はじめに
臨床的メタボリックシンドローム(MetS) 診 断基準の中の腹囲基準は本邦では男性85cm, 女 性90cm( 本 邦 腹 囲 基 準 ) と 定 め ら れ1), International Diabetes Federation(IDF)のア ジア人基準,男性90cm,女性80cm(IDF 腹
囲基準)と2),乖離がある。この乖離に対する
明確な解答は得られていない。
近年,筆者らは,The National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS)の指 針に基づき,日本の MetS の診断基準の各項目 の reference intervals(RIs)を検討した。そ の結果,男性および40歳以上の女性に限れば, 本邦腹囲基準と筆者らが算定した腹囲(臍周囲 径)の RIs の上限がほぼ一致した。また,女性 では,腹囲の RIs に年齢差があり,40歳未満 の女性に対する新基準設定の必要性を提唱した (表 1 )3)。 現 在 4 つ の 腹 囲 測 定 部 位 が 国 際 的 に 承 認 さ れ て い る4)。 即 ち, 最 下 位 肋 骨 下 縁 直 下 (WC1),最下位肋骨下縁と腸骨上縁の最小部 位(WC2),最下位肋骨下縁と腸骨上縁の中間 (WC3),腸骨上縁直上(WC4)である。WC2
臍周囲径による腹囲測定の妥当性と有用性
横山 裕一
*広瀬 寛
*神田 武史
*齊藤 郁夫
*河邊 博史
* * 慶應義塾大学保健管理センター 表 1 メタボリックシンドロームの腹囲基準と RIs から検討した 腹囲基準 腹囲基準 日本基準 臍周囲基準a WC3基準b IDF 基準 (RI より) (RI より) 40歳以上男性 85 87 85 (90)c 40歳未満男性 85 85 84 (90)c 40歳以上女性 90 88 78 80 40歳未満女性 (90)d 77 70 (80)d (cm) a:Yokoyama et al. JAT 16; 113-120, 2009b:Yokoyama et al. JAT 17; 735-743, 2011
c:黄色人種圏では,85cm が至適とする報告が多数ある。 d:若年女性の診断基準は設けられていない。
WC 3 肋骨最下縁と腸骨陵の中間で測定した腹囲 RI reference interval
は Anthropometric Standardization Reference Manual,WC3は World Health Organization (WHO),WC4は National Institutes of Health (NIH) と National Health and Nutrition Examination Survey(NHNES)によって支持 されている。IDF 腹囲基準では WC3を,本邦 腹囲基準では臍周囲径を採用している。後者は 国際的な支持を得ていないが,WC4と近似す るとされる5)。よって,IDF 腹囲基準との本法 腹囲基準の乖離は,腹囲定義の違いによる可能 性もある。 そこで,筆者らは,WC3と臍周囲径の同時 測定を行い,夫々の RIs を検討した6)。その結果, 臍周囲径の RIs に基づく基準値は,先行研究の 結果3)を再現した。一方,WC3の RIs に基づ く基準値は40歳 以上女性に限れば,IDF 腹囲 基準と合致した。また,女性では,臍周囲径と 同様,WC3にも年齢差があり,WC3の40歳未 満女性に対する新基準の設定が必要と考えた。 一方,WC3の男性の基準値は,検討した 2 つ の年齢層で夫々約85cm と算定され,IDF 腹 囲基準(90cm)と乖離していた。しかし,近 年,アジア諸国,特に黄色人種圏から,男性の WC3 の至適腹囲基準は85cm とする検討結果 が繰り返し報告されている7)-11)。これらのこと から,筆者らは,IDF 腹囲基準の男性基準を 90cm より85cm に変更する(修正1と定義す る),および,日本基準および IDF 基準に40歳 未満女性の新基準を加える(修正 2 と定義する) ことで,IDF 腹囲基準は WC3基準と,本邦腹 囲基準は臍周囲径基準と合致すると考える6)。 本研究では,上述のデータ6)を再解析し,1) 筆者らが提唱する「修正 1 」と「修正 2 」の妥 当性,2)WC3と臍周囲径による腹囲測定法お よび夫々の基準値の互換性,3)臍周囲径による 腹囲測定の意義を検討した。
方 法
本研究は,2009年に慶應義塾大学医学部の 倫理委員会の承認を得て,実施し,既に報告し た研究6)の追加検討である。集団の詳細はその 中で述べた。今回新しく算出した RIs は既報の 通り求めた。BMI は,対象各人の体重 / 身長 2 (kg/m2)で計算した。本集団では,40歳以 上の対象者に血清中の高分子型アディポネクチ ン濃度を CLEIA 法で測定した(SRL 社,東京)。 本邦の MetS 診断基準の 4 項目のうち,対象者 各人が満たす項目数をメタボリックインデック ス(MetI)と定義した。また MetI から腹囲の 項目の結果を除外したものを MetI(腹囲を除 く)と定義した。RI の決定方法は既報6)の通 りである。 2 群間の関係は単回帰分析で,複数群間の関 係は Kruskal Wallis 検定で検討し,夫々の関 連の強さを相関係数,H 統計量で表した。解析 は,StatView Ver.5.0を 用 い,PC は Inspiron 1300(Dell 社,米国)を用いた。結 果
1 .対象者のプロフィール 対象者のプロフィールは,既報6)に示した。 2 .WC3と臍周囲径の相関 40歳以上男性,40歳未満男性,40歳以上女 性,40歳未満女性(今回検討 4 群)において, 単回帰分析で WC3と臍周囲径の強い相関が 観察された(図 1 )。図 1 に示す 4 本の回帰式 に,筆者らが RIs から決定した臍周囲径の基準 値(表 1 )を投入し得られる WC3値は,夫々, 85(85.4),85(84.5),79(79.3),70(69.7)cm であった。3 .WC 3と臍周囲径を用いた腹囲診断の一 致率 「今回検討の 4 群」で,WC3または臍周囲径 を用い,夫々の RIs から算出した基準値(表 1 ) を用い,基準値を超えるかどうかの判定(腹 囲診断)を行ったところ,その一致率は91.9, 92.5,91.9,89.4% であった。 40歳以上の女性を対象に,IDF 基準(80cm) を WC3の基準値として,また80cm を臍周囲 径の基準値として行った腹囲診断の一致率は 74.6% であった。 4 .WC3および臍周囲径と BMI の関係 「今回検討の 4 群」において,単回帰分析で WC3と BMI の強い相関が観察された(図 2 )。 図 2 に示す回帰式に RIs に基づく WC3の基準 値(表 1 )を投入し得られる BMI 値は,24.2, 24.7,24.0,21.8kg/m2であった。 「今回検討の 4 群」において,単回帰分析で 臍周囲径と BMI の相関も示された(図 3 )。但 し,各群の相関係数は,WC3と BMI の相関係 数(図 2 )より低値であった。図 3 に示す回帰 式に RI から求めた臍周囲径の基準値(表 1 ) を投入し得られる BMI 値は各群で24.4,24.4, 24.6,21.9kg/m2であった。 40歳以上女性で,回帰式に臍周囲径90cm ま た は80cm を 投 入 し 得 ら れ る BMI は 夫 々 25.1kg/m2,22.2kg/m2であった。 5 .RI から算定した BMI の基準値 「今回検討の 4 群」において RIs から計算し た BMI の正常上限,即ちその基準値は24.3, 24.1,24.3,22.0kg/m2であった。 図 1 WC3と臍周囲径 の関係(単回帰分析) 40歳以上 40歳未満
(図
1) WC3 と 臍周囲径 の関係 (単回帰分析)
50 60 70 80 90 100 110 120 130 50 60 70 80 90 100 110 120 13050 60 70 80 90 100 110 120 130 50 60 70 80 90 100 110 120 130
男性
女性
WC3 (cm) WC3 (cm) WC3 (cm) WC3 (cm) 50 60 70 80 90 100 110 120 130 50 60 70 80 90 100 110 120 130 50 60 70 80 90 100 110 120 130 50 60 70 80 90 100 110 120 130y=-2.390+1.009x y=0.615+0.987x y=4.268 + 0.853x y=12.001 + 0.749x n=454 R2=0.956 n=381 R2=0.945 n=946 R2=0.776 n=358 R2=0.806 臍周囲径 (cm) 臍周囲径 (cm) 臍周囲径 (cm) 臍周囲径 (cm) 女性 男性
6 .WC3,臍周囲径,および BMI と MetI(腹 囲を除く)の関係 WC3,臍周囲径,および BMI と MetI(腹囲 を除く)の関係を夫々図 4 - 6 に示す。本集団 の女性では,40歳以上,40歳未満とも,MetI (腹囲を除く) 3 点群の例数が少なかったため, MetI(腹囲を除く) 2 点群に組み入れた。 「今回検討の 4 群」で,MetI(腹囲を除く) の増加に伴う両腹囲および BMI の増加が観察 され,Kruskal-Wallis 検定は,それらの分散総 てを有意と判定した。同検討の H 統計量は, 男性および40歳以上女性では,WC3/MetI(腹 囲を除く)の分散で,40歳未満の女性では, BMI/MetI(腹囲を除く)の分散で最大であっ た(表 2 )。 7 .WC3,臍周囲径,および BMI と血清中ア ディポネクチンの関係 今回,40歳以上の男女において,WC3,臍 周囲径,および BMI と血清の高分子型アディ ポネクチンの負の相関が観察された。相関係数 は,男性では BMI/ アディポネクチンの回帰, 女性では WC3/ アディポネクチンの回帰で最 大であった(図 7 )。
考 察
本邦腹囲基準と IDF 腹囲基準の不一致の問 題は未解決である。筆者らは腹囲の定義が前者 では臍周囲径,後者では WC3を意味している ことに着目し,性別,年齢別に臍周囲径および WC3の RIs に基づく基準値を検討した3,6)。そ 図 2 WC3と BMI の関係(単回帰分析) 40歳以上 40歳未満(図
2) WC3 と BMI の関係 (単回帰分析)
10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100 110 120 130 10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100 110 120 130 10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100 110 120 130 BMI (kg/m2) BMI (kg/m2) BMI (kg/m2) BMI (kg/m2)10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100 110 120 130 n=381 R2=0.827 n=454 R2=0.851 n=358 R2=0.783 n=946 R2=0.674 y=-2.148 + 0.310x y=-2.234 + 0.336x y=-3.553+0.336x y=-1.650+0.335x WC3(cm) WC3(cm) WC3(cm) WC3(cm) 女性 男性
の結果,前者は上述の「修正 2 」を加えた本邦 基準に,後者は「修正 1 」と「修正 2 」を加え た IDF 基準とほぼ一致することを示した。本 研究では,後続研究6)で作成した腹囲 2 箇所測 定のデータベースを再解析し,WC3と臍周囲 径の関係について新たな検討を加えた。本研究 は,本邦腹囲基準と IDF 腹囲基準の不一致に 対して新しい解釈を与えるものである。 WC3と臍周囲径の有意な相関は Spearman の順位検定で示されているが6),今回の単回帰 図 3 WC4’(臍周囲径)と BMI の関係(単回帰分析) 40歳以上 40歳未満
(図
3) WC4’ (臍周囲径) と BMI の関係(単回帰分析)
男性
女性
10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100 110 120 130 10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100 110 120 130 10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100 110 120 130 10 15 20 25 30 35 40 45 50 60 70 80 90 100 110 120 130 BMI (kg/m2) BMI (kg/m2) BMI (kg/m2) BMI (kg/m2)y= 2.088 + 0.257x n=381 R2=0.775 n=454R2=0.839 n=358 R2=0.666 n=946R2=0.553 y=-2.644+0.311x y=-4.024 +0.344x y=-1.403 + 0.295x 臍周囲径 (cm) 臍周囲径 (cm) 臍周囲径 (cm) 臍周囲径 (cm) 女性 男性 表 2 WC3,臍周囲径および BMI と MetI( 腹囲を除く)の関係 (Kruskal Wallis 検定による検討) vs MI ( 腹囲を除く ) WC3 臍周囲径 BMI 40歳以上男性 54.16 52.67 52.95 40歳未満男性 79.34 76.64 76.17 40歳以上女性 39.19 30.33 30.07 40歳未満女性 28.91 27.41 29.93 同順位調整 H 統計量 (vs MI) p 値は総て <0.0001 BMI Body Mass Index MetI Metabolic Index
図 4 WC3と MetI( 腹囲を除く)の関係 40歳以上 40歳未満
(図
4) WC3 と MetI (腹囲を除く)の関係
男性
女性
50 60 70 80 90 100 110 120 130 0.000 1.000 2.000 3.000 50 60 70 80 90 100 110 120 130 0.000 1.000 2.000 50 60 70 80 90 100 110 120 130 0.000 1.000 2.000 3.000 50 60 70 80 90 100 110 120 130 0.000 1.000 2.000 WC3 (cm) WC3 (cm) WC3 (cm) WC3 (cm) 0 1 2 3 0 1 2 3 0 1 2 0 1 2 (130) (144) (82) (25) (269) (135) (42) (8) (272) (75) (11) (820) (112) (14) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) 女性 男性 図 5 臍周囲径と MetI(腹囲を除く)の関係 40歳以上 40歳未満
(図5) 臍周囲径と
MetI (腹囲を除く)の関係
男性
女性
50 60 70 80 90 100 110 120 130 50 60 70 80 90 100 110 120 130 臍周囲径(cm) 臍周囲径(cm) 50 60 70 80 90 100 110 120 130 0.000 1.000 2.000 50 60 70 80 90 100 110 120 130 0.0000 1 2 1.000 2.000 0 1 2 0 1 2 3 0 1 2 3 (130)(144) (82) (25) (269) (135) (42) (8) (272) (75) (11) (272) (75) (11) 臍周囲径(cm) 臍周囲径(cm) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) 女性 男性
図 6 BMI と MetI(腹囲を除く)の関係 40歳以上 40歳未満
(図6)
BMI と MetI (腹囲を除く)の関係
男性
女性
10 15 20 25 30 35 40 45 0.000 1.000 2.000 10 15 20 25 30 35 40 45 1.000 2.000 10 15 20 25 30 35 40 45 0.000 1.000 2.000 3.000 10 15 20 25 30 35 40 45 0.000 1.000 2.000 3.000 0 1 2 3 0 1 2 3 0 1 2 0 1 2 (130)(144) (82) (25) (269) (135) (42) (8) (272) (75) (11) (272) (75) (11) BMI (kg/m2) BMI (kg/m2) BMI (kg/m2) BMI (kg/m2) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) Metl(腹囲を除く)(点) 女性 男性 図 7 WC3,臍周囲径,BMI と血清アディポネクチンの関係 0 5 10 15 20 25 50 60 70 80 90 100 110 120 130 0 5 10 15 20 25 50 60 70 80 90 100 110 120 130 0 5 10 15 20 25 15 20 25 30 35 40 45 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 50 60 70 80 90 100 110 120 130 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 50 60 70 80 90 100 110 120 130 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 15 20 25 30 35 40 45 血清アディポネクチン(µg/ml) 血清アディポネクチン(µg/ml) 血清アディポネクチン(µg/ml) 血清アディポネクチン(µg/ml) 血清アディポネクチン(µg/ml) 血清アディポネクチン(µg/ml) R2=0.125 R2=0.102 R2=0.110 R2=0.082 R2=0.135 R2=0.077 40歳以上男性(n=381) 40歳以上女性(n=358) WC3(cm) WC3(cm) 臍周囲径 (cm) BMI(kg/m2) 臍周囲径 (cm) BMI(kg/m2)
分析でも再現された。その相関の線形性,相関 係数の大きさより,両腹囲測定の互換性が示唆 される。さらに「今回検討の 4 群」総てにおいて, WC3と臍周囲径の回帰式上で,RIs に基づく WC3と臍周囲径の基準値が一致した。このこ とは,これらの基準値の互換性を意味する。即 ち,「修正 1 」および「修正 2 」を加えた IDF 腹囲基準と本邦腹囲基準の整合性を意味するも のである。 「修正 1 」および「修正 2 」を加えた IDF 腹 囲基準と「修正 2 」を加えた本邦腹囲基準を基 準値として,WC3および臍周囲径による腹囲 診断を男女別,年齢別に行った場合,その一致 率は各群で90% 以上であった6)。今回,RIs に 基づく腹囲基準値を基準値として同様の検討を 行っても同様の一致率が得られた。 2 つのシ リーズでの腹囲基準値間には3cm までの違い があるが,その程度の違いは腹囲診断に大きな 影響を与えないと推察された。このことは,腹 囲測定における誤差12)を鑑みると,理解可能 である。 近年,日本人における臍周囲径での腹囲測定 の至適基準値を男性87cm,女性80cm とする報 告がある13)。その報告と筆者らの検討結果3),6) は,男性では矛盾がないものの,女性では不一 致であると判定される。今回40歳以上女性を 対象に,臍周囲径の基準値を80cm に,WC3 の基準値を IDF 基準(80cm)に夫々設定し, 臍周囲径および WC3による腹囲診断を行った 場合,その一致率の著しい低下が観察された。 このことは,少なくとも40歳以上女性におい て臍周囲径基準を80cm に設定することは, WC3を用いた IDF 基準との整合性を損なうこ とを意味する。 今 回,WC3お よ び 臍 周 囲 径 に よ る 腹 囲 測 定の臨床的意義を比較した。まず,両者とも BMI と相関関係にあることが示された。また, 「今回検討の 4 群」総てにおいて,WC3/BMI の回帰直線上で RIs に基づく WC3の基準値に 対応する BMI 値と,臍周囲径 /BMI の回帰直 線上で RIs に基づく臍周囲径の基準値に対応す る BMI 値がほぼ一致した。さらに,それらの BMI 値は,各群で算定した BMI の RIs の上限 ともほぼ一致した。これらのことは,RIs に基 づく WC3および臍周囲径の基準値は,BMI の 基準値と呼応する妥当な肥満の指標であると考 えらえる。 総ての男性および40歳以上の女性では,今 回算定された BMI レベルは,日本人の肥満基 準 25.0kg/m2とほぼ一致していたものの,やや 低かった。25.0kg/m2は絶対的な肥満の基準で あり,RI に基づく BMI の正常上限とは異なる。 BMI が RI 上限を超え25.0kg/m2未満の者は肥 満予備群と見做すことができる。RI に基づく 臍周囲径および WC3の基準値は,この範疇の 者も拾い上げる基準値と考えられ,MetS のコ ンセプトに合致しているものと推察する。この BMI の正常上限値と両腹囲の基準値の回帰直 線上の合致は,夫々の腹囲基準値の妥当性を支 持する。このことは,筆者らの提唱する「修正 1 」の妥当性の裏づけとなる。 「修正 2 」は,40歳未満女性の腹囲は40歳以 上の女性の腹囲より小さいとするものであるが, このことは今回前者のRIに基づくBMIの正常 上限が後者の BMI の正常上限より小さかった という所見と呼応する。実際に「2009年の国民 健康栄養調査」14)は本邦女性の BMI の平均は, 20歳代(20.7kg/m2),30歳代(21.3kg/m2)で は40歳代(22.2kg/m2),50歳代(22.6kg/m2), 60歳代(23.0kg/m2)に比べ低い値であること を示しており,筆者らの算定の妥当性,さらに は「修正 2 」の妥当性を支持している。 40 歳以上女性の BMI と臍周囲径の回帰式 上で,上述の近年提唱された本邦女性の至適
臍 周 囲 径 の 基 準80cm13)に 対 応 す る BMI は 22.2kg/m2であった。この基準が IDF 腹囲基準 と整合性を欠く可能性を上述したが,BMI 基 準とも整合性も欠くと考えられた。一方,そ の回帰式上で,本邦腹囲基準の女性腹囲基準 (90cm)1)は BMI25.1kg/m2に対応した。本邦 腹囲基準の女性基準は絶対的肥満の指標として 寧ろ意味があるとも推察される。 今回,Kruskal Wallis 検定を伴う分散分析 は MetI(腹囲を除く)の増加に伴う,WC3, 臍周囲径および BMI の有意な増加を示した。 MetI(腹囲を除く)は MetS の進展を反映する と推察されるため, 3 因子とも MetS の指標に なりうると考えられた。 さらに,これら 3 因子は MetS の進展に寄与 するとされる血清アディポネクチンと負の相関 関係にあることも確認された。相関係数の大き さは本施設で行った過去の検討結果と矛盾して いなかった15)。 BMI,MetI(腹囲を除く),血清アディポネ クチンとの相関および分散の程度から,MetS の指標としては,臍周囲径は WC3にやや劣 ると考えられる。しかし,臍周囲径の測定は WC3の測定に比べ,簡便で時間的効率が良い。 後者では測定に際し,肋骨下縁,腸骨上縁,さ らにその中間点をマークする必要があるが16), 前者では測定部位が自明である。このことは, 臍周囲径法は一定時間内に多くの対象者の腹囲 測定が求められる大規模健診などでは大いに威 力を発揮することを意味する。
まとめ
1 .筆者らが提唱する「修正 1 」および「修正 2 」の妥当性が示された。 2 .「修正 1 」と「修正 2 」を加えると,IDF 腹囲基準は WC3の基準として,本邦腹囲基 準は臍周囲径の基準となり,両基準の対立は 解消され , 夫々の基準値を用いた WC3と臍 周囲径による腹囲判定の互換性が示された。 3 .臍周囲径による腹囲測定は,MetS の進展 の反映という点で,WC3よりやや劣るが, 簡便性において WC3法より有利で,大規模 な健診では威力を発揮すると考えられた。 4 .IDF 腹囲基準との不一致のため,本邦腹 囲基準やそれを用いた特定健診の意義に対す る批判はあたらないと考えた。また,現在進 行中の特定健診を継続する上で,健診現場は 2 つの測定法の結果を混同しないことが肝要 であると考えた。また,今後,最適腹囲基準 の議論においては腹囲の定義,年齢差などを 考慮することが必須であると考えた。 文 献1 )Arai H, et al: Prevalence of metabolic syndrome in the general Japanese population in 2000. J Atheroscler Thromb 13:202-208, 2006. 2 )Alberti KG, et al: Metabolic syndrome – a new
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