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エラーの原因としての外插法 : 数学教育における理解と表象の研究(II)

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Academic year: 2021

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(1)19. 数学教育における理解と表象の研究(Ⅱ). エラーの原因としての外描法 川言i'.S /,:・ (平成4年9月27日受理) 0.緒言 算数」数学の学習において,さまざまな誤りが発生する.たとえば, 2+4. というような計算での誤り,あるいは, 「正三角形は3つの辺か等しいので,二等辺三角形ではない」 といった図形の判別に関わる誤りなどがあげられる.前者は手続き的知識の欠陥のために, 後者は概念的知識の欠陥のために,現れてくる誤りということができよう. 本稿では,こうした誤りが発生する認知的プロセスを分析するとともに,その発生原因 が算数・数学の学習過程に本来的に組み込まれている点を指摘する.そして,少しでも誤 りを避けるための指導法について若干の考察を加えることを目的とする. 次節で詳しく述べているが,本稿では,ある種の誤りをェラーと呼んでいる.要約すれ ば,エラーとは, 「以前に獲得された知識に基づき,繰り返し起こる失敗」のことである. さて,このようにエラーを捉えたところで,その原因を究明するにあたっては,さまざ まなレベルの視点が考えられよう.たとえば,エラーを引き起こす知識の特定,そうした. 知識が獲得される(構成される)認知メカニズムの解明,または,知識運用における情報 処理プロセスの追跡などがあげられよう.すなわち,知識の状態そのもの,知識獲得の認 知的様相,知識運用段階における処理の様式などの,いずれに視点を当てるかによって自 ずと研究対象やその方法も変ってくるのである.勿論,これらは,それぞれ別々に存在す るものではなく,相互に密接な関連をもっていると考える方が妥当であろうが,分析に先 だってそれらを明確に意識しておくことも必要であると思われる. 本稿では,その視点を,知識獲得の認知的様相においている.そして,考察を進めるに あったて,主に, Matz,M.(1982)の外描法(extrapolation)という概念を取り上げ,エラー 分析の切口として行きたい. 1.エラーについて 「誤り」といっても,算数・数学の学習場面で発生するものは,そのタイプにさまざま なものがあり,その分類法にも種々ものが考えられよう.上述のように,原因となる知識 の枠組でもって分類することも一つの方法である. また, 「誤り」をその発生頻度,出現傾向などによって分類することもできる。たとえ ば, Cox, L.S.(1975,p203)は, systematic errorsとrandom errorsを次のように規定 し,計算問是酌こ対する「誤り」をかなり明確に分類している.. .兵庫教育大学第3部(自然系教育講座).

(2) 20. systematic errors. ……間違った答えが繰り返し起こり,つまり,ある特定のアルゴリズムを使ったと いう証拠があり,あるタイプの問題5間中3間において,その誤りが発生する 場合. random errors. ……5間中3問において誤りが起こったとしても,間違った思考過程が繰り返され たという証拠がない場合. ここでの5間中3間という規定は,彼の研究における実験結果を統計的に処理するため に便宜上設けられたものと考える方がよいであろう.しかしながら, 「誤り」を体系的 (systematic)に生起するものとランダムに生起するものに分類する方法は,我々の常識と もうまく合致する.つまり,前者は間違った知識(理解)や不完全な手続き(技能)のた めに,それが治療されない限り引き続き起こる誤りであり,後者は不注意による誤り,所 謂,ケアレスミスと呼ばれるものと考えられる.さらに言えば,前者はそうしようと思っ て(意識的に)おかす誤りであり,後者はそうしようとは思わずに(無意識の内に)おか す誤りといえよう. また,数学での「誤り」をmisconceptionsという概念で説明し,数学の新しい指導方法 を提言している研究の中で, Nesher,P.(1987,p33)は,次のように述べている. 《ェラ-は,ランダムに起こるのではなく,以前に獲得された知識に基づく一貫し た概念の枠組にその起源をもっ. 》 そこで,筆者は,両者の枠組に共通する捉え方を採用し,本稿では, 「以前に獲得され た知識に基づき,繰り返し起こる失敗」を「エラー」と呼ぶこととし,これを研究の射程 とする.それは,先行知識の何らかの欠陥,妨害によって生じるエラーを研究することに よって,子どもの認知様式はもとより,学習段階における指導法の問題点,さらには教材 の本質といったものまでも浮き彫りにされる,と考えられるからである. 勿論,ランダムに生起する誤りも,実際の問題解決場面では頻繁に起こるものであり, そこにも何らかの傾向,認知的要因といったものも考えられよう.しかしそれは,主に, 正しく習得され自動化された手続きが,その実行段階において,注意力,集中力、記憶力 などといった認知的能力の不足のために不完全に実行され発生する誤りと考えられる.し たがって,この種の誤りは,算数・数学学習に固有な誤りというよりも,人間の認知活動 全般に渡る一般的性向といえよう.以下では,この誤りを「ミステイク」と呼んでいる. 2.エラーの原因としての外描法 (1)エラ-の原因は結果だけからは分からない. Matz,M.(1982,p.26)は,中等学校の代数におけるエラーの研究の中で,エラ-の発生 する場面を次の2つに分けている. ①新しい状況にとっては適切でない既知のル-ルを使用すること ②新しい問題を解くために,既知のルールを不正確に(不完全に)使用すること 簡単に言えば, ①は,ある問題では適切なルールを,それが通用できない問題にまで適 用させるためにエラーが生じる場合であり, ②は,当該の問題に適切なルールを通用させ るものの,忘却などの理由により,そのルールを正確に実行できない場合である,といえ よう.なお, ②に関しては, Brown,J.S.& VanLehn.K. (1980)の研究における間に合わ せ理論(repair theory)が,エラー発生の過程に関して詳細な説明を行なっている..

(3) エラーの原因としての外摘法. 21. この分類は,計算問題や代数的操作という制限はつくものの,エラ-研究一般に対して も少なからぬ示唆を与えてくれる.つまり,エラーが何らかの問題解決の結果として生じ てくるものである以上,その原因として, ①問題に対して不適切な知識,手続きが動員された場合 ②知識,手続き運用面で不都合が生じた場合 を明確に区別しておくことは,研究の対象をはっきりさせるために重要と考えられるので ある. エラーの原因についてのこうした区分けは,一定の説得力をもつものである.しかしな がら,ある一つの誤答をみただけでは,それがどちらに分類されるのか,さらには,エラー なのかミステイクなのかの判断さえも容易ではないのである.たとえば, 300. 5. 55. という誤答からは,次のように少なくとも2通りの解釈が可能である. (鱒釈l) 「ひき算は大きい数から小さい数をひけばよい」という不適切な知識を用い, 8-3を実行した. (解釈2)正しい筆算アルゴリズムを実行していたが,繰り下がりを行ったことを忘れて 朗93. このように,単一の現象だけから,それがどういった種類の誤りであり,また,その原 因がいかに説明されるかを決定することは困難なのである. (2)外描法によるエラーの説明. エラーの発生メカニズムを, Matz,M (1982)は,主に中等学校の代数を対象にしなが ら,外描法(extrapolation)という考えで鮮やかに説明してみせる. 彼は,問題解決にあたって外描法が使用される事態を,次のように述べている. 《もし生徒の現在のルールに適用できるものが何もなければ,既知のルールと馴染 みのない問題との問のギャップに架け橋を渡す何らかの方法を見つけるよう強い られる.これが,ある答えをっくりだしている比較的に直接的(そして創造的) な根源である.なぜなら,生徒は,古いルールをいかに適用するか,あるいは, 新しい問題を何らかのよく知っている問題の変形としていかに見ることができる か,ということを考え出す必要があるからである.つまり,生徒は外摘しなけれ. ばならないのである. 》 (下線筆者Matz.M, 1982,p.27) そして彼は,代数的操作におけるエラーの原因となりうる外描法のテクニックとして次 のようなタイプをあげている. 一般化した分配一一①. 線形性エラー. (generalized distribution). 繰り返された適用---② (repeated application). -昭fa l MMMf匡頭.

(4) 22. 以下,彼のあげた例を用いながら簡単に説明しよう. ①線形性エラー;一般化した分配 (a) 、属官-石「×頂「- VA+B ⇒√貢 ̄+√富 ̄ (b) (AB> - A"B" - (A+B)" ⇒A"+B" (c) A(B+C)-AB+AC - 2ab ⇒ 2"2b これらの外描法の背景には,次のような分配規則に関する一般化されたシェマを考える ことができる. (a) □(Ⅹ△Y) ⇒ □Ⅹ△□Y (b) (X□Y)△ (X口Z)△(Y□Z) (c) X□(Y△Z) ⇒ (Ⅹ□Y)△(Ⅹ□Z) (ただし,口は単項演算子, △は二項演算子をあらわす.) ②線形性エラー;繰り返された適用 \V. -A一望諾L→A・B. これは,左式の操作が次のように2回繰り返されることによって生じるエラーである.. このタイプのエラーには,他に次のようなものもある.. 蓑去⇒寸--xX寸 X-2. 3-X+7. ③一般化 (Ⅹ-3)(X-4) - 0 (X-5)(x-7) - 3 Ⅹ-3-0 or X-4-0=>X-5-3 or X-7-3 X-3orX-4XX-. orX-10. ここでは,方程式の解法に関して次のような一般化が行われている. (X-A)CX-B) - K (Ⅹ-A)-K or (X-B)-K X - Solve[(X-A) - K] or X - Solve[(X-B) - K] このような一般化が起こりやすい理由として,彼は,代数においては数に関する一般化. が起こりやすく,それは,代数そのものが具体的な数値に対する算術を一般化したもので あるからとする.上の例でいえば,左辺の3,4,5,7といった方程式の解法にとって本質的で はない部分をA,Bと一般化するように,右辺の0に対してもkとする一般化が行われてい る.ところが,右辺の0は,式の同値変形において本質的な役割をもっているので,この 一般化はエラーを引き起こすのである..

(5) エラ-の原Eqとしての外描法. 23. 3.学習過程に見られる外積法 上述の外描法によるエラー原因の説明は,その領域は限定されてはいるものの一定の説 得力をもっていると思われる.それは,何も代数問題に限らず,新しい状況,不習熟の課 題に当面した場合,以前の類似した状況,課題で用いた知識をもとにしながら,それに対 処して行くことが,人間の一般的問題解決能力の特性であるし,さらに,そうした力の育 成を計ることが算数・数学教育の目標の一つと考えられるからである. (1)指導は外楯を前提に行われている 外楠は,何らかの類似性に基づいて,ある問題状況で適用できる知識,ルールの一部あ るいはすべてを新しい問題状況に適用してしまうことであると考えれば,それは一種の類 推(ana一ogy)とみることもできる.そして,このような思考の様式(類推,外括,あるい は,その洗練された形式での一般化)は,算数・数学の学習指導において,たとえ暗黙裏 の内にも前提とされている思考活動と考えられるのである. このことを,異分母分数のたし算を例にとり説明してみたい.一般的な指導の流れは概 ね以下のようであろう. 数のたし算. 油が・÷p. UIEIA99. はいっ/_-かんと.. 7t 'I とがあります.二の油をあわtrると.何i:'xるてLl うか.. 田の簡msammt laxna&i四mmwm.. .日工'・i [コ LI. Bi+与の-のしかたを考えまLlう・. 声音 ',.守;i iI皇 」十: ⊂] 分母のちがう分粒のf:Lj引ま,通分してから言-ト井します。 霊<ntzL iix誓しかたを出端十号 .il-i ●練習●Lコ ・ミ'i5亘三1蝣;∴弓.

(6) 24. まず,特定の数(量)を含む問題について,さまざまな教具や図(モデル)を用いなが ら,具体的な場面から異分母分数のたし算の方法を直観的に引き出す.次に,別の数値に 対して同じモデルを使いながら,同様の方法(通分する)が適用できることに気づかせる. これをもとに,いくつかの練習問題を解かせ,その方法がすべての分数のたし算に対して 有効であることを理解させる. ここでは,少なくとも以下のような思考活動が行われることが前提にされている. ①数値の問題を図(モデル)で考えてよい. ②問題1のモデルを問題2に適用してもよい. ③どんな量,数値の分数にも問題1のモデルが適用できる. ④問題1, 2の計算方法は,どんな分数に対しても適用できる. すなわちこの場面で,すでにある種の外括(類推,一般化)が機能しているのである.. (2)外描法は隠れたカリキュラムである. 上の例に限らず,算数・数学の学習において,外描法はさまざまな場面に見ることがで きる.たとえば,小数の学習においては自然数の性質,計算規則などが適用できるのでは ないかという点から暗黙のうちに数の拡張が行われているし,また,四角形の分類におい ては三角形の分類方法(辺と角に注目する)が当然のこととして適用されている. こうした既有の知識を用いて(シェマの調節),新しい学習内容を獲得する(シェマへ の同化)という学習方法は,本来的に人間の学習方式の姿であろうし,その機能を仮定せ ずには学習指導そのものが成立しないといえよう.そして,既有の知識を新しい学習内容 に適用させる一つの方法が外括法であるとすると,それは学習を成立させるための前提条 件になっていると考えられるのである. すべての外描法が学習の結果なのか,それとも人間の認知様式に組み込まれた機能なの かについて,現在のところ筆者には明確な区別がついていない.しかしながら,少なくと も外描法のある種のテクニック(たとえば, Matz.M.の線形性,一般化)は,学習の結 果として獲得されていると考えてよいように思われる.たとえば,線形性エラーの発生に.

(7) エラーの原因としての外描法. 25. ついてMatz.M.は次のように述べている. 《線形性があるのではという予想は,多くの生徒にとってまったく自然なことであ る.なぜなら,彼らが以前に出会った式の多くは,線形性の仮説に適合するもの だからである. 》 (Matz,M.,1982,p.29) ここで指摘したい点は,指導される教材内容(学習対象)と同時に,その学習を進める. 中で用いられる思考方式(学習方法)までもが,実は指導されているのであり,その一つ. に外描法があるということである.そして, Matz,M.のいうような洗練された外描法に 限らず,広い意味での類似性に基づいた判断は,算数・数学の学習においていたるところ に見ることができよう. 4.指導への示唆 以上の分析,考察をふまえ,算数・数学の学習指導への若干の示唆を導出したい. (1)学習段階でのエラーをなくすことはできない ここでの論旨は, Resnick.L.B.ら(1989,p.26)によって簡潔に述べられている. 《認知的視点からすると,ほとんどすべての指導は不完全であり,それは,いかな る一つの例示や説明においても,特別な場合や提示されるかも知れない原理やルルの考えられ得るすべての含意をカバーすることはできないという意味において. である。指導は,通常の人間のコミュニケーションと同様に,先生や教科書が言っ ていることを,完全なものにしたり,意味あるものしたりする推測や解釈を行な うために,学習者が提示された題材を使用するであろう,という仮説に基づいて いる.これらの推測や解釈を行なう中で,子どもたちは,少なくとも一時的な誤 りを非常に犯しがちである.この観点において,誤りのあるルールは,すべての 学習にとって本質的である.少なくとも一時的ではあるにせよ,それらは,言わ れていることを解釈し,具体的に提示された場面を乗り越えて行こうとする,千 どもたちの努力の自然な結果だからである.》(下線筆者) すなわち,数学的知識構築途中の学習者にとって、ある概念,法則,ルールなどが,そ の先どこまで適用でき,また通用できない境界線はどこにあるかを明確に意識することは できないのである. たとえば,式表示された計算問題の実行順序は,現れる演算が加減だけ,乗除だけの場 合,「左から右-」というルールが有効であるが,それらが組み合わされた場合,そのルー ルはもはや適用できない.勿論,四則演算が混合した式の計算順序は,新しく指導される べき内容であろう.しかし,ここで言いたいことは次の点である.加減だけの計算を学習 している段階において「左から右へ」ルールはすべての問題に対して妥当なルールであり, 学習者は,それが適用できない問題の存在を考えることはできなく,また,それをほのめ かす指導すら無意味なのである. このような明確なルールに対してだけでなく,たとえば次のような状況も考えられる. はじめに上げた誤答例, ア,A-A2+4-6 について,生徒は次のように考えているかも知れない..

(8) 26. (ア)計算方法がよく分からないときは,具体的な場面で考えればよい. 「2つのグループがいる.一方は2人の子どもがいて1人が男の子,もう一方は4人の 子どもがいて3人が男の子. 2つのグループを加えるのだから, 6人の子どもの中に4人 の男の子がいる.」. 芙碁+藤一麺碁 [図2] (イ)計算方法がよく分からないときは,よく似た問題で考える. 「分数のたし算はどうするのだったか自信がない.でも,かけ算なら簡単だ.分母どう し,分子どうLをかけるだけでよかった.ならば,たし算では,分母どうし、分子どうL をたせばよいのではないか.」 こうした「具体的な場面で考える」, 「よく似た問題で考える」といった,いわば問題解 決の方略は,学習過程の随所に指導されているものであろう.しかしながら,どのような 具体的場面(モデル)で考えてはいけないとか,よく似た問題のどこまで適用してよいの か,といった限界あるいは境界線といったものは明示的には指導されていない.指導され ていないというよりも,指導できないと言った方がより正確であろう.そうした限界,境 界線は,数学的知識のある程度の蓄積をまって,それら知識の整合性が問題となる場面で 始めて意識されるものであり,その知識に対していまだ未習熟な学習者にそれを意識させ ることは困難な課題と考えられる. (2)ェラーの治療と予防 さて,学習過程において避けることのできないエラーに対して,我々にはどのような対 処の仕方があるだろうか.それには少なくとも2つの方法があると思われる.一つは,エ ラーはどのような指導法をとろうとも少なからず生じるものであるから,エラ-が発見さ れた時点でそれを修正して行けばよいという,いわば対象療法的方法(治療的指導方法)` である.もう一つは,すべてのエラーを未然に防ぐ指導は無理でも,いくつかの起こりや すいエラーを特定し,それらの発生を食い止める指導を行なうといった,いわば予防療法. 的方法(予防的指導方法)である. 治療的指導方法は,診断的テストや個別指導など現在でもごく普通に行なわれている指 導法と思われるので,ここでは追求しない.一方,予防的指導方法は,それを明確に意識 した実践が行なわれているとは言い難い.そこで,この指導法について筆者なりの枠組を 与えることで,エラーという観点からの算数・数学指導への示唆を引き出したいと考える. 予防的指導法を行なうためには,以下のような過程が必要と思われる. ①頻繁に発生するエラーの同定.

(9) エラーの原因としての外描法. 27. ②エラ-の教材内容に即した分類,整理 ③エラ-発生の認知的プロセスの解明 ④ェラ-を予防する指導法の設計と実践 ①, ②に関しては,すでに先行研究によってかなりの資料が提供されているところであ る.また, ③についても,近年,認知心理学的方法から研究が進められており,本稿も外 挿法という視点からそれに一定の寄与を与えたものと考える.しかしながら筆者の知る限 り, ④に関しての体系的な研究,実践は行なわれていない. ④についての踏み込んだ議論は現在のところできないが、外括法によってひき起こるあ る種のエラーに対しては,次のような方策が考えられるのではなかろうか.すなわち,以 前の学習内容と混同しやすい内容の指導にあたっては,以前の内容と新しい内容とを併置 させる指導法である.つまり,類似した先行学習内容と新しい学習内容を対噂させること で,その境界線を明確に意識させよう,というのである.. たとえば,分数乗法の指導の際,一応の手続きが習得された後に分数加法の手続きとの 違いを取り上げ,必要ならばそれぞれの異体的状況に立ち帰らせながら,それらの差異を 明確に意識させるのである.そうすれば,分数における加法,乗法手続きの問で生起して いると思われる外摘エラー, -1+-3 2+4. などは,かなり予防できるのではなかろうか. これに対する反論には,次のようなものがあろう. 「そんなことをすれば,かえって誤答が増える.たし算はたし算,かけ算はかけ算で,ちゃ んと分かっていれば,それらを混同するようなことは起こらない.混同するのは,それぞ れを正しく理解していないからだ.」 これはある意味で正しい.まさに生徒は,分数加法の計算手続きを正しく理解していな. い,正確には,正しく記憶していないために,このような誤答をするのである. ところで,正しく理解する,あるいは,正しく記憶するためには,その対象が明確にさ れる必要がある.漠然とした対象は意識しにくいし,意識されないものの理解や記憶は不 可能であろう.そして,ある対象を明確にさせるものは,他との差異であり,差異のない ところに意識の対象は存在しない.ここでの意識されるべきものとして分数加法の計算手 続きを考えるなら,他としての分数乗法との差異が意識されなければならないと考えられ るのである. 勿論,こうした差異には,減法との差異,自然数,小数との差異などと,さまざまなも のが考えられ,それらをいちいち明示的に指導することは不可能であるし,また,不必要 であると思われる.そうした差異は暗黙の内に了解されているとして,あくまでエラーを 引き起こす可能性の高い類似内容との差異を示して行くことが得策であろう. 5.結語 エラー発生の原因として外括法に焦点を当てて考察を進めてきた.また,その原因とな る思考方法が学習指導の過程の中に本来的に組み込まれており,したがって,エラーは学 習において避けることのできないものである点を指摘した.そして,起ってしまったエラー に対処する従来の治療的指導法に対して,それを未然に防ぐ予防的指導法の可能性を示唆.

(10) 28. した. しかしながら,エラー発生の認知的プロセスの究明を急ぐあまり,その対処法にまでは 充分な手がまわらなっかたのが実情である.また,外挿法という考えは,主に,手続き的 知識の関与するエラーの説明には有効と考えられるが,概念的知識が大きく関与するエラー には適用できない部分があるように思われる.この点が本稿の限界である.当面は,各知 識の形態に固有なェラー原因を特定,整理していく作業から始めなければなるまい.そし て,それらに対処すべき指導法を設計し,実践する中で,その方法の有効性,妥当性を吟 味して行くことが,今後の研究課題といえよう. [引用・参考文献] Brown,J.S.& VanLehn,K. (1980), Repair Theory:A Generative Theory , Cognitive Science 4, pp.379-426. Cox,L.S.(1975), Systematic Errors in the Four Vertical Algorithms in Normal and Handicapped Populations,Journal for Research in Mathematics Education, 6, pp.202-220.. Matz.M.(1982),Toward a process model for high school algebra errors Intelligent Tutoring Systems,Academic Press, pp.25-50. Nesher,P.(1987),Towards an Instructional Theory: the Role of Student's Misconceptions,For the Learning of Mathematics,vol.7,No.3,pp.33-39. Resnik L.B.,Nesher P.,Leonard F.,Magone M. Omanson S. & Peled 1.(1989), Conceptual Bases of Arithmetic Errors: The Case of Decimal Fractions, Journal for Research in Mathematics Education, 20,pp.18-27. 大阪書籍,小学校算数5年下,昭和64年度用p.10..

(11) エラーの原因としての外括法. 29. A Study of Understanding and Representation in Mathematics Education(II) Extrapolation as the cause of Errors. Takahiro KUNIOKA*. Abstracts In the learning of mathematics, students make various kinds of mistakes. Some kinds of mistakes are regarded as errors.which occur over and over again and due to the knowledge acquired in the previous learning. In this paper, I illustrate the cognitive reason which makes errors using extrapolation as the causes of errors, that is the cognitive process leading to the incorrect procedures of calculation. Extrapolation is considered as a sort of analogy. Because analogy is the essential method of human thinking in new or unfamiliar situations, we cannot avoid errors from the mathematics class, in which students is usually confronted to new problems and often apply immature procedures for the problems. And I suggest that some kinds of extrapolation is implicitly taught by teachers in the normal class instruction. For example, it is such instructional advice to say think about the similar problems , "let's use the previous methods , and so on. Because errors cannot be avoided, we can only modify the erroneous skills of students, or prevent at least the errors which we can predict beforehand. I advocate the preventive method of instruction in which a teacher should point out the difference between the new topics or procedures and the similar previous ones.. Department of Mathematics Education, Hyogo University of Teacher Education, Yashiro, Hyogo, 673-14, Japan..

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