災害情報に関する住民の誤解とそれに基づく過剰な期待*
Expectation based on the misunderstanding about disaster information*
金井昌信
**
・木下 猛***
・片田敏孝****
By Masanobu KANAI**・Takeru KINOSHITA***・ Toshitaka KATADA****
1.はじめに
近年、ゲリラ豪雨のような局所的かつ降雨強度の大 きな降雨が全国各地で発生しており、それによる洪水氾 濫や土砂災害などの風水害被害が増加している。そのた め、人的被害の最小化を図るためには、災害情報や避難 情報の効果的運用が求められるところだが、局所的豪雨 はその発生を予測することが困難であることから、市町 村が適切なタイミングで避難情報を発表することに限界 があることが指摘されている例えば、1)。
その一方で、住民の避難情報に比較する期待は、過 度に大きなものとなっているのではなかろうか。例えば、
被災住民からは、「避難勧告さえでていればこのような 被害にならなかった」との声が聞かれたり例えば、2)、ま た防災ワークショップなどで地域の避難対策を検討する 場においても、「避難情報を適切に発表してくれれば、
それで何とかなる」と思っている住民が少なくない割合 で存在している例えば、3)。このような考えの背景には、
「避難情報が発表された場合には、その旨をすぐに知る ことができるはず」、「避難場所や被災危険箇所などに 関する情報も合わせて知ることができるはず」などとい った、避難情報に対して過剰に期待していることが考え られる。確かに、市町村によっては地域防災計画に、
「避難の指示または勧告を行う場合には、状況が許す限 り、避難すべき地域、避難を要する理由、避難する時 期・方法、避難場所及び避難経路、避難時の服装・携行 品などを明らかにして行うものとする」ことが明記され ている例えば4)。しかし、近年、ゲリラ豪雨によって被災 した地域の避難情報の運用状況を振り返ると、上記のよ うな避難に関する付帯情報を各住民に伝達することはで
きていないことが指摘できる。例えば、平成
20
年8
月 末豪雨によって被災した愛知県岡崎市では、避難場所の 準備や職員の配置が間に合わなかったために、具体・個 別の指示もなく、「危険ですから、避難行動をとって下 さい」との趣旨の情報を市全域に発表することしかでき なかった5)。災害発生危険時において避難に関する付帯情報を、
避難情報の発表とともに住民に伝達することに限界があ ることは明らかである。それを踏まえた上で、各住民に 適切な対応行動を促すためには、避難に関する付帯情報 については、洪水ハザードマップなどによって平常時に おいて周知を図ることが求められる。しかし、洪水ハザ ードマップの閲覧率や保有率は非常に低調例えば、6)であ り、平常時の情報提供手段として十分に機能していると はいえない現状にあるといわざるを得ない。この理由と しては、「ハザードマップに記されているような災害は 発生しないだろう」という洪水リスク認知が低いことに 起因する要因だけでなく、「いざというときには行政が 情報を伝えてくれる」または「伝えるべき」と考えてい るために、平常時において情報を積極的に利活用しよう という意識が低いことも考えられる。そのため、災害発 生危険時において適切な対応行動を促すためには、各住 民が災害情報、避難情報に対してどのような意識や知識 レベルにあるのかを把握し、それを踏まえた情報提供内 容・方法を検討することが必要といえよう。
そこで本稿では、住民の適切な災害時対応行動を促 すための災害情報提供内容を検討するための基礎的知見 を得ることを目的として、避難情報に関する住民の意識 や知識の現状把握を行う。具体的には、住民の避難情報 に対する過剰な期待は、避難情報についての誤解が影響 しているものと仮定して、群馬県桐生市を対象に実施し た住民意識調査結果から、どのような個人属性の住民が、
避難情報に対してどのような誤解をしているのかを明ら かにする。
2.対象地域と調査の概要
(1)対象地域の概要
群馬県桐生市は、渡良瀬川と桐生川の2つの河川の
*キーワーズ:災害情報、社会調査,避難、豪雨災害
**正員,博(工),群馬大学大学院工学研究科
(社会環境デザイン工学専攻(群馬県桐生市天神町1-5-1 TEL0277-30-1652,FAX0277-30-1601)
***正員,(修士),群馬大学大学院工学研究科
(社会環境デザイン工学専攻(群馬県桐生市天神町1-5-1 TEL0277-30-1652,FAX0277-30-1601)
****正員,工博,群馬大学大学院工学研究科
(社会環境デザイン工学専攻(群馬県桐生市天神町1-5-1 TEL0277-30-1651,FAX0277-30-1601)
扇状地に市街地が展開している地域であり、昭和
22
年 のカスリーン台風によって大きな被害を受けている。し かし、その後は大きな洪水や土砂災害が発生していない。また平成
11
年には洪水ハザードマップを作成し、全戸 に配布している。(2)調査概要
桐生市民の洪水災害に対する意識などを把握するこ とを目的として、洪水ハザードマップにおいて、浸水す ることが予想される町会の全世帯を対象に調査を実施し た。調査概要は表1に示す通りである。なお、調査票へ の記入は、原則として世帯主の方にお願いした。
3.分析の視点
本稿では、災害情報に関する意識や知識のあり様に 影響する要因として、『災害に対する関心』と『災害対 応に関する行政依存』に着目する。この理由としては、
先の述べたように、平常時の情報提供に対して、『災害 に無関心な住民ほど無視する』、『災害対応は行政がや るべきと考えている住民ほど無視する』ことが考えられ るため、避難情報に対する意識や知識についても、何ら かの関係性が見られるものと考えたためである。そのた め、以後の分析ではまず平常時における災害情報の提供 手段の一つである洪水ハザードマップの閲覧状況を把握 し、それを踏まえて、避難情報について検討することと する。
図1に災害に対する関心の程度を、図2に災害対策 に関する行政依存の程度をそれぞれ示す。図1より、
9
割以上の回答者は、災害報道を見て、居住地の災害発生 可能性などについて考えたことがあると回答しているこ とがわかる。また図2を見ると、約6割が「そう思う」側の回答をしているのに対し、「そう思わない」側の回 答をしているのは約1割程度であった。その結果より、
災害対応に関して行政に依存している住民が多い現状が 確認された。
図3に災害に対する関心の程度別災害対応に関する 行政依存の程度を示す。ここで、災害に対する関心の程
図1 災害に対する関心の程度
図2 災害対応に関する行政依存の程度
図3 災害に対する関心の程度別 災害対応に関する行政依存の程度 表1 アンケート調査の概要
実 施 時 期 平成22年2月1日~21日
調 査 対 象 桐生市洪水HMにおいて、浸水が予想さ れる地域周辺に居住する全ての世帯
配 布 数 28,193票
配 布 方 法 町会・自治会長を経由した訪問配布
3,704票(回収率13.1%) 回 収 数
回 収 方 法 郵送回収
実 施 時 期 平成22年2月1日~21日
調 査 対 象 桐生市洪水HMにおいて、浸水が予想さ れる地域周辺に居住する全ての世帯
配 布 数 28,193票
配 布 方 法 町会・自治会長を経由した訪問配布
3,704票(回収率13.1%) 回 収 数
回 収 方 法 郵送回収
35.1%
26.6%
8.9%
0.5%
28.9%
ニュースを 見聞きする たびに考える
大きな災害が発生した 際には考えることがある 何度かは
考えたこと がある ほとんど考えた
ことはない
全く考えた ことはない
(N=3、436) 自然災害に関するニュースを見聞きした際に、
そのような災害が桐生市において発生する可能性や 発生した場合の状況について考えたことがあるか?
35.1%
26.6%
8.9%
0.5%
28.9%
ニュースを 見聞きする たびに考える
大きな災害が発生した 際には考えることがある 何度かは
考えたこと がある ほとんど考えた
ことはない
全く考えた ことはない
(N=3、436) 自然災害に関するニュースを見聞きした際に、
そのような災害が桐生市において発生する可能性や 発生した場合の状況について考えたことがあるか?
22.3%
22.8%
29.4%
5.4%5.7%
0.9%
13.7%
どちらとも いえない
とても そう思う
どちらかというと そう思う
そう思う 全くそう 思わない そう思わない
どちらかというと そう思わない
自然災害への備えや対応は、地域住民ではなく、
行政が責任をもってやるべきだ。
(N=3、435) 22.3%
22.8%
29.4%
5.4%5.7%
0.9%
13.7%
どちらとも いえない
とても そう思う
どちらかというと そう思う
そう思う 全くそう 思わない そう思わない
どちらかというと そう思わない
自然災害への備えや対応は、地域住民ではなく、
行政が責任をもってやるべきだ。
(N=3、435)
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,017)
(1,240)
(938)
(336)
とても そう思う
そう 思う
どちらかと いうと そう思う
どちらとも いえない
どちらかと いうとそう 思わない
そう 思わない
全くそう 思わない 自然災害への備えや対応は、地域住民ではなく、
行政が責任をもってやるべきだ。
11.6 22.9 19.6 32.7 17.8
13.6
9.9
23.6
22.5
19.8
20.7
22.1
27.0
25.6
29.8
32.1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,017)
(1,240)
(938)
(336)
とても そう思う
そう 思う
どちらかと いうと そう思う
どちらとも いえない
どちらかと いうとそう 思わない
そう 思わない
全くそう 思わない 自然災害への備えや対応は、地域住民ではなく、
行政が責任をもってやるべきだ。
11.6 22.9 19.6 32.7 17.8
13.6
9.9
23.6
22.5
19.8
20.7
22.1
27.0
25.6
29.8
32.1
図4 災害に対する関心の程度別 豪雨発生可能性認識
度については、以下に示す4つに分類し分析を行う。
関心:高 「ニュースを見聞きするたびに考える」
関心:中 「大きな災害が発生した際には考えることがある」
関心:低 「何度かは考えたことがある」
関心:無 「ほとんど考えたことはない」、または「全く考えた ことはない」
図3より、『関心:無』を除くと、災害に対する関 心が高いほど、「そう思う」側の回答、すなわち災害対 応に関して行政に依存した考えを持った住民の割合が高 くなる傾向が若干見られるものの、「そう思わない」側 の回答の割合に差は見られなかった。そこで、以後の分 析では、『災害に対する関心』、『災害対応に関する行 政依存』のそれぞれに着目した分析を行う。
4.災害に対する関心に着目した分析
(1)地域の災害危険性に関する意識と知識
図4に、災害に対する関心の程度別豪雨発生可能性 認識を示す。これより、災害に対する関心が高いほど、
河川が氾濫するほどの豪雨が発生する可能性も高いと考 える割合が高いという明確な関係が見て取れる。
次に、災害に対する関心の程度別洪水ハザードマッ プの閲覧状況を図5に示す。前述の通り、桐生市では平 成
11
年に洪水ハザードマップを作成し、全戸配布して いるが、災害に対する関心の高いグループでも「見たこ とがある」と回答した住民は約6割しか存在しておらず、災害に対する興味がないグループでは、その割合が約4 割となっており、洪水ハザードマップの認知率は非常に 低いことが明らかとなった。そのため、指定避難場所の 認知率(図6参照)を見てみると、洪水ハザードマップ の認知率と同様の傾向を示しており、地域の洪水安全性
(危険性)認識(図7参照)についても、災害に対する
図5 災害に対する関心の程度別 洪水ハザードマップ閲覧状況
図6 災害に対する関心の程度別 指定避難場所認知率
図7 災害に対する関心の程度別 地域の降雨時安全性(危険性)認識
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,060)
(1,289)
(975)
(345) 15.5 28.6
15.2
27.5
35.8
26.8
8.7
22.4
32.7
41.3
27.0
12.2
21.3
40.0 15.96.7
とても 高い
高い どちらかと いうと高い
どちらとも いえない
どちらかと いうと低い
低い とても 低い 渡良瀬川や桐生川などが氾濫する程度の激しい雨が、
今後において降る可能性は、どの程度である思うか?
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,060)
(1,289)
(975)
(345) 15.5 28.6
15.2
27.5
35.8
26.8
8.7
22.4
32.7
41.3
27.0
12.2
21.3
40.0 15.96.7
とても 高い
高い どちらかと いうと高い
どちらとも いえない
どちらかと いうと低い
低い とても 低い 渡良瀬川や桐生川などが氾濫する程度の激しい雨が、
今後において降る可能性は、どの程度である思うか?
見たことがある 見たことはない
見たことがあるかどうかわからない HMが公表されていることを知らなかった HMがどのようなものなのか知らなかった
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,051)
(1,269)
(966)
(343) 桐生市の洪水ハザードマップを見たことがあるか?
61.7
59.9
51.1
40.2
18.4
14.2
16.0
21.0
13.0
17.3
21.4
16.3 8.7 13.7 見たことがある
見たことはない
見たことがあるかどうかわからない HMが公表されていることを知らなかった HMがどのようなものなのか知らなかった
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,051)
(1,269)
(966)
(343) 桐生市の洪水ハザードマップを見たことがあるか?
61.7
59.9
51.1
40.2
18.4
14.2
16.0
21.0
13.0
17.3
21.4
16.3 8.7 13.7
知っている
知らない・わからない
避難場所が指定されていることを知らなかった
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,005)
(1,237)
(932)
(335) 指定避難場所がどこにあるか知っているか?
58.8
54.8
44.4
28.1
32.9
37.0
45.2
54.3
8.3
8.2
10.4
17.6 知っている
知らない・わからない
避難場所が指定されていることを知らなかった
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,005)
(1,237)
(932)
(335) 指定避難場所がどこにあるか知っているか?
58.8
54.8
44.4
28.1
32.9
37.0
45.2
54.3
8.3
8.2
10.4
17.6
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,052)
(1,278)
(972)
(340)
とても 安全
安全 どちらかと いうと安全
どちらとも いえない
どちらかと いうと危険
危険 とても 危険 洪水による人的被害や浸水被害に対する 桐生市の安全性はどの程度であると思うか?
11.8 23.6
36.2
33.1
34.7 43.2
43.5
46.9
37.4 18.9
14.7
13.4
11.8
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,052)
(1,278)
(972)
(340)
とても 安全
安全 どちらかと いうと安全
どちらとも いえない
どちらかと いうと危険
危険 とても 危険 洪水による人的被害や浸水被害に対する 桐生市の安全性はどの程度であると思うか?
11.8 23.6
36.2
33.1
34.7 43.2
43.5
46.9
37.4 18.9
14.7
13.4
11.8
図8 災害に対する関心の程度別 避難情報の認知率
関心の高いグループであっても、「危険」側の回答をし ている割合は約3割となっている。以上の結果より、洪 水ハザードマップの閲覧率が低いために、指定避難場所 や地域の洪水危険性を理解している住民が少ない現状に あることが確認された。
(2)避難情報に関する意識と知識
図8に災害に対する関心の程度別避難情報の認知率 を示す。これより、災害に対する関心の高い人ほど、
「知っている」側の回答の割合が高くなっている傾向が 確認できる。しかし、桐生市はこれまでに避難情報を発 表したことがないため、関心が高いグループであっても、
「知っている」側の回答の割合が約5割であり、避難情 報について知らない住民の割合が高いことがわかる。
次に、避難情報が発表されたことを知ることができ ると思う手段と、その際に知ることができると思う内容 について、災害に対する関心の程度別に、それぞれ図9、
図
10
に示す。図9より、「広報車・消防車」が最も高 い割合で選択されていた。次に高い割合で選択された手 段は「全国向けのテレビ・ラジオ放送」であった。前述 の通り、過去の災害事例を振り返ると、豪雨災害発生時 において、テレビ・ラジオで避難情報が発表されたこと が報道されることは稀である。そのため、多くの住民は 避難情報を安易に取得することができると考えている可 能性がある。次に図10
より、避難情報が発表されたこ とによって、「避難場所」や「被害を受ける可能性の高 い場所」などの付帯情報も一緒に知ることができると半 数以上の住民が考えていることが明らかとなった。また、これらの傾向は災害に対する関心の程度にかかわらず同 様の傾向を示している。
同様に、災害に対する関心の程度別に避難情報に対 するイメージを図
11
に示す。これより、災害に対する図9 災害に対する関心の程度別避難情報が 発表されたことを知ることができると思う手段
図 10 災害に対する関心の程度別避難情報が 発表された場合に知ることができると思う情報内容
13.7
7.1
40.4
39.6
32.5
20.6
28.9
38.1
43.0
40.0
16.9
15.2
20.9
35.3 よく知っている
ある程度は知っている あまり知らなかった 全く知らなかった
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,034)
(1,260)
(953)
(340) 渡良瀬川や桐生川などが氾濫する前に、市役所から 発表されることがある避難を促す情報を知っていましたか。
13.7
7.1
40.4
39.6
32.5
20.6
28.9
38.1
43.0
40.0
16.9
15.2
20.9
35.3 よく知っている
ある程度は知っている あまり知らなかった 全く知らなかった
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(1,034)
(1,260)
(953)
(340) 渡良瀬川や桐生川などが氾濫する前に、市役所から 発表されることがある避難を促す情報を知っていましたか。
65.8
42.0
21.2
25.6
79.2
12.3
68.8
46.3
26.5
25.7
84.0
17.3
67.3
42.8
25.5
26.4
81.1
18.1
63.3
36.4
30.6
23.1
75.7
20.5
0% 20% 40% 60% 80% 100%
全国向けの テレビ・ラジオ 放送から
群馬テレビから
FM群馬・
FM桐生から
町内会の役員 などから
広報車・
消防車から
インターネット から
関心:高(N=1,064)
関心:中(N=1,290)
関心:低(N=978)
関心:無(N=346)
避難情報が発表されたことを知ることができると思う手段
65.8
42.0
21.2
25.6
79.2
12.3
68.8
46.3
26.5
25.7
84.0
17.3
67.3
42.8
25.5
26.4
81.1
18.1
63.3
36.4
30.6
23.1
75.7
20.5
0% 20% 40% 60% 80% 100%
全国向けの テレビ・ラジオ 放送から
群馬テレビから
FM群馬・
FM桐生から
町内会の役員 などから
広報車・
消防車から
インターネット から
関心:高(N=1,064)
関心:中(N=1,290)
関心:低(N=978)
関心:無(N=346)
関心:高(N=1,064)
関心:中(N=1,290)
関心:低(N=978)
関心:無(N=346)
避難情報が発表されたことを知ることができると思う手段
68.0
55.0
55.0
37.8
71.9
61.1
57.6
38.7
69.1
57.3
56.5
36.3
65.9
56.1
54.6
41.3
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高(N=1,064)
関心:中(N=1,290)
関心:低(N=978)
関心:無(N=346)
避難場所
災害が発生 する予想時刻 被害を受ける 可能性が 高い場所 そのときの 地域の状況
(雨量や水位)
避難情報が発表されたことによって知ることができると思うこと
68.0
55.0
55.0
37.8
71.9
61.1
57.6
38.7
69.1
57.3
56.5
36.3
65.9
56.1
54.6
41.3
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高(N=1,064)
関心:中(N=1,290)
関心:低(N=978)
関心:無(N=346)
関心:高(N=1,064)
関心:中(N=1,290)
関心:低(N=978)
関心:無(N=346)
避難場所
災害が発生 する予想時刻 被害を受ける 可能性が 高い場所 そのときの 地域の状況
(雨量や水位)
避難情報が発表されたことによって知ることができると思うこと
関心の高いグループほど、災害が発生する前に必ず避難 勧告が発表される、発表された場合にはすぐに知ること ができると思っている割合が高いことが見て取れる。し かし、災害発生前に避難勧告が発表されなかった事例や、
発表されたとしても、そのことを住民が災害発生前に知 ることができなかった事例は多くある。そのため、避難 情報に対するこのような安易なイメージは、災害発生危 険時に自ら情報を取得しようとしたり、情報を待たずに 対応行動をとったりすることを阻害する要因となる可能 性があるため、改善する必要がある。
以上の結果より、多くの住民は、避難情報が発表さ れたことを容易に知ることができ、また避難情報が発表 されれば、避難場所などの付帯情報も合わせて知ること ができると誤解していることが明らかとなった。
5.災害対応に関する行政依存に着目した分析
ここでは、災害対応に関する行政依存の程度と、避 難情報や災害対応意識との関係についてみていく。なお、
以後の分析では、災害対応に関する行政依存の程度を、
図2の回答結果から以下のように分類することとする。
行政対応:強 「とてもそう思う」
行政対応:中 「そう思う」
行政対応:弱 「どちらかというとそう思う」
行政対応:無 「どちらともいえない」
住民対応 「どちらかというとそう思わない」、「そう思わな い」、「まったくそう思わない」
(1)地域の災害危険性に関する意識と知識
災害対応に関する行政依存の程度別に河川が氾濫す るほどの豪雨が発生する可能性に対する意識を見たとこ ろ、両者の間に相関性は見られなかった。しかし、災害 対応に関する行政依存の程度別に洪水ハザードマップの 閲覧状況を見てみると、行政への依存意識が強い住民ほ ど、洪水ハザードマップを見たことがある住民の割合が 少なくなっていることが確認された(図
12
参照)。(2)災害対応に関する住民と行政の役割分担意識 災害対応に関する行政依存の程度別災害対応に関す る役割分担意識を図
13
に示す。これより、災害対応は 行政がやるべきと強く考えている住民ほど、平常時の情 報提供や災害発生危険時の避難判断などの対応について も、行政や対応すべきと考えている割合が高くなること が見て取れる。特に、行政対応:強のグループにおいて は、図12
に示されるように、災害の危険性が高い場所 や避難場所などに関する情報を周知するための手段であ る洪水ハザードマップの閲覧率が低いにもかかわらず、それらの情報は行政が周知させるべきと約
67%
が回答図 11 災害に対する関心の程度別 避難情報に関するイメージ
図 12 災害対応に関する行政依存の程度別 洪水ハザードマップ閲覧状況
しており、「行政が対応すべきだ」と主張するだけで、
行政が対応したことに対して自ら行動を起こしていない 住民の割合が高いことが明らかとなった。
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(986)
(1,229)
(931)
(331)
(1)災害が発生する前に、必ず避難勧告は発表される
8.1 37.0
30.4
25.9
20.5
15.6
22.3
25.8
24.2
20.4
22.4
25.8
23.3 7.3
8.6
8.8
13.0 9.4
9.3
8.6
11.8
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(966)
(1,220)
(921)
(327)
(2)避難勧告が発表された場合、すぐに知ることができる
とても そう思う
そう 思う
どちらかと いうと そう思う
どちらとも いえない
どちらかと いうとそう 思わない
そう 思わない
全くそう 思わない 26.6
19.9
17.6
12.8
18.6
25.1
22.8
17.7
26.5
29.2
31.5
26.9
10.6
12.1
13.7
19.0
10.7
8.9
11.2
17.7
0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(986)
(1,229)
(931)
(331)
(1)災害が発生する前に、必ず避難勧告は発表される
8.1 37.0
30.4
25.9
20.5
15.6
22.3
25.8
24.2
20.4
22.4
25.8
23.3 7.3
8.6
8.8
13.0 9.4
9.3
8.6
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0% 20% 40% 60% 80% 100%
関心:高 関心:中 関心:低 関心:無
(966)
(1,220)
(921)
(327)
(2)避難勧告が発表された場合、すぐに知ることができる
とても そう思う
そう 思う
どちらかと いうと そう思う
どちらとも いえない
どちらかと いうとそう 思わない
そう 思わない
全くそう 思わない とても
そう思う そう 思う
どちらかと いうと そう思う
どちらとも いえない
どちらかと いうとそう 思わない
そう 思わない
全くそう 思わない 26.6
19.9
17.6
12.8
18.6
25.1
22.8
17.7
26.5
29.2
31.5
26.9
10.6
12.1
13.7
19.0
10.7
8.9
11.2
17.7
52.4
52.2
58.9
57.2
63.2
17.3
22.7
12.4
13.9
15.1 16.6
15.9
19.0
18.3
13.4 9.4
0% 20% 40% 60% 80% 100%
行政対応:強 行政対応:中 行政対応:低 行政対応:無
(481)
(787)
(807)
(1,039)
住民対応 (424)
見たことがある 見たことはない
見たことがあるかどうかわからない HMが公表されていることを知らなかった HMがどのようなものなのか知らなかった 桐生市の洪水ハザードマップを見たことがあるか?
52.4
52.2
58.9
57.2
63.2
17.3
22.7
12.4
13.9
15.1 16.6
15.9
19.0
18.3
13.4 9.4
0% 20% 40% 60% 80% 100%
行政対応:強 行政対応:中 行政対応:低 行政対応:無
(481)
(787)
(807)
(1,039)
住民対応 (424)
見たことがある 見たことはない
見たことがあるかどうかわからない HMが公表されていることを知らなかった HMがどのようなものなのか知らなかった 桐生市の洪水ハザードマップを見たことがあるか?
6.まとめ
本稿では、災害情報の効果的提供を検討するための 基礎的知見を得ることを目的に、災害に対する関心と災 害対応に関する行政依存の程度に着目し、それらの要因 と平常時の災害情報提供手段の一つである洪水ハザード マップの閲覧状況、および災害発生危険時の避難情報に 対する意識や知識の関係を明らかにした。本稿で得られ た知見から、今後の検討課題を以下にまとめる。
a)避難情報に対する誤解と期待
災害に対する関心の程度、行政依存の程度に関わら ず、多くの住民は避難情報が発表された場合には、全国 向けのテレビ放送などでもそのことを知ることができる と考えており、またその際には避難場所や災害発生危険 地域などの付帯情報も合わせて知ることができると考え ていることが明らかとなった。また災害に対する関心が 高い住民ほど、災害発生前に避難情報は必ず発表され、
発表された場合にはすぐに知ることができると思ってい ること、災害対応について行政依存意識の強い住民ほど、
災害発生危険時における避難開始の判断をするのは行政 の役割を考えており、避難情報に依存していることも確 認された。しかし、最近の災害事例を踏まえると、これ らの避難情報に対する住民の意識(期待)には応えるこ とには限界があるといわざるを得ない。
b)機能しない洪水ハザードマップ
そのため、避難に関する付帯情報については、平常 時に住民に周知徹底しておく必要があるのだが、本稿で 実施した調査の結果からは、たとえ災害に対する関心が 高い住民であっても、6割程度しか洪水ハザードマップ を閲覧しておらず、そのために避難場所を知らなかった り、地域の災害危険性を正しく理解していなかったりす る住民が多いことが明らかとなった。その一方で、行政 依存意識の強い住民では、それらの情報を平常時に周知 するのは行政の責務であると考えている住民の割合が高 いことも確認された。
c)緊急避難に関する全ての対応は自己責任へ 以上の結果を踏まえると、住民に適切な災害時対応 行動を促すためには、住民と行政の間で避難に関する対 応の役割分担を見直すなどの抜本的な対策が必要である と考えられる。これまでにも洪水ハザードマップを公表 した際には、その説明会などを通じた住民とのリスク・
コミュニケーションの重要性が指摘されてきたが7)、 今後は緊急避難時において行政にできることには限界が あることを周知してくことが必要であると考えられる。
参考資料
1)災害応急対策制度研究会:災害時の情報伝達・避難支 援のポイント,㈱ぎょうせい,
2005
2)群馬大学災害社会工学研究室:平成
16
年7
月新潟豪 雨 災 害 に 関 す る 実 態 調 査 調 査 報 告 書 ,http://dsel.ce.gunma-u.ac.jp/modules/newdb1/detail.php?id=7
3)片田敏孝,金井昌信:土砂災害を対象とした住民主導 型避難体制の確立のためのコミュニケーション・デザ イン,土木技術者実践論文集,第1巻,pp.106-121
,2010.
4)群馬県桐生市:桐生市地域防災計画書,
pp.43
,2009.
5)日本災害情報学会
2008
年8
月末豪雨等調査団:2008
年8
月末豪雨災害等に関する調査報告,災害情報,No.7,pp.159,2009.
6)日本損害保険協会:「洪水ハザードマップ」に関する 調査,http://www.sonpo.or.jp/archive/report/technology_gen
/pdf/0007/book_hazardkekka.pdf
,2003.
7)片田敏孝,木村秀治,児玉真:災害リスク・コミュニ ケーションのための洪水ハザードマップのあり方に関 する研究,土木学会論文集,D部門,Vol.63 No.4,
pp.498-508
,2007.12.
0% 20% 40% 60% 80% 100%
行政対応:強 行政対応:中 行政対応:低 行政対応:無
(472)
(772)
(797)
(1,022)
行政が 対応
どちらかと いうと行政が
対応
どちらとも いえない
どちらかと いうと住民や
地域で対応
個々の住民や 地域で対応
(2)災害が発生しそうな状況において、
避難をすべきかどうかの判断をする
(1)平常時において、地域の中で災害の危険性が 高い場 所や避難場所などに関する情報を周知させる
66.5
44.2
37.6
31.5
31.5
15.7
33.3
41.5
38.9
28.9
10.2 8.7
12.7
12.2
15.4
25.4 8.8
47.7
31.6
23.4
16.5
14.7
15.8
30.2
36.2
29.9
22.0
9.9
8.4
11.1
18.1
13.9
13.7
17.4
21.1
23.3
29.3
13.0
12.4
8.2
12.2
20.1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
住民対応 (422)
行政対応:強 行政対応:中 行政対応:低 行政対応:無
(476)
(772)
(802)
(1,023)
住民対応 (423)
0% 20% 40% 60% 80% 100%
行政対応:強 行政対応:中 行政対応:低 行政対応:無
(472)
(772)
(797)
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行政が 対応
どちらかと いうと行政が
対応
どちらとも いえない
どちらかと いうと住民や
地域で対応
個々の住民や 地域で対応
(2)災害が発生しそうな状況において、
避難をすべきかどうかの判断をする
(1)平常時において、地域の中で災害の危険性が 高い場 所や避難場所などに関する情報を周知させる
66.5
44.2
37.6
31.5
31.5
15.7
33.3
41.5
38.9
28.9
10.2 8.7
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15.4
25.4 8.8
47.7
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23.4
16.5
14.7
15.8
30.2
36.2
29.9
22.0
9.9
8.4
11.1
18.1
13.9
13.7
17.4
21.1
23.3
29.3
13.0
12.4
8.2
12.2
20.1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
住民対応 (422)
行政対応:強 行政対応:中 行政対応:低 行政対応:無
(476)
(772)
(802)
(1,023)
住民対応 (423)
図 13 災害対応に関する行政依存の程度別 災害対応に関する役割分担意識