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乳幼児身体発育調査・学校保健統計調査

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Academic year: 2021

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(1)

<総説>

乳幼児身体発育調査・学校保健統計調査

加藤則子

1)

,瀧本秀美

2, 3)

,吉田穂波

2)

,横山徹爾

2) 1) 国立保健医療科学院地域保健システム研究分野 2) 国立保健医療科学院生涯健康研究部      3) 国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部    

Survey on growth of infants and preschool children, school health statistics

Noriko K

ATO1)

,Hidemi T

AKIMOTO2, 3)

,Honami Y

OSHIDA2)

,Tetsuji Y

OKOYAMA2) 1)

Area on Community Health System, National Institute of Public Health      2)Department of Health Promotion, National Institute of Public Health       3)

Department of Nutritional Epidemiology, National Institute of Health and Nutrition

抄録  日本の乳幼児身体発育値は,1940年から半世紀以上にわたり10年間隔でモニターされていることが 大きな特徴である.調査期間1か月間で収集される横断データであるためデータサイズ等の限界があ るものの,昭和55年調査以降の値は,新生児期の細かい発育状況について,出生後の生理的な体重減 少も含めて,世界に類を見ない詳しいものとなっている.  平成22年乳幼児身体発育調査は2011年10月に調査結果が公表となった平滑化にはLMS法を用い,3 つのパラメーターをそれぞれ3次スプライン関数で平滑化し,発育曲線はすべて年齢から計算される 関数となっている.体重身長及び胸囲に関して,前回(平成12年)にくらべ,男子,女子ともに全般 にやや減少している.頭囲は,前回と比べ,全般にほとんど差がみられない.平成22年と12年の出生 時の平均体重の差のうちどのくらいの割合が,妊娠期間等の短縮で説明できるかを検討するため,平 成22年と平成12年の出生時の平均体重の実際の差と,仮に,妊娠期間等の分布が両調査年で変わらな いとして調整した場合の出生時の平均体重の差を比較した.この結果,男子では実際の差は−0.040kg であったが,妊娠期間で調整後の差は−0.026gとなり,減少の約3.5割が妊娠期間の短縮によって説明 できることが分かった.運動・言語機能については,「首のすわり」を除いて10年前よりやや遅い傾 向を示しているが,禁煙の推移の状況に必ずしも明確な意味づけができない.平成22年では平成12年 におけるよりも,人工栄養の割合が減少し,母乳栄養の割合が増加している.母乳割合の増加の度合 いは,月齢が増えるほど大きくなっていて,母乳栄養がより継続しやすくなっていることが示唆され る.妊娠中の飲酒・喫煙とも平成12年から平成22年にかけては割合が半減している.学校保健統計調 査は毎年公表されているために,学童等の体格の年次推移がより正確にわかる.2000年には,年次的 な増加が不変となったことが明らかになっている. キーワード:発育基準,LMS法,新生児体重減少,乳幼児,学校保健統計 連絡先:加藤則子 〒351-0197 埼玉県和光市南2-3-6

2-3-6, Minami, Wako, Saitama, 351-0197, Japan. T e l: 048-458-6191

E-mail: [email protected] [平成26年2月3日受理]

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I.

わが国の乳幼児身体発育値

海外での主要な身体発育値としては,2006年に WHO が公表したもの(http://www.who.int/childgrowth/en/) や,2000年に米国CDCが公表したもの(http://www.cdc. gov/growthcharts/)が良く知られている.後者は1977 年版を改定したものである. 日本の乳幼児身体発育値は,半世紀以上にわたり10年 間隔でモニターされていることが大きな特徴である.昭 和5年に東京近郊の健康な子供を対象とした調査に基づ く「栗山・吉永値(東大小児科値)」と呼ばれるもの [1], 昭和15年 [2] と昭和25年 [3] に文部省の研究費により調 査され国立公衆衛生院(当時)が中心となってまとめた 基準値(それぞれ「斎藤・清水値」,「斎藤・船川値」と 呼ばれる)に引き続き,昭和35年からは厚生(労働)省 による行政調査が10年おきに行われており [4-8],それ は平成22年調査で通算6回目を迎える.調査期間1か月 間で収集される横断データであるためデータサイズ等の 限界があるものの,昭和55年調査以降の値は,新生児期 の細かい発育状況について,出生後の生理的な体重減少 も含めて,世界に類を見ない詳しいものとなっている. 平成22年乳幼児身体発育調査は学識経験者の協力を得 て,厚生労働省雇用均等・児童家庭局が行った.企画・ 評価にあたっては,厚生労働省雇用均等・児童家庭局に 乳幼児身体発育調査企画・評価研究会(表1)を設置す Abstract

 Japanese growth references for infants and preschool children have been updated every ten years since 1940. In spite of the limitation in sample size due to the short survey period, the weight reference in early infancy precisely shows the neonatal weight loss, which is rarely seen internationally. The results of the 2010 growth survey were announced in October 2011. Growth data was calculated by the LMS method, where three parameters were smoothed by cubic spline function. So, all of the growth curves were shown by the function of the age of children. While weight, length/height and chest circumference were smaller compared to those of 2000, head circumference was almost the same. To clarify the contribution of shortened gestational age within the decrease of birth weight from 2000, birth weight was adjusted for the gestational age in 2000. Thirty-five percent of birth weight decrease over ten years was explained by the decrease in gestational age. In psycho-motor development, all items except for head control were slower than ten years ago, the reason for which was not identified. The proportion of breast feeding has increased over the last ten years, especially in terms of duration. Smoking and drinking during pregnancy declined by half during the same period. School health statistics, which are updated every year, show an end to the upward secular trend in 2000.

keywords: growth reference, LMS method, neonatal weight loss, preschool children, school health statistics

(accepted for publication, 3rd February 2014)

表1 乳幼児身体発育調査企画・評価研究会構成員名簿 所 属 氏 名   昭和大学医学部小児科学 教授 板橋 家頭夫 社団法人日本小児保健協会 会長 衞藤   隆 国立保健医療科学院 統括研究官 加藤 則子 帝京平成大学健康栄養学科 教授 児玉 浩子 東京都健康安全研究センター 所長 住友眞佐美 東邦大学医学部 名誉教授 多田  裕 東邦大学医療センター大森病院産婦人科 教授 田中 政信 済生会横浜市東部病院 顧問 月本 一郎 福岡市早良保健所長 南部由美子 東京女子医科大学産婦人科学教室 教授 松田 義雄 日本子ども家庭総合研究所 所長 柳澤 正義 国立保健医療科学院 生涯健康研究部長 横山 徹爾 青森県立保健大学健康科学部栄養学科 教授 吉池 信男

(3)

るとともに,統計学的解析や結果の評価等については, 平成23年度厚生労働科学研究費補助金「乳幼児身体発育 調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究 (研究代表者 横山徹爾)」(表2)の協力を得た. 2011年10月に調査結果が公表となった(http://www. mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001t3so.html)ので, その内容の一部を,若干の解説を加えながら紹介する.

II.

乳幼児身体発育調査の調査方法

調査は,一般調査と病院調査から成り立っている. 一般調査では,全国の乳幼児を対象として,平成17年 国勢調査区のうち層化無作為抽出した3,000地区内の調 査実施日において生後14日以上2歳未満の乳幼児及び, 3,000地区のうちから抽出した900地区内の2歳以上小学 校就学前の幼児が調査対象である.平成22年9月1日か ら30日までの期間中に,原則として乳幼児の一斉健診の 形式をとって実施する集団調査に基づいて行い7,652人 からのデータが集まった. 病院調査では,全国の産科を標榜し且つ病床を有する 病院のうち,平成22年医療施設基本ファイルから抽出し た150病院で出生し,平成22年9月中にいわゆる1か月 健診を受診した乳児を調査の対象とした.146病院から 4,774人のデータが集まった. 乳幼児を身体計測する場合の計測器具及び計測方法は, 調査の際に配布された「乳幼児身体発育調査必携」にも とづいた.身長計測において,2歳未満は仰臥位で測り, 2歳以上は立位で測った.時計測,頭囲は眉間を通り大 後頭結節を通る周囲とし,胸囲は左右の乳頭点を通り体 軸に垂直な平面において計測した.

III.

乳幼児身体発育値の作成

結果の集計は厚生労働省雇用均等・児童家庭局におい て行った.計測値に関して異常と考えられるものについ ては,個票に戻り再確認して異常値を除外した.調査対 象人数が限られていることによる偶然変動がみられたた め,検討の結果分布の上下0.01%にあたるはずれ値を除 いた上で,これらをLMS法 [9] により平滑化し,パーセ ンタイル曲線を求めた [10]. 発育値を表すのに用いられているパーセンタイル法は, 計測値の統計的分布の上で,小さいほうから数えて何% 目の値は,どれくらいかという見方をする統計的表示 法である.それぞれの計測項目については,3,10,25, 50,75,90及び97パーセンタイルの数値が性別に示され ているが,これらは,それぞれの計測値につき,小さい ほうから数えて3,10,25,50,75,90及び97%目の数 値に当たっている. LMS法においては,以下の3つのパラメーターによ り分布を表現する. L : 分布のゆがみを表す.L=1が上と下に対称な分 布であり,それより大きいと値が小さい方にすそ 野が広い分布である.それより小さいと値が大き い方にすそ野がなだらかな分布である. M : 分布の中央値を示す. S : 分布の上下へのばらつきの具合を表す. 発育値算出に当たっては,これらのL,M及びSの値 を年月齢区分別に求めた.区分は,生後2か月までは5 日ごと,2か月から2歳までは1か月ごと,2歳以上は 6か月ごととなっている. 年月齢区分ごとに算出されたL,M及びSの値をそれ ぞれ3次スプライン関数により平滑化した.3次スプラ インでは,いくつかの3次式を節点で滑らかに横につな げる.節点では双方の3次式に関して,一次微分係数と 2次微分係数が等しくなっている. 3次式で滑らかになったL,S及び Mの値から,任意の パーセンタイル値を求める式は以下の通りである. M(1−ZLS)1/L 表2 平成23年度厚生労働科学研究費補助金・成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業 「乳幼児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」 乳幼児身体発育調査結果の評価及び活用方法に関するワーキンググループメンバー 国立保健医療科学院生涯健康研究部長 横山 徹爾(研究代表者) 国立保健医療科学院統括研究官 加藤 則子(研究分担者) 国立保健医療科学院上席主任研究官 瀧本 秀美(研究分担者) 東邦大学医学部名誉教授 多田  裕(研究協力者) 日本小児内分泌学会理事長 横谷  進(研究協力者) 日本成長学会理事長 田中 敏章(研究協力者) 昭和大学医学部小児科学教授 板橋家頭夫(研究協力者) 東邦大学産婦人科教授 田中 政信(研究協力者) 東京女子医科大学産婦人科教授 松田 義雄(研究協力者) 山梨大学大学院医学工学総合研究部教授 山縣然太朗(研究協力者)

(4)

Zは標準正規分布で対応するパーセント点を与えるZ の値である.このようにして作成された発育値は滑らか な曲線となる. たとえば,生後5日齢∼6か月の体重(g)の3パー センタイルの曲線をx(年齢)による式で表すと,L,M 及びSは L=0.991051x3 −2.39516x2 +0.331977x+1.31741 M=15570.73x3 −28353.3x2 +20734.37x+2612.62 S=−0.04499x3 +0.139317x2 −0.14798x+0.150307 のようになり,これを組み合わせた M(1−1.88049LS)1/L が曲線を表す式となる.−1.88049は,3パーセントに 対する標準正規分布のZの値である. なお,体重に関しては,出生直後の体重減少を反映さ せるため,生後5日齢まで病院調査のデータをもとに一 日ごとの値を算出してある.5日齢までとしたのは,病 院調査における退院は日齢5日がピークであることから, 5日齢までが標準的な新生児の体重経過が示されると判 断されるためである.

IV.

公表された乳幼児身体発育値

体重,身長,胸囲,頭囲に関する各発育値を,男女別 に表3から表6(平成22年乳幼児身体発育調査の概況に ついてhttp://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001 t3so.html)および図1─1から図4─2(乳幼児身体発育 評価マニュアルhttp://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai /hatsuiku/)に示す. 体重及び身長に関して,平成2年からの推移を図5-1, 図5─2に示す.男子,女子ともに全般にやや減少して いることが分かる.図示しないが,胸囲も前回と比べ, 男子,女子ともに全般にやや減少している.頭囲は,前 回と比べ,全般にほとんど差がみられない. また,調査対象児の出生時の体重と身長も,平成12年 の調査に比べてわずかに減少している.今回の調査項目 は限られているので十分な検証はできないが,考えられ 文献11より 表4 乳幼児身体発育調査(一般調査)出生時の体重の平成12年と平成22年の差  性別,総数,調整値 文献11より 表3 乳幼児身体発育調査(一般調査)出生時の体重に関連する要因の平成12年と平成22年の差

(5)

る影響要因との関係を解析した結果,(妊娠期間,母親 の年齢,胎児数,母親の喫煙)による影響が示唆されて いる.関連する項目を用いて多変量解析を行った結果, 妊娠期間の短縮が出生体重減少に半分くらい影響してい ることが分かり,他の要因は妊娠期間に比べるとあまり 影響が強くないことが分かった. 図6─1,図6─2は,調査結果をもとに肥満度判定 (やせ及び肥満の評価)のために作成した身長体重曲線 である.これは,1歳以上の幼児について,身長に対す る体重の値を,身長の2次式(体重=a×身長2 +b×身 長 + c)によって表したものである.その際,個々の児 図1─1 平成22年調査 乳児(男子)身体発育曲線(身長, 体重) 図1─2 平成22年調査 幼児(男子)身体発育曲線(身長, 体重) 図2─1 平成22年調査 乳児(女子)身体発育曲線(身長, 体重) 図2─2 平成22年調査 幼児(女子)身体発育曲線(身長, 体重)

(6)

の体重の値と,身長の値を用いて2次式により算出され た体重の値との差の二乗が最小になるようにa,b及びcを 定めた.たとえば肥満度30%とは,このようにして算出 された標準的な曲線の値に1.3を乗じたものである. 小児の身体発育値に関しては,日本成長学会と日本小 児内分泌学会が合同で2000年の値を日本人小児の標準値 とすべきという議論をしている.この値と最新の発育値 との相互の関係については,平成24年3月厚生労働省か 図3─1 平成22年調査 乳幼児(男子)身体発育曲線(胸囲) 図3─2 平成22年調査 乳幼児(女子)身体発育曲線(胸囲) 図4─1 平成22年調査 乳幼児(男子)身体発育曲線(頭 囲) 図4─2 平成22年調査 乳幼児(女子)身体発育曲線(頭 囲)

(7)

ら出された乳幼児身体発育評価マニュアル http://www. niph.go.jp/soshiki/07shougai/hatsuiku/ に整理されて いる. 図5─1 乳幼児(男子,女子)体重及び身長の比較<乳児> 図5─2 乳幼児(男子,女子)体重及び身長の比較<幼児> 図6─1 幼児の身長体重曲線(男) 身長別の体重の値を2次曲線で近似した成績による 図6─2 幼児の身長体重曲線(女) 身長別の体重の値を2次曲線で近似した成績による

(8)

V.

平成1

2年乳幼児身体発育調査からの推移

平成22年乳幼児身体発育調査の結果,10年前の平成12 年の時より出生体重が減少していることが分かった.そ の原因について,平成23年度厚生労働科学研究費補助 金・成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「乳幼児身 体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関 する研究」(代表:横山徹爾)乳幼児身体発育調査結果 の評価及び活用方法に関するワーキンググループに よって,検討が行われた http://www.niph.go.jp/soshiki /07shougai/hatsuiku/index.files/wg-houkoku.pdf . 乳幼児身体発育調査は,国勢調査3000地区を対象とし た一般調査と150の病院を対象とした病院調査からなる が,ここでは,一般調査データをもとに解析した結果を 紹介する.平成22年と12年の調査結果を比較すると,出 生時の体重と関連する要因のうち,妊娠週数は短縮,身 長は増加,妊娠中喫煙は低下し,ふだんの母のBMI,初 産割合,胎児数には有意な変化はなかった.妊娠週数短 縮は出生時の体重の低下方向に,母の身長増加と妊娠中 喫煙減少はむしろ出生時の体重の増加方向に作用したと 考えられる(表3). 平成22年と12年の出生時の平均体重の差のうちどのく らいの割合が,妊娠期間等の短縮で説明できるかを検討 するため,平成22年と平成12年の出生時の平均体重の実 際の差と,仮に,妊娠期間等の分布が両調査年で変わら ないとして調整した場合の出生時の平均体重の差を比較 した(表4).この結果,男子では実際の差は−0.040kg であったが,妊娠期間で調整後の差は−0.026gとなった. これは,−0.040kgの約3.5割の−0.014kg(−0.040−(− 0.026)=−0.014),が妊娠期間の短縮によって説明でき ることを意味している.これに加えて,母の身長の分布 が変わっていないと仮定して調整すると差は−0.030kg となり妊娠期間のみで調整した場合とあまり大きな違いは なかった.さらに,母のBMI,妊娠中の体重増加,初産割 合,胎児数,妊娠中の喫煙本数の各要因を順に全て加えて 調整しても,妊娠期間のみで調整した場合と著しく変わる ことはなかった.同様に女子では,実際の差−0.049kgに 対して調整後の差は−0.026kgとなり,−0.049kgの約5 割の−0.023kg(−0.049−(−0.026)=−0.023)が妊娠期 間の短縮によって説明できることを意味している.さら に,他の要因を全て加えて調整しても,妊娠期間のみで 調整した場合と著しく変わることがなかったのは男子と 同様である.妊娠中の体重増加については,平成12年は 調査項目としていないため比較を行うことはできなかった. 検討の結果として,出生体重減少の約半分が妊娠期間 の短縮によるものであることが明らかとなったが,残り の約半分は乳幼児身体発育調査の調査項目にない要因で あることが示唆された.

VI.

乳幼児の運動・言語機能発達の年次推移

運動・言語機能については,「首のすわり」を除いて10 年前よりやや遅い傾向を示している(図7─1,7─2). 運動・言語機能については過去数回にわたり,判断の基 準が変わっている項目もあり,推移の状況に必ずしも明 確な意味づけができない.「首のすわり」は,昭和55年調 査のときははらばいで頭を持ちあげるかどうかをみたの に対し,平成2年以降は引きおこして首が付いてくるか を見ている.はいはいは,平成2年までは,腹部を床か ら離した場合できるとしていましたが,平成12年からは, 腹部を床につけたままのずり這いでもできるとしている. 図7─2 一般調査による幼児の言語機能通過率 図7─ 1 一般調査による乳幼児の運動機能通過率

(9)

VII. 乳児期の栄養と離乳の進行

平成22年では平成12年におけるよりも,人工栄養の割 合が減少し,母乳栄養の割合が増加している(表7). この十年間での増加が特に目立つ.母乳割合の増加の度 合いは,月齢が増えるほど大きくなっている.すなわち, 母乳栄養がより継続しやすくなっていることが示唆される. 母乳がより多く与えられるようになったことに関して は,授乳離乳の支援ガイド(平成19年)で適切な支援な されるようになり,気持ちに余裕を持って乳汁を与えら れるようになったことも影響していると考えられる. 離乳の開始月齢は,平成12年調査のときより遅くなっ ている傾向があり(表8),これも,改訂離乳の基本 (平成5年)にはじまり授乳離乳の支援ガイド(平成19 年)においても,乳児のペースを見ながらゆっくり始め て良いとされていることと関係があると思われる.

VIII. 妊娠中の喫煙と飲酒

妊娠中の喫煙は平成2年から調査されており,平成2 年から平成12年にかけて妊娠中の喫煙の割合が倍に増え たので,今後が心配されたが,平成12年から平成22年に かけては割合が半減し,平成2年の水準に戻った(表 9).妊娠中の喫煙が低出生体重児を多くすることにつ いてはたくさんの研究結果が出ているが,この調査でも 同様の結果が出ている. 妊娠中の飲酒につきましては,平成12年から調査項目 に入ったが,平成22年までの10年間で,飲酒率も半分に 減っている(表10).

IX.

学校保健統計について

学校保健統計調査は,統計法に基づく統計調査であり, 学校保健安全法に基づく学校健康診断の結果を調査する. 調査期間は学校健康診断の実施される期間と同一の,毎 年4月から6月までである.調査事項は児童等の発育状 況と健康状態である対象となる学校は文部科学省があら かじめ指定し,平成24年度調査の場合は7,755校であっ た.標本抽出は,発育状態については層化二段抽出法で 4.9%が抽出され出され,対象者数計695,600人,健康状 態については層化集落抽出法により23.4%が抽出され, 対象者数計3,342,952人であった. 学校保健統計調査報告には,身長・体重・座高の平均 と標準偏差を全国と,都鄙別,都道府県別などに分けて 報告してある.平成24年度の報告書には身長と体重の パーセンタイル値も公表された.学校保健統計はデータ 数が大きくさらに毎年発表されている貴重な資料である. 平成15年,厚生労働省雇用均等・児童家庭局による「食 を通じた子どもの健全育成のあり方に関する検討会」で, 小児肥満や思春期の不健康なやせの早期発見などのため, 乳幼児期から18歳までの連続した身体発育曲線が必要で あることが確認され,乳幼児身体発育調査と,学校保健 統計調査の結果をつなげ合わせた発育基準が作られた [11]. この発育基準は,平成24年4月に新しく公布された母子 健 康 手 帳 の 任 意 記 載 部 分 に 掲 載 さ れ て い る(図 8 ─ 1,8─2). 図8─1 成長曲線(男子) 図8─2 成長曲線(女子)

(10)

学校保健統計は毎年公表されているために,学童等の 体格の年次推移がより正確にわかる.2000年には,年次 的な増加が不変となったことが明らかになっている[12]. 学校健康診断における計測項目は長い間身長・体重・座 高・胸囲とされていたが,平成6年の学校保健法施行規 則改正において,胸囲の計測があまり活用されないこと からこれが中止された.平成26年の意見書(http://www. mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sports/013/toushin/ 1343304.htm)で,座高の計測も評価にあまり活用され ない観点から中止するのが望ましいと意見書がまとまり, 一方で,身長と体重については,基準曲線と照らし合わ せてより的確な評価ができるよう努めるべきであること が強調された.

文献

[1] 吉永澄江.本邦乳児発育標準値.児科雑誌.1929; 357:325-36. [2] 齋藤潔,清水三雄.本邦乳幼児の身体発育状況.児 科雑誌.1949;53(1): 1-6. [3] 栗山重信,齋藤潔,船川幡夫.本邦小児身体発育の 現 状(1950年 度).日 本 小 児 科 学 会 雑 誌.1953;57 (2):117-23. [4] 船川幡夫,林路彰,高石昌弘.昭和35年度わが国の 乳幼児の身体発育状況について.小児保健研究. 1962;21(1):19-29. [5] 林路彰,高石昌弘,戸田五七郎,藤村京子,大森世 都子.昭和45年におけるわが国乳幼児の身体発育状 態.小児保健研究.1972;31(2):60-9. [6] 林路彰.昭和55年乳幼児身体発育値について.小児 保健研究.1981;40(3):222-32. [7] 高石昌弘,加藤則子,大森世都子,大江秀夫.1990 (平成2)年乳幼児身体発育調査結果について.小 児保健研究.1991;50(6):671-80. [8] 加藤則子,奥野晃正,高石昌弘.平成12年乳幼児身 体発育調査結果について.小児保健研究.2001;60 (6):707-20.

[9] Cole TJ. The LMS method for constructing normalized growth standards. Eur J Clin Nutr. 1990;44(1):45-60.

[10] Kato N, Takimoto H, Yokoyama T, Yokoya S, Tanaka T, Tada H. Updated Japanese growth references for infants and preschool children, based on historical, ethnic and environmental characteristics. Acta Paediatrica Doi:10.1111/apa.12587. [11] 加藤則子,村田光範,河野美穂,谷口隆,大竹輝臣. 0歳から18歳までの身体発育基準について―「食を 通じた子どもの健全育成のあり方に関する検討会」 報告書―.小児保健研究.2004;63(3):345-8. [12] 橋本令子,村田光範.日本人小児の標準体格を検討 するための基礎的資料に関する研究.日本小児科学 会雑誌.2011;115(6):1055-66.

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