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2.チームの便益帰着構成表

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Academic year: 2022

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(1)便益帰着構成表を用いたプロサッカーチームによる地域活性化の社会経済評価* Social economic evaluation of regional vitalization by professional football team with benefit incidence table* 大石 希**,浅岡朝泰***,髙木朗義****,北浦康嗣***** By Nozomi OHISHI**・Tomoyasu ASAOKA***・Akiyoshi TAKAGI****・Koji KITAURA***** 1.はじめに. 査から定量化した便益とクラブデータを用いて定量. 1993 年の J リーグ発足以降, 小学生から大人まで,. 的便益帰着構成表の一部について試行的に作成し,. “サッカーを行う”,または,試合観戦やスポーツ. プロサッカーチームの社会経済評価を試行する.. ニュースなどの“サッカーを見る”機会が増加した. また J リーグの試合を対象に行われる toto(スポーツ. 2.チームの便益帰着構成表. 振興くじ)のように“試合の勝敗を予測する”など,. 便益帰着構成表はプロジェクトの実施によって各. 様々な形でサッカーは人々の生活の中に溶け込んで. 関係主体にどの程度の便益を享受するまたは費用を. きている.地域では地域知名度や魅力の向上と試合. 負担するのかを表に示したものである.便益帰着構. 観戦者などの消費活動の増進に伴う地域経済の活性. 成表には定性的便益帰着構成表,定量的便益帰着構. 化を期待し,プロサッカーチームが次々と創設され. 成表がある.定性的便益帰着構成表はクラブチーム. た.さらにプロサッカーチームの活動は経済面だけ. の活動による効果を体系化するために,便益・費用. でなく,健康福祉の向上などの文化面においても地. 項目の定性的・記述的整理をする.定量的便益帰着. 域の活性化に貢献している.このような状況となっ. 構成表は計量モデルにより実際のデータを用いて便. ている一方,経常赤字のクラブチームが多数存在す. 益を計測し,それらを整理したものを指す.. るなど,運営には厳しい現状があり,地方公共団体 もチームに対する支援を実施しているが,税金投入. (1) 地域活性化効果. に対する説明責任を果たす必要があり,プロサッカ. プロサッカーチームは試合以外にもスポーツ振興. ーチームがもたらす様々な効果を定量的に示し,情. や社会福祉活動(介護予防など),地域貢献活動(地域. 報公開していることが求められている.. イベントの参加など)などの様々な活動を行ってい. 1). を用いてプロサッカ. る 2).一方,ファン・スポンサーを始めとした住民・. ーチームの活動によって経済面,文化面に波及する. 企業はボランティア活動を行い,チーム活動を支え. 地域活性化効果を受ける主体を明らかにするととも. ている.そのため,スポーツ機会の増加,スポンサ. に,効果を金銭タームで客観的に評価する.研究手. ー企業関連商品の売上増加,地域住民との交流によ. 順としては地域活性化プロセスに基づいて,定性的. る選手・スタッフの社会性向上,ボランティア参加. 便益帰着構成表を作成する.そして,アンケート調. 機会の増加などの効果で見られるように経済面だけ. 本研究では便益帰着構成表. でなく,文化面においても地域に効果をもたらして. *キーワーズ:プロサッカーチーム,便益帰着構成表, 地域活性化,社会経済効果 ** 学生員,岐阜大学大学院 工学研究科博士前 期課程社会基盤工学専攻 *** 非会員,岐阜大学大学院 工学研究科博士後 期課程生産開発システム工学専攻 **** 正会員,博(工),岐阜大学教授,工学部社会基 盤工学科(〒501-1193 岐阜市柳戸 1-1, a_takagi@gifu-u.ac.jp) ***** 正会員,博(経),岐阜大学助教,工学部社会基 盤工学科. いる.. (2) 地域活性化プロセス プロスポーツにおいては行動原理の異なった多く の主体が関与し,かつそれらの社会経済活動が相互 に連関し合っている. 1). .地域活性化効果を関与する. 主体と効果のカテゴリ毎に整理する上で,効果の発 1.

(2) (後方連関的効果) 警察・救急の支援 行政からの支援. 施設利用料. 施設管理の委託 (指定管理者). 印刷費. マッチプログラム の作成等. 警備費用. 安全な試合運営. グッズ製作費. グッズの作成. チーム登録費 選手登録費. (前方連関的効果). 運営スタッフの給与 選手・指導者の報酬. 用. 労. ホ ー ム ゲ ー ム の 開 催. 運営資金 の無償提供 研究データ の無償提供 労働力の無償提供. ボ ラ ン テ ィ ア. 物品の無償提供. ( ク ラ ブ 運 営 組 織 ). A. 補 助 金. J リ ー グ の 収 入. 下 部 組 織 の 活 動. チケット売上. Jスポンサー 契約料 Jグッズ 商品化権料. 放映権料. A B. スポンサー. C. ファンクラブ会費. コミュニケーション機会の増大 マスコミ報道. G. 移籍金・育成費. H. 育成事業の売上. サッカーチーム 選手 スポンサー への関心. テレビ・ラジオ中継. クラブ・選手・指導者 の知名度向上. 地方局・ラジオ の放送権購入. 指導者養成 ライセンス取得 スポーツ環境の充実. K. H. ファンクラブ 会員増加. スクール 事業の拡大 (普及). スクール事業 の増収. 地方新聞社 の増収. B. スポーツ消費者 の増加. 有料放送加入者 (観戦者)の増加. 視聴者の増加 リスナーの増加. K. F. D. 指導の 映像化・書籍化. 協会 の増収. 環境への意識増大. 教育レベル向上 企業イメージ向上. 歳出の削減. コミュニティの創出. クラブの強化. 戦力の育成(育成). プロ選手創出 (選手の社会化). L. B. 移籍金・育成費 の増収. サッカー周辺 の学問の進歩 医療費減尐. 流 入人 口 ・ 抑の 制. 国際試合・国際交流の増加. 試合成績 の向上. 教育現場・企業 への人的支援. 地 価 の 変 化. 住 民 魅立 力地 増と 大し て の. メディアの増収. 戦力(保有権)の放出. 人的資源 の有効活用. 産 業 魅立 力地 増と 大し て の. J. メディア広告 の増加. 戦力(保有権)の追加. 住 民 の 所 得 水 準 の 向 上 ・ 雇 用 の 増 加. 景観への影響 (自然破壊等). C. 地方新聞の 購買数の増加. B. 環境への影響 (公害・渋滞等). 県・市町村の 赤字補填の減尐. 生涯体育の推進. 競技人口の増加. イ ベ ン ト の 開 催. プロ指導者の創出 (引退選手の 再社会化). 施設等 ハード面の整備. 利. 社 会 貢 献 活 動. 建設業の増収. 利便性の向上. 労働力取引 の活発化. 益. 卸売業の増収. 就業機会の増加. 公共交通の需要増加. 営. B. インフラ整備. 業 グッズ売上. 税収の増加. E 製造業の増収. B. 交通利用者増加. 地 域 住 民 と の 交 流. 周辺地域の安全. 店舗の増加. 宿泊者の増加. E. F. A. B. スタジアム周辺商店街 などへの消費活動活発化. 試 合 観 戦. 指定管理者 の増収. 警察・警備 警備頻度増加. 小売業の増収. コミュニティの創出. 施設の無償提供. D. スタジアム内での 飲食・物販の売上増加. 働. 専門技術 の無償提供. 企 業 競 争 力 の 向 上. 他イベントの開催 チケット売上増加. J. 情 報 媒 体 と し て の 価 値 の 向 上. サービス改善 施設の水準 の向上. 施設利用頻度の増加. クラブの増収. 経営ノウハウ の無償提供. L. 改修・維持管理 の負担軽減. ネーミングライツ. グッズ売上の増加. 費. 試合への参加. 協 会 の 収 入. 施 設 価 値 の 向 上. サ公 ー共 ビ ス. 都 市 認 知 度 の 向 上. G 都市イメージの向上 ス ポ ー ツ 需用 要品 増 ・サ 加ー ビ ス へ の. J. 生活環境の改善 青尐年の健全育成防犯・防災意識 などの向上. 地元企業の知名度向上. 政策・制度の変更 犯罪・事故の減尐. 図 1 プロサッカーチームによる地域活性化プロセス. 生から帰着に至るプロセスを考える.本研究では プ. アルファベットの大文字は前方連関的効果をそれぞ. ロサッカーチームが実施する(a)ホームゲーム開催,. れ示している.このように,便益帰着構造を定性的. (b)ユースチームなどの下部組織の活動,(c)社会貢献. に整理した表を作成することによりチームの活動に. 活動の 3 つの活動に着目した.各活動による効果を. よる効果が把握可能となる.. 列挙し,プロセスを考えたものを図 1 に示す.発生 から帰着に至るプロセスの中の効果は,大きく上記. (4) 帰着便益の定量化. の活動の前後で 2 つに分けられる.後方連関的効果 3). 便益,費用項目をそれぞれ個別計測手法で計測す. は着目した活動を行うにあたって誘発され,活動. る.個別計測手法は,市場価値をもつ項目において. の前に発生する効果を表している.他方,前方連関 的効果. はチームデータや行政データを用いて便益を計測し,. 3)は着目した活動によりもたらされ,活動の. 市場価値をもたない項目はアンケート調査から旅行. 後に発生する効果を表している.. 費用法や CVM を用いて便益評価する.. (3) 便益帰着構造の定性的整理. 3.FC 岐阜と大分トリニータの地域活性化評価. (2)で示したプロセスにおいてチーム活動による. アンケート調査に基づいて,便益帰着構成表に整. 効果がどの主体に帰着するかを整理するために,関. 理した項目を定量的に評価する.. 係主体が受ける便益の内容を便益帰着構成表の該当 セルに記す 1)(表 1).主体はクラブ,観戦者,住民,. (1) FC 岐阜・大分トリニータの概要. 企業,専門機関,情報機関,競技団体の 7 区分に整. J リーグでは企業のサッカーチームを母体とするチ. 理した.観戦者はスタジアムで観戦する人を直接観. ームが多い中,FC 岐阜 4)は企業のサッカーチームを. 戦者,テレビやラジオなどで視聴する人を間接観戦. 母体としないチームである.2008 年より日本プロサ. 者とし,専門機関は行政,医療,大学に分類した.. ッカーリーグ(J リーグ)に加盟し,2010 年からは J リ. 表 1 のアルファベットの小文字は後方連関的効果, 2.

(3) 表 1 定性的便益帰着構成表 運営支援 営業収支 施設 ネーミングライツ 警備 観戦 飲食・物販 スポンサー 会員 J・スポンサー J・商品化権 J・放送権 グッズ 会話 マスコミ報道 中継 保有権 一般消費 労働 公共交通 インフラ整備 土地 人口 生涯体育 普及 育成 指導力 社会貢献 合計. 組織 a1 b1,-b2 C1,-C2. クラブ 選手. 指導者. 観戦者 ツーリスト. 直接. 間接. 住民 a2,-a3. b3 C1,-C2 D1 E3. e1,-e2 f1. F2,-F3 F4,-F3 G1,-G2. h1 i1 j1 k1,k2 l1 m1. i2,-i3. i2,-i3. 企業 地元企業 域外企業 a4,-a5 b4 C3 D2,-D3 E4 F5 G3,G4 h2,-h3 i2,-i3 j2,-j3 k3,-K4. 行政 a6,-a7. 専門機関 医療. 大学. 情報機関 メディア 大学 a10,-a5. 競技団体 他チーム 協会・J. A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z AA AB. b5 C4 D4 e5 F5. F5. h2,-h3 i2,-i3. h2,-h3 i2,-i3 j4,-j5 K5,-K6 L3,-L4. L2 M2,-M3. 合計. M4. N1,N2 O1. O2. q1,-q2 r1. Q2. O3,O4 P3. P1,-P2. q1,-q2 R2,-R3. R4,-R5 S1. T1. y1,-y2 z1,-z2. y3 AA1. α. AB1,ab2 β. O5 P4,-P5. γ. δ. ε. δ. U1 V1 W1 X1,X2 Y4,-Y5 Z3 AA2 AB3 ε. R6 S2 T2 U1,U2 V1 W2. R7 S3 T3 U1,-U3 V2 W3 X4,-X5. U1 V1 W2. X3. X5. AA3,AA4,-AA5 AB4 ζ η. AA7 AB4. AA6 AB5 θ. ι. κ. λ. AB4 μ. ν. π. a1 a2 a3 a4 a5 a6 a7 a8 a9 a10. 企業競争力の向上 労働力の無償提供から得る便益 労働力提供による活動時間の消費 経営ノウハウ・物品・金銭の無償提供から得る便益 社会的利益便益還元 労働力の無償提供,金銭的(補助金,税負担の軽減)支援から得る便益 歳出,税収減 専門技術,研究データの無償提供から得る便益 労働力,研究データの無償提供から得る便益 金銭の無償提供から得る便益. (+) (+) (-) (+) (-) (+) (-) (+) (+) (+). b1 b2 b3 b4 b5. 収入 試合運営費・人件費の支出 報酬 警備業・印刷業の増収 協会の収入. (+). C1 C2 C3 C4. 施設利用から得る便益 施設使用料 指定管理者の増収 管理費の削減. (+) (-) (+) (+). D1 D2 D3 D4. 施設水準・サービス向上による施設利用者の増加 企業知名度の向上 契約料 改善・維持費の削減. (+) (+) (-) (+). e1 e2 E3 E4 e5. 試合の安全運営 警備費用 スタジアムおよび周辺の安全 警備業の売り上げ増加 公共サービスの増加. (+) (-) (+) (+) (+/-). f1 F2 F3 F4 F5. 入場料 観戦することから得られる便益 入場料 観戦旅行から得られる便益 スポンサーへの関心・認知度向上. (+) (+) (-) (+) (+). G1 G2 G3 G4. スタジアム内での飲食・物販から得られる便益 飲食代・物品購入費 小売業の売上増加 製造業・卸売業の売上増加. (+) (-) (+) (+). h1 h2 h3. 出資による収入 出資することから得られる便益 出資. (+) (+) (-). i1 i2 i3. 会費収入 会員になることから得られる便益 会費. (+) (+) (-). j1 j2 j3 j4 j5. Jリーグからの補助金 広告から得られる便益 契約料 契約金収入 チームへの補助金. (+) (+) (-) (+) (-). k1 k2 k3 K4 K5 K6. Jリーグからの補助金 グッズ製作費 グッズ作成費 商品化権料 商品化権料収入 チームへの補助金. (+) (-) (+) (-) (+) (-). l1 L2 L3 L4. Jリーグからの補助金 放送権料 放送権料収入 チームへの補助金. (+) (-) (+). m1 M2 M3 M4. グッズ収入 グッズ購入から得られる便益 グッズ購入費 小売業の売上. (+) (+) (-) (+). N1 N2. コミュニケーション機会の増大から得られる便益 コミュニティの拡大. (+) (+). O1 O2 O3 O4 O5. チーム知名度向上から得られる便益 選手・指導者の知名度の向上から得られる便益 チーム・選手の情報を取得することから得られる便益 情報量 購買数の増加. (+) (+) (+) (-) (+). P1 P2 P3 P4 P5. テレビ観戦ラジオ視聴することから得られる便益 有料放送契約費 広告費 広告費 放映権料. (+) (-) (-) (+) (-). q1 Q2 q3. 選手放出による移籍金 選手獲得による移籍金 移籍から得られる便益. (+) (-) (+). r1 R2 R3 R4 R5 R6 R7. 収入 (+) スタジアム周辺の商店街などへの消費から発生する便益 (+) 飲食代・物品・サービス購入費 (-) スポーツ消費活動から得られる便益 (+) 物品・サービス購入費 (-) 売上の増加・店舗数の増加 (+) 税収の増加 (+). S1 S2 S3. 就業機会の増加 雇用の増加 税収の増加. (+) (+) (+). T1 T2 T3. 交通費 公共交通機関の売上増加 公共交通の赤字補てんの減尐. (-) (+) (+). U1 U2 U3. 利便性の向上 建設業の売上増加 整備費用. (+) (+) (-). V1 V2. 地代の変化 地代の変化に伴う税収の変化. (+/-) (+/-). W1 W2 W3. 住民立地としての魅力の向上から得られる便益 産業立地としての魅力の向上から得られる便益 人口増加による固定資産税・住民税の増加. (+) (+) (+). X1 X2 X3 X4 X5 X6. 生涯体育としてサッカーを行うことによる便益 コミュニティの創出 スポーツ関連用品・サービスへの需要増加 医療費減尐による歳出の削減 施設整備費用 選手登録費・チーム登録費の増収. (+) (+) (+) (+) (-) (+). Y1 Y2 Y3 Y4. 普及事業による収入 指導者への報酬 下部組織内で指導を受けることから得られる便益 指導料・スポーツ用品の購入. (+) (-) (+) (-). Z1 Z2 Z3. プロ選手が創出されることによる便益 指導者への報酬 専門的な指導を受けることから得られる便益. (+) (-) (+). AA1 AA2 AA3 AA4 AA5 AA6 AA7. 選手の再社会化から得られる便益 下部組織外で指導を受けることから得られる便益 指導力の直接活用から得られる便益 指導力の間接活用から得られる便益 指導者への報酬 都市イメージの向上 サッカー周辺の学問の進歩から得られる便益. (+) (+) (+) (+) (-) (+) (+). AB1 AB2 AB3 AB4 AB5 AB6. 知名度の向上から発生する便益 (+) 行政からの支援 (+) 環境への意識・青尐年の健全育成・防犯意識・防災意識の向上から得られる便益 (+) 地元企業の知名度の向上 (+) 都市イメージの向上 (+) クラブへの支援 (-). 3. (+) (+).

(4) 表 2 アンケート調査概要. ーグディビジョン 2 に参戦している.2008 年は景気. FC 岐阜 2009/12/5. 大分トリニータ 2009/10/18. 長良川競技場. 九州石油ドーム. 悪化の影響でスポンサーが集まらず,またホームゲ. 実施日. ームの 1 試合平均観客数は 3745 人と低迷した.その. 場所. 結果,収入が減少し,累積赤字は 300 万円を超えて. 調査方法. 聞き取り調査. 聞き取り調査. 対象者. 試合観戦者・公園利用者. 試合観戦者. 回答者数. 372. 571. ホームスタジ アムのある 都市の人口. 41 万人(岐阜市). 47 万人(大分市). チームは経営危機に直面した.2009 年は地域住民, 企業に愛されるチームづくり,選手の社会性の向上 を目的とした地域活動を約 200 回実施した.こうし た活動がクラブチームの認知度向上,新規のファン. 岐阜メモリアルセンター公園内. 大分トリニータ. 獲得につながりさらに,スポンサー企業,観客数が 増加に伴う興行収入の増加をもたらした.. 競技場内での飲食. 大分トリニータ 5)は FC 岐阜と同様に企業のサッ. 競技場内でのグッズ. カーチームも母体としないチームである.1999 年よ. 競技場外での飲食. り日本プロサッカーリーグ(J リーグ)に加盟し,2010. 競技場以外での飲食以外. 年現在は J リーグディビジョン 2 に参戦している.. FC岐阜. 193. 27 146. 45. 157. 25 107. 29 0. 50. 100. 150. 200. 250. 便益額(百万円/年). ホームスタジアムである大分スポーツ公園総合競技. 図 2 スタジアムおよび周辺で消費による便益額. 場では日韓 W 杯の会場であったため,スタジアム周. 大分トリニータ. FC岐阜. 辺の道路網が整備され,それに伴って宅地開発が進 競技場内での飲食. んでいる.大分トリニータのホームゲームの 2009. 競技場内でのグッズ. 年までの 1 試合平均観客数は約 20,000 人で,J リー. 148. 25 0. ール(V リーグ)など全国リーグに参戦しているチー. 229. 24. 競技場以外での飲食以外. 大分県にはバスケットボール(bj リーグ),バレーボ. 207. 44. 競技場外での飲食. グのチームの中でも多くの観客を集めている.また. 508. 40. 100. 200. 300. 400. 500. 600. 売上額(百万円/年). ムが存在し,スポーツに対する関心が高いと考えら. 図 3 スタジアムおよび周辺で消費による売上額. れる.. 試合観戦するために,自宅からスタジアムまでのアクセスに掛ける便益 試合観戦者の試合に対する便益. (2) アンケート調査概要. 356. 大分トリニータ. チーム活動による地域活性化効果を定量評価する. 住民に対してアンケート調査を実施した.これを大. 0. 100. 200. 300. 400. 便益額(百万円/年). 分トリニータの主催試合観戦者に対するアンケート 調査. 98 84. FC岐阜. ために,FC 岐阜の主催試合観戦者および会場周辺の. 図 4 試合観戦者の観戦による便益額. 6). と比較分析する.2 つのアンケート調査の概. もっとも大きい値を示した.なお,これらの便益は. 要を表 2 に示す.. 年間入場者数(FC 岐阜 107,557 人,大分トリニータ 345,481 人)から算出しており,大分の便益が高くな. (3) 試合開催時の消費による効果. っている.. 表 1 の R2,R3 の便益を評価するために主催試合 開催時の試合観戦者の消費による便益額,売上額を. (4) 試合観戦の社会経済評価. 算出した.図 2,図 3 に示すように競技場内外での 地域経済効果がもたらされ,FC 岐阜では競技場で. 表 1 の F2,F3,F4 の便益を評価するために試合. のグッズ,大分トリニータでは競技場内での飲食が. 観戦者の試合観戦することによる便益額を算出した. 4.

(5) 但し,大分トリニータでは試合観戦者の試合に対す 大分トリニータ. る便益計測はしていない.図 4 より,試合観戦する. 677. ために自宅からスタジアムまでのアクセスにかける FC岐阜. 便益が岐阜では約 1 億円,大分では約 3.6 億円であ. 66. ることが示された.そして,岐阜では試合観戦者の. 0. 100. 200. 300. 400. 500. 600. 700. 便益額(百万円/年). 試合に対する便益が約 0.8 億円であることが示され. 図 5 テレビ観戦による便益額. た.便益の評価は回答者 1 人/年当たりの平均便益額 と平均入場者数の積を便益としているため,試合観 大分トリニータ. 戦するために自宅からスタジアムまでのアクセスに. 1.5. かける便益は大分の方が高くなっている. FC岐阜. (5) テレビ観戦,ボランティア参加の社会経済評価. 5.9. 0.0. 1.0. 2.0. 3.0. 4.0. 5.0. 6.0. 7.0. 便益額(百万円/年). 表 1 の P1,P2,a2,a3 の便益を評価するために. 図 6 ボランティア活動の参加による便益額. テレビ観戦,ボランティア参加によって発生する便 大分トリニータ. FC岐阜. 益を算出した.テレビ観戦によって発生する便益を. 600 500 賛同人数(人). 図 5 に示す.岐阜では約 0.7 億円,大分では約 6.8 億円の年間便益総額となった.便益の評価は回答者. 400. 300 200 100. 1 人/年当たりの平均便益額と平均入場者数の積を便. 0. 益として算出しているため,大分での便益の評価が 提示金額(円). 高くなると予測される.それを勘案しても大分トリ. 図 7 地域貢献に対する支払意思額の累積分布. ニータに対する関心が高いことが要因であることが 13.7. 14. 便益額(百万円/年). わかる.ボランティア活動の参加による便益額を図 6 に示す.両者の便益を比較すると FC 岐阜の方が 高くなっており,住民のボランティア参加の機会を FC 岐阜が創出していることがわかる.. 13. 13.0. 12. 13.3. 13.1. 13.0. 11.6. 11 10 住民の 運動機会 への貢献. (6) 地域貢献に対する支払意思額と社会経済評価 図8. チームの地域貢献に対する支払意思額の評価結果 を図 7 に示す.「0 円」と回答したのは 10 人程度と. 非行防止 教育への 貢献. 交流機会の 増加. 家族や友人 との会話の 増加. 環境への 貢献. 地域経済 活動. FC 岐阜の地域への貢献評価における便益額. 60 48.7. 50. 便益額(百万円/年). 少なく,ほとんどの回答者が地域貢献に対して支払 意思がある.FC 岐阜の 1 人当たりの平均支払意思 額は 7,273 円,大分トリニータの 1 人当たりの平均. 40. 40.0. 41.6. 41.5. 50.2. 49.5. 49.7. 52.3. 50.4. 44.5. 30 20 10. 支払意思額は 13,057 円となった.この結果を踏まえ,. 0 住民の健康 への貢献. 地域への貢献における回答者の評価,年間入場者数,. 福祉へ の貢献. 非行防止教育 青尐年への貢献 世代を超えた 地元愛・家族愛 への貢献 交流機会の創出 への醸成. 地域に対する 頑張る気持ちの 自信の創出 醸成. サッカーへの 関心. サッカーレベル の向上. 図 9 大分トリニータの地域への貢献評価における便益額. 観戦回数から地域貢献の便益を算出した.その結果, 図 8 より,FC 岐阜ではどの便益も 0.1 億円前後の. が取り上げられていることが分かる.図 9 より大分. 便益額が示された.6 つの項目の中で家族や友人と. トリニータではどの便益も 0.4 億円以上の便益が示. の会話の増加においては最も高い便益額が示されて. されている.9 つの項目の中で地元愛・家族愛への. おり,会話の中にサッカーや FC 岐阜の試合の話題. 醸成,地域に対する自信の創出,頑張る気持ちの醸 成,サッカーへの関心,サッカーレベルの向上に関 5.

(6) 表3 運営支援 営業収支 施設 ネーミングライツ 警備 観戦 飲食・物販 スポンサー 会員 J・スポンサー J・商品化権 J・放送権 グッズ 会話 マスコミ報道 中継 保有権 一般消費 労働 公共交通 インフラ整備 土地 人口 生涯体育 普及 育成 指導力 社会貢献 合計. クラブ 選手. 組織 a1 -86 C1,-C2. 指導者. FC 岐阜の年間便益帰着構成表(単位:百万円). 観戦者 ツーリスト. 直接. 企業 地元企業 域外企業 a4,-a5 b4 C3 D2,-D3 E4 F5 G3,G4 h2,-h3 i2,-i3 j2,-j3 k3,-K4. 住民. 間接. 4.2 b3 C1,-C2 D1 E3. e1,-e2 86. 182. 115 i1 j1 k1,k2 l1 27. F4,-F3 G1,-G2 i2,-i3. i2,-i3. 専門機関 医療. 情報機関 メディア 大学 a10,-a5. 大学. 競技団体 他チーム 協会・J b5. C4 D4 e5 F5. F5. h2,-h3 i2,-i3. h2,-h3 i2,-i3 j4,-j5 K5,-K6 L3,-L4. L2 45. O1. O2. q1,-q2 r1. Q2. m2,-m3 N1,N2. m2,-m3. 66. m2,-m3. M4. P1,-P2. O3,O4 p3. R4,-R5. 133 S2 T2 U1,U2 V1 W2. S1. y1,-y2 z1,-z2. U1 V1 W1 X1,X2 Y4,-Y5 Z3 AA2 AB3. y3 AA1 AB1,ab2 β γ. O5 P4,-P5 q1,-q2. 81 -96. α. 行政 a6,-a7. δ. ε. δ. ε. R7 S3 T3 U1,-U3 V2 W3 X4,-X5. U1 V1 W2. X3. ζ. X5. AA3,AA4,-AA5 AB4 η. AA6 AB5 θ. ι. AA7 AB4 κ. AB4 λ. μ. ν. 合計 A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z AA AB. π. する便益額が高く,大分トリニータによって地域住. 定量化した便益,クラブデータから便益帰着構成. 民の地元に対しての愛着が増し,誇りが生まれてい. 表を作成し,地域活性化効果が各関係主体にどの程. ることがわかる.. 度もたらされているかを示し,試合開催時の効果が 試合会場だけでなく,地域経済にも,たらされてい. (7) 定量的便益帰着構成表の構築. ることがわかった.. 定量化した便益から便益帰着構成表を作成した.. 今回は試合観戦者を中心としたアンケート調査を. FC 岐阜の試合開催における年間便益帰着構成表を. 実施しており,意見に偏りがある可能性がある.今. 表 3 に示す.また定量化した便益項目は黄色,チー. 後は住民および地元企業に対してのアンケート調査. ムデータを参照したものを水色で示した.その結果,. を行っていくとともに,クラブの既存データ,行政. 試合開催の効果は試合観戦者の観戦による効果が大. データを用いることで便益帰着構成表の再構築を行. きいが,他にも地域経済において効果が大きいこと. う必要がある.. がわかった.. 4.. 参考文献 1) 髙木朗義:便益帰着構成表,公共政策のための 政策評価手法,伊多波良雄(編),中央経済社, pp.88-102,2009. 2) J リーグ公式サイト 百年構想 http://www.j-league.or.jp/100year/ 3) 山田浩之:社会資本の経済効果について,経済 論議第 116 巻 1・2 号,1975. 4) FC 岐阜オフィシャルサイト http://www.fc-gifu.com/ 5) 大分トリニータオフィシャルサイト http://www.oita-trinita.co.jp/index.php 6) 福永渉:便益帰着構成表を用いたプロサッカー チームがホームタウンにもたらす効果の社会経 済評価,修士論文,2009. 7) 浅岡朝泰,髙木朗義,北浦康嗣,大石希: 便益 帰着構成表を用いたプロサッカーチームの社会 経済効果,文化経済学会,2010.. おわりに 本研究では定性的便益帰着構成表を作成し,プロ. サッカーチームによる地域活性化効果を体系化し, アンケート調査から便益の定量化を行った. アンケート調査結果から試合観戦やテレビ観戦, ボランティア参加の市場価値をもたない便益評価し た.その結果,入場者数から大分トリニータの便益 が FC 岐阜と比較して大きな値が示されている.し かし,ボランティア活動における便益では FC 岐阜 の方が大きい値を示しており,FC 岐阜と住民が一緒 に取り組むことの効果が大きいことがわかった.大 分トリニータはテレビ観戦において大きな値が示さ れており,試合を観ることの効果が高いことがわか った. 6.

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参照

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