自 尊 心 な ら び に 適 応 に 及 ぼ す ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト の 効 果 ー サ ポ ー ト の 受 容 と 期 待 の 交 互 作 用 か ら の 検 討 ‑
学 校 教 育 専 攻 人 間 形 成 基 礎 コ ー ス 福 谷 泰 斗
はじめに
個人に対する他者からの支援,すなわちソー シャルサポートが,個人のストレスを和らげ,
個人の適応状態に影響を及ぼすことが知られて いる。しかし,個人がどの程度サポートをして ほしいと願っており,実際はどの程度受けとっ ているかの観点から学校生活や自尊感情に対す る適応を検討した研究は少ない。
そこで,ソーシャルサポートの充足度の違い がストレスに対する対処行動や個人の学校生活,
および自尊感情に及ぼす影響を調べた。
研 究1 ソーシャルサポート尺度の作成 中学生・高校生を主な対象として,ソーシヤ ルサポートを期待する気持ちの程度と,受けと った程度について検討することのできる尺度を 作成した。
【予備調査】
方法:現職教員 (48名)を含む大学院生 (64 名)と大学生(23名)計87名 を 対 象 と し て 他 者に支えられたり,助けられたりしていると感 じるのはどのような場合で、すか」という質問を 行ない,自由記述で回答を求めた。
{結果】
現職教員はさまざまなサポートをそれぞれに 重要視しているということ 大学生は他者との 情緒的・共感的な結びつきを特に重要視してい
るということが明らかとなった。
指 導 教 官 皆 川 直 凡
【調査1]
方法:中高生 (674名)を対象として,予備 調査で収集したサポートを 30項目の質問から なる尺度として使用した。尺度は「友人に対す る期待j と「友人からの受容J,
r
家族に対する 期待」と「家族からの受容」についてそれぞれ 尋ねる 4種類のソーシャルサポート尺度を用い た。回答は4段階評定で求めた。【結果】
α係数は.9542から.9669の範囲で、あった。因 子分析を行なったところ4種類のサポート尺度 でそれぞれ4因子が抽出された。因子は「情緒 的J
r
道具的Jr
時間共有Jr
フィードバック Jと 名づけた。友人と家族を「親密な他者」として 総括することを目的として, 4つの尺度で共通 する因子を抽出し,それぞれ 20項目からなる「友人・家族」への期待と「友人・家族」から の受容の2つの尺度を作成した。
{調査
2 1
方法:高校生(183名)を対象として調査 1 までの段階で作成した2つのソーシャルサポー
ト尺度の信頼性と妥当性を検討した。回答は 4 段階評定で求めた。
[結果】
ソーシャルサポートの期待と受容の2つの尺 度について信頼性を検討するため,因子ごとに α係数を求めた。α係数は.8283から.8898の範 囲で、あった。この結果から, 2つの尺度が信頼
性を保っていると判断した。内容的妥当性の検 討は,先行研究で用いられたソーシャルサポー ト尺度との比較によって行ない,内容的に妥当 であると判断した。
研究ll:サポートとコーピング,自尊感情,学 校生活満足度の関係の検討
ソーシャルサポートが満たされている者ほど コーピングを多く行ない,自尊感情が高く,学 校生活に対して満足しているとし、う仮説につい て検討した。
【方法】
高校生(183名)を対象として,研究Iで作 成した2つのサポート尺度と既存のコーピング 尺度,自尊感情尺度,学校生活満足度尺度を用 いた。回答は尺度ごとに4段階評定, 5段階評 定で求めた。サポート尺度以外の尺度の回答方 法は先行研究の方法に従った。
{結果]
情緒的,時間共有 フィードバックサポート は女子の方が男子よりも強く期待しているとい うこと,男子では道具的サポートの方が時間共 有サポートよりも強く期待しているということ が明らかとなった。また,情緒的,時間共有,
フィードパックサポートは,女子の方が多く受 容しているということ 男女とも時間共有サポ ートを受けとる頻度がもっとも多いということ が明らかとなった。さらに,時間共有サポート 以外の3つのサポートは,男女とも期待得点の 方が,受容得点よりも高いということが明らか となった。自尊感情,コーピングは性差が見ら れなかった。また積極的対処と認知的対処が多
く行なわれていることが明らかとなった。学校 生活に対する満足度・不満足度は性差が見られ なかった。女子の方が満足しており,不満は男
子の方が強いことが明らかとなった。
積極的対処,サポート希求は学校に対する満 足と正の相関にあった。サポートの受容得点と サポート希求,コーピングの総合得点,学校に 対する満足と自尊感情は正の相関にあった。受 容得点と不満足は負の相関にあった。受容得点 から期待得点を引し、た差得点では自尊感情と負 の相関にあった。受容得点を期待得点で除し 100を掛けた率得点では学校不満と負の相闘が あった。
サポート期待得点と受容得点の中央値を基準 に4群に分割した。すなわち高高群,高低群,
低高群,低低群である。この 4群の自尊感情,
コーピング,学校生活満足度,不満足度を比較 したところ,学校生活満足度において,高高群 と高低群の差が有意で、あった (p<.05)。また 不満足度において,高高群と高低群,高高群と 低低群の差が有意で、あった(し、ずれも p<.01)。
【考察】
高校生は,全般的にサポートを期待している ほど受けとっていないという可能性が示唆され た。また,サポートが欠落したり不足している 生徒は,自尊感情が低下したり,学校生活に対 して不満をもちやすいという可能性が示唆され た。さらに,受けとったサポートの量が多いほ どコーピングを多く行なうということ,自尊感 情が高くなるということ,学校生活に対して満 足感をもちやすくなるということの可能性が示 唆された。
おわりに
本研究の結果から,生徒が自己を肯定的にと らえ,学校生活に充実感をもつためには,生徒 に対してできる限り豊富なサポートを与えるこ とが必要であることがわかった。今後はサポー
トを与える具体的な方法の検討が望まれる。