第161回 月例発表会(2015年4月) 知的システムデザイン研究室
CGM
森村 周平,松本 大樹
Shuhei MORIMURA
,
Taiki MATSUMOTO
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はじめに
1990年代,情報を発信するためのデバイスは一般の人 達には普及しておらず,多くの人は情報を発信する手段 を持っていなかった.情報を発信するための手段を持っ ていない人にとって情報は受け取るものであり,情報の 発信者と情報の受信者とが明確に別れていた.しかし, ブロードバンドやインターネットに接続可能な携帯電話 やPCが普及するようになり,多くの人がインターネッ トを利用するようになった.2000年代には,インター ネットの世帯普及率が80%を上回り,それまで情報を受 信するだけであった人も情報を発信するようになった. これにより,利用者の間で情報を送受信することが可能 なメディアとしてCGMが普及し始めた.2
CGM
2.1 CGMの概要CGMとは,Consumer Generated Mediaの略であり, ユーザ生成コンテンツとも呼ばれており,消費者自身が 直接情報を生成や発信し,他の消費者と容易に情報をや りとりすることを可能にしているメディアである.1) 現 在,CGMはAmazonのレビューのように商品の使用感 を主体的に記すものや,Twitterのように日常に起こっ た出来事を綴るものなどの様々な表現形態で広く用いら れている. CGMが台頭し始める以前に用いられていた利用者が 情報を発信せずに情報を受信するだけのメディアを掲載 型メディアと言う.掲載型メディアでは消費者と企業の 間での通信が主体であったが,CGMでは消費者同士で の通信が主体になっている.CGMによる情報の動き方 をFig. 1に,掲載型メディアによる情報の動き方をFig. 2に示す. Fig.1 CGMのネットワーク Fig.2 掲載型メディアのネットワーク 2.2 CGMの実用例 CGMは日常生活の様々な部分において使われている. 実用例を以下に示す. • Twitter Twitterとは友人や知人の間において,コミュニ ケーションを容易に行うことができるWEBサイト である.オンラインにより世界中の人とつながるこ とができるため,対面コミュニケーション以上に消 費者間の対話を速く,広く促進することができる. さらにリアルタイムにつながっているため,自らが 発信した情報に対してレスポンスを得ることが容易 であり,人とのつながりを深く感じることが可能で ある. • ニコニコ動画 ニコニコ動画とは動画共有サービスであり,動画 の投稿や動画に対してコメントの送信ができる.そ して,他の利用者のコメントや動画から情報を得た 利用者が得た情報をもとに新たな情報を発信するこ とが可能である.こうした創作が創作を呼ぶ連鎖反 応が生じ,その仮定で複数の作品の良いところが掛 け合わして良質な作品が生むことが可能であり,人 気が高まっている. • 食べログ 食べログはグルメサイトと呼ばれる飲食店を評価 するサイトの1つである.しかし,よくあるグルメ サイトと異なる点としてお店から発信された情報を 掲載しているのではなく,利用者が実際にお店に行っ た感想を掲載している.そうすることで食べログの 利用者はお店視点でのお店に都合の良い情報ではな く,他の利用者が実際に行って感じたことを知るこ とが可能である.これによって利用者視点での情報 1
を入手することができる.
2.3 CGMによる市場の移り変わり
CGMが誕生する以前,AIDMAと呼ばれる購買モデ
ルが用いられていた.AIDMAモデルでの購買の流れを
Fig. 3に示す.
Attention Interest Desire Memory Action
Fig.3 AIDMAの購入プロセス AIDMAの法則は消費者があるモノを知ってから購入 に至るまでのプロセスのひとつである.ある商品を購入 する際,その商品を知り,興味を持ち,欲しいと思い,記 憶し,購入するという5つのプロセスで構成されている. AIDMAにおける購入モデルでは商品を買ったところで プロセスが終了し,商品と購入者の関係が終わる.当時 は消費者が商品に関わるのは商品を購入するまでに限ら れていたため,この購入プロセスでも問題がなかった. しかし,CGMの台頭によってAISASと呼ばれる購買 モデルが用いられるようになった.AISASモデルにおけ る購入の流れをFig. 4に示す.
Attention Interest Search Action Share
Fig.4 AISASの購入プロセス AISASの法則は消費者があるモノを知ってからのプロ セスのひとつである.ある商品を購入する際,商品を知 り,興味を持ち,欲しいと思い,購入し,それを他の人と 共有するという5つのプロセスで構成されている.この AISASのプロセスが従来のAIDMAと大きく変わった 点は購入した後もプロセスが続く点である.AIDMAで は購入することで全プロセスが終了するため,購入後は その商品の市場に影響することは無い.しかし,AISAS の場合購入した後にそれを他の利用者に対して共有する ことが加わるため,購入者以外の利用者に対して働きか ける.購入者が発信した情報によって,新しく商品を購 入する人が表れるというサイクルが何度も行われるのが AISASの特徴である.これはCGMが広まったことによ り,情報を容易に発信することができるようになったた め生じたプロセスの変化である.これまで,企業などか らしか受け取ることのなかった情報を他の消費者からも 受け取ることができるようになった.しかし,これによ る弊害も同時に発生している. 2.4 CGMの問題点 CGMの問題点として情報に対する信頼性が上げられ る.CGMが台頭してくる以前から使用されている通信 方法では,情報が発信される前にテレビ局や企業などの メディアを通している.知名度が高く,かつ専門性の高 いメディアを通すことによって信頼性の高い通信となっ ている.一方,CGMでは誰の審査も受けることなく情 報を発信することが可能なため,ウェブから得られる情 報に対する信頼性が著しく落ちる.また,発信源から情 報の信頼性を図ろうにも,情報の発信者が誰であるかが 分からない場合が多いため,発信元から情報の信頼性を 図ることができない.そのため,利用者は正しい知識を 身につけた上で膨大な量の情報を取捨選択しなければな らない. 2.5 問題点の改善の方法 得られる情報の信頼性に対する判断が消費者に一任さ れるが,それだと情報を十分に活用することが容易でな い.それを防ぐための処置として使われている方法が関 連情報の内から,信頼できる情報と出来ない情報を選り 分ける方法である.そのためには利用者同士が繋がって いることを利用して,他の利用者にその情報が信頼でき るかどうかを判断してもらえば良い.つまり,ある利用 者が出した情報をさらに他の利用者が正しいかどうかを 判断するという方法である.これにより,利用者が信頼 できる情報か信頼ができない情報であるかどうかの一つ の目安とすることができ,情報を取捨選択するための労 力を減らすことが可能だろう.