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被虐待体験と自閉症スペクトラム傾向が他責傾向に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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(1)被虐待体験と自閉症スペクトラム傾向が他責傾向に及ぼす影響 人間発達教育専攻 臨床心理学コース. M11082B 西村昌佑子          問題と目的. ら2012年3月までに養護および性格行動相談.  被虐待児の示す攻撃性を含む対人関係の問題. として相談歴があったケースの中から,・P−Fス. が,自閉症スペクトラム障害(AutismSpectmm. タディを実施している小中学生を回帰的に調査. Disorder:ASD)に類似したメカニズムで生じて. した。調査人員は131名(小学生男子41名,. いるという指摘がある(林,2008)。攻撃性が高. 小学生女子20名,中学生男子24名,中学生女. い被虐待児とASD児は,どちらも相手の意図. 子36名;平均年齢11.29±2.34歳)であった。. があいまいな状況では敵意的認知をしやすいた. 従属変数. めに,攻撃性を生じていることが予測される。.  他貫傾向 P−Fスタディ児童用日本版第皿版. ASD児の対人関係認知の問題が,心理検査の一. (林・住田,2007)に示された他責反応の反応. つであるRosenzwe1gPid㎜=e−Fms㎞廿。nStudy(ロ. 数(E−A)を用いた。. ーゼンツアイク絵画一欲求不満研究:P−Fスタディ)反. 独立変数. 応に反映されやすいことが報告されており,満.  披虐待体験 相談過程において,虐待事実が. 田・名翫・辻井(2009)は,ASD児は他責反応. 確認されているケースを被虐待体験「有り」,そ. (E−A;欲求不満の原因を他人や環境のせいに. れ以外を「無し」とした。. する傾向)が高いことを示している。.  自閉症スペクトラム傾向 対人,コミュニケ.  本研究では被虐待児の示すASD様特性に着. ーション,こだわりというPDDの3主要領域. 目し,被虐待体験がP−Fスタディの他責反応に. を捉えることができ,一がつPDDの臨床症状評. 及ぼす効果に,どのようにASD傾向が関わっ. 価に有用で,スクリーニングにも適すとされる. ているのかを明らかにしたいと考えた。理論的. 広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度短縮版. には,以下の仮説が考えられ,これを検証する. (安達・行廣・井上・辻井・栗田・市川・神尾・. ことを本研究の目的とする。. 内山・杉山,2008:PARS短縮版)を用いた。. 研究仮説.  基本属性 他責傾向に影響を与える可能性. 1.被虐待体験は他責傾向を抑制する。. のある変数として,性別,年齢,学年を調べた。. 2.ASD傾向は他責傾向を高める。. 解析方法. 3.被虐待体験が有り,ASD傾向が高い場合は,.  E−Aを従属変数,被虐待体験の有無,PARS.  他責傾向を高める。. 得点を独立変数としたポアソン回帰分析を行っ.           方法. た。性別,年齢,相談種別,P−Fスタディの. サンプル. 総反応数はコントロール変数として独立変数に.  X県の児童相談所において,2007年4月か. 加えた。名義尺度はダミーコーディングした。.

(2)          結果. いことが明らかになった。これは,仮説2は支.  最適モデルをTab1e1に示す。なお,E−Aは,. 持するが,仮説1と3とは異なる結果であった。. 小数点以下を切り上げて用いた場合と,切り捨. この結果は以下のように解釈される。ASD傾向. てた場合で結果はほとんど変わらなかった。. が高いと敵意的認知をしやすくなり,他責傾向. が強まる。被虐待体験が無い場合は,ASD傾向 Tab1e1他責傾向についてのポアソン回帰分析 小数点以下. 切り上げ  切り捨て M=131     M=131. β  5亙  β  5亙 独立変数 切片        2.28★ .152.20★ .16 .12    .09  .13    .09 被虐待体験.    ×ASD傾向 ASD傾向. 一.03+  .02  一.03+  .02. 年齢. 一.02+  .01  一.02+  、01. .06   ,O1  .06   .O1. が高くなると,敵意的認知をしやすくなり,内 的に生じた他責傾向を率直に外的に表出し,外 的な他責傾向が強まる。一方,被虐待体験があ. る場合は,ASD傾向が高いと,敵意的認知をし やすくなるが,内的に生じた他責傾向を抑制す るため,外的な他責傾向は強まらない。すなわ.               ★ρく.001,十ρく.10. ち,ASD傾向が高く,その特性により敵意的認.  結果,ASD傾向の主効果に有意差がみられた。. 知をしやすい児童は他責傾向が高くなるが,被. また,年齢の主効果および,被虐待体験とASD. 虐待体験によりそれを抑制する反応がP−Fスタ. 傾向の交互作用に有意傾向が認められた。. ディには反映されやすいといえる。社会内望ま.  被虐待体験とASD傾向の交互作用について. しさに関する心理的構えを操作したときに,他. 検討するために,PARS得点の平均値±O.580. 責反応が減少するという研究(Si1verstein,. を基準に“ASD傾向高群”と “低群”に分け,. 1957他)からも,対人的敏感性の高い被虐待児. “被虐待体験有群”と“魚群”を併せて,E−A. が,内的に生じた敵意的認知を他責反応として. についての2要因分散分析を行った。結果,. 表出することを抑制したことが予想される。. ASD傾向の主効果が有意で(珂1,68)=19.37,.  本研究のモデルについては,被虐待体験と他. ρく.001),ASD傾向高群は低群に比べて有意に. 責傾向の直接的な関連性が認められなかったこ. 他責傾向が強かった。また,被虐待体験とASD. ともあり,十分に妥当なモデルを示すことがで. 傾向の交互作用(珂1,68)=3.97,〆.05)が有意で. きたかについては疑問が残る。サンプルの他責. あったので,単純主効果の検定を行った結果,. 傾向が全体的に低かったことなどが原因として. 被虐待体験無群とASD傾向の単純主効果. 推察される。しかし,被虐待体験とASD傾向. (耳1,68)=19.64,ρく.001)が有意であり,被虐待. の高さが他責傾向に及ぼす影響を知る上で,敵. 体験無群において,ASD傾向高群は低群に比べ. 意的な認知様式はASD児の他責傾向を高める. て他責傾向が強かった。. が,被虐待体験が介在した場合には,その対人.          考察. 敏感性により,P−Fスタディ上は抑制された反.  ASD傾向が強いと他責傾向が強まり,被虐待. 応となるという関係性が示唆された本研究は新. 体験が無い場合にはASD傾向が高くなると他. たな視座を提供するものであるといえよう。. 責傾向が強くなるが,被虐待体験が有る場合に.          主任指導教員 市井 雅哉. はASD傾向は他責傾向に対する影響をもたな.          指導教員 海野千畝子.

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