那 仏 雖 レ摂
三一 世間
一 。 而 摂 不 摂故
。 是 故 無 レ 過 。 『 釈摩
訶
衍
論 』 は 不一 . 麿 訶 衍 法 の内
実 で あ る 円 円 海 と 『 華 厳 経 』 の盧
舎
那 仏 の同
一 相 を 証 明 し よう
と す る 。 空 海 は こ の よ う な説
相
を 熟 知 し な が ら も 『釈
論
指事
』 に お い て 第 十巻
『釈摩訶衍論』の 五重 問答につ い て (中村 ) 此 .
中
ニ ハ 説 コ 両輪
具 闕 益 損 門 → 。 又 説 コ勧
劣
向
勝 不 退 門 弓 。 又 勧 修 利 益 分 。 此 . 中 二 説 彫 此 授 ⊃ , ト .不
二摩
訶
衍 ト 與 コ 三 自〔 29 )
摩
訶 衍 一 。 又 説 コ 龍 猛 菩 薩 ノ勧
誠 → と し 、不
二 摩 訶 衍 法 と 三 自 摩訶
衍 が 開 示 さ れ て い る と いう
。 三 十 二法
門 を 三 自摩
訶
衍 ( 後 重 生 滅 門 所 入 法 ) と み な す の であ
る 。 『 華 厳経
』 の盧
舎
那
仏 も こ の範
疇 に 収 ま る と 言 い た い の で あ ろ う 。 こ の 展 開も
普
幾 の華
厳
教学
を意
識 し た空
海
の 対 応 と 推 測 さ れ る 。 空海
が 指 摘 す る 『 釈 摩 訶 衍 論 』 の 教 説 に つ い て 、普
幾
は 『 華 厳 一乗
開
心論
』 中 で 、 次 の よう
に論
じ る 。 問 云 。 何 此 三為
一 大 毘 盧 遮 那 如 来 耶 。 答 。龍
猛 菩 薩 云 。 分 流 華 厳契
経
中 作 二 如 レ 是説
一 。盧
舎
那 仏 三 種 世 間 為 二其
身
心 一 。 三 種 世 問 摂 レ 法 無 レ余
。 又 云 。 性 浄本
覚
。 三世
間
中皆
悉 不 レ 離 二熏
習 一 。彼
三 而為
レ 一覚
一 一 荘厳
一 大 法身
之 果 一 。 是故
不
〈 大 正 蔵 11 名 〉 為 二 因 熏 習 鏡 一 。 云 何名
為
一一 三種
世 間 一 。 一 者 衆 生 世 間 。 二 者 器 世 間 。 三 者智
正 覚 世 間 。 初 謂 異 生性
界
。 次 謂 器所
依 止 土 。後
謂
仏 ( 30 )菩
薩 。 是 名 為 レ 三〈 〉 は 筆
者
普
幾
は 、 『 釈摩
訶
衍 論 』 の 廻向
遍 布 門 や 四種
大 鏡 を典
拠 と し て 、 『 華厳
経
』 の 「 大 毘 盧 遮 那 如 来 」 を 論 証 し て い る 。 こ の よう
に 華 厳 の教
主 を 三自
摩 訶衍
と す る 『釈
論
指
事 』 や 、 四 種 大 鏡 を真
如 の 法 ・ 三 自 門法
・染
浄
本 覚 と 差別
す
る 『 秘密
曼荼
羅
十住
心
論
』 に は 、 空海
の 普幾
に 関 す る 見事
な ま で の 対 応 が窺
わ れ る 。即
ち 華厳
教 学 の象
徴 と も い え る 盧舎
那
仏 を 『 釈摩
訶
衍
論
』 の 教 説 に よ っ て 下 位 に置
く処
理 を 行 っ て い る の で あ る 。 と こ ろ で 、 空海
が呈
示す
る 「 三 自 一 心 の 法 」 コ ニ 自 門 の法
」 を 『 釈 摩 訶 衍 論 』 の 三 十 三 法 門 に 配 当す
る と 前 重 生 滅 門 所 入 の 三自
一 心摩
訶衍
と 後 重 生 滅 門 所 入 の 三 自摩
訶 衍 と な る 。 そ の いず
れ か に 関 し て は 空海
自身
も 態 度 を明
し て い な い 。 ま た 『 金 剛 般若
波 羅 蜜経
開 題 』 に は 龍 猛菩
薩
の釈
義
に 約 し て 之 を談
ぜ ば 。 謂う
所
、有
為
と は 三 自 の法
。 無 為 と は 一 如 の 法 。 法 と は 衆 生 の 心 な り 。 一239
一智山学報 第五十六輯 三
自
門 に 染 浄清
浄 一 法 界 三 自 の 四 種 の 本覚
有
り 。 一 如 門 の 中 に亦
、 恒 沙 の 仏 徳 を 具 し 。 円 満 海 の 中 に 亦 、 無 量 の 徳 を 具 す 。 此 の 如 く の 諸 徳 は 皆 是 れ 一衆
生 の 心 法 な り 。 是 の 心 法 は 皆 無 明 大 念 の作
業
を 離 れ た る が 故 に 無 為 と名
つ く 。 皆 念 相 を 離 れ た る 覚 者 其 の 数無
量 な り 。 故 に 有 差 別 と 云 ふ 。 差 別 は 則 ち 一法
に 名 つ く る に 非 ず 。 高 ( 31 ) 下有
る が 故 に 差 と 日 ふ 。 と 、 わ ざ わ ざ 「 釈摩
訶 衍 論 』 に よ る と 断 り な が ら 、無
明 の 熏 習 に よ る 有 為 法 は 三 自 の 法 即 ち 生 滅 門 の 法 で あ り 、 無 明 の 熏 習 か ら 離 れ た 無 為 法 を 一 如 の法
即 ち真
如 門 の法
とす
る 。 そ の 三 自 門 に 染浄
・ 清 浄 ・ 一 法 界 ・ 三 自 の 本覚
を み る 。 生滅
門 は 無 明 の 念 相 に よ っ て 無 量 の 差 別 が 生 じ る 。 一如
門 や 円満
海 に は 無 量 の 差 別 相 は な く 一 相 で あ る 。 即 ち 生 滅 門 ・ 真 如 門 ・ 不 二 門 の 三 門 に よ る 解 釈 を 施 し て い る 。 『妙
法 蓮華
経 』 に 関 す る 空 海 の 理 解 を 示 し た 『 法 華 経 開 題 』 に は 左 記 の よう
に あ る 。妙
法
と は 且 く 六 重 の 浅 深 有 り 。 一 に は染
浄 本覚
妙
法 。 二 に は清
浄 本 覚 妙 法 。 三 に は 一 心 法 界本
覚 妙 法 。 四 に は 三 自 本 覚 妙 法 。 五 に は 一 如 本覚
妙 法 。 六 に は 不 二 本覚
妙
法 な り 。 此 の 六 重 に 就 い て 且 く 顕密
の 妙 法 を 分 た ば 。 初 め の 五 は 顕 の妙
法 後 の 、 は 密 の 妙法
な り 。 又前
の 五 が 中 に 初 め の 四 は 顕後
の 一 は 秘 なり
。 又 四 の 本 覚 の 中 に 更 に 顕 密 有 り 。 初 め は 顕後 は 秘 な り
次 の
如
く
知
ん ぬ べ し 。 今 の所
説 の経
は 染 浄本
覚
之 妙法
也 。何
を 以 ( 32 ) て 知 る こ と を 得 る 。 他 受 用身
応 化 仏 の 随 機 の 所 説 な る が 故 に 。 「 妙法
」 に は 染 浄 本覚
妙 法 ・ 清 浄 本覚
妙
法 ・ 一 心法
界 本 覚妙
法 ・ 三 自 本覚
妙
法 ・ 一 如 本 覚妙
法 ・ 不 二 本覚
妙 法 の 六種
の 浅 深 の 次 第 が あ る 。 こ の 六 種 の 本覚
は 『 秘 密漫
荼
羅 十 住 心 論 』 の 第 九 住 心 を 踏 ま え た内
容
に な っ て い る こ と は 言 う ま で も な い 。 い ま 試 み と し て 空 海 の 意向
に 沿 っ て 、 六 重 本 覚 を 五 重 問 答 に 配 当 す れ ば 、 以 下 の よう
な構
成 と な ろ う 。 染浄
本 覚 妙法
… … … 第 一 重 問 答 一240
一『釈摩訶 衍論 』の 五重 問答につ い て (中村 )
清
浄 本覚
妙
法 … … … 第 二 重 聞 答一 心 法 界 本
覚
妙
法
… 第 三 重 問 答三 自 本
覚
妙
法 … … … 第 四 重 問 答一 如 本
覚
妙
法 … … … ?不 二 本
覚
妙 法 … … …第
五 重 問 答議
論 と さ れ る べ き は 『妙
法
蓮 華 経 』 を染
浄 本覚
妙
法 とす
る こ と で あ る 。 空 海 は そ の 理 由 を他
受 用身
応 化 仏 が 衆 生 の機
根 に 随 っ て 説 い た 経 典 で あ る か ら と 明 か し て い る 。 こ れ は 『 辯 顕 密 二教
論 』 で み せ た 「 他 受 応 化身
の 随 機 の 説( 33 )
之 を 顕 と
謂
い 、 自 受 用身
法
性
仏 の 内 証智
の境
を 説 い た も う 、是
れ を 秘 と名
つ く 」 や 「 法 華経
は 是 れ 応化
仏 の 所説
( 34 ) な
り
… 中 略 … 或 る者
、 法身
の説
と 談ず
甚 だ 誣 罔 な り 」 を 踏 ま え た 論 の 展 開 で あ る 。 問 題 が な い わ け で は な い 。 空
海
が 『 秘 蔵 宝 鑰 』 で第
八住
心 と す る の は第
三 重問
答 で あ っ た 。 即 ち 「 一法
界 心 」 であ
る 。 『法
華
経 開 題 』 に従
え ば嬲 コ 心
法
界 本覚
妙法
」 と な ろう
。 と こ ろ が 空海
は 第 一 重 問 答 に 想定
さ れ る 「 染 浄 本覚
妙 法 」 に 配 し て お り、 支障
を一 き た す 結 果 を 招 い て い る 。
空 海 の 教
学
を継
承
し た真
言
宗
末 徒 に は第 一 重 問
答
を
染 浄 本覚
と す る こ と 、天
台
宗 に 配 し た 第 三重
問
答 と の 関係
、第 四 重 「 三 自 一 心
摩
訶
衍 法 」 に つ い て 、 或 い は空 海 が
新
た に 創 設 し た 一 如本
覚 に 関 す る 解 決 が迫
ら れ る こ と に な る 。四
中
国
の注
釈
者
の 「五
重
問
答
」中
国 の 宋代
( 九 六 〇=
二 七 ) に 撰 述 さ れ た 『釈
摩
訶
衍
論 』 の 注釈
『釈
摩
訶
衍
論賛
玄疏
』 ( 後、 通 法 疏 と す る ) ・智山学 報 第五 十 六輯 『
釈
摩 訶 衍 論 通 玄鈔
』 ( 後、 慈 行 鈔 と す る ) ・ 『 釈 摩訶
衍論
記 』 ( 後、 普 観 記 と す る ) に 散 見 す る 「 五重
問 答 」 に つ い て検
証 す る 。 筆 者 は嘗
て 「 『 釈 摩訶
衍
論
』 に 説 か れ る 熏 習 論 の特
徴 に つ い て 」 や 「 『 顕 密 二 教論
手 鏡 鈔 』 に つ い て 」 と い( 35 ) う 論
考
を 報 告 し て い る 。 は じ め に 通 法 疏 で あ る 。 通 法 の 疏 は 五 重 問 答 の 抱 え る 内 情 を露
呈 し た 論 述 を 行 っ て い る 。 つ ま り 「 五 重 問 答 」 に 関 し て 、 生 滅 門 と真
如 門 の 二 方 面 か ら の 理 解 を 提供
し て い る 。 ま ず 生 滅 門 的 見 地 か ら の解
釈 で あ る 。 「釈
摩 訶 衍 論 賛 玄 疏 』 に お い て 、 通 法 は 初 重 を 究竟
始覚
と み る 。明 と 無
明
を 釈 す る に 五有
り 。 一 の 問答
は 究 竟 始覚
な り 。 … 中略
… 是 く の 如 く の 聖者
は 明 と や 為 ん無
明 か 。 答う
。( 36 )
無 明 を
断
ず
る に 因 っ て 方 に 極 智 を 円ず
、無
明 の位
に 属 し て 明 の 分 位 に非
ず … 究 竟 始 覚 で あ っ て も 、 無 明 を 断 尽 し究
極
の 智 を 円満
す
る位
な の で 、 無 明 の 域 を 遁 れ る こ と は で き な い と いう
。第
二 重 は清
浄
本 覚 で あ る 。二 の 問
答
は 清 浄本
覚 な り 。 若 し 仏 果究
竟
始覚
を 以 て 無 明 の 位 に 属 し 明 の 位 に 非ず
、爾
れ ば清
浄 本覚
… 中 略 … 是く の 如 く の 本 智 は 明 と や 為 ん 無 明 か 。
答
う 、 斯 く の 如 く の 本 智 は 生 滅 門 に 依 る 、 染浄
本 に 対 し て清
浄 本 を 立 つ 、( 37 )
不
覚 に 対す
る に 因 っ て 此 の 覚 を 立 つ故
に 無 明 の 域 に し て 明 の 分位
に 非ず
。 こ の 本 智 は 生 滅 門 に 依 っ て 建 立 さ れ て お り 、 即 ち 染浄
本覚
に相
対 す る 本覚
で あ り 、 不覚
に 対 す る覚
の 範 囲 を 脱 し て い な い の で 、無
明 に あ る と い う 。三 の 問 答 は
後
重 所 入 なり
。 若 し 清 浄 本覚
を 以 て 亦 た 無 明 の 域 に 属 す、 後 重所
入多
一 心 の体
… 中 略 … 是 く の 如 くの 一 心 は
明
と や 為 ん 無明
か ・ 答う
斯 く の 如 く の 一 心 は 生 滅 に 依 る と為
し 無明
の 域 に 属 し明
の 分 位 に 非弌
廼
第
三 重 は 後重
所
入 多 一 心 の 体 、 つ ま り 三 十 二 法 門 で い う な ら ば 三 自 摩訶
衍 法 と い う こ と に な る 。 従 っ て こ の 摩 訶 衍法
も
生 滅 門 の領
域 に あ る 。 一242
一『釈摩訶 衍論』の五重問答につ い て (中村 ) 四 の 問 答 は
前
重 所 入 なり
。 謂 わ く 前 重 所 入 の 三自
一 心 摩 訶 衍 の法
は … 中略
… 是 く の如
く の 勝 つ 義 は 明 と や 為 ん無
明 か 、答
う
斯 く の 如 く の 勝義
は 能 入 の 三 自 一 心 の 生 滅 門 に 対 す る に由
っ て 説 く 、無
明 の 域 に 属 し 明 の 分 位 に 非ず
・@
第
四 重 は 後重
三 自 一 心 摩 訶 衍 法 で あ る 。 こ の 法 は能
入 ・ 所 入 の 関係
か ら離
れ て い な い の で 無 明 に 分 類 さ れ る 。 通法
の 「 五重
問 答 」解
釈 の 特 徴 は 生 滅 門 か ら の観
点
ば か り で な く 、 真 如 門 に 立 脚 し た 五 重 問答
解
釈 を 設 定 す る と こ ろ に あ る 。 当 然 の こ と な が ら 四 重 問 答 に 開 か れ る法
は す べ て 明 の領
域 にあ
る 。 こ の よう
に多
様
な る注
釈
が 成 立す
る点
に 『 釈 摩訶
衍
論 』 の 五 重 問 答 の 潜 在 的 な 問 題 が あ る と い え よう
。 応 に 問う
て 云 う べ し 、 一 人 有 り て 真如
門 に 依 る が 如 し 、先
ず
随 順 し て修
し た 後 に 証 に得
入 す 、 是く
の 如 く の覚
者
は 明 と や為
ん無
明
か 、 是 く の 如 く の 覚者
は 是 れ 明 の 分位
に し て 無 明 の 域 に 非ず
…中
略 … 又 問う
体
如
は … 中略
… 是 く の如
く の体
如 は 明 と や為
ん 無明
か 、 是く
の 如 く の体
如 は 是 れ 明 の 分 位 に し て無
明 の 域 に ず 、 又 問う
後
重 一法
界 心 の=
心体
は … 中 略 … 是 く の 如 く の 勝 処 は 明 と や 為 ん無
明 か 、 是 く の 如 く の 勝 処 は 是 れ明
の 分 位 に し て 無 明 の 域 に 非ず
、 又前
重
所 入 の 一体
一 心 摩 訶 衍 の 法 は … 中略
… 是 く の 如 く の 勝 処 は 明 と や 為 ん無
明
か 、是
く 茹 ) の 如 く の 勝処
は是
れ 明 の 分 位 に し て無
明 の 域 に非
ず
、真
如 門 の 視点
か ら 四 重 問答
の 明 ・ 無 明 を 判 断 す る な ら ば 、 四 重 の 全 て が明
と いう
こ と に な る 。 但 し真
如
門 に建
立 さ れ る法
で あ る た め の 不 都 合 も 生 じ さ せ て い る 。第
二 重 は清
浄
本覚
で は なく
体 如 の 法 と し て 、第
四 重 は 三 自 一 心 摩 訶 衍 法 で は な く 一 体 一 心 摩 訶衍
法 と し て処
理 さ れ て お り 、法
の 名称
が 改 変 さ れ て い る こ と で あ る 。 取り
分
け 四 重 問 答 す べ て を 無 明 で は なく
明 と す る こ と も 『釈
摩
訶 衍論
』 が 「 五 重 問 答 」 を 施設
し た 本 意 か ら はず
れ よう
。 と も あ れ 通 法 は 「 両 重 俗 門并
所 入 是 れ 無 明 の 域 」 と し 、 「 両 重 真 門并
所
入是
れ 明 の 分 位 」 と す る特
異 な解
釈
を推
し 進 め て い る 。 そ し て 第 五 重 の 不 二摩
訶 衍法
に つ い て 通 法 は 一243
一智山学 報第五 十六輯
五 の 問
答
は 不 二 大 乗 な り 。 … 中 略 … 唯 だ 此 の 一種
は 問 い有
り て答
え 無 し 、 意 は 不 二 離言
の 果 は 明 の 分 位 に 非ず
( 41 )
無 明 の 域 に 非
ず
を 顕 わ す 、 不 可 説 に斯
く 分 つ 良 き 証 な り 。 と し 、 不 二摩
訶 衍法
は 離機
根 ・ 離 教 説 の境
界 に し て 明 ・ 無 明等
の 分 別 の 領域
で な い と 説 く 。 続 い て 『 慈 行 鈔 』 で あ る 。 慈 行 は 衆 生 の 成 仏 に 前 後 が あ る 要因
は 、 本 覚 仏 性 の 強 弱 に あ る の で は な く 、 無 明 の 厚 薄 に あ る と指
摘 す る 。 『 釈 摩 訶 衍 論 通 玄 鈔 』 に是 く の
如
く の 種種
無 量 の 差 別 等 と は …中
略 … 先 ず 問 う 、 何故
に 先 に 成 仏す
る 後 に 成 仏 す る 等 を 指 す 並 び に 無 明に 由 る 、 是 れ 本 覚 不 平
等
に 非 ざ る が故
に 又 亦 た 近 く は 本 覚 の 仏 性 の 強 劣 が別
な る が 故 に等
の 二 義 を指
す 、 皆無
明 に 由 る
等
な り 。無 明 の 分
位
に し て 明 の 分 位 に 非 ず と は 明 は 即 ち 本 覚 な り 、 下 は 皆 準 知 し 上 の 差 別 す、 皆 無 明 に 由 り 本覚
に 由 ら( 42 )
ざ る に 因 っ て 下 の 文 を 転
記
す と 論 じ 、 五 重問
答
は 無 明 の厚
薄
に よ る覚
の浅
深 に 過 ぎ な い の で す べ て 無 明 の範
疇
に あ る と み な す 。 五 重 問 答 に 前 重 所 入 の 一 体 一 心摩
訶
衍 法 が 施設
さ れ な い 理由
は 、 一体
一 心 摩 訶 衍法
が 真如
門 の法
に し て あ ら ゆ る 観 待 を 絶 離 し て お り 、前
四 重 の よう
に 相 待 倶 成 の 義 に よ る 理解
と 同 一視
で き な い と す る 。真
如 門 に従
う 法 は 通 法 と 同 様 に 明 と す る 立 場 に あ る と も考
え ら れ る 。 第 五 重 の 不 二 摩 訶 衍 法 に は 殊 更 に 言 及 す る 様 子 は 見 ら れ な い 。 最後
に 普 観 の 『記
』 を み る こ と に し よ う 。 普 観 は初
重 を 満 浄 の 行 人 と 解す
る 。 『釈
摩
訶
衍 論 記 』 に は初
に 徴 す る満
浄
行
人 を 釈 す … 中 略 … 是 く の 故 に覚
了 す と 言う
と雖
も 猶無
明 の 分 位 に 有り
又 斯 く の 行徳
、 権 宜 に( 43 )
施
設 す れ ども
未
だ 真 の 成 を究
竟 す る こ と 能 わ ざ る が 故 に 明 の 分位
に 非ず
と 説く
… と あ り 、 初 重 を満
浄
行
人 と す る が 、 修 行 の 行 徳 は 権 り に 建 立 さ れ たも
の に 過 ぎ ず 、真
実 の成
就 と は い え な い と いう
。 次 に 第 二 重 。 一244
一『釈 摩訶衍 論』の 五重 問答につ い て (中村 )