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基礎教育段階における国語科教材の日中比較 -上の本文と語彙から見る

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(1)基礎教育段階における国語科教材の日中比較 ―一上の本文と語彙から見る― 曲 志強 (厦門大学嘉庚学院) 要旨:日中両国の、小学校一年の子どもに対する国語科教育は、基礎的な言語の 知識の教育と同時に、一人の社会人を育てるための素質教育も行われている。 この二つの目的に達成するためには、幼稚園か保育園から小学校に入り、正式 な「生徒」の身分になったばかりの子どもの特徴を考えながら、それに相応しい 国語の教材を編纂するということは、教育機構としては、当たり前に努力して いることであろう。そのため、日中両国の教育指導機関もそれなりの工夫がな されているし、国語教材の具体的な編纂内容にもそれなりの工夫がなされてい る。しかし、知識教育と素質教育の「重荷」を担う国語教材の構成は、一体どの ような実況であろうか、また、生徒になったばかりの、実質的にはまだ幼児であ る一年生にとっては、国語教材はどのように受けられているのか、これらの問 題は、国語教材の編纂の目的に達成するためには、真剣に検討すべきことであ ろう。本文は、日本で一番広く使われている光村図書が出版した『こくご・一 上』と、中国で一番広く使われている人民教育出版社が出版した『義務教育課程 標準実験教科書・語文・一上』を比較対照する教材にして、これらの問題を具体 的に検討してみたい。 キーワード:国語科教育. 本文テーマ. 語彙特徴. はじめに 国語教育の意味について、「国語科は、人間形成の素地をつくる言語の理解、 表現の能力を育てることに重要なねらいがある。私たちは、言語を媒介として 考えたり、感じたりし、さまざまな事象・事物を認識している。他の人に意思を 伝えることも言語を媒介としている。したがって国語科に課せられる内容は多 岐にわたる。」と植松(2011:3)が指摘している。国語科教育のことを考える には、極めて重要でそして主な「道具」としての国語教材の「重荷」に対する認 識も、極めて重要ではないかと思う。日本で一番広く使われている光村図書に より出版した『こくご・一上』と、中国で一番広く使われている人民教育出版社. 65.

(2) により出版した『義務教育課程標準実験教科書・語文・一上』(以下『語文・一 上』と略す)が、小学校に入った、日中両国の一年生前学期の生徒に、どのよう な第一印象を持たせているのか、また、『こくご・一上』と『語文・一上』は道 徳教育と価値観形成の面では、子どもにどのように影響しているのかというこ とは、本人の基礎教育段階における国語科教材の日中比較研究の第一歩であっ た。結論の一つとして、『こくご・一上』の方は、他人との協調のこと、他人と の繋がりのことの意識育てを強調し、一方、『語文・一上』の方は、個人素質と 個人の能力の育てのことを強調していると指摘した。曲(2018:9)。その研究 の続きとして、本稿は、より自然に「人と人との関わり、繋がり」を強調してい る『こくご・一上』と、より直接的に「愛国主義や勇気などの育て」に力を入れ ている『語文・一上』が各自にどのような本文を選んでいるのか、また、これら の本文を通して、一年生前学期の生徒がどのような語彙を身に付けたのか、具 体的に検討してみたい。これらの問題に関する検討は、日中両国の基礎段階の 国語教育状況に対する認識と把握及び互いの参考になり、日中両国の国語教育 の促進と改善に積極的な意味があるのではないかと、考えている。. 1.明らかに道徳教育と価値観の形成と関連がある本文の内容 国語教材の本文内容のテーマから整理すると、『こくご・一上』と『語文・一 上』の内容を、「1.自然と景色の内容」「2.古典内容」などの八つの種類に分け られる。その中に、1.自然と景色の内容;6、日常生活の内容;7.発音練習の内 容及び 8.仮名、漢字及び数の構成練習の内容は、道徳教育と価値観の形成と関 連がある内容は見当たらないから除外する。より明らかに道徳教育と価値観の 形成と関連がある内容を抽出し、1.古典内容;2.動物関係の内容;3.決まっ た話題について話す練習;4.人間の行動という四つの種類に分けた。なお、研 究の段階と投稿紙面の制限のため、本稿は主に、1.古典内容と 2.動物関係の内 容の二つの部分を中心に、具体的に「本文内容」及び「語彙」という二つの面か ら比較してみたい。 表 1 道徳教育と価値観の形成と関連がある内容の分類対照表 種類名 1.古典内容. 『こくご・一上』の文章名. 『語文・一上』の文章名. 1 おむすび. ころりん. 1 静夜思(『静夜思』). 2 おおきな. かぶ(ロシア). 2 悯农(『農民を憐れむ』). 66.

(3) 2.動物関係. 1 はなのみち. 1 轻轻地(軽く優しく). の内容. 2 ゆうやけ(きつねと友達). 2 在一起(一緒に) 3 有礼貌(礼儀正しい) 4 自己去吧(自分で行こう) 5 一次比一次有进步(毎回毎回 進歩したよ) 6 雪孩子(雪だるま) 7 小熊住山洞(熊さんが洞窟に 住む). 合計. 4. 9. (『語文・一上』の文章名の後に付いている括弧には、著者より訳した文章名の 日本語の意味となる。) 1.1 古典内容の本文 『こくご・一上』には、日本の伝統民話 1「おむすびころりん」とロシアの民 話 2「おおきなかぶ」の二つある。『語文・一上』には、1「静夜思(静夜思)」 と 2「悯农(農民を憐れむ)」の二つの内容がある。『こくご・一上』の「おむ すびころりん」は、「感性や情緒の育み」や「歴史の伝統の認識」及び「日本人 としての誇りの感受」の役割がある(植松 2011:13)。「おおきなかぶ」の内 容は、「みんなで協力し合ったら、できなさそうなことでもやりぬけるよ」とい う価値観を生徒に伝えたかったのではないかと思う。一方、『語文・一上』の方 は、唐の有名な詩人の李白の 1「静夜思」が故郷への思念の意を誘い、李紳の 2 「農民を憐れむ(悯农)」が、昔の農民さんの哀れな生活を理解し、思いやりの 感情を育てるというのが主旨ではないかと思う。また、『こくご・一上』と『語 文・一上』の古典内容の本文を比べてみると、小学校一年前期の生徒にとって は、内容の面白さと難しさの区別が明確で、与える思想的な重みも違うであろ う。 1.2 動物関係の内容の本文 『こくご・一上』には、1「はなのみち」と 2「ゆうやけ(きつねと友達)」 の二つの内容がある。『語文・一上』には、1「轻轻地(軽く優しく)」、2「在 一起(一緒に)」、3「有礼貌(礼儀正しい)」、4「自己去吧(自分で行こう)」、. 67.

(4) 5「一次比一次有进步(毎回毎回進歩したよ)」、6「雪孩子(雪だるま)」、7 「小熊住山洞(熊さんが洞窟に住む)」など 7 つの内容もある。『こくご・一 上』の 1「はなのみち」は、くまさんが不意に花の種を山道に撒いたため、春風 が吹いたら、花の一本道ができたという面白くて暖かくてよい香りがする物語 を通して、「意識的にやらなくても、良い事をしたらきっといい結果になるよ」 という認識を生徒に伝えるためであろう。また、2「ゆうやけ(きつねと友達)」 は、3 匹の小動物の仲良く付き合う物語を通し、「他人の長所かいいところを発 見すべきこと」、「自分の長所かいいところがきっと他人に認められること」を 極めて自然的に生徒に理解させ、無理やり「謙虚にいるべきだ」か「他人の長所 を認めるべきだ」のような説教っぽい言葉を使用していない。これと対照的に、 『語文・一上』の動物関係の内容は、面白い動物の話でありながら、「何々すべ きだ」か「何々してはいけない」かのような価値判断の感じが強そうである。ま とめてみると、1 の「轻轻地(軽く優しく)」は、公共施設の芝生を踏んだら 相手にされないよ、7 の「一次比一次有进步(一歩一歩進歩している)」は、 努力して進歩したら肯定されるよ、11 の「小熊住山洞(熊さんが洞窟に住む)」 は、自然を守るなら感激されるよ、のように、要求或いは指導の通りにしたら 認められる、推奨されるひいては感激されるという意識を生徒に伝えるため であろう。. 2.明らかに道徳教育と価値観の形成と関連がある本文の語彙 以上の本文は、どのような語彙によって構成されているのか、その語彙の特 徴を明らかにすると、生徒がどのような語彙を身に付け、そして、このような語 彙を身に付けた生徒は、どのような作文を作る可能性があるのか、具体的に検 討する可能性が出てくるであろう。 2.1 古典内容の語彙 『こくご・一上』の日本の伝統民話 1「おむすびころりん」とロシアの民話 2 「おおきなかぶ」によって生徒が触れる語彙と、『語文・一上』の唐の詩人李白 の 1「静夜思」と李紳の 2「悯农(農民を憐れむ)」によって生徒が触れる語彙 を以下の表 2 にまとめている。なお、括弧内は筆者による訳語である。. 68.

(5) 表 2 古典内容によって触れる語彙対照表 種類名. 『こくご・一上』の古典内容. 『語文・一上』の古典内容の語. の語彙. 彙. 1.古典内容. 1「おむすびころりん」の語. 1「静夜思」の語彙:. の語彙. 彙:. 床(ベッド)、前(前)、明(明. むかし、はなし、やま、はた. るい)、月光(月光)、 疑(疑. け、たがやす、おなか、すく、 う)、是(である)、地上(地 おじさん、そろそろ、おむす. 上)、霜(霜)、 举(挙げる)、. び、たべる、つつみ、ひろげ. 头(頭)、望(見る)、明月(明. る、とたん、ひとつ、ころが. 月)、 低(下げる)、思(偲. る、ころころ、ころりん、か. ぶ)、故乡(故郷)。(15). けだす、まつ、すみ、あな、 なか、すっとんとん、とびこ む、のぞむ、まっくら、みみ、 あてる、きこえる、これ、お もしろい、ふたつめ、ころん と、ころがす、おなじ、うた、 なんか、わすれる、しまう、 あわせる、おどりだす、あし、 すべる、じぶん、ねずみ、お うち、たくさん、ありがとう、 おいしい、ごちそう、どうぞ、 おどり、みる、おれい、こづ ち、あげる、て、もつ、かえ る、おばあさん、おどる、ふ りふり、すると、どう、する、 たび、あれ、しろい、おこめ、 ざあらざら、きん、こばん、 ざっくざく、それから、ふた り、いつまでも、なかよく、 たのしく、くらす。(80). 69.

(6) 2「おおきなかぶ」の語彙:. 2「悯农(農民を憐れむ)」の. おじいさん、おおきな、かぶ、 語彙: たね、まく、あまい、なる、. 锄(鋤く)、禾(穀物苗)、日. ぬく、うんとこいしょ、どっ. (日)、当午(正午)、 汗(あ. こいしょ、けれども、よぶ、. せ)、滴(滴る)、下(下)、. ひっぱる、やっぱり、まご、. 土(土)、谁(誰か)、知(分. いぬ、ねこ、とうとう、ぬけ. かる)、盘(食器)、中(中)、. る。(19). 餐(食べ物)、 粒(一粒)、皆. (同じ種類の内容であるか. (全部)、辛苦(苦労)。(16). ら、前の本文に出てきた語彙. (同じ種類の内容であるから、. が再び出たら除かれる). 前の本文に出てきた語彙を再 び出たら除かれる). 合計. 99. 31. 日中両方とも古典のジャンルであるが、民話と詩の区別があるから、出てき た語彙の数の違いが大きい。ただ、語彙の特徴として、『こくご・一上』の古典 の方は、基本的に日常生活の中で使われるものの範囲に抑えられている。要す るに、日常用語で物語をしている感じであり、内容的には面白いが、別に言葉的 に難しさがなさそうである。特に、リズム感の強い「ころりん. すっとんとん」. か、「うんとこいしょ どっこいしょ」のような擬音語擬態語は、模倣力の強い 生徒にとっては、魅力的な学習の内容であろう。一方、『語文・一上』の古典の 方は、そもそも唐の詩歌の中でより簡単な内容であるが、一年生の生徒にとっ ては、それなりの難しさがある。また、語彙的に見れば日常的にあまり使わない 単語が多数あり、リズム的にいいが暗唱できてもわざわざ使わない場合、日常 的にあまり触れない内容であろう。 2.2 動物関係の内容の語彙 『こくご・一上』の 1「はなのみち」と 2「ゆうやけ(きつねと友達)」の二 つの内容によって生徒が触れる語彙と、『語文・一上』の 1「轻轻地(軽く優し く)」から 7「小熊住山洞(熊さんが洞窟に住む)」によって生徒が触れる語彙 を表 3 にまとめる。. 70.

(7) 表 3 動物関係の本文内容に触れる語彙対照表 種類名. 『こくご・一上』の動物関. 『語文・一上』の動物関係の本文内容. 係の本文内容の語彙. の語彙. 2. 動 物. 1「はなのみち」の語彙:. 1「轻轻地(軽く優しく)」の語彙:. 関係の. はな、みち、くま、さん、 轻轻地(軽く優しく)、小兔(子ウサ. 内容の. ふくろ、みつける、なに、 ギ)、跳(とぶ)、小狗(子犬)、慢. 語彙. いっぱい、入る、ともだ. 慢(ゆっくり)、跑(走る)、要是(も. ち、りす、きく、いく、あ. し)、踩疼(踏んで傷つける)、小草. ける、しまう、あな、あく、 (草)、我(わたし)、就(すると)、 あたたかい、かぜ、なが. 不跟(相手にしない)、你们(あなた. い、いっぽんみち、でき. 達)、好(仲良し)。(14). る。(22). 2「在一起(一緒に)」の語彙: 小黄鸡(黄色いヒヨコ)、小黑鸡(黒. 2「ゆうやけ(きつねと友. いヒヨコ)、欢欢喜喜(楽しそうに)、. 達)」の語彙:. 在一起(一緒にいる)、刨土(土を掘. ゆうやけ、きつね、こ、あ. る)、捉虫(虫をとる)、青草(青草)、. たらしい、ズボン、はく、 地上(地面)、做(する)、游戏(遊 いろ、まえ、おなじ、あか、 び)。(10) ひとまわり、おおきい、ポ. 3「有礼貌(礼儀正しい)」の語彙:. ケット、ふたつ、つく、い. 大公鸡(おんどり)、有礼貌(礼儀正. い、とっても、おがわ、み. しい)、见了(会ったら)、太阳(太. ず、すがた、うつす、うっ. 陽)、问好(挨拶)、公公(おじいち. とり、みずあそび、おも. ゃん)、眯眯(目を細める)、笑(笑. う、よごす、やめる、ひる. う)、. すぎ、くさはら、でかけ. 一顶(一つ)、大(大きい)、红(赤)、. (奨励する)、他(かれ)、. る、うさぎ、あう、どっち、 帽(帽子)。(14) きがつく、けれど、にひ. 4「自己去吧(自分で行こう)」の語. き、あそぶ、こと、むちゅ. 彙:. う、すこし、なかまいり、 自己(自分)、去吧(行こう)、小鸭 うち、わすれる、ころげま. (家鴨のヒヨコ)、说(言う)、妈妈. わる、とびはねる、やが. (お母さん)、您(母上)、带(連れ. 71.

(8) て、ゆうがた、そらいちめ. る)、游泳(泳ぐ)、好吗(いい?)、. ん、ひ、ひろがる、まっか、 小溪(渓流)、水(水)、不深(深く ほう、みる、そして、あた. ない)、过(過ぎる)、几天(何日か)、. らしい、くちぐち、こえ、 学会(身に付けた)。小鹰(鷹のヒヨ あげる、ちょっと、りょう. コ)、想(思う)、山(山)、那边(向. て、つっこむ、にっこり、 こう)、看(見る)、风景(風景)、 いい. 、うなずく、さんび. 很(とても)、美(美しい)、飞翔(飛. き、した、かた、ならべる、 ぶ)。(24) かえる、ながい、かげぼう. 5「一次比一次有进步(毎回毎回進歩. し、あと、つく。(72). したよ)」の語彙:. (同じ種類の内容である. 菜园(菜園)、冬瓜(冬瓜)、茄子(茄. から、前の本文に出てき. 子)、躺(横になる)、挂(掛ける)、. た語彙を再び出たら除か. 屋檐(軒)、燕子(燕)、小燕子(燕. れる). のヒヨコ)、你(君)、到(行く)、 什么(何か)、不一样(違う)、回来 (帰る)、大(大きい)、小(小さい)、 对(正しい)、能不能(どうか)、再 (再び)、还有(また何か)、又(ま た)、叶子(葉っぱ)、绿(緑)、紫 (紫)、点点头(頷く)、可是(しか し、)、仔细(しっかり)、它们(か れら)、高兴(嬉しい)、发现(発見)、 皮(皮)、细毛(細い毛)、柄(柄)、 刺(刺)、. 步(進歩). (34). 6「雪孩子(雪だるま)」の語彙: 雪(雪)、孩子(子ども)、下(降る)、 一天一夜(一日一夜)、房子(家屋)、 树(木)、找(探す)、吃的(食べ物)、 堆(積み上げる)、漂亮(きれい)、 让(させる)、真(本当に)、唱(歌 う)、跳(跳ぶ)、玩(遊ぶ)、开心. 72.

(9) (楽しい)、累(疲れる)、回家(帰 宅)、休息(休む)、屋子(部屋)、 冷(寒い)、火(火)、加(入れる)、 一些(少し)、柴(薪)、上床(ベッ ドに入る)、睡觉(寝る)、烧(焼く)、 睡得正香(ぐっすり眠る)、一点(全 然)、知道(知る)、着火(失火)、 飞快(早い)、大火(猛烈な火)、救 出(救出)、却(逆に)、化(変わる)、 哪里(どこ)、飞(飛ぶ)、空中(空)、 成(なる)、朵(一片)、很美(本当 に美しい). 白云(白雲)。(44). 7 小熊住山洞(熊さんが洞窟に住む) 住(住む)、山洞(洞窟)、爸爸(お 父さん)、我们(私たち)、砍(切る)、 造(作る)、间(棟)、木头(木)、 春天(春)、他们(かれら)、森林(森)、 长满(いっぱい生える)、舍不得(惜 しむ)、夏天(夏)、开满(いっぱい 咲く)、秋天(秋)、结满(いっぱい 実る)、果子(果物)、冬天(冬)、 有(いる、ある)、许多(たくさん)、 鸟(鳥)、一年(一年)、动物(動物)、 都(みんな)、感激(感謝)、一家(一 家)、送(贈る)、束(束)、鲜花(生 花)。(30) (同じ種類の内容であるから、前の本 文に出てきた語彙を再び出たら除か れる) 合計. 94. 170. 73.

(10) 青木(2016:4)は、子供の言葉の力をつけることについて、「子どもの学び は、思考も表現も、言葉が支えています。ですから、子どもの学びをつくる力を つけることは、言葉の力をつけることと切り離して考えることはできません」 と指摘している。以上の動物関係の本文内容の語彙を比較して分かるのは、『こ くご・一上』と『語文・一上』にでた語彙自身は、例えば、自然景色の語彙、動 物自身の動作の語彙、気持ちの語彙などには、両方通用とも言えるであろう。し かし、よく分析してみると、他人から或いは外界からの「判断」に関係する語彙 の存在か否かは、本文のより明らかな説教か指導の部分が含まれているか否か に関わっている。『語文・一上』の動物関係本文の 1「轻轻地(軽く優しく)」 の「不跟(相手にしない)」、3「有礼貌(礼儀正しい)」の「 (奨励する)」、 4「自己去吧(自分で行こう)」の「学会(身に付けた)」、5「一次比一次有进 步(毎回毎回進歩したよ)」の「. 步(進歩)」、6「雪孩子(雪だるま)」の. 「很美(本当に美しい)」、7 小熊住山洞(熊さんが洞窟に住む)の「感激(感 謝)」などの語彙は、まさに直接他人から或いは外界からの「判断」に関係する 語彙か、その「判断」に使われるものである。一方、『こくご・一上』の語彙に は、「判断」に関係するものは 2「ゆうやけ(きつねと友達)」の「いいよ」の 一つで、あっても本文の前後内容から見れば「だからそうすべきだ」のような説 教か指導の意味は全然含まれていない。要するに、『こくご・一上』と『語文・ 一上』の動物関係の本文の語彙には、両方とも日常的なものが多く、直接政治的 道徳的な語彙が少ない。ただ、キーワードみたいな肝心な「判断」に関係する語 彙が幾つかあったら、もう十分機能しているのであろう。このような、キーワー ドみたいな肝心な「判断」に関係する語彙を身に付けるか否かによって、日本と 中国の一年生の生徒の作文には、それなりの違いがでるのではないかと推測し たい。. 3.おわりに 蒋蓉(2015:12)は、国語課程の機能について、「国語課程はこのようなも のであるはずだ:言語の発展、思惟の発展、文化の伝承を図ると同時に、生徒の 人格を育て、その個性を発展させ、その社会性を促進し、そして、その審美や情 趣、文化的品位を高めるものである」(原文は中国語で筆者訳、以下同。)と強 調している。もちろん、日本でも中国でも、小学校一年の子どもに対する国語科. 74.

(11) 教育は、基礎的な言語の知識の教育と同時に、素質教育も行われている。追求す る目標は「社会人を育てる」において、大きな違いがないであろう。言語の学習 は、一人間の思想の成長に最も直接的な繋がりであり、国語科教材の一つ一つ の内容は、正にその役割を担っている。以上の『こくご・一上』と『語文・一上』 の「本文の内容」と「語彙」を比較し分析してその教育の具体的な方法の異同が 見えてきた。陳桂生(2007:122)は、中国における「道徳教育」について、「我 が国の『道徳教育』は総体的に道徳説教、社会―政治的な説教に傾いている。こ れは、普遍的に認識されている問題である。長年以来、『道徳教育』の実践にお いて、この簡単な説教の局面を変えるため少なからぬ実験をした。しかし、長い 間、大まかな『教育』概念に満足してきたから、教育・訓練と感化の区別及びそ の各自の局限を分からず、いろんな単純説教を変える実験は結局彼方此方顧み る余裕がなかった。努力はせいぜい表面的な成果に止まり、真の実効を得難い」 と述べている。ここでの「教育」は、直接生徒に対しての「説教」につながりが ちで、「感化」はより自然的に生徒に「人生の道理」を分ってもらいやすいこと であろう。これからの低学年の「語文」の内容の編纂にその両方のバランスを調 整することは、「教育」と「感化」の区別と各自の局限を真剣に考えることで、 『こくご・一上』の本文の構成は参考に資する部分があるのではないかと思う。 (中国厦門大学嘉庚学院多元文化交流研究中心 付. 副教授). 記 本研究は、中国語情与社会発展研究中心の 2016 年度の研究支援を受けてい. る。プロジェクトのテーマは、「中日基礎教育語文教育政策及教材対比研究」 (YQYB16-02)である。 参考文献 曲志強(2018)「中日小学母语教材道德和价值观教育内容之对比研究—以一年 级上册为例-」『北華大学学報』2018 年第一号 青木伸生(2016)『ゼロから学べる小学校国語科授業づくり』明治図書 植松雅美(2011)『小学校指導法. 国語』玉川大学出版部. 蒋蓉(2015)『小学語文課程与教学論』北京師範大学出版社. 75.

(12) 陳桂生(2007)『中国徳育問題』福建教育出版社 『こくご・一上』(2016 版)光村図書 『義務教育課程標準実験教科書・語文・一上』(2001 版)人民教育出版社. 76.

(13)

表 2  古典内容によって触れる語彙対照表  種類名  『こくご・一上』の古典内容 の語彙  『語文・一上』の古典内容の語彙  1.古典内容 の語彙  1「おむすびころりん」の語彙:  むかし、はなし、やま、はた け、たがやす、おなか、すく、 おじさん、そろそろ、おむす び、たべる、つつみ、ひろげ る、とたん、ひとつ、ころが る、ころころ、ころりん、か けだす、まつ、すみ、あな、 なか、すっとんとん、とびこ む、のぞむ、まっくら、みみ、 あてる、きこえる、これ、お もしろい、ふたつめ、ころん と、ころがす、
表 3  動物関係の本文内容に触れる語彙対照表  種類名  『こくご・一上』の動物関 係の本文内容の語彙  『語文・一上』の動物関係の本文内容の語彙  2. 動 物 関 係 の 内 容 の 語彙  1「はなのみち」の語彙: はな、みち、くま、さん、ふくろ、みつける、なに、いっぱい、入る、ともだ ち、りす、きく、いく、あ ける、しまう、あな、あく、 あたたかい、かぜ、なが い、いっぽんみち、でき る。(22)  2 「ゆうやけ(きつねと友 達)」の語彙:  ゆうやけ、きつね、こ、あ たらしい、ズボン、はく、

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