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転職教師の教師アイデンティティに関する研究-教員文化との折り合いをつける過程に着目して-

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Academic year: 2021

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(1)転職教師の教師アイデンティティに関する研究 一教員文化との折り合いをつける過程に着目して一 学校教育研究科 学校教育学専攻 教育コミュニケーションコース. M08003A池田英則 を保持していく過程で、教員文化に対してどの. 1 問題の設定  筆者は今まで何人かの社会人経験のある教師. ように向き合いながら折り合いをつけているの. (以後、転職教師)と仕事を共にしてきた。し. かを明らかにし、転職教師の教師アイデンティ. かし、転職教師が教職に馴染んでいく過程にお. ティの特性や課題について考察することを目的. いて、社会人経験が十分に生かされているとは. とする。. いえない現状があるように感じる。教員採用選.  浅田は教師としてのアイデンティティについ. 考基準の改革の側面から見れば、本研究で取り. て、rいわゆる職業的同一性である。なぜ、教師. 上げる転職教師は教育現場に新しい風を吹き込. としてのアイデンティティが問題となるかは、. むことが可能な魅力的で尊敬できる“社会人”. 人間は自分がなにものであるかという自己定義. としての期待を背負う立場にあるともいえるが、. するために、職業的アイデンティティは不可欠. 教員社会・教員の体質に戸惑いを覚え、教職に. な要素である」と指摘し、久富は「教師という. 適応しにくい/馴染みにくいという面を持って. のは、自分自身が自分の仕事の内容とそれを果. いるのではないか。本研究の出発点には、何故、. たしている自分の能力とに『自分は、やれてい. 彼らからこうした印象を感じるのかという素朴. る』という一定の自己確認が必要な仕事である」. な疑問があった。. と指摘している。.  教職においては、教師としての専門的な知識.  転職教師が教職に適応していく/馴染んでい. や教育者としての信念が間われたり、教育の目. く過程を、教師アイデンティティの保持という. 指す目標として子どもの内面的世界が問題にさ れればされるほど、人間としての教師の姿が取. 視点から捉え直してみることにより、彼らの教 師としての日常に隠された教師アイデンティテ. り上げられたりする。故に、教育を取りまく様々. ィの様相を具象化することができるのではない. な関係性の申で教師としての自分を理解しよう. かと考え、3つの仮説を立てた。. とする過程は、教師一人ひとりにとって重要な 意味を持っているだろう。. 3 研究の方法.  そこで本研究では、転職教師が、教職に長年.  本研究では、小・中学校教員へのインタビュー. にわたって築かれてきた教員文化に対してどの. を質的研究法を用いて分析し、その分析をとお. ようにコミットしようとしているのかというこ. して仮説を検証する。対象者は企業経験のある. とに注目する。彼らは教職をどのように理解し、. 小・中学校教員7名。前職で営業職を経験して. 子どもたち・保護者・同僚に対してどのような. いる者から選定している。. 働きかけをしたり関係性を築いたりしているの.  第1段階では、『質的データ分析法』(佐. だろうか。転職教師が教職に適応していく/馴. 藤,2008)に基づき、「事例一コード・マトリッ. 染んでいく日常の中に、彼らの教師としての職. クス」を作成して総合的な分析を行った。対象. 業的アイデンティティ(以後、教師アイデンテ. 者相互の特徴の違いや項目間相互の関係を分析. ィティ)を探っていく。. して、教師アイデンティティの保持に向けた構 造的な諸関係を明らかにする。. 2 研究の目的 本研究は、転職教師が教師アイデンティティ.  第2段階では、7名の対象者の申から丁教諭 を抽出した。丁教諭は、現在でも営業職の習慣. 一12一.

(2) や風習を色濃く残している教師(営業経験7年、. [関係課題コ. 教職経験6年目)である。丁教諭が、企業経験.  子どもとの関係は、企業経験を生かした状況. をどのように生かしながら、教師アイデンティ. 把握や取り組みができ、転職教師の特徴を最も. ティを保持している/しようとしているのか、. 発揮しやすい関係性である。. 時間的な経過を加味して縦断的に分析を行う。.  丁教諭は、責任の発生する関係に置き換える ことによって、子どもや保護者との関係を築こ. 4 総合的考察. うとしている。.  教員文化に対して、どのようなアプローチで. [地位課題コ. 折り合いをつけていくのかということが、各転.  教師のおかれている社会的な評価や地位に関. 職教師の教師アイデンティティに大きな影響を. して、転職教師が教師の社会性や同僚性を肯定. 与えている。. 的に捉えようとする場合では教師アイデンティ ティは揺るがされていなかったが、否定的に捉. <教員文化とのっなぎ〉. える傾向が強い場合は教師アイデンティティを.   「企業経験」「子どもとの関係」「同僚との関 係」がつなぎとなっている。.  企業経験を拠り所にして職場状況を把握した. 揺るがすものとして意識されていた。.  丁教諭の場合、社会人としての企業経験を利 用して、保護者との関係を‘‘社会人と社会人”. り、企業の頑張り方を教師の日常に生かしたり. の関係に置き換えたり、自分には“社会性(ボリ. している。しかし、企業経験をつなぎとするだ. ューム)”があるということを強く意識したりす. けでは、「自分はやれている」という感覚にまで. ることによって対処した。. 高めにくい。そこで、子どもとの関係を強く求 めたり、企業経験を子どもとの関係の中で発揮 したりすることにより、「自分はやれている」と いう感覚を保持しようとしている。.  同僚との関係は、転職教師たちが先輩教師と の考え方や振る舞い方を共有することにより、. つなぎとなる。しかし、同僚との関係は、企業 経験を発揮しにくいという面がある。.  また、子どもとの関係で転機として認識され. [能力課題コ.  教師の日常において、教師としての力量を測 る客観的な評価基準に相当するものがないため、 転職教師は、企業経験を生かすことによって、. 教職の特徴や学校状況を把握したり、教師とし ての考え方や振る舞い方に一定の方向性を持た せたりしている。.  丁教諭は、企業経験を生かして、教師として の仕事の達成度を測っている。また、第一にク. るような感動体験や、同僚との関係で教師とし. リアすべきものとして重要にした。. ての日常に引き込んでくれるメンターの存在が. 〈企業経験の捉え直し〉. 重要にもなる。. 〈企業経験を生かしたり.      創造的に組み替えたりする手立て〉.  「関係課題」「地位課題」「能力課題」の3つ. に着目して、丁教諭の事例から分析した。他の 6名の転職教師たちにも共通する部分が見られ、. 彼らは、企業経験を教職に相応しい形にアレン ジして使っているといえる。しかし、教師とし. ての日常の中にr自分はやれている」という感 覚を求めるほど、これらの課題に対処する必要.  社会人としての企業経験の側面が強調されす ぎると、同僚との関係の中では不安定な要素と なりやすいため、自分は転職教師であるという 現実とどう向き合っていくのかということが必 要になる。しかし、転職教師たちは、企業経験 を別個の職業経験というように分離して考える のではなく、ひと続きの職業経験として捉え、. 連続性や重層性を見出したり、ポジティブに理 解/意味づけしたりしている。. 性や手立てが変わっていく面がある。. 主任指導教官  安 部 崇 慶. 指導教官 宮元博章. 13一.

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