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有 機 EL 素子内での端面方向への光伝搬

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Academic year: 2021

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近畿大学工学部研究報告 No40,2006年,pp.107‑11O  Research Reports of  the School of Engineering, 

Kinki University No40, 2006, pp.107‑11O 

有 機 EL 素子内での端面方向への光伝搬

増田勇輔,賞藤智宏,中谷旬紀,岡田和之

L i g h t  P r o p a g a t i o n  t o w a r d  t h e  End i n  O r g a n i c  E l e c t r o l u m i n e s c e n t   D e v i c e  

Yuusuke MASUDA ,  Tomohiro MITOH ,  M i t s u n o r i  NAKATANI ,  Kazuyuki OKADA 

Abstract 

The  emission  spectra  from  the  end  of  organic  light‑emitting  device  (OLED)  with  red(NileRed),  green(Coumarin6) or blue(BBOT) emissive material were experimentally observed.百leemission intensity from  the end of OLED was re1atively weaker than that to the normal direction ofthe device plane.百lereduction of the spectral  intensity in the wave1ength region of 400・500nmwas more remarkable than也atin 500・700nmregion.百lIsphenomenon  was observed obviously in the OLED with the blue emissive material.百leabsorption in the ITO electrode film was proved  to influence on this phenomenon.  Most of the lights emitting irom the end of the OLED are supposed to propagate while  reflecting between the MgAg electrode and the glass‑air interface. 

Key words : EL device

, 

EL spectrum

, 

Display

, 

Organicthin film 

1.はじめに

有機EL素子は、有機薄膜を 2枚の電極で挟んだ平 面状の 3層構造をしている。ディスプレイをはじめと する有機 EL素子の応用では、平面構造に対して垂直 方向に放射される光の特性が重要となる。これまでは、

この垂直放射光の強度、効率などを中心とした研究・

開発が進められてきた。 12)

有機膜内での発光は等方的であるため、垂直放射光 だけでなく、素子端面から有機膜面に対して平行な方 向への光放射も起こる。この端面放射光と垂直放射光 では、有機層内の発光点から素子外に出るまでの光の 進む経路が違うため、異なった光学特性を持つ可能性

近畿大学工学部電子情報工学科

107 

がある。有機膜が約 0.1μmと薄いので、垂直放射光 は発光点で、の光学特性を保ったまま素子の外に放射さ れる。これに対し、端面放射光は素子中を数m m伝搬

して外部に放出されることになる。したがって、素子 との相互作用長が長くなり、光学特性に違いが現れる と予想される。

昨年の論文において、赤色発光素子では観測されな かヮた垂直放射光と端面放射光のスベクトルの相違が 緑色発光素子で観測されたと報告を行った。 3)本論 文では、青色発光素子のスベクトル計測を行い、赤色、

緑色発光素子の特性と比較することにより EL素子内 で、の端面方向への光伝搬について検討を加えた。

Department of Electronic Engineering and Computer Science,  School ofEngineering, K1NKI University 

(2)

108  近畿大学工学部研究報告 N.o40 

2.有機 EL素子の作製手順

ホール移動剤(PVK)、電子移動剤(Bu‑PBD)、発光剤 をジクロロエタンに溶解した。この溶液をスピンコー ト法により帯状

I T O

電極の付し、たガラス基盤上に塗布 し、有機薄膜を形成した。さらに、真空蒸着法を用い て

M g ‑ A g

を陰電極として

I T O

電極に直交するように 帯状に形成し、単層型の有機 EL素子を作製した。端 面放射光を直接測定するために、有機EL素子を ITO 電極に沿って切断した。

発光波長を変えるため、発光剤として NileRed(赤 色発光)、 Coumarin6(緑色発光)、 BBOT(青色発光)を 使用した。

I T O

電極(陽極)幅を 6mm、

M g ‑ A g

電極 (陰極)幅は6m mとした。したがって、発光領域サ イズは6mmX6mmの正方形である。

3.放射スペクトルの測定方法

発光スベクトルの計測にはファイパマルチチャンネ ルフォトメータ(分光計器側、 K・1013)を使用した。

測定点からフォトメータへの導光には、光ファイパを 用いた。ファイパのコア径は 0.4m m、ファイパと素 子との距離は10mmである。

4.実験結果

発光剤に BBOTを使用した青色発光素子の垂直放 射光と端面放射光のスペクトルの計測結果を図1に、 波長400nm"‑'520nm域の拡大図を図 2に示した。端面 放射光は垂直面放射光に較べて著しく弱かった。両者 のスペクトルを比較しやすくするため、図 1、図 2に おいては端面放射光の強度を相似的に大きく示しであ る。図 2に示した青色発光 EL素子の垂直放射光スペ クトルでは、波長420nm、450nm、490nm付近に発光成 分が観測され、波長490nm光強度が最も強かった。端 面放射光のスペクトルでは510nm付近のみに発光ピー クが観測された。垂直放射光で観測された波長 490nm を中心とする成分と比べてもピーク波長が 20nmほど 長波長側にシフトしていた。垂直放射光で確認された 波長420nmと450nmの発光成分は端面放射光では観測

されなかった。

緑色ならびに赤色発光素子のスペクトノレを図3に示 した。 NileRedを含有した赤色発光素子では端面放射 光と垂直放射光のスペクトル形状に相違はほとんどみ られなかったが、発光剤にCoumarin6を用いた緑色発 光素子では波長 400nm"‑'520nm域のスペクトル強度が 520nm"‑'700nm域のスベクトル強度に比べて相対的に 低下していることが観測された。

500 

n u n u n u n u   n u n u n u n U  

A

q d n

h ' i

( 3 E 2 . f S M m

額 制

400  450  500  550  600  650  700  発光波長 (nm)

図1 青色発光素子の放射光スペクトルの比較 500 

400 

+' ω 

・同

ロコ300 ...a 

lot 

~ 200 

~ 県 100

400  430  460  490  発光波長 (nm)

520 

図2 図lのスベクトル拡大図 5000 

f l  

4000  ω 

.同+' 

3000  ...a 

2000

4Gt 

I't!'"

制 1000 

400  500  600 

発光波長 (nm)

図3 赤色、緑色発光素子の放射光スベクトルの比較 700 

(3)

有機EL素子内で、の端面方向への光伝搬 109 

5.検討および考察

赤色、緑色、青色発光EL素子の垂直放射光と端面 放射光のスペクトルを比較すると、 520nmより短い波 長域において垂直放射光より端面放射光の方が相対的 に強度が弱い。特に青色発光素子では顕著である(図 2参照)。いずれの光も有機層内の発生点から素子外 へ放射されるまでに有機膜層、 ITO電極膜層、ガラス 基盤層を通過する。このため、それぞれの層の光吸収 特性が放射光スペクトルに大きく影響する。そこで、

有機膜、 ITO電極膜、ガラス基盤の吸収スベクトノレを 計った。膜厚はスペクトル計測に用いた素子と同じと した。その結果を図4に示す。ガラス基盤の吸光度は 400nm "'700nmの波長域においでほぼ一定の値を示し た。このため、ガラス基盤は垂直、端面放射光のスベ クトルの相違の要因とは考えにくい。 ITO電極膜は 400nmから 500nmの波長域で吸光度が大きくなって いる。垂直放射光に対する端面放射光の相対的なスペ クトノレ強度が低下していた波長域ともほぼ一致してい る。したがって ITO電極膜が端面放射光スペクトル に影響を与えている可能性が高い。 BBOTを含有した 有機膜も 450nmから 600nmの波長域に吸収を示すが、

ITO電極膜と比べると吸光度が大きくないため、端面 放射光のスペクトルに及ぼす影響はそれほど大きくな いと考えられる。

O.  1 

0.08 

制 0.06 制 部 0.04

0.02 

400  450  500  550  600  650  700  波長 (nm)

図4 有機膜・ITO電極・ガラス基盤の光吸収特性

光吸収は物質の吸収係数と光の経路長により決まる。

そこで、端面放射光の EL素子内の伝搬経路について 検討を行った。垂直放射光と端面放射光が有機膜内の 発生点から素子外へ放射されるまでの典型的な伝搬経 路を図5'"7に示す。

図 5は有機膜内で発生した光が ITO電極膜を斜め に横断し、ガラス基盤を通過して端面から素子外へ放 射する場合の図である。図中の①が垂直放射光のITO 膜内の経路を、②が端面放射光の経路を示している。

端面放射光は有機膜と ITO膜の境界面で屈折し、図5 の角度(J1でITO電極膜内を伝搬する。したがって、

②の経路長は①に比べてーユ一倍に長くなる。しかし、

cose} 

有機膜と ITO電極の屈折率引を考慮すると、スネル の法則より (J1は約 53度まででしかなりえない。こ の場合①と②で比は最大で1.7倍ほどであることが分 かった。この経路長の差は少なからず垂直放射光と端 面放射光のスペクトルの相違に影響を及ぼしていると 思われる。

車庫 有糧援:0.1μm 

r.ro電極:0.2μm 

ガラス基板:lmm

図5. 垂直・端面放射光のEL素子内での伝搬径路 次に図 6に示したような ITO電極膜内を全反射し て伝搬する成分について検討を行った。この経路では 先ほどの斜めに横切る場合と比べてより長く ITO膜 内を伝搬するため、 ITO膜の吸収の影響を強く受ける。

ITO膜の屈折率が有機膜とガラス基盤の屈折率に比べ ると大きいため ITO膜内での全反射が可能となる。

しかし、素子端面から放射するにはITO膜内を数mm 伝搬する必要がある。図4の吸収特性を考慮すると減 衰が大きいと推測される。 ITO膜内を全反射して放射 する成分も発光点での放射光の約

3%

ほどであるため、

端面放射光のスペクトル形状にはほとんど影響しない と思われる。

盟益重 有機膜:1.6

ITO電 極:2.0

ガラス基盤:1.5

空気:1.0

図6 端面放射光のEL素子内での伝搬径路(1)

(4)

110  近畿大学工学部研究報告 NQ40 

最後に、図7に示したような有機膜、 ITO電極、ガ ラス基盤を横断し、ガラス基盤・空気の境界面と MgAg金属電極面との間で全反射を繰り返して端面か

ら放射する光の経路について考察した。この経路の場 合、有機膜やITO電極膜に比べ lmmと非常に厚いガ ラス基盤を横断することになるが、図4の吸収スベク トルを考慮するとスペクトル形状には影響を及ぼさな い。しかし、 ITO膜を何度か横切るため、図 5で議論 した影響がさらに大きく現れると推測する。 ITO膜を 横切る回数は発光点と素子端面との距離に依存するが、

発光点が素子の端面から最も離れた場合、垂直放射光 に比べて端面放射光は ITO膜の影響を 10倍ほど強く 受けると評価できる。この経路で伝搬する端面放射が 図 1,2のスベクトルの相違に大きく影響を及ぼして いると考える。

6.まとめ

赤色、緑色、青色発光の単層型有機 EL素子の端面 放射光のスペクトルを垂直放射光スペクトルと比較し、

素子内で、の端面方向への光伝搬について検討した。

青 色 発 光 素 子 の 端 面 放 射 光 ス ベ ク ト ル に お い て 520nmより短い波長域において垂直放射光スベクトル との相違が観測された。この相違は緑色発光素子より も顕著であった。

EL素子端面から放射する光は、 ITO電極膜の吸収 の影響を強く受けている可能性が高い。ガラス基盤・

空気境界面と金属陰電極面との間で反射を繰り返しな がら素子内を伝搬し、端面から素子外へ放射している 成分が多いと考えられる。

参考文献

1) M.  Hamaguchi and K. Yoshino:Appl. Phys. Lett., 

有様膜 69  (1996)  143‑145. 

ITO電極

ガラス基盤

図7 端面放射光のEL素子内での伝搬径路(2)

2) ].K.Sun, H.].Peng, M.Wong and H.S.Kwok:Appl.  Phys.Lett.,87  (2005)  093504. 

3)増田勇輔、湯藤真一、岡田和之:近畿大学工学部 研究報告、 39号 (2005) 137. 

4)筒 井 哲 夫 :1999年光学会の進展/有機発光デ、パ イス(2000)225. 

参照

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