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心理学研究 第2号(2011年度)

一般大学生におけるアレキシサイミア傾向者の 愛着と防衛機制について

津山 雄亮・中村 延江 キーワード:アレキシサイミア,愛着,防衛機制

抄録:精神療法が効奏しない一群として、臨床現場で見いだされたアレキシサイミアであるが、

健常者の中にもある程度の割合で出現すると言われる。では、一般大学生においてはどういっ た特徴として現れるのか、本研究では愛着と防衛機制という側面から、対人関係やストレス対 処について検討した。対象は大学・大学院生男子

100

名、女子

230名であった。調査票には、

Toronto Alexithymia scale20、Internal Working Models尺度、Defense Style Questionaire42

を使用した。その結果、アレキシサイミアと回避型愛着、防衛機制の身体化・自閉的空想・隔 離と正の相関、防衛機制のユーモア・昇華と負の相関が見られた。 

 以上より、一般大学生でアレキシサイミア傾向が強い人ほど、他者と親密な関係を築かず、

他者に頼ることをしないといった対人関係や、ストレスに対して身体症状化、あるいは不快な 感情を切り離したり、非現実的な空想を描いたりするといった、不適応的な対処を行っている ことが推測された。

Ⅰ,問題

私たちは生活の中で様々な「感情」を体験し,表現している。感情には環境との調整のため に働く「シグナル」としての役割がある。悲しみは重要な対象を喪失した際に経験され,その ような状況を自分および他者に伝達するシグナルとして働くことで自己の活動を抑止し,消耗 を防ぐ役割を、他者に対しては擁護や共感を引き出すという役割を持っている(Malatesta&

Wilson, 1988)。しかし,環境への適応において必要とされるシグナルとしての機能がうまく働

いていない一群にアレキシサイミアがある。

アレキシサイミアとは,

Sifneos(1973)によって力動的な精神療法が奏功しない一群として

提唱された概念である。その特徴としては,①自分の感情や身体の感覚に気づいたり区別した りすることが困難,②他者へ自分の感情を語ることが難しく,③空想力の乏しい,明らかに制 限された想像過程,④自己の内面よりも外的な事実に関心が向く(機械的思考)といった4つ の要素が挙げられている(Taylor,1994)。そして,これらの特徴は,心身症をはじめ心因性疼痛 や,精神活性物質常用障害,心的外傷後ストレス障害,仮面うつ病といった精神科で取り扱う 疾患などの発症や悪化に影響を与える要因(リスクファクター)とされている(馬場,

2007

;福 西ら,1993)。

(2)

正規分布的に現れるということが言われる。先行研究では主に,一般健常成人を対象に

Toronto Alexithymia Scale20(TAS-20)のカットオフポイントを使用してアレキシサイミア出

現率を見ている。その結果,

9.3%(Mattila et al., 1998), 16.3%(Todarello et al., 1995), 23.4

%(一木,2002)と幅はあるが,ある程度存在することが分かっている。では,何らかの疾患 を抱え臨床現場に現れる人とは異なり,これら健常者として生活しているアレキシサイミア傾 向者はどのような特徴を有し,また,どのような困難を抱えているのであろうか。そこで,本 研究では愛着と防衛機制という側面から,対人関係とストレス対処を中心に上記の点について 検討を行う。

まず愛着は,

Bowlby(1973)によってとりあげられた概念である。Bowlbyは “愛着とは親と

の間の情緒的絆であり,人間関係に関する内的作業モデルとして生涯を通じて機能すると仮定 される”とし,子どもの頃に形成された愛着の重要性について唱えた。また,

Ainsworth

(1973)

はこの愛着について,ストレンジシチュエーション法を考案し,対人関係パターンや感情制御 の仕方による愛着パターンの分類を行った。このように,愛着は,対人関係に関する枠組みで あると同時に,愛着型特有のストレスフルな事態への感情制御方法も規定する。

この愛着とアレキシサイミアとの関連について

Taylor et al.(1997)は,様々な臨床家の報告

から,

“アレキシサイミアの人たちは相手を選ばず他者と依存的な関係を形成し,さもなければ

独りでいることを好んで人を避けるといった特徴がある”とし,これは幼少期から不安定‐両 価型あるいは,不安定−回避型の愛着様式が持続していたことを示唆するとしている。また,

Picardi et al.(2005)はアレキシサイミアと愛着関係,性格特徴について調査したところ,アレ

キシサイミアには不安・回避的な愛着と低い親密性や協調性が関連することが示された。以上 から考えると,アレキシサイミアは回避型愛着と関連し,対人関係に対しても回避的で,スト レスフルな事態であっても助けを求めようとしないといった傾向との関連が予測される。

次に,防衛機制はストレスフルな事態において苦痛を引き起こすような感情や観念を受け流 すための無意識の過程であるが,この防衛機制とアレキシサイミアとの関連について

Grotstein

(1986)は次のように述べている。“アレキシサイミアは,成熟した防衛を用いて感情

を制御する能力に欠陥があるだけでなく,原始的な感情や欲動を夢や空想の形で非現実化する 能力にも欠陥がある。そのため強烈で未分化な感情が喚起されると,内部に生じた混乱を整理 しようと,未成熟な防衛が用いられるのである”。また,Wise et al.(1991)は,Defense Style

Questionaire(以下 DSQ)という尺度を使用してアレキシサイミアとの関連をみたところ,未

熟な防衛と正の相関,成熟した防衛とは負の相関があるとした。また,

Mattila et al.

(2008)は,

疾患とは独立してアレキシサイミアが身体化と関連があるとしている。このように,アレキシ サイミア傾向者は,成熟した適応的な防衛機制より,未熟で不適応的な防衛機制によって対処 しているということが理論的にも実証的にも言われている。では、具体的な個々の防衛機制と の関連についてはどうか、についてはあまり言及されていない。この点が明確になると,どの 防衛機制が働き,どれが働かないのかといったストレスフルな事態への対処の特徴が豊かにな

(3)

心理学研究 第2号(2011年度)

ると思われる。

以上より,本研究では一般大学生におけるアレキシサイミア傾向者の愛着・防衛機制という 側面からストレスフルな事態が生じた際の対処や,対人関係,そこから想定される生活上の困 難さについて検討・考察する。

Ⅱ,対象と方法 1,調査対象者

本研究の調査対象者は,私立大学大学生・大学院生

382名。そのうち有効回答者数は男性 100

名(平均年齢

19.34

歳,

SD1.39

歳),女性

230名(平均年齢 19.43

歳,

SD1.05

歳)の計

330名(平

均年齢

19.4

歳,SD1.16歳)であった。また,データに欠損があったものや,全てに1を振るな どの回答の信頼性に欠けるものは分析から外すこととした。

2,使用した調査票

(1) TAS-20(Tronto Alexitymia Scale-20);(小牧ら,2003)

5

件法で

20

項目からなるアレキシサイミア尺度である。TASは,感情認識困難(感情を同定 し,その情緒的喚起に伴う身体感覚と感情を識別する能力の困難),感情言語化困難(感情を他 の人に伝えることの困難さ),外面性志向の思考(外的な事実へと向かう考え方)の

3

つの下位 尺度から構成される。本尺度ではカットオフポイントが定められており、

61

点以上をアレキシ サイミアとする。

(2) IWM(Internal Working Models)尺度;(詫間・戸田,1988)

6

件法、18項目から成る

Internal Working Model

の質を評価する尺度で、次の3つの愛着型 を各々特性として捉える。①安定型:他者は応答的。自己は援助される価値のある存在。②回 避型:他者は拒否的。自己充足的。③アンビバレント型:他者への信頼と不信。自己不全感が 強い。結果の処理は,尺度ごとに算出された合計点を個人内の愛着特性とした。

(3) DSQ-42(Defense Style Questionaire);(Andrews,et al., 1993)

個人の防衛機制を測定する尺度で,中西(1998)が邦訳したもの。全体で

20種類の防衛機制

を各々

2

項目

9件法で測定する。本尺度で測定される20

種類の防衛機制は,大きく3つの因子

に分類される。①未熟な防衛(投影,受動攻撃,行動化,隔離,価値下げ,自閉的空想,否認,

置き換え,解離,分裂,合理化,身体化)。②神経症的な防衛(打ち消し,エセ愛他主義,理想 化,反動形成)。③成熟した防衛(昇華,ユーモア,予測,抑制)。

Ⅲ,結果

1,アレキシサイミア尺度(TAS-20)の因子分析

本研究では,アレキシサイミア尺度(以下

TAS

と略記)の下位因子抽出のため,最尤法・

Promax

回転による因子分析を行った。その結果,

6

項目が削除され,

3

因子

14項目が抽出され

た。また,因子を成す項目は先行研究と相違が無かったため因子名もそのまま使用した。

1

因子目は,“しばしば,自分のからだの中の感覚に戸惑ってしまう”,“何と名づけてよいか

(4)

難」因子と命名した。2因子目は,“自分の気持ちにぴったりの言葉をみつけるのは難しい”や,

“簡単に自分の気持ちを表現できる(逆転項目) ”

いった

3

項目から構成され、その内容から,

「感情言語化困難」因子と命名した。3因子目は,

“内面を観察することが直面した問題を解決す

るのに役立つことがある(逆転項目)

や,

“問題について説明するより,なぜそうなったか分析

する方をより好む(逆転項目)

といった4項目構成され、その内容から,「外面性志向の思考」

因子と命名した。

各因子の信頼性をみるため,クロンバックのα係数を算出したところ,感情認識困難はα

=.831,感情言語化困難はα =.646,外面性志向の思考はα =.557

であり,感情言語化困難と外面

性志向の思考因子のα係数がやや低い結果となった。

2,防衛機制項目の選択

防衛機制尺度(以下

DSQ

と略記)は,作成される際,各防衛機制を測定しているとされるい くつかの項目の中から相関の高い2項目を選び作られている。しかし,日本においても同様に 高い相関が得られるかは不明であるため,改めて

2

項目を再分析し相関が中程度以上のものを 使用することとした。

まず,各防衛機制を測定する

2

項目間で相関分析を行ったところ,全般的に相関の低さが目 立った。そこで,相関係数が

.30

以上のものを採用することとした。その結果,未熟な防衛機 制に分類される身体化(r=.41, p<.01),自閉的空想(r=.63, p<.01),隔離(r=.34, p<.01)。成熟し た防衛機制分類される昇華(r=.32, p<.01),ユーモア(r=.35, p<.01)のみが基準を満たした。

3,アレキシサイミア出現率

カットオフ基準を適用するため、因子分析前の

TAS20

項目の合計点を使用し,

61以上を基準

として,アレキシサイミア出現率を算出した。その結果,調査対象となった大学生におけるア レキシサイミア出現率は男性

41.0%,女性 42.2%,全体で 41.8%であった。

表1 調査対象者におけるアレキシサイミア出現率

全体 男性 女性

調査対象者 330 100 230

TAS合計平均(SD)  57.7(9.8) 57.1(9.7) 58.0(9.8)

61≦TAS合計点 138 41 97

アレキシサイミア出現率 41.8% 41.0% 42.2%

         ※TAS総得点61点以上をアレキシサイミアとする。

4,アレキシサイミアと愛着との関連

TAS

Internal Working Models

尺度(以下

IWM)間で相関係数を算出した。その結果を表

2

に示す。まず,IWMの回避型と

TAS

合計点(r=.53, p<.01),感情識別困難(r=.50, p<.01),感 情言語化困難(r=.48, p<.01)との間に正の相関が見られた。次に,安全型と

TAS

合計点(r=-.36,

p<.01),感情認識困難(r=-.23, p<.01),感情言語化困難(r=-.44, p<.01)との間に負の相関がみ

られた。

以上より,アレキシサイミア傾向が強い人ほど,回避型の愛着の特徴を示し,安全型の愛着

(5)

心理学研究 第2号(2011年度)

傾向は低くなることが分かった。

表 2 TASとIWM の相関係数

回避型 安全型 アンビバレント型 TAS合計点

.53** -.36** .27**

感情認識困難

.50** -.23** .26**

感情言語化困難

.48** -.44** .27**

外面性志向の思考

- -.15** -

  **p<.01    ※相関が見られなかったものはハイフンで省略した 5,アレキシサイミアと防衛機制との関連

TAS

とDSQの各防衛機制間で相関係数を算出した。その結果を表

3に示す。まず, TAS

合計 点,感情認識困難と,未熟な防衛機制として分類されている身体化(r=.31~.38, p<.01),自閉的 空想(r=-.36, p<.01),隔離(r=.42~.46, p<.01)との間に正の相関が見られた。次に,昇華と感情 認識困難(r=.05, p<.01)との間に正の相関、外面性志向の思考との間に負の相関(r=-.31,

p<.01)が見られた。また,ユーモアと TAS

合計点(r=-.25,

p<.01)と感情言語化困難(r=-.32, p<.01),外面性志向の思考(r=-.22, p<.01)との間に負の相関が見られた。

以上より,アレキシサイミア傾向,特に感情認識困難傾向が強まると,身体化や自閉的空想,

隔離といった未熟な防衛機制の働きが強くなることが分かった。反対に,ユーモアといった成 熟した防衛機制は働きが弱くなることが分かった。また,アレキシサイミアの外面性志向の思 考という特徴が強まるほど,成熟した防衛機制の働きが弱まることが分かった。

表 3 TASとDSQ の相関係数

身体化 自閉的空想 隔離 昇華 ユーモア TAS合計点

.31** .36** .42** - -.25**

感情認識困難

.38** .36** .46** .11* -.16**

感情言語化困難

.21** .26** .29** - -.32**

外面性志向の思考

- - - -.31** -.22**

       **p<.01 *<.05  ※相関が見られなかったものはハイフンで省略した 6,愛着と防衛機制との関連

IWM

DSQで相関係数を算出した。その結果を表 4に示す。まず,回避型愛着と未熟に分

類される防衛機制との間に正の相関(r=-.34~.43, p<.01)が見られた。逆に,成熟に分類される 防衛機制とは負の相関(r=-.14~-.33, p<.01)が見られた。次に,安全型愛着とは,主に自閉的空 想(r=-.26, p<.01),隔離(r=-.26, p<.01)と負の相関,ユーモア(r=.39, p<.01)と正の相関が見ら れた。

以上より,回避型愛着傾向が強い人ほど身体化や自閉的空想,隔離などが働くが,逆にユー モアなどの働きは下がることが分かった。また,安全型愛着傾向が強い人ほど,未熟に分類さ れる防衛機制の働きは下がり,ユーモアの働きが強くなることが分かった。

(6)

身体化 自閉的空想 隔離 昇華 ユーモア

回避型

.34** .35** .43** -.14* -.33**

安全型

-.16** -.26** -.26** .18** .39**

アンビバレント型

.17** .20** .23** - -

   **p<.01 *<.05  ※相関が見られなかったものはハイフンで省略した

Ⅳ,考察

本研究結果より,次のようなことが明らかにされた。①調査対象の大学生においてアレキシ サイミアと判断された人の割合は約

40%であった。②アレキシサイミア傾向が強い人ほど,回

避型愛着傾向が強く,身体化,自閉的空想,隔離といった未熟な防衛の働きが強くなる。③ア レキシサイミア傾向が強い人ほどユーモアの働きは下がり,中でも外面性志向の思考傾向が強 い人ほど,昇華の働きも下がる。④安全型愛着傾向が強い人ほど,アレキシサイミア傾向や身 体化,自閉的空想,隔離の働きは弱まる。これらの結果についてストレス対処や対人関係の特 徴を挙げ,想定されるアレキシサイミア傾向者の問題や今後の研究課題について考察する。

まず,アレキシサイミアの出現率について,本研究では約

40%という,先行研究よりはるか

に高い値が得られた。その理由として、今回使用した調査票の項目数の多さによる疲労感が考 えられる。本研究の調査を行った際、本論文では扱っていない調査票も同時に行っている。そ の調査票は

160項目と多く、本調査項目とを合わせると相当な疲労感につながったのではない

かと考えられる。それが、5件法での回答を行う際、細かい判断の難しさに影響し、得点が高 い傾向の人はより高く評価をしてしまうということがあったのではないかと推測される。しか し,男女同じような割合であったことや,先行研究と同様な相関関係が見られる点で,本結果 が信頼性や妥当性に欠いているとは言い切れない。出現率に関しては今後の研究でも見ていく 必要があると思われる。

次に,②について,先行研究と同様の傾向が本研究でもみられた。まず,回避型愛着という のは,他者は拒否的で援助が期待できないことから,これを補完するために極めて自己充足的 な存在という自己に関する表象をもつ(詫間・戸田,1988)という特徴を有している。そのた め,対人関係においては,質問項目の

“人に頼るのは好きではない” “人と親しくするのは好き

ではない” “人は全面的には信用できない” “自分一人でも十分にうまくやっていける” といった 特徴がある。すなわち,この特徴が強いとされるアレキシサイミア傾向者は,他者を信頼し,

親密な関係を結ぼうとせず,自分の力で解決しようとする傾向があると考えられる。Picardi et

al.(2005)の研究では,ある皮膚疾患患者において高いアレキシサイミア傾向を示す人はソー

シャルサポートの利用が低いという知見が得られているが,これに関連して上記の特徴は,困 難が生じてもソーシャルサポートなどの資源の利用に結びつかないこととも考えられる。次に 防衛機制について,まず,身体化は先行研究同様にアレキシサイミアと関連があり,中でも感 情認識困難(情動喚起に伴う身体感覚とそれに伴う感情の識別が自覚されにくい特徴)との間 に関連が見られた。つまり,DSQの身体化(頭痛や具合の悪さ)は,アレキシサイミア傾向が

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心理学研究 第2号(2011年度)

高く,また,何らかの情動が喚起されているものの,どういった感情であるか同定できない人 ほど,強まるようである。次に,自閉的空想は

DSM-

-TRでは “人間関係,より効果的な行

為,または問題解決の代わりに過度の白昼夢を見ることで情緒的葛藤や内的・外的なストレス に対処する” とされている。つまりは,この傾向が強いアレキシサイミア傾向者は,ストレス フルとなる対人関係や,困難な事態,情緒的な葛藤を現実的な形で建設的に対処するというよ り,やや逃避的に非現実的な想像をめぐらすことで解決を図ろうとしていると考えられる。次 に,隔離との関連について,隔離は

“相異なった行為や意識内容,観念などの間に存在する関

係を絶つような働き”をいう。また

“クライアントの面接場面において,観念のみが語りや,情

緒的な反応が出てこない感情閉鎖が見られることがある。これは隔離の働きが関連しており,

精神療法の中で治療者との人間的なかかわりや触れ合いを難しくする”(待鳥,2004)。これら は,アレキシサイミアが臨床観察の中で見出された,内省や主観的体験を話すことをせず,機 械的に詳しく述べるという特徴に合致するところである。これは,治療者のみならず,日常生 活でも他者と情緒的に繋がることを難しくさせているのかもしれない。

次に,③について述べる。ユーモアは,葛藤やストレス因子の面白い側面,皮肉な側面を強 調することでそれらに対処することとされている。また,昇華は,非適応的になる可能性のあ る気持ちや衝動を社会に受け止められる行動にはけ口を求めることで情緒的葛藤や内的,外的 ストレスに対処するとされる(高橋ら訳,2002;APA, 2000)。上記の特徴から判断すると,ア レキシサイミア傾向が強くなる人ほど,不快な事態に対し,面白い面を探したり,ユーモアを 交えて他者に感情を伝えたりすること,あるいは適応的な形でストレスを開放していくことが 難しくなるということであろう。さらに,この

2つの防衛機制に共通するのは,不快感情に向

き合い,その葛藤に耐え,適応的な形で解決策を見出すことであると考えられる。そのため不 快感情が溜まらず,精神的な均衡状態も維持できると推察される。よって,この防衛の働きが 弱いということは,むしろ感情を避け,溜まる傾向にあるのではないかと考えられる。次に,

外面性志向の思考と昇華については,その関連を噛み砕くと,外面的事柄に関心を持ち,自己 内省や感情に触れることを必要視しない傾向が強いほど,適応的な感情開放が低いということ であろう。これは,感情に触れようとしないため,今の感情状態も,どう開放したいのかも分 からず,昇華が働かないということと考えられた。

最後に,④について述べる。安全型愛着は,他者は応答的で自己は援助される価値のある存 在という表象を持つ傾向を表している。これは,他者は拒否的で援助が期待できないという表 象を持つ回避型とは対照的である。このように比較すると,アレキシサイミア傾向や上述した 防衛機制は,どういった対象表象や自己概念を持つかということに関係があるようにみること が出来る。また,そういった表象から派生した自己充足的な適応方法が上記の防衛機制であっ たとも考えられる。

以上で挙げた特徴から,一般大学生におけるアレキシサイミア傾向を有する人の問題につい て考察する。まず,対人関係においては,他者と親密で感情的な交流を持ちにくく,ストレス フルな事態が生じても,他者に頼ろうという認識は無く,1人で解決しようとする。そのため,

(8)

られにくい孤立無援状態に陥っているのではないだろうか。それゆえ,ストレス過剰になって いるという現状も考えられる。次に,ストレス対処においては,身体症状や非現実的な想像,

あるいは関連する感情を切り離すことで対処しており,ストレスを開放し,適応的な生活を送 っているとは考えがたい状況が推察された。また,こういったストレス状態を引き起こさない ために,ストレスとなりうる事態や他者との親密な交流を避けるという利点も対人関係の特徴 にはあるのかもしれない。

今回の結果から想定される問題の改善策について考えるのであれば,④の考察であげたよう な,安全な対象表象や自己概念をいかに醸成するかということが考えられる。

最後に今後の課題として,上記に挙げたような問題はあくまで統計的な数値から見出される アレキシサイミア特徴であるため,実際どの合致しているのか,あるいは,本人の自覚的な適 応はどの程度であるかなどについて質的に把握していくことが重要であると考える。また,本 研究では愛着を特性として扱い検討した。しかし,個人の中にはそれぞれの愛着特性を有して いるため,このバランスがどのように関連するのかも検討する必要があると考えられる。

文献

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