学校教育臨床連合講座の課題
2
0
0
全文
(2) 走,殺傷),虐待や犯罪・災害とPTSD等,今日社会をにぎあ. 応させる(挙手させる)かしない限り,その子の状態を把握. わせている問題が含まれている。さらには,児童生徒の無気. することはできない。全体の子どもの意識・思考・情緒を把. 力・無関心・無責任・無感動・無作法・無自覚,洩範意. 握しながら,個性的で独創的な反応は取り上げ受容・賞賛し,. 識・道徳意識・思いやりの低下,自己統制の低下・欠如. 教師の期待する表出反応とは異なる反応や明らかに誤った表. (すぐにむかついて切れる),指示待ち人間・マニュアル人間. 出反応には,その思考のプロセスを理解し,それを認めた上. の増加,人間関係の希薄化,幼児性・自己中心性等とい. で,教師の望む方向へ子どもの思考を方向付けなければなら. った用語で表現されている問題も含まれている。児童生徒が. ない。このとき,教師が子どもの表出反応に対する対応と方. 抱えている問題の多くを教師も抱えており,この他に教師の側. 向付けを間違うと,場合によっては子どもは傷つき,子ども独. に特有の「指導力不足」の問題や「体罰」 「セクハラ」とい. 自の個性的思考が停止したり,あるいは,以後表出しなくな. った問題もある。. る場合もある。こうなると子どもの主体的・個性的・独創的 思考の様式を阻害するばかりか,人格をも傷つけてしまい,. 児童生徒や教師は教育現場に限ってみても様々なストレッ サーに曝されており,強いストレスを抱え込んでいる。生き生き. 教師との信頼関係まで損ねてしまう可能性さえある。. とした学校生活を送れるようにするための予防的方法の問題 も含め,これらの問題はすべて研究課題となる。. また,まったく発言しない子どもの思考をどう把握し,援助 するのか,あるいはついて行けていない子どもの瞬時瞬時の 思考や情緒をどう把握し,援助するのか?こういった問題をど う研究するのか?教師と子どもで構成される集団の中で,隻. 4.学校教育臨床学における研究方法論上の課題 前述の学校教育における臨床的課題を解決するための研. 団を構成するメンバーがお互いに瞭時瞬時に影響しあいなが. 究方法論は教育臨床講座を構成する既存の学問(教育学,. ら思考を展開していく授業がよりよい授業,落ちこぼれのない. 臨床心理学,医学)の方法論を借用することになる。既存の. 授業,主体的参加と個性的・独創的思考を育てる「楽しくて. 学問である教育学, (臨床)心理学,医学が前項で述べた. よく分かる授業」にするにはどのようにすればよいのか?そして,. 課題を解決する方法論を検討することが当面の課題であろう。. 確かに「楽しくてよく分かる授業」が展開されていることを瞬. 臨床心理学の立場の方法論には,借り物もあるが,エスノ. 時瞭時に評価するにはどのようにすればよいのか?この問題を. グラフイ-,ケース・スタディ,現象学的方法,グラウンデイッ. 解決する方法論の開発が最も重要な課題のように思われる。. ド・セオリー,参加型調査,臨床研究,フォーカス・グループ. この方法論が開発されなければ,授業からの落ちこぼれを防. 等の質的研究法,事例研究法,フイ-ルド・ワーク,機能分. ぐことはできない。そして, 「授業がわからない。授業が面白. 析法,認知心理学的方法,神経心理学的方法,社会心理. くない」という子どもを出さない「予防的学校教育臨床」の. 学的方法などがある。. 最大の目的は達成されないことになる。. しかしながら,学校教育臨床実践が独自の学問として成. こうした授業の臨時瞬時のプロセス分析に基づく子どもへ. 立するためには臨床実践を通して自前の方法論を開発できる. の対応は授業実践者が行う他ない。授業実践者が自ら実践. かどうかにかかっている。この「自前の方法論の確立」が学. を行いつつ研究をも行うとすれば,授業実践者の記憶に頼る. 校教育臨床実践にとって最も重要で急を要する課題であると. しかないのか?授業実践を客体化して観察する研究者が研. 言えよう。. 究するしかないのか?観察だけすればよい第三者としての研. 既存の研究方法論を用いて教育実践にかかわる臨床上の. 究者であっても,授業を中断せず,すべての子どもの意識・. 問題を研究しているうちに,新たな実践学独自の方法論が必. 思考・情緒の状態を把握し,それを記録に残すことは今のと. 要となり,その方法論が開発されることが期待される。. ころ不可能であろう。授業実践者と研究者とのコラボレーショ. 教育実践の中心は授業であろう。この授業では,教師の. ンに基づき,子どもの思考様式や情緒反応様式を事前に徹. 教材を用いた発間があり,それを刺激とし子どもの思考が生. 底的に調べ,話し合い,授業の準備を行い,授業はビデオ. じ,ある子どもの表出反応が生じる。その表出反応が刺激と. で記録し,授業中発言のない子どもや,自分の発言を教師. なり,教師及び他の子どもの思考に影響を与え,教師または. に介入された子どもの意識・思考・情緒の状態をその子の. 子どもの表出反応が生じる。この連鎖が続く。教師は授業の. そばに行って確認していくことも考えられるが,その行為がま. ねらいとする方向へ子ども達の思考を方向付けていく。このプ. た変数となってしまう。 個によりそう臨床心理学的方法論が教育実践研究の方法. ロセスは瞬間瞬間,時々刻々と変化していく途切れることの. 論の開発に知見を与えてくれる可能性がある。. ない意識や思考や情緒の流れである。このプロセスの中で, 教師は多数いる子どもの一人一人についてその意識や思考. 一参考文献一. や情緒の状態とその変化を瞬時に把握し,目的とする方向 へ導いていかなければならない。教師が期待する意識や思考. 上寺久雄(1988)学校教育実践学研究(I) -学校教育. あるいは情緒の状態とは異なる状態を示している子どもがいた. 実践学の構築をめざして一序文昭和62年度教育研究学. 場合,教師はその子どもに表現させるか,イエスかノーで反. 内特別経費による研究プロジェクト兵庫教育大学編. -125-.
(3)
関連したドキュメント
仏像に対する知識は、これまでの学校教育では必
教育・保育における合理的配慮
1-1 睡眠習慣データの基礎集計 ……… p.4-p.9 1-2 学習習慣データの基礎集計 ……… p.10-p.12 1-3 デジタル機器の活用習慣データの基礎集計………
子どもが、例えば、あるものを作りたい、という願いを形成し実現しようとする。子どもは、そ
目標を、子どもと教師のオリエンテーションでいくつかの文節に分け」、学習課題としている。例
どんな分野の学習もつまずく時期がある。うちの
子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい
◯また、家庭で虐待を受けている子どものみならず、貧困家庭の子ども、障害のある子どもや医療的ケアを必