アーチリブ,交番載荷実験,耐震性能 〒273-0026 千葉県船橋市山野町 27 横河テクノビル ℡.047-435-6161
アーチリブ地震時耐荷力の実験的検討
(株)横河ブリッジ 正会員 ○佐野 泰如 正会員 小池 洋平 正会員 寺尾 圭史 正会員 大森 邦雄
1.まえがき 平成7年に発生した兵庫県南部地震以後,橋脚については,多数の実験及び解析的研究がなされ,
二度の道路橋示方書Ⅴ耐震設計編の改訂により耐震設計法が充実した.しかし,鋼アーチ橋のように幾何学 的非線形性が大きく,常時軸力が作用し,地震時には軸力変動が大きい部材に関しては,解析的な検討はさ れている1)ものの,その動的特性が十分には解明されていない.よって実務者レベルの耐震設計においては,
作用応力度を降伏応力度以下となるように設計し,部材の塑性化まで考慮することはほとんど無いため,鋼 重が増加し,コストが上昇しているのが現状である.
そこで本検討では,鋼上路式アーチ橋を対象とし,実橋の諸元を可能な限り反映した複弦アーチリブ大型 模型(縮小スケール1/10程度)の橋軸直角方向正負交番載荷実験を行い,弾塑性域から終局状態に至るまで の挙動を確認,実験結果からの耐震性能評価,および,実設計へのフィードバックを行うことを目的とした.
2.実験供試体概要 実験供試体は,実験設備の制約,
製作性および表-1に示す実橋調査の結果を考慮し,
アーチ支間13.0m,アーチライズ2.2mの震度法レベル の設計を想定した2ヒンジアーチとし,補剛桁,支柱 はモデル化しない複弦アーチリブとした(図-1).実 験供試体の主な特徴は下記のとおりである.
①アーチリブ主構間隔は1.0m,横支材は橋軸方向に 1.3m間隔で支点以外の9箇所に設ける.②ダイヤフラ ムは,アーチリブ格点位置,格点間中央および支点部
の横構取付部に,アーチリブ軸線に対して垂直に配置する.③実験供 試体の支点構造はピボット支承とし,全方向の回転変位自由,負反力 に抵抗できる構造とする.④死荷重軸力は,アーチリブ格点にコンク リート製ウエイトを吊り下げて導入する.⑤クラウン部を含む中央ブ ロックは,荷重載荷位置のため,アーチリブ断面を増厚する.
実験供試体のケース数は,アーチリブのフランジ,ウェブの目標幅 厚比パラメータを Case1:0.7,Case2:0.5 と変化させた計 2 体とした.
また,Case1,2でアーチリブ断面の変化に伴い,地震力に抵抗する横
構断面も変化させた.アーチリブおよび横構の断面図を図-2に示す.
表-1 パラメータの総括
平均値 上限値 下限値
支間長[m] L 112.2 200.0 36.0 13.0 アーチ支間・主構間隔比 L/B 13.8 24.2 5.3 13.0 アーチ支間・ライズ比 L/f 5.7 8.4 2.7 5.9 アーチリブ面内細長比
パラメータ λx 3.36 4.82 1.77 2.32(Case1) 2.27(Case2) アーチリブ面外細長比
パラメータ λy 0.39 0.60 0.23 0.27(Case1) 0.27(Case2) 死荷重軸力・降伏軸力比 Nd/NY 0.16 0.23 0.10 0.15 横構細長比 l/r 111.9 143.8 88.6 111.1(Case1) 88.4(Case2) 実橋調査結果(66橋)
実験供試体 パラメータ
120 140
170 4.5
4 170 6
4.5
4 150 120
3.2
③3
③3
④4
④4
Case1 Case2
材質:SS400材相当 材質:SS400材相当 幅厚比:0.7 幅厚比:0.5
φ60.5 2.3 2.3
φ48.6
10 10 15 15
単位:mm 単位:mm
横構断面 横構断面
単位:mm 単位:mm
アーチリブ断面 アーチリブ断面
材質:STK400 材質:STK400
図-2 実験供試体断面図
単位:mm 図-1 交番載荷実験設備概要図
実験供試体設置状況
初期降伏部位
1000
横 構 面
リ ブ 2 リ ブ 1
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
-201- 1-102
リブ1 リブ2 荷重
リブ2荷重 リブ1
リブ1
リブ2 荷重 δv
δh
3.正負交番載荷実験概要 図-1 に示すように鉛直方向には,補剛桁,
床版等の死荷重相当分(アーチリブ断面の降伏軸力(公称値)の15%)
の鉛直荷重を,コンクリート製のウエイト(1 格点あたり Case1:21.4kN
Case2:30.0kN)にて載荷した.水平方向には,アーチクラウン部を橋軸
直角方向に 2000kN 油圧ジャッキにて,変位制御で正負交番載荷を行っ た(図-3).本実験では荷重ゼロ点から次ステップの載荷を行った.ま た,事前解析の結果から局部座屈の発生が想定された支点部近傍および 第1格点部近傍のアーチリブのひずみを重点的に計測し,アーチリブ各
格点の鉛直および橋軸直角方向水平変位も計測した.なお,支承部の移動を拘束するため,支承架台は反力 床に定着すると共に,橋軸方向は支承架台をH形鋼でつなぐ自碇式構造とした.
4.実験結果(Case1) 図-4に水平方向の弾性載荷(0.25δy=10mm)結果とファイバーモデルによる解析 結果を示す.鉛直変位は計測値の方が解析値に比べ小さくなっているが,全体的な整合性は良く,実験供試 体の水平方向剛性や支点条件に問題が無いことを確認した.
交番載荷結果を図-5に示す.初期降伏(計測ひずみが材料試験の降伏ひずみ値と一致)はアーチリブ(リ ブ2)の下フランジ(図-1,●部)に水平変位 40mm で生じ(図-5中α),これを基準として交番載荷 を行った.なお,交番載荷方法は荷重ゼロ点から次ステップへと載荷しているため,初期に残留変位が生じ
る2δy(+側)方向への載荷変位が増大した.最大荷重は3δy にて145.3kNとなった.1δy以降終局状態に
至るまでのメカニズムは,以下の通りである.
① 支点近傍横構の面外変形が増大(座屈)(図-5中 β)したため,トラス構造が維持できなくなり,
荷重の増加がほとんど見られなくなった.
② 支点近傍横構の抵抗力が低下すると,アーチリブ に面外曲げが作用し,圧縮側のリブ2に局部座屈 が生じた(図-5中γ).その影響で,急激な水平 耐力の低下が生じた.
③ 交番載荷によって複弦アーチリブの局部座屈が進 展し,塑性ヒンジ化すると,変形の増大と水平耐 力の低下が生じ,終局状態に至った(5δy).
5δy の除荷後に残留変位は約 100mm 生じるが,死 荷重相当荷重に対する鉛直支持力は急激に低下しない ことが分かった.設計上,地震後の鋼製橋脚の許容残 留変位は橋脚高の1/100であり,本実験では2δy(水 平荷重:127.0kN)でアーチリブライズ(2200mm)に対 して許容残留変位に達したが,最大水平耐力(145.3kN) と比べ13%の余裕があった.
5.まとめ 本検討では以下の知見が得られた.
・ ア ー チリブ を 構 成する 部 材 の幅厚 比 パ ラメー タ が 0.7 程度の複弦アーチリブが,橋軸直角方向の水平 力に対して終局状態に至るメカニズムは,①支点近 傍横構の損傷,②アーチリブの損傷,③塑性ヒンジ の生成による水平耐力の低下である.
・残留変位が増大する水平耐力の低下域においても,死荷重相当鉛直支持力の急激な低下は見られない.
【参考文献】1) (社)日本鋼構造協会 鋼橋の性能照査型耐震設計法検討委員会:土木鋼構造物の動的耐震性能照査法と耐震性向上策,
2003.10
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
-6-5 -4-3 -2-1021 34 5 6
nδy
ステップ数 Max:250mm
荷重ゼロ点
図-3 載荷プログラム
0.0 1.3 2.6 3.9 5.2 6.5 7.8 9.1 10.4 11.7 13.0
-6 -4 -2 0 2 4 6 8 10
12 δh(リブ2計測値)δh(リブ1計測値)
δh(リブ2解析値) δh(リブ1解析値) アーチクラウン
鉛直変位[mm]
水平変位[mm]
橋軸方向[m]
支点 支点
δv(リブ2計測値) δv(リブ1計測値) δv(リブ2解析値) δv(リブ1解析値)
図-4 弾性載荷(0.25δy)結果
-200 -160 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 200
-150 -125 -100 -75 -50 -25 0 25 50 75 100 125 150
水平変位[mm]
1δy α 2δy α リブ2下フランジ降伏:1δy
β 横構面外変形増大(座屈):-3δy γ リブ2下フランジ局部座屈:4δy
γ
β
3δy 4δy
5δy
-1δy
-2δy -3δy -4δy
水平荷重[kN]
図-5 交番載荷結果(Case1)
ア ー チ リ ブ の 塑 性 ヒ ン ジ ウ ェ ブ
下 フ ラ ン ジ リ ブ 2 (5δ y)
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
-202- 1-102