様式8の1の1 別紙1
論文の内容の要旨
専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 財津 拓三
昨今の社会情勢の変化により、現在の国内電力は火力発電に依存している。特に、石炭を燃 料とする火力発電所の稼働率が高く、同時に石炭の燃焼灰であるフライアッシュ(以降、FAと表 記)の有効利用が課題となっている。球形の微粒子であるFAの利用方法の一つに、コンクリート の混和材料としての利用がある。FAは、ポルトランドセメント(以降、セメントと表記)の水和 反応で生成したCa(OH)2と反応(ポゾラン反応)して、コンクリートの強度を増加させる。その 反面、Ca(OH)2を消費するため、コンクリートの中性化抵抗性への影響が危惧され、建築分野でF Aが積極的に利用されない理由の一つとなっている。
他方、微粒分が不足している砕砂等の細骨材に微粒子であるFAを加えることで、細骨材の品 質向上を図り、コンクリートのフレッシュ性状を改善しようとする利用方法がある。しかし、生 コンクリート製造工場にFAの保管設備や計量設備等を増設することは大きな金銭的負担となり、
積極的に導入されていない現状にある。そこで、あらかじめFAを砕砂に混合して粒度調整した細 骨材(以降、FASと表記)を製造し、それを生コンクリート製造工場に納入する方法が提案され、
実用化および普及が期待されている。
本論文は、上記の背景をふまえて実施した一連の研究成果をまとめたものである。まず、FA を混合したコンクリート(以降、FA混合コンクリートと表記)におけるFAのポゾラン反応による 組織の緻密化とCa(OH)2の消費が中性化抵抗性に及ぼす影響を詳細に検討した。そして、FASを細 骨材に使用したコンクリート(以降、FASコンクリートと表記)の圧縮強度および中性化抵抗性 を明らかにすることでFASの有用性を検討した。これらの研究成果によって建築用コンクリート におけるFAの利用拡大を目指したものである。
本論文は全7章から構成されており、各章の概要は以下の通りである。
第1章では、本研究の背景、目的および構成を示した。加えて、コンクリートへのFAの混合方 法を整理して研究の方針を示した。
第2章では、FA混合コンクリートのフレッシュ性状、圧縮強度、中性化抵抗性およびFAのポゾ ラン反応に関する既往の研究を調査した。
第3章では、各種調合および各種養生のFA混合コンクリート供試体を作製し、FAの混合が圧縮 強度および中性化抵抗性に及ぼす影響について検討した。その結果、FAの外割り混合割合が増加 するほど圧縮強度が増加した。しかし、水セメント比が大きい領域では、FAの外割り混合割合が 増加するほど中性化抵抗性が低下した。また、セメントの水和反応およびFAのポゾラン反応を調 査するため、FAを混合したセメントペースト試料のX線回折分析を行った。その結果、FAのポゾ ラン反応によるCa(OH)2の消費が材齢7日から進行する傾向を捉えた。さらに、走査型電子顕微鏡
により微細組織を観察したところ、材齢28日以降ではFA粒子を覆うようにポゾラン反応生成物が 形成されている様子が確認できた。
第4章では、第3章の結果をふまえ、FA混合コンクリートの圧縮強度と中性化速度係数の関係 から、FAのポゾラン反応による組織の緻密化(圧縮強度の増加)に起因した中性化抵抗性へのプ ラスの影響を定量的に表した。また、FA混合コンクリート中のCa(OH)2量と中性化速度係数の関 係から、FAのポゾラン反応によるCa(OH)2消費に起因した中性化抵抗性へのマイナスの影響を定 量的に表した。さらに、FAのポゾラン反応による組織の緻密化(圧縮強度の増加)とCa(OH)2の 消費の影響を組み合わせることで、FA混合コンクリートの中性化抵抗性を定量的に表す手法を提 案した。
第5章では、FASを使用したコンクリートのフレッシュ時の性状を調べた。その結果、砕砂の みを使用したコンクリートに見られたフレッシュ性状の問題が、FASの使用により改善されるこ とを確認した。
第6章では、FASコンクリート、FA混合コンクリートおよびFA無混合コンクリートの圧縮強度 および中性化抵抗性を調査し、これらの結果を比較することでFASの有用性を検討した。その結 果、FASコンクリートの圧縮強度は、同じ水セメント比のFA無混合コンクリートと同等以上、ま たFA混合コンクリートとほぼ同等であることを明らかにした。一方、FASコンクリートの中性化 抵抗性は、同じ水セメント比のFA無混合コンクリートおよびFA混合コンクリートと大差ないこと を明らかにした。すなわち、圧縮強度および中性化抵抗性の面から、FASを使用することによる 問題はないことを明らかにした。
第7章では、本研究で得られた知見をまとめた。