中学校・高等学校のための英語前置詞教材研究
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(2) 北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)第58巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(HumanitiesandSocialSciences)Vol.58,No.2. 平成20年2月 February,2008. 中学校・高等学校のための英語前置詞教材研究*. 山 田 祥 一. 北海道教育大学旭川枚英語教育教室. AStudyofTeachingMaterialsonEnglishPrepositions forJuniorandSeniorHighSchool YAMADA Shoichi. DepartmentofEducation,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 これまで,また現在も中学校・高等学校での英語教育において,前置詞はその重要性に反してきちんとし た扱いを受けることなく教えられている現状がある。ある一つの前置詞についても表現が登場するごとに複. 数の対応する訳語を与えるのみであり,ともすればバラバラに覚えるだけで一つの前置詞,また前置詞とい う品詞全般についての理解がないまま学習が進められていく。このことは前置詞という品詞に属するそれぞ. れの語が意味的に複雑多岐に渡っているように見受けられ,また,語彙的意味が強いものと文法的機能が強 いものと分けられるとすると,それらをまとめて捉えることが難しくなるという点から生じていると思われ る。しかしながら,現在の認知言語学的枠組みでの言語研究における道具立てを利用すればこうした難しさ を少しでも軽減できるような理解の仕方が碇示できる。中学校・高等学校の現場においては古い文法観がい. まだに根強く残っており,語の捕らえ方についても古典的なカテゴリー論から脱却していない面があり,そ うした現状を打破するために,前置詞という文法項目の理解を促す教材の開発は大きな役割を果たすことが できる。. 1.はじめに. 英語における前置詞という品詞に属する語群は文を構成する上で重安な役割を持つだけでなく,意味的に も豊かな内容を持つという特徴がある。統語論的には前置詞は名詞や動詞と同様に文を構成する要素である 句を作る際の主要部(head)となる要素であり,名詞に格を付与する。また,前置詞句は動詞句の必須の 要素となる場合もあるため,文を構成する上では重要な要素であると言える。また,意味的にも多種多様で あり,単に空間的位置を表すばかりではなく,時間,道具,出来事,状況などを表しうる。さらに,文内で の名詞の意味的役割を明示するために使われる点や,動詞と結びついていわゆる旬動詞を作るという点など.. 形式と意味の関連性においても重要な要素である。. 83.
(3) 山 田 祥 一. しかしながら,この基本的かつ重要である前置詞の実際の教育現場での扱いは不十分であると言わざるを 得ない。中学,高校でのカリキュラムが様々変更されている中で,まとまった形で前置詞についての理解を 深めようとする機会は高校の文法の授業になって初めて出てくる,という状況は筆者が教育を受けた15年以 上も前の教育と何ら変わっていない。コミュニケーション重視という方向性が必ずしも直接的原因とは言え. ないが,文法の学習の時間が減れば自ずと文法の各項目について詳細に扱う時間が減ることにも繋がってい ることはおそらく間違いないであろう。そうした状況だからこそ,前置詞という項目についての体系的な理 解に効果的で効率的な教材が求められる。 前置詞がまとまった項目として扱われにくい理由の一つに意味・機能の多様性が考えられる。先に述べた. ような多様性を捉えるには一般に強く根ざしている古典的カテゴリー論では難しいに違いない。つまり,例 えばある一つの記号で表される全ての意味を含むような単一の概念を立てて結びつけるような方法,別の言 い方をすれば一つのくくりの中に入るか入らないか,という二分法の考えを用いて説明することは非常に困 難であるということである。. しかしながら,こうした困難さは現在の認知言語学的研究における道具立てを用いればかなりの説明が可 能となる。本稿ではこうした比較的新しい言語学的知見を教育の現場に還元し,これまでは説明できないこ と,または説明されてこなかったことに説明を加えることで古い文法観・言語観を払拭し,英語教育の改善 に寄与するための教材を開発することの必要性とその作成に向けた案を提示することを目的とする。. 2.学習指導要領の記述と教育現場における前置詞の扱い 前置詞は上で述べたような点に加え,コミュニケーションという面においても情報構造上重要な事柄を伝 達するために絶えず使われるにもかかわらず中学校の学習指導要領には前置詞というまとまった項目につい ての言及がない。必要な語彙の中に前置詞が含まれてはいるが,それらについても何も述べられてはいない。. つまり,これらの語については完全に現場の教師の教え方に依存すると共に,ほとんどの場合が複数の訳語 を登場するごとに覚えさえるというやり方で済ませてしまうようである。言語表現上文を構成する要素につ いてのきちんとした認識を持たなければ自由に使いこなすことは到底できない。そのまま置き換えることが. できるわけではないが,英語で前置詞をきちんと扱わないことは日本語で助詞を使わずに,もしくはその役 割などを考えずに文を組み立てるようなものに近いものがある。逆に我々日本人が母語である日本語を話す. 際に助詞の用法を意識せずとも使えるという事実が,英語の前置詞を軽視することになる原因となっている 可能性も否定できない。例えば前置詞ofを日本語の助詞「の」に置き換えることなどがその一例であるが, このような機械的な訳語を対応させる覚え方をしていると動詞の名詞化表現の後の名詞に付いて目的語であ ることを表示するofについても同じように機械的に「の」を当てはめてしまうが,当然,この場合は日本 語の助詞「を」用いるのが適切である。もちろん,英語の前置詞と日本語の助詞はかなり異質なものである が,どちらも名詞に付加して文法的役割を担うという構造上の一致(前置詞,後置詞はadpositionとして くくられる)があることも事実である。時に助詞と同じようなものとして理解しがちであることは否めない。 実際には用法,意味範囲は異なるのであるから,英語の前置詞という項目についてはきちんとした体系的な 理解が必要である。. ところが,実際の教育の現場,特に中学校においては前置詞をまとめて教える,というような時間が設け られることはまずない。個々の語を詳細に説明する時間を取っていてはきりが無いので,名詞や動詞などと 同じように新川の度に用法を覚える,というような学習の仕方が一般的であり,説明する側も新しい用法が 出てきたら説明するということが日常的になっているのではないだろうか。しかしながら,前置詞は名詞や. 84.
(4) 中学校・高等学彼のための英語前置詞教材研究. 動詞とは異なり,閉じた語群であるので,名詞や動詞のように無制限に存在しうるような語ではない。当然,. 中学レベルでは登場する用法などは限られたものしかないが,後の学習に繋がるような前置詞の概念,意味 的拡張性などについて導入しておくことは大変重要である。. 3.言語学的精密さと教育的効率 言語学における前置詞についての研究はこれまで様々なされてきているが,残念ながら前置詞全体をどの ように扱うべきか,また,個別の前置詞をどう捉えるかについてもまだまだ研究の余地が残されているとい うのが現状である。しかしながら,前置詞の意味をあまり扱ってこなかった生成文法中心の時代とは状況が 変わり,認知言語学の枠組みの中で様々な前置詞の研究がなされてきた。特に前置詞の多義性をどう捉える か,ということは代表的なものとしてLakoff(1987)の前置詞overについての考察以降様々な研究がなさ れている。こうした研究の成果は前置詞をイメージとして捉え,そこから様々な意味を発展させる,という 理解の仕方を可能にするものであり,現段階では前置詞の理解に最も有効な方法であると考えられる。実際 に英語の学習者がいて,教えていかなければならないという現実が常に存在しているのであり,言語学上の 研究の進展を待ってばかりはいられない。現在得られる言語研究の成果の中から最良のものを教育現場に還. 元しようという努力がこれまでなされていなかったとしたらそれは言語学者の怠慢であり,果たさなければ ならない責任である。実際,こうした考えに基づいて認知言語学的知見を教育に生かそうとする研究が近年 なされてきている(上野他:2006,田中他:2006など)。. こうした認知言語学における成果を組み込む考え方においておおよそ一致しているのはひとつの中心的な 図式的イメージを据えて,そこから様々な意味,用法を拡張する,という形で説明がされているということ である。背景としている理論的な詳細について見れば違いがあるが,どの論が正しい,と決めることは現時 点ではできない。そこで重要なのは,理論的整合性を保持しようとするあまり,説明のためのこじつけが行 われたりしていないかという点である。これには逆もあり,説明のために理論的整合性を無視しすぎていな いか,ということにもなる。つまり,言語学的観点から見た場合には理論的整合性を重視しなければならな い反面,教育という観点からすればより分かりやすく,より効率的に,という点が重視されることになり, この両方の観点はともすれば互いに矛盾する関係にあるからである。言語学者が教育という社会的還元にあ. まり貢献しようとしていないとすれば,このような言語学という学問の中で保持しなければならないことを 壊すことに抵抗があるからだと言える。しかしながら,理論というものは,かつての生成文法的枠組みがそ うであったように,絶対的に存続しうるものではなく,新しい理論的枠組みが登場すれば修正され,最悪の 場合には破棄されるものである。従ってどの時代にも最も重要視しなければならないのは理論以前の,語が 実際にどう使われているかという言語事実である。複雑に見える言語事実をいかに客観的にわかりやすく説. 明するか,が教育の目的であり,役割である。そこに言語学の研究によって得られた知見を活用するという 視点を加えるべきである。つまり,言語学者が教育を考える際に考えるべき優先順位は次のようなものであ る。. 言語事実の正確さ > 分かりやすさ > 教育的効率 > 理論的整合性 言語的正確さは保持しなければならないが,言語「学」内の理論的問題としての整合性,説明的妥当性な どを重視するといつまでたっても教育現場にフィードバックできない。しかし,事実現場では口々学習が続 けられており,教えなければいけないという現実がある。ある程度の教育上の効率性,そしてその効率に繋. 85.
(5) 山 田 祥 一. がる分かりやすさを考慮しなければならない。 それでもやはり理論的にどのような立場を取るかということが重要であることは変わらない。これまでの. 教材に欠けている点があるとすればイメージスキーマなどの認知言語学的道具立てを用いていながら依然と して分かりやすさのために一つの概念にまとめようとすることで古典的カテゴリー観のような不都合が生じ ているため,古い考え方からは結局脱していない可能性があるということである。認知言語学においては語 嚢が持つ意味はネットワークを形成しており,その結びつきの仕方もさまざまであるという点が古典的カテ ゴリー観とは異なる点である(Langacker1991等参照)。語の意味を構成するネットワークの中には他の意 味・用法よりも際立っていて,典型的なものとして受け止められている「プロトタイプ」があり,そのプロ トタイプが他の意味,用法に影響を与えているという関係がある。また,プロトタイプを含めた数々の事例 を包括するような抽象度の高い「スキーマ」が存在していると考えられている。プロトタイプは典型的なだ. けであり,あくまで事例の一つであって,これが用法の全てを説明するわけではない。さらに,派生する意 味は家族的類似性によって結び付けられており,必ずしも全ての意味が一つの意味に集約するわけではない。. また,前置詞に限定して言うならば,その用法には静的関係を示す用法と動的関係を示す用法に大きく二分 されることが説明の上では重要となる(全ての前置詞が静的・動的区別を持つとは限らず,一方のみの場合 も考えられる)。このことを図式化すると概略以下のようになる。図1では静的意味と動的意味のプロトタ イプが存在し,それらは更なる事例を生み出すと共により抽象度の高いスキーマによって包括されることを 示す。この図はあくまで概略的に示しているためほんの一例に過ぎず,スキーマに包括される意味の数を限 定するものではない。この図式で意図している説明方法は,各前置詞の典型的用法とそれ以外の意味の関連 付けを行うこと,そしてさらに前置詞それ自体が持つ概念としてのスキーマを提示することによってその前 置詞の意味を包括的に捉えることを目的としているということである。. 図1:前置詞の意味ネットワーク(概略図). 語嚢の意味についてはある程度までは個別的に記憶していくことが必要であるが,そうした労力を果てし なく続けるのではなく,このような図式化を提示することにより既習の意味や良く使われる用法との関連を より強く意識して概念として捉えることができる。. 86.
(6) 中学校・高等学彼のための英語前置詞教材研究. 4.教材開発と今後の方向性 実際に中学校向けの教材を作成するに当たって,まず使用されている前置詞の種類,意味・用法の範囲を 調査するため,現在使用されている中学校用英語教科書7社各学年用3冊計21冊の教科書本文データベース を作成した1。各社の教科書は以下の通りである。. NEWHORIZONEnglishCourse(東京書籍),SUNSHINEENGLISHCOURSE(開隆堂),NEW CROWNENGLISHSERIESNEWEDITION(三省堂),TOTALENGLISH(学校図書),ONEWORLD EnglishCourse(教育出版),COLUMBUSENGLISHCOURSE(光村図書)(順不同)。 このデータベースからコンコーダンスソフトで各前置詞を使用している文章を検索,列挙して,その意味, 用法を調べる。このデータを基に説明する用法の範囲を決定する。さらに各前置詞にどのような日本語の訳 語を当てはめているか,についても調査をする。この点は現段階での前置詞の学習が,結局はこれらの訳語 を頼りにしていることによって本来的に英語の前置詞が持っている概念の習得の妨げになっている要因であ ると考えられるからである。また,市販の学習辞典の用法,意味的分類なども調査をして適宜データとして 加えていく。最終的にはこれらの多岐にわたる意味,用法を日本語の訳語に頼ることなく,前置詞が本来的 に持つ概念を把握することによる学習の方法を碇示することを目標とする。このため,複数の英和辞典の記 述と複数の英英辞典の分類方法を比較,検討することで説明上の分類方法についても詳細に検討を行う。 実際の説明であるが,認知言語学の説明手法を取り入れ,中心となる(空間的)概念を据えてそこから派 生させていくという形を取るが,従来の教材にはない視点としては,前匿詞全般にわたるものとして,意味 的拡張の傾向,動的関係と静的関係の違い,拡張の可能性と解釈の可能性を取り入れる。これは先行研究に おいて個別の前置詞について説明をする際に,結局は前置詞ごとに拡張の方向性,可能性等が言語事実から すると個別的になっており,前置詞という品詞全体に対する視点が不足している点を補おうとするものであ る。これは同時に,現段階での用法ごとに日本語の訳語を当てはめて覚えていく,というやり方からそれほ ど脱却できていないことを置き換えるためのものでもある。 これら個別の前置詞についての説明に加え,意味的区分ごとに前置詞の守備範囲の違いについての解説も 加えていく。例えば,いわゆる道具のwithと手段のbyについての違い,時間を表す前置詞であるinaweek, onSunday,at nOOnなどの違いについても個別の前置詞の説明と有機的に繋がるような形での説明を試み る。. さらにその後の発展的学習につなげるため,文法的要素としての色合いが強い,いわゆる主格のbyや目 的格のofなどの説明にもつなげてゆく。また,前置詞と動詞の関係などについても記述を加えていくことで, 最終的には英語初学者のための従来にはない形の学習辞典の作成へと繋がることが期待される。 また,この研究において作成される冊子については実際に現役の中学校教員に配布し,実際の授業に活用 してもらえるように協力を依頼する。活用の方法は様々あるが,一つは授業を行う教員の知識面での補強材 科としてもらうということであり,その際に実際の教室で利用可能と判断されるならば生徒の学習にも活用 してもらう。また,これらの効果等についての測定を後日アンケート調査で行い,内容の改善や追加項目の 必要性についての検討を行う2。. 87.
(7) 山 田 祥 一. 註 * この研究は平成18年度教育研究改善推進費の採択を受けたプロジェクトの報告書の一部を加筆修正したものである。 1 今後追加,改良などの余地があることは言うまでもなく,高校教科書,辞書の表記等についてもデータベース化していく. 必要がある。 2 査読者より,碇案のみで検証の部分が無いことについてのご指摘を受けたが,ここでは質的研究である言語学の知見を量 的研究である英語教育に生かすという試みの不足,必要性を碇言すること自体が目的であり,この研究によって作成される 教材の効果は実際に配布した後にのみ検証が可能であることから,現時点での検証はあくまで予測にしか成りえない。この 実際の検証については今後の課題とし,機会を改めて報告させていただきたい。. 参考文献 上野義和,福森雅史,森山智浩,李潤玉,『英語教師のための効果的語彙指導法一認知言語学的アプローチ』,英宝社,東京, 2006. 田中茂範,阿部一,佐藤芳明,『英語感覚が身につく実践的指導−コアとチャンクの活用法』,大修館書店,東京,2006.. LakofE,George.Wbmen,月毎,anddangtzrousthings.:TheUniversityofChicagoPress.Chicago,1987. Langacker,RonaldW.Conc¢t,1hlL聯,and$ymbol.MoutondeGruyter,Berlin.1991.. 教科書. 『COLUMBUSENGLISHCOURSE』(光村図書) 『NEWCROWNENGLISHSERIESNEWEDITION』(三省堂) 『NEWHORIZONEnglishCourse』(東京書籍) 『ONEWORLDEnglishCourse』(教育出版) 『SUNSHINEENGLISHCOURSE』(開隆堂) 『TOTALENGLISH』(学校図書). (旭川校准教授). 88.
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・学校教育法においては、上記の規定を踏まえ、義務教育の目標(第 21 条) 、小学 校の目的(第 29 条)及び目標(第 30 条)
都道府県 高等学校 体育連盟 都道府県
副校長の配置については、全体を統括する校長1名、小学校の教育課程(前期課
という熟語が取り上げられています。 26 ページ
①中学 1 年生 ②中学 2 年生 ③中学 3 年生 ④高校 1 年生 ⑤高校 2 年生 ⑥高校 3 年生