• 検索結果がありません。

再生医療の産業化と本格的な普及に向けて

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "再生医療の産業化と本格的な普及に向けて"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

   はじめに   

 皆さんもすでにご承知のとおり再生医療は生き た細胞等を積極的に利用し、失われた臓器・組織 の機能を再生する新たな概念の医療です。我が国 の再生医療は、京都大学iPS細胞研究所の山中伸 弥先生のノーベル賞受賞で象徴されるように、最 先端の基礎研究分野では世界を大きくリードして います。再生医療学会では、次々と新たな技術革 新や治療法の開発が報告されています。一方、薬 事承認された製品化という点では株式会社ジャパ ン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)製 の「自家培養表皮」と「自家培養軟骨」の2品種 に留まっており、諸外国に比べ遅れていてまだま だ発展途上と言えます。

 しかし、平成26年11月には医薬品、医療機器 に加えて再生医療等製品という新たなカテゴリー が追加される医薬品医療機器等法(薬事法の改正)、

および医師法のもとでの実地医療推進に弾みをつ ける再生医療等安全性確保法が施行され、再生医 療製品の実用化も加速するものと期待されます。

サイエンスの進歩、新たな規制制度の整備という 極めて恵まれた日本の環境にあり、我々産業界の 果たすべき役割、責任は大変重いと認識していま

す。ここでは、再生医療の産業化団体である「一 般社団法人再生医療イノベーションフォーラム

(FIRM)」の紹介と、今回の法改正への期待、今 後の産業化の課題について述べさせていただきま す。

   FIRM(ファーム)について

 一般社団法人再生医療イノベーションフォーラ ム、Forum  for  Innovative  Regenerative  Medicine(略称は「FIRM」)は、平成23年6月に 設立されました。定款には、「再生医療の研究成 果を、社会に対して、安全かつ安定的に提供でき る体制を構築し、多くの患者の根治と国益の確保、

国際貢献を実現すること並びに社会の合意形成に 向けて再生医療産業化の道筋を示すこと」を目的 とすることが記されています。これをうけて、以 下の事業を行うことを目指しています(定款より 引用)。

(1)  国際的視点に立った再生医療の産業化戦略及 び課題に関する提言と解決に向けた行動

(2)  国内外の再生医療に関わる関係者との交流並 びに提携

(3)  再生医療に関する調査及び統計の実施と公表

再生医療の産業化と本格的な普及に向けて

〜制度改正のインパクトと産業化の促進〜

一般社団法人 再生医療イノベーションフォーラム 運営委員長

横川 拓哉

Takuya Yokokawa

(2)

(4)  再生医療に関する研究会、公開講座等の開催、

運営

(5)  前各号に掲げる事業に附帯又は関連する事業

 平成26年6月には設立3周年を迎え、会員企業 数も設立時14社でしたが、平成26年9月現在108 社に増えました。サイエンスの進歩、法規制の変 化、国際的な製品化競争などの変化で、我々を取 り巻く環境は大きく変化してきました。と同時に、

FIRMの果たすべき役割と重点化すべき課題も変 化しています。

 産業化の役割を端的に言うと、再生医療製品を 開発する事業(製造販売業)、研究開発に伴う周 辺支援事業、受託加工、受託製造事業、関連事業 が利益を上げて次の再投資につながり、継続的に

事業として発展することです。このことが、患者 さんに継続的に最新の医療を安価に安定的にお届 けするために必須です。様々な再生医療が普及す れば、そのコストも飛躍的に下がることが期待で きます。産業化が成功すると、より多くの研究予 算を生み出し研究を発展させます。製品が国際競 争力を持つと、日本の産業も成長できます。患者 さんへの最新医療の普及、研究開発の継続的発展、

国際競争力の強化などを目的に、FIRMは再生医 療の産業化を様々な業界活動を通して推進してお ります(図 1)。

■標準化・規格化

・我が国としての標準化戦略の策定

・国際協議の場で提案し具現化

■治療普及

・ビジネスを確立するため  のコスト/保険の課題

・国民に対する世論形成  (保険に対する意識改革)

・10 年後の基盤医療化

・世界普及への産業化

■人材/教育認定制度

・細胞培養土等の新制度  の必要性

・培養制度の向上

■社会受容性

・世論形成

・メディアとの連携

・患者目線での正しい情報の提供

・医療経済評価の薬価反映

■前臨床研究〜治験の課題

・安全性の基準とモデル確立

・統計評価方法とガイドラインの確立

・未承認品目の利用規制明確化

■ヒト細胞を利用した研究〜産業活用を視野に入れた制度設計

・公的な細胞バンクの必要性

・探索的な臨床試験ができる制度

■製造

・周辺産業の整備による  バリューチェーンの構築

・機材やサービスの基準作り

・GMP/QMS に対して新たに  制定される GCP への対応

■再生医療等製品/

 IP・ノウハウ

・標準化と絡めた特許戦略

・新規参入/中小企業サポート

■上市後の評価

・製造販売後臨床試験、市販後調査等の在り方の検討

・安全管理、市販後措置等

基礎研究 非臨床研究

臨床研究

薬事戦略相談→治験

承認申請→承認 製造 承認(条件及び期限付き承認を含む)

再生医療等製品

(医薬品、医療機器等の品質、有効性 及び安全性の確保等に関する法律)

医師法下での実施

(再生医療等の安全性の確保に 関する法律)

■標準化・規格化

■標準化・規格化 FIRM の 再生医療実現化活動

共通言語・定義の確認と説明 短期・中期・長期のビジョン提言

積極的な情報発信 患者団体との意識共有

産学官民連携 国際協議・提案

■細胞培養加工施設の要件

・製造及び品質管理に係わる要件の整理と基準作成

・製造業許可要件(構造設備)の整理と基準作成

■制度の扱い

・先進医療活用による保険外併用の推進

・再生医療等提供機関、特定細胞加工物製造業者  の責任区分定義

上市・薬価・市販

図 1 

(3)

   再生医療にまつわる制度的枠組みの改訂

 冒頭でも述べましたように再生医療は、生きた 細胞等を積極的に利用することが特徴です。治療 に用いる細胞は(生き物ですから)個体差があり ます。同時に治療を受ける患者側の自然治癒力に も大きな個体差があります。多くのヒトに同じ薬 剤を用いる医薬品とは大きく異なります。このこ とが再生医療の治験で、統計的有効性を示すこと を(医薬品に比較して)難しくしています。

 今回の改正薬事法では、医薬品でもなく医療機 器でもない細胞を用いた医療を「再生医療等製品」

という新たなカテゴリーを世界に先駆けて法律の 中で定義したことが重要です。またこれを受けて、

均質でない再生医療等製品の特徴を考慮して、有 効性が推定され、安全性が認められれば特別に早 期に条件および期限を付して製造販売承認を与え るという画期的な考え方です。早期承認により、

多くの患者さんが最新のサイエンスに基づいた治 療をより早く受けられるようになると期待されま す。

 もうひとつの注目すべき点は再生医療等安全性 確保法です。もともと日本独自の手法として、医 師法下で臨床研究や自由診療による再生医療が実 施されていました。しかし、安全で高品質な細胞 の取り扱いは煩雑で、細胞培養などが一部の医療 機関の施設内での実施に限定されていたことが普 及を妨げていました。今回の新たな法律で、培養 などの細胞加工を専門とする外部機関に委託する ことが可能となりました。これにより、医療行為 を行う医師と、専門の細胞加工業者がそれぞれ連 携して、餅は餅屋で効率的に分業できるようにな りました。このことは、最先端の臨床研究を推進 し、再生医療の進歩を加速します。将来、臨床研

究の結果を活用して、治験を効率的に進められる と承認される再生医療製品は急激に増えると期待 されます。

 今回の二つの法整備により、日本が世界で最も 再生医療の開発が進めやすい環境になりつつある と考えます。「なりつつ」というのは、新しい法 の具体的な運用によって、真のポテンシャルが今 後明らかになるからです。

 最先端の科学、医学に合致したこの規制制度改 革に日本はもちろん世界の産業界が驚きました。

どのようなプロトコルで治験が進められるか、今 後の具体的な運用が非常に注目されています。す でにPMDAの薬事戦略相談なども整備されてい るので、アカデミア、規制当局とも相互に意見交 換しながらこの制度改革を活用した産業化を推進 したいと考えています。

   産業化の課題

 サイエンスの進歩、規制制度の改革は、最も重 要な要素のひとつですが、それ以外にも考慮すべ き重要な要素があります。再生医療を実現するた めには、細胞培養のための様々な機器、培地や細 胞足場などの材料供給、輸送システム、医療保険 の整備など新しい産業ですからあらゆるインフラ の整備が必要になります。さらには、様々な標準 化基準の設定、財政的な環境整備、海外製品の導 入の仕組みなども考える必要があります。

 異なる技術分野のすり合わせ技術こそは、バイ オ関連技術のみならず日本が培ってきた多彩な

「ものづくり力」であり、再生医療はこれらを活 かした競争力ある新産業に育つ可能性があります。

今がまさに勝負時と考えます。

 FIRMでは、4つの専門部会と事業部会、広報

(4)

部会の活動を通じて様々な課題に取り組んでいま す。以下に各部会の活動内容を紹介します(図 2)。

<規制・制度部会>

 日本のみならず、諸外国における再生医療・細 胞治療等に関する規制・制度の現状について調査 し、その実態を把握します。再生医療の産業化を 適切に進めるため、規制制度のあるべき姿ならび にその内容について、会員企業からの意見をとり まとめ、適宜提言を行って来ています。平成26 年11月に施行予定の改正薬事法(医薬品医療機 器等法)、再生医療新法(再生医療等の安全性の 確保等に関する法律)について一層の理解を深め るとともに、専門分野ごとに部会内にワーキング グループを設置し、これら新体制に対して会員企 業の声を反映できるよう規制当局との意見交換を 行っています。

<サポーティングインダストリー部会>

 再生医療をサポートする、細胞培養加工装置、

機器、材料、サービス等周辺産業のあるべき姿を サプライヤーとユーザーの双方の観点から議論し、

その実現のために有効な基準・標準のあり方を検 討しています。5つの分野(設備・機器、自動培 養装置、器材・材料、試薬・培地、輸送)に対応 するワーキンググループを部会内に設置し、高い 専門性をもって、再生医療周辺産業の普及を推し 進めるバリューチェーンを構築しています。平成 26年度は経済産業省の戦略的国際標準化加速事 業に参加し、標準化部会はじめ他の部会との連携 により、FIRM発の国際標準原案を提案できるよ う活動を強化しています。

<標準化部会>

 再生医療の産業化に係る日本国内、海外の課題 を標準化の視点で調査・分析し、再生医療のバ リューチェーンを俯瞰して、標準化のニーズと ギャップを抽出します。この分析結果に基づいて、

FIRMの他の部会や産学官の有識者と連携し、

FIRMの考えを日本発標準として国際標準化する 道筋づくりも含め、日本の再生医療標準化戦略を 検討して来ています。

 この標準化戦略に基づいた日本発の国際標準案

事業部会 広報部会

サポーティングインダストリー部会 標準化部会

規制制度部会 医療経済部会 監事

事務局

社員総会 理事会 運営委員会 運営企画委員会

図 2

(5)

をISO/TC276(Biotechnology)等の場で発信で きる環境を整えます。

<医療経済部会>

 再生医療・細胞治療の経済的側面にスポットを あて、課題の抽出や解決策の検討などを行います。

平成26年度は、昨年度までの当部会活動の成果 を活用して、主に2つの課題に取り組みます。1 つは再生医療新法(再生医療等の安全性の確保等 に関する法律)の施行に対応した細胞加工関連事 業者(加工事業者、輸送事業者)向け賠償保険整 備作業への協力であり、損害保険会社における当 該保険の企画・設計作業に対して事業者の声を適 切にインプットすることを主な目的にしています。

もう1つはその特性に合致した再生医療等製品の 対価のあり方に関する理論的検討であり、再生医 療・細胞治療普及の促進とその産業化の双方に資 する「再生医療等製品対価の適切なあり方」を明 らかにすることを主な目的としています。

<事業部会>

 再生医療等製品および再生医療関連産業の製 品・技術の普及と更なるレベル向上のための各種 事業の企画立案、その検証や実施に取り組んでい ます。再生医療関連他団体との連携に向けての働 きかけを行っています。

<広報部会>

 再生医療等製品や再生医療産業の認知向上と正 しい理解を得るために、広く社会へ向けた対外的 な広報活動に取り組んでいます。

   海外との接点を広げる

 国際的な環境での活動はアカデミアではすでに 常識ですが、再生医療の産業化においては現状で はいまだ不十分です。特に国内で実用化されてい

る細胞を用いる治療が、自家細胞中心であるため、

地域(国内)限定的で、小さな市場であることな ど様々な要因で、海外とのネットワークづくりが 遅れています。FIRMでは平成26年度の強化課 題として、再生医療を含めた世界の医療技術およ び産業化をリードする米国関係団体との連携およ びそれを通じた情報収集を行う体制を整備してい きます。主として再生医療周辺技術の国際標準に 関する強調および海外の制度情報収集を目的に、

米国と欧州にまたがる再生医療に関する業界団体 ARM(Alliance for Regenerative Medicine) と の提携に向けて準備を進めています。

 米国では、多くのベンチャー企業が新しい技術 を開発し、それを支えるファンドや、大手製薬か らの出資など、産業化を推進する環境が日本より も整備されています。しかし、そのARMも、今 回の日本の制度改正に注目しています。今後、多 くの海外企業が日本への進出を希望するでしょう。

これもまた、日本の産業化のチャンスです。一般 に、海外企業が独力で独特の言語、文化をもつ日 本市場に進出するのはなかなか難しいと言わざる を得ません。そこでわれわれ日本企業が海外企業 と積極的に協働し新たな再生医療を実用化できる 機会が生まれます。結果的に、日本の再生医療産 業化を加速することになります。FIRM設立の目 的である「多くの患者の根治と国益の確保」にか なう結果をもたらします。そのため、日本の産業 界もより積極的に挑戦し、場合によっては海外企 業とも組んで、次の時代の医療産業を育てる覚悟 が必要です。まさに、今はそのチャンスと考える べきなのです。

(6)

   今後の展望

 FIRMは今まで学会、経済産業省、厚生労働省、

文部科学省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)

など関係機関にも働きかけながら産業化を推進し てきました。しかし、今までの産業化に関するイ ンフラ整備では、この分野に関する経済産業省の 強力な牽引、ならびに厚生労働省とPMDAの世 界に類を見ない規制変革によるところが圧倒的に 大きいと言わざるを得ません。つぎは産業界の力 が試されています。現実には再生医療に大きな利

益を上げている企業はまだほとんどありません。

まさにこれからの産業です。引き続き、医薬品や 医療機器の産業団体、再生医療学会、および関係 行政機関とも連携して、研究支援産業も含めた再 生医療産業の実証検証を行い、本格的な産業化を 進めたいと考えています(図 3)。

 FIRMでは、再生医療および関連の事業を行う 企業の入会をお待ちしております。詳しくはホー ムページをご覧ください。

http://firm.or.jp/

再生医療の普及・産業化の課題解決に向けた意見交換と協働

(医薬品) (再生医療等製品)

ISO/TC276 国内委員会

(医療機器)

戦略的国際標準化加速事業

(再生医療の技術基盤及び再生医療用の 機材や輸送等に関する国際標準化)

イノベーションフォーラム再生医療

健康・医薬戦略室内閣官房

文部科学省 厚生労働省 経済産業省

行政 日本医療機器産業連合会 日本製薬団体連合会

日本再生医療学会

図 3

参照

関連したドキュメント

53 :1016 <シンポジウム (1)-4-3 > iPS 細胞研究の現状と展望 iPS 細胞をもちいた網膜の再生医療 高橋 政代 1) (臨床神経

53 :1183 <シンポジウム(3)-6-4 >神経再生医療とリハビリテーション 神経再生医療におけるリハビリテーション基本戦略 (脊髄再生医療患者での経験もふくめて) 田島 文博

51:922 <シンポジウム 05―4>筋ジストロフィー新規治療法開発の最前線 骨格筋再生治療 大澤 裕 (臨床神経

第種再生医療等を提供する際には,あらかじめ再生医療等提供計画を厚生 労働大臣に提出すること

 日本社会はいま、世界で最初に超高齢人口激減社

とは、企業が医薬品医療機器等法(薬機法)に基づいて行う治験

成 15 年厚生労働省告示第 210 号)の規定を満す原 材料だけで製造されたものにすることと、個体差が

 現在、世界各国の研究者が iPS