64 2012.03
災害対応から情報提供までを総合的に支援する
防災情報システム
Disaster Information System Combining Disaster Response and Information
Distribution
2.自治体における防災情報システムの現状と課題 阪神・淡路大震災を契機に,自治体は災害時の迅速・的 確な対応のために,防災情報システムや防災行政無線など の整備を図り,災害時において時々刻々と変化する状況の 把握や,情報空白の解消に努めてきた。 しかし,東日本大震災では,状況把握や住民への情報提 供が分単位で求められ,必ずしも十分対応できたとは言え なかった。このような背景から,これらの課題を解決する べく,防災情報システムの高度化のニーズが高まっている。 3.防災情報システムの高度化を実現するソリューション 今後望まれる防災情報システムの要件としては,自治体 職員と住民の双方に,より有効な情報をより迅速・的確に 提供することが挙げられる。 具体的には,自治体職員に対しては,単に災害時の状況 を把握するだけでなく,被害予測も含めて的確な対策立案 を支援する機能が重要である。 また,住民に対して重要な機能は,災害に関する情報提 自治体の災害対策業務を支える防災情報システムは,従来,災害 発生時の被害状況の収集,共有,伝達などに役立ってきた。しかし, 未曽有の被害をもたらした東日本大震災により,防災情報システム のさらなる高度化が求められている。日立グループが開発した防災 情報システムは,「被害予測」,「視覚的な情報提供」,「プッシュ型の 情報提供」などのソリューションにより,自治体職員の災害対応から 住民への情報提供までを総合的に支援する。 1.はじめに 日立グループは,災害や危機管理に対応した防災ソ リューションを整備し,これまで多くの自治体で防災情報 システムを構築してきた。今回の東日本大震災を受け,今 後危惧される大規模地震や頻発する自然災害などに対する さまざまなニーズに応えるため,システムのさらなる高度 化を推進している。 ここでは,情報提供の視点で自治体職員と住民の双方に 有効な防災ソリューションについて述べる。topics
竹林
康夫
Takebayashi Yasuo吉川
健多郎
Yoshikawa Kentaro大塚
憲治
Otsuka Kenji 図1│防災情報システムの概要 情報収集 状況把握 ・ 意思決定 防災情報システム 国民保護情報 気象情報 観測情報 映像情報 被害情報 収集系システム 処理系システム 提供系システム 国民保護情報 ・ J-ALERT ・ 気象庁防災情報 ・ 民間気象会社提供情報 庁外職員 庁内職員 住民 ・ 職員参集 ・ 安否確認 ・ 防災情報メール ・ 防災ポータルページ ・ カメラ映像 ・ 被害予測地図 ・ ホームページ (気象情報, カメラ映像, 避難所地図, 被害予測 地図など) ・ 防災情報メール ・ 緊急速報メール ・ 震度情報 ・ 雨量/水位情報 ・ 監視カメラ映像 ・ 国土交通省CCTV ・ 市町村などからの報告 気象 ・ 観測情報 映像情報 被害情報など 防災地理情報 被害予測 映像コンテンツ 業務運用管理 職員参集 安否確認 防災情報ツール 緊急速報メール (プッシュ型情報提供) 防災ポータルページ注 : 略語説明 J-ALERT(全国瞬時警報システム), CCTV(Closed-circuit Television)
ホームページ
(視覚的情報提供)
65 topics 3.3 プッシュ型の情報提供 災害時のプッシュ型情報提供手段としては防災行政無線 やラジオなどがあるが,防災情報システムにおいても,今 後は住民により身近な手段で情報提供を行っていくことが 求められる。日立グループの防災情報システムは,携帯電 話会社の緊急速報メールとの連携により,住民側からアク ションを行わなくても即時に災害に関する情報を提供する ことができる。自治体職員にとっては緊急度の高い情報 や,自治体固有の災害・避難情報を住民に速やかに配信す ることが可能となる。 4.おわりに 日立グループは,今後も,防災に関する社会のニーズに 的確に応えるソリューションの開発を続け,安全・安心な 社会の実現に貢献していく。 Vol.94 No.03 290–291 社会・生活の機能維持をインフラから支えるソリューション 供である。従来,防災用ホームページや防災メールなどが 利用されてきたが,これらは住民側からの参照や事前登録 によって情報を入手するというものであった。今後はこれ らに加えて,視覚的でわかりやすい情報提供やプッシュ型 の情報提供を行うことが必要である。 日立グループの防災情報システム1)は,これらのニーズ に応えるものであり,東日本大震災を受けて強化した情報 提供系のソリューションを以下に紹介する(図1参照)。 3.1 被害予測 被害予測を精度よく,短時間で行うことは被害の発生や 拡大の防止に有効である。被害予測シミュレータの一つで ある日立グループの洪水シミュレータは,河川水位予測か ら氾濫予測までを高精度で短時間に行うことができる。ま た,予測結果を動画でわかりやすく提供することが可能な ため,避難勧告発令などの意思決定や災害発生前の防災計 画策定などに多面的に活用できる(図2参照)。 3.2 視覚的な情報提供 視覚的な情報提供を簡易な操作で行うことは,自治体職 員と住民の双方にとって有効である。
GeoPDF
※ 1) ソリュー ションは,(
Portable Document Format
)ファイル に位置情報を持たせることにより,地理情報システムの データとの連携を可能とするものである。この機能を使う ことによって,災害時における地図を活用した情報提供を 簡易かつ効果的に実現できる。これまで,住民には文字情 報のみで提供していた避難勧告・指示情報や避難所・医療 救護所の開設状況を,地図情報と合わせて提供することが 可能となる(図3参照)。視覚的な情報提供により,自治体 職員や住民の災害発生時の意思決定や避難行動を支援する。 雨量 ・ 水位 ・ 短時間降雨 予測データ ・ 水位データ ・ シミュレー ション範囲 ・ 堤防決壊場所 入力項目 避難判断 住民 河川水位予測 ・ 河川氾濫予測 画面イメージ 職員 避難勧告の 意思決定支援 防災計画策定 職員入力 図2│洪水シミュレータを活用した情報提供 竹林康夫 1993年日立製作所入社,トータルソリューション事業部公共・社 会システム本部公共システム部所属 現在,防災ビジネスの企画立案・拡販業務に従事 吉川健多郎 2001年日立製作所入社,トータルソリューション事業部公共・社 会システム本部公共システム部所属 現在,防災ビジネスの企画立案・拡販業務に従事 大塚憲治 2007年日立製作所入社,トータルソリューション事業部公共・社 会システム本部公共システム部所属 現在,防災ビジネスの企画立案・拡販業務に従事 執筆者紹介※1) GeoPDFは,TerraGo Technologies, Inc.の米国およびその他の国におけ る商標または登録商標である。
※2)PDFは,Adobe Systems Incorporatedの登録商標または商品名称である。
1) 寺谷,外:自治体の広域連携を支える消防・防災ソリューション,日立評論,92, 11,870∼875(2010.11) 参考文献 自治体職員 避難勧告 ・ 指示情報 避難所情報 医療救護所情報 など GeoPDFとの連携 避 ○○市防災 ホームページ 総合防災情報 システム GeoPDF 生成サーバ Webサーバ 住民 文字情報だけでなく地図上に表示 ***避難所が 開設されました 図3│GeoPDFを活用した情報提供