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就職活動の実態とその成功の規定要因 : 本学国際言語学部の事例

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就職活動の実態とその成功の規定要因 : 本学国際

言語学部の事例

著者

内田 智大

雑誌名

研究論集

85

ページ

99-116

発行年

2007-03

URL

http://doi.org/10.18956/00006234

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就職活動 の実態 とその成功 の規定要 因

本学国際言語学部の事例

田 智

要 旨   日本 経 済 は1992年 後 半 の バ ブ ル経 済 の 崩壊 に 伴 う長 期 の デ フ レ期 を脱 し、 よ うや く2002年 か ら 経 済 成 長 の軌 道 に乗 り出 した 。 景 気 の長 さで 見 れ ば 、 今 回 の景 気 拡 大 は4年5ヶ 月 を過 ぎ、1965年 ll月 か ら4年9ヶ 月 続 い た 「い ざ な ぎ 景 気 」 に 迫 る勢 い で あ る。 この景 気 拡 大 の影 響 に よ り、 大 学 新 卒 を 対 象 とす る労 働 市 場 も、 この2-3年 は 完 全 な 売 り手 市 場 に な って い る。   本 稿 の 研 究 目的 は 、2007年 度 入社 予 定 の 本 学 国 際 言 語 学 部 の4回 生 を対 象 に 質 問票 調 査 を 行 い 、 彼 ら の就 職 活 動 の実 態 や就 業 意識 を 明 らか に す る と共 に 、 就 職 活 動 のや り方 や学 業 成 績 や語 学 力 を 含 め た 彼 ら の属 性 が 、就 職 予 定 の 企 業 に 対 す る満 足 度 や 企 業 規 模 の大 き さ と どの よ うな 関 係 に あ るか を 考 察 す る こ とで あ る。 キ-ワ-ド:就 職 活 動 、 就 業 意 識 、 キ ャ リア、 成 功 の 規 定 要 因 1.は じ め に   日本 経 済 は1992年 後 半 のバ ブル 経 済 の崩 壊 に 伴 う長 期 の デ フ レ期 を 脱 し、 よ うや く2002年 か ら経 済 成 長 の軌 道 に 乗 り出 した 。 景 気 の長 さで 見 れ ば 、 今 回 の景 気 拡 大 は4年5ヶ 月 を 過 ぎ、 1965年ll月 か ら4年9ヶ 月 続 い た 「い ざ な ぎ景 気 」 に 迫 る勢 い で あ る。 経 済 の ミ ク ロ面 か ら見 て も、 多 くの企 業 は 雇 用 、 債 務 、 設 備 とい う企 業 活 動 に 係 る3つ の過 剰 な生 産 要 素 を 清 算 し、 積 極 的 な人 材 の採 用 や 設 備 投 資 を 行 って い る。 特 に 雇 用 面 に 関 して は 、2-3年 以 内に 団 塊 世 代 に あ た る就 業 者 が 大 量 に 退 職 す る こ とか ら、 企 業 と して は 若 い 優 秀 な人 材 の確 保 に 懸 命 に な って い る。   こ の景 気 拡 大 の影 響 に よ り、 大 学 新 卒 を 対 象 とす る労 働 市 場 も こ の2-3年 は 完 全 な売 り手 市 場 に な って い る。 本 学 国 際 言 語 学 部 の2005年 度 卒 業 生 の就 職 内定 率 も96.5%で あ り、 全 国 平 均 の95.3%よ りもや や 上 回 って い る1)。特 に、2007年 度 入社 予 定 の 学 生 の2006年10月 時 点 で の 内定 率 は76%で あ り、 昨 年 の68%、 一 昨 年 の60%よ りもか な り高 い 数 字 で あ り、 多 くの学 生 が

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早 い 段 階 で 内定 を 獲 得 して い る。 しか しそ の一 方 で 、 企 業 の中 に は デ フ レ経 済 期 に 経 験 した 過 剰 雇 用 の トラ ウ マか ら も なか なか 抜 け 出せ ず 、80年 代 の終 わ りか ら90年 代 初 め に か け て のバ ブ ル 期 の よ うな大 量 採 用 を 通 じて の人 員 の充 足 とい う採 用 方 法 は と って い ない 。 す なわ ち、 企 業 は 景 気 拡 大 に 伴 う採 用 の拡 大 を 認 識 しなが ら も、 採 用 予 定 人 員 を 敢 え て 充 足 させ よ うとす る採 り方 で は な く、 優 秀 な人 材 のみ を 採 用 して 、 結 果 的 に 採 用 予 定 枠 に 近 づ け て い こ うとす る採 用 方 法 を と って い る2)。そ の た め に 、 日本 社 会 に お い て 「持 て る者 」 と 「持 た ざ る者 」 の 二 極 化 が 問 題 視 され て い るが 、 新 卒 の 労 働 市 場 に お い て も 「内定 を 複 数 の 企 業 か ら も ら う学 生 」 と 「内定 を1つ も とれ ない 学 生 」 と の二 極 化 が 問 題 に な って い る。 後 者 の学 生 は 大 学 とい う高 等 教 育 を 受 け なが ら も、 労 働 市 場 か ら撤 退 して ニ ー トに な った り、 あ るい は 市 場 か ら撤 退 しな く て も フ リー タ ー な ど の非 正 規 労 働 者 を 対 象 とす る別 の労 働 市 場 に 入 って 、 自 ら のキ ャ リア形 成 を 行 わ ざ るを 得 な くな って い る。   本 稿 の研 究 目的 は 、2007年 度 入 社 予 定 の本 学 国 際 言 語 学 部 の4回 生 を 対 象 に 質 問 票 調 査 を 行 い 、 彼 ら の就 職 活 動 の実 態 や 就 業 意 識 を 明 らか に す る と共 に 、 就 職 活 動 のや り方 や 学 業 成 績 や 語 学 力 を 含 め た 彼 ら の属 性 が 、 就 職 予 定 の企 業 に 対 す る満 足 度 や 企 業 規 模 の大 き さ と ど の よ う な関 係 に あ るか を 考 察 す る こ とで あ る。 こ の よ うな研 究 を 行 お うと した 意 図 と して は 、 本 学 の 学 生 に対 す る就 職 支 援 は 外 部 か ら も高 く評 価 され て い るが3)、学 生 の就 職 活 動 とい う貴 重 な体 験 か ら得 られ た 情 報 を 基 に 、 彼 ら の就 職 活 動 の実 態 を 文 書 とい う成 果 物 で 残 す こ とは 重 要 で あ る と考 え た か らで あ る。 これ に よ って キ ャ リア セ ン タ ーに よ る学 生 へ の就 職 支 援 制 度 を よ り充 実 させ る可 能 性 が 高 ま る と共 に 、 今 まで 得 られ なか った 本 学 学 生 の就 職 活 動 に 関 す る情 報 を 教 職 員 お よび 学 生 と の間 で 共 有 す る こ とが で き る。   本 論 は6構 成 で あ るが 、 第2節 で デ ー タ の収 集 方 法 を 説 明 した 後 、 第3節 で は 学 生 の就 職 活 動 の実 態 を 明 らか に す る と共 に 、 活 動 状 況 の 内容 間 の相 関 関 係 に 注 目す る。 更 に 、 企 業 の求 め る採 用 条 件 や 留 学 経 験 の有 利 性 も検 討 す る。 第4節 で は 、 学 生 が 企 業 に 望 む 要 素 や 彼 ら の将 来 のキ ャ リアに お け る企 業 の位 置 付 け とい った 就 業 意 識 を 明 らか に す る。 そ して 、 第5節 で は 就 職 活 動 の成 功 を 規 定 す る要 因 を 計 量 分 析 に よ り明 らか に し、 最 後 の節 で 本 論 を ま とめ る こ と と した い 。 2.デ ー タ の 収 集 方 法   調 査 対 象 者 は 就 職 希 望 者 で あ り、 キ ャ リア セ ン タ ーに 最 終 内定 報 告 書 を 提 出に 来 た 学 生 お よ び 内定 先 が 決 ま り就 職 活 動 を 終 え る と意 思 表 示 を 行 った 学 生 で あ る。 そ れ ら の学 生 に 質 問 票 を そ の場 で 渡 し、 記 入 して も ら った 。 但 し、 デ ー タ の収 集 率 を 上 げ るた め に4回 生 の ゼ ミナ ール 担 当 者 の一 部 に も協 力 を して も ら って 、 質 問 票 の回 収 を 行 った 。 そ の結 果 、 調 査 対 象 者 は2007

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年 入 社 予 定 の本 学 国 際 言 語 学 部 の4回 生133名(男29名 、 女104名)で あ る。2006年10月1日 時 点 で の 国際 言 語 学 部 の 内定 者 数 が404名 で あ る こ とか ら、 ア ンケ ー トを 回 収 で きた 割 合 は33% で あ る。 学 生 に 回 答 して も ら う質 問 票 の枚 数 は3ペ ー ジで あ り、 計25の 質 問 か ら構 成 され て い る。 質 問 内容 は 、 就 職 予 定 企 業 の概 要 、 就 職 の活 動 内容 、 学 生 の就 業 意 識 、 語 学 力 や 留 学 経 験 とい った 学 生 の属 性 に 関 す る事 柄 、 キ ャ リア セ ン タ ーに 対 す る評 価 な どか ら構 成 され て い る。 質 問 票 の無 回 答 欄 を 回 避 す るた め に 、 記 述 欄 の質 問 を 極 力 少 な く した 。 学 業 成 績 に 関 す る デ ー タ収 集 で は 、 国 際 言 語 学 部 の学 務 課 か ら 協力 を 得 た 。 調 査 は 、2006年4月 か ら10月 に か け て 実 施 した 。 3.就 職 活 動 の 実 態 と企 業 の 採 用 条 件   最 終 内定 企 業 の特 質 は 、 表1に 示 され て い る。 本 学 の 回 答 者 の進 路 先 は業 種 で 見 れ ば 、 「製 造 業 」 が 最 も多 く、 「金 融 ・保 険 」、 「ホ テ ル ・航 空 ・旅 行 」 が それ に続 く。 「ホ テル ・航 空 ・旅 行 」 は 外 大 生 に と って 人 気 の業 種 で あ り、 語 学 力 な どを 生 か す こ と ので き る比 較 優 位 を 持 つ 業 種 で あ った 。 しか し、 日本 経 済 が バ ブル 経 済 崩 壊 の低 迷 を よ うや く脱 して 本 格 的 な成 長 軌 道 に 乗 り出 した こ とか ら、 「金 融 ・保 険 」 や 「製 造 業 」 の業 種 に も多 く就 職 して い る。 不 良債 権 処 理 が 終 わ って 金 融 不 安 を 脱 した 「金 融 ・保 険 」、 そ して高 付 加価 値 製 品 の 需 要 の増 加 の た め に 国 内 の開 発 ・生 産 拠 点 へ 回 帰 して い る 「製 造 業 」 に お い て は 、 こ こ暫 ら くの間 、 採 用 の増 加 が 見 込 まれ る。   雇 用 形 態 は9割 近 くが 「正 社 員 」 で 採 用 され て い るが 、 一 部 景 気 回 復 が 遅 れ て い る業 種 や 航 空 業 界 に お い て は 「契 約 社 員 」 とい った 非 正 規 社 員 と して 採 用 され て い る。 非 正 規 社 員 の中 に は 、 何 年 か 勤 務 す れ ば 「正 社 員 」 と して 再 雇 用 す る企 業 もあ る一 方 で 、 景 気 の動 向に 関 係 な く 「正 社 員 」 の 賃 金 上 昇 圧 力 を懸 念 して 、 「正 社 員 」 と して の キ ャ リア を 閉 ざ して い る企 業 も多 い 。 雇 用 、 債 務 、 投 資 とい う3つ の過 剰 な生 産 要 素 を 抱 え て い た 企 業 は 、 景 気 の回 復 に 伴 って 積 極 的 な金 融 機 関 か ら の借 り入 れ や 社 債 の発 行 を 通 じて 事 業 の拡 大 を 図 って い るが 、 雇 用 に 関 して は 「正 社 員 」 に か か る固 定 費 用 を で き るだ け 削 減 し、 非 正 規 社 員 の採 用 の拡 大 を 通 じて 変 動 費 用 の割 合 を 高 め よ うと考 え て い る企 業 も多 い 。

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表1  内定企業の特質 (単 位:人 、%) 業 種 製 造 業:25(19)  金 融 ・保 険:23(17)  ホ テ ル ・航 空 ・旅 行:22(17) 卸 売 り ・商 社:15(ll)  小 売:9(7)  物 流:8(6)  教 育:6(5)  情 報 通 信:4(3) 不 動 産:4(3)  広 告 ・出 版:3(2)  製 薬 ・医 療:2(2)  そ の 他 サ ー ビ ス 業:12(9) 雇用形態 正 社 員:ll9(89)  契 約 社 員:10(7)  派 遣 社 員:1(1)  そ の 他:3(2) 従業員数 50人 未 満:3(3)  50-99人:9(7)  100-299人:15(ll)  300-999人:44(33) 1000人 以 上:59(44)  不 明:3(2) 資 本 金 1000-5000万 円 未 満:23(17)  5000万-1億 円 未 満:ll(8)  1-5億 円 未 満:21(16) 5-10億 円 未 満:8(6)  10億 円 以 上:65(49)  不 明:5(4) (注)括 弧 内 の数 字 は全 体 に対 す る割 合 で あ るが 、 小数 点 第1位 を 四 捨 五 入 した た め 、 合 計 の数 字 が 必 ず し も100%に な     って い な い 箇 所 もあ る。   厚 生 労 働 省(2001)に よれ ば 、 従 業 員 数 が「lOOO人 以 上 」 の 巨大 企 業 の場 合 、 新 入 社 員 の大 卒 の割 合 が46.1%で あ った の に対 し、 「100-299人 」 の 中 堅 企 業 で は37.8%、 「5-29人」 の 小 企 業 で は24.8%と 、 そ の割 合 は 企 業 規 模 が 小 さ くな るに 比 例 して 低 くな って い る。 本 学 の調 査 対 象 者 で も 「1000人以 上 」 と回答 した 者 の 割 合 が44%と 最 も多 く、 「300-999人 」 と回答 した 者 が 続 き、 両 方 の数 字 を 足 せ ば 全 体 の77%を 占め る。 大 学 の大 衆 化 や 少 子 化 に 伴 う大 学 生 の質 の 低 下 が 指 摘 され て い て も、 大 企 業 が 大 卒 を 採 用 す る割 合 は そ れ 以 外 の学 歴 を 持 った 者 を 採 用 す る よ りも高 い 。 また 、 個 性 を 重 視 す る大 学 生 が 昨 今 増 え た と言 って も、 未 だ に 有 名 な大 企 業 に 安 定 を 求 め 、 保 守 的 な学 生 も多 い と解 釈 で き る。   表2は 、 就 職 活 動 の状 況 が ま とめ られ て い る。 こ の結 果 か ら もわ か る よ うに 、 回 答 者 の85% が 企 業 説 明会 や 業 界 セ ミナ ー な どに 参 加 して 就 職 活 動 は3回 生 の 内か ら始 め て お り、 訪 問 した 企 業 の数 は 平 均22社 に 上 って い る。1997年 の就 職 協 定 の廃 止 に よ って 、 採 用 ・就 職 活 動 が 早 期 化 か つ 長 期 化 した と言 わ れ る。 景 気 の回 復 に 伴 う採 用 枠 の拡 大 に よ り、 企 業 は 優 秀 な人 材 を 早 期 に 獲 得 しよ うと4回 生 の春 先 に は 内定 を 出す こ とか ら、 学 生 の側 に もそ れ に 呼 応 して 就 職 活 動 の早 期 化 が 見 られ る。 また 、 こ こ1-2年 の傾 向 と して 、 大 企 業 を 含 め て 企 業 側 は 、 内定 を 既 に 獲 得 して も、 も う一 度 就 職 活 動 を 始 め て い る優 秀 な人 材 を 確 保 しよ うと して い るた め 、 採 用 活 動 も長 期 化 して い る。 そ の結 果 、 内定 を 複 数 獲 得 して い る学 生 と、 全 く内定 を 獲 得 して い ない 学 生 と の二 極 化 現 象 が 顕 著 に な って い る。 本 学 の調 査 対 象 者 に お い て も複 数 の企 業 か ら 内 定 を 得 た者 の 割 合 は58%で あ り、平 均2.6社 の 内 定 を 得 て い る。 興 味 深 い こ とに複 数 の 内 定 を 獲 得 した 学 生 の うち、71%が 最 後 に 内定 を 得 た 企 業 に 就 職 す る こ とを 決 め て い る。 こ の こ とか ら、 学 生 の就 職 先 の満 足 度 を 上 げ るに は 、 本 人 の納 得 のい くまで 就 職 活 動 を 続 け る こ とが 重 要 で あ る と示 唆 され る。

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表2  就職活動の状況 (単 位:人 、%) 就職活動 開始時期 3回 生9-12月:50(38)  3回 生1-3月:62(47)  4回 生4-5月:9(7) 4回 生6-7月:6(5)  4回 生8-10月:5(4)  無 回 答:1(1) 訪問 した 企業数 4社 以 内:5(4)  5-9社:21(16)  10-19社:31(23)  20-29社:26(20) 30-39社:27(20)  40-49社:8(6)  50社 以 上:ll(8)  無 回 答:4(3) 内定の数 1社:57(43)  2社:38(29)  3社:32(24)  4社:3(2)  5社:2(2) 6社 以 上:1(1) 両 親 との 相 談 積 極 的 に 相 談 し た:55(41)  少 し は 相 談 し た:59(44) ほ と ん ど 相 談 し な か っ た:13(10)  全 く相 談 し な か っ た:5(4)  無 回 答:1(1) 就職活動の 自己評価 後 悔 し て い な い:81(61)  何 と も 言 え な い:25(19) 少 し 後 悔 し て い る:24(18)  大 変 後 悔 し て い る:2(2)  無 回 答:1(1) 就職企業の  満足度 大 変 満 足:43(32)  満 足:78(59)  何 と も 言 え な い:9(7)  不 満:2(2) 大 変 不 満:1(1) 就職 ガイダンス   の出席度 毎 回 出 席:18(14)  ほ と ん ど 出 席:35(26)  時 々 欠 席:27(20) 余 り出 席 せ ず:31(23)  全 く出 席 せ ず:21(16)  無 回 答:1(1) (注)括 弧 内 の 数 字 は 全 体 に 対 す る割 合 で あ るが 、 小 数 点 第1位 を 四 捨 五 入 したた め、 合 計 の数 字 が必 ず しも100%に な っ     て い な い 箇 所 もあ る。   今 回 の調 査 で は 、 回 答 者 の41%が 就 職 活 動 を 行 うの に 当 た って 、 「両 親 に 積 極 的 に 相 談 」 し て お り、 「少 し相 談 した」 も含 め れ ば 、 そ の割 合 は85%に も上 る。Lent(1994)は 、両 親 か ら の生 育 環 境 の整 備 に 始 ま って 教 育 機 会 の提 供 や 就 職 活 動 に 対 す る支 援 は 、 子 供 の進 路 発 達 に 大 き な影 響 を もた ら して い る と指 摘 して い る。 また 、1995年 の 日本 私 立 大 学 連 盟 の報 告 書 に よ る と、23%の 学 生 が 「就 職 す る こ と 自体 に つ い て 不 安 を 感 じて い る」 と述 べ て お り、 学 生 本 人 の 性 格 や 資 質 を 最 も把 握 して い る両 親 に 相 談 す る こ とは 、 適 切 な就 職 先 を 見 つ け る上 に お い て 重 要 で あ る と考 え られ る。   回 答 者 の61%が 、 自分 の行 った 就 職 活 動 に 「後 悔 して い ない 」 と回 答 して い る。 そ の一 方 で 、 程 度 の違 い は あ れ 後 悔 を 残 して い る者 も39%い る。 そ の 理 由 と して、 「自己 分 析 が で きて い な か った 」、 「内 定 を1つ 貰 い気 が緩 ん だ 」、 「留 学 の た め に 希 望 す る企 業 が受 け られ な か った 」、 「も っ と色 ん な業 種 の企 業 を 回 れ ば よか った 」、 「就 職 活 動 を 始 め る のが 遅 か った 」、 「企 業 分 析 が で きて い なか った 」 等 を 挙 げ て い る。   就 職 す る企 業 の満 足 度 に 関 して は 、91%の 回 答 者 が 「大 変 満 足 」 また は 「満 足 」 と回 答 して い る。 個 々 の学 生 に よ る満 足 度 の捉 え 方 の違 い は あ る とは 言 え 、 これ は 就 職 活 動 の成 功 を 示 す 指 標 と して 解 釈 で き る。 学 生 の就 職 予 定 企 業 の満 足 度 が 高 い 要 因 は 単 純 に 考 え れ ば 、 景 気 が 回 復 す る中 で 大 企 業 を 中 心 に 採 用 枠 を 拡 大 した 結 果 、 希 望 通 りの就 職 が で きた と考 え る学 生 が 多

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か った ので ない か と推 論 で き る。   キ ャ リア セ ン タ ーに よ って 主 催 され て い る3回 生 を 対 象 と した 就 職 ガイ ダ ン ス の 出席 度 は 、 決 して 高 くない と言 え る。 回 答 者 の 内で 「毎 回 出席 」、 「ほ とん ど 出席 」 と回 答 した 者 は 半 分 以 下 の40%に 過 ぎ なか った 。 回 答 者 は 内定 を 貰 い 就 職 活 動 を 終 え た 者 に 限 定 され て い るが 、 未 だ 内定 を 獲 得 して い ない 者 や 就 職 活 動 を 途 中 で 挫 折 した 者 を デ ー タに 含 め れ ば 、 こ の割 合 は 更 に 低 い 数 字 に な る と推 測 され る。 学 生 は 就 職 活 動 を す るに 当 た って 、 ガイ ダ ン ス の必 要 性 が ない か ら 出席 しない のか 、 あ るい は 単 に 彼 ら の怠 惰 のた め に 出席 しない のか は 判 断 で き ない 。 但 し、 ほ とん ど の学 生 に と って 就 職 活 動 は 初 め て の経 験 で あ り、 ガイ ダ ン スか ら得 られ る情 報 や 知 識 は 彼 ら の就 職 活 動 の重 要 な指 針 に な る と考 え られ る。 そ のた め 、 学 生 の ガイ ダ ン ス の 出席 度 を 上 げ る よ うな何 らか の工 夫 が 今 後 行 わ れ る必 要 が あ る。   次 に 、 就 職 活 動 状 況 を 示 す 項 目間 の相 関 関 係 に 注 目 して み た い が 、 そ の推 計 結 果 が 表3に 示 され て い る。 予 想 され た 通 り、 「活 動 開始 時 期 」 と 「訪 問 企 業 数 」 の 間 に は 高 い相 関 関 係(相 関 係 数:0.401)が 見 られ る。 ま た、 「活 動 の 自己 評 価 」 と 「企 業 の満 足 度 」 の間 に 弱 い 相 関 関 係(相 関係 数:0.271)が 見 られ る。 この こ とは 、 複 数 の企 業 か ら内 定 を 得 た 学 生 の 多 くが 最 後 に 内定 した 企 業 を 就 職 先 と して 選 ぶ 傾 向が あ る とい う、 先 に 述 べ た 事 実 と も整 合 性 が とれ て い る。 更 に 、 「活 動 開始 時 期 」 と 「ガ イ ダ ンス の 出 席 度 」 の 間 に も弱 い な が ら も相 関 関 係(相 関 係 数:0.228)が 見 られ た 。 こ の こ とは 、 学 生 の就 職 ガ イ ダ ンス の 参 加 が 、 彼 らの就 職 活 動 を 開 始 させ る き っか け を つ くる1つ の 要 素 に な って い る と示 唆 され る。 そ の 一 方 で 、 「活 動 開 始 時 期 」 と 「企 業 の満 足 度 」 お よび 「内定 数 」 と 「ガイ ダ ン ス」 の間 に は 全 く相 関 関 係 が 見 ら れ ない 。 こ の こ とは 、 学 生 が 焦 って む や み や た らに 就 職 活 動 を 開 始 す る ので は な く、 自己 分 析 や 企 業 ・業 界 研 究 な どを しっか りと行 った 上 で 、 活 動 を 開 始 す る こ とが 重 要 で あ る こ とを 示 唆 して い る。 表3  就職活動状況の項 目の相関関係 活動開始時期 企業訪問数 内 定  数 両親との相談 活動の自己評価 企業の満足度 ガ イ ダ ン ス 活動開始時期 1 - - - -企業訪問数 0.401 1 - - - - -内 定  数 0.091 0.109 1 - - - -両親との相談 0.148 0.176 -0.044 1 - - -活動の自己評価 0.003 0.031 0.166 0.081 1 - -企業の満足度 0.025 0.025 -0.008 -0.035 0.271 1 -ガ イ ダ ン ス 0.228 0.126 -0.145 0.140 -0.058 0.096 1 (出 所)質 問 票 の デ ー タ よ り推 計 。

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表4  内定を獲得す るための重要な要素 (単 位:人) 積極性 67 一 般 教 養 6 性格 66 学校名 5 自己分析 56 ク ラ ブ ・ボ ラ ン テ ィ ア 等 の 活 動 5 企 業 ・業 界 研 究 21 親 や 知 人 の コネ 2 アル バ イ ト経 験 8 語学力以外の資格 2 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 6 学業成績 1 留学経験 6 語学力 1 (注)複 数 回 答 は2項 目 まで 可 と した 。   表4に お い て 、 調 査 対 象 者 が 就 職 活 動 を 通 じて 内定 を 得 るた め の重 要 な要 素 と して 回 答 した 項 目を ま とめ て い る。「積 極 性 」 は最 も重 要 な要 素 と して指 摘 され て お り、「性 格 」、「自己分 析 」、 「企 業 ・業 界 研 究 」 が そ の後 に 続 く。 こ の こ とか ら も、 企 業 が 新 卒 に 対 して 資 格 な ど の専 門 力 的 要 素 よ りもむ しろ人 格 的 な要 素 を 求 め て い る こ とが 示 唆 され る。   企 業 の マ ー ケ テ ィン グ の コ ン セ プ トの1つ に 、 顧 客 志 向型 マ ー ケ テ ィン グが 挙 げ られ るが 、 日本 の よ うな企 業 間 の競 争 が 激 化 した 成 熟 市 場 に お い て は 、 多 くの企 業 が こ の コ ン セ プ トに 基 づ い た マ ー ケ テ ィン グを 行 って い る。 こ の理 念 の下 で は 、 売 り手 は コ ミ ュニ ケ ー シ ョンを 通 じ て 顧 客 の ニ ー ズを 聞 き 出 し、 次 に 顧 客 ニ ー ズを 先 取 り して 独 自 の製 品 や サ ー ビス の輪 郭 を 描 く 創 造 性 が 必 要 に な って くる。 顧 客 志 向型 マ ー ケ テ ィン グを 行 う場 合 に は 、 売 り手 で あ る企 業 の 従 業 員 が コ ミ ュニ ケ ー シ ョン能 力 、 創 造 性 とい った 資 質 を 持 って い る こ とが 要 件 で あ る こ とか ら、 「積 極 性 」 とい った 情 意 的 要 素 が 、 新 卒 採 用 に お い て重 要 視 され て い る の で は な い か と解 釈 で き る。   回 答 者 が 内定 を 獲 得 す るた め の別 の要 素 と して 挙 げ た 「自己 分 析 」 と 「企 業 ・業 界 研 究 」 は 、 同 じコイ ン の裏 表 の関 係 に あ る。 す なわ ち、 学 生 が 自分 の持 って い るイ メ ー ジだ け で 企 業 や 業 界 を 選 ん で 就 職 活 動 を す る ので は な く、自分 の 性 格 、価 値 観 、能 力 を 冷 静 に見 つ め 直 し、企 業 ・ 業 界 の実 情 を 知 るた め に 情 報 収 集 す る こ とは 、 学 生 が 自分 に 合 った 企 業 を 選 ぶ に 当 た って は 不 可 欠 な こ とで あ る。 安 達(2003)は 、 学 生 の 自己 分 析 や 情 報 収 集 に 対 す る 自己 効 力 感 が 、 就 業 動 機 を 介 在 して 職 業 を 決 め る際 に プ ラ ス の影 響 を 与 え て い る と述 べ て い る。 安 達 は 、 自己 効 力 感 を 「課 題 に 必 要 な行 動 を 成 功 裏 に 行 う能 力 の 自己 評 価 」 と定 義 して い る。 彼 女 が 指 摘 した 重 要 な点 は 、 こ の 自己 評 価 が 実 際 の能 力 と合 致 す るか 、 あ るい は や や 楽 観 的 な程 度 の効 力 感 を 持 つ と きに 有 効 なパ フ ォー マ ン スが 導 き 出 され る こ とで あ る。 す なわ ち、 自己 の過 大 評 価 は 内定 を1つ も獲 得 で き な い結 果 を もた らす 恐 れ もあ るが 、 一 方 で 自己 の過 小 評 価 を 通 じて 内 定 を 得 て 就 職 活 動 を 終 え て も、 そ の企 業 に 将 来 就 職 す る こ とへ の不 安 感 を 学 生 に 掻 き立 て て しまい 、 望 ま しい 結 果 を 生 ま ない 。 また 、 自己 評 価 が 不 十 分 に も拘 わ らず 、 就 職 活 動 の テ クニ ッ クな ど に よ り内定 を 得 る学 生 や 、 簡 単 に 内定 を 獲 得 で き る優 秀 な学 生 に お い て も、 先 ほ ど の ケ ー ス と

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同様 に 入 社 前 の不 安 感 を 抱 く者 は 多 い 。 多 くの学 生 は 実 際 に 就 職 活 動 を 行 って 幾 つ か の困 難 や 問 題 に 直 面 して 初 め て 、 活 動 前 に 立 て た 自己 評 価 と仕 事 に 対 す る考 え 方 や 態 度 が 統 合 され る。 就 職 活 動 は 受 験 と違 って 、 成 否 の可 能 性 を 客 観 的 に 測 る偏 差 値 の よ うな物 差 しは な く、 人 は 自 己 の能 力 や 適 性 を しっか りと評 価 し、 そ れ に 基 づ い た 結 果 期 待 が 、 就 職 活 動 の成 否 を 規 定 す る 要 因 に な る と考 え られ る。   一 方 、 「学 業 成 績 」、 「語 学 力 」、 「資 格 」、 「学 校 名 」 は 内定 を獲 得 す るた め の余 り重 要 な 要 素 と して 考 え られ て い ない 。 これ は 、 多 くの企 業 が 新 卒 を 即 戦 力 と して 位 置 づ け て い ない1つ の 証 左 で あ る と解 釈 で き る。 但 し、 根 本(2004)は 職 務 に 専 門 知 識 な ど の能 力 ・スキ ル を 重 視 し て い る企 業 ほ ど、 「出 身 大 学 名 」 に こだわ って い る こ とを 指 摘 した 。 実 際 に 新 卒 社 員 が 入 社 す る時 点 で 企 業 の要 求 す る よ うな能 力 や スキ ル を 持 って い な くて も、 企 業 は 学 校 歴 を 通 じて 、 高 い 潜 在 能 力 を 持 った 人 材 を 選 抜 で き る ス ク リー ニ ン グ機 能 が 働 くと想 定 して い る。   表5は 、 留 学 経 験 とそ の有 利 性 に つ い て ま とめ た も ので あ る。 回 答 者 の45%が3ヶ 月 以 上 の 留 学 を 経 験 して い るが 、 そ の 内長 期 留 学 に 分 類 され る6ヶ 月 以 上 の留 学 を 経 験 して い る者 は68 %を 占 め て い る。 「就 職 に お け る留 学 の有 利 性 」 に 関 して は、 回答 者 の77%が 「大 変 有 利 」 ま た は 「多 少 有 利 」 と回 答 して い る。 こ の数 字 を 高 い と見 るか 低 い と見 るか 意 見 の分 か れ る と こ ろで は あ るが 、 少 な くと も言 え る こ とは 、 中 長 期 の留 学 生 に お い て も4分 の1近 くの24%は 、 就 職 に お け る留 学 の有 利 性 を 認 識 して い ない 。 但 し、 興 味 深 い こ とに 「大 変 有 利 」 と回 答 した 者 の留 学 期 間 の 平 均 は8.8ヶ 月 間 で あ った の に 対 し、 「多 少 有 利 」 と回答 した者 の 値 は7.7ヶ 月 、 「あ ま り有 利 で は な い 」 と回答 した 者 の 値 は5.0ヶ 月 で あ った。 この こ とか ら、 就 職 活 動 に お い て 留 学 経 験 を 比 較 優 位 に す るに は 、 短 期 よ りも中 期 、 中 期 よ り長 期 の留 学 が 望 ま しい こ とが 示 唆 され る。 表5  留学経験 とその有利性 (単 位:人 、%) 留学経験 有:60(45)      無:73(55) 留学期間 3ヶ 月:6(10)    4-5ヶ 月:12(20)    6-8ヶ 月:ll(18) 9-12ヶ 月:29(48)  1年 超:1(2)  不 明:1(2) 就職におけ る 留学の有利性 大 変 有 利:19(32)  多 少 有 利:27(45)  何 と も 言 え な い:7(12) 余 り有 利 で は な い:6(10)  全 く有 利 に 働 か ず:1(2) 帰国時期の 遅れの不利性 か な り不 利:2(15)  少 し 不 利:6(46)  何 と も 言 え な い:4(31) 逆 に 有 利:1(8) (注1)「 就 職 に おけ る留 学 の有 利 性 」 の質 問 に関 して は、 留 学 経 験 が3ヶ 月 以上 の学 生 のみ に尋 ね た 。 (注2)「 帰 国時 期 の遅 れ の不 利 性 」 の質 問は 、 帰 国時 期 が4回 生 にか か っ た学 生 のみ に尋 ね た。 (注3)括 弧 内 の数 字 は 全 体 に 対 す る割 合 で あ る が、 小数 点 第1位 を 四 捨 五 入 した た め、 合 計 の数 字 が 必 ず し も100%に     な って い な い箇 所 もあ る。

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  「留 学 先 か ら の帰 国 時 期 が4回 生 に か か った た め に 就 職 活 動 が 遅 れ 、 留 学 で 得 られ た 経 験 、 知 識 、 語 学 力 な どを 加 え て も不 利 に 働 い た 」 と回 答 した 者 は 、 少 ない サ ン プル 数 で は あ れ 全 体 の61%に も上 った 。 大 企 業 を 始 め と した 多 くの企 業 が 採 用 活 動 の プ ロセ スを3回 生 の1月 ぐら い か ら行 って お り、4回 生 で 帰 国 した 留 学 生 に と って 就 職 活 動 に お け る不 利 は 否 め ない 事 実 で あ る。 こ の問 題 を 克 服 す るに は 、 留 学 生 は 親 な ど の協 力 を 得 て 、 海 外 か ら も企 業 と の接 触 を 取 れ る体 制 を 整 え る の と 同時 に 、 大 学 側 も4回 生 に 帰 国 が か か ら ない よ うに 、3回 生 のみ 別 科 で の訓 練 期 間 を 短 縮 して 、 派 遣 期 間 を 早 め る こ と も考 え て い く必 要 は あ る。 4.学 生 の 就 業 意 識   回 答 者 の就 業 意識 を 明 らか にす るた め に 、 「就 職 す る の に あ た って の 企 業 に望 む 要 素 」 とい う理 想 面 と 「実 際 に 就 職 す る企 業 に 決 め た 理 由」 とい う現 実 面 に 関 す る2つ の質 問 を 用 意 した 。 回 答 結 果 は 、 両 方 の質 問 と も 「働 きた い 業 種 」、 「良好 な人 間 関 係 」、 「や りが い 」 が 上 位 を 占め た 。2つ の質 問 に 対 す る回 答 項 目が 全 く一 致 しなか った 調 査 対 象 者 の数 は 僅 か17名(全 体 の13 %)で あ った 。 こ の こ とか ら も、 本 学 の調 査 対 象 者 の多 くが 理 想 面 と現 実 面 に 一 致 した 企 業 か ら 内定 を 獲 得 す る こ とが で き、 そ の結 果 が 内定 先 の満 足 度 の高 さに 反 映 され て い る ので は ない か と推 論 され る。 表6  就職す るのにあた って企業に望む要素 と実際に就職す る企業に決めた理由 (単 位:人) 就 職 す る の に あた っ て企 業 に望 む要 素 実際 に就職す る企業 に決めた理 由 良好な人間関係 55 働 きたい職種 54 や りが い 52 良好な人間関係 44 働 きたい業種 50 や りが い 44 福利厚生 26 勤務地 30 勤務地 21 安定性 24 安定性 22 福利厚生 19 給与水準 16 将来性 14 将来性 16 給与水準 ll 労働時間の短 さ 1 企業の知名度 7 ノ ル マ の 少 な さ 1 その企業以外選択の余地がない為 2 ノ ル マ の 少 な さ 1 (注1)複 数 回 答 は2項 目ま で可 と した。

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表7  就職す る予定の企業の位置づけ (単 位:人 、%) 定 年 退 職 まで 就 職 予 定 の 企 業 で キ ャ リアを 形 成 何 年 か の 経 験 を つ ん だ 後 転 職 す る予 定 家 業 を 継 ぐまで や 結 婚 す る まで の 腰 か け 全 く未 定 56(42) 35(26) 6  (5) 36(27) (注)括 弧 内 の数 字 は全 体 に対 す る 割 合 で あ るが 、 小 数 点 第1位 を 四 捨 五 入 した た め 、 合 計 の 数     字 が 必 ず し も100%に な っ て い な い箇 所 もあ る 。   また 、 就 業 動 機 は 仕 事 そ の も の の関 心 や 興 味 に よ って 喚 起 され る 内発 的 動 機 と、 給 与 水 準 や 周 囲 か ら の評 価 、 両 親 か ら の勧 め な ど の外 発 的 動 機 とに 分 け られ るが 、 本 学 の回 答 者 が 選 択 し た 上 位3つ の項 目は 全 て 内発 的 動 機 に 関 わ る もの で あ った。Blustein(1988)は 、 外 発 的動 機 は そ れ ぞ れ の要 素 か ら得 られ る満 足 度 も人 に よ って 大 き く異 な るが 、 内発 的 動 機 は 大 学 生 の職 業 選 択 に 好 ま しい 影 響 を 与 え る と指 摘 して い る。 も しこ の仮 説 が 正 しい とす る な らば 、 本 学 の 調 査 対 象 者 は 適 切 な職 業 選 択 を して い る と解 釈 で き る。   表7で は 、 回 答 者 に 就 職 予 定 の企 業 を 通 じて の将 来 のキ ャ リア デザ イ ンを 尋 ね た 結 果 を 示 し て い る。 最 も多 くの者 が 「定 年 退 職 まで 就 職 予 定 の企 業 で キ ャ リアを 形 成 」 と回 答 して お り、 そ の全 体 に対 す る割 合 は42%に 上 って い る。 一 方 、 「何 年 か の経 験 を つ ん だ 後 転 職 す る予 定 」 と回 答 した 者 も26%も あ り、 最 近 の雇 用 の流 動 化 が 企 業 側 の要 因 だ け で な く、 被 雇 用 者 側 の要 因 で もあ る こ とを 示 唆 して い る。   日本 労 働 研 究 機 構(2000)や 労 働 政 策 研 究 ・研 修 機 構(2004)に よ る と、 多 くの若 い 従 業 員 が 早 期 に 離職 す る理 由 と して 、 第1に 仕 事 が 自分 に 合 わ ない 、 第2に 人 間 関 係 が よ くない 、 第 3に 労 働 時 間 な ど の労 働 条 件 が 悪 い 、 第4に 会 社 か ら の解 雇 が 挙 げ られ る。 新 卒 の3割 が3年 以 内に 最 初 の企 業 を 辞 め て しま うこ とが 定 説 に な りつ つ あ る現 在 に お い て 、 多 くの学 生 は1つ の企 業 で 定 年 退 職 まで 勤 め 上 げ よ うと考 え て い て も、 バ ブル 経 済 崩 壊 以 降 、 そ れ が 難 し くな っ て きて い る。 特 定 の業 種 、 企 業 、 仕 事 に 固 執 す れ ば す るほ ど、 先 に 述 べ た 離 職 要 因 に 直 面 す る 可 能 性 が 高 くな る。 こ の こ とか ら も、 個 々 の学 生 は 就 職 当 初 よ り、 将 来 の様 々 な変 化 に 柔 軟 に 対 応 で き る よ うなキ ャ リア開 発 プ ラ ン の策 定 も必 要 に な って くる。 産 業 の空 洞 化 に 伴 い 非 自発 的 な離 職 が 多 く見 られ る一 方 で 、 最 近 で は 起 業 へ の挑 戦 とい った 積 極 的 な離 職 も多 くな って い る。 特 定 の企 業 組 織 に 終 身 、 帰 属 また は 固 執 す る ので は な く、 自己 の価 値 観 や 職 業 観 を 持 って キ ャ リア デザ イ ンを 確 立 して い く人 が これ か ら増 加 して い くので は ない か と予 想 され る。   一 方 、 企 業 側 と して も従 業 員 に 早 期 に 離職 され れ ば 、 既 に 企 業 内訓 練 を 通 じて 人 材 に 投 資 し た 費 用 や 新 た な人 材 を 採 用 す るた め の費 用 が か さん で しま う。 そ れ を 回 避 す るた め に は 、 企 業 は 「現 実 主 義 的 な 仕 事 情 報 の事 前 提 供 」(Realistic Job Preview:RJP)を 通 じて 、 で き る限

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り自社 の応 募 者 に 仕 事 に 関 す る正 確 な情 報 を 伝 え る こ とが 重 要 で あ る。 金 井(2002)も 指 摘 し て い る よ うに 、 企 業 は 自社 に 関 す る 良い こ と も悪 い こ と もで き るだ け 学 生 に 伝 え て 、 学 生 が 人 生 の節 目の 大切 な時 期 に適 切 な判 断を しやす い よ うに役 立 つ情 報 を提 供 す る使命 を 負 って い る4)。 5.就 職 活 動 の 成 功 の 規 定 要 因 (1)先 行 研 究   学 生 の就 職 活 動 を 成 功 させ るた め の一 般 的 な マ ニ ュアル 本 は 巷 で 氾 濫 して い るが 、 成 功 を 規 定 す る要 因 を 計 量 的 に 分 析 した 先 行 研 究 の数 は 非 常 に 限 られ て い る。 そ の限 られ た 先 行 研 究 の 中 か ら幾 つ か を 紹 介 す る と、 まず 上 村(2004)の 大 学 の入 学 難 易 度 と 内定 率 と の関 係 を 調 査 し た 研 究 が 挙 げ られ る。 彼 は 私 立 大 学 の入 学 難 易 度 を3つ の ラ ン クに 分 け て 、 そ の難 易 度 と就 職 内定 率 を 見 た と ころ、 最 も高 いAラ ン クの 大 学 群 に 属 す る学 生 の 内定 率 が89.2%と 最 も高 か っ た こ とを発 見 した 。 一 方 、 最 も低 いCラ ン クの 大 学 群 に属 す る学 生 の 内定 率 も86.2%と 、Bラ ン クに 属 す る学 生 よ りも高 く、 各 ラ ン ク群 の間 に 有 意 な差 は 見 られ なか った 。 こ の調 査 で は 学 生 が 就 職 す る企 業 の規 模 や 雇 用 形 態 な どは 各 ラ ン ク群 で コ ン トロール され て い ない ので 、 入 学 難 易 度 が 内定 率 に有 意 に 影 響 を 及 ぼ さ な い と言 い切 れ な い 面 は あ るが 、Cラ ン クの大 学 の 積 極 的 な就 職 支 援 活 動 が 、 学 力 の格 差 を 打 ち消 す 働 きを して い る可 能 性 が 指 摘 され た 。 上 村 は こ の 調 査 結 果 よ り、 大 学 の就 職 支 援 機 関 の果 た す 役 割 は 大 学 生 の就 職 を 規 定 す る上 で 重 要 で あ る と 結 論 付 け て い る。   Becker(1964)に 代 表 され る人 的 資 本 論 者 は 、 教 育 に対 す る個 人 の投 資 が 労 働 生 産 性 の 向 上 を 促 し、 ひ い て は 所 得 の増 加 を もた らす と主 張 す る。 しか し、 実 学 に 重 きを お い て こ なか っ た 日本 の大 学 の カ リキ ュラ ムや 少 子 化 に 伴 う大 学 生 の学 力 の低 下 とい った 要 因 に よ って 、 大 卒 の収 益 率 の逓 減 傾 向が 見 られ る。 こ の よ うに 人 的 資 本 論 の正 当 性 は 初 等 ・中 等 教 育 レベ ル まで に 当 て は ま る こ とで あ って 、高等 教 育 に お い て は そ の正 当性 が疑 問視 され て い る。本 田(2005) の実 証 研 究 で も、 企 業 が 感 じて い る 日本 の職 場 で の大 学 教 育(特 に 文 系)の 職 業 的 意 義 は 、 西 欧 の職 場 に お け る よ りも低 か った。 また 、Mccormic(1988)は 大 学 教 育 に関 す る 西 欧 と 日本 の企 業 側 に お け る意 識 の相 違 を 指 摘 して い るが 、 実 学 とは 乖 離 して い る 日本 の大 学 教 育 に 対 し て は 企 業 も大 き な期 待 を 持 って お らず 、 そ の結 果 余 り大 き な不 満 も抱 か せ ない と結 論 付 け て い る。 但 し、 河 野(2004)も 指 摘 して い る よ うに 、 日本 企 業 の雇 用 哲 学 は 新 卒 を 即 戦 力 の人 材 と 捉 え て お らず 、潜 在 的可 能 性 の発 掘 と して捉 え て い る。Spence(1973)に 代 表 され る ス ク リー ニ ン グ論 者 が 説 い て い る よ うに 、 学 業 成 績 と労 働 生 産 性 の相 関 は 見 せ か け の相 関 で あ り、 大 卒 とい う学 歴 や 有 名 大 学 卒 とい う学 校 歴 は 、 学 生 に 対 す る企 業 の情 報 の非 対 称 性 を 補 完 す る意 味 に お い て 大 き な役 割 を 果 た して い る。

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  永 野(2004)は 、25大 学 の約llOO名 の学 生 を 対 象 に 、 就 職 活 動 の成 功 度 に 影 響 を 与 え る要 因 を 分 析 した。 就 職 活 動 の成 功 度 を測 る変 数 と して 「就 職 活 動 に 対 す る 自己評 価 」 を と り、 「大 学 入 試 難 易 度 」 と 「大 学 で の成 績 」 の変 数 が 及 ば す 影 響 を 調 査 した と こ ろ、 両 変 数 と も有 意 で 就 職 活 動 の成 功 度 に プ ラ ス の影 響 を 与 え て い た 。 また 、 平 沢(1995)や 濱 中(1998)の 研 究 に よれ ば 、 「大 学 入 試 難 易 度 」 が 高 い ほ ど 「内定 企 業 の規 模 」 も大 き くな る とい う有 意 な 関 係 が 見 られ た のに 対 し、 「大 学 で の成 績 」 とは有 意 な 関係 が見 られ なか った。   これ ら の先 行 研 究 も示 す よ うに 、 就 職 活 動 の成 功 を 表 す 被 説 明変 数 の採 り方 が 異 な り、 そ れ を 規 定 す る 「大 学 で の成 績 」 や 「大 学 の入 学 難 易 度 」 とい った 説 明変 数 の有 意 性 も違 う結 果 を 表 して い る。 (2)データ セ ッ トと推 計 モ デ ル   先 行 研 究 の分 析 方 法 か ら もわ か る よ うに 、 ど の変 数 を も って 就 職 活 動 の成 功 を 定 量 化 す るか は 非 常 に 難 しい 。 とは 言 え 、 就 職 活 動 の成 功 を 計 量 分 析 す るた め に 、 本 研 究 に お い て も敢 え て デ ー タ の定 量 化 を 試 み た い。 まず 就 職 活 動 の成 功 を示 す 変 数 と して、 「就 職 予 定 の企 業 に 対 す る満 足 度 」、 「資 本 金 で 測 った企 業 の 規 模 」 とい う2つ の 変 数 を 選 ぶ 。 「資 本 金 で測 った 企 業 の 規 模 」 は被 説 明 変 数 で 用 い る の と同 時 に 、 説 明変 数 と して も用 い る。 「就 職 予 定 の企 業 に 対 す る満 足 度 」、 「従 業 員 数 で 測 った 企 業 の規 模 」 は 先 に 表2で 示 した よ うに 、 そ れ ら変 数 の大 き さ に よ って5段 階 の カ テ ゴ リーで 分 け た デ ー タを 用 い る。   一 方 、 就 職 活 動 の成 功 を 規 定 す る変 数 と して 「就 職 活 動 の開 始 時 期 」 を 用 い る。 そ の変 数 は 2006年10月 を 基 準 月 と して 、 そ れ よ りも何 ヶ月 前 よ り活 動 を 開 始 した か とい うこ とで測 る。 「内定 の数 」、 「企 業 の 訪 問 数 」、 「留 学 期 間 」 は それ らの 素 数 を 用 い る。 「性 別 」 は ダ ミー変 数 を 用 い て 、男 性 を0、 女 性 を1と 置 く。 「就 職 活 動 の 自己 評 価 」 は 「大 変 後 悔 して い る」(=1) か ら 「後 悔 して い ない 」(=4)ま で4段 階 の カ テ ゴ リー で分 け た デ ー タ を用 い る。 「両 親 と の 相 談 」 は 「積 極 的 に 相 談 した 」 と回 答 した デ ー タを 「相 談 」 と して ダ ミー変 数 の1と 置 き、 そ れ 以 外 の回 答 デ ー タは0と 置 く。 クラ ブや サ ー クル な ど の社 会 活 動 に 参 加 して い た 者 は 「クラ ブ等 の参 加 者 」 と して ダ ミー変 数 の1と 置 き、 参 加 して い ない 者 は0と 置 く。 調 査 対 象 者 の英 語 力 は 企 業 が 英 語 力 を 測 る のに 最 も参 考 とす るTOEICの 素 点 を 使 う。 英 語 以 外 の語 学 力 を 測 るに は表8で 示 した4段 階 の カ テ ゴ リーを 作 り、 「読 み 、 書 き 、 話 す と も習 得 した言 語 を 用 い て 仕 事 を 十 分 に こ なせ る程 度 」 と 「現 地 で 日常 生 活 を 送 る のに 困 ら ない 程 度 」 を 「運 用 能 力 が 有 り」 と して ダ ミー変 数 の1と 置 き、 そ れ 以 外 の2つ の回 答 デ ー タを 「運 用 能 力 が 無 い 」 と し て0と 置 く。 就 職 ガイ ダ ン ス の 出席 度 は 「毎 回 出席 」 と 「ほ とん ど 出席 」 を 「ガイ ダ ン ス の 出 席 」 と して ダ ミー変 数 の1と 置 き、 そ れ 以 外 の 回答 項 目は0と 置 く。 「学 業 成 績 」 は1年 次 か ら3年 次 まで 履 修 した 全 科 目の平 均 点 を 採 る。

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表8  回答者の英語以外の語学力の水準 (単 位:人 、%) 読 み 、 書 き、 話 す と も習 得 した 言 語 を 用 い て 仕 事 を 十 分 に こな せ る程 度 現 地 で 日常 生 活 を 送 るの に 困 らな い 程 度 観 光 や 短 期 ホ ー ムス テ イな どで 困 らな い 程 度 英 語 以 外 の 言 語 を 専 攻 した が 、 ほ とん ど使 い もの に な らな い 程 度 5  (5) 17(17) 39(40) 37(38) (注)括 弧 内 の数 字 は全 体 に対 す る割 合 で あ るが 、 小数 点 第1位 を 四 捨 五 入 した た め 、 合 計 の数 字 が 必 ず し も100%に な って い な い 箇 所 もあ る。   よ って 、 就 職 活 動 の成 功 を 規 定 す る要 因 を 測 るた め に 以 下 の2つ の モ デル 式 を 用 意 す る。 モ デル 式1:企 業 の満 足 度=f(企 業 規 模 、 内定 の数 、 性 別 、 活 動 の開 始 時 期 、 活 動 の 自己 評 価 、 相 談 、 訪 問 数 、 クラ ブ、 英 語 力 、 ガイ ダ ン ス、 英 語 以 外 の語 学 力 、 留 学 期 間 、 学 業 成 績) モ デル 式2:企 業 規 模=f(性 別 、 活 動 の開 始 時 期 、 活 動 の 自己 評 価 、 相 談 、 訪 問 数 、 クラ ブ        英 語 力 、 ガイ ダ ン ス、 英 語 以 外 の語 学 力 、 留 学 期 間 、 学 業 成 績) (3)推 計 結 果   就 職 活 動 の成 功 の規 定 要 因 を 検 討 す るた め に 重 回 帰 分 析 を 行 った 結 果 が 、 表9に 示 され て い る。 まず 、 「企 業 に対 す る満 足 度 」 を 規 定 す る変 数 と して、 「就 職 活 動 の 自己評 価 」(1%の 有 意 水 準)が 有 意 な変 数 と して 発 見 され た 。 す なわ ち、 後 悔 を 残 さ ない 就 職 活 動 が 就 職 予 定 の企 業 に 対 す る満 足 度 を 高 め る要 因 に な って い る と示 唆 され る。 後 悔 の残 ら ない 就 職 活 動 を す るた め の学 生 側 のや るべ き 自助 努 力 と して は 、 最 初 に しっか りと した 自己 分 析 お よび 企 業 ・業 界 分 析 を 行 い 、 次 に 早 期 化 して い る企 業 の採 用 プ ロセ スに 乗 り遅 れ ない よ う就 職 活 動 を 開 始 す る こ とで あ る。   また 、 「資 本 金 で測 った企 業 規 模 」 を規 定 す る変 数 と して は、 「留 学 期 間 」(10%の 有 意 水 準) が 有 意 な変 数 と して 発 見 され た 。 回 帰 係 数 の符 号 が マイ ナ スで あ る こ とか ら、 留 学 期 間 が 長 く な る と、 規 模 の大 きい 企 業 に 入 る こ とが 困 難 に な る こ とを 示 唆 して い る。 先 に も示 した よ うに 、 留 学 先 か らの 帰 国 時 期 が4回 生 に か か った 学 生 の 中 に は 、 「就 職 活動 が 遅 れ 、 留 学 で得 られ た 経 験 、 知 識 、 語 学 力 な どを 加 え て も不 利 に 働 い た 」 と回 答 した 者 は か な りの数 に 上 った 。 特 に 、 大 企 業 の採 用 活 動 の プ ロセ スは 中 小 企 業 よ りも早 い た め 、 長 期 留 学 して い た 学 生 の中 に は 就 職 戦 線 に 乗 り遅 れ た 者 もい る と推 論 で き る。 学 生 側 が や るべ き こ と と して は 、 親 な ど の協 力 を 得 て 海 外 か ら も企 業 と の接 触 や 情 報 を 取 れ る体 制 を 整 え る こ とが 重 要 で あ る。 また 、 大 学 側 も4 回 生 に 帰 国 が か か ら ない よ うに 、3回 生 の派 遣 期 間 を 早 め る こ と も考 え て い く必 要 が あ る。

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  一 方 、 上 に 挙 げ た2つ 以 外 の説 明変 数 は 「企 業 に 対 す る満 足 度 」 や 「企 業 規 模 」 を 規 定 す る 要 因 に は な って い ない こ とが 発 見 され た 。 資 本 金 に 反 映 され た 規 模 の大 き な企 業 に 入 れ て も、 学 生 の満 足 度 を 高 め る 「や りが い のあ る仕 事 」 に 就 け る とは 限 ら ない 。 また 、90年 代 のバ ブル 経 済 の崩 壊 で 顕 わ に な った 「大 企 業 病 」 は 、 規 模 の大 きい 企 業 で もい つ まで も安 泰 で は ない と い う教 訓 を残 した 。 更 に 、 多 くの 日本 の 企 業 は新 卒 の学 生 を 即 戦 力 と位 置 づ け て お らず 、 「語 学 力 」 や 「資 格 」 は 採 用 の十 分 か つ 必 要 条 件 に な って い な い こ とが 確 認 され た 。 「学 業 成 績 」 に 関 して も、 表4で 示 した 内定 を 獲 得 す るた め の重 要 な要 素 と して 回 答 した 学 生 は 僅 か1名 で あ り、 そ の変 数 が 計 量 分 析 に お い て も就 職 活 動 の成 功 を 規 定 す る要 素 に な って い ない こ とが 確 認 で きた 。 景 気 回 復 に 伴 う採 用 の拡 大 に よ り、 企 業 は 顕 在 的 能 力 を 持 った 人 材 だ け で は な く、 潜 在 的 能 力 を 持 った 人 材 も採 用 しよ うとす る傾 向を 強 め て い る。 特 に 、 企 業 は 文 科 系 の学 生 に 対 して は 理 科 系 の学 生 に 比 べ る と専 門 性 を 余 り期 待 して お らず 、 専 門 性 を 何 らか の形 で 反 映 し た 「学 業 成 績 」 も余 り重 要 視 して い ない と推 論 で き る。 そ の結 果 、 企 業 は 文 科 系 の学 生 を 採 用 す るに 当 た って 、 全 人 格 的 な視 点 か ら評 価 す る こ とに な る と考 え られ る。   こ の よ うな企 業 の事 情 を 通 じて 、 学 生 の側 も就 職 活 動 の成 功 を 規 定 す る要 因 を 探 りに く くな って い る ので は ない か と推 論 で き る。 就 職 活 動 の成 功 を 規 定 す る特 定 の要 因 は 余 り多 く発 見 さ れ なか った が 、 弁 証 法 的 な意 味 で 言 え ば 、 有 意 の見 出せ ない 様 々 な要 因 とい うも のが 複 雑 に 絡 み 合 い 影 響 しあ って 、 就 職 活 動 の成 功(企 業 に 対 す る満 足 度 や 企 業 規 模)を 規 定 す る要 因 に な って い る と解 釈 で き る。

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表9  就職活動の成功の規定要因         被説明変数 説明変数 就職予定の企業に対す る満足度 資本金で測 った企業規模 資本金 0.046(1.03) -内定の数 -0 .029(0.48) -就職活動の開始時期 -0 .040(-1.10) 0.101(1.02) 就職活動の 自己評価 0.326(4.18)*** -0 .009(-0.04) 企業の訪問数 0.001(0.14) -0 .009(-0.56) 英語力 0.001(1.02) 0.001(0.29) 留学期間 -0 .004(-0.18) -0 .107(-1.72)* 学業成績 -0 .007(-0.47) 0.026(0.65) 性別 0.024(0.12) -0 .204(-0.37) 両 親 との 相 談 0.002(0.02) -0 .317(-0.76) ク ラ ブ ・サ ー ク ル の 参 加 -0 .208(-1.35) 0.325(0.74) 就 職 ガイ ダ ンス の 参 加 0.040(0.56) -0 .422(-0.95) 英語以外の語学力 0.204(0.73) 0.108(0.14) 定数項 3.441(3.09) 1.144(0.38) 自由度調整済み決定係数 0.267 0.088 サ ン プル 数 133 128 (注1)***、*は そ れ ぞ れ1%、10%の 水 準 で 統 計 的 に 有 意 で あ る こ とを 示 す 。 括 弧 内 はt値 。 (注2)資 本 金 が 不 明 な 企 業 が5社 あ るた め 、 「資 本 金 で測 っ た企 業 規 模 」 を被 説 明変 数 に と っ た場 合 のサ ンプ ル数 は128       に な って い る。 6.結 語   80年 代 の終 わ りに 始 ま った バ ブル 期 とは 違 って 、 企 業 が 採 用 の拡 大 を 優 秀 な学 生 のみ に 限 定 して い る状 況 で は あ れ 、 景 気 の 回復 ・成 長 に よ り、学 生 に と って 「良 い就 職 先 」(一 学 生 の満 足 度 の高 い 就 職 先)か ら 内定 を 獲 得 す る可 能 性 が 高 ま って い る こ とは 確 か な事 実 で あ ろ う。 企 業 は 学 生 の評 価 内容 を 全 人 格 的 要 素 な どに 置 くこ とに な り、 そ の結 果 学 生 の絞 込 み が 甘 くな っ て い る。 そ の こ とが 、 実 証 分 析 に お い て 就 職 活 動 の成 功 を 規 定 す る有 意 な要 素 を 余 り多 く発 見 で き なか った 理 由で は ない か と推 論 で き る。 す なわ ち、 学 生 の側 も 「良い 就 職 先 」 か ら 内定 を 得 るた め の特 定 の要 素 を 絞 る こ とが で きず 、 就 職 活 動 に 係 る 明確 な戦 略 も練 りに く くな って い る の で あ る。 就 職 活 動 は大 学 受 験 とは違 っ て、 顕 在 的 能 力(イ ン プ ッ ト)が 就 職 活 動 の 成 功

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(ア ウ トプ ッ ト)に 必 ず しもつ なが る とは 限 ら ない 。 す なわ ち、 学 生(特 に 文 科 系 の大 学 生) に と って 就 職 活 動 とは ブ ラ ッ クボ ッ クス の よ うな も ので あ り、 受 験 勉 強 の参 考 書 に 相 当 す る就 職 活 動 の マ ニ ュアル 本 を 熟 読 して 準 備 して も、 そ れ が 必 ず しも学 生 の満 足 のい く成 果 を 生 み 出 す とは 限 ら ない 。   とは 言 え 、 学 生 が 就 職 活 動 を 行 うに あ た って 最 低 限 の準 備 は 必 要 に な って くる。 そ の最 低 限 の準 備 は 学 生 本 人 の 自助 努 力 で や るべ き こ とで あ るが 、 多 くの学 生 が 自分 の適 性 に 合 った 職 業 を 選 択 で き るか ど うか に 関 して 大 き な不 安 を 抱 い て い る。 そ の点 で 、 大 学 機 関 が そ れ を 円滑 か つ 効 率 的 に 行 え る よ う支 援 す る必 要 が 出て きて お り、 既 存 の就 職 支 援 とは 異 な る プ ログ ラ ムが 策 定 ・実 施 され る こ とが 望 まれ て い る。 具 体 的 に は 、 これ まで 大 学 機 関 に よ って 行 わ れ て きた 企 業 情 報 の提 供 や 就 職 活 動 を 円滑 に 行 う実 践 的 な テ クニ ッ クの訓 練 のほ か に 、 学 生 が 自分 な り の職 業 観 を 持 て る よ う卒 業 生 の講 演 、 イ ン タ ー ン シ ップ の奨 励 、 仕 事 を テ ー マに した 授 業 科 目 の開 講 、 業 界 セ ミナ ー の開 催 な どが 挙 げ られ る。 大 学 生 の就 職 率 の低 下 は 卒 業 後 の進 路 の多 様 化 を 示 す も ので あ る と 同時 に 、 正 社 員 以 外 の雇 用 形 態 の多 様 化 は キ ャ リア の多 様 化 を 意 味 す る も ので あ り、 そ れ に 伴 って 大 学 の就 職 支 援 機 関 も長 期 的 視 点 に 立 った 学 生 のキ ャ リア支 援 を 行 う必 要 が あ る。 厳 しい 職 業 世 界 で 生 き残 って い くに は 、 基 礎 学 力 や 技 能 資 格 だ け で は な く、 経 験 、 潜 在 能 力 、 職 業 観 、 価 値 観 とい った 総 合 力 と して の人 間 力 が 必 要 に な って くる。 少 子 化 時 代 の中 、 大 学 も生 き残 りを か け て 、 そ の よ うな人 間 力 を 学 生 に つ け させ る よ うな教 育 カ リキ ュ ラ ムや 就 職 支 援 プ ログ ラ ムを 策 定 ・実 施 す る時 代 に 来 て い る ので は ない か と考 え られ る。   本 稿 は 就 職 活 動 の成 功 の規 定 要 因 を 学 生 の属 性 や 意 識 か ら見 つ け 出そ うと試 み た が 、 当 然 、 労 働 市 場 に お い て は 企 業 とい う需 要 側 の 要 因 も考 慮 す る 必 要 が あ る。 例 え ば 、 「新 卒 採 用 に 当 た って 、 ど の よ うな人 材 を 求 め て い るか 」 や 「採 用 活 動 の成 功 を ど の よ うな基 準 を も って 判 断 す るか 」 とい った 、 企 業 側 の認 識 に 関 す る分 析 も重 要 で あ るが 、 そ れ は 今 後 の研 究 課 題 と して お きた い 。 注 1)但 し、 就 職 希 望 者 数 で は な く卒 業者 数 を 分 母 に した 比 率 で 見 れ ば72%で あ り、 更 に 入学 者 数 で み れ ば   そ の 数 字 は 更 に 低 くな る。 2)筆 者 が2004年 度 、2005年 度本 学 の キ ャ リア 委 員 と して20数 社 の企 業 を訪 問 した と き、 大部 分 の 企 業 が     「人 材 の 不 足 が 目立 っ て き て い る が 、敢 え て 採 用 予 定 枠 を 埋 め る よ うな採 用 の仕 方 は しな い 」 と答 え   て い た 。 3)『 週 刊 東 洋 経 済 』2005年ll月19日 号(153ペ ー ジ)に よれ ば 、 本 学 の就 職 部 の満 足 度 は 全 国 で 第3位 で   あ った 。

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上 村 和 申 「大 学 就 職 部 の役 割 とそ の変 化-就 職 支 援 か ら キ ャ リア支 援 へ 」永 野仁 編 『大 学 生 の 就 職 と採 用 』     中 央 経 済 社 、2004年 。 金 井 壽 宏 『働 くひ との た め の キ ャ リア ・デ ザ イ ン』PHP新 書 、2002年 。 河 野 員 博 『現 代 若 者 の 就 業 行 動-そ の 理 論 と実 践 』 学 文 社 、2004年 。 厚 生 労 働 省 『雇 用 動 向 調 査 』2001年 。 週 刊 東 洋 経 済 『2010年の 最 強 企 業 』 東 洋 経 済 新 報 社 、2005年ll月19日 。 永 野 仁 「大 学 生 の 就 職 活 動 とそ の 成 功 の 条 件 」 永 野 仁 編 『大 学 生 の 就 職 と採 用 』 中央 経 済 社 、2004年 。 日本 私 立 大 学 連 盟 『第9回 学 生 生 活 実 態 調 査 報 告 書 』1995年 。 日本 労 働 研 究 機 構 『フ リー タ ーの 意 識 と実 態 』2000年 。 根 本 孝 「企 業 の 採 用 基 準 と即 戦 力 採 用 」 永 野 仁 編 『大 学 生 の 就 職 と採 用 』 中 央 経 済 社 、2004年(a)。 根 本 孝 「企 業 か ら の情 報 提 供 とそ の 内容-採 用 の多 様 化 とRJP(現 実 的 仕 事 情 報)」 永 野 仁 編 『大 学 生 の     就 職 と採 用 』 中 央 経 済 社 、2004年(b)。 濱 中 義 孝 「就 職 結 果 の決 定 要 因」 岩 内 亮 一 ・苅 谷 剛 彦 編 『大 学 か ら職 業 へ 皿』 広 島 大学 教 育 研 究 セ ン タ ー、     1998年 。 平 沢 和 司 「就 職 内定 企 業 規 模 の規 定 メ カ ニズ ム」 苅 谷 剛 彦 編 『大 学 か ら職 業 へ1』 広 島 大学 教 育 研 究 セ ン タ ー、1995年 。 本 田 由紀 『若 者 と仕 事 「学 校 経 由の 就 職 」 を 超 え て 』 東 京 大 学 出 版 会 、2005年 。

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矢 島 正 見 ・耳 塚 寛 明 『変 わ る若 者 と職 業 世 界-ト ラ ン ジ ッシ ョンの 社 会 学 』 学 文 社 、2001年 。 労 働 政 策 研 究 ・研 修 機 構 『移 行 の 危 機 に あ る若 者 の 実 像 』2004年 。

参照

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