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本人の語りからみた急性期一般病棟におけるハイパフォーマー看護師のコンピテンシー:他者の視点からみたコンピテンシーとの比較

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Academic year: 2021

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全文

(1)

本人の語りからみた急性期一般病棟におけるハイパフォーマー看護

師のコンピテンシー:他者の視点からみたコンピテンシーとの比較

林  千冬

1

,八木 哉子

2

,平尾 明美

3

,益 加代子

4

小林 由香

2

,坂井祐美子

2

,藤原 正和

5

,岡崎 美晴

6 1神戸市看護大学, 2西神戸医療センター,3元神戸市看護大学,4愛知県立大学 5神戸市立医療センター中央市民病院,6神戸市立医療センター西市民病院 キーワード:コンピテンシー,ハイパフォーマー,看護師、ジェネラリスト,急性期一般病棟

Competencies of high performer nurses working in acute general wards as

viewed from themselves

Chifuyu HAYASHI

1

,Kanako YAGI

2

,Akemi HIRAO

3

, Kayoko EKI

4

,Yuka KOBAYASHI

2

Yumiko SAKAI

2

,Masakazu FUJIWARA

5

,Miharu OKAZAKI

6

1Kobe City College of Nursing,2Nishikobe Medical Center,3Former Kobe City College of Nursing, 4Aichi Prefectural University, 5Kobe City Medical Center General Hospital,6Kobe City Medical Center West Hospital,

Key words:competency, nurses, high performer,generalist, acute general ward

要 旨

 本研究は、急性期一般病棟におけるハイパフォーマー看護師のコンピテンシーを構成する行動インディケーターを、本人の実 践事例の語りから明らかにすることを目的とした。さらにこれらを、師長・同僚といった他者側の語りを分析した先行研究の結 果と比較検討した。  調査は、所属大学の倫理委員会にて研究計画書の審査・承認を受け、倫理的配慮を記した依頼書にもとづき説明し同意を得て 実施した。  急性期一般病院 3 施設の看護師 9 名から協力が得られ、半構成的面接を実施しデータを収集した。語られた内容をコード化し、 Spencerら(1993)が作成したコンピテンシー・ディクショナリーにもとづく分析を実施し、コンピテンシーを構成する行動イン ディケーターを明らかにした。分析の結果、 6 群20項目のコンピテンシーのすべてについて計74項目の行動インディケーターが 抽出された。  『インパクトと影響力』、『ほかの人たちの開発』のコンピテンシーについては、Spencerら(1993)が作成した一般モデルと同 様の行動インディケーターが見出された。他方、同じ<マネジメント・コンピテンシー>の中でも、「指揮命令」について 1 イ ンディケーターしか抽出されなかった点からは、たとえ非管理職であっても、ハイパフォーマー看護師へのリーダーシップ教育 と権限委譲の促進が重要であると考えられた。  <支援と人的サービス>に関する『対人関係理解』、『顧客サービス重視』についても、多彩なインディケーターが抽出されたが、 その内容からはハイパフォーマー看護師の実践における倫理性と革新性の高さがうかがえた。  研究結果から、ハイパフォーマー看護師におけるコンピテンシーの行動インディケーターは、本人側・他者側それぞれで捉え やすいものが異なることが示唆された。今後、行動インディケーターレベルでコンピテンシーを明らかにしようとする際には、 両側面からのアプローチが望ましいと考えられた。

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Ⅰ.はじめに

 近年、看護師の能力をコンピテンシーという概念で 把握し評価しようとする動きが広がりつつある。1970 年代にコンピテンシー概念を最初に提唱者したのは、 米 国 の 心 理 学 者 McClelland(McClelland,1973)で、 さらに、McClellandの直弟子であるSpencerら(1993) が、コンピテンシーを「ある職務または状況に対し、 基準に照らして効果的、あるいは卓越した業績を生む 原因として関わっている個人の根源的特性」すなわ ち「行動と思考の方法」(Spencer,1993,p.11)だと 定義した。彼らは、様々な企業の従業員への行動結 果面接を通して、卓越した実践を抽出した過去20年 分、286種類という膨大な研究結果をメタ分析し、包 括的なコンピテンシー・ディクショナリーを作成した (Spencer,1993,pp.23-29)。これは今日まで、多くの 職務・職域のコンピテンシー・モデルの開発に用いら れている(佐藤,2011)。  近年、看護学領域においても、コンピテンシー へ の 関 心 が 高 ま っ て い る(Allen,2008; 操,2013)。 Spencerらの定義に従い、ハイパフォーマー看護師の 行動特性をコンピテンシーと位置付けた先行研究は、 他者側の評価からコンピテンシーを探索したものと、 ハイパフォーマー看護師自身の側からコンピテンシー 探索したものとに大別される。   前者には、同僚の医師および看護師からみた救急初 療部門の看護師のコンピテンシーに関する研究(坂 口,2006)や、教育担当者へのインタビューから中堅 期看護師のコンピテンシーを明らかにした研究(細 田,2011)等があり、後者にはスペシャリストや看護 管理者を対象としたものが目立つ(Davis、 2008;真 下,2009;虎ノ門病院看護部,2013;武村,2014)。  これらの先行研究は、Spencerら(1993)によるコ ンピテンシーの定義を用いてはいるが、コンピテン シー・ディクショナリーを忠実に用いた研究は最近に なってようやく行われはじめたばかりである(虎の門 病院看護部,2013)。  また、こうしたコンピテンシーに関する先行研究は、 スペシャリストや管理者を対象としたものがほとんど であり、ジェネラリストを対象としたものは少ない。 しかし、看護職者の勤続年数の延伸に伴い、管理職で も特定分野のスペシャリストでもないジェネラリスト が増加している現在、これらジェネラリストの能力評 価の重要性が増している(山崎,2005)。

Ⅱ.研究の目的と意義

 本研究の目的は、急性期一般病棟において、上司や 後輩からハイパフォーマーだと目されているジェネラ リスト看護師のコンピテンシーを、本人の語る事例か ら行動インディケーターのレベルで明らかにすること である。併せてその結果を、先行研究において看護師 長や同僚といった他者の側から明らかにされたジェネ ラリストの行動インディケーターと比較検討し、ジェ ネラリスト看護師に求められるコンピテンシーを検討 するための一資料にしようと考えた。

Ⅲ.本研究における用語の定義

1 .「ジェネラリスト看護師」とは、看護師のうち、 管理職と専門看護師・認定看護師を除く一般のス タッフ看護師と定義した。 2 .「ハイパフォーマー看護師(以下、ハイパフォー マーと略す)」とは、急性期一般病棟において、卓 越した実践をおこない成果を生み出しているジェネ ラリスト看護師と定義した。 3 .「コンピテンシー」とは、ハイパフォーマーが効 果的あるいは卓越した業績を生む原因として関わっ ている、個人の行動や思考の特性とした。 4 .「行動インディケーター」とは、コンピテンシー を構成するより具体的な行動とそれを支える思考の 特性とした。 5 .急性期一般病棟とは、医療法における一般病床で あり、かつ、診療報酬上の人員配置においておおむ ね10対 1 以上を取得している病棟と定義した。

Ⅳ.研究方法

1 .研究デザイン  半構成的面接法にもとづく質的記述的研究とした。 2 .研究方法 1 ) 研究協力者  近畿圏に所在する300床から700床程度の急性期一般 病院 3 施設の一般病棟(救急・集中治療部・手術室・ 外来を除く)において、機縁法によってハイパフォー

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マーであると推薦されたジェネラリスト看護師で、書 面と口頭で依頼し同意が得られた者とした。 2 ) 調査方法  当該病院に所属する研究メンバーや周囲の看護師長 (以下、師長とする)から、研究協力候補者を 4 ~ 5 名ずつ推薦してもらい、候補者に対し研究協力依頼書 を送付した。依頼書では研究計画の概略を記載すると ともに、直接説明を聞く意思がある場合には返信用は がきでの連絡を依頼した。返信があった者に対しては 返信者の勤務先とは異なる施設の研究メンバーが連絡 し、直接出向いて再度説明と依頼を行い、同意が得ら れれば同意書を取り交わした。  協力者には 1 時間程度の半構成的面接を実施し、 「これまで働いてきた中で、自分なりに上手くいった、 あるいは手ごたえを感じた実践経験」 1 ~ 2 例につい て、どのような行動を取ったかを中心に、関係者や周 辺状況等も含めてできるだけ具体的かつ自由に語って もらった。 3 ) 分析方法  Spencerら(1993)の提唱した「主題分析」による コンピテンシー・モデルの開発法(pp.175-196)と、 実際にこれを用いてコンピテンシー・モデルを作成し た虎の門病院看護部の分析手順(2013,pp.123-131) を参考に、データの中でコンピテンシーに関わる行動 と思考方法についての記述を抽出し、行動インディ ケーターを明らかにしていった。具体的には以下のよ うに分析を進めた。  ①インタビューデータを逐語録に起こしてよく読み、 優れた行動の内容を示していると思われる記述を行動 単位で抽出し、Spencerら(1993)が作成した 6 群20 項目からなるコンピテンシー・ディクショナリー(以 下、ディクショナリーとする)に沿って分類した。    ②コンピテンシーごとに集まった「行動の記述」の うち共通した内容のものを集めてネーミングし、これ を「行動インディケーター」とした。なお、コンピテ ンシー・ディクショナリーには、コンピテンシーごと に、平均的人材の行動を 0 ポイントとしてプラス・マ イナスのレベルが付されている。このレベルは様々な 職種から導かれた標準的尺度であるが、一般企業従業 員と看護職者とでは、組織構造や職位と権限・責任の 配分に相違があり、看護職者への適用可能性には疑問 があった。そのため、本研究においてはこれには触れ ず、行動インディケーターの抽出のみを行った。  ③最後に、得られた結果を、先行研究(林,2014) における、師長・同僚側からハイパフォーマ―である ジェネラリスト看護師のコンピテンシーを調査した結 果との相似性・相違性に着目しながら分析し、相似する 内容は先行研究と共通のインディケーターに分類、相 違する内容からは新たなインディケーターを作成した。  他者側調査とは、林らが2012年に今回と同じ病院の 師長 7 名と同僚 2 名に、卓越した実践を行っていると 思うジェネラリスト看護師の実践事例を想起して語っ てもらい、今回と同様の方法で分析したものである (林,2014)。この結果では、 6 群20項目のコンピテン シーのうち、『秩序、クォリティー、正確さへの関心』 『組織の理解』『自己確信』『組織へのコミットメント』 の 4 項目を除く16項目のコンピテンシーについて、38 の行動インディケーターが抽出された。  ただし、この際に語りの対象になったハイパフォー マー看護師と、今回のインタビューに協力してくれた 者とが同一であるかどうかは不明である。以降、本 稿では、今回の調査を「本人側調査」、先行研究(林, 2014)の調査を「他者側調査」と表記する。  以上の分析においては、研究メンバーがすべての結 果に目を通し、データの正確さやネーミングの適切性を チェックすることで確実性を保証した。確証性について は、各メンバーが分担した分析結果を相互に交換し再度 チェックした後に、今度はコンピテンシー項目ごとに分 担者を決めて検討した後、ディスカッションを実施して 確保した。最後に、 2 名の研究参加者に全体の結果を チェックしてもらうことで信頼性を確保した。 3 .倫理的配慮  神戸市看護大学倫理委員会にて研究計画書の承認を 受けた。協力依頼に際しては、研究参加の自由、匿名 性の保持、結果の公表等について依頼書に基づき説明 し書面で同意を得た。   

Ⅴ.結果

1.本人側調査の結果   3 施設・計 9 名の協力者が得られた。 9 名はすべ て女性で、平均経験年数は10.6年であった。  得られたデータを分析した結果、ディクショナリー に示された 6 群20項目のコンピテンシーのすべてにつ いて、各々 1 ~ 7 個、計74個の行動インディケーター

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が抽出された。行動インディケーターの数を、本人側 調査と他者側調査とで比較した結果は表 1 のとおりで ある。  なお文中では、コンピテンシー群を〈 〉コンピテ ンシー項目を『 』、行動インディケーターを【 】 で示す。 1 )〈達成とアクション〉  このコンピテンシー群は、個人が実際に職務を達 成する側面に焦点を当てており、『達成重視』『秩序、 クォリティー、正確性への関心』『イニシアティブ』 『情報探究』の 4 項目のコンピテンシーで構成されて いる(Spencer,1993,p.31)。  『達成重視』は、すぐれた仕事を達成する、もしく は卓越した基準に挑む行動特性を指す。分析の結果、 本人側調査結果では【看護実践の可能性をあきらめず に追求する】、【周囲に働きかけ新たな取り組みを実現 する】、【仕事に対する基準や目標をもつ】の 3 つがハ イパフォーマー看護師の行動インディケーターとして 抽出され、後の 2 つが他者側調査結果と一致してい た。  『秩序、クォリティー、正確性への関心』は、本人 側調査では、【事前に課題を把握してからケアにあた る】、【他者のチェックを進んで受け間違いを回避す る】の 2 つの行動インディケーターが抽出されたが、 他者側調査ではインディケーターが得られなかったコ ンピテンシーであった。  行動を起こすことへの強い指向を示す『イニシア ティブ』においては、【看護介入のチャンスを逃さな い】、【機会を見計らって多職種と連携する】等の 5 つ の行動インディケーターが新たに抽出され、このうち 【粘り強く継続的に仕事をおこなう】、【自ら進んで仕 事を引き受ける】の 2 つが、他者側調査結果と一致し ていた。  『情報探究』については、【多様な側面から情報収集 する】、【幅広く関係者を探り情報収集する】、【あらゆ る場面で巧みに情報を収集する】の 3 つの行動イン ディケーターが抽出されたが、このうち他者側調査結 果と一致したのは【あらゆる場面で巧みに情報収集す る】であった。 2 )〈支援と人的サービス〉  この群は、ほかの人たちのニーズに応える努力を指 す『対人関係理解』と『顧客サービス重視』との 2 項 目のコンピテンシーから成る(Spencer,1993,p.46)。 『対人関係理解』については、【相手が抱えるしんどさ を理解する】、【心理的負担をかけないように関わる】、 【相手のしぐさから言いたいことを推し量る】等の 5 項目のインディケーターが抽出されたが、他者側調査 結果と一致したのは【相手の気持ちを引き出し支援す る】のみであった。  『顧客サービス重視』については、 6 つの行動イン ディケーターが抽出されたが、このうち【常に根底の ニーズに対応する】、【患者・家族の気持ちを尊重した ケアをする】、【対応困難な患者にもとことん関わる】 等の 5 項目が一致した。【ルーチンを超えたサービス を提供する】は本人側調査結果でのみ、【長期的な視 点をもちケアをする】は他者側調査結果でのみ抽出さ れた。 3 )〈インパクトと影響力〉  この群は、「ある個人のほかの人たちに対する影響 に対する根本的な関心を反映して形成される、パワー に対する欲求としての認知」(Spencer,1993,p.55) を示し、『インパクトと影響力』『組織の理解』『関係 の構築』の 3 項目のコンピテンシーで構成される。  『インパクトと影響力』については、【日常業務を通 して自分の計画をアピールする】、【上司への相談とい う形で自分の計画をアピールする】、【自分の言動の影 響力を計算して行動する】、【あらかじめ仲間で意思一 致してから話し合いに臨む】、【効果的に意図が伝わる タイミングで報告する】、【効果的に意図が伝えられる 相手を選んで報告する】、【自分の考えや判断を根拠を もってほかの人に説明する】の 7 つの行動インディ ケーターが抽出されたが、【自分の考えや判断を根拠 をもってほかの人に説明する】のみが他者側調査結果 と一致していた。また、他者側調査結果では、この 1 インディケーターのみが抽出された。  『組織の理解』については、【組織文化の強みを理解 し継承する】、【上司部下の意見対立を予測する】の 2 つの行動インディケーターが抽出されたが、他者側調 査結果ではこのコンピテンシー項目のインディケー ターは抽出されなかった。  『関係の構築』については、 4 つのインディケー ターが抽出されたが、このうち【十分なコミュニケー ションで他職種の協力を巧みに引き出す】、【頻繁な接

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触で患者家族の関心を引き出す】、【チームメンバーの 円滑な関係を築きながらケアをする】の 3 つが他者側 調査結果と一致した。本人側調査結果では他に【常に サポーティブな姿勢をスタッフに示す】が、他者側調 査結果では【周囲を癒し良い雰囲気を作る】が抽出さ れた。 4 )〈マネジメント・コンピテンシー〉  この群は、前述の『インパクトと影響力』に関連し、 具体的な成果を生み出すためのリーダーシップ、チー ムワーク、協調といった側面を捉えるもので、コン ピテンシー・ディクショナリーの中でも効果的に開 発が可能となっているコンピテンシーだとされてい る(Spencer,1993,p.68)。コンピテンシーは、『ほか の人たちの開発』『指揮命令』、『チームワークと協調』、 『チーム・リーダーシップ』の 4 項目である。  『ほかの人たちの開発』は、純粋な意欲と適切な ニーズ分析によって、ほかの人たちすなわち上司や若 手の別なく、あらゆるスタッフを教育し能力の開発を 促すコンピテンシーである。これについては 7 つの行 動インディケーターが抽出されたが、そのうち【ほか の人たちに気づきを与え方向づけをする】、【自らケア のあり方を示しながら指導する】、【多様な教育方法を 使い分ける】が、他者側調査結果と一致していた。  『指揮命令』については、【全体状況を判断しながら 詳しい指示を出す】の 1 つのみが抽出されたが、他者 側調査結果ではこれはみられず、【根拠をもってケア の必要性を説明する】であった。『チームワークと協 調』では、【チーム内で学びを共有できるよう工夫す る】、【メンバーが対立しないよう調整する】、【メン バーの組織文化への順応を支援する】、【上下関係の架 け橋になる】の 4 つの行動インディケーターが抽出さ れたが、これは他者側調査結果の 2 つとは一致しな かった。  『チーム・リーダーシップ』で抽出された行動イン ディケーターは、【チームが情報共有し意思一致でき るよう調整する】、【チームの目標を見失わず達成に向 けて導く】、【メンバーのチームへの貢献を認めエンパ ワーする】の 3 つであったが、他者側調査結果との一 致はなかった。 5 )〈認知コンピテンシー〉  この群は、『分析的思考』、『概念化思考』、『技術的 /専門的/マネジメント専門能力』の 3 項目のコン ピテンシーから構成され、「イニシアティブのため の知的能力の発揮」だと解釈できる能力だとされる (Spencer, 1993,p.86)。  『分析的思考』については、【経験知から現在の課題 を分析する】、【多角的な視点から患者の状態を分析す る】の 2 つの行動インディケーターが抽出され、後者 は他者側調査結果と一致した。『概念化思考』につい ては【経験知にもとづき複雑な事象を整理する】、【情 報と経験知とを統合して問題解決に取り組む】の 2 つ が抽出され、これも後者が他者側調査結果と一致した。  『技術的/専門的/マネジメント専門能力』は、職 務に関する知識を発展させ、活用し、それらをほかの 人たちに伝えるモチベーションを備えていることだと される(Spencer,1993,p.94)。ここでは、【目標を課 して自らの能力を伸ばす】、【新しいことを積極的に取 り入れ実践する】、【常に学び現在のケアを検証する】 の 3 つが抽出されたが、後 2 つは他者側調査結果と一 致した。他者側調査結果ではさらに 4 つの行動イン ディケーターが抽出されていた。 6 )〈個人の効果性〉  この群は、個人や個人の担っている仕事を他者のそ れと比較することで明らかになる、成熟した個人の 一面を示しており(Spencer, 1993,p.100)、『セルフ・ コントロール』、『自己確信』、『柔軟性』、『組織へのコ ミットメント』の 4 項目のコンピテンシーから構成さ れる。  『セルフ・コントロール』については【人間らしい 感受性を失わない】、【成功体験を忘れずポジティブに 考える】、【常に自らの感情をコントロールする】の 3 つの行動インディケーターが抽出され、【常に自らの 感情をコントロールする】は他者側調査結果と一致し た。  『自己確信』については【目的をもって役割を引き 受ける】、【ケアの成果に自信をもつ】、【上司と対立し てもはっきりと考えを述べる】、【思うようにいかなく てもあきらめず取り組む】、【仕事への信念は揺らがな いと明言する】の 5 つの行動インディケーターが抽出 されたが、他者側調査結果では抽出されなかった。  『柔軟性』については、【ゆるやかなやり方で変革を 進める】、【多様な側面からものごとを見る】、【多様な 意見を取り入れ方法を改善する】の 3 つの行動イン

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ディケーターが抽出されたが、他者側調査結果は【タ イミングを見計らってケアをする】の 1 つのみで一致 しなかった。   『組織へのコミットメント』については、【組織の収 益を意識して行動する】、【組織都合の人事にも進んで 応じる意思がある】、【組織において自分が果たしうる 役割を考える】、【組織目標を理解し達成にむけて行動 する】の 4 つが行動インディケーターとして抽出され たが、他者側調査結果では抽出されなかった。 2 .本人側調査結果と他者側調査結果との比較  以上、今回の本人側調査結果を、先行して実施した 他者側調査結果と比較しながら述べてきた。  本人側調査では全20項目のコンピテンシーについて 計74、他者側調査では16項目のコンピテンシーについ て38の行動インディケーターが抽出され、本人側調査 結果からのほうが、明らかに多数の行動インディケー ターが抽出された。両調査で共通して抽出された行動 インディケーターは、12のコンピテンシー項目にわ たっていた。

Ⅵ.考察

 Spencerら(1993)はコンピテンシー・ディクショ ナリーに従って、いくつかの職域についての「一般コ ンピテンシー・モデル」を提示している。以下では、 このうち看護師が該当する「支援・人的サービス・プ ロフェッショナル」の一般コンピテンシー・モデル (以下、一般モデルとする)と本研究の結果から、ハ イパフォーマー看護師のコンピテンシーの特徴につい て考察していく。そして、これらと他者側調査の結果 との比較から、コンピテンシー評価のあり方について も考察を加える。 1 .ハイパフォーマー看護師の<インパクトと影響力>  Spencerら(1993)が作成した一般モデルにおいては、 各コンピテンシーが行動インディケーターの出現頻度 の高いものから順番に示されているが、最も高いのは、 <インパクトと影響力>群における『インパクトと影 響力』である(p.238)。今回の結果においても、これ について抽出された行動インディケーターは 7 項目と、 本調査結果における出現頻度が相対的に高く、一般モ デルの特徴と一致していた。  一般モデルにおける『インパクトと影響力』の行動 インディケーターには、「相手に合ったプレゼンテー ションをする」、「例やユーモア、ジェスチャー、声 を演出する」、「対個人影響戦略を実行する」(Spencer, 1993,p.239)といった、意図的かつ戦略的に相手に 影響力を与えようとする行動があげられているが、今 回の本人側調査から抽出された行動インディケーター でも、ハイパフォーマー看護師は、自分の計画をいか にアピールするか、どうすれば効果的に意図が伝わる かといった戦略的思考や、【自分の言動の影響力を計 算して行動(する)】していることが示された。 2 .ハイパフォーマー看護師の<マネジメント・コン ピテンシー>  Spencerら(1993)の一般モデルにおいて、次に出 現頻度が高いコンピテンシーは<マネジメント・コン ピテンシー>群における『ほかの人たちの開発』で、 今回の本人側調査でも豊富な行動インディケーターが 抽出された。『ほかの人たちの開発』において、後輩 や若いスタッフのみならず、「管理職に新たな知識・ 技術を獲得するよう働きかける」といった行動は、中 堅期にあるジェネラリスト看護師の模範的なフォロ ワーシップでもあるといえる。これは、施設内教育担 当者の視点から中堅期の看護師のコンピテンシーを明 らかにした細田ら(2011)が、中堅期の看護師のコン ピテンシーとして、【組織への参画】や【支援的リー ダーシップ】 を見出した結果とも一致していた。  なお、<マネジメント・コンピテンシー>におい て『指揮命令』については、【全体状況を判断しなが ら詳しい指示を出す】の 1 項目しか抽出されなかっ た。先述の細田らの研究結果では、中堅看護師のコ ンピテンシーにおいて『指揮命令』に相当するコン ピテンシーは見られず、「動機づけ」、「承認」といっ た「支援的リーダーシップ」が主であった(細田, 2005、 p.40)。また、市川らが、独自の調査票を用い て主任看護師のコンピテンシーを数量的に把握した結 果でも、「リーダーシップ」や「イニシアティヴ」の 得点の低さが指摘されていた(市川,2006)。  『指揮命令』のコンピテンシーについてSpencerは、 「上司と部下間で発揮されることが多いけれども、非 管理層の従業員によって、強い自己主張がなされるこ ともあ」り、卓越したパフォーマーにおいてはしばし ば見られるとしている(Spencer,1993,p.73)。

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 今回の結果は、研究協力者が所属組織においてどの 程度の指示命令権限を与えられているかにも影響され たと思われるが、今後、ハイパフォーマー看護師にお いて『指揮命令』のコンピテンシーは、たとえ非管理 職であっても、意識的に開発される必要があるコンピ テンシーだと考えられた。 3 .患者中心のケアと『顧客サービス重視』  結果において、<支援と人的サービス>群の行動イ ンディケーターは、『対人関係理解』で 5 項目、『顧客 サービス重視』で 6 項目と比較的豊富に抽出された。 対人サービス業である看護職において、このことは当 然の結果だと考えられるが、特に、【常に根底のニー ズに対応する】、【患者・家族の気持ちを尊重したケア をする】という行動インディケーターからは、ハイパ フォーマー看護師の実践が、患者ニーズや気持ちを尊 重するという点で患者中心であると同時に、すぐれた アセスメント力や倫理性を備えた実践であることがう かがえた。さらに、【新たな可能性を示すような独自 のアドバイスをする】からは、ハイパフォーマー看護 師は実践において、標準を超えた革新性を志向してい ることも示唆された。  『顧客サービス重視』において多数の行動インディ ケーターが見出されたことは、「看護師の倫理綱領」 (国際看護師協会,2005)に「看護師の専門職として の第一義的な責任は、看護を必要とする人々に対して 存在する」とあるとおり、看護師の役割の倫理性も含 めた患者中心という特徴そのものをあらわしていると 考えられた。   4 .ハイパフォーマー看護師におけるコンピテンシー 評価の方法  本人側調査と他者側調査とのインディケーターを比 較した結果、本人側調査結果のほうが明らかに豊富な 行動インディケーターが抽出された。特に、他者側調 査ではほとんど抽出されなかった『インパクトと影響 力』、『セルフ・コントロール』、『自己確信』、『柔軟 性』、『組織へのコミットメント』の 4 項目についての 行動インディケーターが、今回の本人側調査で豊富に 抽出された。このことからは、その人自身の内的な動 因や戦略的思考、価値観や思考パターンといったこと がらは、本人自身の語りだからこそ捉えられるコンピ テンシーだと考えられた。  他方、『ほかの人たちの開発』や『技術的/専門的 /マネジメント専門能力』などは、同じコンピテン シーでも本人側からと他者側からとでは抽出された行 動インディケーターの内容に違いがみられた。たとえ 卓越した行動であっても、先述のように本人自身だか らこそ自覚できることもあれば、逆に、本人は意外に 無自覚で、むしろ他者からのほうが捉えやすいこと もある。このように両者の評価の視点が異なること は、いくつかの先行研究でも指摘されている(片岡ら, 2013/吉野,2004)。  看護師の適切な能力の評価や育成のために、今後も さまざまなレベル、さまざまな役割の看護師を対象と したコンピテンシーの特徴の解明がなされていくこと が予想される。本研究の結果は、コンピテンシーを行 動インディケーターレベルで抽出しようとする際に、 本人側と他者側との両側面からのアプローチが望まし いことを重ねて支持するものであったと考える。

Ⅶ.研究の限界と課題

 本研究は、 3 か所の急性期一般病床に勤務する看護 師という限定した範囲の看護師を対象とした研究であ る。よって今後は、さらに対象を広げてデータを蓄積 し、それらを比較検討することを通じて、急性期ジェ ネラリスト看護師に共通するコンピテンシー・モデル を構築することが課題だと考える。その際には、質的 データの豊富化とともに、量的研究による確認も必要 になると考える。

Ⅷ.結論

 急性期一般病棟におけるジェネラリスト看護師の優 れた実践事例を本人の語りから把握し、Spencerらの 作成したコンピテンシー・ディクショナリーにもとづ き分析し、行動インディケーターを抽出した。併せて その結果を、先行研究で上司・同僚の側から明らかに された行動インディケーターと比較検討した。 1 .〈達成とアクション〉、〈支援と人的サービス〉、〈イ ンパクトと影響力〉、〈マネジメント・コンピテン シー〉、〈認知コンピテンシー〉、〈個人の相乗性〉の 6 群20項目のすべてについて、各々 1 ~ 7 個、計74 個の行動インディケーターが抽出された。 2 . Spencerら(1993)が作成した一般モデルにおいて、

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出現頻度が高いといわれる『インパクトと影響力』、 『ほかの人たちの開発』については、豊富な行動イ ンディケーターが抽出された。他方、『指揮命令』 で 1 インディケーターしか抽出されなかったことか らは、リーダーシップ能力の強化が教育の課題であ り、同時に、現場での権限委譲の推進が重要である と考えられた。 3 .『対人関係理解』、『顧客サービス重視』について も、豊富な行動インディケーターが抽出された。こ れらの内容からは、ハイパフォーマー看護師の実践 における高い倫理性や革新性が示唆された。 4 .ハイパフォーマー看護師におけるコンピテンシー の行動インディケーターは、本人側・他者側それ ぞれに捉えやすいものが異なることが示唆された。 よって、今後行動インディケーターレベルでコンピ テンシーを明らかにしようとする際には、両側面か らアプローチすることが望ましいと考えられた。 [COI申告]  本論文に関連して、申告基準を満たすものはなかっ た。

文献

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謝辞

 本研究にご協力いただいた看護師の皆様ならびに病 院関係者の皆様に深く感謝いたします。 なお本研究は、平成25年度神戸市看護大学臨床共同研 究費の助成を受けて実施した。 (受付:2016.9.28:受理:2017.1.10)

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参照

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