対表面照射型比感度
12.7
倍
1670
万枚
/
秒
31
万画素裏面照射型超高速
度
CCD
撮像素子
新井
俊希
†a)米内
淳
†林田
哲哉
†大竹
浩
†バン
クイク
ハリー
††江藤
剛治
†††A 16.7 Mfps, 312 kPixel Backside-Illuminated Ultrahigh-Speed CCD Image
Sensor with a Sensitivity 12.7 Times Higher than That with Front-Side
Illuminated Structure
Toshiki ARAI
†a), Jun YONAI
†, Tetsuya HAYASHIDA
†, Hiroshi OHTAKE
†,
Harry van KUIJK
††, and Takeharu Goji ETOH
†††あらまし 表面照射型に比べ感度12.7 倍で最高撮像速度 1670 万枚/秒の 31 万画素裏面照射型超高速度 CCD を開発した.超高速度CCD は,光電変換部と読出し用垂直転送路の間に,1 画素ごとに 100 個以上の CCD メ モリを配置した特殊な構造から構成される.全画素一斉の並列記録動作により信号電荷をCCD メモリに記録す ることで超高速度撮像が可能になる.超高速度CCD の感度向上及び最高撮像速度向上のため,31 万画素裏面照 射型超高速度CCD V18 を新たに設計し素子を試作した.裏面照射型では,光開口率 100%,光利用率向上及び 時間開口率100%を実現できるので高感度化が可能であり,表面照射型で遮光膜であった金属層を配線として使 用することで配線抵抗低減を実現できるので更なる高速度化が可能である.駆動評価実験の結果,表面照射型に 比べ感度12.7 倍,垂直解像度 410TV 本で画素分離されており,最高撮像速度 1670 万枚/秒を実現したことを 確認した. キーワード 超高速度CCD,画素周辺記録型撮像素子,裏面照射型,1670 万枚/秒,高感度
1.
ま え が き
肉眼では捉えられない一瞬の現象を鮮明に撮像する ことができる高速カメラの開発が行われている.これ らの高速カメラは,高速現象を撮像しスローモーショ ン映像として再生することができるので,スポーツ中 継や科学番組など様々な場面で放送番組に使用されて いる.これまでに我々は,最高撮像速度100万枚/秒の 30万画素超高速度CCD V4 [1]と,これを用いた単 †NHK放送技術研究所,東京都NHK Science & Technology Research Laboratories, 1–10–11 Kinuta, Setagaya-ku, Tokyo, 157–8510 Japan
††テレダインダルサ株式会社,オランダ
Teledyne DALSA Professional Imaging, High Tech Campus 27, M/S 14, 5656AE, Eindhoven, The Netherlands
†††立命館大学,草津市
Ritsumeikan University, 1–1–1 Nojihigashi, Kusatsu-shi, 525–8577 Japan a) E-mail: [email protected] 板式超高速度カラーカメラ[2], [3]を開発した.この超 高速度CCD V4の飽和信号レベルは,撮像速度が20 万枚/秒程度から下がり始め,100万枚/秒ではフルス ケールの20%になり,200万枚/秒では0%になってい た.このため,最高撮像速度は100万枚/秒であった. そこで,対策として分割駆動と配線抵抗低減を行った 最高撮像速度200万枚/秒の30万画素超高速度CCD V6 [4], [5]と,これを用いた単板式超高速度カラーカ メラ[6]を開発した.この超高速度CCD V6の飽和信 号レベルは,撮像速度が40万枚/秒程度から下がり始 め,100万枚/秒では52%,200万枚/秒では13%にな り,300万枚/秒では0%になっていた[7].このため, 最高撮像速度は200万枚/秒であった.近年では,超 高速度撮像素子として,近畿大学より1600万枚/秒 16.5万画素裏面照射CCD [8]が,東北大学より読出 し速度1T画素/秒のCMOS撮像素子[9]が報告され ている.
超高速度撮像においては1フレーム当りの露光時間 が短くなるので,超高速度撮像素子には同時に高感度 化が必要である.そこで超高速度CCDの高感度化の ため裏面照射型が注目されており[10]∼[12],裏面照 射型を適用した構造について検討を行ってきた[13]. 今回,31万画素裏面照射型超高速度CCD V18を 新たに設計し素子を試作した.駆動評価実験の結果, 表面照射型に比べて感度12.7倍,垂直解像度410TV 本で画素分離されており,最高撮像速度1670万枚/秒 を実現したことを確認した.
2.
裏面照射型超高速度
CCD
の動作原理
2. 1 表面側平面模式図 超高速度CCDは,画素内に斜行直線CCDメモリ を配置したことが特徴で,これに信号電荷を一時的に 保存することにより超高速度で撮像することができ る[14], [15].図1に裏面照射型超高速度CCDの表面 側平面模式図を示す.裏面照射型超高速度CCDは, 電荷収集ゲート1,電荷収集ゲート2,オーバフロー ドレーンゲート,ドレーン,CCDメモリ,合流部,上 書きゲート,読出し用VCCD,HCCD,アンプから構 成される.裏面側にある光電変換部で発生した電荷は, 電荷収集ゲート1に集まる.電荷収集ゲート2では, CCDメモリへつながる経路とオーバフロードレーン 図 1 素子の表面側平面模式図Fig. 1 Plane schematic structure of the front side of the device. ゲートを経てドレーンへつながる経路に分かれる.電 荷収集ゲート2からドレーンへつながる経路があるの で,電子シャッター機能や余剰電荷排出機能が備わっ ている.CCDメモリの最終段は合流部に接続し,合 流部は上書きゲートを経てドレーンへつながる経路と, 読出し用垂直転送路に分かれる.CCDメモリの最終 段からドレーンへつながる経路があるので,古い信号 電荷を順次ドレーンへ排出することで,上書き動作が 可能である.信号電荷をCCDメモリへ全画素並列に 1段転送することで1枚の撮像が完了するため,超高 速度で撮像ができる.同様の動作で2枚目以降も連続 してすぐに撮像することができる.被写体の一瞬の現 象からタイミング信号を得てCCDメモリの転送を止 めると,CCDメモリにその一瞬の現象の信号電荷が 保存される.撮像の後,CCDメモリから素子外部の メモリへ信号電荷を読み出し,画像を再構成すること により,超高速度撮像した映像が得られる. 2. 2 断面模式図 図2に,(a)表面照射型と(b)裏面照射型の断面模 式図を示す.表面照射型はn基板を用いている.フォ トゲートが光電変換部であり,CCDメモリと転送路 は金属の遮光膜で覆われている.これら素子機能の構 造は表面側に配置されている.裏面照射型はnp二重 エピタキシアル基板を用いている.p-エピタキシアル 層が光電変換部で,n-エピタキシアル層が電荷収集層 である.光吸収係数が小さい赤い光は裏面から深くま で浸入し,CCDメモリまで到達した光により発生し た信号電荷はノイズになる.このノイズを低減するた め,波長700 nmの赤い光がCCDメモリに到達する 割合は,裏面から入射した光の1/1000になるようnp 二重エピタキシアル基板の厚さを30 μmに設定した. また,裏面近傍で発生した信号電荷が電荷収集ゲート に集まるまでに,pウエル内のCCDメモリに迷入す るとノイズになる.このノイズを防ぐため,pウエル 図 2 (a)表面照射型と (b) 裏面照射型の断面模式図 Fig. 2 (a) FSI and (b) BSI cross-sectional structure.
が電位障壁となるようn-エピタキシアル層を挿入した. 裏面側から光が入射し発生した信号電荷を表面側に集 めることができるように,画素構造を設計した[13].
3.
裏面照射型超高速度
CCD
の特性向上
3. 1 感度の向上 裏面照射型構造では,素子の感度が改善する.その 要因としては3点挙げられる.第1に画素の光開口 率が100%になること,第2に光の利用率が改善する こと,第3に光電変換・電荷蓄積動作の時間開口率が 100%にできることである.本節では,三つの要因に ついて個別に説明する. 3. 1. 1 光 開 口 率 光開口率の設計において必要なことは2点挙げられ る.第1に光電変換部で発生した信号電荷が全て表面 側電荷収集ゲートに集まること,第2に画素間で信号 電荷が分離されることである.図3に,1画素の半分 の断面電位分布図と電荷移動経路の計算結果の一例を 示す.図3の左端が1画素の中央の位置で,右端が 画素間の境界である.左端と右端の境界条件は鏡面に なっており,図3の計算結果が左端と右端において鏡 面で繰り返される.等電位線が密に表示されている領 域は空乏化している.電荷収集層では,横方向の電界 図 3 1画素の半分の断面電位分布図と電荷移動経路の計 算結果の一例Fig. 3 One of the calculated example of cross-sectional potential profile and electron path of half of the pixel.
強度が強くなるように設計した.計算結果では,画素 の端の裏面近傍で発生した信号電荷が,点線の経路を 経て,電荷集積部に集まることが示された.また,画 素の端を境に信号電荷が画素間で分離されることが示 された. 表1に光開口率の改善率を示す.光開口率は,表面 照射型は16%であったが,裏面照射型は100%になる. 画素サイズの違いを考慮に入れた光開口率の改善率は 5.39倍である. 3. 1. 2 光 利 用 率 図2 (a)の断面図に示す表面照射型では,電荷を高 速に転送するためのポリシリコンゲート電極が光電 変換部の上部に存在するので,波長の短い青い光は このゲート電極で約20%が減衰する.また,フォト ゲートの深さが約3 μmなので,波長の長い赤い光は 約50%が基板へ透過する.このため,光電変換効率が 低くなる波長がある.一方,図2 (b)の断面図に示す 裏面照射型では,光電変換部のpエピ層の裏面側にポ リシリコンゲート電極がなく,エピ層全体で30 μmと 十分に厚く設計した.したがって,青い光の減衰が少 なく,深い位置で発生した電子もほとんど全て集める ことができるため,青い光も赤い光も全波長にわたっ て変換効率が高い.図4に相対的分光感度特性の測定 結果を示す.CCD出力電圧,撮像速度と時間開口率, 画素面積と光開口率,光源の光強度から計算した単位 ワット秒当りのCCD出力電圧を縦軸にし,ピーク値 で規格化した.測定はIRカットフィルタ付で行った. その結果,波長の短い青い光と波長の長い赤い光で, 裏面照射型のCCD出力電圧が改善している.アンプ の変換ゲインが一定なら,光電変換部の感度である単 位ワット当りの電流量は図4と比例する.可視光全域 にわたるCCD出力電圧の積分値同士を比較すると, 光利用率の改善率は1.24倍である. 3. 1. 3 時間開口率 ここでは,1フレームの時間に対する光電変換・電 表 1 光開口率の改善率
図 4 相対的分光感度特性の比較 Fig. 4 Comparison of relative spectral responses.
図 5 (a)断面模式図と (b) A-Aの断面電位模式図 Fig. 5 (a) Cross-sectional structure and (b) cross-sectional
potential profile of A-Aline.
荷蓄積動作の時間の割合を時間開口率と定義する.時 間開口率の設計において必要なことは2点挙げられ る.第1に時間開口率100%で発生した信号電荷を集 めること,第2にフレーム間で信号電荷が分離される ことである.図5 (a)に信号電荷を転送する方向の断 面模式図を示す.裏面がBSである.表面側に電荷収 集ゲートG1とG2,及びCCDメモリ電極M1から M4が並んでいる.図5 (b)に,図5 (a)中A-A断面 の断面電位模式図を示す.駆動波形の1周期を4分の 1周期ずつ区切り,これを期間T1からT4とし,それ ぞれの期間における断面電位模式図である.裏面BS と電荷収集ゲートG1間は固定電圧を印加しており, この間は空乏化している.期間T1で発生した信号電 荷はG1に集まる.期間T2で発生した信号電荷は, 期間T1に発生した信号電荷とともに,G1に集まる. 期間T3に発生した信号電荷は,期間T1とT2に発 生した信号電荷とともに,G2に集まる.期間T4に 発生した信号電荷は,期間T1からT3に発生した信 号電荷とともに,M1に集まる.このため,時間開口 率100%で動作できる.また,期間T1とT2におい て電荷収集ゲートG2をLowにすることで,フレー ム間で信号電荷が分離される. 表面照射型では光電変換部がフォトゲートであり, フォトゲートの電極が転送部の一部を兼ねているので, 光電変換部と転送部が空間的に同じ位置にあった.こ のため,電荷蓄積動作と転送動作を交互に行う必要が あり,時間開口率は50%であった.裏面照射型では, 光電変換部が裏面と電荷収集ゲートの間にあり,転 送部は電荷収集ゲートG2及びCCDメモリM1から M4であるので,光電変換部と転送部は空間的に分離 されている.このため,電荷蓄積動作と転送動作を同 時に並列に行うことができ,時間開口率100%で動作 できる.表面照射型に対して裏面照射型の時間開口率 の改善率は2倍である. 光開口率5.39倍,光利用率1.24倍,時間開口率2 倍により,感度13.4倍改善と見積もることができる. 3. 2 最高撮像速度の向上 裏面照射型構造では,超高速度CCDの最高撮像速 度が向上する.最高撮像速度の見積りにおいては,光 電変換部で信号電荷が集まるために必要な時間と,電 荷を転送するためにCCDメモリ電極に印加する駆動 電圧波形が立ち上がる時間とを比較する必要がある. 表面照射型においては,CCDメモリ電極に印加する 駆動電圧波形が立ち上がる時間の方が十分長いので, 波形なまり量を計算することで最高撮像速度を予測す ることができた[4], [5].裏面照射型においても両方の 時間について見積もった. 3. 2. 1 電荷の移動時間 図6に画素の三次元電位分布と電荷移動経路シミュ レーション結果の深さ0.1 μmにおける平面電位図を 示す.図6中黒丸が深さ29.5 μmにおける電荷の発 生位置を,白丸が深さ0 μmにおける電荷の到達位置 を,黒丸から白丸までの点線が移動経路を示してい る.各電極や拡散層には撮像時の電圧が印加されてい る.経路の途中の時間は,黒丸で電荷が発生してから の移動時間を示している.裏面近傍で発生した電荷が 電荷収集層に到達するまでの時間は0.5ナノ秒であり, 波長700 nmの赤色光でも電荷収集層までに入射光の 99.5%が光電変換される.したがって,裏面からの深 さの違いによる青色光の光電子と赤色光の光電子の移 動時間差はほとんど0.5ナノ秒以内であるので,1億
図 6 画素の三次元電位分布と電荷移動経路シミュレー ションの平面電位図
Fig. 6 Calculated plane potential profile and elec-tron path of three-dimensional simulation of the pixel.
図 7 (a)駆動電圧波形模式図と (b) 断面電位模式図 Fig. 7 (a) Schematic voltage waveform and (b)
cross-sectional potential profile.
枚/秒で駆動しても混色はほとんどない.電荷の移動 時間は,電荷の発生位置や電荷収集ゲートの電圧に依 存して変化するが,最大でも10ナノ秒であった.し たがって,光電変換部での電荷の移動時間により制限 される最高撮像速度は1億枚/秒以上であると見積も ることができる. 3. 2. 2 駆動電圧波形の立上り時間 図7 (a)に4相駆動CCDメモリφ1からφ4の駆動 電圧波形模式図を示す.実線は波形なまりがない場合 で,点線は波形なまりがある場合である.ある時刻T における電圧値を印加したCCDメモリの断面電位模 図 8 画素部の 8 分の 1 の準等価回路模式図 Fig. 8 Quasi-equivalent circuit model of one eighth
of pixel area. 式図を図7 (b)に示す.波形なまりがない場合では4 相駆動CCDメモリの2相分の電荷を転送しているが, 波形なまりがある場合では4相駆動CCDメモリの2 相分の電荷を転送できない.このため,波形なまりが あると電荷転送容量が減る.撮像速度が速いほど波形 なまりが大きく,電荷転送容量が減る.信号電荷を転 送できる速度の上限が,波形なまりにより制限される 最高撮像速度である. 波形なまりにより制限される最高撮像速度を向上さ せるためには,撮像速度が速い場合の波形なまりを低 減すれば良い.対策として,画素部を分割して駆動す ること,及び配線抵抗を低減することが有効であるこ とを示した[4], [5].裏面照射型では光電変換部が裏面 側にあるので,表面照射型で遮光膜であった金属層を 配線として使用することができる.この配線は,フォ トゲートの開口部を避ける必要がなく,自由に配置す ることができる.この設計は,素子の作製工程が同じ で,レイアウト上の工夫だけで行うことができる.こ の結果,裏面照射型では,更なる配線抵抗の低減が実 現できる. 図8に画素部の8分の1の準等価回路模式図を示 す.8分割駆動の1ブロックである.画素の駆動系電 極は10種類あるが,このうちCCDメモリ電極の準 等価回路図を示す.準等価回路は,パルス電源とドラ イバと素子1ブロックから構成される.素子1ブロッ クは,周囲配線の抵抗とインダクタンス,内部配線の 抵抗とインダクタンス,画素配線の抵抗とインダクタ ンス,及び電極容量から構成される.1ブロックの画
図 9 4分の 1 周期時電圧の撮像速度依存性の計算結果 Fig. 9 Calculated voltage at a quarter period dependent
on frame rate. 素数は横380画素,縦10画素×10列で100画素で ある.裏面照射型では周囲配線と内部配線を太い金属 層で配線しているので,周囲配線抵抗と内部配線抵抗 を非常に低減できる. ここで,波形なまり量の指標として,VH=12 V, VL=0 V,デュレーション50%の方形波を入力した場 合の4分の1周期時での素子内部での電圧値を,4分 の1周期時電圧と定義する.4分の1周期時電圧は, 波形が立ち上がるときの指標であるので,波形なまり がないまたは十分小さいとき12 Vを示し,波形なま りが大きいとき6 Vに漸近する.そのため,12 Vから 6 Vの間の値を示す. シミュレーションでは,内部配線50画素ごとに1 個電圧計を設置し,素子内部での電圧波形を計算した. 素子内部の最も電圧波形なまりが大きいノードでの電 荷転送容量が飽和信号レベルを制限するので,素子内 部で4分の1周期時電圧が最も低いノードの値を算出 した. 図9に4分の1周期時電圧の撮像速度依存性の計算 結果を示す.4分の1周期時電圧が12 Vのとき,電荷 転送容量は1万枚/秒の値と同じである.4分の1周 期時電圧が下がると電荷転送容量が減るが撮像するこ とはできる.6 Vの時信号電荷が運べないので映像が 出ない.CCDメモリで信号電荷を転送することがで きる撮像速度が,波形なまりにより制限される最高撮 像速度である.裏面照射型V18では,波形なまりによ り制限される最高撮像速度は1000万枚/秒以上と見積 図 10 パッケージに実装された素子の写真 Fig. 10 Picture of the device on the package.
もることができる. 検討の結果,裏面照射型V18においても表面照射 型と同じで,最高撮像速度は波形なまりにより制限さ れることが示されたので,最高撮像速度は1000万枚/ 秒以上と見積もることができる.
4.
裏面照射型超高速度
CCD
の試作
前章の設計を行った結果を踏まえて,31万画素裏面 照射型超高速度CCD V18の設計を新たに行い,素子 を試作した.露光時にマスクパターンを隣り合わせで 転写するスティッチング法により,従来の2倍の面積 の素子を作製することができた. 図10にパッケージに実装された素子の写真を示す. 素子の裏側が紙面表側から見えている.画素部の対角 長は40.4 mmである.写真はモノクロ素子であり,評 価実験はモノクロ素子で行った.5.
裏面照射型超高速度
CCD
の評価
5. 1 感 度 図11 (a)に表面照射型からの撮像例,(b)に裏面照 射型からの撮像例を示す.撮像条件は,像面照度200 ルクス,光学レンズ絞りF2,撮像速度5000枚/秒で 同じであり,カメラのゲインも同じに設定した.その 結果,裏面照射型からは表面照射型に比べ,明るい映 像が得られた. 図12に撮像面照度とCCD出力電圧の関係の測定 結果を示す.黒丸が表面照射型,白丸が裏面照射型で ある.撮像速度は1000枚/秒である.光源の色温度は 2856 Kである.グラフの傾きと撮像速度から計算し た素子の感度は,表面照射型が19.8 V/lux·sであり, 裏面照射型が252 V/lux·sであった.素子の感度の比図 11 (a)表面照射型と (b) 裏面照射型からの撮像例 Fig. 11 (a) Captured image from FSI and (b) BSI.
図 12 撮像面照度と CCD 出力電圧の関係の測定結果 Fig. 12 Measured CCD output voltage dependent on
illumination on surface of the sensor.
は12.7倍が得られた.感度の3要素を個別に検討し て見積もった値との違いは,光源の分光分布特性の影 響と考えられる. 5. 2 解 像 度 図13に解像度チャートの撮像例を示す.出力映像 の画素数は,720 (H)×410 (V)である.ガンマ,ニー, ホワイトクリップ等,補正はオフにして撮像した. 図14 (a)に中央部くさび形の拡大図を示し,図14 (b) に,図14 (a)のA-A線における映像信号レベルと画 素位置の関係を示す.くさび形の明暗のパターンと画 素の周期が一致している垂直解像度は410TV本が得 られた.画素間で信号電荷が分離されていることが示 された. 5. 3 最高撮像速度 図15に1670万枚/秒での撮像例を示す.被写体は 図 13 解像度チャートの撮像例 Fig. 13 Captured image of resolution chart.
図 14 (a)くさび形の拡大図と (b) くさび形の信号レベ ルと画素位置の関係
Fig. 14 (a) Enlarged picture of wedge shape and (b) signal level versus the pixel position of wedge shape.
図 15 1670万枚/秒での撮像例
Fig. 15 Captured image at 16.7 Mfps frame rate.
グレースケールテストチャートであり,照明はスト ロボである.ストロボ反射光のハレーションにおい て,CCD出力が飽和している.グレースケールテスト チャートの階調に応じた明るさの階調が得られている. 図16に1670万枚/秒での駆動電圧波形を示す.電 荷収集ゲート2(G2)とCCDメモリ1(M1)が隣り 合う電極である.M1の位相が遅れており,1周期60 ナノ秒で電圧が印加されていることが分かる.
図 16 1670万枚/秒での駆動電圧波形の測定値 Fig. 16 Measured driving voltage waveform at
16.7 Mfps frame rate.
図 17 飽和信号レベルの撮像速度依存性の測定結果 Fig. 17 Measured saturation signal level dependent
on frame rate. 図17に飽和信号レベルの撮像速度依存性の測定結 果を示す.測定は室温で行った.各撮像速度の飽和信 号レベルは,1万枚/秒の飽和信号レベル値で規格化し た.比較のため,表面照射型V4とV6の測定結果も 重ねて示す.表面照射型V4では,15万枚/秒程度か ら下がり始め,100万枚/秒で20%であった.表面照 射型V6では,40万枚/秒程度から下がり始め,100 万枚/秒で52%,200万枚/秒で13%であった.今回 開発した裏面照射型V18では,1670万枚/秒でも飽 和信号レベル100%を維持しており,2500万枚/秒で 0%であった.したがって,最高撮像速度1670万枚/ 秒を確認した. 飽和信号レベルが0%で映像が得られない理由は, 撮像速度が速い場合にCCDメモリの駆動電圧波形が なまり,電荷転送容量が低下し,電荷を転送できない からである.表面照射型V4とV6の場合は,飽和信 号レベルの撮像速度依存性が4分の1周期時電圧の撮 像速度依存性と良く重なっていた.裏面照射型V18で 図 18 撮 像 例 Fig. 18 Captured image.
は1000万枚/秒程度の撮像速度で誤差がある.計算で は,抵抗,容量,及びインダクタンスは,一または二 次元的計算により抽出した値を用いた.しかし,配線 抵抗を低減するために複雑な配線構造にした結果,抽 出した値または準等価回路の精度が十分ではないこと が原因として考えられる.対策として,電磁界解析な どの三次元的解析方法を用いることにより,より精度 が高い抽出ができると考えられる. 超高速度CCDは,CCDメモリに信号電荷を上書き しながらトリガ信号の入力を待つ待機の動作と,CCD メモリに記録された信号電荷を読み出す動作がある. 待機動作時は設定した撮像速度で駆動するので,超高 速度撮像の待機動作時は消費電力が大きくなる.対策 として,被写体とカメラに与えるトリガ信号のディレ イ量を適切に設定することで,待機動作時間を極力減 らすことができる.消費電力が大きい時間は一瞬であ れば実用上問題にならないので,運用時の工夫で対処 できる. 裏面照射型V18では,周囲配線抵抗と内部配線抵抗 を低減したので,駆動時に瞬時電流が大きくなる.し かし,ドライバの最大出力電流または電源用DC-DC コンバータの供給電流量が制限になっているので,こ れを超えることはなく,実用上問題にならない. ドライバは高性能な市販の高速駆動用ドライバを選 択して用いており,出力抵抗が4 Ωで最大出力電流が 3.5 Aである.一方,素子1ブロックの準等価回路の 入力抵抗はこれと同じオーダである.したがって,ド ライバの出力抵抗により撮像速度特性が悪くなる関係 になっているが,これを避けることはできない. 5. 4 撮 像 例 図18に高速度撮像の撮像例を示す.被写体は水風船
表 2 裏面照射型超高速度 CCD V18 の仕様 Table 2 Specifications of BSI ultrahigh-speed CCD
V18. で,撮像条件は,像面照度12,000ルクス,光学レンズ 絞りF4と1/2,撮像速度2万枚/秒である.図18 (a) から(d)は,連続画像10枚に1枚を抜き出しており, コマ間隔0.5ミリ秒,露光時間0.05ミリ秒の画像で ある. 5. 5 仕 様 表2に裏面照射型超高速度CCD V18の仕様を示 す.画素数は約31万画素である.裏面照射型により 感度252 V/lux·sと最高撮像速度1670万枚/秒を実現 した. 図19に高速度撮像素子の画素数と撮像速度の関係 を示す.塗られたマークが表面照射型,白抜きのマー クが裏面照射型である.高速度撮像素子の性能指標と して,画素数×撮像速度の値が頻繁に使用される.こ のグラフでは右上が高性能を示す.連続読出し型は撮 像速度を速く設定すると有効画素数が少なくなる特徴 がある.このため,グラフの左上と右下をつないだ線 が同一素子の性能を示す.画素周辺記録型は有効画素 数が同じで撮像速度が最高の値をマークで示す.連続 読出し型に比べ,画素周辺記録型は約500倍高性能で ある.画素周辺記録型の中でも今回開発した裏面照射 型超高速度CCD V18は,投稿時において最も高性能 である. 図 19 高速度撮像素子の画素数と撮像速度の関係 Fig. 19 Relationship between pixel counts and frame
rate in high-speed imaging devices.
6.
む す び
超高速度CCDの高感度化及び高速度化のため,31 万画素裏面照射型超高速度CCD V18を新たに設計し 素子を試作した.駆動評価実験の結果,表面照射型に 比べ感度12.7倍,垂直解像度410TV本で画素分離さ れており,最高撮像速度1670万枚/秒を実現したこと を確認した. 文 献[1] H. Ohtake, T. Hayashida, K. Kitamura, T. Arai, J. Yonai, K. Tanioka, H. Maruyama, T.G. Etoh, D. Poggemann, A. Ruckelshausen, H. van Kuijk, and J.T. Bosiers, “Development of a 300,000-pixel ultrahigh-speed, high-sensitivity CCD,” Proc. SPIE Photonics West, vol.6119, 61190E-1, San Jose, CA, 2006.
[2] K. Kitamura, T. Arai, J. Yonai, T. Hayashida, H. Ohtake, T. Kurita, K. Tanioka, H. Maruyama, J. Namiki, T. Yanagi, T. Yoshida, H. van Kuijk, J.T. Bosiers, and T.G. Etoh, “Ultraspeed, high-sensitivity color camera with 300,000-pixel single CCD,” Proc. SPIE 27th Int. Congress High-Speed Photography Photonics, vol.6279, 62791L-1, Xi’an, 2007.
[3] K. Kitamura, T. Arai, J. Yonai, T. Hayashida, T. Kurita, K. Tanioka, H. Maruyama, Y. Mita, J. Namiki, T. Yanagi, T. Yoshida, H. van Kuijk, J.T. Bosiers, and T.G. Etoh, “An ultraspeed, high-sensitivity, portable CCD color camera,” SMPTE Motion Imag. J., vol.117, pp.48–53, March 2008. [4] T. Arai, T. Hayashida, K. Kitamura, J. Yonai, H.
“Development of ultrahigh-speed CCD with maxi-mum frame rate of 2 million frames per second,” Proc. SPIE Photonics West, vol.7934, 79340J-1, San Francisco, CA, 2011. [5] 新井俊希,北村和也,米内 淳,大竹 浩,林田哲哉,丸山 裕孝,バン・クイク・ハリー,江藤剛治,“200 万枚/秒 30 万画素超高速度 CCD の開発,”信学論(C),vol.J94-C, no.9, pp.252–260, Sept. 2011. [6] 新井俊希,米内 淳,北村和也,大竹 浩,林田哲哉,並木 純,吉田哲男,“ダイナミックレンジ補償機能を付加した 200万枚/秒 30 万画素単板式放送用超高速度カラーカメ ラ,”映情学誌,vol.66, no.7, pp.J221–J226, July 2012. [7] T. Arai, K. Kitamura, J. Yonai, H. Ohtake, T. Hayashida, H. van Kuijk, and T.G. Etoh, “A 300-kpixel ultrahigh-speed charge-coupled device with a dynamic range of 48.6 dB at 1 million frames per second,” IEEE Trans. Electron Devices, vol.59, no.4, pp.1107–1113, April 2012.
[8] T.G. Etoh, D.H. Nguyen, S.V.T. Dao, C.L. Vo, M. Tanaka, K. Takehara, T. Okinaka, H. van Kuijk, W. Klaassens, J.T. Bosiers, M. Lesser, D. Ouellette, H. Maruyama, T. Hayashida, and T. Arai, “A 16 Mfps 165kpixel backside-illuminated CCD,” 2011 IEEE Int. Solid-State Circuits Conf. Dig. Tech. Papers, pp.406–408, San Francisco, CA, 2011.
[9] Y. Tochigi, K. Hanzawa, Y. Kato, R. Kuroda, H. Mutoh, R. Hirose, H. Tominaga, K. Takubo, Y. Kondo, S. Sugawa, “A global-shutter CMOS image sensor with readout speed of 1Tpixel/s burst and 780Mpixel/s continuous,” 2012 IEEE Int. Solid-State Circuits Conf. Dig. Tech. Papers, pp.382–384, San Francisco, CA, 2012.
[10] T.G. Etoh, N. Ohtsuka, T. Arai, H. Mutoh, D. Poggemann, and A. Ruckelshausen, “Design of the PC-ISIS: photon-counting in-situ storage image sensor,” Proc. 2005 IEEE Workshop on Charge-Coupled Devices and Advanced Image Sensors, p.113, Karuizawa, 2005.
[11] T.G. Etoh, T. Hayashida, H. Maruyama, T. Arai, N. Uchiyama, and T. Sakamoto, “Back-side illuminated image sensors manufactured with gradated double epitaxial layers: an application to a speed high-sensitivity image sensor,” Proc. 2009 International Image Sensor Workshop, Session 06, Bergen, 2009. [12] C.V. Le, T.G. Etoh, H.D. Nguyen, V.T.S. Dao, H.
Soya, M. Lesser, D. Ouellette, H. van Kuijk, J.T. Bosiers, and G. Ingram, “A backside-illuminated im-age sensor with 200,000 pixels operating at 250,000 frames per second,” IEEE Trans. Electron Devices, vol.56, no.11, pp.2556–2562, Nov. 2009.
[13] 新井俊希,林田哲哉,北村和也,米内 淳,丸山裕孝,大竹 浩,大塚 直,ボ・レ・クオン,江藤剛治,バン・クイク・ ハリー,“裏面照射型超高速度 CCD の設計,”信学論(C), vol.J94-C, no.6, pp.147–154, June 2011.
[14] T.G. Etoh, D. Poggemann, A. Ruckelshausen, A.
Theuwissen, G. Kreider, H.-O. Folkerts, H. Mutoh, Y. Kondo, H. Maruno, K. Takubo, H. Soya, K. Takehara, T. Okinaka, Y. Takano, T. Reisinger, and C. Lohmann, “A CCD image sensor of 1Mframes/s for continuous image capturing of > 100 frames,”
2002 IEEE Int. Solid-State Circuits Conf. Dig. Tech. Papers, pp.46–47, San Francisco, CA, 2002. [15] T.G. Etoh, D. Poggemann, G. Kreider, H. Mutoh,
A.J.P. Theuwissen, A. Ruckelshausen, Y. Kondo, H. Maruno, K. Takubo, H. Soya, K. Takehara, T. Okinaka, and Y. Takano, “An image sensor which captures 100 consecutive frames at 1,000,000 frames/s,” IEEE Trans. Electron Devices, vol.50, no.1, pp.144–151, Jan. 2003. (平成 24 年 10 月 30 日受付,12 月 19 日再受付, 25年 6 月 13 日公開) 新井 俊希 (正員) 1997東工大・電気電子卒.1999 同大大 学院修士課程了.2002 同大学院博士課程 了.2004 NHK 入局.同年より同局放送 技術研究所に勤務し,現在に至る.固体 撮像デバイスの研究に従事.博士(工学). IEEE,映像情報メディア学会各会員. 米内 淳 1995電通大・電子物性卒,1997 同大大 学院修士課程了.同年 NHK 入局.同局放 送技術研究所,熊本放送局,放送技術研究 所に勤務し,現在に至る.液晶デバイス, 固体撮像デバイスの研究に従事.本会第 57 回論文賞受賞.応用物理学会,映像情報メ ディア学会各会員. 林田 哲哉 1992九大・工・電子卒.1994 同大大学 院情報工学修士課程了.同年 NHK 入局. 福岡放送局にて送出技術に従事.1998 よ り同局放送技術研究所に勤務,2009 より NHKエンジニアリングサービスに出向, 2012より同局放送技術研究所に勤務し,現 在に至る.固体撮像デバイスの研究に従事.映像情報メディア 学会会員.
大竹 浩 (正員) 1982東京工学院専門学校テレビ放送工 学科卒.同年 NHK 入局.同年より同局放 送技術研究所に勤務し,現在に至る.固体 撮像デバイスの研究に従事.応用物理学会, 映像情報メディア学会各会員.
Harry van Kuijk
Harry van Kuijk received an Inge-nieur Diploma degree in electronics from the Eindhoven Technical College, Eindhoven, The Netherlands, in 1983. In 1983, he joined the Microcircuits Group, Philips Research Laboratories, where he worked on simulation, evaluation, and design of CCD image sensors. In 1991, he joined Flat Panel Display Company before returning to the imaging department of Philips Research Laboratories, Eindhoven, in 1999. In April 2002, this department transferred to DALSA, be-coming DALSA Professional Imaging. Later, in 2010, the department transferred to Teledyne, becoming Teledyne DALSA Professional Imaging, Eindhoven, where he is cur-rently a project leader on image-sensor development for digital still cameras and other applications.
江藤 剛治 1968阪大・工・構築卒.1973 同大大学院 博士課程単位取得退学,近畿大学理工学部 土木工学科講師.1983 近畿大学理工学部土 木工学科教授.2012 立命館大学客員教授. 都市の水資源問題,流れの可視化,高速ビ デオカメラの開発に従事.1991 に撮像速度 4,500枚/秒の高速ビデオカメラ(KODAK HS4540),2001 に 100 万枚/秒の超高速ビデオカメラ(Shimadzu HPV1)を 開発.2006 年 SPIE Harold Edgerton Award 受賞.工博.