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エネルギー分野での国際協力の推進を (巻頭エッセ イ)

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エネルギー分野での国際協力の推進を (巻頭エッセ イ)

著者 十市 勉

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジ研ワールド・トレンド

巻 195

ページ 1‑1

発行年 2011‑12

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00046018

(2)

1

アジ研ワールド・トレンド No.195 (2011. 12)

エ ッ セ イ

アジ研ワールド・トレンド 2011 12

十 市   勉

エネルギー分野での 国際協力の推進を

といち つとむ/日本エネルギー経済研究所顧問

1945年生まれ。東京大学理学系大学院地球物理コース終了、理学博士。

専門は、エネルギー・地球温暖化問題。

2011年より現職。主な著書に「21世紀のエネルギー地政学」(産経新聞出版)

など。

  先進国は︑一九九二年の国連環境開発会議において︑持続可能な発展の達成に取り組むこと

を宣言した︒それ以降︑地球温暖化を引き起こすCO

にともなって増加を続けている︒しかし︑温暖 2排出量は︑世界の人口増加と経済成長

化対策に取り組むには安定した経済発展が必要であり︑そのためにはエネルギー安全保障の確保が不可欠である︒

  先進国では︑エネルギー安全保障の確保と気候変動の防止のため︑省エネルギーおよび低炭素エネルギーの導入促進策を進めてきた︒それ

に対して︑開発途上国︑とりわけ経済発展が著しい新興国では︑温暖化対策よりもエネルギーの供給確保と価格の安定化を最優先する政策が

とられてきた︒とくに︑エネルギー不足が深刻な中国やインドなどでは︑石炭の消費量が急増している︒それは︑国内炭の開発利用が︑雇用

の拡大やエネルギー安全保障に最も有効であ

り︑また石油や天然ガスに比べて価格が安くかつ安定しているからである︒それでも︑エネル

ギー輸入の急増が避けられず︑各国政府は積極的な資源外交を展開し︑自国の国営石油企業の海外での資源確保を支援している︒

  一方︑多くの開発途上国では︑国民生活の必需品である電気や石油製品などの価格を低水準

で維持することが重要な政治課題となってい

る︒中東やアフリカ︑中南米などの産油国は言うに及ばず︑石油などを輸入に依存する中国やインド︑その他の消費国でも︑国内のエネルギー価格の安定化のため︑政府の補助金によって︑

国際価格に比べて低い水準に価格を設定する政 策がとられてきた︒このような補助金政策は︑エネルギー消費の非効率化とCO

環境負荷の増大につながっている︒そのため︑ 2排出量など

開発途上国のエネルギー利用効率は︑先進国に比べて改善すべき余地が非常に大きく︑省エネルギー分野において︑先進国から開発途上国に

対して技術移転および政策や制度面での協力を進めることが重要な課題となっている︒

  さらに︑現在の世界人口は約七〇億人だが︑

そのうち一三億人は電気のない生活を送っており︑また調理用に薪炭や牛糞などに頼っている人口は二七億人にも上っている︒世界保健機構

の推計では︑非効率な室内ストーブでのバイオ

マ ス 利 用 に よ る 大 気 汚 染 で

︑ 毎 年 世 界 で

一五〇万人以上が早死にしているとしている︒

先進国の政治指導者は︑エネルギー貧困の改善に向けて︑早急に具体的な取り組みを進めるべきである︒

  今後は︑長期的にも開発途上国での化石燃料の需要の増加は避けられないため︑先進国は省エネルギーや低炭素エネルギー技術︑原子力発

電の安全性向上などの分野で︑とくに新興国との国際協力を強化すべきである︒そのためには︑開発途上国での投資環境の整備︑知的財産権の

順守とその保護制度の強化などが不可欠であ

る︒われわれ人類は︑世界的な経済発展︑エネルギー安全保障の向上︑地球温暖化防止の三目標をバランスよく実現するために︑技術および

社会・経済システムのイノベーションに全力を挙げるべきである︒

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