中学校教科書における漢文教材の研究
「論語 J 教材を中心に一
教科・領域教育専攻 言語系(国語)コース 葛 木 大 子
1 研究の目的と方法
本研究の目的は、戦後から現代に至るまで、
中学校国語教科書において、「論語J 教 材 が ど の時期にどのような章句が、どれくらいの量、
採録されたかを明らかにすることである。近年、
古典教材、特に漢文教材の存続が危ぶまれる中 で、「論語Jは戦後から現在に至るまでほとん どの教科書において教材として扱われ続けてい る。そのような「論語J教材が、戦後から現代 に至るまでどのような変遷をとげ、中学校教科 書に採録されてきたのか探っていきたい。また、
その時々の時代背景、漢文教育のあり方とどの ように関連し、採録状況が変遷したかを明らか にしていく。
2 論文の構成
本論文は序章、結章の他、次の4章で構成す る。
第一章 戦後中学校教科書における漢文教育史 第二章 戦後中学校教科書における「論語」教
材の採録状況
第 三 章 戦 後 中 学 校 教 科 書 に 採 録 さ れ た 「 論 語j
教材の章句
第四章 第二期における「論語」教材
3 論文の概要
第一章において、戦後から現代までの漢文教
指導教員 幾 田 伸 司
育史の概観をおこなった。主に学習指導要領の 改訂時期にあわせ、 I期からE期に時代区分し、
それぞれの時期について検討した。 1期は戦後 直後であり、 CIEの検関が入るなど教育界にお いても混乱期で、あった。アメリカの経験主義に 立脚した言語教育が重視され、東洋古典とされ る漢文教育は軽視される傾向にあった。また、
この時期は、検定教科書と固定教科書である『中 等国語第四分冊』が並行して刊行されていた。
『中等国語第四分冊』においては、漢文は「文 化教育」的意義を持つもので、あったのに対し、
「昭和 22年 学習指導要領Jや「教科用図書 検 定 基 準j においては、「言語教育jを重視し たもので、あった。このように、 I期は、検定教 科書と国定教科書の漢文教育観にずれが生じて いたと考えられる。 E期に入ると、漢文教育は 重視される傾向に転じる。特に、「昭和26年 中学校高等学校学習指導要領国語科編(試案)J において、漢文学習についての一つの章が設け られ、「語文教育J的漢文教育観が強調された。
さらに、昭和 27年の「東洋精神文化振興に関 する決議案Jによって、より一層漢文教育が重 視される傾向になった。一方、 E期には、学習 指導要領による教材の精選、授業時数の削減に より漢文教育は軽視され始める。しかし、平成 に 入 札 学 習 指 導 要 領 に お い て 、 国 際 協 調 が 叫 ばれ、国際化の中で古典(漢文)教育自体が見
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直され始めたのであるロこのような、漢文教育 史を踏まえた上で、第二章から「論語」教材の 分析に入るD
「論語J教材を分析するにあたり、戦後から 現代までを第一期 第七期までに時期区分し た。第二章において、量的分析を行ったが、時 期ごとに、「論語J教材の採録教科書率や採録 章句数、採録回数、平均採録数を抽出した。そ の結果、戦後直後である第一期が最も採録教科 書率、平均採録数が低く、第二期では全ての値 が最高値を示した。第三期以降、採録教科書率 は下がらないが、章句数や平均採録数は徐々に 減少傾向に転じる。第五期には、学習指導要領 における教材の精選、授業時数の削減等により、
「論語」教材の採録教科書率は激減し、他の値 も急激に減少する。第六期から第七期にかけて、
採録教科書率は 90.0%と増加する。しかし、
章句数や平均採録数は、急激に減少した第五期 から値はほとんど変わらない。つまり、一種の 教科書に採られる章句の数は、減少し続けてい
るということである。
第一期から第七期における、「論語j教材の 変遷は、端的に述べると第二期に急激に増加し、
第五期に激減するということである。
量的分析の次に、第三章において、章句の内 容分析をおこなった。『中等国語 第四分冊』
では、道徳的、精神論的意味を含んだ章句が多 かった。検定教科書について今回は、採録回数 が多いものに注目した。そこで、時期ごとに章 句内容を分析し、次に全体での章句採録につい てみた。全体的に学問に関する章句が多く、倫 理的、精神論的意味を持つ章句については、学 習者の生活実態に即し、自分自身の立場に置き 換えて考えられる章句が多く採られている。
最終章において、採録率が急増した第二期に
ついて考察した。「昭和26年中学校高等学校学 習指導要領国語科編(試案)J において、漢文 は「語文教育J的価値を基に、漢文教育が重視 された。さらに「東洋精神文化振興に関する決 議案Jが衆議院本会議で可決され、漢文教育に 精神教育的意義も見出されたとされる。結果的 に、第二期に採録された章句は、学問に関する 章句より道徳的意味を含む章勾の採録が増加し たといえる。
4 今後の課題
【課題1】
今回の研究において、第二期の章句内容につ いては採録回数が特に多い章句のみしか検討で きなかった。他の少数採録の章句についても検 討は必要である。
【課題2】
「論語J教材採録が激減する第五期について は、今回検討するに至らなかった。この時期の 量的分析、章句内容を考察することによって、
第六期以降の「論語J教材のあり方につながる と考える。
【課題3]
第一章において戦後の漢文教育について概観 したが、ここでは学習指導要領を中心にみてき た。しかし、実際に教科書に設けられた漢文教 材、漢文単元をみることによってより具体的に 時代ごとの漢文教育必要がある。
【課題4]
本研究では、戦後の主に検定教科書における
「論語J教材の考察をおこなった。戦前、戦中 期における漢文教育史、「論語J教材の考察に ついては、今後の課題としたい。
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