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水稲低節位分けつ芽の発育に及ぼす土壌温度の影響

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Academic year: 2021

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

水稲低節位分けつ芽の発育に及ぼす土壌温度の影響

著者 中田 恭二

雑誌名 奈良学芸大学紀要. 自然科学

巻 10

号 2

ページ 159‑165

発行年 1962‑03‑26

その他のタイトル Effects of Soil Temperature upon the

Development of Tillering Buds formed on the Lower Nodes of Paddy Rice

URL http://hdl.handle.net/10105/4781

(2)

ourn. Nara Gakugei Univ., Nat. Sci., Vol. 10, No.2, Mar., 1962

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Effects of Soil Temperature upon the Development of Tillering Buds

formed on the Lower Nodes of Paddy Rice

Kyoji NAKATA

(Laboratory of Plant Cultural Science, Nara Gakugei University)

Abstract

The experiments were carried out in order to establish the effect of soil temperature upon the development of tillering buds in paddy rice plants transplanted. For 15 days extending from May 19, (the 3rd day after transplanting) to June 3, the soil temperature was maintained at 28°C in H plots and at 20cC in L plots by the aid of constant tempera- ture water tanks.

In addition, an observation was made on the effect of lamina-cutting upon the develop- ment of tillering buds. The results are as follows.

(1). The tillering buds already differentiated on the lower nodes, such as the 2nd and 3rd ones, grew well in L plots, while in H plot those were scarcely developed and those on the higher nodes, such as the 4th and 5th ones, began to grow.

(2). Lamina-cutting had an harmful effect on the development ot tillering buds, especially of those which were vigorously growing in length. '

(3). So far as the histological observations on tillering buds formed on the lower nodes are concerned, it may be safely said that cell divisions in the shoot apex and its surround-

ing tissues are inactive in H plots and are active in L plots.

a)

(3) (4)

(5)(6)

(3)

160 中  田 恭

いて気温の高低に関せず、移植後の土壌温度が高い場合には有効分けつの最低節位は高まり、一 方土壌温度の低い場合には最低節位の低下することを認め、低節位分けつ芽の発育に対して土壌

温度の影響は極めて大きいことを推察した。

そこで本年度においては、移植後の土壌温度の高低が低節位分けつ芽の発育に及ぼす影響を明 らかにするため実験を行ない、若干の知見を得のたで報告する。

この報告を述べるに当り、終始懇篤なる御指導を賜わり且つ校閲の労を執られた京都大学教授 長谷川浩博士並びに適切な助言をいただいた本学佐藤一郎教授に探謝する。なお実験施行上御協 力いただいた本学栽培学教室中森助教授及び石井教官にお礼を申しあげる。

実 験 方 法

土壌温度処理には野外に高さ約3mの「かまぼこ」型の屋根(ビニール張り)を設け、その下 に小型土壌恒温槽4基を設置した。土壌恒温槽は内法長さ71cm、巾41cm、深さ26cmで、その底 面近くには100〜250Wの温床用電熱線を配し、水温は自動的に調節し、水面上1cmを隔てて厚

さ2.5cmのスチロール系合成樹脂断熱板の覆を付した。なお水槽内各部へ均等に注水する装置 を施こし、水温が所定の温度より上昇した場合には適宜注水した。

供試ポットは長さ38cm、巾5cm、深さ13cmの角型トタン製でラッカp塗装を施こし、ポット は水槽中に浸し、ポットの土壌表面は水深約2cmに保ち、稲は上記断熱板の間を通して生育せし めた。

供試品種は水稲農林17号で、ビニール保温畑苗代にて養成した苗(第1表参照)を5月16日に 上記ポットに3要素各々0.2gを硫安、過石、硫加にて施こした上10株1本植となし、3日間室内 にて活着せしめた後、5月19日より6月3日迄15日間温度処理を行なった。処理温度は280C(H 区)及び20。C(L区)の2区で2達制 第1表 移植苗の生育状況(20個体平均)

とし、各々に努葉区及び無勢葉区を設 けた。勢葉は土壌温度処理開始時に第 2、3、4葉の莫身につき行なったが、

第1葉は枯死に近い状態であったので そのままとし、実質的には第5菓のみ が残った。各温度区のポット数は労葉区及び無勢葉区とも6ポットで、各々2ポットは生育調査

l

用に供し、4ポットは処理後10日目に採取し、分けつ芽の調査を行なうと共に固定して永久標本 を作製し、分けつ芽のShoot apexの検鏡を行なった。

なお対照区として移植区と同時に直播した区(直播区)を各水槽に1ポットずつ設けた。

実験結果及び考察

1.苗代分けつの消長

苗代分けつば1号分けつのみであったが、処理終了時における同分けつの生存率は、H勢菓区

が95%でその他の区はいづれも100%で、その生育状況は良好であった。苗代分けつば過去2ヶ

年の実験においては280C区で殆んど枯死し、180C区においてのみよく生育したのであるが、本

実験では28。C区においてもよく生育することを認めたのである。その原因は本年の首は過去2

(4)

ヶ年の苗にくらべて発育状況が比較的よかったことと、移植時及び移植直後(3日間の活着期間)

は室内においたため、移植後の環境条件が余りにも良好で殆んど植痛みがなかったためと考えら れる。なお直播区の処理開始時における分けつは、1号及び2号分けつがすでに出現しており、

280C処理においても枯死したものは認められなかった。

従って苗代分けつの移植後における消長には、過去2ヶ年の成績から移植後の土壌温度の高低 が大きく影響していることは事実であるが、環境条件の一つである土壌温度のみの影響でその消 長を決定することは出来ない。即ち酉の素質並びに生育程度と、移植による直接的な生育阻害及 びその後の環境条件いわゆる植痛みの程度との関連において、その消長を決定するのではなかろ

うかと考えられ、この観点から更に検討を加えねばならない。

2.生育状況

処理15日間における各区の生育量を示すと第2表の通りで、H区はL区にくらべて生育は全般 第2表 処理期間における各区の生育呈(20個体平均)

理後3〜4 日目にH区においては各区とも 図版に示すように柏葉に異状が認められ、

新葉は外観「こより」状に丸くまかれて抽 出し、その後1〜2 日を要して展開した。

なおこのような新薬は殆んどが抽出に際し 25 てその先端部が暫時前葉身の下部にまかれ て残るため菓身は輪を作った。このような 新薬は前年度においては認められなかった 20 ので、第1図時より本年と昨年の実験時に おける半句別気温を比較してみると、本年 は昨年より処理開始時から半句は、歳低気 温において2。C、平均気温で3。C低く経過

し、この間に上述の現象が現われたもの10 で、これは低気温に対して高土壌温度即ち 地上部温度と地下部温度の不均衡の結果こ のような出菓状態を示したものと推察され る。

に良好である。労葉区と無勢莫区における 差異は、H区においては後者が幾分まさる が、L区では主稗ならびに1号分けつの草 丈はともに前者がまさっている。また直播 区においてH区の茎数がL区にくらべて少 ないのは、高温による草丈の伸長と出葉の 促進に体内栄養分を多く賛したことが主な 原因と考えられる。

なお出葉速度についてはH区において促

(51

進し前報と同様の結果を示したが、その出 葉の様相に特記すべき点を認めた。即ち処

考 15 20 25 30 鬼 9

第=図 処理期間中の半句別気温の比較

(5)

162

3.節位別分けつ出現の様相 処理後15日目におけ

る分けつ出現の状況は 第2図の通りで、L区 においては単葉区、無 勢莫区とも低節位の2 号及び3号分けつの出 現率が高いが、これに 反してH無勢葉区にお いてはこれらの出現率 が僅か20%で、H勢菓 区では殆んど出現せ ず、両区とも4号及び 5号分けつから出現し た。即ち高温下では低 節位の分けつば殆んど 出現せず、低温下では 低節位の分けつがよく 出現することを認め た。このことは前報

(5)(6)と全く一致した結 果で、前項で述べたよ うに本年は出葉に異状

中 田 恭

% 1 00 L

50

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第2図 処理後15日目の節位別分けつ生存並びむこ出現率(20個体平均)

を来すくらいの低気温であったにもかかわらず、このような結果を得たことは、土壌温度の高低 が低節位の分けつ芽の消長に強く関与していることを示すものである。なおH、L両区を通じ勢 葉区は無勢糞区にくらべて、分けつ出現率の低いことが認められる。次に2次分けつの出現につ

いてみると、H区においては1号分げっが生存したためし区をはるかにしのいでいる。

また直播区の処理後における分けつ出現は、H、L区とも3号分けつから出現しているのであ るが、H区はL区にくらべて3号及び4号分けつの出現率が低く、両区の差は3号分けつで25

%、4号分げっで30%となっており、また2次分けつの出現率も著しく劣っていて移植区と反対 の現象を呈している。これは2項で述べたようにH区では体内養分の不足を来したのが主な原因 と推察される。

4.節位別分けつ芽の発育状況

(A).節位別分けつ芽の発育状況を調査したものが第3表で、移植時の苗では2〜4号分けつ芽 と2次Ilの分けつ芽が、また処理開始時の直播区では2号〜5号分けつ芽と、2次分けつ芽工1及 びI雪が肉眼で認められた。

移植区の分けつ芽は処理後10日目において、事業、無勢葉区ともにL区では2号分けつ芽がよ

く発育し、すでに無勢菓区で70%、労某区で20%の分けつが出現し、未出現の2号分けつ芽及び

3号分けつ芽も順次発育のあとが認められる。これに反しH区では2号及び3号分けつともにま

れに出現するのみで、分けつ芽は殆んど発育のあとが認められず、4号及び5号分けつ芽がよく

(6)

発育し、その出現数はL区の2号、3号分けつよりまさっている。なお2次分けつ芽についてみ ると、H区ではIlよりIコの方がよく発育しすでにI9は出現を始めているが、L区では低節位の Ilより順次発育していることが認められる。この傾向は1次分けつ芽の場合と同様2次分けつ芽 にも土壌温度の影響が現われていることを示すものである。

第3表 節位別分けつ芽の発育状況(10個体当り)

未 末 未 未

未 未

註:1.出は分けつ出現数、末は末出現の分けつ芽数、()内の数学は平均長(mm)を示す。

2.0は便宜上不完全菓出現節を示す。

次に事業区の分けつ芽は無勢葉区にくらべて著しく発育が遅れ、その差はL区では2号及び3 号の低節位分けつ芽、H区では4号及び5号分けつ芽において大きく現われ、時期的にはこれら の分けつ芽は伸長生長のさかんな時期に当り、最も栄養成分の必要な時に勢菓区ではその不足を 来し、分けつ芽の発育に悪影響を及ぼしたものと推察される。

直播区の処理後15日目における分けつ芽の発育状況は、3号及び4号分けつ芽はともにL区が 僅かにまさっておりしたがって分けつ出現率も高くなっている。また2次分けつ芽についても同 様の傾向が認められる。このことはH区のこの時期における栄養分の不足が主な原因と考えられ る。一万2次分けつ芽においてH区ではI2がIlより、またL区ではIlがI2より発育が良好である のは、処理後においては移植区と同様の土壌温度の影響が現われていることを示すものである。

(B).無勢菓区における移植時及び処理後10日目の材料について、分けつ芽のshoot apexの

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164 中 田 恭

縦断面を示すと図版のようである。即ち移植時及びL区の2号分けつ芽においては、分化された 葉の始原体がよく生長しているが、H区においては既に分化された葉が或程度生長したまま発育 休止の状態にあることがうかがわれる。そこでShoot apex及びその周辺の細胞について比較 すると、L区では細胞が小さくて核が比較的大きく、核及び細胞質の色素による被染皮はやや強 いが、細胞膜はうすくて被染度が弱い。また核の染色状態から分裂活動中と思われるものが多く 観察される。これに反しH区では細胞が大きく細胞膜が厚くてよく被染されているが、核は小さ く、核及び細胞質の被染度は弱く、細胞内容はL区にくらべて乏しいようである。また分裂活動 中と思われるものはL区にくらべて多く認められない。このように両区における細胞膜の形成発 達に関しては被染の程度から明瞭な差が認められたが、細胞膜の成分について今後検討しその差 異を明らかにしたい。

一方1号分けつについては、H、L区ともによく生育しているので、組織的に大差は認められ ないが、生育中のものではやはりH区の方が幾分分裂活性が高いようである。なお2次分けつ 芽においては、IlとIgをくらべて外観的にはA項で述べたように差は認められるが、組織的には H区、L区とも差は認められなかった。しかし発育の程度はIsでみられるようにH区の方が相当 進んでいることが分る。

以上の通り低節位分けつ芽を剖検したところ、高土壌温度下においては分けつ芽のShoot apex付近の分裂活性は低下し、分けつ茎としてのその後の発育が停止していることが観察され

た。この原因については現在栄養生理面から研究を進めている。

摘     要

移植後の土壌温度が水稲低節位分けつ芽の発育に及ぼす影響を明らかにするため実験を行なっ た。試験区は処理温度28。C(H区)及び20。C(L区)の2区2連制で、各々単葉区、無勢菓区を 設けた。温度処理は移植後3日目の5月19日より6月3日までの15日間で、次のような結果を得

た。

1.苗代分けつ(1号分けつ)の消長に及ぼす影響については、過去2ヶ年の成績(18。C区に おいて生存し28。C区では枯死した)と異り、H区においても殆んど生存した。即ちH区の勢稟 区で95%、無勢菓区及びL区の両区では100%生存発育した。このことについては苗の素質並び に移植後の環境条件が関与するものと推察された。

2.H、L両区を通じ、勢薬は分けつ芽の発育に悪影響を及ぼし、とくに出現間近の伸長生長 のさかんな分けつ芽に大きく影響した。

3.低節位(2号、3号)分けつ芽の発育は、L区においては良好であったが、H区では殆ん ど発育しなかった。その代り4号及び5号分けつ芽がL区にくらべよく発育した。その結果高温 下では低節仕分けつは出現せず、分けつ出現の節位は高くなった。

4.2号及び3号分けつ芽を検鏡した結果、H区においてはそのShoot apex付近の分裂活性 は低下し、発育を停止していることが認められた。

5.H区では葉の抽出状態に異常を認めたが、これは本年度は気温がとくに低く、地下部との

温度の不均衡の度が大であったためではないかと推察した。

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参 考 文 献

(1)佐本啓智他(1958):水稲早期栽培の穂数増加の原因についての考察、自作記27巻2号、182.

(2〕片山  個(1952):稲麦の分けつ研究、養賢堂

(3)尾田義治、本田強(1960):水稲分けつ出現に及ぼす日昆及び温度の影響ンこついて、自作記28巻4号、

386.

尾田 義治(1960)=分けつ体系をめぐる諸問題。農業及園芸35巻10号、1571・

仕)清水il三治、山口俊彦(1959):水稲における分けつ発生と温度、日本作物学会東海支部第26回研究発表 梗概、

(5)中田 恭二(1961):早期栽培水桶の生育収量に及ぼす土壌温度の影響、奈良学大紀要自然科学10巻1 号、79.

(6)中田恭二、中森英太郎(1961):苗代分けつの本田における消長特に土壌温度の影響、近畿作物・育種

談話会報・6号、38.

(9)

中田:水稲低節仕分けつ芽の発育−こ及ぼす土壌温度の影響

2号分けつ芽Shoot apex

X400

←移植時→

処理後10日目

←L  区→

処理後10日目

←H  区→

第15図版

(10)

×200

↓   L   区 一 号 分 げ っ の シ ュ ー ト ア ペ ッ ク ス

↑   H   区

↓   L   区

二 次分け つ 芽 I3

↑   H   区

5月22日(処理後3日目)の出葉状況

参照

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