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第2章 必修教科等の研究 01 国語 批評力に注目した言語活動の実践

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Academic year: 2021

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 1.はじめに (1)研究の内容・目的  「中学校学習指導要領解説 国語編」によると,国 語科は「具体的な言語活動を通して指導事項を指導」 し,「生徒が自ら学び,課題を解決していくための学 習過程を明確化し,単元を貫く言語活動を位置付ける」 ことで「実生活で生きてはたらき,各教科等の学習の 基本ともなる国語の能力を身に付け」させる教科であ る。  また,今回指導要領に示された「言語活動例」の中 で,「批評」は3年生の「読むこと」と「書くこと」 の二つの領域で示されている。このことから,私たち は,義務教育の最終学年において,生徒が身の回りの 出来事や,読んだ資料や文章について,批評すること ができるように育てていくべきだと考えてよいであろ う。  加えて,全国学力・学習状況調査から,「書くこと」 において「文章や資料から必要な情報を取り出し,伝 えたい事柄や根拠を明確にして自分の考えを書くこと」 や「読むこと」において「目的をもち,表現の仕方や 文章の特徴に注意して読むこと」という課題が示され ている(※1)。  以上のことから,「身近なものを批評する」単元と, 「批評するために読む」単元とを考え実践した。単元 を構想する際に気をつけたことは,以下の二点である。   ①言語活動を通して指導事項を指導することの意義 の一つは,学習集団の成員間の,教材を媒介としたコ ミュニケーションにより,問題解決を図ることにある と考える。そこで,思考と表現をつなぐ「判断」の場 面で,学習班のメンバーや学級全体での交流を仕組ん でいくこと。 ②交流は,知識の量を増やすよりは,それまで生徒 自身が持っていなかった考え方や視点の,広がりや深 まりを目指すものである。そこで,批評の対象は生徒 が選択し,交流は批評の対象が異なる者同士で行った。 これにより,批評の対象を多面的に捉えたり,新たな 視点で捉えなおしたりすることができるように設定し た。  (2)本校研究との関わり 本校では,「『判断』は,思考から表現に移る際, その結節点において下される行為」という仮説のもと, 生徒が多角的・多面的に課題に臨む態度や能力の育成, 多くの情報から論理的に思考し,望ましい「判断」を 下す能力の育成を目標に,学習指導研究に取り組んで きた。情報基盤社会を,協同的に「生きる力」を育て るために「判断」に着目したということである。(※ 2)。 とりわけ,今年度は各教科および各教育活動におい て,生徒の「判断」に「ゆさぶり」をかけることの効 本論の要旨  現行の中学校国語科学習指導要領に示された「言語活動例」の中で,「批評」は3年生の「話すこと・聞 くこと」,「読むこと」の2領域で示されている。これは,義務教育の最終学年において,生徒のあるべき 姿を示していると言ってよい。本稿は,「身近なものを批評する文章を書く」単元と,「批評的に読み,紹 介するために古典の和歌を読む」単元との実践報告である。 実践に際しては,本校の研究テーマである①「論理的思考」,②「思考と表現をつなぐ判断のゆさぶり」, ③「思考ツールの活用」に迫る手だてとして,①三角ロジックを意識した立論,②判断を評価し合う交流学 習および批評対象の異なる者同士での交流,③情報の取り出しと立論に適した思考ツールの活用の三点を, それぞれ対応させて取り組んだ。 実践から明らかになったことは,「情報の取り出し・分析における思考ツールの有用性」,「単元を貫く 言語活動と学年での指導事項の系統の重要性」,「批評文を書くために必要な力とそれらを伸ばす手だて」 の三点であった。   キーワード  批評,言語活動,論理的思考,思考ツール,批評力を伸ばす手だて  実践を振ると, 意識したことは,「根拠と理由を明確にして自分の考えを書くこと」,「目的もをって表現の仕方や文章 の特徴に注意して読むこと」,「思考と表現をつなぐ判断の質を高める交流学習」,「批評の対象の異なる 集団で交流学習を持つこと」,「       学習活動を通して理解・思考したことを伝え合うために判断し,表現することが 「第  章 2国語科改訂の趣旨」には「特に,言葉を通して的確に理解し,論理的に思考し表現する能力, 互いの立場 や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することや,我が国の言語文化に触れて感性や情緒をはぐく むことを重視する。そのため,現行の「話すこと・聞くこと」,「書くこと」及び「読むこと」からなる領 域構成は維持しつつ,基礎的・基本的な知識・技能を活用して課題を探究することのできる国語の能力を身 に付けることに資するよう,実生活の様々な場面における言語活動を具体的に内容に示す。  基礎的・基本的な知識・技能を活用して課題を探究することのできる国語の能力を身に付けることに資す るよう,実生活の様々な場面における言語活動を具体的に示した。」とある。つまり,国語科においては, その特質を生かして,課題を探求する力を育むことも重要視されているのである。 これらのことは,従来の文学作品を中心とした,難解な文章・表現を読み解くことに重点が置かれた国語 科教育の実際よりも,より今日的な学習目標であり内容である。情報化の進んだ現代社会においては,情報 を吟味し,また,複雑な問題の解決の糸口を探るために他者と意見を交流しながら合意形成につとめること が必要不可欠になるからである。 そこで,生徒の実生活の場面で課題探求,もしくは解決のために合意形成するような言語活動として,討 論・議決・対話を授業の中に取り入れることを考えた。「討論」については「指導要領解説」中に,すでに 言語活動として挙げられているが,「討論」と「議決」・「対話」とは質が異なる。「討論」は意見を述べ

1 国語

批評力に注目した言語活動の実践

井上 哲志



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 果を検証することがその中心となっている。   国語科の学習に即して考えると,判断の「ゆさぶり」 の内容は様々に考えられる。「言語意識(相手・目的 ・場面)の変化による基準の変化」と指摘したのは舟 橋秀晃であるが(※2),他にも判断材料の増減,理論, 公式,立場,焦点の移動など,教材と言語活動の関連 を基準として,相応しい「ゆさぶり」を提示すること が望ましい。  ところで私たちが学習意欲を持って文章や音楽,絵 画などの表現に触れるとき,そこから受け取る「情報」 を取り入れることの目的は,従来の知識や価値観,も のの考え方に広がりや深まり,もしくは変質を求めて のことである。実は「批評」という行為は,この意味 において常に「読む」ことと共にあると言ってよい。 つまり,「読む」という行為の中で,自らの変質に有 用な情報は何かという検証が「批評」の一側面を表し ているということである。そのため,本実践では,例 えば生徒自身が選んだポスターの善し悪しを交流する ことで,着眼点・理由付け・比較の対象など,お互い に様々な「ゆさぶり」をしながら響き合うことを期待 した。また,ある程度価値が固定されている古典の和 歌の魅力について捉え直すことや,それを感想にとど めずに説得力を持たせて紹介文を書かせることで,古 典を学ぶ意義に自ら気づく展開になるよう努めた。   本校のもう一つの特色ある教育実践は,思考ツール の活用である。思考ツールは対象物を多面的・多角的 に見ることに適している。また,思考の過程が見える ので思考の論理を点検しやすいという特徴がある。情 報の取り出し,分析,対象物を多面的に見る,文章の 構成を視覚的に操作しながら組み立てることなどにマ トリックスやプロット図を使っている。本校生徒は思 考ツールを使うことに慣れ親しんでいるので,いずれ も自分たちの思考をグループ内で見せ合いながら話す ためのコミュニケーションツールとしても用いること ができた。  2.実践事例報告①「話すこと・聞くこと」 (1)単元名・言語活動例・対象・時期 「説得力のある考えを述べよう―根拠を明確にして 批評する―」(ア:関心のある事柄について批評する 文章を書くこと)3年生・2014年6月実施  (2)教材  「『批評』の言葉をためる」竹田青嗣(「国語 3」, 光村図書)  「冥王星が『準惑星』になったわけ」渡部潤一(『中 学生の国語 三年』三省堂)  観光案内ポスター(大津市・滋賀県・山口県・隠岐 の島町・長崎県・秋田県のポスター) (3)単元設定の理由 5月に行ったテストでは,「ある生徒が二つの俳句 を比較し,読みとったことや考えたことを,根拠を挙 げながら説明する」という設定で,発表用メモと示資 料(図と古文)を読んで質問に答えるという形式の出 題をした。非連続テキストと連続テキストを対照させ ながら解き進めていくという問題である。その結果, 連続テキストから根拠を抜き出すことに比べて,非連 続テキストのそれを見つけ,解釈することに課題があ ることが分かった。実は,この課題は本校生徒だけの 傾向ではなく,滋賀県全体の課題であることは全国学 力・学習状況調査結果からも明らかになっている。ま た,立場を明確にすることはできても,そう考える根 拠と理由がともに整合性のあるものとして示せていな い解答が目立った。そこから,じっくりと教材に向き 合いながら「根拠」と「主張」をつなぐ「理由付け」 について考え,また,その妥当性を議論するような形 の学習をいくつか重ねていく必要があると感じた。 そこで,観光案内ポスターという「非連続テキスト」 と生徒の批評(文)という「連続テキスト」を対照さ せながら根拠や理由付けの妥当性について,意見を交 流しながら批評文を書くという学習活動を行うことに した。視覚的教材を選んだのは,「ポスターを見れば 分かること」を批評の出発点とすることで,理由付け から主張に至るまでの論理に,生徒の視線が向きやす いと考えたからである。また,視覚的な対象物を言語 化するに際しては,意識的に客観的な記述をしなけれ ばならず,また,同じ学習グループの中に,それぞれ 異なるポスターを対象として批評する生徒が混在する ことで,新たな視点を獲得しやすくなり,自然と物事 を多面的にとらえる訓練となることが期待できるから である。 なお,本単元で重点化した指導事項は「A話すこと ・聞くこと」ア(課題設定や取材・構成),イ(記述) である。 観光案内ポスターは誰もが一度は目にしたものであ り,注意すればいつでも見ることのできる素材である。 学校生活の中では,美術科の課題でポスターを制作し たり,委員会活動の一環で作ることもある。生徒にと って身近なものを教材化することで,学習意欲も高ま ることであろう。 (4)単元の学習目標 [国語への関心・意欲・態度] ① 観光案内ポスターの工夫に関心を持ち,良さや改 善点について根拠をもって論じようとしている。

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[話すこと・聞くこと] ② 聞き取った内容や表現の仕方を評価して,自分の ものの見方や考え方を深めたり,表現に生かしたり することができる。〈ウ〉 ③ 論理の展開を工夫し,資料を適切に引用するなど して,説得力のある文章を書くことができる。〈イ〉 ④ 書いた文章を互いに読み合い,論理の展開の仕方 や表現の仕方などについて評価して自分の表現に役 立てるとともに,ものの見方や考え方を深めること ができる。〈エ〉 [伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項] ⑤ 慣用句・四字熟語などに関する知識を広げ,和語 ・漢語・外来語などの使い分けに注意し,語感を磨 き語彙を豊かにすることができる。〈イ〉 (5)単元の評価規準 [国語への関心・意欲・態度] ① 観光案内ポスターの工夫に関心を持ち,良さや改 善点について根拠をもって論じようとしている。 [話すこと・聞くこと] ② 聞き取った内容や表現の仕方を評価して,自分の ものの見方や考え方を深めたり,表現に生かしたり することができる。〈ウ〉 ③ 論理の展開を工夫し,資料を適切に引用するなど して,説得力のある文章を書くことができる。〈イ〉 ④ 書いた文章を互いに読み合い,論理の展開の仕方 や表現の仕方などについて評価して自分の表現に役 立てるとともに,ものの見方や考え方を深めること ができる。〈エ〉  [伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項] ⑤ 慣用句・四字熟語などに関する知識を広げ,和語 ・漢語・外来語などの使い分けに注意し,語感を磨 き語彙を豊かにすることができる。〈イ〉 (6)単元の学習計画 第1次 説得力のある批評文を書くために必要なこと を学ぶ(4時間) 第1時 根拠と理由のちがい・批評するとはどうする ことか,考えを深める。 第2時 説明文を読み,構造分析をすることで,部分 と全体の関係を捉え,批評文の執筆に生かす。 第2次 観光案内ポスターを見て批評文を書く。 (4時間) 第1時 優れた観光案内ポスターとはどのようなも のかを分析し,選んだポスターの批評文を 書く。(本時) 第2時 引用の仕方や構成について書いた文章を読 み直し,必要に応じて修正した上で清書する。 第3時 互いの批評文を読み合い,感想を交流する。㻌 (7)学習の工夫と効果㻌  批評文を書かせるに当たって,二つの準備学習を行っ た。一つは理由と根拠との意識的な使い分けを促すこと を目的とした学習である。生徒に一枚の写真を示し,新 聞記者として写真にタイトルを付けさせるという活動 の中で,写真から得た情報を「根拠」とし,タイトルを 「主張」と捉えさせ,「情報」からどのように「判断」 したかを「理由」と捉えさせる学習である。これにより, 根拠と理由の違いを意識させながら,順序よく書かせる ことができた。また,生徒は,ポスターを眺めた際に抵 抗なく情報の取り出しと判断に取りか かることができた。 次に,全体と部分の関係を「筆者の 主張」と関連づけて捉えさせることを 目的とした学習である。蛇足ながら詳 述すると,「定義が変わることで対象物 に新たな価値が見える。」という筆者の 「主張」を支える根拠として,「冥王星 が『準惑星』と定義づけられたという 事実」と,「天文学の発展」とが関連づ けて述べられているという,主張とデ ータの関係を読みとることができた。 このことによって,単にポスターの善 し悪しについて述べるにとどまらず, 「主張」が存在感を増すこととなった。  生徒は本校の「情報の時間」で三角 ロジックの学習に取り組んでいる。そ れを批評文の組み立てをする際に意識 ▲表1 学習指導案(話すこと・聞くこと 第1時) 8

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できるよう,ワークシートを「根拠」「理由付け」「主張」 と三段に分け,なおかつ付箋を使って,順番の入れ替え や付け足しなどの操作が紙の上で行えるように工夫し た。(資料2)この思考の「見える化」により,根拠と 理由付けの整合性を点検しやすくなったのも成果の一 つである。 ポスターの種類は文字情報の多寡や,対象とする性別 や年齢などの視点で,趣旨の異なるものを用意した。異 なるポスターを選んだ者が同じ学習グループで意見交 流をするので,生徒たちは対象となるポスターを,自然 と多角的に見ることができた。  3.実践事例報告②「読むこと」 (1)単元名・言語活動例・対象・時期 「アンソロジーを作り,紹介しよう――古人の心を今 につなぐ――」 (ア:物語や小説を読んで批評すること)三年生・2 014年1月実施  (2)教材 「好きな和歌を紹介しよう」(『中学生の国語3年』 三省堂2012年2月刊,PP.140~147)  (3)単元設定の理由  本実践は,学習指導要領「読むこと」の言語活動 例「ア 物語や小説などを読んで批評すること。」 を踏まえて設定した。学習指導要領では「批評」を, 「対象とする事柄について,そのもののよさや特性, 価値などについて,論じたり,評価したりすること」 と定義している。6月に取り組んだ実践では,その ものの良さや改善すべき点について,根拠と理由を 明確に区別しながら文章にまとめることを主な課題 にしていた。前述したとおり,根拠を「ポスターか ら取り出した情報」として,理由を「善し悪しの判 断理由」と単純化したことで,ほとんどの生徒がこ の課題を意識して文章にまとめることができた。  しかし,学習指導要領に示された「価値」につい てどれほど迫ることができたか,はなはだ疑問であ る。また,「説明文の構造分析を生かして書く」と いう課題に対しては,授業者の言葉足らずもあり, 実現できない生徒もいた。 そこで,本実践では古典の和歌と,よく似た趣旨 で著された近現代の韻文とを比較しながら分析的に 読むという学習課題を設定した。また,選 んだ和歌と,比較した韻文とをアンソロジ ーとしてまとめ,学級に紹介する文章を書 くという言語活動を設定した。 紹介文という体裁をとるからには,和歌 のよさについて触れなければならず,読者 にも理解できる論理的な書き方が求められ る。また,この学習を通して,生徒は選ん だ和歌の持つ「価値」について考えを深め るのみならず,現代人が古典を学ぶ「価値」 についても考えを深めることが期待でき る。「価値」に,個人的な「価値」と広く 普遍的な「価値」があるとすれば,その差 異に注目することは,自分自身の問題意識 に目を向けることにつながるであろう。実 践①に足りなかったのは「価値」について 考えを深め,批評文に自分の問題意識を織 り込む必要を意識させられなかったことだと考えて いる。   ▲資料2 ワークシート記入例   ▲資料1 問題意識を持った作文例 — 11 —

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(4)単元の学習目標 [国語への関心・意欲・態度] ① すすんで和歌の表現や内容を分析し,類似するテ ーマの韻文と比較しながら,評価して,自分の考え を深めようとしている。 [読むこと] ② 和歌の表現の工夫やその情景を客観的且つ分析的 に読み,対象となる和歌を読み深めようとしている。 (ア) ③ 和歌や,類似したテーマの韻文を比較しながら読 み,現代に生きる我々が古典の和歌を読む意義を論 理的に紹介しようとしている。(ウ) [伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項] ④ 対象となる古典の一節を引用しながら,そのよさ や特性を紹介する文章を書こうとしている。  (5)単元の評価規準 [国語への関心・意欲・態度] ① すすんで和歌の表現や内容を分析し,類似するテ ーマの韻文と比較しながら,評価して,自分の考え を深めることができる。 [読むこと] ② 和歌の表現の工夫やその情景を客観的且つ分析的 に読み,対象となる和歌を読み深めることができる。 (ア) ③ 和歌や,類似したテーマの韻文を比較しながら読 み,現代に生きる我々が古典の和歌を読む意義を論理 的に紹介することができる。(ウ) [伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項] ④ 対象となる古典の一節を引用しながら,そのよさ や特性を紹介する文章を書くことができる。  (6)単元の学習計画 第1次 和歌のリズムや意味 を捉え,鑑賞する(4時間) 第1時 和歌のリズムに慣 れ,意味や背景を知る。 第2時 和歌の鑑賞ポイン トを整理し,それに沿って和 歌の意味や背景を分析的に読 む。 第2次 アンソロジーを作 り,効果的な紹介文を書く 第1時 アンソロジーを作 り,自分の選んだ和歌を中心 とした紹介文を書く(本時) 第2時 アンソロジーを読 み合い,評価する。 (1時間)  (7)学習活動の工夫と効果  和歌を分析的に読むため に,鑑賞のポイントを示した 上で,マトリックスを用いて情報の取り出しに取り組 ませた。続いて,マトリックスに書き出した情報を整 理しながらプロット図に記入させ,紹介文の構成メモ とした。また,作文用紙に向かって紹介文を書く前に, 学習グループで交流させ,和歌を現代人が読むことの 価値について,適切な根拠が示されているか,互いに 点検させた。  使用した思考ツールはとても単純なもので,他にも 応用の利くものだが,二つ組み合わせて用いることで, 生徒は情報の整理をしながら文章の組み立てを考える ▲表2 学習指導案(読むこと 第1時)

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という,複雑な思考にスムーズに取り組むことができ た。また,指導に際して,思考ツールを完成させるこ とを目的化せず,目的に応じた用い方を心がけた。  実践①に比べて単元のねらいが小さくまとまってお り,生徒は学習課題やねらいをよく理解した上で学習 活動に取り組むことができた。ただ,アンソロジーの 作成例を示してしまったのが災いし,書きぶりの似た ものが増えてしまい,「価値」を多面的・多角的に捉 えて理解を深めさせることはできなかった。  4.考察  こうした実践研究から,分かってきたことが三つあ る。以下に示す。 ①思考ツールについて  思考ツールを使うべきだったと反省している場面が 二つある。まず,「ポスター」の実践においては「優 れた観光案内ポスターとはどのようなものか」につい て定義づけする際に,考えを広げたり深めたりするの に活用すべきであることが分かった。  次に,「アンソロジー」の実践におけるプロット図 作成の際に,付箋に書いた情報を操作しながら文章の 組み立てを考えさせると生徒は取り組みやすかったは ずである。  思考ツールは思考の可視化により,考えを広げつつ 深めることや,抽象的な思考操作を具体物の操作に置 き換えられるという利点が,その最も有用な特徴であ ると考えられる。生徒の思考力を最大限に発揮できる よう,研究に努めたい。 ②言語活動について  単元を貫く言語活動は適切な時期と適切な教材,分 量で行われるべきである。「ポスター」の実践では, 「根拠と理由の違いを知る」・「説明文を読んで,全 体と部分の関係を捉える」・「優れた観光案内ポスタ ーの条件とは何か」など,実際に観光案内ポスターを 見てその優れた点や特徴を探させるまでにかなりの時 間を要した。生徒の中には,学習の目的や対象を明確 に理解できず,主体的に取り組むことのできない生徒 もいた。 学習指導要領での扱われ方からも分かるように,批 評は高度な言語活動ではあるが,その準備にいくつも の種類の学習を配置するよりも,学年間の系統性を考 慮し,無理のない配置を心がけるべきであると痛感し た。 ③批評文を書くのに必要な力と手だて 対象の持つ価値を広く,そして説得力を持って読む 者に伝えられる批評を書くために必要なこと,発達段 階に応じて繰り返し学んでおきたいことは以下のよう に考えられる。 根拠と理由を明確にして自分の考えを書く力は,文 章や資料に表現されたものを「情報」として取り出し, 三角ロジックを用いて深め,問題解決する学習を重ね ておくことが有効である。この時,根拠と理由の整合 性を交流させることで,ひとり一人の論理が丁寧に検 証されてよい。 短作文や読書感想文などに顕著であるが,序論が本 論を経て発展しないまま,序論と似通った結論を書く 生徒が多い。これは,説明文を用いて,全体と部分の 関係から「筆者の問題意識」を読み取らせることで, 確かな問題意識という「視点」で批評の対象物を見る ことができるようになり,有効であると感じた。 対象物を批評する観点は,例えば複数の鑑賞文を読 み比べて,そこから「和歌の鑑賞のポイント」を抽出 したり,芥川龍之介の小説「鼻」と「今昔物語」から 「池尾禅珍内供鼻語」を読み比べて,「物語らしさ」 と「小説らしさ」について考えを持つなど,情報を任 意に取り出し,目的に応じて対比したり関連づけたり する経験を積むことで豊かになると考えられる。  今回の実践では見えなかったこともまだあるように 感じるが,「批評」に必要な力をさらに見極め,3年 生では文芸批評に取り組ませることを目標に研究を続 けていきたい。  〈注〉 ※1 国立教育政策研究所教育課程研究センター『全 国学力・学習状況調査の 年間の調査結果から今後の 取組が期待される内容のまとめ〜児童生徒への学習指 導の改善・充実に向けて〜(中学校編)』国立教育政 策研究所教育課程研究センター, 年(平成 年) による ※2 舟橋秀晃「『判断』のありように着目した学習 指導研究の意義と展望―思考ツールなどを活用し協同 的に学び合うことで得られる,問題解決・課題解決の 力―」滋賀大学教育学部附属中学校『研究紀要』第  集, 年  月,33  参考文献 ・国立教育政策研究所教育課程研究センター『評価基 準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料(中 学校国語)』,国立教育政策研究所教育課程研究セン ター, 年(平成  年) ・楠見孝「心理学とサイエンスコミュニケーション」, 『日本サイエンス協会誌 9RO1R』日本サイエンス コミュニケーション協会, 年(平成  年) 

参照

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