小さな学校の大きな教師教育力
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(2) 北海道教育人学紀要(教育科学編)第56巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.56,No.2. 平成18年2月 February,2006. 小さな学校の大きな教師教育力 門 脇 正 俊. 北海道教育人学岩見沢校学校数育教室. BigPowerofSmallSchooIsforTeacherEducation KADOWAKI Masatoshi. SchooIEducation,IwamizawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 北海道教育人学岩見沢校で1978年に,「へき地教育」講義の改善充実のために,へき地小規模校での現地 宿泊実習を導入してから四半世紀以上(28年目)が経過した.その実施の経緯や成果を振り返りながら,へ き地′ト規模校教育の教師教育力について考える.岩見沢校では3年(8∼9月)での5(←6)週間の基本 実習期間を利用して2年(へき地教育)と4年(′ト規模校教育←複式教育)を対象として,ほぼ1週間(4 泊5日程度で7泊8日も)の短い日程で実施してきたが,へき地′ト規模校での生徒や教師との密度の濃い触 れあいは,特に2年生にとって感動的で教職への理解や意欲を高め,3年での長期実習(基本実習)への入 門的意義も有している.都市学校での5週間の実習経験のある4年生にとっても,都市学校とへき地学校, 単式・多人数学校と複式・少人数学級等の体験的比較により,教育観や教育方法を深める機会となってきた.. 総じて,異年齢集団,自然体験学習,個に応じた教育,学校と地域住民との協力関係等,都市学校が失いが ちな教育的価値を発見,再認識する機会となっており,へき地′ト規模校の教育力,教師教育力を痛感させら. れる.また,教師教育における研究と教育,理論と実践の関係についても考察しながら,教師教育における へき地小規模校教育の意義や課題の展望を試みる.. は じ め に 1990年代の政策動向,とりわけ97年教育職員養. 割も)での実施が多くなり,さらにまた,1∼2 年への実習的授業の拡大など,在学期間を通じた 教育実習の取り組みも増加している.教育実践研. 成審議会答申が大きく影響していると思われる. 究関連センター協議会の佐野好久民らのグループ. が,近年,全国各地の教員養成大学・学部で,教. は,全国の教員養成大学・学部での教育実習カリ. 育実習改革が進行している.教員養成の仕上げと. キュラムの実施と改革の動向を調査し,数次に. して4年日学生対象に実施する大学の多かった教. 渡ってその結果を報告している甘.そこでは,近. 育実習が,最近では3年目(3年と4年目への分. 年の教育実習の多様化・個性化の実態や傾向が明.
(3) 門 脇 正 俊. らかにされ,4年間の教育実習カリキュラムの系. 究と教育,理論と実践の関係についても考察しな. 統化,フレンドシップ事業や介護等体験,ボラン. がら,教師教育におけるへき地小規模校教育の意. ティア等の体験的授業科目も含めた体験的・実習. 義や課題も展望してみたい.. 的カリキュラムの体系化にも言及している.しか. なお,本テーマに関連して私は既に何度か報告. し,調査の回収率は57%(49大学中26大学から回. を行っていた.大きく取り扱ったものとしては,. 答)で,北海道教育大学の岩見沢校等4分校は調. 早稲田大学で開催された日本教師数青学会第2回. 査対象外だったようであるためか(本学では札幌. 大会(1993年)自由研究での「へき地小規模校に. 校だけ?),他大学に先駆けて教育実習的授業を. 視点を置いた教師数育カリキュラムの歴史と現. 拡大し,3年目での基本実習(それも40年以上も. 状」と題した報告や本学釧路校で開催された全国. 前から)の他に,2年目と4年目の学生を対象に. 教員養成大学学部教官研究集会(1999)での「公立. 永年に渡って実施してきた現地宿泊の実習的授業. 協力校(へき地′ト規模校)での現地宿泊型教育実. 「へき地教育」への言及はない.. 北海道教育大学岩見沢校で1978年に,「へき地. 習の教育効果」と題した報告である.また,北海. 道教育大学学園便り(1985)や関西大学教職課程. 教育」講義の改善充実のために,へき地′ト規模校. センター年報(1991)で教育実習を取り上げた際. での現地宿泊実習を導入してから四半世紀以上. にも,「へき地複式教育」の取り組みに言及したし,. (28年目)が経過した.その実施の経緯や成果を. 本学僻地教育研究施設の岩見沢キャンパスヘの移. 振り返りながら,へき地′ト規模校教育の教師教育. 転に当っての記念シンポジウム(1996)「21世紀に. 力について考える.岩見沢校では3年での5(←. 向けたへき地教育の新たな展望」での報告や教育. 6)週間の基本実習期間を利用して2年(へき地. 雑誌「総合教育技術」(′ト学館1997−4)での拙稿「く′ト. 教育)と4年(′ト規模校教育←複式教育)を対象. 規模化〉時代,学校・学級経営と課題」等におい. として,ほぼ1週間(4泊5日程度が多いが,7. てもへき地′ト規模校教育にかなり言及していた.. 泊8日も)の短い日程で実施してきたが,へき地. 私以外にも,同僚の笹島勇治郎,渡遵守夫,佐. 小規模校での生徒や教師との密度の濃い触れあい. 藤有,新田和幸,村田文江,前田賢次,等の各氏. は,特に2年生にとって感動的で教職への意欲を. による諸報告もある②.それにもかかわらず,今. 高め,3年での長期実習(基本実習)への入門的. 回また報告する意義はどこにあるのだろうか.本. 意義も有している.都市学校での5週間の実習経. 報告では当初,28年の歴史を有するへき地′ト規模. 験のある4年生にとっても,都市学校とへき地学. 校実習の最初10年間か20年間かくらいの受講生た. 校,単式・多人数学校と複式・少人数学級等の体. ちの卒業後の追跡調査を行い,教員生活等の中で. 験的比較により,教育観や教育方法を深める機会. この受講体験が意味あるものであったかどうかを. となってきた.総じて,異年齢集団,自然体験学. 把握することで準備を始めた.しかし,諸般の事. 習,個に応じた教育,学校と地域住民との協力関. 情でまだ受講学生の名簿の整理に手間取り,現時. 係等,都市学校が失いがちな教育的価値を発見,. 点では初年度に受講した卒業生の一部への聞き取. 再認識する機会となっており,へき地′ト規模校の. り調査ができただけであるが,今回は,その間き. 教育力,教師教育力を痛感させられる.また,大. 取り調査や受講学生達の提出レポートの考察,今. 学講義室で行われていた「講義の改善充実策とし. 年度の実施状況の紹介等をしながら,今までの諸. て,へき地での宿泊を伴う合宿講義の一環として. 報告と重複せず補完する内容で,28年の歴史を有. 導入しようとしたへき地校での実地指導が,導入. する「へき地教育・′ト規模校教育実習」の成果や. 過程で主流となり,今日では「講義」ではなく「教. 今後の課題を,自分なりに再整理して考えてみた. 育実習」として位置づけられるようになっている. い.. が,そのことの長短を含めて教師教育における研.
(4) 小さな学校の人きな数恥教育力. 1.北教大岩見沢校とへき地小規模校教育 一実施の経緯一. 所が幌加内本町であったが,教育委員会から市街 地を抜けて山沿いの砂利道を5キロほど進むと長 留内′ト学校という′トさな複式学校があり,典型的. 北海道教育大学では,へき地学校が多いとい. な単級学校だったと推測される校舎に併設された. う北海道の地域性を考慮して,新制大学発足間も. (廊下続きの)校長住宅で開催中の町立学校長会. ない頃から,へき地教育研究のための特別施設を. に参加させていただいたのである.訪問の目的は,. 学内措置で設置するなど,全学的にへき地教育に. 「へき地教育」講義の一環として,幌加内町で学. 関する研究を重視してきた.しかし,カリキュラ. 生たちと合宿させていただき,その際に町内の′ト. ム上は全学として特別な位置づけはせず,いくつ. さな学校のどこかを参観させていただけないか,. かの分校の意慾約数官によって「僻地教育」の講. というお願いをするためであった.へき地の公民. 義が,教職専門の自由選択科目として開設され,. 館等に3泊か4泊の自炊合宿をして講義を行い,. 一部の教育学専攻学生を中心に履修されていたり. その際に1日でも2日でもへき地の学校を訪問し. した.従ってまた,担当教官の研究テーマの変更. て複式授業を参観したり教職員から生の話を聞く. や退官とともに廃止の運命にもあった.. ことができればという希望の表明であった.その. 岩見沢校では,「僻地教育」の講義を全学で最. 少し前に,たまたま同町内の′ト学校に就職してい. も継続的に熱心に開講されていた奈良一三教授の. た教育研究室卒業生の結婚祝賀会に同席されてい. 定年退職に伴い,その講義を存続すべく笹島勇治. た同町教育長にそのような打診をした際に,近く. 郎教授と門脇が分担して受け継いだが,1年間の. 長流内小で校長会があるから直接にお願いしてみ. 担当経験からの改善策として,2年目の1978年度. たらというアドバイスをいただき,長流内′トで開. から講義室ではなく,へき地校での観察参加を取. 催の校長会訪問が実現したのである.ところが,. り入れた現地宿泊授業を思い立ち,幌加内町の教. 校長会では予想以上の反応があり,1校といわず,. 育委員会,校長会,へき地複式教育研究連盟の理. 町内の複式校全部に学生をよこしたらどうか,本. 解と協力のもとに,同町の山村複式校6校(廃校. 町の公民館からは沼牛,長留内,政和,漆牛内が. で→5→4→3校)で分散宿泊して実施するよう. 限度だろうが,宿泊できるだろうから朱鞠内小や. になった.実施経緯については既に笹島教授. 母子里小にも是非来校を,ということになり,従っ. (1980)が岩見沢校再編成に対応した計画的取り. てまた,1日でなく3∼4日間は学校に滞在した. 組みとして体系的に説明されているが,それは実. ら,ということにもなってしまった.校長さんた. 施初期の成果,学生達の頑張りを検討する中で見. ちは,若い学生たちが学校訪問してくれることに. えてきたものであり,実施過程は偶然を手がかり. 大きな期待も抱かれたのである.当時の町内には. とした試行錯誤的改革の連続であった.実施経緯. 複式′ト学校が6校あり,6校すべてで学生が教育. の裏話的内容ではあるが,今回の報告のために最. 実習的体験をさせていただくことになった.しか. 近文章化してみた雑文を以下に紹介させていただ. し,受講学生の確保が大変であった.それまでの. く.. 講義室での授業とは異なり,日程のやりくりもあ. 「. [実施の裏話]. るし,寝袋での自炊生活も決して楽ではない.当. 1978年夏のある日,本学岩見沢校数青学教室の. 然,掲示で受講申し込みをした学生は少なく,私. 笹鴫勇治郎(教育方法),新田和幸(教育史)の. と新田先生で身近な学生たちの自宅にも電話をか. 両先生と筆者の3人は,列車を乗り継ぎ,空知管. けたりして受講の働きかけを重ねた.やっと確保. 内最北の幌加内町を訪ねた.函館本線の岩見沢駅. した19名(他に1年8人)であったが,受講した. を発ち深川駅から深名線に乗り換え,深川駅と名. 学生たちは非常に満足して岩見沢に帰ってきた.. 寄駅のほぼ中間に位置していた幌加内駅を降りた. へき地での宿泊を伴う実習的体験に感動した学生.
(5) 門 脇 正 俊. たちの感動体験の報告パンフの作成や口コミ宣伝. る.なお,最近の筆者は企画運営には関係せず,. もあってか,翌年は百名を越える希望者となり,. 今年度は利尻町の仙法志小学校と新湊ノト学校,今. 受講者を抽選で40名に制限せざるをえなかった.. 金町の神丘′ト学校の3′ト学校を実習指導教員とし. 学生たちには潜在的に,このような授業の開設を. て訪問しただけだが,いずれの学校でも,教職員. 強く期待していたことになる.幸いにまた,たま. や児童たちの温かい協力や配慮があり,学生たち. たま積丹町の′ト学校に就職していた卒業生の結婚. もよく頑張っていた.. 式で笹鴫先生と私が同町教育長と同席した際の話 題で教育長が理解を示され,積丹町5複式校への. 平成17年度「へき地教育実習」「′ト規模校教育実習」. 実施計画. 拡大につながったのである.なお,この授業の前. 史は,奈良一三教授によって講義室で行われてき. 北海道教育大学岩見沢校. た「へき地教育」講義を,同教授の定年退官後に. 1.実施期間・教育実習生の配属(別紙). 2人で分担して受け継いだ笹島教授と門脇が,以. 2.実施内容. 前から2人が中心となって研究室希望学生を対象 に実施していた3泊4日程度の夏休み合宿自主ゼ ミをモデルに,授業改善の一環として現地宿泊型 実習を一部取り入れようとしたことにあった.そ. ①『へき地教育』:2年次学生 へき地の学校,子ども,地域の実際に触れること によって,へき地政育についての実践的な認識を深 めるため,観察参加を中心に行う. ②『小規模校数育』:44ト次学生. れが一挙に教育実習的授業になってしまったので. 3年次における『小学校教育実習』の経験をふま. ある.各実習校の温かい受け入れとそれに応えた. えて,複式授業または少人数学級についての実践的. 受講学生たちの頑張りや感動のお陰である.」. な認識を深めるため,観察参加と敦檀実習を行う.. なお,このようにして始まった現地宿泊型の教 育実地研究「へき地複式教育」は,表1が示すよ うに,28年の歴史を重ねてきたのであるが,実習. ③観察参加,敦檀実習および特別活動は,実習校の特 色をふまえた指導計画に基づくものとする. 3.指導組織 (1)北海道教育大学. 的「講義」が1999年度からは名実ともに「実習」. ①教育実習委員会:「へき地実習部会」が抑当し,. となった.実習地域も,幌加内町と積丹町の2町. 実習全般の道営および指導計画を立案し,関係数育. 時代から,15年間お世話になった積丹町5校に変. 委員会,実習校との連絡協議にあたる.. わって,大滝村,岩見沢市,月形町,中頓別町,. ②実習指導教員:1校1名を原則とし,実習校を訪. 夕張市,厚真町,利尻町,今金町と,道北や道南. 問して実習生への指導・助言にあたる.. を含めて,協力自治体が広がってきているが,過. 疎化と少子化による学校統廃合の進行が,6校で スタートした幌加内町を3′ト学校に減少させ,大. 滝村の3校も1校になっており,希望学生を全員 受け入れるまでには至っていないようである.. (2)当該市町村教育委員会 実習の受け入れについて,指導室等により北海道教 育大学と実習校の連絡調整,協議にあたる. (3)学校長・教頭及び教育実習担当教諭は,実習全般 の計画の立案及びその推進にあたる. 4.事前指導など. オリエンテーション: 6月22日(水) 午後4児20分∼午後5時. 2.へき地小規模校教育実習の概要一平成17. 事前指導. 年度の「へき地教育」「小規模校教育」の場 合を例に一. 8月17日(水)・18日(木). 午前9時∼午後4時 5.評価 実習校による「実習評価票」,実習手帳およびレポー. 平成17年度は,9市町村17′ト学校で実施された. 2年51人,4年25人,合計76名の履修であったが,. その実施計画の具体的な内容は,以下の通りであ. ト等の提出物をあわせて大学が行う. *実習生は,実習手帳及びレポートを,実習終了 日から1週間後までに大学へ提出する..
(6) 小さな学校の人きな数恥教育力 *大学は,実習生の提出物を実習校へ送付する.. それなりに充実した参観実習を過ごしたようであ. *実習校は,実習手帳及びレポートを,閲覧・検. る.なお利尻町では,町立博物館の協力で,地域. 印の後,「実習評価票」とともに大学へ返送する. 6.その他 (1)実習中の必要経費は,実習生が負押する. (2)実習期間中の事故・災害については次のように取. の自然環境や村落史について,フィールドワーク を含む貴重なへき地学習をさせていただいてい る.. り扱うこととし,事故等が発生した場合は,教育実. 習委員会並びに抑当学務グループが速やかに対応に. 3.小さな学校の教師数育カーヘき地小規模 校教育実習の意義−. あたる. (A)実習生本人が身体に傷害を被ったときは,「学 生数育研究災害傷害保険」の適用を受ける(許. A.初年度受講生(1978)の28年目の感想より. 可された通勤途中を含む) 例:実習中,児童と遊んでいてボールを投げた 際に腰部に痛みが発生し,入院した.. (B)実習生が相手にケガをさせたり物を壊した. 実施初年度(1978年度)受講生だった4人(当 時の4年2人,2年2人)の卒業生に電話インタ ビューしたが,4年目で受講して実習校と同じ町. ときは,「学研災付帯賠償責任保険」の適用を. 内の単式校で教員生活をスタートし,空知管内の. 受ける.. ′ト規模な学校を中心に教員生活を送ってきている. 例:実習中,児童と遊んでいて誤ってケガさせ. Aさんは,実質3日の実習であったにもかかわ. た.. 例:実習Il■,学校のパソコンを落として破損さ せてしまった.. 筆者が今年度担当した3′ト学校実習生達の実習. らず,28年前のことを今でも鮮明に記憶している. という.実習校の生徒たちとは高校生になってか らも交流があったし,子どもたちや教職員が実習 生を温かく迎えてくれ,近くの中学校教師たちと. 手帳では,児童と教師の距離が想像していた以上. もスポーツ交流したり,用務員のおじさんたちも. に密接であったこと,学校全体で子ども一人一人. 含めて手作りの鍋料理で懇親会を準備してくだ. の実態に合わせた教育が行われていると感じたこ. さったことなども,なつかしく思い出すという.. と,人数が少ないため友だちの大切さをより実感. 教師として初めて複式を担当したときにも役立っ. できるという′ト規模校の特性が生きていること,. たように思うと語ってくれた.. 歓迎会への父母の参加や家庭でのお別れ会など実. 同じく4年で受講し,卒業後は札幌近郊の大き. 習生の受け入れでの父母の協力に感激したこと,. な′ト学校での勤務生活が長かったBさんは,そ. あっという問の1週間だったが非常に中身の濃い. れほど記憶には残っていないが,子どもたちが歓. 1週間だったことなど,へき地小規模校の良さが. 迎してくれたこと,グランドでの収穫祭が楽し. 体験的に記述されていたが,他方で,′ト規模校に. かったことなどを思い出すという.ほのぼのとし. 特有の長所や短所が見えてきたこと,特に少人数. た教育を感じたように思うという.. ゆえに多様な発想や思考の交流が不足し,集団思. 2年で受講したCさんは,′ト樽市内の′ト学校. 考を通じて思考を深めていくことが難しいこと,. で教員生活をスタートし,札幌市立′ト学校の勤務. 従って教師の役割が重安であること,複式の場合. 生活が長いが,幌加内で複式学級の授業を参観・. は単式以上に教材研究が授業の質を決定すること. 体験できたことは今でも印象に残っており,児童. を痛感し「児童が少ないから教材研究が楽という. 1人1人を見つめる教育の原点を学んだように思. ことは絶対にありえない」と授業参観や複式授業. うと語ってくれ,習熟度別指導とは異なった,最. 体験の感想を書いた学生達もいた.利尻町2校は. 後はみんな一緒だという感じの印象だったとい. 2年次学生だけの配置で4年次学生から学ぶ機会. う.. がなく,教壇実習も体験できなかったようだが,. 同じく2年で受講したDさんは,小中学校の.
(7) 門 脇 正 俊. 障害児学級や聾学校などで教員生活を送り,現在. B.10年前(1995)の受講学生たちのレポート記述. は道教委で特別支援教育担当の指導主事をしてい. から. るが,へき地教育実習は今でも鮮明に記憶してい. 学生レポートについては,1978∼80年度につい. て,突然の私からの電話にもかかわらず,強烈な. て笹島教授(1980)や渡達教授(1981)が,1993. 体験だったと具体的に話してくれた.私の自分勝. 年度について佐藤有教授(1994)が紹介されてい. 手な要望にもかかわらず,電話の翌日には下記の. たので,ここでは私の手元にあった95年度のレ. 手記をメール送付していただいたので,紹介する.. ポートメモを紹介させていただく.. 「昭和53年,私が大学2年の暗に,「僻地・複式教育」 を受講し,幌カ口内町立朱鞠内小学校で複式学級の授業を. させていただく機会に恵まれました.学級は,3年生4 名,4年生4名の合わせて8名の学級で,4人ずつの島 が二つあるといった形でした.担任の先生の指導のもと に作った指導案をもとに,生まれて初めての授業を始め. (1)受講の動機として2年日学生では,入学前 に大学案内を読んでへき地教育に興味をもってい たこと,岩見沢校を受験した最大の理由が「へき 地教育」授業の開設であったこと,研究室やサー クルの先輩たちの強い薦めがあったこと,小学生. たわけですが,まず,4年生に前時の学習の確認と本時. 時代に複式校で学んだ体験がとても印象に残って. の学習の導入を行い,次に,3年生にわたり,同様のこ. いたこと,3年の実習前に実際の現場に触れてみ. とを行い,いよいよ,4年生の展開に入ったわけですが,. たいという気持,へき地教育は教育の原点だとい. 計画通りに授業が進まず,以後,その授業では,3年生 にわたることはできませんでした.私からみると,一人 の4年生の女■子の生徒が因っているように見えて,その. 子の表情が晴れるまでどうしても授業を前に進めること ができなかったのです.自分が子どもに教育的なかかわ. うようなことを耳にしていたから,など積極的な 受講動機がほとんどであったが,単位になるし5 日間だしと安易な気持ちで申し込んだら抽選にあ たってしまったと書いた学生もいた.受講動機と. りを行っているつもりが,その効果がみられず必死にか. して少し長いが,以下のような記述もあった.. かわりを続けた自分の姿は今でも鮮明に覚えておりま. ・クラス替えのないことは,連帯感を生むと同時に力関. す. 結局,この授業は,私の多くのエネルギーは一人. 係の固定化,得意・不得意分野の固定化を生むことを自. の女子児童に使われ,ほおっておかれた形の3年生は,. 分日身も実感してきたが,教師を目指す今,先生方はそ. いつの間にか担任の先生が指導してくださいました.授. れをどう解決させているか知りたかった.. 業後の反省会では,教頭先生には「子どもはかわいいで. ・「へき地政育」の言葉は知っていたが内容は何も知ら. しょ.」とひどい授業にもかかわらず労をねぎらってく. なかったので,受講すれば直吉妾にへき地に行くのだから,. ださったことと,門脇先生には「ひいきしちゃいけない. 間接的に学習するよりも何倍もの知識が得られると思っ. よ.」とたしなめられたのを覚えております.. たから.. 私は,小学校,中学校,聾学校において,障害のある. ・来年の小学校実習で出会うであろう多人数の子ども達. 子どもたちの教育に携わってきましたが,朱鞠内小学校. と少人数でなおかつ複式学級の子どもたちとでは,その. での子どもの表情へのこだわりは,ずっともち続けてき. 生活に根ざした学習や一般知識の量にどれだけ差がある. たつもりです.現在は,道教委で特別支援教育に関する. か,自分の身体にそれなりの感覚を残しておきたかった.. 仕事をさせていただいておりますが,私の個に応じた指. ・私は小学生の時に,たった1年間ではあったが,児童. 導に関する思いの原点は,朱鞠内小学校での授業にある. としてへき地・複式の学校に通ったことがあった.苫小. と考えております.」. 牧市の外れにあったその小学校は全校生徒が自分も入れ て4人(途中からは3人)と,今回行った朱鞠内小学校. 当時のUさんへの私の発言や対応は忘れてし. よりも小規模な学校だったが,私がそこで得たものは大. まっているが,大学指導教員の不用意な一言の危. きかったように思う.教師対児童の交流,児童対児童の. 険性を自戒すると同時に,それを前向きに受けと. 交流が,人数が少ないせいもあって,必然的に深くなり,. めてがんばってきたDさんにお詫びと感謝の意を 表したい.. 勉強をするにも,家に帰ってから遊ぶにも同じ顔ぶれし かいなかったけれど,いつも楽しかった.この学校での 体験が,自分の教師志望のきっかけになったといっても.
(8) 小さな学校の人きな数恥教育力 いいと思う.そういうわけで,今回のへき地教育・複式. いうものに興味があり喜ぶかといったことを敢えても. 教育の集中講義の細選にはどうしても受かりたいと思っ. らった.やはり6週間の教育実習の経験の差は大きいと. た.. 思う.. ・へき地教育については高校生の時にこの大学の紹介ビ デオを見て知っていた.最後のお別れの時にはバスから. 4年日学生では,2年前に抽選で外れたので4. 身を乗り出し手を振る実習生,バスを追いかける子ども. 年目の今年は是非行きたいと思っていた,3年だ. 達,どちらの目にも涙が溢れているという,まるでテレ. けでなく4年でも小学校実習に行きたかった,実. ビドラマの様な情景が繰り広げられていた.ずいぶんと. 習の場数を出来るだけ多く踏みたかった,2年の. 大げさだなあ,やらせではないだろうかという気で見て. 時に失敗した複式の授業に再度挑戦してみたかっ. いた.まさか自分がそのようなことを後にするようにな. た,などの積極的理由が記されていた.. るとも知らずに.‥‥お別れの時に,いつも照れてあま. (2)受講の感想・成果 [2年日学生]:以下のように,貴重な実習体験 となり,教職への意慾や課題意識を高める場と なっている.. り寄って来なかった5・6年生が私たちのバスを最後ま で追いかけてくれた.高校生の時に見たビデオそのまま に私もバスから身を乗り出し手を振った.ほんの1週間 でも子ども達と心を交わすことができたのだ.私はこの 「へき地政育」へ行く前まで,教師になろうかどうか本. ・5日間の実習だったが,私にとって忘れられない5日. 当に悩んでいた.先生になりたくてこの大学に来たのに,. 間であったし,授業の大切さを痛感した.. 実習の話を聞くと幻滅したりした.しかし,へき地へ行っ. ・2年にもかかわらず,初めて指導案を書き,授業を持 たせてもらったことは,貴重な体験だった. ・やはり実習というのは,間j妾的な学習,人から話を聞. いたり文章を読んで学習することより何倍も何十倍も大 切なものが得られると思った. ・レクレーション指導の体験を通して,少人数指導の難. て本当に先生と言う仕事を見て少し経験して,絶対に教 師になろうと心に決めた.大変ではあるが,やりがいは ある.子どもとともに成艮できる仕事だと思う. 他方でまた,以下のように,へき地教育の現実の厳し さを痛感した学生たちもいたようである. ・いつも同じ顔ぶれ,しかも同学年の子がいないために. しさと面白さの両面を知ることができた.4年の時にま. 競争心が育たない,刺激が少ないということが先生方の. た「複式教育」の教育実習にぜひ参加したいと思った.. 心配種になっていて,それを痛切に感じたのが集合指導. ・来年の実習が楽しみになった.. の体育の授業だった.児童数の多い学校の雰囲気に完全. ・言いたいことをはっきり伝えることの難しさ,子ども. にのみ込まれて,イキイキとした表情をみることができ. の様子を見て取る難しさ,授業を行う難しさを実感. ・へき地小規模校は地域との連携が得やすいということ. なかった. ・へき地教育の現実をもっと見据えるべきだと思った.. に改めて気づいた.. 単調すぎる毎日で,変化に乏しく,刺激が少ない.一番. ・へき地教育にはゆとりがあった.人数の少なさは少し. 感受性の豊かな時期に,これでよいのだろうか.教師や. さびしい気がしたが,ゆとりがあるから,先生もひとり. 親の対応が重要となる.. ひとりの生徒を深く理解することができる.. ・現役の先生や実習を経験した先輩との時間は大変価値 のあることであった. ・4年生の先輩方には,研究授業の用意で忙しいのにい. ・人数が少ないために,多人数の子どもと比べても明ら かに,朝の会や授業その他の何らかの場面で,自分の意 見や感想を発表することが多かったようにも思えたが,. これは強制によるもので,まだ自主的な発表にまでは. ろいろなことを話してくれた.自分は休み時間などで子. 至っていないように感じた.‥また一方で下級生が上級. ども達と遊んでいる時,一人の子どもに集中してしまい,. 生に頼る傾向が強く,他人に依存するなどの不利な点を. 周りの子どもに注意がいかなくなるのですが,そのこと. 手伝うことになってしまう.この二つの点は,事前指導. に対してもいろいろアドバイスをいただき,次の日から. の小で出てきた「へき地の子ども達の短所」に含まれる. の子ども達への接し方に非常に役立った.. ことであった.. ・今回は4年生の先輩がいたので,指導案の弄き方から. [4年日学生]:. アイディアの出し方など,本当に沢Illのことを直吉妾敢え. ・私が2年目の時は抑選に外れて,へき地政育を受講で. てもらって良かったと思う.子ども達とのj妾し方やどう. きなかった.外れてしまったから仕方ないのだが,2年.
(9) 門 脇 正 俊 目の時に,こんな風に4年目の先輩から話を聞けたら,. 講し続けてきたことになるが,その陰には受講を. どんなによかっただろうとずっと思っていた.. 希望しながら抽選に外れて受講できなかった学生. ・小学校の先生は,へき地の子供は人見知りしやすいと 言っていたが,それほどでもなく,一番思ったことは, みんな仰が良く,低学年の子どもの考えがしっかりして いると感じた.‥・学芸会にも招待されて行ったが,一. たち(特に2年日学生)も少なくない.必修でも ない授業を,28年間にも渡って多くの学生が受講 し続けてきたことの意味は大きい.まさにへき地. 人で何役もやる場面など,少人数校ならではの様子も見. ′ト規模校実習は,教師を目指す多くの学生たちの. られた.それだけに一人一人の子の存在が確立されてお. 切実なニーズであったのであろう.とかく学習が. り,子ども達が「自分がいなくては」という考えをみん. 手段化され,資格取得という形式面が重視されが. な持っていると思う.. ちな風潮の中で,学生たちを引き付ける何かを,. ・全校生徒が5人というのが多いのか少ないかというこ とは,誰にも決めることはできないということを学んだ ‥5人しかいないという表現はあまり子どものためにな らないのではないかと,実習を終えて思いました‥5人. この授業は持ち続けてきたということになる.そ れは一体何なのだろうか. 1つには,へき地小規模校は規模が小さくても. もいるのだからという気持を持つことが大切なのではな. 学校であり,小さいが故に,日本の学校教育の本. いかと私は思いました.5人もいるからこれだけのこと. 質をわかりやすく提示してくれるということであ. ができるという姿勢を持ちつづけることがへき地には大. ろうノトさな学校にも運動施設を含む校舎があり,. 切だと思うのです.. 学びたい児童と教えたい教師がいて,教科書や教. ・このような素晴らしい機会をたくさんの人たちに与え てあげてほしいです.そのくらいの価値がこの実習には ありました. ・へき地とそうでないところは違いがあり過ぎる.実習. 材もあり,父母を始めとした地域住民の協力もあ るということである.従って,日本の学校の原型. を体験でき,学校とは何か,教育とは何か,教師. だけでなく,へき地,複式の講義があってもよい.へき. とは何かを,身近に具体的に実感することのでき. 地複式課程があってもいいにかもしれない.それほど専. る貴重な機会であるということである.即ち,規. 門的であると感じた.. 模が′トさいということは,組織や人間関係を把握. ・へき地を子どもが一度経験することは,貴重な経験に. しやすいメリットなのである.小規模校は学校の. なるが,ずっとそうなのは,やはりかわいそうだ.席替. 仕組みを容易に理解させてくれる.教師の仕事を. えのドキドキも,沢山の人数で何かをやる楽しさも,あ. 単純化して理解させてくれるのである.. のへき地の子どもは知ることができない. ・この講義は,今まで受けた講義の中で最も受講して良 かったと思える程,ためになった.私の知っている限り,. 2つには,へき地′ト規模校は,都市化・近代化・. 規模拡大の過程で日本の社会や学校が失いがちで. この講義を受けた人はとても良かったと皆言っていた.. あった古き良きものを温存し,豊かな自然環境や. 私は2年目の時に受講したかった.今でもしたかったと. 地域共同的社会のもとで自然体験学習,異年令集. 思うほどである.これほど好評な講義なのだから,もっ. 団,学校と地域社会の協力関係などを身近に感じ. と定員の枠を広げてほしい‥多くの学生が,この講義の. させてくれるからであろう.. ような素晴らしい経験ができるようになることを強く 願っています.. 3つには,へき地′ト規模校での実習が,3年目. での基本実習への入門的役割を果たし,あるいは また,その深化・発展的役割を果たし,教職を目. C.へき地小規模校教育の意義,教師教育力など 「へき地′ト規模校教育」は卒業要件にも免許取. 指す学生たちに段階的・連続的な見通しを示して くれるからであろうか.3年次での都市の標準規. 得要件にもない自由選択科目であるにもかかわら. 模校での実習を中核に据えながら,その前後にそ. ず,永年に渡って多くの学生たちが受講を希望し. れとの対比で農村′ト規模校教育を体験できること. 続け,履修し続けてきた.教員養成課程の学生た. の意義は大きい.. ちのほぼ3分の1から2分の1の学生が実際に受. 4つには,岩見沢校のへき地小規模校実習の垂.
(10) 小さな学校の人きな数恥教育力. 要な特色でもあるが,2年日学生の「へき地教育. たはずの「へき地教育」講義も,受講学生たちの. 実習」と4年目学生の「小規模校実習」のドッキ. 興味関心には十分に応えるものではなかったよう. ングを基本としていることである.同じ複式学級. に感じていた(笹島教授の講義は,へき地学校の. に2年と4年の学生が一緒に配属されて観察参加. 子どもの作文や教師の実践記録などを取り上げ,. を行い,宿舎では4年日学生の複式指導案作成に. 学生たちは私の講義より興味をもって受講してい. 2年日学生が手伝いをするということである.2. たと思う).78年度も「へき地教育」講義を一応. 年日学生は,3年目での基本実習を終えた4年目. は継続することにしながらも,講義だけでなく,. 先輩と行動を共にすることによって多くのことを. へき地学校を参観したり教員や地域関係者の話を. 吸収できるのである.2003年度から「へき地・複. 聞くことなども面白いのではないかということに. 式教育実習」を導入した和歌山大学の場合(「へ. なり,実施の経緯で説明したようなプロセスを経. き地・複式学級教育実習の取り組み」2004.6). て,その年の9月から幌加内町6複式′ト学校での. には,附属小学校での基本実習を終えて間もない. 実習的授業がスタートしたのである.笹島教授と. 3年目希望学生だけを対象とした応用的実習とし. 私ではイメージの相違が少しはあったかもしれな. て実施され,大学生括後半に集中した実習となっ. いが,私のイメージでは,へき地に合宿しながら. ていて,入門的実習としての効果の大きい′ト規模. へき地学校の授業参観やへき地関係者との対談等. 校体験の機会が2年日学生に与えられていないよ. を取り入れるものの,大学教師による講義も重要. うである④⑤. .その点で岩見沢校の場合は,へき. 地教育実習が段階的系統的実習の役割も果たして いると考える.. であると考えていた.. 学習指導や生活指導を担当されていた笹島教授 には,「へき地教育」講義の実質的主体がへき地 学校に移り,「へき地教育実習」的に運営するこ. 4.講義と実習,理論と実践の関連をめぐって. とに抵抗は少なかったかと推測するが,私には「講. 義」としてのこだわりもあり,現地学習が教育実. 1977年に笹島教授(教育課程・教育方法)と2. 習そのものにならざるをえないなら,大学での大. 人で「へき地教育」講義を担当することになった. 学教師による事前講義が必要であると考え,へき. 私は,教育社会学・教育制度関係の担当教員とし. 地教育制度史や社会学的な当該地域研究等を事前. て自分の役割を自覚しつつ,それなりの準備を. 講義に含めるべく努力もし,実際に事前講義もか. 行った.しかし,当時の私の課題意識は,北海道. なり担当させていただいたりしてきた.しかし,. のへき地′ト中学校の現状を見据えてというより,. 「実習」を楽しみにしている学生たちの受講反応. 大学院時代からの延長で高校進学問題やソ連の教. は乏しく,学生たちの興味関心は複式指導案の作. 育制度に関心があり,「へき地教育」講義の準備. 成やビデオ学習にあったようである.. のためにまず取り組んだテーマが「北海道へき地. 1978年から学校教育講座が担当してきた「へき. 町村における高校進学をめぐる問題」と「ソ連の. 地教育」「′ト規模校教育」講義が,カリキュラム. 農村学校をめぐる最近の動向」であった.前者は. 改革によって1999年度から「教育実習」選択科目. 本学僻地教育研究施設の「僻地教育研究」誌(1977). に名実ともに位置づけられ,教育実習委員会の担. に,後者は「日本比較教育学会紀要」(No.5.1977). 当となったことにより,私は運営から外れ,実習. にそれぞれ投稿し掲載された.特に前者は全国へ. 期間中にいくつかの実習校の巡回指導教員として. き地教育連盟の機関紙「全国へき地教育新聞」に. 関係しているだけであるが,大学は企画や管理運. 5回(1977年7∼8月)に渡って全文転載され,. 営だけを担当し,へき地′ト規模校教育それ自体に. へき地学校関係者の関心にも相応した研究であっ. 関しては事前指導を含めて学外講師(へき地校教. たと自負もしているが,それらを中心に取り上げ. 師や元教師)に委託している状況は,学生たちの.
(11) 門 脇 正 俊. 現在のニーズに相応しているとしても,それでい. 学の問題とするとき,理論を実践に適用するとか,. いのかどうか,疑問も感じている.へき地小規模. あるいは実践によって検証すると言われる場合の. 校教育を実習的・体験的に学ぶことだけでなく,. ように,すでに何らかの形で出来あがった科学的. へき地の社会科学的自然科学的研究を含めて理論. 成果が前提として考えられている.教育科学は,. 的に学ぶことも重要であると考える.近年,体験. 実践と科学の関係について,教育を対象とすると. 学習や実習の拡充が教師教育改革の切り札として. いうこと自体をよく知るために,言い換えれば教. 注目され取り入れられてきたが,そのことの重要. 育に対して科学を志向する前に,まず実践を問題. 性とともに,その限界や問題点にも注目したい.. にする必要はないか」と.五十嵐氏の指摘に学べ. 藤枝静正氏は,大著「教育実習学の基礎理論研. ば,教師教育でも,講義で学んだことの検証の前. 究」〔むの中で,教育実習を免許要件的,体験学習的,. に,つまり講義での理論的学習の前に,実践体験. 実地練習的,精神形成的,実践研究的という5理. を持つことの必要性を提起しているとも受けとめ. 論的類型に分類し,日本の教育実習の現実は,そ. ることもできようか.五十嵐氏の論述の対象は教. れらの3∼4類型あるいは5類型すべてが取り込. 育学研究者であり,教育実習は意識外であったで. まれたケースがほとんどで,端的に言えば「綜合. あろうが.. 型」ないし「総花型」であるとまとめ,そしてそ うならざるをえないとすれば,5つの理念型的類 型相互間で何らかの理論的構造化が試みられる必 要がある,との問題提起も行っている.しかし,. おわりに 「小さな学校の人きな教師教育力」という本稿. 概して基本教育実習とその事前・事中・事後指導. の表題は,学術論文の表題としては不適切である. が研究対象の中心にあり,教育実習の段階的系統. との批判もあるかもしれない.受講した卒業生た. 的構造化への踏み込んだ提言はなく,段階的連続. ちへの追跡調査が不十分で,「大きな」と表現で. 的発想は乏しいように感じる.従ってまた,へき. きるだけのデータを十分には提出できておらず,. 地小規模校実習等への言及は見られない.しかし,. 「可能性」ぐらいにとどめるべきだったかもしれ. 藤原氏の5類型論からへき地小規模校実習を見れ. ない.マスコミ報道や講演題臼では,「小さな学. ば,岩見沢校では免許要件とは無関係な自由選択. 校の大きな教育」等の本稿表題に類似した表現は. 実習で学生の意欲を評価できるが,大学での研究. 何度か目にしてきた.古くはNHK北海道TEN. 教育との結びつきも弱く全面的なへき地校依存と. で旭川市の′ト規模特認校を紹介した番組i1988iが. いう点では実践研究的実習にはなりえていないで. 「′トさな学校の大きな教育」と題していたし,近. あろう.体験学習的,実地練習的,さらには精神. 年では有馬毅一郎著「へき地教育の基礎的研究」. 形成的ということにもなるのであろうか.なお筆. (黒潮社.2002)に収録された講演記録. 者は,1980年代半ばから旧ソ連の教育実習制度,. (2002.10.30)が「′トさな学校のでっかい教育」. 特に大学後半に限定されていた教育実習が在学期. と題されていた.ついでに付言すれば,その有馬. 間を通じての段階的連続的教育実習に移行させて. 氏(島根大学名誉教授)自身,へき地′ト規模校出. いく取り組みに注目していくつかの論文を発表し. 身で,大学新卒で勤務した学校もへき地小規模校. 農村教育実習にも言及したことがあるが芯,最近. で,特に新卒での小規模校体験がその後の教員生. の状況を再調査したいと思っている.. 活の土台となったことを述懐されていた.そのこ. ところで,教育実践とか教育実習について考え る時,学生時代に読んだ五十嵐顕著「民主教育論」 (青木書店.1959)の次のような冒頭の書き糾し が思い起こされることがある.即ち,「実践を科. 10. とも,へき地′ト規模校の教師教育力を示している のかもしれない.. なお参考として,本学釧路校で開催された平成 10年度教員養成大学・学部等教官研究集会でプリ.
(12) 小さな学校の人きな数恥教育力. ント配布した報告概要を,全文紹介させていただ く.そのような報告の機会を私に与えて下さった 本学釧路校スタッフ,特に玉井康之教授に深く感 謝する.また今回の報告も,本学釧路校で開催さ れた日本教師数青学会第15回研究大会(2005.9. 25)で発表した草稿を加筆修正したものであり, 釧路校スタッフにお世話になった。. 山大学教育学部.2004. ⑥藤枝静正著「教育実習学の基礎理論研究」風間書 房.2nnl 〔手拙稿:ソ連の教育大学における教育実習−1980年 代前半を中心に−.「年報いわみざわー1986−」 北海道教育大学岩見沢校.1987 ・拙稿:ソ連の教育大学と総合大学における教育実 習制度の改革−1985・86年改革を中心に−.「北 海道教育大学紀要(第一部C).第38巻第1号.1987 ・拙稿:ソビエトにおける教育実習改革一日本の問 題にも言及して−.「関西大学教職課程研究セン. [註]. ター年報」第5号.1991. ① 佐野好久・岡野勉・林尚示・濁川明男:国立教員養. 成系大学・学部における教育実習カリキュラムの系統 化に関する研究一致育実習改革の動向調査をふまえ て−.「日本教師数青学会年報」No.13.2004. 関連して ・林尚示・岡野勉・佐野好久・濁川明男:国立教員養成 系大学・学部における2・3年次教育実習カリキュラ ムの改革動向.山梨大学教育人間科学部紀要.第4巻. 第2号.2002 ・岡野勉・佐野好久・濁川明男・林尚示:国立教員養成 系大学・学部における1年次教育実習カリキュラムの 編成動向と課題.新潟大学教育人間科学部紀要.第6. 巻第2号.2003 ・岡野勉・佐野好久・濁川明男・林尚示:国立教員養成 系大学・学部における4年次数育実習カリキュラムの 編成動向と課題.新潟大学教育人間科学部紀要.第6. 巻第2号.2004 ②・絆嶋勇治郎:実地指導導入による「へき地・複式教 育」に対する授業改善の試み.「年報いわみざわ」創刊 ぢ.1980. ・渡遵守夫;教育実地研究「へき地・複式教育」の実際 について.「年報いわみざわ」第2号.1981. ・佐藤有:へき地学校教員養成課程の現状報告.「環太平 洋の地域研究と異文化理解教育」北教大.1994 ・新田和幸:今年度の集中講義「へき地教育」「複式教育」. の実施について.「僻地教育研究」No.44.1990 ・村田文江:岩見沢校における「へき地・小規模校教育 実習」の現況と課題.「へき地教育の未来と北海道教育 大学の役割」北海道教育大学へき地教育研究施設.2001. ・前田賢次:へき地小規模教育実習の実際一沼牛小学校 の事例紹介−.同上書 ③拙稿:〈小規模化〉 時代,学校・学級と課題.「総合教 育技術」ノト学館.19974 ④川本治雄:地域に根ざす教育実習.「和歌山大学教育実 践総合センター紀要」No.14.2004. ⑤和歌山大学教育実習委員会・附属教育実践総合セン ター編「へき地・複式学級教育実習の取り組み」和歌. 11.
(13) 門 脇 正 俊. 岩見沢校の「へき地教育実習」のあゆみ(2005年慶事前指導資料p.8に17年度を追加) 講義科目名 「僻地教育」. 受講学生数. 年度. 協力校数(口数). 昭利52年度. 区分:教職専門(自 由選択). 集巾講義「へき地教 育」・「複式教育」. (1年次8名)(27). 区分:教職専門(選. 54. 24. 択必修). 55. 32 43 27 22 30 40 38 33 45. 56 57 58 59 60. 61 62 63 平成1 2 3 4 5. 6. 7. 「複式教育」を「小 規模校教育」に名称 変更. 8. 9. 10. 1640 23 23 38 48 40 30 32 34 30. 55 幌加内町5校(3泊4R)・積丹町4校(3泊4R) 66 幌加内町5校(3泊4R)・積丹町5校(3泊4R) 65 幌加内町5校(4泊5日)・積丹町4校(4泊5日) 70 幌加内町5校(3泊4R)・積丹町5校(3泊4R) 70 幌加内町5校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 70 幌加内町5校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 70 幌加内町5校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 67 幌加内町5校(4泊5R)・積丹町5校(3泊4R) 75 幌加内町5校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 42 31 73 幌加内町5校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 38 30 68 幌加内町4校(3泊4R)・積丹町5校(4泊5R) 40 27 67 幌加内町4校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 41 27 68 幌加内町4校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 44 24 68 幌加内町4校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 30 23 53 幌加内町4校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 16 26 42 幌加内町4校(4泊5R)・積丹町5校(4泊5R) 幌加内町4校(4泊5R)・人滝村1校(4泊5R) 37 25 62 岩見沢市2校(5R通学) 幌加内町4校(4泊5R)・人滝村3校(4泊5R) 443074 岩見沢市2校(5R通学) 幌加内町4校(4泊5R)・人滝村3校(4泊5R). 463278 中頓別町1校・月形町1校で試行(6泊7日) 幌加内町4校(4泊5R)・人滝村3校(4泊5R). 472774 岩見沢市1校(6R通学) 幌加内町4校(4泊5R)・人滝村3校(5泊6R). 「へき地教育実習」・ 「/ト規模校教育実習」 区分:教育実習(選. 12. 473574 夕張市1校(6泊7R)・岩見沢市1校(6R通学) 幌加内町3校(5泊6R)・人滝村3校(5泊6R). 択). 13. 532780 夕張市1校(6泊7R)・岩見沢市1校(5泊6R) 幌加内町3校(4泊5R)・人滝村3校(4泊5R). 14. 214566. 15. 332356. 16. 50. 夕張市1校(5泊6R)・岩見沢市1校(5泊6R) 人滝村1校(4泊5R)・幌加内町3校(4泊5R) 巾頓別町1佼(6泊7R)・夕張市1佼(5泊6R) 厚真町1校(5泊6R)・月形町1校(5泊6R) 岩見沢市1校(4泊5R 利尻町1校(6泊7R)・・人滝村1校(4泊5R) 幌加内町3校(4泊5R)・厚真町1校(5泊6R). 1666 中頓別町1校(6泊7日)・赤井川村1校(5泊6日) 岩見沢市1校(5泊6R). 17. 12. 51. 2576.
(14) 小さな学校の人きな数恥教育力 平成17年度「へき地教育実習」・「′ト規模校教育実習」実施計画 北海道教育人学岩見沢校 1 実施期間・教育実習生の配属 4年次. 学 校 名. 間. 期. 交通手段・宿泊等. (人). 8月28R(R)移動R. 巾頓別町立敏音知小学校 2. 4. 6. (2学級). 8月29R(月). 交通:JR 宿泊:町営コテージに宿泊・. 自炊. ∼9月5R(月). 8月28R(R)移動R 歌登町立本幌別′ト学校. 8月29R(月) 4. 4. (3学級). ∼9月2R(金). 交通:JR 宿泊:教育住宅または地域の. 会館に宿泊・自炊. 9月3R(土)移動R 仙法志小学校 利 尻 町 立. 8月28R(R)移動R 3. 3. 8月29R(月). (4学級). 新湊小学校. ∼9月2R(金) 3. 3. 3. 6. (4学級). 交通:JR&フェリー 宿泊:利尻町自然の家に宿 泊・自炊. 9月3R(土)移動R. 種川小学校 3. (3学級). 8月21R(R)移動R. 八束小学校. 8月22R(月)∼26R(金). 2. (4学級). 8月27R(土)移動R. 金原小学校 2. 金. 3. 交通:JR. (3学級). 町. 9月4R(R)移動R. 神丘小学校. 2. (2学級). 立. 宿泊:校区内の公民館に宿 泊・自炊. 9月5R(月)∼9R(金). 9月10R(土)移動R. 花石小学校 2. 2. 4. (3学級). 9月11R(R)移動R 9月12R(月)∼16R(金). 美利河小学校. 9月17R(土)移動R. 2. 2. 3. 6. 9. 3. 3. (3学級). 岩見沢市立メープル小学校. 9月11R(R)移動R. (4学級). 9月12R(月)∼16R(金) 宿泊:校舎内に宿泊・自炊 8月28R(R)移動R. 夕張市立滝の上小学校 (3学級). 交通:巾央バス. 8月29R(月). 交通:JR 宿泊:紅葉山の初ケ台集会所 に宿泊・自炊. ∼9月2R(金). 幌加内小学校 2. 幌 加 内 町 立. 2. 4. (6学級). 政利小学校 8月22R(月)∼26R(金). (2学級). 交通:往複人学バス 宿泊:公民館等に宿泊・自炊. 朱鞠内小学校 2. (2学級). 交通:往複人学バス. 人滝村立人滝小学校 4. 8. 12 8月22R(月)∼26R(金) 宿泊:人滝セミナーハウスに. (6学級). 宿泊・自炊. 厚真町立軽舞小学校. 9月5R(月)・移動R 交通:JR 2. 4. 25. 51. 6. (3学級). 計. 9月6R(火)∼10R(土) 宿泊:町内会館に宿泊・自炊. 76. 13.
(15) 門 脇 正 俊. 参考資料:平成10年度教員養成人学・学部等教育研究集会(1999.1.31.北数人釧路校)の報告で配布 公立協力校(へき地′ト規模校)での現地宿泊型教育実習の教育効果 門脇正俊(北海道教育大学岩見沢校). 1.岩見沢校と教育実習. 北海道教育大学岩見沢校は,′ト規模大学であること(本学5分校でも全国でも,最少の学生・教職員定数 の国立大学キャンパス),′ト学校教員養成だけの教員養成課程であること(他に社会教育課程),附属′ト学校 を持たない唯一の国立大学′ト学校教員養成課程であること,農業系教員養成機関(実業補習学校・青年学校. 教員養成所,青年師範学校)を唯一前身とし広大なキャンパスに恵まれていること,日本で唯一の僻地教育 研究施設を併設していること等,全国の教育系大学学部の中で,多くの貴重な特色を有している. しかし,附属′ト学校を持たないという特色は,附属校をテーマとした本分科会での報告資格を疑われそう. であるが,このハンディ的条件を逆に持ち味とした教育実習づくりに我々は努力してきており,その1つと してのへき地′ト規模校教育実習の取り組みについて,主催者である釧路校が注目してくださり,今日の報告 を担当することになった.主題に入る前に,本校での教育実習の全体を紹介させていただく.. 岩見沢校では,3年の89月に6週間,岩見沢市と近郊の市町(二笠市,美唄市,砂川市,栗沢町), 札幌市,′ト樽市の通学可能な公立′ト学校に分散して′ト学校実習を実施しているが,実習校はすべて単式学級. で,1学年複数学級の標準規模的学校がほとんどである.附属校と異なり,各学校への実習生の配置は数人 ずつであり,各学級でのマンツーマン指導というより,むしろ学年や学校全体で個別的指導をいただくとい う恵まれた条件にある(実習校が多く,大学教官の学校訪問は大変であるが).事前指導は3年4−7月の 前期に毎週2時間15回実施し,そのうち7−8回は岩見沢市立′ト学校7校からの実地指導講師7名7グ ループにより,授業参観や指導案作成を含むきめ細かな指導をしていただいている.3年の必修小学校実習 の他に,4年で副免許の中学校実習をほぼ全員が,障害児教育実習を数割の学生が受講するが,次に報告す る現地宿泊型教育実習は半数近い学生が履修し,「へき地教育」(2年)と「′ト規模校(←複式)教育」(4年). は,それぞれ3年実習の入門的,深化・発展的性格を有し,2−3−4年にわたる段階的連続的教育実習を 形成している.. なお,岩見沢校では長年に渡って附属′ト学校設置,特に近年は3・4年等での複式学級を含む′ト規模な6 学級校の附属小学校設置の概算要求(日本の国立大学附属小学校はすべて12学級以上で,全国の3分の1を 占める6学級校以下に対応した附属′ト学校は存在していない)を行ってきたが実現せず,今年度から研究協 力校制度をスターとさせ,地域のいくつかの公立学校との問で研究協力を行っている.. 2.公立へき地′ト規模校での現地宿泊型教育実習. 大学所在県内に複式学級校を多く有する教員養成系学部のいくつかは,複式学級を併設した附属小学校を 有していて複式学級での′ト学校教育実習も実施しているが,それは,′ト学校教員養成課程学生の必修実習と して,附属′ト学校や公立′ト学校の単式学級での教育実習と同等に位置づけられていると推測するが,本報告. での実習は,3年の必修教育実習に追加して行われ,希望者対象ではあるが,多数の学生が履修し,その入 門的及び発展的意義を有している.. 担当教官の交代と岩見沢校の改組(1979年に中学校課程を廃止し,小学校課程だけの特色ある分校として 再出発)を背景に,それまでの講義室だけでの「へき地教育」を,教育実習を中心とした現地宿泊型授業「へ き地教育」(2年)及び「複式教育(後に′ト規模校教育)」(4年)に変更してから21年が経過した.1978 年に幌加内町6校で開始し,80年に積丹町が加わり,96年から幌加内町,大滝村(積丹町の代わり),岩見. 14.
(16) 小さな学校の人きな数恥教育力. 沢市郊外(自宅通学),さらに98年から月形町と中頓別町での追加試行も行っている. [名称と対象]. 「へき地教育」 2年日学生を対象とし,へき地教育に関する概論について講義し,同時にへき地の学 校,子ども,地域などに実際に触れることにより,へき地教育についての一般的,実践 的認識を得る.観察参加を中心とする.. 「′ト規模校教育」4年日学生を対象とし,「へき地教育」を基礎に,また,3年目で行った教育実習の 経験の上に立って,実際に複式授業(又は,少人数授業)などの実習を行う(観察参加 に加えて教壇実習を体験する). [実施概要]. ・7月中旬に,多数の希望者の中から,2年と4年の学年別及び希望地城別に抽選を行って,受講学生を決 定している(70名前後).. ・受講学生決定直後に第一次学習資料を配布して簡単な説明を行い,実習前の8月下旬に,1日の日程(約 8時間)で第二次資料,ビデオなどを含めた事前指導を行っている.. ・′ト学校での実習は月∼金の4泊5日を標準としており,大学から現地への送迎は,大学のバスやバンを使 用してきた.幌加内町は学校別に隣接の公民館等で分散宿泊(自炊),大滝村(積丹町)ではセミナーハウ ス(研修センター)での全実習校合同宿泊(食事付き,帝での送迎等),岩見沢近郊のへき地校だけは,自 宅通学(自家用車含む)で実施.. ・各学級に4年1人,2年1−2人を配置し,4年の研究授業を含む実習に2年が参観協力する内容で行わ れる.宿泊施設では,学校別,学級別準備活動が,毎晩遅くまで熱心に行われる.その真剣で活発な討議や 準備活動には,引率高官がいつも圧倒される.. ・5日間の短期実習だが,最終日の全校離任式,学級お別れ会等の風景は感動的である. ・実習終了後,4百字10枚程度のレポートを,授業の指導案とともに提出する. [効果]. ・小規模校,複式・少人数学級での生徒や教師との密度の濃い触れ合いは,特に2年生にとって感動的で, 教職への意欲を高め,3年生での長期実習への入門的意義も有している. ・都市′ト学校で6週間実習経験のある4年生にとって,都市学校とへき地学校,単式・多人数学級と複式・ 少人数学級の体験的比較により,教育観や教育方法を深める機会になる.総じて,異年齢集団,自然体験学 習,個に応じた教育,学校と地域住民との協力関係等,都市学校が失いがちな教育的価値を発見・再認識す る機会となり,へき地小規模校の教育力,教師教育力のすばらしさを痛感させられる.. もちろん,牧歌的にとらえすぎることへの警戒は必要であり,事実,狭い固定的人間関係や複式指導の困 難さを見据え,それに立ち向かう教師の力量形成の問題として,学生たちとの討議も行ないつつある.. 3.学生から見た「へき地教育」 A.受講の動機 ・研究室やサークルの先輩から勧められた. この授業を受講するために,この大学に入学した. ・2年生での教育実習体験への魅力. ・都市の大規模校出身者として,実体験のないへき地′ト規模校への魅力を感じる. ・北海道の教師になるには,へき地教育は避けて通れないと思っていたから. ・複式授業を経験してみたくて.. 15.
(17) 門 脇 正 俊. ・子どもたちと接することのできる数少ないチャンスのひとつだから. ・2年前の「へき地教育」受講の抽選に外れたから. ・2年前の「へき地教育」で出会った子どもたちと再会したくて. ・昨年の都市での′ト学校実習とは異なった地域や規模の教育実習への魅力を感じて. B.実習を振り返っての感想等.. ・児童会主催のレクレーションにも「へき地らしさ」を,へき地だけの良さ,へき地にしかない温かさを感 じた(例えば,事務補さん,校務補さんも参加).. ・やはり,複式授業は難しかった.複式学級での4人相手の授業は,単式学級での40人近い子どもを相手に した授業以上に大変だった. ・地域の自然について,子ども遠から多くのことを教えてもらった(子どもたちは,私の先生であった).. ・少人数学級での教師の発間の大切さや子ども達の発言を待つことの大切さを考えさせられた.へき地の教 師は人間的に大きく,視野が広くなければと思った.. ・小規模校同士の集合学習に参加する中で,子どもの視野を広げるための様々な取り組みの必要性を実感し た. ・校長,教頭を含めた全教職員が全児童を知っていて,声を掛け合うのがいいなあと思った.. ・全校給食が楽しかった.学級という枠を越えて,学校岩1単位として動いており,縦のつながりが印象的 だった. ・人自然に囲まれた場所で育ったのがわかるほどに,みんなのんびりしていて,素朴で心が澄んでい. た.. ・実習が終わってみると,へき地の子どもも,都市の子どもも変わらない,普通の子どもたちでした. ・子ども達のかわいらしさを実感し,教師の仕事のおくの深さを知った. ・短期間であったが,一生の宝物を得た5日間であった.. 4.存続・拡充の必要性と課題 ・へき地小規模校の多い北海道の教育現実が,このような授業を必要としている.. ・へき地教育は教育の原点とも言われてきたように,大学生にとっても,教育の本質を実感し考えることの できる貴重な機会である. ・へき地教育は,へき地での生活や教育活動を体験してこそ,より実感できる. ・全学生を受講対象としてきており,様々な研究室の学生が交流できる有益な機会である.. ・同じ学級への4年と2年の配置は,双方にとって有益である(宿舎での深夜までの共同作業). ・存続拡充に必要な引率教官の確保問題.指導体制のあり方.実習校にすべてをおまかせするか,教官が一 緒に滞在し,実習校や学生から積極的に学ぼうとするか. ・他の実習を含め,大学教官が実習校訪問を自分の研究と教育に役立ててきたか. (その他の配布資料). ・平成10年度集中講義「へき地教育」「小規模校教育」実施計画の概要. ・「へき地教育」「小規模校教育」開講の系譜.21年間の実施概要. ・北海道公立′ト学校のへき地級別,学級数別学校数. ・′ト規模校の教育力と教師教育力(「総合教育技術」′ト学館1997年4月号所収の拙稿より) ・教育実習で学問研究と教育実践の関連を考えたい(北海道教育大学学園だより掲載の拙稿より). (岩見沢校 教授). 16.
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