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太線 ) よりもバラツキが大きい ( 分布の幅が広い ) ため,1 日調査での EAR 未満の者の割合 は過大評価となる DG 等を用いて, ある基準値未満 ( または以上 ) の割合を算出する場合も同様の問題が生じる Ⅱ. 集団における栄養素等の習慣的な摂取量の分布 を推定するための理論 前述の理

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Ⅰ.はじめに

………  日本人の食事摂取基準(2010年版)を活用し,食事改 善を目的として集団の食事摂取状態の評価を行うために は,当該集団において測定された栄養素等の摂取量の分 布を,推定平均必要量(estimated average requirement: EAR),目標量(tentative dietary goalforpreventing lif e-style related diseases: DG),耐用上限量(tolerable upperintake level:UL)等と比較し,これら食事摂取基準 の指標から外れる者の割合を推定する必要がある1)。例え ば,推定平均必要量 EARが策定されている栄養素では, 習慣的な摂取量が「EAR未満の者の割合」は,当該集団 における「不足者の割合」とほぼ一致することが知られ ている(EARカットポイント法)。ここで注意すべき点 として,食事摂取基準は「習慣的な摂取量」の基準を与 えるものであり,短期間(例えば1日間)の食事の基準 を示すものではないので,集団の食事摂取状態の評価を 行う際にも,当該集団における栄養素等の「習慣的な摂 取量」の分布を把握しなければならない。  しかし,現行の国民健康・栄養調査およびほとんどの 都道府県健康・栄養調査では,栄養素等の摂取量は1日 のみの食事調査に基づいており,長期間の「習慣的な摂 取量」を把握しているわけではない。一般に,集団にお いて1日間の食事調査で測定された栄養素等の摂取量の 分布(図1:細線)は,習慣的な摂取量の分布(図1:

栄養学雑誌 Vol.71 Supplement1 S7~ S14(2013)

Copyright© THE JAPANESE SOCIETY OF NUTRITION AND DIETETICS S

総  説

習慣的な食事摂取量の分布を推定するための

理論と実際

─集団への食事摂取基準の適用の観点から─

横山 徹爾

国立保健医療科学院生涯健康研究部 ……… 【背景】日本人の食事摂取基準(2010年版)を活用し,食事改善を目的として集団の食事摂取状態の評価を行うためには,当該集団に おいて測定された栄養素等の摂取量の分布を,推定平均必要量,目標量,耐用上限量等と比較する必要がある。その際に注意すべき点 として,食事摂取基準は「習慣的な摂取量」の基準を与えるものであり,短期間(例えば1日間)の食事の基準を示すものではないの で,集団の食事摂取状態の評価を行う際にも,当該集団における栄養素等の「習慣的な摂取量」の分布を把握する必要がある。本稿で は,複数日の食事調査から習慣的な摂取量の分布を推定するために提案されている理論を解説し,活用例を紹介する。

【主な理論】NationalResearch Council(NRC)法は分散分析を応用した比較的簡単で基本的な方法であるが,非正規分布のデータ を扱いにくい。Best-Power(BP)法は,非正規分布のデータを扱えるように改良されている。Iowa State University(ISU)法は, より現実に近い状況を想定しているが,BP法との性能の差はあまりない。AGE MODE法および AGEVAR MODE法は,年齢階級 別に分布を推定する際に,高い精度が得られると期待される。Iowa State University Foods(ISUF)法は,摂取量ゼロが多く出現 する食品の習慣的な摂取量の分布を推定することができる。

【応用例】近年,長野県,熊本県,埼玉県の健康・栄養調査で複数日調査を行い,習慣的な摂取量の分布を推定して,食事摂取基準を 活用した集団の食事摂取状態の評価が行われている。

【まとめ】これらの理論を応用し,食事摂取基準を活用して集団の食事摂取状態の評価を行うために,複数日調査が広く行われていく ようになることが望まれる。

栄養学雑誌,Vol.71 Supplement1 S72S 14(2013) キーワード: 食事調査,習慣的摂取量,食事摂取基準,統計学的方法

連絡先:横山徹爾 〒351-0197 埼玉県和光市南2-3-6 国立保健医療科学院生涯健康研究部          電話 048-458-6128 FAX 048-458-6714 E-mail [email protected]

……… ᰤ㣴⣲䠝䛾ᦤྲྀ㔞 ᥎ᐃᖹᆒᚲせ㔞 䠡䠝䠮 ⩦័ⓗ䛺 ᦤྲྀ㔞䛾ศᕸ 䛒䜛䠍᪥䛾ㄪᰝ䛷䛾 ᦤྲྀ㔞䛾ศᕸ ୙㊊⪅䛾 ๭ྜͤ 図1 集団における栄養素Aの習慣的な摂取量と1日調査 での摂取量の分布の違い(仮想的な模式図) ※ある1日の調査での摂取量の分布では,不足者の割合を過大 評価する可能性があることを意味する。

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なる。DG等を用いて,ある基準値未満(または以上) の割合を算出する場合も同様の問題が生じる。

Ⅱ.集団における栄養素等の習慣的な摂取量の分布

を推定するための理論

………  前述の理由により,現行の健康・栄養調査のように1 日調査では,EARカットポイント法は適切に使えない。 しかし,個人の習慣的な摂取量を測定するためには,おお むね「1か月間程度」(日間変動が非常に大きい栄養素で はそれ以上)の摂取状況を調査しなければならないため1), そのような食事調査を多人数に実施して,集団における 習慣的な摂取量の分布を測定するのは非現実的である。  そこで,最低2日間の食事調査を行うことで,集団に おける習慣的な摂取量の分布を推定するための統計学的 な方法がいくつか提案されている。これらの方法を用い て推定した分布と食事摂取基準の指標とを比較すれば, 集団の食事摂取状態の評価が可能である。本稿では,こ れらの統計学的な方法の理論の概要と実際の応用例を解 説する。  なお,本稿で解説するのは,集団における「習慣的な 摂取量の分布」を推定する方法であって,個人の「習慣 的な摂取量」を推定する方法ではない。個人の習慣的な 摂取量を推定するためには,長期間の摂取量の平均値を 計算したり,栄養素によってはバイオマーカーを測定す るなどの方法も考えられるが2),本稿では扱わない。 で基本的な方法である3)。ある集団における栄養素Aの習 慣的な摂取量の分布が正規分布の場合について考える (図2:上段)。習慣的な摂取量の個人間のバラツキのこ とを「個人間変動」といい,個人間変動の大きさは,分 散またはその平方根である標準偏差(図2:上段の分布 の横幅に相当)で表される。一方,ある個人における摂 取量は日によって異なり,個人内での日々のバラツキの ことを「個人内変動」という。個人内変動の大きさも同 様に,分散または標準偏差(図2:中段の分布の横幅に 相当)で表される。個人内変動の分散と個人間変動の分 散の比のことを「個人内分散・個人間分散比」(以下, 「個人内/個人間分散比」と表記)といい,この比が大き いほど,摂取量の日々のバラツキが個人間のバラツキに 比べて大きいことを意味する。  習慣的な摂取量の分布の平均を m,個人間のバラツキ の大きさ(個人間変動の分散)を sb2,個人内における 日々のバラツキの大きさ(個人内変動の分散)を sw2と すると,1日間の調査で測定された摂取量の分布は,平 均 m,分散 s2= sb2+ sw2となることが知られている(図 2:下段)。従って個人内変動の分散 sw2を推定できれ ば,1日間調査の分散 s2から減じることにより,習慣的 な摂取量の分布の分散 sb 2 を推定することができる。  具体的には,以下の計算手順を踏む。 ①個体を要因とする一元配置分散分析を行い,個体の 効果の平均平方和 sbと誤差の平均平方和 sw2を推定 する。 栄養学雑誌 S8 図2 習慣的な摂取量の分布とある1日の調査による摂取量の分布との関係 (仮想的な模式図) ᦤྲྀ㔞 ᦤྲྀ㔞 䛒䜛ಶே䖃䛾ᦤྲྀ㔞䛾 ᪥䚻䛾䜀䜙䛴䛝 ᦤྲྀ㔞 ⩦័ⓗ䛺ᦤྲྀ㔞䛾ศᕸ 䠄ಶே㛫ኚື䛾ศᩓ䃢㼎㻞䠅

᪥䚻䛾䜀䜙䛴䛝 䠄ಶேෆኚື䛾ศᩓ䃢㼣㻞䠅 䛒䜛䠍᪥䛾ㄪᰝ䛻 䜘䜛ᦤྲྀ㔞䛾ศᕸ 䠄䠍᪥㛫ㄪᰝ䛾 ศᩓ䃢㻞㻩䃢 㼎㻞㻗䃢㼣㻞䠅 㢖ᗘ 㢖ᗘ 㢖ᗘ ⩦័ⓗ䛺 ᦤྲྀ㔞䛾ศᕸ ᖹᆒμ ᖹᆒμ ಶே㛫ኚື ಶேෆኚື

(3)

②調査日数を n日とすると,個人間変動は sb= (sb-sw2 )/nとして推定される。 ③習慣的な摂取量の分布を得るためには,個人ごと1 日ごとの摂取量(粗摂取量)の分布の「横幅を sb/ s倍に縮小する」と考えればよい(図3)。すなわち, 調整摂取量=粗摂取量の平均 m +      (粗摂取量-粗摂取量の平均 m)× sb/s として,調整摂取量の分布を描く(図3)。  また,ビタミンA摂取量のように高値側に裾が長い分 布では,対数変換して正規分布に近似させたうえで,上 述のように分散分析を用いて個人間分散を推定した後, 逆変換すればよいと述べられている3)。ただし,この方法 だと習慣的な摂取量を長期間の摂取量の「幾何平均(≒ 中央値)」と定義することになるので注意を要する4)。習 慣的な摂取量の定義を,長期間の摂取量の中央値とする か算術平均(いわゆる普通の平均値)とするかは議論の 余地があるかもしれないが4),仮に算術平均と定義するな らば,ビタミン A摂取量のように強く歪んだ分布では中 央値と算術平均が一致しないので,その習慣的な摂取量 の分布を NRC法で推定するのは適切ではない。NRC法 は簡便ではあるが,正規分布でない栄養素を扱いにくい という点で,あまり実用的ではないだろう。 2.Best-Power(BP)法  NRC法では,正規分布と対数正規分布のいずれかの場 合しか想定しておらず,また,対数正規分布の場合には, 長期間の摂取量の幾何平均を,習慣的な摂取量とみなす という問題点がある。BP法4,5)では,正規分布と対数正 規分布のみならず,高値側に裾が長い様々な程度に歪ん だ分布を扱うことができ,また,習慣的な摂取量を長期 間の摂取量の算術平均とみなすことができるので,より 現実のデータを扱いやすい。その計算手順は以下の通り である。 ①何らかの数学的変換によって摂取量の分布を正規分 布に近づける。これは,②で用いる分散分析が正規 分布を仮定しているためである。よく用いられる変 換方法として,べき変換(または Box-Cox変換)が ある。図4の太線は,ある栄養素(ビタミン B2)の 摂取量の分布で右裾が長いが,摂取量の値を0.5乗, 0.3乗,0.1乗して分布を描いてみると,徐々に左右 対称に近づき,0.1乗の時はほぼ左右対称の正規分布 になる。このように,摂取量の値を何乗かして正規 分布に近づける方法をべき変換という。l乗すると き,lのことを「べき数」という。多くの栄養素で は,適切なべき数 lを選んでべき変換すれば,ほぼ 左右対称の正規分布に近づく。 ②変換後の値を用いて,NRC法と同様に分散分析に よって個人間変動 sb2を推定し,調整摂取量Aを計 算する。 ③調整摂取量Aは,栄養素摂取量を l乗した値から計 算されているので,もとの栄養素の単位に戻す必要 がある。そのためには①と逆の変換をする。すなわ 習慣的な食事摂取量の分布を推定するための理論と実際

Vol.71 Supplement1 S9

ᰤ㣴⣲䠝䛾ᦤྲྀ㔞 ⢒ᦤྲྀ㔞䠄ಶே䛤䛸 䠍᪥䛤䛸䛾ᦤྲྀ㔞䠅 䛾ศᕸ ᖹᆒμ ⩦័ⓗ䛺ᦤྲྀ㔞䛾ศᕸ 䠄ㄪᩚᦤྲྀ㔞䛾ศᕸ䠅 ⢒ᦤྲྀ㔞䛾 ᶆ‽೫ᕪ䃢 ୍ඖ㓄⨨ศᩓศᯒ䛷᥎ᐃ䛧䛯 ⩦័ⓗ䛺ᦤྲྀ㔞䛾ศᕸ䛾 ᶆ‽೫ᕪ䃢㼎 900 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 䜒䛸䛾್ 䠄ྑ〈䛜㛗䛔䠅 䜉䛝ኚ᥮ (0.1஌) 䠄ᕥྑᑐ⛠䠅 䜉䛝ኚ᥮ (0.3஌) 䜉䛝ኚ᥮ (0.5஌) ᦤྲྀ㔞ͤ 図3 習慣的な摂取量の分布の推定原理(仮想的な模式図)      調整摂取量=粗摂取量の平均 m +        (粗摂取量-粗摂取量の平均 m )× sb/s 図4 べき変換による正規化の例(ビタミン B2の分布) ※もとの値またはべき変換後の値。分布型が分かりやすいよう に横軸のスケールは変えてある。

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習慣的な摂取量(長期間の摂取量の算術平均)の分 布にはならず,元の分布の右裾が長い場合にはやや 高値側にずれた分布になる。そのため,正しい習慣 的な摂取量の分布を得るためには調整摂取量Bをバ イアス補正する必要がある4)。バイアス補正した調 整摂取量Bを用いて描いた分布が,習慣的な摂取量 の分布である。  BP法を用いるためには,コンピュータソフトウエア 「習慣的摂取量の分布推定(HabitDist)」をインターネット 上でダウンロードして無料で利用可能である6)。HabitDist はバイアス補正した調整摂取量Bの生データを出力する 機能も有しており,統計ソフト等で読み込んで習慣的な 摂取量のヒストグラムを描く場合に便利である。  都道府県健康・栄養調査などで,多人数の食事調査に 基づいて集団の食事摂取状態の評価を行う際には,性・ 年齢階級別に集計することが多いが,性・年齢階級別に 分けると人数が少なくなるため,NRC法や BP法を用い て習慣的な摂取量の分布を推定すると誤差が大きくなり やすいという問題が生じる。そこで,全年齢のデータを 用いて(ただし性別に)個人内/個人間分散比を推定し, その比を性・年齢階級別の集計の際に用いることで,推 定誤差を小さくすることができる可能性があり7),Habit -Distではこの計算機能を有している。ただし,個人内分 散と個人間分散が年齢にかかわらず一定で,年齢別摂取 量の平均値があまり異ならないという仮定が必要である が,実用上は大きな問題はないようである7)。わが国で も,いくつかの調査研究で8~13),BP法を用いて習慣的な 摂取量の分布推定が試みられている。

3.Iowa State University(ISU)法

 ISU法5)は BP法に比べて,より多様な分布型に対応 しており,Box-Cox変換しても正規分布から多少歪んで いる場合であっても,多項回帰モデルで分布型を修正し てさらに正規分布に近づけている。また,個人内分散が 個人ごとに異なる現実に近い状況を許容しており,理論 的には BP法よりも優れている。ただし,実際の食事調 査データの解析では,BP法と ISU法の結果は大差ない ようである4)。BP法と ISU法を用いるためのコンピュー タソフトウエアが IowaState Universityから提供されて いる14)。  現在のところ,容易に利用可能なコンピュータソフト ウエアが提供されているという点で,BP法または ISU法 が使いやすいと思われる。 階級の人数が少なくなるため,分布の推定誤差が大きく なるという問題点がある。AGE MODE法では,集団に おける栄養素Aの習慣的な摂取量の平均値 mが年齢に よって変化するとみなし,また,個人内分散 sw2と個人 間分散 sb2が年齢にかかわらず一定であると仮定して, 習慣的な摂取量を年齢別に推定する方法である15)(図 5)。正規化には BP法と同様に Box-Cox変換が用いられ る。また,AGE MODEを改良して,個人内分散と個人 間分散が年齢によって変化する状況をもモデルに含めた AGEVAR MODE法も提案されている16)。これらの方法 は,限られた標本数で年齢階級別に習慣的な摂取量の分 布を推定する場合に推定誤差を小さくすることが可能で ある有能な方法と考えられるが,今のところ簡単に利用 できるコンピュータソフトウエアが提供されていない。

5.Iowa State University Foods(ISUF)法

 1~4の方法は,Box-Cox変換等により正規分布に近 似できることが前提であり,栄養素の習慣的な摂取量の 分布は多くの場合これらの方法で推定可能である。しか し,食品別に(例えば果物の)習慣的な摂取量の分布を 推定する場合,摂取量ゼロが多く出現すると正規分布に 近似させることができないため,上述の方法は使えない。 ISUF法17)では,そのような分布の場合でも習慣的な摂 取量の分布を推定することが可能であり,コンピュータ ソフトウエアも提供されている14)。 栄養学雑誌 S10 0 10 20 30 40 50 60 20 30 40 50 60 70 80 ᖺ㱋 ᖹᆒ䃛 䃛㻙䃢㼎 䃛㻗䃢㼎 䃛㻗䃢 䃛㻙䃢 図5 AGE MODEの原理 s 個人ごと1日ごとの粗摂取量の標準偏差(1日間調査の標準 偏差)。 sb 習慣的な摂取量の分布の標準偏差。 摂取量の平均 mが年齢によって変化するが,個人間分散 sb2,個人内分散 sw2 = s2- sb2 は変わらないと仮定し,習 慣的な摂取量の分布を推定する。

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Ⅲ.地域健康・栄養調査への応用例

………  近年,いくつかの県での健康・栄養調査において2日 間の食事調査を行い,習慣的な摂取量の分布を推定して, 食事摂取基準を活用した集団の食事摂取状態の評価が行 われている10~13)。  例えば,長野県では,平成22年度県民健康・栄養調査 において層化クラスター抽出した39単位区の545世帯 1,244人(食物摂取状況調査)の調査協力を得て,そのう ち220人には複数日調査を行い,BP法を用いて栄養素等 の習慣的な摂取量の分布を推定した10,11)。表1は食塩の 習慣的な摂取量の分布であり10),男女とも成人では DG 以上の者が約9割と非常に多いことがわかる。もし1日 間調査で同様の集計を行うと,ヒストグラムの幅は広く なり,DG以上の者の割合はこれよりも少なく見積もられ る(集団のリスクが過小評価される)。他の栄養素等につ いても同様の分析を行い,長野県における食事摂取状態 の評価に活用している。

Ⅳ.今後の課題

………  食事摂取基準を活用して集団の食事摂取状態の評価を 行うために,複数日調査が広く行われていくようになる ことが望まれる。しかし,複数日調査はやや手間がかか るので,もしもある栄養素摂取量の個人内/個人間分散 比が,時代によって大きく異ならなければ,経年的な比 較を行う際には,初回調査時のみ2日間の食事調査を 行って習慣的な摂取量の分布を推定し,2回目の調査時 には1日間の食事調査を行って初回調査時の個人内/個 人間分散比から習慣的な摂取量の分布を推定することで 調査の費用・労力を小さくすることが可能かもしれない。 また,個人内/個人間分散比の地域による違いが小さけ れば,1日間の食事調査を行ったうえで共通の個人内/ 個人間分散比を用いて地域の習慣的な摂取量の分布を推 定することが可能かもしれない。このような方法の妥当 性を確かめるために,個人内/個人間分散比の時代間, 地域間の差異についての検討が望まれる。表2は,吉池 らの12日間調査データにおける個人内/個人間分散比お よび正規化に用いたべき数の一覧である8,18)。これらの値 は,習慣的な摂取量の分布を推定するための専用のコン ピュータソフトウエア6,14)を用いれば,計算結果ととも に出力される。同様の一覧表は他の調査研究でも報告さ れている9,10)。今後,さらに多くの調査研究から同様の情 報が提供されれば,時代間,地域間の個人内/個人間分 散比の差異が検討可能になるであろう。そのためにも, 習慣的な食事摂取量の分布を推定するための理論と実際

Vol.71 Supplement1 S11

表1 食塩相当量( g )の習慣的摂取量の分布(長野県平成 22 年度県民健康・栄養調査報告より) (参考) DG b DG b以上 の割合 パーセンタイル a 標準 偏差 平均 人数 年齢区分 性別 99% 95% 90% 75% 50% 25% 10% 5% 1% 78. 0% 18. 3 17. 1 15. 6 13. 2 10. 6 9. 1 8. 0 5. 8 5. 0 3. 1 11. 2 4 1 18~2 9歳 男性 80. 5% 19. 0 16. 2 15. 4 13. 2 11. 3 9. 4 7. 6 7. 3 5. 9 2. 7 11. 3 14 9 30~4 9歳 9未満 94. 3% 20. 1 18. 5 17. 3 15. 3 13. 2 10. 8 9. 5 8. 9 7. 5 3. 0 13. 2 17 4 50~6 9歳 92. 5% 19. 9 17. 1 15. 7 13. 9 12. 5 10. 4 9. 1 8. 4 6. 4 2. 6 12. 4 12 0 70 歳以上 88. 8% 19. 7 17. 4 16. 4 14. 2 12. 1 10. 0 8. 8 7. 7 6. 1 2. 9 12. 3 48 4 総数 88. 8% 19. 7 17. 3 16. 4 14. 2 12. 1 10. 1 8. 9 7. 7 6. 1 2. 9 12. 3 18 0 (再掲) 20 歳以上 84. 8% 12. 9 11. 8 10. 8 9. 9 9. 2 8. 2 7. 0 6. 5 5. 1 1. 5 9. 0 4 6 18~2 9歳 女性 90. 7% 14. 3 13. 0 12. 2 11. 0 9. 4 8. 6 7. 7 6. 8 6. 1 1. 8 9. 7 15 4 30~4 9歳 7. 5未 満 91. 4% 18. 2 15. 8 14. 5 12. 7 10. 7 9. 1 7. 8 6. 6 5. 1 2. 7 11. 0 18 7 50~6 9歳 94. 7% 16. 9 14. 9 14. 3 13. 0 11. 4 9. 6 8. 7 7. 6 5. 9 2. 3 11. 4 15 0 70 歳以上 92. 1% 16. 4 14. 6 13. 8 12. 2 10. 3 8. 9 7. 8 6. 9 5. 6 2. 4 10. 6 53 7 総数 91. 8% 16. 4 14. 7 13. 9 12. 3 10. 3 8. 9 7. 8 6. 8 5. 6 2. 4 10. 6 53 5 (再掲) 20 歳以上 a 2日間の食物摂取調査結果を用いて推定した分布。網掛け部分が DG 以上。 b 日本人の食事摂取基準( 20 10 年版)の目標量

(6)

多くの研究者や調査担当者が表2の形式で個人内/個人 間分散比および正規化に用いたべき数に関する情報を公 表することを提案したい。

文  献

……… 1) 日本人の食事摂取基準策定検討会:日本人の食事摂取 基準(2010年版)(2009)厚生労働省,東京

2) Willet,W.:NutritionalEpidemilogy / 田中平三監訳,食

栄養学雑誌 S12 個人内/個人間分散比 べき数 * 女 男 女 男 1.87 1.49 0.667 0.500 エネルギー 0.78 0.91 0.400 0.500 水分 1.62 1.63 0.500 0.400 たんぱく質 2.10 2.10 0.667 0.500 動物性たんぱく質 1.84 1.75 0.400 0.500 植物性たんぱく質 2.93 2.00 0.500 0.400 脂質 2.87 2.72 0.500 0.500 動物性脂質 5.23 3.14 0.333 0.333 植物性脂質 1.56 1.36 0.500 0.500 炭水化物 1.25 1.58 0.400 0.500 灰分 1.57 1.84 0.400 0.400 ナトリウム 1.16 1.30 0.400 0.400 カリウム 1.54 1.54 0.333 0.286 カルシウム 1.18 1.37 0.286 0.333 マグネシウム 1.44 1.47 0.500 0.500 リン 1.60 1.93 0.333 0.400 鉄 2.09 2.06 0.333 0.222 亜鉛 1.59 1.63 0.250 0.222 銅 4.41 3.76 0.182 0.000 レチノール 3.11 3.36 0.400 0.400 カロテン 3.75 4.10 0.222 0.182 ビタミン A(レチノール当量) 4.63 4.09 0.286 0.286 ビタミン D 1.28 2.14 0.400 0.400 ビタミン E 2.15 1.89 0.250 0.250 ビタミン K 1.87 2.70 0.250 0.182 ビタミン B1 0.86 2.22 0.333 0.333 ビタミン B2 2.19 2.05 0.222 0.250 ナイアシン 1.80 2.57 0.400 0.400 ビタミン B6 3.75 3.46 0.182 0.182 ビタミン B12 1.35 1.39 0.182 0.154 葉酸 1.56 1.53 0.500 0.400 パントテン酸 1.55 1.69 0.286 0.250 ビタミン C 2.58 1.75 0.400 0.333 飽和脂肪酸 3.28 2.17 0.400 0.400 一価不飽和脂肪酸 4.57 3.11 0.400 0.333 多価不飽和脂肪酸 3.38 3.29 0.500 0.500 コレステロール 1.71 1.61 0.400 0.400 食物繊維総量 1.83 1.90 0.400 0.400 水溶性食物繊維 1.79 1.62 0.400 0.400 不溶性食物繊維 2.82 2.06 0.667 0.667 脂肪エネルギー比率 1.57 1.84 0.400 0.400 食塩 1.37 1.68 0.400 0.333 たんぱく質/体重 * べき変換で用いたべき数。0は対数変換を意味する。

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事調査のすべて─栄養疫学[第2版](2003)第一出版, 東京

3) NationalResearch Council,Subcommittee on Criteria forDietary Evaluation:NutrientAdequacy:Assessment Using Food Consumption Surveys(1986)NationalAca d-emy Press,Washington,DC

4) Dodd,K.W.,Guenther,P.M.,Freedman,L.S.,etal.:Sta -tisticalmethodsforestimating usualintake ofnutrients and foods:areview ofthe theory,J.Am.Diet.Assoc.,106, 1640–1650(2006)

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(8)

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DepartmentofHealth Promotion,NationalInstitute ofPublicHealth

………

ABSTRACT

Background: In orderto assessthe nutrientintakesofapopulation,itisnecessary to estimate the distri -bution ofnutrientintakesin the population and to compare the distribution with the Dietary Refer -ence Intakes(DRIs). The distribution ofusualintakesmustbe estimated because DRIsare the reference valuesforonly usualintakes,and notforshort-term intakes. In thisarticle,the statisti -calmethodsforestimating the distribution ofusualintakeshave been reviewed and some exa m-pleshave been illustrated.

Existing Methods: The NationalResearch Council(NRC)proposed aprinciple method based on analysis ofvariance,butthismethod wasavailable only fornormally distributed data. The Best-Power (BP)method can be applied to non-normally distributed (skewed)data. The IowaState University method isbetterthan the BP method asitconsidersthe statisticalproperty ofthe actualdietary data,butthe improvementin performance isminor. AGE MODE and AGEVAR MODE are expected to have smallerstandard errorswhen used forthe estimation ofage-specificdistributions.  The IowaState University Foodsmethod isappropriate fordietary datawith many zero intakes.

Examples: In the PrefecturalHealth and Dietary SurveysofNagano,Kumamoto,and Saitama,dietary sur -veyswere conducted on multiple days. The distributionsofusualintakeswere estimated,and the nutrientintakesofthe populationswere assessed based on the DRIs.

Conclusions: These statisticalmethodsshould be used forestimating the distribution ofusualintakesof nutrientsand forapplying the DRIsto assessthe dietary intakesofapopulation.

Jpn.J.Nutr.Diet.,71 (Suppl1)S7~S14 (2013)

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