まさ土の細粒分に対する水分特性曲線に及ぼす密度の影響
山口大学大学院 学生会員 ○田下 哲也
山口大学大学院 正会員 中田 幸男 山口大学大学院(元) 学生会員 上野 宇悠
1.序論
実際の地盤は不飽和状態であり,降雨時における飽和度変化 とサクション変化の関係を把握することは斜面の安定性を評価 するうえで重要となる.しかし、まさ土に関しては,この特性に ついての研究が十分に進められていない 1).本研究では透水性 の低い細粒分が土の保水性に影響していると考え,まさ土の細 粒分のみを用いて供試体を作製し,保水性試験によって水分特 性曲線を把握することを目的とする.さらに,乾燥密度も変化さ せて行うことで土の締まり具合が水分特性曲線の形状にどのよ うな影響を及ぼすのか調べることとする.
2.採取したまさ土の特徴
試料は山口県防府市松ケ谷の土石流発生現場から採取した.
物理的性質を調べるために,現場密度試験,含水比試験,土粒子 密度試験,土の粒度試験を行った.得られた結果を他のまさ土分 布地域で発生した土砂災害現場から採取した試料に対する既往 の研究結果 2),3)と比較し,考察した.図-1 に含水比と乾燥密度 の関係を示す.この図より乾燥密度が増加すると含水比が減少 していることが分かる.これは,緩い地盤ほど保水性が高いこと を示している.松ケ谷の含水比は
11.3%,乾燥密度は 1.484g/cm³
であった.図-2
に細粒分含有率と乾燥密度の関係,図-3
に含水 比と細粒分含有率の関係,図-4 に粒度分布を示す.松ケ谷の細 粒分含有率は18%
であった.今回採取したまさ土は他の地域に 比べて細粒分含有率が高く,細粒分含有率に対して含水比が低 い傾向にある.3.異なる密度によるまさ土細粒分の保水性試験
本研究では,まさ土の細粒分を用いて乾燥密度
ρ
d=0.97,1.04,
1.14g/cm³
の異なる密度で現場状態の含水比となるように供試体を作製した.作製には静的締固め法を用い,
5
層に分けて作製し た.その時の締固め強さは0.3
,1.0
,2.0kN
であった.供試体を セラミックディスクの上に設置し,加圧板方式による保水性試 験を行った.サクションはS
u=u
a-u
wで表わされるが,間隙水圧u
w=0kN/m
2として,空気圧のみを供試体に加え,その大きさをサキーワード 細粒分,乾燥密度,水分特性曲線
連絡先 〒755-8611 山口県宇部市常盤台2-16-1 山口大学大学院創成科学研究科 TEL(0836)-85-9330
図-4 採取したまさ土の粒径加積曲線
0 .00 10 0 .0 1 0.1 1 10 10 0
20 40 60 80 100
粒径(m m)
通過質量百分率(%)
図-1 含水比と乾燥密度の関係
1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2 .0
0 5 10 15 20 25
乾燥密度(g /cm3)
松ヶ谷 広島 宇部 下右田A 下右田B 下右田C 下右田D 上馬屋 勝坂 奈美A 奈美B 奈美C
含水比(%)
図-2 細粒分含有率と乾燥密度の関係
1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2 .0
0 5 10 15 20 25
乾燥密度(g /cm3)
松ヶ谷 広島 宇部 下右田A 下右田B 下右田C 下右田D 上馬屋 勝坂 奈美A 奈美B 奈美C
細粒分含有率(%)
図-3 含水比と細粒分含有率の関係
2 7 12 17 2 2 2 7
3 7 11 15 19
23 松ヶ谷
広島 宇部 下右田A 下右田B 下右田C 下右田D 上馬屋 勝坂 奈美A 奈美B 奈美C 細粒分含有率(%)
含水比(%)
Ⅲ-32
土木学会中国支部第69回研究発表会(平成29年度)- 221 -
クションの大きさとしサクション制御を行った.供試体に加え た空気圧
u
aは試験機の許容値を考慮して50
⇒20
⇒10
⇒5
⇒1
⇒5⇒10⇒20⇒50⇒20kN/m
2 の順に加えた.供試体内部の水分量の変化量が
0.05g/h
未満になった時,これらの定常値に到達し たとした4).図-5
に試験中の乾燥密度ごとの供試体からの排水 量を示す.これより,排水量が負の値となって吸水しているこ と,乾燥密度が低いほど吸水量が大きくなっていることを示し ている.図-6には供試体の体積ひずみの変化を示している.サ クション制御中,供試体の体積が変化していることがわかる.この図よりサクションが大きいほど体積変化も大きく,特に
ρ
d=0.97g/cm
3の供試体は全体的に他の乾燥密度より体積変化が大きくなっている.図
-7
にサクション制御時の排水量と体 積ひずみの変化量を用いてサクションごとの供試体内の飽和 度変化を示した水分特性曲線を示す.乾燥密度が低いほどサク ションの低下とともに初期飽和度からの飽和度変化が大きく なることがわかった.その後サクションを増加させると,どの 乾燥密度においても飽和度の変化があまり見られなかったた め,細粒分の各々の密度での保水性が発揮されたと考えた.こ の時の飽和度は乾燥密度が小さいほど大きな値となった.4.保水性試験後のせん断特性
保水性試験後,垂直応力
σ =50kN/m
2で1
時間の圧密を与え,定体積非排気・非排水条件下で,せん断速度
0.2%/min
を与え るせん断を行い,せん断ひずみ26%到達時にせん断を終了し
た4).図-8
にせん断試験の結果を示す.これより,乾燥密度が 低いほどせん断強度が低くなることがわかった.これは,密度 の影響だけでなく,保水性試験終了時の飽和度の違いがせん断 中の間隙水圧の発生に影響していると考えられる.5.結論
まさ土の細粒分のみを用いて供試体を作製し,保水性試験に よって水分特性曲線を把握した結果,乾燥密度が低いほど吸水 過程における初期状態からの飽和度変化が大きくなることが わかった.また,細粒分の各々の密度で保水性が発揮されたと きの飽和度は,乾燥密度の減少とともに増加した.その後のせ ん断試験の結果では,乾燥密度が低く飽和度が高いほどせん断 強度が低くなることがわかった.
参考文献
1)
西田一彦:
マサ土の工学的性質とその取扱い指針-基本的性質-,土質工学会マサ土委員会,pp.9~31,1970,2)後田真里他:土石流災害の発生した勝坂および奈美地区におけ るまさ土の地盤材料特性
,
第46
回地盤工学研究発表会発表講演集,No.915,2011,3)
上野宇悠他:
広島市安佐南区 八木で採取したまさ土の地盤特性, 土木学会中国支部研究発表会発表概要集,67巻3号Ⅲ-44貢,2015, 4) 伊藤彰 悟他:
まさ土の低圧単純せん断挙動に与えるサクションの影響,
土木学会中国支部研究発表会発表概要集,65
巻3
号Ⅲ-12
貢,2013
図-6 体積ひずみの変化
0 10 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0
0.05 0.00 - 0.05 -0 .10 -0 .15 - 0.20 - 0.25 - 0.30
サクショ ン(kN/m2)
体積ひずみ(%)
ρd= 1. 043g/ cm3 ρd= 1. 135g/ cm3 ρd= 0. 965g/ cm3
図-7 水分特性曲線
0 2 0 4 0 6 0 8 0 10 0
0.1 1 10 100 10 00
飽和度( % )
ρd=1 .0 43 g/c m3 ρd=0 .9 65 g/c m3 ρd=1 .1 35 g/c m3 Su= 50⇒2 0⇒10⇒5⇒1⇒5⇒10⇒2 0⇒50⇒2 0
単 位 (kN /m2)
サクション(kN/m2)
初期飽和度(%) 終了時
図-8 せん断特性
0 3 6 9 12 15 18 2 1 2 4 2 7 3 0
0 16 32 48 64 80
0 3 6 9 12 15 18 2 1 2 4 2 7 3 0
0 16 32 48 64 80
σ= 50kN / m2
ρd= 1. 043g/ cm3 ρd= 0. 965g/ cm3 ρd= 1. 135g/ cm3 定 体 積 非 排 気 ・ 非 排 水 試 験
Su= 20kN /m2
せん断応力(kN/m2 )
せん断ひ ずみ(% ) 図-5 乾燥密度ごとの排水量
0 .8 5 0 .9 5 1.05 1.15 1.25
-6 -5 -4 -3 -2 - 1 0 1
乾燥密度(g /cm3)
開始時 終了時
排水量(g)
ρd=0 .9 65 g/c m3 ρd=1 .0 43 g/c m3 ρd=1 .1 35 g/c m3