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「ふくいのおいしい水」の水質特性と課題

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Academic year: 2021

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(1)

著者 三浦 麻, 福田 彩香

雑誌名 福井大学地域環境研究教育センター研究紀要 「日

本海地域の自然と環境」

巻 25

ページ 109‑126

発行年 2019‑03‑01

URL http://hdl.handle.net/10098/10607

(2)

1.はじめに

森林地域に恵まれたわが国は、古くから水源涵養地域から流出する湧水によって、地域社会や地域 文化を創生してきた。人々の生活および産業活動などのあらゆる場面において湧水を利用し、多大な 恩恵を受けてきた。また、湧水は我々人間だけでなく、多様な生態系を支える重要な役割を果たして いる。その一方で、近年の都市化における産業構造の変化に伴い、土地利用や環境の変遷とともに地 域社会も変化が生じてきた。また、高齢化、少子化に伴い、人々の暮らしと長い間かけてつくりあげ てきた水文化の継承が困難となり、人々の水循環への関心が薄れつつある。

政府は平成 27 年に水循環基本計画の実施による施策を打ち出した(首相官邸 HP)。この中で湧水 等の地下水の水量・水質の確保と、水循環の適切な管理・保全の重要性が挙げられている。現在のと ころ、全国における湧水把握件数は 16,517 件であり(環境省 aHP)、水循環に重要な湧水地点が多 く存在する。湧水環境は水源涵養として、また人々や生態系における共有財産として重要である。環 境省は将来にわたってこの湧水環境を受け継いでいくために、これまでに昭和 60 年に『昭和の名水 百選』、平成 20 年に『平成の名水百選』を選定してきた。また、各県においても独自で認定した名水 が存在する。いずれも清澄な水環境の周知と再発見、さらに啓蒙普及を図るとともに、このことを通 じて国民の水質保全への認識を深め、併せて優良な水環境を積極的に保護すること等、今後の水質保 全行政の進展に資することを目的としている(環境省 bHP)。福井県でも平成 17 年から継続してい る「ふくいのおいしい水」の認定制度がある(福井県 HP)。しかし、認定を受けても 5 年ごとの見 直しの際に認定を取り下げる湧水地もある。これには地域と湧水地との関係の変化が影響していると 考えられる。

そこで、本研究では「ふくいのおいしい水」を対象とし、地域の中で根付いてきた湧水の人々の生 活の中における位置づけを明らかにし、「ふくいのおいしい水」における課題を検討するために、湧 水地域の水質特性と自治体および地域の湧水への取組みについて調査した。

2.「ふくいのおいしい水」認定制度

福井県では、県内の湧水等について、その湧水の状態が県の定める基準(以下、「認定基準」という。)

に適合するものを「ふくいのおいしい水」として認定している(福井県 HP)。認定は、「ふくいのお いしい水」認定検討会(以下、「検討会」という。)によって審査が行われる。これは、地域の貴重な

No. 25, 109 - 126, 2018

三浦  麻*

 (福井大学学術研究院教育・人文社会系部門   教員養成領域理数教育講座)

福田 彩香**

 (損保ジャパン日本興亜株式会社)

Properties of water quality and regional issues for “Fukui no Oishii Mizu”

「ふくいのおいしい水」の水質特性と課題

(3)

認定される湧水は、以下に掲げる要件をすべて満たすものである。認定の対象となるものは、湧水 の状態、水量および水質、立地条件を示したものになっている。

〈認定の対象〉

 1.県内に所在し、地下水が自噴もしくは動力等を用いて地表に出てきている状態のもの。

 2.周辺環境の状態から良好な水質および水量の維持が見込まれるもの。

 3.来場者に対し飲用として自由に供されているもの。

〈認定基準〉

 1.湧水等の水質が、水道法の水質基準に照らして、飲用に適していること。

 2.湧水等の水質が、「ふくいのおいしい水」の水質要件に適合すること。

 3.湧水等が、雨水に伴う表流水等が流入しにくい状況にあり、水質の維持が見込めること。

 4.年間を通じて、飲用に適した水量が維持されていること。

 5.湧水等の周辺の清掃、水汲み容器等の清潔を定期的に管理する法人、団体または個人がある こと。

なお、認定には県独自の水質要件が定められており、表 1 に示すとおりである。

表1 「ふくいのおいしい水」の水質要件

項目 水質要件

蒸発残留物 30 ~ 200mg/L カルシウム、マグネシウム等(硬度) 8 ~ 120mg/L

遊離炭酸 0.1 ~ 30mg/L 有機物(全有機炭素の量) 2mg/L 以下

残留塩素 検出されないこと

臭気 異常でないこと

3.「ふくいのおいしい水」の水質特性

3ー1.調査地点

本研究では、2018 年 3 月現在に「ふくいのおいしい水」として認定されている湧水地点 35 地点に ついて調査を行った。図 1 に県内における湧水の位置図を、表 2 に各湧水の名称および所在地を掲載 する。調査は、嶺北地方を 2017 年に実施し、2018 年に嶺南地域を追加して調査を行った。

3ー2.調査および分析方法

各湧水において、気温、水温、pH、電気伝導度および水量を測定した。水温、pH および電気伝導 度の測定は pH・EC メータ(HORIBA,D-54)を用いた。また、湧水は 250mL のポリ容器に採取し、クー ラーボックスに入れて実験室に持ち帰った。イオンクロマトグラフィ(東ソー,IC-2010)を用いて、

湧水中のイオン成分(Na+,K+,Mg2+,Ca2+、Cl)の濃度分析を行った。湧水中の塩化物イオン(Cl) の濃度については、パックテスト(共立理化学研究所,WAK-Cl(D))を併用して分析した。

また、陽イオン濃度を用いて水の硬度を算出した。算出方法はカルシウム濃度(Ca)およびマグ ネシウム濃度(Mg)を用いて、厚生労働省が示す式(1)による。

水の硬度(mg・L–1)= Ca×2.5 + Mg×4.1  (1)

なお、硬度が 100mg・L–1以下であれば軟水、100 以上 200mg・L–1の時は中硬水、200mg・L–1以上 ならば硬水とされている。

また、「ふくいのおいしい水」は飲料による病気治癒を目的に利用されることが多いため、ここで

(4)

図1 調査地域

図中の番号は、表2に対応している。

表2 「ふくいのおいしい水」の名称および所在地 (2018年4月現在)

(5)

は水の健康指標(KI)を算出した。KI は KIndex のことであり、橋本ら(1988)によって提案された。

KI の値が 5.2mg・L–1以上であれば健康な水とされる。カルシウム濃度(Ca)およびナトリウム濃 度(Na)を用いて式(2)で表される。 

KIndex(KI) = Ca - Na × 0.87       (2)

3ー3.「ふくいのおいしい水」の水質

各湧水についての水質調査の結果を表 3 および表 4 に示す。

水温については、全地点において 11.9℃~ 19.9℃であり、平均値は 15.2℃であった。相対的に水温 が高い湧水は、地表面に近いところで湧出していると考えられる。pH については、pH5.3 ~ 7.2 と 酸性から中性の範囲を示した。また、嶺北地方の 29 地点では pH5.3~ 6.7 と弱酸性から酸性の範囲 であり、嶺南地方の 6 地点では pH7.0 ~ 7.2 でほぼ中性であった。地下水の大部分は、雨や雪などの 降水が地下に染み込み形成されている(井田,2009)。降水には炭酸ガスが少し溶けており、弱酸性 を示す。降水が地表から浸透し、降水中の炭素ガスや地層に堆積した腐敗物質から出る炭酸ガスが地 下水に溶け込むことにより、浅い地層の地下水はやや酸性を示す(榧根,1992)。地層中の炭酸カル シウムを含む石灰岩に炭酸が接触すると容易に溶け、カルシウムイオンを水酸化物イオンが溶出する ため、深い地層の地下水はアルカリ性を示す。このことから、嶺北地方の 29 地点の湧水は地下水が 浅い地層によって形成されていることが考えられる。

水量については、測定可能であった 27 地点でみると、8 地点が毎秒 100mL 以下の水量であり、

これらの地点では採水に来る人は見られなかった。実際これらの地点は観光や親水等の目的で利用さ れているように見受けられた。ちなみに大野市の湧水の 4 地点が毎秒 100mL 以下に該当した。

電気伝導度は、湧水中のイオン溶存量を示しており、この値が大きいと湧水中に溶解する電解質が 多い。表 4 によると、全地点の電気伝導度は 6.0 ~ 30.4mS・m–1であった。また、嶺北地方の地点 では 6.0 ~ 27.6mS・m–1、嶺南地方では 8.8 ~ 30.4mS・m–1を示し、顕著な差は見られなかった。注 目した点として、大野市の 10 地点において電気伝導度が 10.0 ~ 12.2mS・m–1(平均 11.4mS・m–1) であり、値に顕著な差はなく溶解する電解質が類似することが予想された。その他の地点においては、

電気伝導度の値は同一市町の各地点相互でばらつきも見られ、地点間で水源等の関連性は低いと推測 した。硬度は、若狭美浜新庄やまびこ湧水を除いてすべての地点で 100mg・L–1以下であり軟水を示 した。健康な水指標 KI については、18 地点の湧水は KI が 5.2 以上であり、健康な水であると判断 され、大野市では篠座神社の御霊泉を除くすべての地点で KI 値を満たしていた。これらの地点では、

湧水中の Ca2+に比して Na+が少ないことを示す。さらに各地点の電気伝導度および硬度の相関関係 を図 2 に示す。近似直線から大きく外れた 3 地点(榎清水、石堂の水、瓜割清水(いずれも越前市))

を除く、ほとんどの地点が電気伝導度と硬度は正の相関があるとみられた。相関性がみられなかった 3 地点においては、硬度と比較して電気伝導度が高いため、硬度成分である Ca2+および Mg2+以外の 成分が湧水中に多く含まれていると推測される。

湧水中の各イオン濃度については、各地域において異なっていることが分かった。図 4(a)~(c)

に K+、Ca2+、および Mg2+を示した。グラフは市町ごとにパターン分けしている。また、Na+と Cl は日本海からの海塩粒子の影響を検討するために 2 成分を合わせて表示した(図 4(b))。この結果から、

大野市内の湧水地点では、K+を除く陽イオンおよび Clの各濃度が類似した。これは西村ら(2017)

による報告から、大野市は地下水網が盆地全体に広がっており、各湧水が密集しているため湧水の水 質は類似し、水源が同じであると考えられる。その他の地点については、各湧水地点の各成分の濃度 がそれぞれ異なっていた。このことは、湧水地が山間部、あるいは山や谷を隔てて存在しているため、

水源涵養地域が異なっていることを示唆する。また、Na+および Clの両成分がほぼ同じ濃度で含ま れている湧水は、嶺南地方の雲上水、津島名水、滝水ひめおよび若狭美浜新庄ふれあい湧水の 4 地点 であり、これらの地点では海洋の影響を受けていることが推測される。ここで、嶺南地方の瓜割の滝

(6)

および鵜の瀬給水所については、地形的に海洋からの飛来物質が届きにくい地点であると考えられる が、このことに関しては湧水の成分構成をさらに調査する必要がある。

石神の湧水および滝水ひめの Ca2+がそれぞれ 32.8mg・L–1および 31.8mg・L–1であり、全調査地 点における平均値(13.6mg・L–1)の 2 倍を超える値を示している。奥村(2016)によると、石神の 湧水が所在する表層地質は石灰岩であり、滝水ひめが所在する表層地層においても頁岩、緑色岩とと もに石灰岩であると報告されている。石灰岩とは炭酸カルシウムを主成分とした堆積岩の一種である。

これらの湧水は、石灰岩の成分によって Ca2+が高くなったと推測する。

以上の結果から、「ふくいのおいしい水」は地域の地形的、地質的あるいは気象的な特徴によって、

特有の水質特性が表れることが示唆された。

4.「ふくいのおいしい水」を保有する自治体および地域の取組み

湧水地点が存在する地形等の立地が異なるように、各地方自治体の考え方やそこに暮らす地域の 人々の湧水の関わり方は様々であることが考えられる。また、「ふくいのおいしい水」として認定を 受けている湧水地点の周辺環境やその管理法は、その地域によって相違があることが推測できる。「ふ くいのおいしい水」と地域の関わりや現状、保全の実態等を地域調査によって明らかにした。

4ー1.対象地域および調査内容

福井県内において、「ふくいのおいしい水」が多く存在する大野市および鯖江市・越前市を中心に 地域調査を行った。地域調査は、湧水の周辺環境の特徴、自治体の取り組み、地域と湧水との関わり 方の 3 つの観点から実施し、検討した。なお、調査内容は以下のとおりである。

(a)湧水の周辺環境調査

湧水の周辺環境の特徴づけるものとして設置物に注目した。主として 2 種類の設置物があり、 

一つは供物であり、もう一つは看板である。供物とは、地蔵や花、賽銭箱などを示し、看板とは湧 水の由来を表示したものである。

(b)ヒアリング調査

市役所へのヒアリングを行った。湧水と地域との関わりや湧水の現状、課題、保全活動の実態等 を知ることを目的とし、大野市湧水再生対策室および鯖江市産業環境部環境政策課、越前市環境政 策課に対して聞き取った。

(c)アンケート調査

ヒアリング調査の結果を受けて、鯖江市および越前市の湧水と地域との関わりや現状、課題、湧 水に対する地域民の意見等を把握するため、湧水の管理責任者を対象にアンケート調査を行った。

アンケートの内容は、湧水の水源・由来、味・効果、利用者数・利用方法、湧水に関する祭事、水 量水質の変化、課題等である。実施方法については、市役所の担当課に配布を依頼するか、自宅あ るいは湧水地近隣の公共施設を訪問して配布・回収を行うかのどちらかの方法を採用した。なお、

アンケート調査は 2017 年 12 月に行った。

(7)

表3 各湧水における水質データ(その1)

所在地 地点番号 湧水名称 気温

(℃)

水温

(℃) pH 流量

(mL/sec)

電気伝導率

(mS/m) 採水年月日

福井市 こしょうずの湧水 13.0 11.9 6.7 247 9.0 2017/10/26

大野市

本願清水 18.0 15.2 5.9 11.7 2017/10/17

御清水 19.0 14.6 5.9 11.9 2017/10/17

新堀清水 20.0 14.4 5.9 12.2 2017/10/17

芹川清水 24.0 14.7 6.2 50 11.9 2017/10/17

水舟清水 25.0 16.8 6.1 65 11.8 2017/10/17

石灯籠会館清水 23.0 15.1 5.8 217 11.9 2017/10/17

七間清水 21.0 17.2 5.8 11.5 2017/10/17

五番名水庵清水 21.0 19.9 6.0 6 10.4 2017/10/17

清水広場 20.0 15.1 5.9 11.1 2017/10/17

篠座神社の御霊泉 19.0 15.5 5.8 30 10.0 2017/10/17

勝山市 神谷の水 20.0 13.4 6.7 166 6.0 2017/10/17

坂井市 小和清水 21.0 14.3 6.6 1970 18.0 2017/10/17

鯖江市

榎清水 26.5 14.5 6.3 210 20.4 2017/7/20

許佐羅江清水 32.1 16.2 6.3 1050 12.4 2017/7/20

刀那清水 38.3 14.8 6.3 217 5.2 2017/7/20

三場坂清水 31.3 15.7 6.4 233 2017/7/20

桃源清水 30.8 14.0 6.5 229 13.6 2017/7/20

越前市

榎清水 24.0 15.9 6.3 70 2.7 2017/9/13

石堂の水 27.0 14.0 6.2 180 24.2 2017/9/13

瓜割清水 23.0 13.9 6.0 246 27.6 2017/9/13

治佐川井戸 28.0 14.4 6.0 275 7.6 2017/9/13

お清水不動尊の水 27.0 17.7 6.0 160 12.5 2017/9/13

石神の湧水 20.0 14.8 6.4 190 21.4 2017/10/26

段田清水 19.0 13.0 6.5 1357 17.6 2017/10/26

解雷ヶ清水 15.0 12.0 6.6 307 15.1 2017/10/26

越前町 大谷の薬水 18.0 16.6 6.6 13.1 2017/10/26

弘法大師の水 18.0 17.4 6.0 74 9.8 2017/10/26

南越前町 鶯清水 26.0 18.9 5.3 60 6.5 2017/9/13

若狭町 瓜割の滝 16.3 12.6 7.2 11.8 2018/11/4

小浜市

鵜の瀬給水所 16.8 16.4 7.1 11.1 2018/11/4

雲城水 17.2 15.1 7.2 398 10.3 2018/11/4

津島名水 18.3 15.1 7.1 564 10.5 2018/11/4

滝水ひめ 15.8 14.5 7.0 383 0.4 2018/11/4

美浜町 若狭美浜

新庄やまびこふれあい湧水 14.8 15.6 7.1 130 8.8 2018/11/4

(8)

表4 各湧水における水質データ(その2)

所在地 地点番号 湧水名称 Na+ K+ Mg2+ Ca2+ Cl 硬度 健康な水指標 KIndex(KI)

福井市 こしょうずの湧水 6.5 0.5 2.3 8.8 *4 31.2 3.1

大野市

本願清水 7.5 0.8 3.0 14.4 *4 48.1 7.9

御清水 7.5 0.8 3.1 15.1 *3 50.3 8.6

新堀清水 7.9 0.8 3.2 15.4 *5 51.5 8.6

芹川清水 7.5 0.7 3.0 14.5 *5 48.5 8.0

水舟清水 8.2 1.2 2.9 14.1 *5 47.0 7.0

石灯籠会館清水 8.7 1.2 2.9 13.8 *5 46.0 6.3

七間清水 8.5 1.3 2.5 13.5 *5 43.9 6.1

五番名水庵清水 7.3 0.8 2.6 13.5 *4 44.2 7.2

清水広場 7.2 0.7 2.7 14.6 *5 47.4 8.3

篠座神社の御霊泉 7.4 0.7 2.5 11.4 *5 38.5 5.0

勝山市 神谷の水 7.0 1.4 1.6 4.5 *3 17.7 –1.6

坂井市 小和清水 15.6 1.4 3.1 23.6 *30 71.4 10.0

鯖江市

榎清水 19.0 2.4 5.3 21.4 *15 74.5 4.8

許佐羅江清水 11.8 1.4 3.1 10.6 *10 38.6 0.3

刀那清水 12.7 1.1 5.1 14.6 *10 57.1 3.6

三場坂清水 9.3 0.9 5.9 18.3 69.5 10.2

桃源清水 7.9 1.2 4.0 15.2 *4 54.3 8.4

越前市

榎清水 12.9 1.4 4.8 19.3 *8 67.4 8.1

石堂の水 9.8 1.1 3.6 16.5 *7 55.7 8.0

瓜割清水 11.3 2.1 3.7 11.2 *9 42.7 1.3

治佐川井戸 7.6 1.5 1.7 5.5 *7 20.4 –1.1

お清水不動尊の水 10.5 1.7 2.3 9.2 *5 32.0 0.0

石神の湧水 10.7 1.6 3.4 32.8 *15 95.6 23.5

段田清水 18.6 2.1 4.4 15.0 *15 54.9 –1.1

解雷ヶ清水 14.1 1.2 2.7 17.6 *18 55.0 5.3

越前町 大谷の薬水 21.4 1.8 1.1 12.2 *8 34.9 –6.4

弘法大師の水 15.3 1.7 1.7 5.7 *8 21.2 –7.6

南越前町 鶯清水 8.2 1.3 1.2 1.4 *4 8.5 –5.7

若狭町 瓜割の滝 5.2 0.4 4.4 12.4 8.4 48.6 7.9

小浜市

鵜の瀬給水所 11.8 0.9 2.4 8.4 9.5 30.8 –1.8

雲城水 7.8 0.9 4.8 6.5 7.5 35.5 –0.3

津島名水 7.9 1.0 4.9 6.4 8.2 35.6 –0.5

滝水ひめ 23.9 1.0 9.3 31.4 24.7 115.8 10.6

美浜町 若狭美浜

新庄やまびこふれあい湧水 8.3 0.7 2.1 6.6 8.7 24.6 –0.7 Clのデータについて、*を付しているデータはパックテストによって測定した。

(9)

4ー2.湧水の周辺環境の特徴

調査地点における供物および看板の設置状況、湧水の利用等、周辺環境を表 5 に示す。

(1)供物の設置状況

供物の設置は湧水地すべてに存在するわけではなく、市町の特徴によって異なった。供物の設置に ついての一般的な理由について考えられることを以下の(a)、(b)に挙げる。

図3 各湧水の硬度と電気伝導度の相関関係

図4 各湧水のイオン濃度

(a)K+、(b)Ca2+、(c)Mg2+、(d)Na+およびCl を示す。

(a)

(c)

(b)

(d)

(10)

(a)供物が設置されている理由

  ①古くからの謂れが語り継がれている(歴史的な背景をもつ)。

  ②寺、神社の敷地内に存在する。

  ③古くから地域の中心となる地点に存在し、生活の水として利用されていた。

  ④ゴミの投棄を防ぐため(鳥居がある)。

(b)供物が設置されていない理由   ①歴史的な背景を持たない。

  ②古くから地域の人の生活水として利用されていない。

  ③観光地として成立している。

  ④水源が同じで一体化(統一)して整備されている。

湧水地域には観光情報に基づいて県内外からの不特定多数の人が訪れる場所となっている。そのた め、特に供物が設置されている理由④は湧水利用者が湧水を汚すことを防ぐ目的で供物を設置してい ることが考えられる。

大野市では、10 地点のうち「御清水」、「篠座神社の御霊泉」の 2 地点のみに供物が設置されていた(写 真 1 および 2)これらの 2 地点は、上記の供物が設置されてある理由の②および③に該当する。それ ぞれ古くから存在する湧水または神社の中にある湧水であるためであると考えられる。他の 7 地点に おいて供物が設置されていない理由の③が該当することが考えられる。大野市では湧水環境の保全に 力を入れている。市では湧水地の復元に取り組んでおり、観光ガイドの中心に「名水のまち」と掲載 されている。また、市民の約 7 割が自宅に地下水を汲み上げ生活用水として利用しており、地域の人々 が地下水の重要性を十分に理解していることが予想される。このことは、供物が設置されていない理 由②に反しているが、理由④を考慮すると、古くから地域の中心となる地点である「御清水」に統一 して祀られていると考えられ、供物がないことは説明がつくだろう。

鯖江市・越前市では、供物が設置されている湧水は 13 地点のうち 12 地点であった。また、その他 の 市町においても 12 地点すべてに供物が設置されていた。福井県安全環境部環境政策課発行の「ふ くいのおいしい水」パンフレット(福井県,2015)によると、これらの各地点の湧水には由来、謂れ、

伝説がある地点もあり、また古くから地域住民によって飲料水として利用されてきた地点でもある。

すなわち、供物を設置されている理由の①および③に当てはまる。また、石神の湧水(越前市)、解雷ヶ 清水(越前市)では、湧水地点の近隣に神社が存在しており、理由②が該当する。鯖江市・越前市以 外にも神宮寺が隣接する鵜の瀬給水所(小浜市)や神社の社跡に存在する滝水ひめ(おおい町)がこ の理由に当てはまる。これらの湧水地には、地域住民のほかに、県内や近隣県からのいわゆる「名水 マニア」が訪れたり、道すがら偶然立ち寄ったりする。このように人々が湧水を求めて集まることに よって、観光地点として整備されている地点もある(瓜割の滝(若狭町))。供物を設置することは、

地域住民が「湧水の神」として不動明王などを祀り、地域住民の湧水保全の意識を維持するだけでなく、

地域外の人に対する地域の大事な湧水であることの認識を促すことや、湧水の文化的な位置づけに意 識を向けてもらうことも、供物の役割になっていると考えられる。そのような意味からすると、理由

④が該当する。

(2)看板の設置について

(11)

表5 湧水地における供物および看板の設置状況、湧水の目的利用、その周辺環境

所在地 地点番号 湧水名称 供物 看板 伝説あり 周辺環境

福井市 こしょうずの湧水 山林

大野市

本願清水 市街地

御清水 市街地

新堀清水 市街地

芹川清水 市街地

水舟清水 市街地

石灯籠会館清水 市街地

七間清水 市街地

五番名水庵清水 市街地

清水広場 市街地

篠座神社の御霊泉 神社

勝山市 神谷の水 国道沿

坂井市 小和清水 トンネル近隣

鯖江市

榎清水 河川

許佐羅江清水 住宅地

刀那清水 集落

三場坂清水 神社近隣

桃源清水 山林

越前市

榎清水 山林・県道沿

石堂の水 トンネル近隣

瓜割清水 集落

治佐川井戸 集落

お清水不動尊の水 市街地

石神の湧水 神社

段田清水 山林

解雷ヶ清水 山林

越前町 大谷の薬水 農地

弘法大師の水 集落

南越前町 鶯清水 線路沿

若狭町 瓜割の滝 寺社・公園

小浜市

鵜の瀬給水所 公園・県道沿

雲城水 漁港・公園

津島名水 漁港

滝水ひめ 神社・公園

美浜町 若狭美浜

新庄やまびこふれあい湧水 山林

該当するものに○を付けている

写真1 瓜割清水()の供物 写真2 本願清水(②)の看板

(12)

および段田清水)であった。石堂の水では、土地の所有者個人によって管理されているため、供物の 他に伝説等を示す看板の設置までは難しいと考えられる。段田清水では、看板の設置はないものの、

市で制作したとみられるのぼり旗を設置することで、名水の存在をアピールしていた。これと同様の 地点として、こしょうずの湧水(福井市)がある。また、刀那清水(鯖江市)においては、供物・看 板ともに設置されていないが、福井県の担当者によると今後再整備を進めていく予定である。

以上の述べてきたように、供物や看板の設置状況について湧水の特徴によって相違がみられた。特 に、「ふくいのおいしい水」が県内で相対的に多く存在する大野市と鯖江市・越前市には、顕著な違 いがあるといえる。水質調査の結果においてもみられたように、大野市の湧水の水質は一様である。

また、その地形から大野盆地全体が大きな水瓶といわれるように(福井県,2015)、大野市内の湧水 地のほとんどが地下でつながっている。したがって、湧水地点は、大野市街地に集中しており、その 特性を生かしたまちが形成されている。一方、鯖江市は、沖積台地、沖積平野、扇状地に位置し、越 前市は標高 400 m~ 700m の山地に囲まれた武生盆地に存在している。両市では古くからの地形傾斜 が明瞭に変化に富んだ地形を保ったまま湧水地が引き継がれている。水源から住宅地に導引している 地点や山間地に存在する地点もあり、湧水地点の周辺環境はさまざまである(表 5)。また水源地が さまざまであることから、湧水の維持・管理はその地域住民の手に委ねられており、その手段として の供物や看板の設置がなされていると考えられる。したがって、大野市と鯖江市・越前市のこれらの 設置物の意味は、管理・維持の形態に関わっていると考える。

4ー3.自治体および地域の取組み

自治体および地域の取組みを把握するため、本研究では大野市および鯖江市・越前市を取り上げ聞 取り調査およびアンケート調査を実施した。その結果、自治体の取組みが活発に行われているのは大 野市であり、地域の取組みが中心となっているのは鯖江市・越前市であった。以下、大野市における 聞取り調査および鯖江・越前市におけるアンケート調査に基づき、それぞれ湧水地に対する取組みに ついて述べる。

(1)大野市の取組み

大野市では、『名水百選(環境省)』に選ばれた「御清水」や『平成の名水百選(環境省)』に選ばれた「本 願清水」などの湧水地が存在するだけでなく(環境省 a,HP)、平成 8 年には『水の郷百選(国土交通省)』

にも選ばれた(国土交通省 HP)。「ふくいのおいしい水」の認定地点は福井県内の市町の中で最も多い。

大野市湧水再生対策室への聞取り調査の結果の概要を表 6 に示す。

大野市の湧水地は、地下水を確保するには大変恵まれた地形であり、古くから受け継がれてきた。

この豊富な水を蓄えている地域で暮らす住民は、昔から現在まで豊富な地下水によって人々の生活が 育まれてきており、福井県内においても、行政を中心とした湧水に対する取組みは最も積極的である。

しかし、近年では、住民の湧水への関心が薄れてきているという状況も伺える。このような状況を受 けて、大野市では、大野盆地における調査研究を充実させると同時に、湧水を将来にわたって持続的 に受け継ぐために、平成 32 年までの計画で、『大野市地下水保全管理計画』および『越前おおの湧水 文化再生計画』に取組んでいる。『大野市地下水保全管理計画』では、基本理念を「持続的な地下水 の保全と利用の調和」と定めて地下水の保全対策を地域全体で取組んでいくことを目的としている。

(13)

大野市湧水再生対策室へのヒアリング調査の結果から、大野市においては湧水の枯渇や地下水位の 低下等の困難な状況を経ながらも、現在も生活水として継続的に地下水が利用されており、湧水は生 活の中心となっていることが分かった。また、湧水は大野市のシンボルとして、まちづくり施策の中 核となっていることが改めて認識された。以上のように、大野市の地下水および湧水保全にあたり、

市民、行政、事業者など複数の主体が連携した活動が不可欠であり、これに類似した取組みは福井県 内においては他にみられない。

(2)鯖江市・越前市の取組み

鯖江市および越前市の「ふくいのおいしい水」に認定されている以下の 8 地点、許佐羅江清水、三 場坂清水、桃源清水(以上の 3 地点は鯖江市)、および瓜割清水、治佐川井戸、お清水不動尊の水、

石神の湧水、解雷ヶ清水(以上の 5 地点は越前市)において、それぞれの湧水管理者に対してアンケー トによる聞取り調査を行った。質問内容は、管理責任者の属性および管理内容、湧水の特徴、過去か ら現在までの変化、および管理責任者の湧水に対する考え等である。回答者数は鯖江市が 8 人であり、

越前市は 5 人であった。鯖江市の許佐羅江清水については、湧水保全に携わる地元の有志の方々であ る 6 人から回答を得た。鯖江市におけるアンケート用紙の配布は鯖江市産業環境部環境政策課に依頼 し、回収は自宅訪問をした。越前市においては配布、回収ともに自宅もしくは湧水地点付近の公共施 設を訪問し、実施した。以下にアンケートによる聞取り調査の主な結果について示す。

表6 大野市湧水再生対策室への聞取り調査概要

聞取り項目 内容(結果)

大野市と湧水との関わり

(歴史的背景)大野市は今から 430 年以上前に、織田信長の武将である金森長近によって築かれ た城下町を起源とした市街地である。当時「町用水」として整備された湧水が今も受け継がれ 利用されている。

(地形的)大野市の地形は盆地であり、地下が水瓶のような構造になっている。そこから豊富な 水が湧き出し、大野市の人々に恩恵を与えている。大野市街地の地下水位は高く、わずかなく ぼ地でも水が湧き出すところがある。

(利用)大野市内の約 7 割の家庭は地下水を汲み上げており、地下水を利用する家庭においては、

水道料金の負担がない。

湧水管理体制

日頃の清掃や、簡易観測井として定められている 16 地点における地下水位の観測等の管理等が 地元市民によって実施されている。観測結果については掲示板に表示しており、毎日の地下水 位の状況を市民に分かりやすく伝えている。

大野市の湧水の課題

市民の湧水に対する意識の低下が問題である。湧水は年間を通してほぼ一定の温度を保ってい るため、冬場は融雪用に自宅の玄関先や駐車場に撒く家庭がある。このため、大量の地下水が 急激に汲み上げられ、地下水位の低下を引き起こしてしまう。融雪における急激な地下水の汲 み上げが原因となり、昭和 46 年から昭和 59 年にかけて、市街地南部を中心として大規模な井 戸枯れが起こった。今後の課題としては、枯れてしまった湧水を従来のように復活させることや、

地下水が貴重な水資源であることを人々に更に認識してもらう必要があると感じている。また、

大野市の市民は昔からこのように地下水を利用してきたことに慣れすぎたためか、ありがたみ を忘れつつあるのではないかと感じることもある。

表7 大野市における湧水に関する保全計画の具体的な施策

大野市地下水保全管理計画 越前おおの湧水文化再生計画

具体的な 施策

1.地下水状況の監視 2.地下水量の保全施策 3.地下水質の保全施策 4.地盤沈下の防止施策 5.地下水保全活動および啓発

6.開発行為等に際しての地下水保全指針

1.地下水位上昇に向けた施策

・大野盆地の真名川以西における水収支の改善

・地下水涵養に必要な水源の確保 2.地下水保全意識の醸成に向けた施策

・節水や地下水保全への啓発と教育

・地下水や湧水の保全管理と調査研究

(14)

(ア)湧水の管理責任者および管理内容

表 8(a)および(b)に管理者の年齢構成、職業を示す。管理責任者は、両市とも全員が 60 歳 以上の高齢者であり、特に鯖江市においては、70 歳以上の割合が 8 人中 6 人と高く、今後の後継 者問題が懸念される。職業については、鯖江市においては農業 4 人、無職 3 人および会社員・団体 役職員 1 人であった。両市合わせて農業および無職の人が中心となって管理業務に携わっており、

農業活動において湧水の恩恵の重要性を認識している人、または湧水の伝承に積極的な意識をもつ 人が湧水管理の責任者として任されていることが考えられる。なお、各管理責任者の地区内におけ る立場は、鯖江市では 4 人が地区の代表を担っており、その他の 3 人が代々管理を引き継いでいる ということであった。また、越前市では地区の会長であった。いずれにしても、湧水地域について よく知る人が中心となり管理責任者を任されていると推測できる。

次に湧水の管理内容について述べる。これに関して回答が得られた 6 地点すべてにおいて、湧水 が存在する地域に居住する人々による管理が実施されていた(表 9)。例えば、清掃の頻度につい ては、6 地点すべてにおいて定期的な清掃が行われていることが分かった。許佐羅江清水、石神の 湧水においては、それぞれ「清水を守る会」および「石神の湧水保存会」が設立され、清掃等が行 われていた。その他、地域特有の管理内容もみられた。これらの結果から、現在の管理が管理責任 者のみでなく地元住民の有志によって成り立っていることが分かった。

(a)年齢構成‌ (単位:人)

年齢構成 越前市 鯖江市

60 ~ 69 歳 4 2 70 ~ 79 歳 1 5

80 歳以上 0 1

(b)職業‌ (単位:人)

職業 越前市 鯖江市

農業 1 4

自営業 1 0

会社員・団体役職員など 1 1

無職 2 3

表8 管理者責任者の年齢構成とその職業

ᅂ⛤ᗐ 表9 各湧水における地域が実施する管理内容

(15)

ていると推測する。湧水の由来について、具体的な年代が記載されていた地点の中で、越前市の解 雷ヶ清水が最も古く、湧水の起源は今から 1400 年以上も前であった。この年代から、長年にわたっ て大切に守り続けられてきたことが窺える。これらの回答で得られた由来の内容について記された 看板が現地に設置されている湧水地点もあった。三場坂清水および桃源清水を除く湧水について、

独自の由来、謂れ等が存在し、古来より水文化として意味のある場所であり、伝承すべき事項があ る地点であるといえる。

(ウ)湧水の利用について

湧水の利用者数、利用方法および味覚、味の印象についての内容を表 11(a)、(b)および(c)に示す。

湧水の利用者数については、1 日当たりの利用者数とし、月もしくは年単位での回答があった場 合は、それぞれ 30 日、または 365 日で割った値をあわせて示した。1 日当たりの人数について、

鯖江市で最も多い地点が許佐羅江清水 40 ~ 50 人(多い時は 1 日に 100 人)であった。鯖江市、越 前市とも地点による利用者数の差が見られた。地点間で利用者数に差が生じる理由として、立地が 大きく影響していることが考えられる。最も利用者数が多い地点である許佐羅江清水および石神の 湧水は住宅地に位置しているのに対し、最も少ない地点である三場坂清水および解雷ヶ清水は林地 に位置している上、自動車の駐車が困難である。アクセスのしやすさや湧水周辺に居住する人口の 違いによって利用者数の差が生じていると考える。

湧水の利用方法については、「お茶・コーヒー」など飲料を目的とした回答が地点と最も多かった。

また、利用者数が最も多かった許佐羅江清水および石神の湧水に加え、桃源清水および治佐川井戸 のこれら 4 地点においては、いずれも憩いの場とされていることが分かった。これらのことから、

それぞれの湧水地は、湧水を飲料等の利用以外にも多様な役割を果たしていることがいえる。湧水 の味覚や味の印象については表 11(c)を参照していただきたい。

(エ)湧水に関する過去から現在に至るまでの変化

湧水の状況の過去から現在までの変化を把握するため、湧水の周辺環境の変化、水量の変化およ び水質の変化、利用に関する変化について質問をした。

湧水の周辺環境の変化については、石神の湧水を除く 7 地点においては「ある」という回答であっ た。許佐羅江清水においては整備の進行などの湧水保全につながる変化や、湧水の枯渇など状況の 悪化を意味する変化がみられた。三場坂清水および桃源清水においても整備の進行とあり、湧水保 全に関するハード面の変化がみられた。一方、越前市の湧水地点において「ある」と回答した 4 地 点においては、環境の変化や利用マナーの悪化など、湧水保全に対するソフト面の変化が中心に見 られ、それらは人間活動が湧水環境に影響を及ぼした変化である。

湧水の水量の変化については、許佐羅江清水、治佐川井戸、解雷ヶ清水において「減少した」と あり、その他 5 地点においては「変わらない」という回答であった。水量の減少の原因として、都 市化に伴う住宅や工場の増加など、集水流域の変化が挙げられ、湧水の周辺環境の悪化と同様に人 間活動が影響しているものと考えられている。

湧水の水質の変化については、8 地点すべてにおいて「ない」という回答であった。水質に関し ては地域住民の判断では現状維持であるが、周辺環境の変化、利用法の変化、管理状況の変化、気 候変化等により、その影響を受けることが予想されるため、今後注視が必要である。

湧水利用の変化について、利用者数および利用方法のそれぞれについて質問をした。

利用者数の変化については、越前市の解雷ヶ清水を除く 7 地点において「増加した」という回答 であった。変化の理由として、許佐羅江清水においては湧水への関心が高まっていることや、利便 性の良さ、認知度の向上などが挙げられ、三場坂清水および桃源清水においては整備による利便性 の向上が挙げられた。具体的な整備内容についての記述はなかったが、駐車場や採水場の整備を意 味していると推測する。越前市の「増加した」とあった 4 地点すべてにおいて、認知度の向上が挙 げられた。解雷ヶ清水においては、「変わらない」とあったものの、地域外から多くの利用者が訪 れることが回答されていた。これらの結果により、湧水に対する認知度および関心の向上によって

(16)

表10 各湧水の湧出地点および湧水の由来等

(17)

利用者数が増えている傾向にあることが分かった。その要因のひとつとして、回答にもあるように

「ふくいのおいしい水」に認定されたことが影響していることが考えられる。

利用方法の変化については、鯖江市においては 3 地点すべてにおいて、また越前市においては解 雷ヶ清水の 1 地点において「ある」という回答であった。許佐羅江清水および桃源清水においては 水道水利用から湧水利用に変わったことや憩いの客が増えたことなどの利用方法の変化として挙げ られた。解雷ヶ清水においては、湧水利用の形態が、簡易水道から現地での利用へと変化したこと

表11 湧水の利用者数および利用方法

(18)

が挙げられた。いずれも湧水地へ直接出向いて利用する方法に変化したことで、より身近に湧水を 感じることができ、人々を引き寄せる場になっているといえる。

6.まとめ

本研究では「ふくいのおいしい水」を対象とし、湧水の水質特性と自治体および地域の湧水への取 組みの現状について調査した。以下にその知見と課題についてまとめる。

湧水の水質について、各地域における地形や地質などによってそれぞれ特徴を持っており、福井県 内の湧水の水質は多様であることがわかった。たとえば、海洋の影響を受けている地点では、Na お よび Cl の成分濃度がその湧水を特徴づけ、地質によって Ca 成分を多く含む。これらの地域ごとに 持つ湧水の水質的な特徴を示すことで、地域の貴重な水資源として保全の意識につながる情報になり うる。

また、地域の自治体の取組みが、湧水と地域住民との関わりに大きく影響していることが、聞取り 調査によって確認できた。地下水網に恵まれた特徴的な地形を有する大野市では、古くからの湧水利 用と伝承が現代まで継続しており、自治体がまちづくり施策の中心に湧水を据えることで、湧水保全 体制が確立されたといえる。しかし、その一方で地域住民の地下水利用の慣れや水資源は有限である ことの意識(ありがたみ)の希薄化(表 6)により、地下水の過剰利用による地下水位の低下が課題 となっている。このことは、湧水への取組みが自治体主導であるがゆえに、湧水と地域住民との精神 的な距離間が生まれつつあるのではないかと考察する。その他の地域では、自治体は湧水への取組み を大部分において湧水を保有する地域に委ねていた。管理責任者の湧水地への姿勢は、伝承と維持管 理において積極的であるが、高齢化に伴う後継者問題が切実な課題となっている。湧水は貴重な地域 資源であるため、水循環の一部であることの認識と湧水に対する関心を醸成し、一人ひとりが地域の 水循環の形成に関わっているという自覚を促していく必要があると考える。特に、35 地点のうち 17 地点が伝説を持っており(表 5)、地域にとって湧水は地域の文化とともに引き継がれている重要な 地点であることを表している。

したがって、地域における湧水保全の課題に取組むためには、湧水のもつ科学的側面および水文化 など民俗学的側面から捉えた情報を地域住民とともに、湧水地を訪れる人々に対して発信すること重 要である。それによって、人々の湧水への関心と健全な水循環の意識が醸成されることへ繋がると考 える。

謝  辞

本研究を行うにあたり、大野市湧水対策室、鯖江市環境政策課、越前市環境政策課および鯖江市、

越前市の湧水管理責任者の方々に調査協力をいただいた。ここに感謝の意を記します。

参考文献

1)首相官邸,水循環基本法(2018 年 12 月 1 日アクセス)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/mizu_

junkan/kihon_keikaku.html

(19)

8)西村宗倫,川崎将生,斎藤泰久,橋本剛志,2017,水循環解析におけるモデルの設定および再現 性の検証事例の報告―福井県大野盆地における事例―,地下水学会誌,59(2),p.125-158.

9)奥村充司,2016,ふくいのおいしい水認定事業の意義および水質と表層地層の関係,福井工業高 等専門学校研究紀要,自然科学・工学,49,p.145-154.

10)福井県環境政策課「ふくいのおいしい水」パンフレット,平成 27 年 8 月改訂版

11)国土交通省 水の郷百選 http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/mizusato/index.htm 

(2018 年 12 月 1 日アクセス)

12)帰山寿章,2015,福井県大野市の取組 水への恩返し―CarriyingWaterProject―,地域づく りコミュニケーション部門 No.15,国土交通省近畿地方整備局,p.1-5.

参照

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