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創作プロセスの図式化による造形教材の提案

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(1)Title. 創作プロセスの図式化による造形教材の提案. Author(s). 佐藤, 昌彦. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 58(1): 63-72. Issue Date. 2007-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/475. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第58巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.58,No.1. 平成19年8月 August,2007. 創作プロセスの図式化による造形教材の提案. 佐 藤 昌 彦 北海道教育大学札幌枚美術教育学研究室(教員養成課程教育臨床専攻教育実践分野授業生活指導コース). AProposalforArtLessonsthatDiagramtheCreationProcess SATOH Masahiko. DepartmentofArtEducation,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本研究は,科学研究費補助金プロジェクトによる基盤研究B「先行実践における知を活用した教育実践構 想支援システムの開発」の一環として,創作プロセスを図式化した造形教材についての碇案を行ったもので ある。創作プロセスの図式化は次の三つの観点に基づいた。第一は「基本形からの発想」。第二は「部品の 制作と配置」。第三は「制作条件の事前確認」。これらはこれまでの教育実践研究や前回の本学紀要教育科学. 編第57巻第2号で提起した授業過程の構造図による授業の分析を通してその有効性を確認してきたものであ る。提起した造形教材は二つ。一つは「一枚の紙とはさみ一つで見たこともないような顔をつくろう」。も う一つは「お面と顔が一体になる口出しお面」。こうした創作プロセスの図式化は造形教材に関する碇案方. 法の一つとして小学校図画工作科における教育実践の構想・立案に貢献できるものと考える。. 1 はじめに 本研究の目的は,科学研究費補助金プロジェク. し,それらの活用を図る教育実践構想支援システ ムの開発をねらいとしている。前回の「造形教材 を対象とした授業過程の構造図と基本的作成プロ. トによる基盤研究B「先行実践における知を活用. セスの開発」(本学紀要教育科学編第57巻第2号). した教育実践構想支援システムの開発」(平成17. では,そうした教育実践構想支援システム開発に. ∼19年。三橋功一,中村紘司,山崎正吉,梅沢実,. 関連する研究として造形教材に関する授業の分析. 尾藤弥生,坂本紀子,姫野完治,佐藤昌彦)の一. と碇案を行うための授業過程の構造図とその基本. 環として,創作プロセスを図式化した造形教材を. 的作成プロセスを碇起した1)。また,「授業過程. 提起することにある。. の構造図における基本的作成プロセスの有効性」. 科学研究費補助金プロジェクトによる基盤研究. (教育実践総合センター紀要第8号)においては. B「先行実践における知を活用した教育実践構想. そこで提起した基本的作成プロセスの有効性を検. 支援システムの開発」は先行実践から新しい教育. 討した2)。今回の内容はそれらの継続研究の一つ. 実践を構想・設計するための「実践の知」を抽出. として考察するものである。. 63.

(3) 佐 藤 昌 彦. 造形教材はこれまでにも様々なものが示されて きたが,それらの提案にあたっては,結果として. 根幹として基本形とオリガミ・ツリー(系統図) を碇起している。. の完成作品やそのつくり方は掲載されているもの. 本稿では,おりがみ以外の造形教材の創作プロ. の,そこで提示された作品以外にどのようすれば. セスにおいても「基本形からの発想」は有効であ. 子供一人ひとりが自らの発想を広げながら新たな. ると考えるとともに,「部品の制作と配置」「制作. ものを創り出すことができるのかという創作プロ. 条件の事前確認」という二点も創作へのプロセス. セスに焦点をあてて提起したものが少ない。また,. を支える重要な要素として位置づけた。これらは. 発想の観点からさらに言えば,つくろうとするも. 筆者自身の教育実践研究や前回の「造形教材を対. ののイメージをどうすれば明確にすることができ. 象とした授業過程の構造図と基本的作成プロセス. るのかという方法がわからずに図画工作科に苦手. の開発」(本学紀要教育科学編第57巻第2号)及. 意識をもつケースも少なくない。本研究はこのよ. び「授業過程の構造図における基本的作成プロセ. うな状況を教科の課題としてとらえその解決へ向. スの有効性」(教育実践総合センター第8巻)な. けた提案として考察するものであり,子供の造形. どでその有効性を確認してきたものでもある。. 能力にかかわる教育実践構想を支援するための重 要な取り組みの一つになるものと考える。. こうした創作プロセスの図式化に関する先行研. 造形教材の提案にあたっては,まず先述した創 作プロセスを支える三つの観点について,その基 本的な考え方を述べ,次にそうした考え方に基づ. 究には大橋暗也氏の「創作おりがみ」に関するも. いて二つの造形教材に関する創作プロセスの全体. のがある3)。大橋氏は「模倣だけに終わらないお. 像を図式化した。そしてそれらの結果を以下の三. りがみの教えかた,学びかたといったものが確立. つの視点から論述した。第一は創作のプロセスに. されなければならない」として次のように述べて. 関する基本的な考え方。第二は「見たこともない. いる。「おりがみが模倣だと批判されてきたこれ. ような顔」と創作のプロセス。第三は「口出しお. までの古い道路マップには,一本の道だけしか示. 面」と創作のプロセス。. されていません。目的地に向かってただ一筋の道 があるだけです。そのマップだけを示されて,一 路目的地だけを目指して走らせられてきたのが,. 古い間違った折り紙の教えかた,学びかたでした。. 2 創作のプロセスに関する基本的な考え方 前回の「造形教材を対象とした授業過程の構造. それでは自分がいまどこを走っているのか,皆目. 図と基本的作成プロセスの開発」(本学紀要教育. わかりません。終点についても,すべてがそこで. 科学編第57巻第2号)や「授業過程の構造図にお. 終わってしまって,その後の展開などということ. ける基本的作成プロセスの有効性」(教育実践総. には思いもよらないことでした。このようなこと. 合センター紀要第8号)では,指導法の背景にあ. では,創作へ発展させるものは何一つありません。. る基本的な考え方として,「少ない材料から発想. 全体の位置がわかり,いま自分がどこを走ってい. を豊かに」「基本形からの発想」「部品の制作と配. るのか,そして今日はここを走っているが,明日. 置」「基本的技術の指導」「制作条件の事前確認」「つ. は別の方向を探索してみよう。そうか,さっき通. くることによるイメージの明確化」「/トさなステッ. りすぎた分岐点を左に曲がってみたら,きっと景. プの積み重ね」といった7つの項目について述べ. 色のよい場所が見つかるかもしれないな,といっ. た。また,これらの他にもこれまでの教育実践研. た探索への手がかりをつくることこそ創作への出. 究を通して指導法の背景にある基本的な考え方を. 発点です。全体の関係がとらえられないで,よい. 提起してきた。たとえば,「目標の明確化」「参考. 学習も創作への発展もないのです」。大橋氏はこ. 作品による目標の具体的把握」「目標把握後の参. のような考え方に立ち,創作へ向けたおりがみの. 考作品の取り外し」「視点の変更」「/トさな紙によ. 64.

(4) 創作プロセスの図式化による造形教材の提案. る試作」「教師の実演」などというものである。. 逆Y型基本形から発想した作品としては,「カ. 今回はそれらのなかから前述したように創作プロ. エル」「長い髭」「お相撲さん」などがある。「カ. セスに直接関連する三つの項目にしぼりながらそ. エル」は両手両足を開いて大きく開いて揺れてい. の基本的な考え方について述べたい。. る様子を表現している。「長い髭」は基本形の両 腕を顔からはみ出すほどの髭に見立てた。「お相. (1)基本形からの発想. 今回の基本形は多様な発想を引き出すための重. 撲さん」は押したり押されたりしながら互角に力 を出し合ってどちらも一歩も引かない様子を表現. 要な切り込み口として碇起したものである。その. した。学生の感想には次のように記されていた。. 有効性については「工作指導における『基本形か. 「いつも『何をつくればいいのかよくわからない』. らの発想』に関する考察」(本学紀要教育科学編. という思いをもっていました。でも基本形がある. 第53巻第2号)で15教材をあげて論述した4)。. だけで,とても発想しやすくなったことに驚いて. たとえば,我が国の伝統的な造形である「やじ ろべえ」や沖縄の伝承玩具をもとにした「びっく. います」「これまで図画工作はとても苦手でした。 『っくるのがめんどうだな』と思うようにもなっ. りバタバタ」そして様々な形をつくることができ. ていました。いいアイディアが思い浮かばなかっ. る「ぎょろ目のおばけ凧」などという教材である。. たからです。しかし今回の授業を通して,基本形. それらのなかから「やじろべえ」を例にあげれば,. のように具体的な形が机の上にあるとそこからイ. その基本形としては,横Y型基本形,逆Y型基本. メージがひろがりやすくなるということを学びま. 形,L型基本形という3つの形を碇示した。横Y. した」。. 型基本形はトンボが細長い棒の先に止まっている. L型基本形から発想した作品としては,「ゆり. ような形をしたものである。逆Y型基本形はやじ. かご」「桃太郎『いざ鬼ヶ島へ』」「スノーボード」. ろべえの基本形として一般によく見られるもので. などがある。「ゆりかご」は母親が揺らすゆりか. ある。L型基本形はL字状の上部を支点にして時. ごの中で赤ちゃんが気持ちよさそうに眠っている. 計の振り子のように揺れるものである。発想する. 様子が表現されている。「桃太郎『いざ鬼ヶ島へ』」. 際にはそれぞれの基本形を揺らしてみながらその. は基本形の動きから波を思い浮かべ,披から舟を,. 形や動きから何ができるかを考えた。実践結果は. 舟から鬼退治に向かう桃太郎を,そして桃太郎と. 本学紀要(教育科学編第53巻第2号)で述べたが. 行動を共にしたイヌやサル,キジを思い浮かべた. ここではそれらの一部を以下に示した。. ものである。「スノーボード」は巧みにバランス. 横Y型基本形から発想した作品としては「カラ. を取りながら右や左に滑っている様子を表現し. ス」「空飛ぶ忍者」「スペースシャトル」などがあ. た。「桃太郎『いざ鬼ヶ島へ』」を制作した学生の. る。「カラス」は基本形の両腕を翼に見立てた。「空. 感想には「これまではなかなかいいアイディアが. 飛ぶ忍者」は手に手裏剣を持ちながら空中を飛ん. 思い浮かばずに時間だけがむなしく過ぎていくと. でいる様子を表現している。「スペースシャトル」. いう状態でした。しかし今回はやじろべえの基本. は基本形の尾にあたる部分を操縦席に見立てた。. 形があったおかげでそれほど時間をかけずにつく. 学生の感想には「/ト学校時代,初めから『自由に. ろうとするものを思い浮かべることができまし. つくっていいですよ』と言われるとどのようにっ. た。L型基本形の形と動きから波を思いつき,披. くっていいのかがわからずたいへん因っていまし. から舟を思い浮かべ,舟から『桃太郎は鬼ヶ島に. た。今回は基本形をしっかりつくって,その形や. 渡るときに舟に乗っていたなあ』というように桃. 動きから何ができるかを考えたのでつくろうとす. 太郎を思い浮かべたのです。そして桃太郎の他に. るものの形が次から次に思い浮かんできましたl. もイヌやサル,キジも一緒につくろうというよう. と述べられていた。. にすらすらアイディアが浮かんできました」と述. 65.

(5) 佐 藤 昌 彦. ベられていた。. それぞれの作品や感想にはやじろべえの基本形. げれば,部品の配置によってどんな顔ができるの か,そしてどんな模様をつくることができるのか. に触発されてイメージが広がっていく状況が示さ. という二つの観点にしぼって考察を行った。具体. れている。なお,これらの作品は1998(平成10). 的には,ブーメランの基本形(三枚羽根)に目な. 年本学の学校教員養成課程初等教科専門科目「/ト. どの部品を配置することによって顔のイメージが. 学図工」を受講した1年次学生32名が制作したも. どのように広がっていくのかその状況を示した。. のである。. 指導のポイントは次の四つ。第一は部品ごとに分 けて制作すること。第二は部品を動かしてみて一. (2)部品の制作と配置. 部品の制作と配置は,基本形制作の次の段階と. 番よい配置を選ぶこと。第三は部品をすぐに貼ら ないこと。部品をつくってすぐに貼ると動かすこ. して位置づけたものである。つくろうとするもの. とができなくなってしまい新しい造形の可能性に. が初めから明確な場合にはそのイメージにそって. 気づきにくくなってしまうからである。第四は顔. つくることができる。しかし,いつもそうである. に見えるように目は共通につくること。口や鼻な. とは限らない。ではどうすればいいのか。今回の. ど,目以外の部品はそれぞれの顔に合わせてつく. 部品の制作と配置は,たとえ初めはつくろうとす. るかつくらないかを決める。. るもののイメージがはっきりしていなくとも,基. 検証のための授業は,2002(平成14)年10月,. 本形に部品をつけ加えることによってイメージを. 本学学校教育教員養成課程の初等教科教育科目. 少しずつ明確にしていく方法として示した。その. 「図画工作の教育法」において行った。受講生は. ポイントは「(部品を)つくってすぐに貼る」の. 63名。事後の感想の中で「部品の配置」による指. ではなく「つくる→置く→動かす→一番いい配置. 導法の有効性を指摘したものは全体の94%(59名). を決定する→(最後に)貼る」という過程を原則. であった。目の配置という観点から発想の広がり. としたことである。基本形をつくり部品をつけ加. をみると次の六つのタイプに分類することができ. えながら目の前にできた形をもとにさらに必要な. た。第一は目が中央に配置されたタイプ。第二は. 部品を思い浮かべる。このような「基本形からス. 臼が中央上部にあるタイプ。第三は臼が2枚の羽. タートし部品の制作と配置を繰り返すことによっ. 根にあるタイプ。第四は目が中央上部と1枚の羽. てつくろうとするものの形を徐々に(時には劇的. 根にあるタイプ。第五は目が3枚の羽根にあるタ. なひらめきを生かして一気に)明確にしていく」. イプ。第六は目が中央と3枚の羽根にあるタイプ。. という手法を特に「連想造形法」として本研究で. 感想には次のような内容が記された。「これまで. 提示する創作プロセスの基軸にした。イメージが. 作品をつくるときには,全体の構想ができてから. わかないためにつくり始めることができずにいる. でないとつくりだすことができませんでした。そ. 子供たちに自信をもたせる方法になるものと考え. のため初めに全体像が思い浮かばないときには,. る。. なかなかつくり出せずにいました。しかし,今回. 部品の制作と配置の有効性については,北海道. の“福笑い式’’とでも言えるような方法のおかげ. 教育大学紀要(教育科学編)第54巻第1号「工作. で比較的簡単にアイディアが出てきて,つくる楽. 指導における『部品の配置』とイメージの広がり. しみを味わいながら制作することができました」. に関する考察」において示しが)。その概要は以. 「初めはどのような顔にしようか,まったく考え. 下のとおりである。対象とした教材は次の三つ。. ていませんでした。はさみの動くとおりに形をつ. 一つ目は「飛ぶ工作教材」,二つ目は「口が出る. くり,それをブーメランの上に置いていろいろ動. 工作教材」,三つ目は「口が動く工作教材」。飛ぶ. かしながら,よいと思うものを利用していくこと. 工作教材として碇案した創作ブーメランを例にあ. にしました。できあがったものは,自分でも予想. 66.

(6) 創作プロセスの図式化による造形教材の提案. がつかなかったような面白い顔になりました。こ. 教育学会誌第8号「工作教材の開発における『制. のような方法でつくれば,初めから構想ができて. 作条件の設定』に関する考察」で示しが)。検証. いなくてもつくることができるので,アイディア. にあたっては「大空にあがる工作教材」「転がる. が思い浮かばずに戸惑う子や上手くできないので. 工作教材」「音が出る工作教材」という三つの教. はないかと悩む子でも,安心して取り組むことが. 材に関する制作条件を明確にし,制作結果との因. できるのではないかと思いました」「実際につくっ. 果関係を考察することによって制作条件の有効性. てみて,すぐに部品を貼らない,ということの意. を検討したが,その概要は次のとおりである。「大. 味がわかりました。それは,私が目の配置を考え. 空にあがる工作教材」として取り上げたものは,. ているときに,目を基本形の上に置いていた状態. 1988(昭和63)年に教材化した「熱気球」と1992. で,他の部品をつくっていたところ,いつの間に. (平成4)年に教材化した「昼花火」。「熱気球」. か目と目が離れており,それを見て,目と目を少. は凧糸をつけておかないとどんどん空高くあがり. しずらしてつけたほうが面白いな,ということに. 遠くへ飛び去ってしまうほどのものである。熱源. 気づいたからです」。. はアウトドア用のガスコンロを使用した。熱を送 るための大掛かりな装置がなくても熱気球をあげ. (3)制作条件の事前確認 これまで述べてきた「基本形からの発想」と「部. るようにしたいと考えたからである。本教材での 制作条件は二つ。第一は薄葉紙(うすようし)の. 品の制作と配置」に,「制作条件の事前確認」を. ような薄紙を使用すること。第二は笹型の薄紙を. 加えた。その理由は「自由に」「思いどおりに」「個. 8枚つくって貼り合わせること。検証授業は二回. 性を生かして」などと事前に言っていたにもかか. にわたって行った。第1回は1988(昭和63)年6. わらず,つくった後になって「これではオニに見. 月,福島県福島市立中野小学校において。第4学. えない(オニのお面をつくろうというような授業. 年児童数27名。6つの熱気球をつくった。第2回. で)」「このようにしたのでは飛ばない(走らない,. は1993(平成5)年10月,福島県福島市立鎌田小. 動かない)」などの指摘を指導者から受けて子供. 学校において。第4学年,児童数39名。八つの熱. が意欲や自信をなくすケースが少なくないからで. 気球をつくった。それらの結果は前述の二つの制. ある。オニのお面をつくるのであれば,事前にオ. 作条件の重要性を示していた。子供たちが制作条. ニに見えるようにするためには最低限何をつくら. 件にそってつくったすべての熱気球が空高くあ. なければならないか(たとえばつの。※カッパで. がったからである。また「昼花火」は花火大会な. あれば頭の上の皿や手足の水かきなど)を事前に. どで見ることができる夜の花火ではなく,日中打. 押さえる必要がある。そうでなければせっかくつ. ち上げられる旗物と袋物を教材化したものであ. くっても上記のような状況になりかねない。では,. る。旗物はパラシュートの下に万国旗や国旗など. こうした制作条件はどのような観点から検討すれ. がついている。袋物は金魚やだるま,福助,お相. ばいいのか。工作教材を例にあげれば主に二つあ. 撲さん,キューピーなど,袋状になって舞い降り. る。一つは「機能面」。左右に揺れるか,スムー. てくるものである。現在こうした昼花火はあまり. ズに転がるか,遠くまで飛んでいくか,空中に浮. 見られなくなったが,以前はお祭りや大売出し,. かぶかなどというものである。もう一つは「発想. 開店祝い,端午の節句,ひな祭りなどによく打ち. 面」。顔に見えるためには最低限何が必要か,また,. 上げられたという。教材化にあたっては,薄紙を. 先ほどから述べているように,オニやカッパ,ラ. 切ったり絵を描いたりする段階は児童が行うこと. イオンに見えるためには何が最低限必要かなどと. とし,薄紙を折りたたんで花火のたまに仕込んだ. いうものである。. り校庭から打ち上げたりする段階は花火師にお願. このような制作条件の有効性については,学校. いすることとした。制作条件は以下の二つ。第一. 67.

(7) 佐 藤 昌 彦. は旗物には薄菓紙(うすようし),袋物には雁皮. かった。図工と聞いて緊張していたが,これなら. 紙(がんぴし)を使用すること。どちらも薄紙で. できるな,失敗しないで済むなと思えて自信につ. はあるが,薄菓紙より雁皮紙のほうが強靭である. ながった」。. ためより風圧が強くなる袋物には雁皮紙を使用す ることとした。第二は袋物のヘリを糊で月占り合わ. 3 造形教材「見たこともないような顔」と. せるのではなくミシンで縫い合わせること。糊で. 創作のプロセス. 貼り合わせるとその部分がかたくなり折りたたみ にくくなったり空中で聞きにくくなったりするか. 本教材は,少ない材料から多様な発想を引き出. らである。ミシンで縫い合わせれば,折りたたむ. すための第一歩となるものとして設定した(図. ことが容易になり空中でも開きやすくなる。以上. 1)。基本形は「横長基本形」と「縦長基本形」. は機能面に関する制作条件であるが,発想面に関. を示し,顔を構成する日や口などの部品ははさみ. しては先にも述べているのでここではその有効性. で切り取ることにした。こうした部品は教材に. を示す事例の一つとして学生の感想をあげた。次. よって切り取るだけの場合と切り取ったものをつ. の章で取り上げる造形教材「見たこともないよう. け加えていく場合などがあるが,今回の「見たこ. な顔」での「日と口は最低限つくる」という制作. ともないような顔」では切り取ってつくる教材と. 条件に関するものである。「日と口というポイン. して示した。また,制作条件は顔に見えやすいよ. トさえおさえれば顔に見えるというのは私にとっ. うに「最低限,日と口はつくる」とした。これら. て大きな発見だった。というのも,図工が苦手な. のことを押さえながらその創作のプロセスを図式. 私にとって,その作品のポイントというのがどこ. 化するとともに以下のような説明も加えた。. なのかがわからず失敗することが多かったから. (1)ねらい…一枚の紙をはさみで切り取ることに. だ。試作のなかでイメージをふくらますことがで. よって見たこともないような顔をつくる。. き,アイディアが生まれたのでつくっていて楽し. (2)材料・用具…紙(たとえばコピー用紙。大き. 一枚の紙をはさみで切り取る. ︻ねらい︼. ︻材料・用具︼. うな顔をつくる。. ことによって見たこともないよ. 大きさはA4の約二分のこ. ○ 紙 ︵たとえばコピー用紙。. ○ はさみ. ︻創作のプロセス︼. ○ セロハンテープ. ① A4の二分の一程度の紙を. どちらでもよい。. 準備する。. 68. ② 半分に折る。横長、縦長、. 切った形はイメージを広げ. ③ 顔の輪郭をはさみで切る。. から目の形を連想する。. るための出発点し﹂する。. ④ 開く。閃いた形 ︵基本形︶. て、日を切り取る。顔に見え. ⑤ 半分に折る。. ⑥⑦ 折り目からはさみを入れ. る。ただし、その位置︵上中. やすいように目と口は切り取. 鼻や耳、飾りなども自由。. 下など︶や形、大きさは自由ウ. を連想する。. ⑨ 半分に折る。. ⑧ 開く。閃いた形からロの形. ロを切り取る。. ⑳ 折り目からはさみを入れ、. ⑳ 閃く。. ⑫ 開いた形から他に必要なも. 他に必要なものがある場合. のを連想する。. には、これまでと同じように. り取る。. 折り目からはさみを入れて切. らセロハンテープでとめる。. ⑬ 切り離したところは裏側か. をつくる。. ⑳ 同じ方法で、いろいろな顔. 平面のままで鑑賞することも. ︻展示の工夫︼. こともできる。. できるが、立体にして展示する. めて貼る ︵接着面は外側︶。. 裏側にセロハンテープをまる. ⑩ 気に入ったものを選び、. または両側などが浮き上がる. ように台紙に貼る。. ㊨⑳⑱ 作品の中央︵上の写真︶. 図1 一枚の紙とはさみ一つで見たこともないような顔をつくろうー創作のプロセスなど−.

(8) 創作プロセスの図式化による造形教材の掟案. さはA4の約二分の一),はさみ,セロハンテープ。. に入ったものを選び,裏側にセロハンテープをま. (3)創作のプロセス…①A4の二分の一程度の紙を. るめて貼る(接着面は外側)。⑲⑫⑲作品の中央(上. 準備する。②半分に折る。縦長,横長,どちらで. の写真)または両側などが浮き上がるように台紙. もよい。(卦顔の輪郭をはさみで切る。切った形は. に月占る。. イメージを広げるための出発点とする。④開く。. では,図1で示した制作方法によってどのよう. 開いた形(基本形)から日の形を連想する。⑤半. な顔が生まれるのか。様々な視点からその創作の. 分に折る。⑥⑦折り目からはさみを入れて,日を. 可能性を墟示することができるが,ここではその. 切り取る。顔に見えやすいように日と口は切り取. 一例として横型基本形及び縦型基本形における日. る。ただし,その位置(上中下など)や形,大き. の位置(上・中・下というように)に焦点をあて. さは自由。鼻や耳,飾りなども自由。⑧開く。(9. て次のように分類した(図2)。これらはその創. 半分に折る。⑲折り目からはさみを入れ,口を切. 作プロセスを筆者が実演しながら説明するととも. り取る。⑪開く。⑫開いた形から他に必要なもの. に,そうしたプロセスを図式化したプリントを配. を連想する。他に必要なものがある場合には,こ. 布して,本学学生や小学校図画工作科指導法講座. れまでと同じように折り目からはさみを入れて切. (札幌)参加の方々が制作したものの一部である。. り取る。⑬切り離したところは裏側からセロハン. □横型基本形からの発想…上−DEF,中一C,. テープでとめる。⑭同じ方法で,いろいろな顔を. 下−A,その他−B(上下に顔が二つ)。. つくる。. □縦型基本形からの発想…上−GIK,中一HL,. (4)展示の工夫…平面のままで鑑賞することもで. 下−J。. きるが,立体にして展示することもできる。⑮気. 図2 一枚の紙とはさみ一つで見たこともないような顔をつくろうー創作の可能性−. 69.

(9) 佐 藤 昌 彦. で,ここはこうしようとアイディアが次々と浮か. 本教材は,2006(平成18)年度初等教科教育科 目「小学図工科教育法B」での教材研究の一環と. んでくるので,夢中になってつくりました」。. しても取り上げたものであるが,以下のような学. なお,今回の造形教材「見たこともないような. 生の感想は図式化した創作プロセスによってつく. 顔」は『家庭教育ツーウェイ』4月号(明治図書,. ろうとするもののイメージが明確になっていく状. 2005年)に掲載された内容を加筆補正したもので. 況を示している。「初めは,どのような形の顔に. ある7)。また,次に示す造形教材「口出しお面」(図. するか頭の中でイメージしてから取りかかろうと. 3)は『家庭教育ツーウェイ』5月号(明治図書,. していたが,すぐには思い浮かばなかった。そこ. 2005年)の内容を加筆補正したものである8)。. で,頭で考えるのはやめて,とりあえず紙とはさ みを持ち,切ってみることにした。手の動くまま 4 造形教材「口出しお面」と創作のプロセス. に切っていって,一つ日の顔のベース(基本形). ができあがった。顔の形としてはありえないよう. 本教材での基本形は「顔の基本形」として示し,. なものになったが『見たこともないような顔』な. 部品はおりがみを切って基本形に貼りつけること. のだから,これでいいのだと思った。すると,ど. とした。制作条件はお面のインパクトを強くする. んどん違う形の顔をつくりたくなってきた。一つ. ために日の嫁取りをつくるという点を示した。. つくると,自然と,次はもう少しシャープな感じ. (1)ねらい…基本形(色画用紙)におりがみでつ. にしてみようとか,シンプルな線にしてみようと. くった部品を加えて口出しお面をつくる。. いう考えが浮かんできた」「紙とはさみだけでこ. (2)材料・用具…色画用紙(大きさは八つ切りの. ん引こ楽しく,様々な作品をつくることができる. 約二分の一),おりがみ,ストロー,輪ゴム,は. とは思いませんでした。私はものをつくる時に,. さみ,糊,セロハンテープ。. どんなものをつくろうかととても悩んでしまうの. (3)創作のプロセス…(五色画用紙を準備する。②. ですが,この教材ではとりあえず切ってみること. 半分に折る。③口が出るような形に顔の輪郭をは. 基本形 ︵色画用紙︶ におりが. ︻ねらい︼. ︻材料・用具︼. しお面をつくる。. みでつくつた部品を加えて口出. りの約二分の一︶. ○ 色画用紙 ︵大きさは八つ切. ○ 折り紙 ○ ストロー. ︻鯛作のプロセス︼. ○ 輪イム ○ はさみ. ○ 糊 ○ セロハンテープ. ① 小さな紙で試作する。. ② 色画用紙を準備する。. 郭をはさみで切る。. ③ 半分に折る。. ④ 口が出るような形に顔の輪. を連想する。. ⑤ 開く。開いた形から目の形. を入れて目を切り取る。. ⑥ ロに近い折り目からはさみ. らセロハンテープを貼る。. ⑦ 折nこ日の切り口には裏側か. ・ 折り紙の色を選ぶ。. ⑧ 折り紙で目の綾取りをつく. ・折り紙を半分に折る。. 70. る。手順は次のとおり。. ・ 目の下に折り紙を置く。. ︵折り重ねたまま︶. ・線の外側を切る。. ・ 日の形を鉛筆で写す。. ︵目の縁取りの下から. ・線の内側を切る. いようにするため︶。. 色画用紙がはみださな. ⑨ 目の縁取りを顔の上に置く。. ⑳ 顔の上に目の綾取りが置か. さらに必要な部品を思い浮. れた状態から次に必要な部品. を連想してつくるゥ. 部品は動かしてみて、一番. かべてつくる。. よい配置を決める。全体の配. 置が決まったところで部品料. 貼る。. ストローの長さはセロハン. ストロー︵2本︶ を縦に切. り、そこから輪ゴムを通す。. 切り口はセロハンテープで. テープの幅とほぼ同じ。. ストローをお面の裏側にセ. ふさぐ。. ロハンテープで取りつける。. 図3 口出しお面一創作のプロセスなど−.

(10) 創作プロセスの図式化による造形教材の掟案. さみで切る。④開く。開いた形から日の形を連想. 館及び埼玉)に参加された方々のものである。. する。⑤口に近い折り目からはさみを入れて目を. [コつくったものは何かがわかるタイプ…H. 切り取る。⑥折り目の切り口には裏側からセロハ. □抽象的な模様を配置したタイプ. ンテープを貼る。⑦折り紙で日の嫁取りをつくる。. 基本形の内側に部品を配置…ABCG. 手順は次のとおり。折り紙の色を選ぶ→折り紙を. 基本形の外側へも部品を配置…DEFK. 半分に折る→日の下に折り紙を置く→日の形を鉛. 基本形の裏側へも部品を配置…IJL. 筆で写す→線の外側を切る(折り重ねたまま)→. 本教材も,前述の2006(平成18)年度初等教科. 線の内側を切る(日の嫁取りの下から色画用紙が. 教育科目「小学図工科教育法B」で取り上げたが,. はみ出さないようにするため)→開く。(参日の嫁. 創作の状況がわかる例として学生の感想を次に記. 取りを顔の上に置く。(9顔の上に日の嫁取りが置. した。「パーツをのりで貼らないという方法はす. かれた状態から次に必要な部品を連想してつく. ごく画期的で,同じパーツを色違いでつくったら. る。⑲さらに必要な部品を思い浮かべてつくる。. どんなふうに配置するのがいいのかということを. 部品は動かしてみて,一番よい配置を決める。全. 何度も試すことができた。おかげで自分でも気に. 体の配置が決まったところで部品を貼る。⑪スト. 入った作品ができたし,苦手な自分でも上手にで. ロー(2本)を縦に切り,そこから輪ゴムを通す。. きたことが嬉しくなって写メをとって友達に自慢. ストローの長さはセロハンテープの幅とほぼ同. し部屋に飾っている」「切ったパーツをすぐに貼. じ。切り口はセロハンテープでふさぐ。⑫ストロー. り付けるのではなくいろいろな場所に当ててどこ. をお面の裏側にセロハンテープで取りつける。. に当てるのが一番よいかを考えることで,より自. 図3の制作方法による創作の可能性を示す分類. 分の理想とする作品に近づけられたので,この方. 例として図4に次のような作品を掲載した。これ. 法は子供に指導するのにもいいと思いました」「最. らは本学学生や小学校図画工作科指導法講座(函. 初からこんなお面をつくろうと決めて失敗しない. 図4 口出しお面一創作の可能性−. 71.

(11) 佐 藤 昌 彦. ように切り方を考えてつくるよりも,気負わずに. する項目をより明確にして実践した結果を考察す. 好きな形に切っていけたので,楽に制作すること. る必要があると考えている。また,他の造形教材. ができた。また,お面の台紙(基本形)に切った. における創作プロセスの図式化も今後の課題とし. 折り紙を載せていく時にも,上向きや下向きなど. たい。. いろんな可能性があって,新しい発見もそこから 生まれた。つくる前から出来上がりがわかってい るつくり方と異なり,この方法だと,自分でも思. いもしなかったようなお面が出来上がるので,完 成したときの喜びと,そして出来たお面をつけて みたときとの喜びというように,二重の喜びを感 じられるのではないかと思った」。. 註 1)佐藤昌彦「造形教材を対象とした授業過程の構造図 と基本的作成プロセスの開発」北海道教育大学紀要(教. 育科学編)第57巻第2号,2007,pp187−196。 2)佐藤昌彦「授業過程の構造図における基本的作成プ ロセスの有効性」教育実践総合センター紀要第8号, 2007,pp31−39。 3)大橋暗也『創作おりがみ』美術出版社,1977。 4)佐藤昌彦「工作指導における『基本形からの発想』. おわりに. に関する考察」北海道教育人学紀要(教育科学編)第53. 以上,本研究では科学研究費補助金プロジェク. 巻第2冒▲,2003,pp77−87。 5)佐藤昌彦「工作指導における『部品の配置』とイメー. トによる基盤研究B「先行実践における知を活用. ジの広がりに関する考察」北海道教育大学紀要(教育. した教育実践構想支援システムの開発」の一環と. 科学編)第54巻第1号,2003,pp51−60。. して,創作プロセスを図式化した二つの造形教材. 6)佐藤昌彦「工作教材の開発における『制作条件の設定』 に関する考察」学校数青学会誌第8号,2003,pp65−74。. を碇起した。. 7)佐藤昌彦「一枚の紙とはさみ一つで見たこともない. その提案にあたっては,まず創作プロセスの図 式化に関する三つの基本的な考え方を述べ,次に そうした考え方に基づいて創作プロセスを図式化 した二つの造形教材を示した。三つの考え方とは. ような顔をつくる」『家庭教育ツーウェイ』4月号,明 治図書出版株式会社,2004,pp64−65。 8)佐藤昌彦「口を動かすことができる『口出しお面』」『家. 庭教育ツーウェイ』5月号,明治図書出版株式会社, 2004,pp60−61。. 「基本形からの発想」「部品の制作と配置」「制作. 条件の事前確認」のことであり,二つの造形教材 とは「一枚の紙とはさみ一つで見たこともないよ うな顔をつくろう」及び「お面と顔が一体になる. 口出しお面」を指している。図式化にあたっては, 前回の「造形教材を対象とした授業過程の構造図 と基本的作成プロセスの開発」(本学紀要教育科 学編第57巻第2号)で碇示した授業過程の構造図 よりも簡略化した。それは「授業過程の構造図に おける基本的作成プロセスの有効性」(教育実践 総合センター紀要8号)での検証結果を踏まえ, より作成しやすくなるような簡潔なものに改善し たいと考えたからである。. 今後の課題はこのような形で提起した二つの造 形教材の有効性に関する検証である。それら造形 教材に関する本学学生の作. 品や感想の一部は本ノ稿. にも掲載したが,有効性の検証にあたっては検討. 72. (札幌校教授).

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